2001/06/20 |
鳩山代表VS小泉首相・党首討論第3回
「京都議定書批准は新しい価値感発信の絶好の機会」
鳩山由紀夫代表と小泉首相の3回目の党首討論が20日、参議院第一委員室で行われた。鳩山代表は、前回にひき続き、地球温暖化防止のための京都議定書を日本政府が批准するよう強く求めた。
議論の冒頭で、鳩山代表は「21世紀はこれまでのような経済成長至上主義ではなく、新しい価値観が世界規模で求められている」と骨太な議論を展開。その象徴が京都議定書だとして、鳩山代表は「経済大国の日本だからこそ、率先して批准すべきだ」と強い口調で求め、「21世紀の新しい価値感を世界に発信できる絶好の機会でもある」と主張した。
これに対して小泉首相は、6月30日の日米首脳会談までに検討すると述べただけで、自らの考えは示さなかった。鳩山代表は「アメリカが批准しなくても、効果はある」「アメリカはノーでも日本はイエス。経済成長資本主義から新しい価値観を見出す絶好の機会を逃すな」と重ねて訴えた。
●民主党若手が調査したら3日で解決
鳩山代表は続けて、外交機密費問題に言及。「外務省改革を叫ぶ田中真紀子外相だが、官房機密費問題については歯切れが悪い」「お上意識の残滓(ざんし)が機密費の問題だ。塩川正十郎財務相のように『忘れた』とか『30年後に話す』との答弁は許されない」と批判し、「機密費の調査を民主党の若手(議員)にやらしてもらえれば、3日あれば解明してみせる」と迫ったが、小泉首相は、「わが党、わが政府において責任をもって対処する」と拒絶。さらに、鳩山代表は「民主党は10年、20年後に(機密費の中身を)必ず公開する。使途も限定して大幅に削減する法案を提出した。賛成してもらいたい」と提案したが、首相は「公開できないから機密費だ。明らかにできないものもある」と前向きな姿勢を見せなかった。
●天下り禁止議論はかみ合わず
さらに鳩山代表は、「機密費より百倍税金を食べているのが(天下りする役人の)渡り鳥だ。7年間で特殊法人、公益法人に1000人を超える人が天下りしている。ある公団理事長は時給43万円で首相の2万円よりかなり大きい。この実態をどう考えるか」と、天下りの問題を追及。小泉首相は「行政の構造改革は私が長年主張してきたこと。ゼロベースでの見直しは小泉内閣になって初めて本格的に動き出している」と主張したが、話は次第に「郵政3事業の民営化こそ特殊法人の大元だ」と声高に叫びはじめるなど、脱線しはじめた。
鳩山代表が、「天下りに十分なメスが入れられていない。自由、社民両党と協力して特殊法人、公益法人への天下りを五年間禁止する法案を準備して今国会中に提出する。賛成してほしい」と迫ったが、首相はこの問題に触れずに、「なぜ特殊法人、公益法人のことばかり言って郵政三事業のことを言わないのか」と持論をひたすら展開するだけだった。(民主党ニュース・トピックス)
○会長(堀之内久男君) これより国家基本政策委員会合同審査会を開きます。
本日は、私が会長を務めさせていただきます。
国家の基本政策に関する件について調査を進めます。
これより討議を行います。
討議に当たりましては、申合せに従い、野党党首及び総理は、配分時間を厳守し、相互の発言時間を考慮しつつ、簡潔に発言を行うようお願い申し上げます。
発言の申し出がありますので、順次これを許します。鳩山由紀夫君。
○鳩山由紀夫君 総理、私はこう思います。
日本という国は、歴史が動くときに、いつも過去に対してあいまいなまま、結論を出さずに次に進んできたのではないか、何が正しくて何が間違っていたかを必ずしも明らかにしないまま、歴史を動かしてきたんではないか。そのツケが今国民に押しかけてきているんだとすれば、大変な問題だと思うんです。
すなわち、小泉総理、真の構造改革というのは、私は、過去のあいまいさから決別することからスタートしなければいけないと思いますが、イエスかノーで、どうぞお答えいただきたい。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) あいまいさと決別すべき問題もあるでしょう。あいまいさがいい問題もあるでしょう。それは、その時々、事案ごとに判断すればいいものではないか。継続すべきものと断固打破しなきゃならないものがあると同じように、具体的問題を提起していただければ、それについてお答えしたいと思います。
○鳩山由紀夫君 非常にあいまいな御答弁をいただいたわけでありますが、それでは、具体的にお尋ねをしてまいりたいと思っています。
まずは、京都議定書の問題からです。
なぜ私が二週間連続で京都議定書の話を申し上げるのか。それは、私は、二十世紀から二十一世紀、新しい世紀に移った。日本だけではなくて世界も、新しい価値観、経済万能主義、あるいは経済効率主義、あるいは経済成長至上主義、いろいろ言われますが、何でもかんでも経済が先に来た世の中から、新たに、例えば資源そのものも大変な制約がある、その中で経済活動をしていかなきゃならない。大きな新しい制約条件のもとで、この国や世界を動かしていかなきゃならない。そういうときに、京都議定書、新しい価値観を求めた動きが出てきたんだと私は思っています。
先日、田中外務大臣がパウエル国務長官にお会いになりました。そこで、パウエル国務長官から、経済が悪化するから、だから京都議定書はのめないというような話があったと承っています。
私は、そのような古い価値観ではなく、新しい価値観のもとで、日本が、経済大国なんですから、まず率先をして批准をすべきだというふうに思います。改めて総理の決意を伺いたい。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私も、環境問題、重視しているということはおわかりいただけると思うんであります。
そういう中で、どうして効果的な対策が打てるかということを考えますと、各国ができるだけこの協定に、締結に向けて参加してくれればいい、今その努力の真っ最中であります。川口環境大臣を中心にいたしまして、今、米国との関係、EUとの関係、発展途上国との関係、非常に微妙な難しい段階に来ております。私は、この問題、できるだけ多くの国が実効ある対策を打てるような形にどういう方法があるか、今苦心惨たんしているところでございます。
この前も、先週も、この党首討論で議論がありましたように、米国への働きかけをあきらめるのはまだ早いのではないか、粘り強く努力を傾注していきたいと思っております。
○鳩山由紀夫君 この間に相当事態が変化をしてまいりました。EUとアメリカの間では、もう合意はできなかった。アメリカは京都議定書を批准するつもりはさらさらないということが明らかになった。でも、私どもは、だから日本が率先して批准をすべきだというふうに申し上げているんです。アメリカが批准をしなくとも効果はあるということが判明をしています。生死はむしろ日本が預かっているんだというぐらいに思っていただいて、だから、日本が批准することによって、新しい価値観を日本がまず最初に世界に向けて示す必要があるんではないか、私はそう思います。
六月三十日が首脳会談だというふうに承っておりますから、その日までに決断をぜひなさっていただきたい、重ねてお願いします。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 外国との交渉には非常に粘り強さが大事であります。私としては、今鳩山代表が言われたようなことも含めて、各国の本音と建前があります、その点もよく見きわめながら、まだ、六月三十日、首脳会談まで時間がありますから、じっくりと検討し、判断の材料、間違えないような判断をしなければいかぬと思いますので、私は、今まだどうするかという結論を出す段階にはないと思います。
○鳩山由紀夫君 私はあえて、二十世紀から二十一世紀へ入って、日本が新しい価値観を世界に向けて打ち出す絶好のチャンスだと、そういう思いで、ぜひ日米首脳会談において正しいメッセージを発していただきたい、そんなふうに願っているんです。
私たちは、だから、くどいようですが、アメリカがノーでも、日本は京都議定書イエスだと、その覚悟で臨みたい。経済成長至上主義から新しい価値観を見出す絶好のチャンスのときをぜひ総理がつかんでいただきたい、重ねてお願いをしておきます。
そこで、もう一つ問題があります。
経済成長至上主義のときには、確かに行政は中央集権の方が効率がよかった。だから、行政が肥大化をしてきた。行政自身が問題を起こすようになった。知らしむべからず、よらしむべしと、今でもお上という意識が国民の中に残っているし、私たち政治家の中にも残ってきてしまっている。その、ある意味で残滓が機密費の問題だと私は思っている。
この機密費の問題に関しては、お隣におられます、塩じいと言うと失礼なのかもしれませんが、塩川財務大臣、忘れたとおっしゃったら、今度は、三十年後にお話しします。忘れてないことじゃないですか。私に聞くのは勘弁してくださいなどという答弁が許されるはずもありません。
田中眞紀子外務大臣もこの件では大変、外務省と悪戦苦闘されておられるようです。官房機密費への上納問題に関してはどうも、でも歯切れがよろしくない。何か怪しいと思っておられるんだと思うんですが、お役人に聞いた、先輩の議員に聞いた、なかったと言ったからないのでしょうと。それでは許されないと私は思います。
どうですか、調査を私たち民主党の、若手がたくさんいますから、この若手議員をお貸しいたしますから、ぜひ調査、解明、私たちにやらせていただきたい。私たちなら、三日間あれば、この問題、解決してみせます。いかがですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは党首討論で、私に質問でしょう。田中大臣に質問じゃないでしょう。
これは、我が党においても、我が政府でもって責任を持ってやります。民主党にいろいろな意見があると思いますが、我が政府として責任を持って対処いたします。
○鳩山由紀夫君 いつまでたってもらちが明かないから申し上げているんです。これは、田中外務大臣のみならず、官邸に対する上納問題ですから、あなたが、官邸自体が巻き込まれている話だという御理解をいただかなければいけない。
私どもは、したがいまして、機密費に関しては徹底的に情報の公開を求めていきたいと思います。十年から二十年後には必ず公開をする、そして、使途を限定して大幅に削減する、そういう法案を私どもはもう既に提出をいたしましたから、ぜひ総理も、この法案、会期はあとわずかですが、賛成をして、超党派でやろうじゃありませんか。いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) その問題についても、政府として今真剣に対処しているわけですし、機密費というのは、公開できないから機密なんですよ。情報公開にしても、情報公開すべきものと情報公開できないものがあるのは、鳩山代表も御存じだと思います。
ですから、今までの機密費の扱い方について十分でない点はあったということは認めます。公開にすべきものもあると思います。しかし、機密費であるという限りは、どうしても明らかにできないものがあるということを御承知いただきたい。
○鳩山由紀夫君 私どもの法案の中でも、よくごらんになっていただくと、すべてを二十五年たって公表しろということではありません。そのときにもまだ公表すべきでないものがあることは認めています。しかし、大方の情報に関しては、十年から二十五年たてば、おおよそ公表しても十分であろうと。そのぐらいの年月がたてば大丈夫だろうと。
塩川財務大臣は三十年とおっしゃいましたが、今から三十年、ぜひ御長命でいただきたいと思っていますが、そのように、当然のことながら時間のかかわりの中で、必要なものを、しかし必ず、国民の皆さんに非公開であっても公表する場というものを求める必要があるというふうな法案を私どもは用意していますから、ぜひそのような内容を皆さん方にも理解をしていただいて、我々が出した法案だからほとんど意味がないなどとおっしゃらずに、正しい法案なら審議をしていただきたい。改めてお伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 法案は国会で審議していただきたいと思います。
○鳩山由紀夫君 積極的なリーダーシップを総裁として発揮していただきたいと心から願います。
それでは、この機密費よりも実は百倍も税金を食べている話をいたします。
渡り鳥の一生の話でございます。
この渡り鳥、くちばしがありませんから虫は食べれないんですが、税金を食っています。この渡り鳥、羽はないから飛べないんですが、しかし、自由自在に実は飛び回っています。
ある渡り鳥の一生の話を申し上げます。
その渡り鳥は、現在も御存命ですが、大蔵事務次官を退官した後、この十五年間の間に何と四回天下りをされています。四回の天下り、十五年間で、大体見積もりで五億円、退職金とそれから給料で払われているんです。こういうのが実態です。
全体を申し上げると、特殊法人、公益法人合わせて七年間で千名を超える方が天下りをしています。大変な数です。九八年一年だけでも二百四十二名天下りをしています。この実態をどのように感じておられるのか。
ある公団の理事長は、時給ですよ、時給四十三万円という計算になりました。総理の給料は時給二万円でございますから、かなり大きい。こういうむだ遣いがなされている実態をどのようにお考えになられるか、お聞かせを願いたい。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 行政改革、財政構造改革、聖域なき構造改革、私が一番やらなきゃならないのはその行政の構造改革だ、長年主張してきたことですよ。特殊法人、ゼロベースで見直すと言っている。小泉内閣になって初めて本格的な機運が出てきたと私は自負しております。
今まで、私は郵政三事業民営化を主張してきました。それは、特殊法人の大もとじゃないですか。本丸にだれも手をつけなかったことを私が言ったんでしょう。今まで、行政改革というと、特殊法人ちょっといじっただけ、二つ三つ合わせて、仕事は減らない。一番本丸に入れたのが小泉内閣ですよ。(発言する者あり)私は、何もしていないというのは、これから初めて本格的になるんだ。(発言する者あり)天下りも含めて、郵政三事業のあり方も含めて、特殊法人をゼロベースで見直すことも含めて、公益法人の天下りも含めて、すべて本丸でやろうというのが小泉内閣じゃないですか。どの政党よりも、どの野党よりも一番熱心なのは小泉内閣じゃないですか。民主党の人も主張している。自民党でもできなかったことをやろうとしているのが小泉内閣なんですよ。小泉内閣、小泉が総理になったから初めてこういう議論ができるんでしょう。野党の皆さんも、こういうことを今まで国会で触れることができなかったじゃないですか。
私は、本格的にやるということを再三再四言明しております。ぜひとも鳩山代表も応援していただきたいと思います。(発言する者あり)
○会長(堀之内久男君) 御静粛に願います。
○鳩山由紀夫君 特殊法人の改革に関しては、大いになさっていただきたいと思いますし、私どももかねてから主張してきた問題です。
ただ、特殊法人のみならず、実はそれよりもはるかに根っこが深いのが公益法人というもので、そこにどんどんと補助金がおりて天下りがあるのです。そこが、特殊法人が最近批判されていますから、むしろ公益法人が天国のような状況になっている。
天下りの問題、その団体先にお金も出、仕事も出る。だから、結果として公正な競争が妨げられてしまっている。まだ、官僚国家の聖域の部分に対して必ずしも十分なメスが入れられていない。先ほどお話をされましたが、天下りに関して必ずしも十分なメスが入れられていない。ぜひそれも期待をしたい。
私たちは、自由党そして社民党と協力をしまして法案を準備中です。この国会中に必ず提出します。それは、特殊法人と公益法人あわせて、ともに天下りを五年間禁止するという法案です。賛成してください。お願いします。(発言する者あり)
○会長(堀之内久男君) 静粛に願います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、民主党の鳩山さんよりも、どの野党よりも、一番本格的なことをやろうとしているのですよ。
なぜ、特殊法人、公益法人ばかり言って、郵政三事業のことを言わないんですか。三十万人の役人に振り回されて、今まで本格的に手をつけられなかったんじゃないですか。選挙で応援してくれる、いまだに郵政民営化を言えないでしょう、皆さん。私だけですよ、言っているのは。だから、これは、特殊法人を本格的に改革するんだったら、公益法人を本格的に見直すんだったらば、郵政三事業という本丸に手を入れない限りできないんだと言っていたのは私じゃないですか。いまだにはっきり言えないでしょう。私みたいにはっきり言えない。どの野党も言えないじゃないですか。
民間にできることは民間に任せよう、財政投融資制度から特殊法人についても、今、石原行革担当大臣にはっきり言っています、徹底的に、中途半端なことはしないでくれと。思い切りやってくれと。民間にできることは全部民間に任せると。その趣旨で野党が賛成するかどうか、私は注目していますよ。私は、選挙で応援してくれるから黙っちゃう、そんな態度とりませんから。
国民のために何が大事か、税金をいかに有効に使うか、この視点から行政改革が大事であり……(発言する者あり)
○会長(堀之内久男君) 静粛に願います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 特殊法人改革が大事であり、公益法人の見直しが大事だと言っているんですから。私は他のだれよりも、この問題について今まで熱心に語りかけていたし、本格的にやるということを御理解いただきたい。
だれも言えないことを言ってきた。ようやく、小泉内閣だからこういう議論がオープンに議論されて、そして、皆さんが真剣にこの問題に取り組もうという機運が出てきたんだと思います。(発言する者あり)
○会長(堀之内久男君) 皆さん、静粛に願います。
○鳩山由紀夫君 天下りのことに関しては一切お触れになりませんでした。なさる気がないのかなと残念に思います。
郵政の事業の民営化の問題に関しては、一言申し上げれば、小泉総理の立場と私の立場は何ら変わっていません。全然変わっていません。そこだけは御理解ください。
あと時間がわずかになりましたから、総理のお得意の分野の靖国神社公式参拝問題に入りたいと思います。
靖国の問題、実はこれも、過去の清算がうまくいかないから今でも尾を引きずってしまっていると、情けない思いです。私は、総理と当然同じ、あるいはそれ以上に、私のじいさんの鳩山一郎がシベリア抑留者問題で力を注いだだけに、戦没者の慰霊をする気持ち、その人たちのもとにこの国があるという感謝の気持ち、そして二度と戦争を行ってはならないという平和に対する気持ち、人後に落ちない、私はそう確信をしている。その私の思いからして、しかし靖国神社の公式参拝は、全く反対です。これだけはやってはならない。アジアの国々、まだ痛みからいえていません。その人たち、合祀の問題があるだけに、また傷口に塩を塗られるのか、大変つらい思いです。
でも、それよりも、私はむしろ憲法の問題も取り上げなければならない。憲法二十条、国家が政治活動をしてはならない、それに対する疑いの思い、失礼、宗教活動をしてはならない、その疑いが極めて強いと言われている。その中であえて総理が靖国公式参拝、私は、決してすべきではない。
最後に、私どもから提案をしたい。
田中外務大臣がアーリントン墓地に行かれた。私は、大変すばらしいことだったと思う。気持ちがみんな和んだ。そのように、海外の人たちも、多くの人たちが、戦没者の慰霊、他国であっても……
○会長(堀之内久男君) 時間が参りました。簡潔にお願いします。
○鳩山由紀夫君 訪れるような環境をつくるべきではないかと私は思っています。
千鳥ケ淵の墓苑の拡充でもいいと思いますが、国立墓地というものをつくって、政府が堂々とですよ、堂々と、公的だとか私的だとか区別をしなきゃならぬとか、わけのわからないことではなくて、堂々と参ることができる施設をつくろうじゃありませんか、そうすることによって戦後の清算ができるんですから。総理、やろうじゃありませんか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 千鳥ケ淵墓苑をさらにより立派なものにしていこうということについては、私はいいと思います。
靖国神社に私が参拝すると言っているのも、二度と戦争を起こしてはならないと。心ならずも戦争に行って亡くなった方々、こういう犠牲の上に今日の平和と繁栄があるんだという気持ちを込めて、私は、戦没者の方々に敬意と感謝を表するとともに、我々政治家として、二度と戦争を起こしてはならないという誓いも込めて、靖国神社に参拝するということを改めて申し上げます。
○会長(堀之内久男君) 鳩山由紀夫君、もう時間です。
○鳩山由紀夫君 人間小泉純一郎の気持ちはわかりますが、総理小泉純一郎としては、その考え、私は失格だと思います。
終わります。
○会長(堀之内久男君) これにて鳩山君の発言は終了いたしました。
次に、志位和夫君。
○志位和夫君 きょうは、介護保険の問題について質問します。
十月からお年寄りの保険料が二倍になるもとで、今大変な矛盾が噴き出しております。総理は、介護保険がつくられたときの厚生大臣です。私も予算委員会でたびたびこの問題を取り上げてまいりました。私の質問に対して、当時の小泉さんが、保険あってサービスなしとしてはならない、それから、基盤整備の充実はしっかりやらなきゃならない、こうお答えしたことを今思い出します。
しかし、実施一年三カ月たった現状はどうか。例えば、特別養護老人ホームの入所待ちの待機者の数は急増しております。最近、幾つかの県当局が独自の調査を行っておりますけれども、保険導入前に比べた待機者数は、兵庫県で二・〇倍、奈良県一・八倍、千葉県四・七倍、東京二十三区のうち十七区の調査で一・七倍。どこでも待機者が大きくふえております。保険導入前には全国で大体、待機者の数、十万人でしたから、全国的にはおよそ二十万人の方が待機者として苦しんでいると推定されます。
政府は、介護保険というのは利用者がサービスを選べる制度だと説明してきましたけれども、保険料を取っておきながら待機者がどんどんふえるというのは、これは契約違反と言われても仕方がない現状ではないか。この現状について、総理はどう認識されているか、まずお答えください。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、この介護保険制度を導入するときの厚生大臣でありました。共産党は反対されました、全部税でやれと。私どもは、税と保険料、半々でやると。しかしながら、今一年たってみて、共産党の調査と違いますね、我々の調査は。
利用サービスの満足度、七県二市、一万一千百八十一人の調査で、介護保険を利用された方々の意識。満足された方が五四%、ほぼ満足が三二%、不満が一%、やや不満が四%。いわば大体満足している方が八六%。私の内閣の支持率よりも高いですよ。不満が五%。そして、この制度の効果、よかったなと思うのは、介護する方々の介護の負担が軽減された、これが一番多かった、三七%。そして、介護する方々の気分転換ができるようになった、この制度の導入によって。これは二八%。そして、介護する方々の外出の機会がふえた。さらに、在宅生活が楽になった。気兼ねなくサービスが利用できるようになった。いわば、おおむねこの制度に多くの方々が理解を示してくれているなと。
これは、まだわずか一年しかたっておりません。今後、二年、三年、実施していくうちによって、不備な点、あるいは整備されない、出てくるでしょう。そういうことを改善していけば、私は、これは定着し、多くの国民からまさにお互いが支え合う制度なんだという、制度として定着していけるものと期待しております。
○志位和夫君 私が聞いた待機者の問題については一言もお答えになりませんでした。
そして、私たち、全部税でやれとは言っていませんよ。保険と税を組み合わせて、低所得者の方も排除されないような制度をつくるべきだということを私たちは提案しました。
それから、今総理が出された数値は、利用されている方の満足度の、しかも一部の数字だと思います。私、逆の数字出しましょう。日銀が調査を三月にやっております。介護保険の導入で老後の不安はどうなりましたか、この問いに対して、不安なままという方、不安が増したという方、合わせて七九・二%ですよ。国民の皆さんは、この問題、高過ぎる保険料、利用料、サービスの不足、これはやはりみんな不安を持っている。
私は、なぜ待機者が急増しているのかを真剣に考える必要があると思います。一つは、やはり特養の数が足らない。もう一つは、在宅介護の利用料が重過ぎるために必要なサービスが利用できず、これまで在宅介護をやっていた方が困難になり、やむなく施設への入所を申し込んでいらっしゃる。こういう流れが強まっている。ことし二月に行われた朝日の世論調査でも、六二%の自治体が、自己負担を気にして在宅サービスの利用が抑制された、こう答えていますよ。
それから、二〇〇〇年度の在宅介護サービスの利用は政府の見通しを二割以上下回り、国民から集めたお金、三千億円も使い残してしまっている。つまり、利用料が重過ぎるために必要な在宅サービスが抑制されている。このときに、私、十月から保険料の満額徴収をやっていいものかどうか、これは真剣に考えるべきだと思うんです。
私たちは、三つの緊急の提案を行いたいと思います。
第一は、やはり特養ホームの待機者をきちんと政府として調べて、解消のための必要な計画を立てることです。第二は、利用料、保険料の減免制度を、政府としての責任を持ってしっかりつくる。それから第三に、その二つをやるまでは、十月からのお年寄りの保険料の全額徴収は凍結する。この決断をすべきだと思いますが、この点いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 先ほど、特別養護老人ホームの待機者が多くて、その整備がおくれているではないかという御指摘がありました。
平成十三年度において、特別養護老人ホームについては一万五千人分、痴呆性高齢者グループホームについては六百カ所の整備を予定しております。いろいろな不備な点もあると思いますが、少しでも充実していこうという努力をしているわけであります。
なおかつ、今お話しの中で、予算を全部使ってないじゃないかという話がありました。ここなんですよ。十分な要望にこたえられないと困るから、十分な予算を組んだんです。それで、初年度においては、確かに、給付実績を予算と比較してみると、在宅サービスでは八割強、施設サービスでは九割強で、大体全体としては九割程度の実績ですから、この水準は、全く新しい制度を導入した最初の一年間の数字としては、私は、まずまずの数字ではないか、今後さらにこの制度への理解とか認識が深まっていけば、利用は増大していくと思います。
そして、いろいろな意見を聞いて、お互いが、給付の裏には負担があるんだ、それぞれの市町村が今大変努力していただいている、この給付を受けるためにはある程度負担していこうという、本当の支え合う福祉制度というものの定着を図っていくならば、社会保障制度というのは本当に自分たちが支え合っていくものだなという理解も深まっていくのではないかと私は思います。
○会長(堀之内久男君) 志位和夫君、時間が参りましたので、簡潔にお願いします。
○志位和夫君 はい。
今特養ホームについて整備しているとおっしゃいましたけれども、二〇〇四年度までに、政府の計画どおりやったとしても、たった七万人しかベッド数ふえない。二十万人の待機者をどうやって解消するんですか。
それから、予算使い切っていないという問題について、これはもう当然だということを言いましたけれども、予算というのは、それはもう必要な介護だから予算を立てているわけでしょう。それを使い切れないというのは、もう利用料が重過ぎる、このことを示しているじゃありませんか。
私は、介護保険をつくるときに、政府が国の負担を二千五百億円も減らしたところに一番の問題がある、そういうやり方は本当にやめるべきだ、ここを正すべきだということを最後に主張いたしまして、質問にいたします。
○会長(堀之内久男君) これにて志位君の発言は終了いたしました。
次に、土井たか子君。
○土井たか子君 小泉総理は、八月十五日には靖国神社にもうでるということをおっしゃっています。
ところで、国賓で外国を訪問されるという場合、その訪問国の無名戦士のお墓に花をささげるというのは、もう今や国際的な慣例になっております。これは、国際的な慣例というのは、三木総理時代に既にもう国会での質疑応答の中での答弁にもはっきりおっしゃっている。
そしてまた、厚生省が、日本において国立の墓苑をつくらなければならないという閣議を受けた形で、四年前に監修をして出されている「援護五十年史」というのを見ますと、こういう部分があるんです。かなり分厚い五十年史ですが、いわゆる「無名戦士の墓」に関しては、いずれの国も、国民崇敬の霊域として、最大の敬意を込め、国としての深い心遣いが払われているのみならず、慣行としても、国際礼儀上の重要な一要素を伴っていると、これはよろしいですね。三度厚生大臣をお務めになった総理ですから、当然これはよくおわかりのはずの問題だろうと思いますが。
先日、外務大臣がアメリカを訪問された場合に、アーリントン・ナショナル・セメタリーにいらしたというのは、これは私は大変よかったというふうに思っています。総理もやがてこの月末には日米首脳会談に臨まれる、アメリカを訪ねられるわけですから、またこれに対してどう対応されるかというのが、実は国際的にやはり注目されますよ。
ところが、日本に来られる国賓は、戦没者の方々の慰霊のためにどこに行かれるんでしょうか、これ。靖国神社に御案内するわけにはどうもいかないようですね。なぜ私がそういうことを言うかというと、かつてニクソン副大統領が来日の際、靖国神社に御案内しようということを計画しておられたのが政府なんですが、これを断られました。イギリスのエリザベス女王は、靖国神社にもうでられるという計画を中止されましたよ。
そういうことから考えましたら、日本で国立墓苑というのがないんだろうかということになるわけですが、これはもう総理もよく御存じのとおり、先ほどは鳩山さんの御質問の中に少し出ましたけれども、千鳥ケ淵がそうじゃないんですか。千鳥ケ淵墓苑というのがそうではないんでしょうか。
私は、毎年八月十五日は、戦没者の方々に対して追悼の気持ちを持つと同時に、恐らくは、亡くなられた方々は、再び戦争をするようなことがあってはならないという、声としては聞こえることがないけれども、恐らくそういうお気持ちというのを私たちがしっかり受けて、生きている私たちがしっかり受けて頑張らなければならないという決意を新たにする日なんですよ。
千鳥ケ淵のこの墓苑のあり方が、したがって、外国から来られる方々に対して、ここでございますと、どうぞ、日本の国立墓苑はここでございますと言えるようにしないとならないと私は思うんですよ、本当に。
千鳥ケ淵の墓苑に対して、そこで申し上げたいことがあります。
私は、いつも千鳥ケ淵に、墓苑に参りますときに、六角堂の納骨室がその正面にあるわけですから、そこしかないと思っていたんですね。そうしたら、十年くらい前に約三十三万二千柱でここが満杯になりまして、そして、あふれる遺骨に対してどういう取り扱いをしたかというと、その六角堂の裏手につくられている納骨の施設、そこに納骨するという形になっているようであります。私は知らなかった。先日、その施設の処遇というのが、雨露をしのぐ屋根も献花台もないという粗末なものだということを知りまして、これは御遺族の皆さん方が憤りを込めて、これが果たして国立墓苑なんでしょうかとおっしゃるというのは、実に私は、胸が本当に痛みましたよ。
やはり、この国立墓苑というのを、日本としてはしっかりこれは取り組んで、外国からの国賓の皆さんに対しても、アーリントン墓地にいらっしゃると同じように、ここに対してやはり献花をしていただけるということにしないと、日本は、国際社会の一員として名誉ある地位を占めたいと思うと言っている国でしょう。これはどうですか、総理。ひとつそういうことについての御所見と、それから対応に対して聞かせていただいて、私は終えたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、千鳥ケ淵戦没者墓苑をよりよいものにしていこうという点については賛成です。しかし、千鳥ケ淵墓苑のあの施設は、御遺骨が御遺族に引き渡されない方々の御遺骨であります。
靖国神社は、これは日本国民の感情として、いわば戦没者に対する慰霊という、中心的な施設であるという受けとめ方が、いまだに御遺族の中に多いんです。これは、外国と違うところであります。そういう点も含めて、戦争にはそれぞれ国民感情があります。戦没者を追悼する方式にも、それぞれ国民によって違いがございます。そういう点も考えて、私は、戦没者に対する慰霊をどのようにすべきか、こういう点についてはいろいろ御検討していただく余地があるのではないか。
しかし、私は、厚生大臣のときにもパプアニューギニアへ行き、ラバウル島で、いまだに海に山に御遺骨のまま、御家族のもとに戻っていないたくさんの御遺骨の前に参拝してまいりました。モンゴルにおいても、戦争が終わった後、なおかつ、日本に帰りたいという気持ちを持ちながら帰ることのできなかった多くの御遺骨が眠っておられます。そこにも参拝してまいりました。そういう方々の無念の気持ちを思うと、二度と戦争を起こしてはならない。
靖国神社、靖国神社と言いますけれども、多くの日本国民の中にも、自分たちの戦没者の慰霊の中心的施設は靖国神社であるという方が多くいるということも事実でございます。そういう方々の心を無視することもいかがなものかと。
私が靖国神社に参拝するというのも、これは決して、第二次世界大戦を美化したり正当化したりするものではございません。二度と戦争を起こしてはならない、そして、心ならずも戦地に駆り出され、命を犠牲にした方々に対する敬意と感謝の誠をささげるために参拝するものでありまして、毎回毎回、靖国神社に参拝されることを非難する、非難する心情が私には理解できません。
○会長(堀之内久男君) 土井たか子君、時間が参りました。簡潔にお願いします。
○土井たか子君 はい。
一言申します。総理の今の御発言を聞いていて、一つ申し上げたい。
無名戦士と信教の自由というのをひとつ尊重してください。これを申し上げます。
終わります。
○会長(堀之内久男君) これにて土井たか子君の発言は終了いたしました。
次に、小沢一郎君。
○小沢一郎君 質問時間がわずかでありますので、総理の答弁の時間も考慮して、きょうはメモに従って質問させていただきます。
私は、先週、先々週と、二度にわたって私の主張を申し上げながら、総理が日本社会の将来あるべき姿をどのように考えているのかをお伺いしましたが、二度とも、質問に沿ったお答えをいただいておりません。改めてもう一度お伺いいたします。
日本は、明治以来、欧米先進国に追いつき追い越すことを目指して、強大な官僚機構により徹底した中央集権的政治、行政、経済及び社会構造をつくり上げてきました。このシステムが、明治以降戦後の高度成長に至るまで、我が国の経済発展に大きく貢献してきたことは否定できません。
しかしながら、今や内外の激変に対応できないまま、深刻な制度疲労に陥っていると思います。政治への不信、行政の肥大化、財政の悪化、不況の長期化、そして深刻な社会問題、これらの諸問題は、今日までのシステムが内外情勢の激変に翻弄され、機能不全に陥っていたことを示しており、まさに今、日本はがけっ縁に立たされていると思います。
この危機を克服するためには、官僚機構による規制社会、管理社会を根本的に改めて、自由で公平な、そして開かれた自立社会をつくらなければならない。それは、個人や企業がみずからの創意工夫に基づき、みずからの自己責任で自由に活動できる社会であり、個人の能力が最大限に発揮される社会であります。これこそが私は真の構造改革だと考えます。
この理念を実現するためには、官僚が民間や地方に過剰に介入し過ぎる今の仕組みを根本から改めなきゃいけないと思います。
この観点から、具体策として、第一は、先々週申し上げた特殊法人の廃止、民営化など、政府の事業、郵政事業も含めます、を民間に移すこと。また第二は、先週申し上げましたように、地方の自立を妨げている各種事業補助金を廃止して、一括して自主財源として地方に交付する制度にすること。さらに第三には、規制の撤廃、すなわち、民間の自由な活動を縛っているいろいろな事業法、銀行法、建設業法などの各種業法を廃止して、個人であれ企業であれ、自由な経済活動を原則とした社会の実現を図ること。これを私たちは主張しています。
これが自由党の目指しているあるべき日本社会の姿、すなわち、我々の主張する自立した個人の集合体としての自立国家日本の姿であると思います。そして、これが我々の言う日本一新であり、本当の構造改革であると考えます。官僚機構による規制社会、管理社会からの脱却、これなくして今日の日本経済の再建もありません。
そこで、総理に伺います。
総理は、日本社会のあるべき姿をどう考えておられるでしょうか。郵政事業を民営化するとか、地方自治体の数を千とか三百とかといった小さな個別のことではなくて、一体、総理はどういう理念に基づいて、どのような社会をつくろうとしておられるのか。スローガンではなく、基本的な総理のお考えをお伺いいたします。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 一、二分で言えというのもなかなか難しいんですが、今、小沢さんの言われた基本的な理念、目指すべき方向というのは、あえて異論を申し上げる必要はないと思います。ほとんど同じと言ってもいい、あるいは共感得るところ多い。
具体論、具体論と言っていますけれども、所信表明でも、今までも、結構具体論言っているでしょう。私、小沢さん以上に具体論言っていると思いますよ。
今、いろいろな御指摘でありますけれども、この方向においてさしたる違いがない。今後、日本というのが新しい時代に対応できるように、官から民、中央から地方へという目指すべき施策を今着々と現実的な課題にのせようとしている。そういう姿を見ていただければ、私はこれからも、今言ったような理念、方向に向かってともに協力できる分野がたくさんあるんではないか、むしろ今のお話を聞いて大変心強く思いました。
○小沢一郎君 今、総理の御答弁で、目指すところが同じだと、具体的にも同じだという趣旨のお話ありましたけれども、それならば、ぜひ総理に申し上げたいんですが、総理の責任は、ただしゃべる、話しするだけではそれはとどまらない、そして、皆さんは衆参で多数を持っているんですから、これが賛成だとなれば、総理のリーダーシップですぐに現実化できるわけですから、どうぞひとつよろしくお願いいたします。
委員長、終わります。
○会長(堀之内久男君) これにて小沢君の発言は終了いたしました。
以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。
2001/06/20 |