2001/10/29

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参・予算委員会 

(民主党ニュース)
「巨泉」VS「小泉」第1ラウンド〜大橋巨泉議員が初質問

 参議院予算委員会において、9日、この夏の参院選で初当選した民主党の大橋巨泉議員が初質問に立った。大橋議員は、テロ対策を中心に、靖国参拝問題、選挙制度問題、地球温暖化問題などをめぐって小泉首相らを追及した。

 冒頭、大橋議員は、首相が本会議での“棒読み”答弁への批判に対して“役人に対するような質問をする方が悪い”という趣旨の発言をしたことを取り上げ、真意を質した。小泉首相は、「本会議と委員会の質問が同じでいいのか」などと述べたが、大橋議員は、高祖議員辞職問題など政治家として答えるべき問題に対しても一切答えなかったことを指摘し、都合の悪いことは答えないという姿勢にクギを刺した。

 続いて大橋議員は、米国高官が語ったとされる「Show the flag」という言葉の意味を質問。小泉首相は「協力してくれという意味だ」としたが、大橋議員は、どちらの側に立つかはっきりしろという意味であることを明らかにし、「少なくとも日の丸を立てて自衛隊の艦船をインド洋に出せという意味ではまったくない」とした。さらに、そもそもこの発言が、いつ、誰が、誰に対して、どういう場で行ったものであるかもはっきりしないことを指摘。「(発言は)新聞で見た」などと答える首相に対して、「日本はそんなにいいかげんな外交を行っているのか」と一喝した。

 同時に、日米首脳会談の直後に小泉首相が「Attack on one is attack on all」と語ったことについても取り上げ、それが海外では集団的自衛権行使を表明したものと受けとめられていることを指摘。「日本の対応は、とにかく自衛隊を支援に送って旗を見せるというものになっているが、テロは貧困をなくさない限り根絶できない。むしろ経済格差解消を優先して考えるべきではないか」と自身の考えを述べた。

 また大橋議員は、地球温暖化防止の京都議定書問題をめぐって、「米国を最後の最後まで説得する」という政府の方針は「甘い」と批判し、日本が米国の説得を諦めて議定書を批准するデッドラインはいつか、と追及した。しかし、小泉首相、川口環境相は「最後の最後まで」と繰り返すのみで、早期批准の考えのないことを示した。

 このほか、靖国参拝問題では、小泉首相が自民党総裁選の投票日直前に日本遺族会幹部に電話をかけ、当選した場合は8月15日に靖国神社に参拝することを確約していた経緯を確認。また、選挙制度問題をめぐっては、現行の非拘束名簿方式が組織や支持基盤を持っている候補とそうでない候補とに選挙運動などで平等な条件を与えていないとし、インターネットを利用した選挙運動などの解禁を提案したが、片山総務相は「(インターネット利用は)悪用される恐れがあってむずかしい」と答えるにとどまった。


○大橋巨泉君 年は食っていますけれども新人ですので、今も最初どうやって言っていいかわからないぐらいなんで、なれないところがあるかもしれませんけれども、お許しください。

 さて、まず総理は、二日の晩、私、テレビを見ておりましたら、宮中の晩さん会のお帰りか何かでタキシードを着ていらっしゃいましたが、そのときに、どうも野党は役人が答えるような質問ばかりしている、政治家が答えるような質問をしてくれなくちゃとおっしゃっていましたが、後で党の方に聞きましたら、何かこの間、あれは失言だったということで──失言じゃないんですか。

 では伺います。どういう質問が役人が答えるんで、どういう質問が政治家が答えるんでしょうか。そして、あのときに我が党の角田会長、岡崎副会長がした本会議での質問は、役人が答えりゃいい質問でしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、かねがね思っているんですよ。最近は、本会議の質問に政治家の答弁よりも役人が答えたような質問の方が多過ぎるんじゃないかなと。だれがとか具体的に言いませんよ。本会議でやる質問と委員会でやる質問が本当に同じであっていいんだろうかと。政治家も考えてもらいたいな、何のために担当大臣がいるんだろうかと。

 そういう点も込めて、私なりの本会議の代表質問はかくあるべしという考え方がございます。委員会と本会議に何で分かれているんだろうかと。その辺も議員諸君も自覚をしてもらいたいなという観点から私は、中にはわずか二、三十分の質問の中で堂々と全議員を前にして何十項目も質問して、本当に自分の意見が言えるんだろうかという気持ちもありますから、私は、皆さんとは違いますよ、一つの議員としてどういう考えを持っているかというのはいいと思うんです。議員としての本会議質問と委員会質問というのはそれなりに違いがあっていいんじゃないだろうか。すべて総理に聞くというよりも、担当大臣もいるんですから担当大臣から答弁した方がよりいい答弁ができるのではないかという気持ちも込めて言ったわけであります。

○大橋巨泉君 私もあのときに本会議にずっと座っておりましたけれども、例えば高祖憲治さんのことで、総理は一緒に写真撮ったり高祖パワーで頑張ろうとか応援したけれども、その責任はどうなるんですかという質問があっても、総理は一切お答えになりませんでしたけれども、これは役人じゃなくて政治家じゃなきゃ答えられない質問だったんじゃないんでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) そういう質問だったらお答えできますよ。
 ただ、全部見てごらんなさい。何十問も質問、そして、一問一答ならできますよ、一問一答じゃないんですよね。もうよく、恐らく答弁する立場になればわかると思うんですよ。もうどれも抜かしちゃいけないとなれば、間違いないようにとなりますよ。今、具体的に一問一答なら、私、棒読みなんて余りないでしょう。予算委員会というのは私は割合好きなんですよ、こういうやりとりできるから。

 そういう点で、私は今後も質問者も考えてもらいたいなということを言ったんです。(発言する者あり)

○委員長(真鍋賢二君) 御静粛に願います。

○大橋巨泉君 僕なりによくわかりました。つまり、たくさん本会議で聞き過ぎるから、都合のいいものは答えるけれども都合の悪いものは答えないと。

 だから、もし、でしたら今、高祖さんを応援したのと公認した総理の責任はどうおとりになりますか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは、議員はそれぞれいろんな考えがあります、候補者は考えがあります。

 私の主張に反対した議員でも、私は、自民党公認で当選してくれば小泉総裁のもとで、違う意見があっても最終的には政党というのは多数意見に従いますから、私の方向に賛成してくれるなと自信があって、だから私は反対勢力は別に嫌いじゃないんですよ。抵抗勢力も万機公論に議論していくと、政党の習慣で自民党というのは、自分はこう思っているけれどもみんなが、多数はこうだと言うと従ってくれるんです、政党というのは。そこがやっぱり政党の集団で、全部自分の意見が通らなきゃといったら政党をしょっちゅう渡り歩く、かわらなきゃならないですよ。そういうもので、私は、大体自民党の議員というのは常識がありますから、自分の意見がああこれは周りから認められないと思うと、自分は反対するけれども、これは党の議員として、党員として賛成しようという場合が過去私は議員生活をしてみてわかっているんです。

 だから、一人や二人、十人や二十人、私の意見に反対でもどうってことないなと。最終的には方向を議論して正しい方向にまとまってくれるのが自民党の議員だなと思っているから、いろんな各界各層の人が支援を受けて、そういう中で賛成反対をかんかんがくがく議論をして、落ちつくところに落ちついていくのが政党内の議論ですから、私は別に、私の意見に反する者がここに当選してきても、それは一つの考えだなというふうに思っているんです。

○大橋巨泉君 どうも僕の聞いた質問と答えが違うような気がするんですが、先たくさんありますので、この辺にしておきます。(発言する者あり)

○委員長(真鍋賢二君) 御静粛に願います。

○大橋巨泉君 御静粛にと言っていますから。
 とにかく、きょうは僕は、役人が答えられないような、ちゃんと政治家が答えられるような質問ばかりをいたしますので、よろしくお願いします。

 まず、先ほどからのお話を伺っていると、平田議員の質問に対して、要するに自衛隊を送るということだけはどんどん進んでいて、マネーロンダリングや何かの方はもうとっくにやってもいいのにやっていないというように、どうも話がどんどんどんどん進んで既成事実みたいなものを積み重ねてしまって、はっと気がついたらもう手おくれだったということは日本も前あるわけです。ですから、きょうはベーシックな、基本的な問題についてお尋ねします。

 まず、もちろん誤解のないように言っておきますが、私はいろんな書き物にもさんざん書いておりますが、どんな理由があろうとテロは許せません。それが僕のスタンスです。

 まず、ことしの流行語大賞間違いないと言われるショー・ザ・フラッグという言葉なんですが、この前、我が党の菅幹事長の質問に対して総理は、これは予算委員会でしたが、ちゃんと御自分のお言葉で、どういう意味なんですかと言ったら、ショーは見せろ、フラッグは旗ですとおっしゃっていましたけれども、本当にそう思っていらしたんですか。それとも、実は本当の意味を知っていながらああいうふうにお答えになったんですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) あのときは確かにそういう答弁をしました。そして、その後に協力してくれという意味じゃないですかと。文字どおり訳すれば、ショーは見せるですから、フラッグは旗ですから、旗を見せなさいということは協力してください、協力してくれという意味じゃないですかということをつけ加えたわけですね。

○大橋巨泉君 協力してくれという意味じゃないんです。総理もアメリカで英語で演説していらしたから英語はお得意だと思うんですが、私も多少たしなみますので。

 これは、もとは海軍の用語で、昔ですよ、まだ飛行機なんかがないころ、恐らくネルソン提督とかそういうころだと思うんですけれども、旗を立てている船は襲われてもしようがないんですね、所属がはっきりしていますから。だから、襲われたくなかったら旗を立てないで航行していたんです。

 海軍用語でショー・ザ・フラッグというのは、どっち側につくのかはっきりしろということなんです。協力じゃないんです。どっちサイドにつくかはっきりしろと。ただし、今は、そういう意味よりも、僕は使われたことも使ったことも何回もありますが、大変、もっと逆なんですね。例えば、委員会に出るにしても、ちょっと出て顔だけ見せて行っちゃう、タイムレコーダーを押して帰っちゃう、そういう意味さえあるんです。

 ただ、今度の意味はそうじゃないでしょう。どっち側に立つのか、はっきりブッシュさんもアメリカにつくのかテロリスト側につくのかとおっしゃっていましたから、ショー・ザ・フラッグというのは、どちら側のサイドに立つのかということをはっきりしろと。それで、総理は、政府はすぐにアメリカ側につくということを翌日ですか、もおっしゃいましたし、その上に総理は行ったわけですから、もうそれは十分アメリカ側に立っているわけですよね。ですから、もうそれは向こうの要求は満たしているわけです。

 決して、一つだけ絶対違う意味は、日の丸を立てて自衛隊の船がインド洋へ行くという意味はショー・ザ・フラッグには一切含まれていないんですが、これは理解していただけますか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 旗幟を鮮明にしてくれ、協力してくれというのは日本が考えることであって、それは、どこに行くかは日本で考えればいいことだと思うのであります。

 だから、旗幟を鮮明にしてくれというのも確かにショー・ザ・フラッグの意味に含まれるでしょう。私はむしろ、どっちにつくかはっきりしてくれというのは、もっと意訳すれば協力してくれという意味にもとれるでしょう。いろんな言葉というのは幅があるんだと思います。

○大橋巨泉君 それで、いろいろな意味を解釈、総理自身も悩んだと思うんですが。

 それでは、改めて伺いますが、我々は新聞報道で、あれはアーミテージさんが柳井大使に言ったというようなことを読みました、と伝えられていると。はっきり、いつ、だれが、だれに、どこで言ったんですか、ショー・ザ・フラッグという言葉を、総理。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、じかには聞いていませんし、新聞で知っただけです。

○大橋巨泉君 外務大臣は聞いていらっしゃいますか。どなたから、だれを通じてショー・ザ・フラッグという言葉をお聞きになりましたか。

○国務大臣(田中眞紀子君) 日米で緊密に連絡はとっておりますけれども、具体的に詳細を述べるということはできません。
 私は、そのときワシントンにもおりませんでしたので、直接は聞いておりません。

○大橋巨泉君 ということは、新聞に書いてあるからだれかがそう言ったんだろうという程度のことで、日本国というのはそんなずさんな外交をしているんですか。

 普通まず、例えばだれかが、アメリカ側のだれかが日本側のだれかに言って、それが外務省なり官邸なりを通して総理の耳に入って、アメリカのしかるべき人がこう言っているので、それなら、僕みたいな大学落ちこぼれの中退者じゃなくて、東大から外語大からたくさん優秀な英語のわかる人が内閣、政府にいるんでしょうから、ショー・ザ・フラッグというのは本当はどういう意味だということで、そのときに結論が出てお答えになるべきで、風評でお答えになるのはいかがなものかと思いますが。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは、ショー・ザ・フロッグというのが特に新聞報道で──フロッグじゃない、フロッグじゃない、カエルじゃなくて旗、フラッグね。ショー・ザ・フラッグという言葉が新聞でいろいろ出て、当然、情報交換の中ではそういう話が出ているというのはありますよ。しかし、その意味についてどう考えるかというのは日本政府の問題であって、だれかが言ったから旗を立てなきゃいかぬとか、そんな議論じゃないんですよ。

 私は、ショー・ザ・フラッグというのは、自分で、これは協力してほしいという意味だなと、アメリカとしては、どっちにつくのか旗幟を鮮明にしてほしいなと、そういう意味に自分なりにとっていましたから、自分でこれは主体的に考えるべきだと。日本はこのテロの行為に対して、アメリカがこうやる、それならこうやる、日本はどうやるのかと、それを日本自身でどういう協力ができるかを考えればいいというふうにとらえていましたから、余り私はこだわっていなかった。何みんなショー・ザ・フラッグばかり議論しているんだろうかと。旗幟を鮮明にしろだろうが旗を見せろだろうが、要するに日本が独自に協力できることを考えればいいじゃないかというふうにとらえていたんです。

○大橋巨泉君 いや、私が聞いているのは、あれからそれこそ流行語大賞になるぐらいショー・ザ・フラッグという言葉は出ているわけです。総理自身もお答えになっているわけです。それが新聞で読んだことなんですか。ということは、アメリカの偉い人が日本のさる高官を通じてあなたのところへ来た言葉でないのなら、無視なさったらいかがですか。なぜこだわったんですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、アメリカの高官であろうが高官でない方であろうが、直接会って、もちろん大統領からもショー・ザ・フラッグなんというのはじかに聞いたことはございません。たとえショー・ザ・フラッグという言葉を私が聞いていなくても、今まで一言も発せられなくても、このテロの事態を見れば、日本は独自で何をしなければならないのか、何をするべきか考えたと思います。

○大橋巨泉君 それは今私に聞かれるよりも、この前からさんざん聞かれているときにお答えになればいいと思うんです、私は聞いていないと。そんなショー・ザ・フラッグなんか聞いていないと。ただ、今まではあたかもどこかから重要なコメントとしてお聞きになってお答えになっていたんですね。ですから僕は今聞いたわけです。

 そうしたら、ショー・ザ・フラッグなんという言葉があろうがなかろうが、日本は日本としてやるべきことはやりたいと。それであれば、最初に菅さんが聞いたときに、いやそんな話、菅さん、新聞に出ているだけじゃないか、そんなことに我々はコミットする必要ないとおっしゃるのが総理の姿勢じゃないんでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは大橋議員がそう思うのであって、私は日本ができることをやりたいと。何をやらないか、やらなきゃならないかと。国際協調の中でこのテロ撲滅に対して、テロ抑止に関して何をやればいいかと。ショー・ザ・フラッグという言葉があるからあれをやる、これをやるということは考えたことはありませんね。

○大橋巨泉君 こんなにかみ合わないものだと初めて知りました、自分でやってみて。

 先へ行きましょう。
 総理は、テロを根絶するためにという言葉を何十回ももう既にお使いになっています。御自身でテロは根絶できるとお考えですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 非常に難しいと思います。だからこそ、この問題については冷静に忍耐強く長期的な戦いを覚悟しなきゃならない。ブッシュ大統領も言っているように、私もこれは非常に難しい課題でもやり抜かなきゃならない、その根絶のための努力は続けていかなきゃならないと思っております。

○大橋巨泉君 ということは、その方法というのは特定できないということですね、根絶する。

 私は、こんなことになって、議員になるまで十一年間オーストラリアに冬場住んでおりまして、オーストラリアでアラブ系のイスラム教徒の友人が数人できました。大変事業に成功した方で、はっきり言うとゴルフ仲間です。去年かおととしか忘れましたけれども、最近ですが、イスラエルで女性が爆弾を巻いてイスラエルのショッピングセンターなんかへ行って自爆する事件が続いたときに、私は彼らに聞いたんです。アラブ人というのは本当に自爆すれば天国へ行けると思って自爆するのかと。

 そうしたら、彼らは、我々は絶対しないと言っていました。だれに頼まれようとしないよと。アラブ人だからするんじゃないよ、イスラム教徒だからするんじゃないよと。彼らはもう本当に先の見えない貧困で、あしたもないような連中が、例えばテロリストならテロリストが、自爆する、殉教すれば天国へ行ける、子供や何かの面倒を見るよというような悪魔のささやきがあればするんだと。だから、貧困を根絶しなければテロはなくならないんだよ。同じアラブ人でもイスラム教徒でも、我々、おまえと一緒にオーストラリアで冬場はゴルフをやっているようなやつは絶対やらないんだと、そういうことを僕にはっきり言いました。

 ということは、貧困を根絶することが一つだと僕は思うんですよ。そして、こういうグローバライゼーションでどんどんどんどんまた大企業の寡占化が進んでいって南北の格差が広がれば、これはどんなに自衛隊を送ろうが何しようがテロは根絶できないと思うんですが、こういう経済格差に対して日本が何ができるかということを優先的にお考えになる気はございませんか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 日本は常に国際社会の中であるいは国連の中で、貧困撲滅、日本の国力に応じて努力してきているわけですね。G7の会合でもあるいはロシアが参加するG8の会合でも、これはある面におきましては金持ちの集まりじゃないかという批判を浴びながらも、いや、このG7の会合は金持ちクラブだけじゃない、むしろ貧困削減にいかに努力しているかということで協議を進めているわけです。

 貧困を撲滅するという努力はこれからも継続していかなきゃなりません。かといって、それじゃテロがなくなるかというと、これまた私はそうだとは言えません。現に、オサマ・ビンラーディンなんというのは大金持ちでしょう。大金持ちなのに何であんなテロを組織して計画して、みんなあれやれこれやれと指図を出すのか不思議でならない。

 そういう意味において、何をやればテロがなくなるのかという質問には、なかなか難しいんだと、しかしできるだけのことは各方面に多面的にやっていかなきゃならないなと思っております。

○大橋巨泉君 そのとおりで、経済格差の問題のほかに、今、ラディンの話が出まして、彼は大金持ちですけれども、なぜ彼がアメリカを憎むかというと、彼の会社がつくったサウジアラビアのメッカにアメリカ軍が土足で入ったからだという説が一番強いんですけれども、つまり宗教問題、貧困問題、いろんな問題があって、本当に総理のおっしゃるとおり一言では言えないと思うんですが、現在の日本の政府の対応を見ていると、まず後方支援とか自衛隊を送って旗を見せるということばっかりが先に行っているような気がしたので御質問したんです。今言ったような経済とか宗教、文化のことも同時に進めていただきたいと思います。

 それと、もう一つだけ、やりたくないんですが、英語の話をさせてください。

 九月二十六日に総理はブッシュ大統領とお会いになって、アメリカでその直後の記者会見でアタック・オン・ワン・イズ・アタック・オン・オールと、そういう気持ちで、これは米国だけの問題じゃなくて、日本は主体的に行動したいということをおっしゃっていました。私、ここにきょうビデオを持ってきていますから、もしお疑いでしたら、でも総理はお若いんだから忘れはしませんよね。これ、やっぱり日本の国会ですから、ぜひ日本語で言ってください。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) アタック・オン・ワン・イズ・アタック・オン・オールという、一人に対する攻撃は万人に対する攻撃である、あるいは一国に対する攻撃はすべてに対する攻撃であると。これは、米国に対する攻撃というのは世界人類に対する攻撃であると受けとめるべきだと、今回のテロは。そういう意味において、テロに対して米国のみならず、今、世界が立ち上がっている。

 日本もこれは主体的に、これは人ごとではない、日本独自に主体的に積極的にこのテロに立ち向かっていかなきゃならないという言葉を述べたものであって、ブッシュ大統領も演説の中でその言葉を使っているんですよ。それで、なるほどこの言葉はいい言葉だなと頭に入っていたものですから、私はあのあいさつで自然に出たんです。

○大橋巨泉君 自然に出たとしたらすばらしいんですが、ブッシュ大統領は恐らくそのフレーズはほとんどNATOに向けて言ったんではないかと思うんですね。一つに対する攻撃はすべてに対する攻撃だと日本の総理大臣がそう言った場合は、僕ら普通ぱっと考えるのは、この方は集団的自衛権の行使というものを頭に入れてお話しになっているんだなと思ってしまったんですが、誤解でしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) あのときはたしか、ニューヨークの現場、テロの現場を視察して、そしてニューヨーク州知事のパタキ知事とニューヨーク市のジュリアーニ市長と一緒に懇談をして、これから会見するんだから一緒に来いと、行こうということで一緒に歩いていったんですよ。

 そこで、私はまさかこういうところで記者会見すると思っていなかったから、知事から始めた、ジュリアーニ市長も始める、促されて立ったから、現場の感想と日本の立場ということを、みんな英語で言っていたし、聞いている人は日本人よりも外国人が多かったから、感じていることを英語で話したんですよ。別に、集団的自衛権がどうかとか個別的自衛権とか考えないで、素直にお見舞いと、それから犠牲者に対してニューヨーク市民が温かい手を差し伸べているという感謝と、日本政府としてもこのテロに対しては毅然として立ち向かっていくということを率直に述べたまでなんです。

○大橋巨泉君 ただ、私が考えたぐらいですから、いたアメリカ人の方がこのフレーズを聞いたら、ああ日本も集団的自衛権を行使するつもりだなと。だって、というのは、ほかに言い方はたくさんあるわけですから、そう思ったんではないかと思います。

 さて、先ほどの自爆テロの話なんですが、十一日のあの大事件の後、私一応、インターネットでアメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなんかの新聞は全部一応読んでいるんですが、そのときに出ていた言葉、八割か九割の新聞にカミカゼアタックと出ていました。このカミカゼというのは、もう英語の辞書にも出ています。つまり、旧日本軍の特攻隊のことなんですが、それはいろんな意味にも使われていますが、基本的にその意味なんです。

 かねてから特攻隊には特別な心情をお持ちの総理が、もうあと何秒かで自分は必ず死ぬという、自死を前提としてニューヨークのビルに突っ込んでいったアラブの青年たちの心情はどうお考えになりますか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私の理解を超えますね。
 その戦時中の日本の若き特攻隊員たちは、これは戦争のために、しかも軍用機を使って、行きたくないけれども行かざるを得なかったという無念の気持ちもたくさんあったと思います。そして、目指すところが相手も軍の施設ですね。ところが、今回は使っている飛行機が民間機でしょう。全く戦争とは関係のない市民、自分の目的とは何ら関係ないどころか、相反する人たちばかりを乗せて、死ぬ。その人たちを巻き込んで、民間の飛行機と無実というか無辜の人々、無関係の人々を巻き込んで武器にしちゃう。しかも、突入先がこれまた何の戦争に関係ない、日ごろ生活のために苦労をしている、あるいは仕事を一生懸命やっている人、あるいは見学者、そういう人を当然犠牲にする、殺すということを覚悟して突入していっているんですから、こういうのはもう信じられませんよ。だれが起こると思いましたか。

 そういう事態にこれからどうやって対処するかということであって、私はそのパイロットの突っ込んでいった心情がどうかといっても、もう理解できませんね。

○大橋巨泉君 いや、私が質問した真意は、むしろ今、ブッシュ大統領初め言っているように、その実行犯よりもそれをやらせたビンラディン以下のテロ組織、これに対して彼らは今攻撃しているわけです。

 ですから、僕が言いたかったのは、突っ込まされた人たちを行かせた人間と行った人間、つまり特攻隊と特攻隊を戦場に行かせたその旧軍の、要するに軍の上層部ですね、この人たちははっきり分けるべきだという意味で言ったんですが、最後に一つ。今、だれが信じられますかとあなたはおっしゃいました。何回も、今回の想像を絶したテロとおっしゃいましたが、私の友人のアメリカ人ははっきり、ほとんどの人はCIAのミスだと言っています。これは十分予測できた。想像つかないと総理はおっしゃるけれども、トム・クランシーの小説にまで出てくるわけです。あれは日本人が行くんですけれども、ホワイトハウスに。でも乗客はおろしていくんですが。ということは、あれほどの情報大国のアメリカが想像できなかったとは僕は言えないと思うんです。

 やはり情報関係者の大きなミス。あるアメリカ人はコンプレイセンシー、つまりむしろ自己満足、怠慢だとさえ言っていますけれども、それでも想像を絶したことだと、夢にも思いませんでしたか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、あの事故が起こる前はこんな事故が起こるとは夢にも思いませんでした。しかし、終わってから、たしかだれかがこういうのを似たようなことを小説にしているよというのを見せられました。そういうことで、今ではああいうことを予測できたんじゃないかという方もおられますけれども、私はあの事故が起こる前には、まさかこんなことが起こるなんというのは夢にも思いませんでした。

○大橋巨泉君 一応テロ関係はここまでにいたしまして、先ほどの特攻隊の話をしたのは、総理がいつも、先ほどもお答えになりましたが、繰り返しますが、八月十五日に靖国神社に参拝すると、あれほどこだわった真意をお答えください。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは何回もお答えいたしておりますように、私は今日の日本の平和と繁栄というのは、あの戦争で心ならずも命を失わざるを得なかった、戦場で命を落とさなきゃならなかった人たちの犠牲の上に成り立っているのではないかと。そして、二度とあのようなむごい戦争を起こしてはならない。まず戦没者に対する哀悼の念と、そしてこのような悲惨な思いをさせた戦争というものは二度と起こしてはいけないという気持ちで靖国参拝したわけでございます。

○大橋巨泉君 それでは伺いますけれども、総理は自民党総裁選のさなか、四月十五日の夜、自民党参議院議員で日本遺族会の副会長である森田次夫氏の杉並の自宅に電話したという情報がございますが、本当でしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 何日にだれに電話したかというのは覚えておりませんけれども、いろいろ支援者に対して支援要請をした、電話したことは覚えております。また、遺族会の皆さんには、私は靖国神社に参拝しますというようなことを言ったことも事実でございます。しかし、何月何日、だれにというのは覚えておりません。

○大橋巨泉君 八月九日の朝日新聞にははっきり、あなたが森田さんに、私が総裁になったら必ず八月十五日に靖国神社に参拝します、森田さんは、ありがとうございますとお答えになったと出ています。そしてさらに、時期が時期だけに言わずもがなだったと森田さんは朝日新聞の記者に言ったそうです。そして、翌日十六日に、総理は奈良県三宅町の中井澄子遺族会会長にも同様の電話をなさっている。そして、翌十六日に、各都道府県の遺族会会長を通じて遺族会会員に伝えられました。

 遺族会の自民党の党員は十一万人、十一万票のお礼に約束を守ろうとしたと僕は理解いたしますが、違いますか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は別にお礼のためにお参りするということじゃなくて、もとから持っている気持ちを表明したわけでありまして、支援者のために靖国神社に参拝するという、そういう気持ちではございません。

○大橋巨泉君 ただ、今私が申し上げたような事実はあったことはお認めになりますね。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) そういう気持ちであったということは事実でございます。

○大橋巨泉君 いや、電話のやりとりなどあったということはお認めになりますね。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 遺族会関係者に電話をしたことは事実でございます。

○大橋巨泉君 事実を認めていただければそれだけで結構です。あとは国民が判断することだと思います。

 さて、私は今回こういうことで参議院議員に立候補いたしましたが、昨年、それまで拘束式だった比例代表区の選挙方法を非拘束式になさって、野党は反対したんですけれども、多数でお通しになった。通ったんですから仕方がないんですが、通ってそれを実際は実施するんでしたら、それなりのスムーズに選挙が行われる対策を講じるのが政府の使命だと思うんですが、私、立ってみて驚いたのは、七万枚ポスターをもらって、張れといったって張るところがないんです。それはそうですよね。この前は十四の政党だけだったのが今度は二百九人立ったわけですから、ちゃんと正式に公平に平等に置くところがない、張るところがない。おそば屋さんに頼んだり、おすし屋さんに頼んだり、全国から僕のホームページに来た方に、ボランティアの方に張っていただいたり、それでも半分残りました。

 ところが、高祖憲治さんを初めとするああいう特殊な団体の支持団体から出た人は足りなかったそうです。大橋巨泉でも半分余ったんですから、もう千枚ぐらいしか使えなかった人がいたって聞きました。

 これで選挙は平等に行われるとお考えですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 選挙をやってみられるとわかると思うんですが……(「マイク、マイク」と呼ぶ者あり)マイク入っているの。入った入った。

 選挙をやってみるとわかると思うんですが、選挙というのはいろんな方が出るんですよ。強大な全国的な組織から応援される方、あるいは小さな組織から応援される方、どんな組織もない、しかしテレビに出て顔を売っている方、テレビにも出ないで全然顔が売られていない方、いろんな方が出るんですよ。最終的には国民が選ぶわけですよね。それで決まっていくのが国会議員ですから、どういう組織にあるから出ろとか、どういう組織じゃないから出れないとか、なかなか最終的には選挙民、有権者が決めるわけですから、なかなか難しいですね。それで、その時勢に合った、その選挙制度に合った人が当選してくるんですね。それはやっぱり選挙制度の宿命じゃないですかね。

 選挙で出たから決して優秀なわけでもない。国会議員になったといっても、ならない人の中に優秀な人たくさんいますよ。ところが、それは選挙が苦手なだけであって、選挙運動が嫌いだ、選挙運動が苦手だけれども、選挙運動が好きで当選してくる人よりもはるかに優秀な人がたくさんいますよ。しかし、選挙を経ないと国会議員になれない。これがやっぱり民主主義なんですね、残念ながら。

○大橋巨泉君 いや、僕が伺っているのはそれじゃなくて、やはり平等にポスターを置く公式な場所をこの選挙制をとった限り政府はしなきゃいけないんじゃないかと伺っているんです。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) そういう一定の場所にしかポスターが張れないというのも一つの公平な方法でしょう。あるいは、勝手に自分で張りなさいと、枚数の制限をやれというのも一つの方法でしょう。幾つかの、演説会を勝手に決められるよりも好きなだけやりたい人がいいというのもたくさんいますから、制限されるのが嫌だという人もいますから、それぞれの国の、あるいは地域の選挙の、市会、県会、国会、参議院、違ってくると思いますね。それはどれが選挙運動としてあるべき姿かというのは、やっぱり国会議員でも地方議会でも決めているわけであって、どれがどれでなければならないというのはその時々の事情によって違ってくると思います。

 現に、参議院の全国区のころ私も知っていますけれども、この全国区じゃ一人で全国を相手にするのはもう残酷区だということで比例名簿にしたんですよ。いいな、これでいい制度ができるなと思ったら、比例制度というのは出たい人よりも出したい人を出すんだと、何回か運営してみたらとんでもないですよね。出たい人は出ない、出したくない人が出てくる場合もある。そして、もう順位を決めるのに、各政党、すさまじい争い。同じ制度というのは思うようにいかないなというものを何回も考えていますよ。感じますよ。しかし、その都度いいと思ったのは思うように趣旨どおりに発揮できない場合もあるので、だからこそ完璧な選挙制度はないと言われるゆえんだと思うんです。

○大橋巨泉君 でも、やはりベストのものを考えて、いろいろ政府も考えていらっしゃると思うし、この非拘束式名簿方式というのは必ずしもベストではないと総理もお考えですね。──はい。

 それで、どうしたらいいかということも考えるべきだと思うんです。私は、一つは道州制みたいな形のブロック方式、これならば残酷区にならないだろうし、そんなに金も要らないだろうし、もう一つは、せっかくIT、前の総理大臣からもうIT、ITですから、このIT時代を利用してインターネットを使ってやれば全国区も不可能じゃないんじゃないかと。あの残酷区とか五当四落とか言われた時代はインターネットないですから。このインターネットを使った全国区方式というのはかなり平等だと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(片山虎之助君) 今、大橋委員御指摘のように、現行の公職選挙法ではインターネットを使ったホームページや電子メールで選挙運動をやることは禁止されていると、こういう解釈、運用なんですね。

 そこで、今お話しのように、五年後には世界で一番進んだIT国家にする、IT革命の推進を力いっぱいやろうと、こういう時期ですから、やっぱりインターネット利用というのは私も考えなきゃいかぬと思います。ただ、今のいろんな状況を考えますと、匿名性で大変な悪用をされるおそれがあるんですね、いっぱい。いろんな混乱が起こる、非難中傷がもう盛んになると。

 そういうことで、総務省の中にこのインターネット利用の研究会をつくりまして、きょう実はその立ち上げの初日なんですよ。ぜひそこで専門的な立場からいろんな御議論をいただいて、ぜひそれを選挙運動に取り入れたいと、こう思っておりますが、いずれにせよ、選挙制度は、総理の答弁にもありましたが、各党各会派が十分この国会で御議論いただいて結論を出していただくというのが今までのやり方ですから、ぜひそれもよろしくお願いいたしたいと思います。

○委員長(真鍋賢二君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。
 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時五十三分休憩
     ─────・─────
   午後一時一分開会
○委員長(真鍋賢二君) ただいまから予算委員会を再開いたします。
 予算の執行状況に関する調査を議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行います。大橋巨泉君。

○大橋巨泉君 先ほど時間がなくなってしまいましたので、選挙法に関するのを一つだけもう一つ。

 今回のテロについても、総理はいつも自由と平等の民主主義を守るためにということを何回もおっしゃっていますが、やはり民主主義社会においては機会の平等というのは大事だと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) そうですね、機会均等、これは大変大事な原則だと思います。

○大橋巨泉君 そこでですが、日本は石を投げれば二世議員に当たると言われるぐらい、世界では異例なことなんです、これは。僕の住んでいる外国へ行っても、おやじも議員、せがれも議員というのは例外的な存在で、総理のことを言っているんじゃないですよ、その一例なだけなんですが。やはり今の日本の、特に小選挙区制では、父親の地盤を継いで出るということは、ほかにいろんな出たい人がいても非常に不利であると。

 もちろん、議員のせがれさんに被選挙権もあるし、選挙に出る自由はあるわけですが、少なくとも親とか、そういう一親等というんですか、一親等の地盤からの立候補みたいなものは機会の平等に反するんで、制限するというようなお考えはありませんか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは最終的には選挙民が決めることであって、私は、制度というよりも有権者の意思がそう決めるんだから、そこまで制限する必要ないんじゃないかと思っております。

○大橋巨泉君 うちの党首の鳩山さんも三代続いた議員ですが、あの方はお父さんの地盤から出ていないんですね。北海道へ行って、この間落ちそうになっていましたけれども。

 ですから、僕は、出るなと言っているんじゃなくて、同一選挙区というのさえある程度制限すればいいんではないかと思いますが、何か今いろいろ選挙制度について自民党さんも考えていらっしゃるらしいんで、中選挙区よりもそっちの方を考えていただいたらと思います。

 さて次は、時間も余りないんで、環境問題について聞きたいんですが、今一番問題になっているのは地球温暖化。総理は、御自分の身近で地球温暖化だなと感じたこと、最近ございますか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 子供のころといいますか、私が小学生のころ、もっと冬というのは雪が降りましたよね。最近余り雪が降らなくなった。降ったとしても積もらない。そういう点も、だんだん寒くなくなってきたのかなという感じもあるし、夏の暑さ、ことしは特に非常に暑かったですよね。随所で温暖化、寒さが減ってきたなという感じは感じますね。

○大橋巨泉君 環境大臣、いかがですか。お感じになったことありますか。

○国務大臣(川口順子君) 実感といたしまして、最近温暖化が進んでいるのではないかというふうに思っておりますし、現に統計を見ましても、暑い日、二十世紀を通しまして暑かった年というのは、一九九〇年代あるいは一九八〇年代に集中しているということもございます。

○大橋巨泉君 私、一応環境委員をしておりますんで、これだけはどうしても入れたかったんですが、私も大体、総理や川口さんぐらいのつもりだったんですが、ことしの夏、選挙が終わってから、あんまり疲れたんで山中湖へ三日ぐらい行っていたんです。そのときに、タクシーの運転手さんに、ああ巨泉さんしばらくですねと言うから、僕は二十年ぶりだと言った。二十年前に11PMの撮影で、氷を割ってアイスフィッシング、ワカサギ釣る、あれで来たんですよと言ったら、いや、巨泉さん、もうこの十年間、山中湖はアイスフィッシングなんかできませんと。ひどい年は氷張りませんて、あの山中湖で。ということは、ああ、これはすごい温暖化なんだなと実感いたしましたが。

 さて、その京都議定書の問題のときに、総理は、これはアメリカを置いていけないんだと、忍耐強くアメリカを説得していくんだとおっしゃっていましたが、今でもそのお考えでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) この問題では、何とかアメリカの協力を取りつけることが温暖化防止に最も効果的な方法だと考えて、懸命に説得しております。

 特に川口環境大臣に、いずれ答弁していただきますが、あの七月、サミット前後での世界各国との協議、もう徹夜に徹夜に次ぐ協議、何とか各国が合意できるような方法はないものかと努力していただき、いまだに私は、アメリカも何かいい案を出してくれと日本政府としては催促もしております。

 最終的には、一番温暖化の要素の、いわゆる関係ガスといいますか、それを出しているのはアメリカでありまして、このアメリカが協力してくれないと効果が随分小さくなってくるものですから、発展途上国、アメリカ、各国が協力できる方法はないかと、まだあきらめないで、粘り強い努力を続けていきたいと思います。

○大橋巨泉君 そのお考えは大変甘いと思います。
 今、ブッシュさんの片腕と言われているコンドリーサ・ライスという補佐官がいますね。これはもう大変な、十五歳で大学に入ったという大天才なんですが、この人は、この人の持論としてはっきり、アメリカの経済にマイナスになるようなことはしない、各国の妥協で実効性のないようなものにはサインしない、これが彼女の基本方針で、ブッシュさんは彼女の言うことをちゃんと守っていると事実が伝えています。この京都議定書だけじゃなくて、世界人種差別撤廃会議、核拡散防止条約、小型武器売買禁止条約、これなんかに対する態度を見ても、絶対にアメリカの経済の不利益、アメリカの不利になるようなことはやらない。

 ということは、今、総理がおっしゃったように、一番出しているのはアメリカですから、あれを、京都議定書にサインしちゃうと、アメリカの経済、大マイナス。やらないと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(川口順子君) アメリカは、先ほど総理がおっしゃられましたように、最大の排出国でございますので、私どもは、日本だけではなくて、実はほかの国もアメリカに向けて、参加に向けて働きかけを行っているところでございます。

 なお、アメリカは温暖化問題については非常に関心を持っておりまして、私が九月の初めにアメリカに行って働きかけをいたしましたときにも、温暖化ガス対策ということで国際的にエンゲージすることが必要だという方向でさまざまな議論をいたしておりました。引き続き働きかけをするつもりでございますし、また二〇〇二年の発効に向けて、来るCOP7で最大限の努力をするつもりでおります。

○大橋巨泉君 いつになったら、アメリカの説得は不可能だと思って、EUその他の多くの国と一緒に、日本が批准すればこれは通っちゃいますから、それに決断するいつがデッドラインでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 先ほど申しましたように、日本は二〇〇二年の発効に向けて、来るCOP7の会合で合意に向けて最大限の努力をする所存でございます。アメリカへの働きかけはとことん最後の最後までやる必要があるというふうに思っております。

○大橋巨泉君 聞いているのは、その最後の最後までのデッドラインを伺っているんです。いつでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 最後の最後までと申し上げましたけれども、最後の最後までということでございまして、同時に我が国は、アメリカとの間では、国際的な合意の過程をアメリカとの、働きかけとの関係でおくらせるということはしないということも申し上げております。

○大橋巨泉君 最後の決断は総理ですから、どうぞ総理に聞きます。デッドラインはいつですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは六月で終わった通常国会でも同じような質問が出て、同じような答弁をしたんですよ。あのとき七月がデッドラインと言っていました、みんな。デッドラインになっていないでしょう。最後の最後まで発効に向けて努力する、実にすさまじい駆け引きをやっています。EUも一枚岩じゃありません。よく川口大臣も知っていますけれども、経済への影響、環境への影響、一筋縄じゃないんです。最後の最後まで努力をしたいと思っています。

○大橋巨泉君 時間がなくなってしまったんですけれども、最後の最後までということはよくわかりました。

 それでは後方支援の問題も、最後の最後まで粘り強く各国と話し合って、何も急に拙速に新法などつくる必要はないと、僕はそう思うんですが、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは全く新しい事態に国際社会が協力してテロ根絶、防止に当たろうとする、これはできるだけ日本の国力を最大限生かして協力したい。そのことが日本の国際社会の中で責任を果たす一つの大きなゆえんであるということからやっております。別に拙速ということじゃありません。できるだけのことをやろうということでございます。

○大橋巨泉君 先ほど言いましたように、外国の新聞を読んでいますと、十一日からきょうまで、フランスがどうした、イギリスがどうした、ロシアがどう答えた、いろんなことが載っていますが、日本がどうしたということはほとんど載っていないんです。総理も言っているように、ブッシュさんはあなたに自衛隊を送ってくれとかなんとか言われたことは一度もないとこの前本会議でおっしゃっていましたけれども。

 ですから、できることをすればいいので、新法をつくらなくてもできる範囲があるのではないかと、私はそう思うんですが、時間が来たのでこれまでにいたします。
 ありがとうございました。


2001/10/09

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