2002/04/10

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【党首討論】鳩山代表、改革に背を向ける首相を厳しく批判

 10日、参議院国家基本政策委員会の合同審査会において、今通常国会初の党首討論が行われ、民主党の鳩山由紀夫代表が国民に背を向ける小泉首相の変節を痛烈に批判した。

 主なやりとりは以下の通り。

「初心に戻りなさい」

鳩山代表 小泉総理、初心に戻りなさい。内閣が発足してほぼ1年で、国民の支持率は半分以下になった。これは国民が変わったんじゃない。あなたが国民の方ではなく、永田町の方ばかり向くようになったからだ。

小泉首相 支持率が変わろうが、改革への意志は変わっていない。自民党も、一部に異論があったが、私の改革方針を支持してくれている。私でなく、自民党が変わってきている。

BSE問題

鳩山 BSE問題で農水省の「重大な失政」を指摘する報告書が出た。武部農水相に対して、国民の7割が「辞めなさい」と意思表示し、与党の中からも責任を取らせるべきだという声が出ていたにもかかわらず、それを抑え込んだのはあなたではないか。

首相 総理をやれば、何をやっても批判が起こる。辞めれば済む問題ではない。(農水省)改革への強い意欲を買って続投を決断した。

鳩山 派閥の論理の中で判断しただけ。武部大臣の失政でどれだけ国民が傷つけられたかを考えれば、まずけじめをつけてからスタートすべきだ。

鈴木議員問題

鳩山 自分でいったんは“(鈴木議員は)けじめをつけるべき”と発言しながら、与党に言われてすぐにひっくり返った。本当は辞めた方がいいと思っているのではないか。それなら、野党の辞職要求に応えるべきだ。

小泉 (国会議員の)出処進退は、本人が決めることだ。

鳩山 いつから評論家になったのか。自民党で大事な役職を担っていた人なのに、すべて他人事のようだ。自民党総裁としてのリーダーシップが求められている。厳しく辞職を求めるべきだ。

小泉 (鈴木議員は)すでに離党している。

鳩山 そうやって鈴木議員をかばうから抵抗勢力に負けた姿が明らかになり、支持率を下げたことに気付くべきだ。

機密費上納問題

鳩山 田中真紀子氏が機密費問題で韓国TV局の取材に対して“外務省と官邸は本当は一緒”と言っている。官邸への機密費上納問題を究明せよ。

小泉 田中氏は機密費については問題ないと外相時代に言っている。

鳩山 田中氏は、官邸の裏金と外務省の機密費について外相時代に公開するつもりだったが、小泉首相と福田官房長官に抑えられたとも語っている。田中氏を参考人として呼んで機密費上納問題について聞きたい。委員会に要求する。

公共事業をめぐる汚職問題

鳩山 公共事業受注企業から寄付を受けることを禁止しようと提案したと聞いた。ぜひリーダーシップを発揮してやってほしい。

小泉 不祥事をなくすためにどのような対策が必要か、与党で議論をつめている。

鳩山 難しい話ではない。選挙期間中は禁止されているものを、全期間に広げるだけのことだ。福田官房長官が「こんなことをやったら自民党が潰れてしまう」と言ったそうだが、あなたは「自民党をぶっこわす」と言ったのだから、ぜひあなたの手で法案を出して実現してほしい。

中東問題をめぐる外交姿勢

鳩山 イスラエルとパレスチナの問題は深刻だ。米国の認識は甘すぎた。日本は同盟国として米国に一言あってしかるべきだったと思うが、何か言ったか。

小泉 どこの国に対しても、常に日本の立場ははっきり表明している。パレスチナ、イスラエルに対しては、できるだけ自制心を発揮し話し合いで和平実現に努力してほしい。米国には、テロ問題や世界平和のために協力していこう、ということだ。

鳩山 イスラエル・シャロン首相の戦闘行為に対してもっと厳しい姿勢を明確にすべきだ。小泉内閣は対米コンプレックスが強すぎる。真の構造改革とは、対米コンプレックスからの解放ではないか。

解散・総選挙について

鳩山 解散をほのめかしたそうだが、大いに結構、受けて立ちたい。“伝家の宝刀”を抜き、国民に正しい判断を仰ぐべきだ。決断を。

小泉 解散は混乱したら考える。今は考えていない。

(民主党ニュース・トピックス)


平成十四年四月十日(水曜日)  午後三時開会

会長(池田行彦君) これより国家基本政策委員会合同審査会を開きます。
 本日は、私が会長を務めさせていただきます。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 このたび、衆議院の国家基本政策委員会委員長に就任いたしました池田行彦でございます。(拍手)
 参議院の広中委員長を始め、衆参両院の委員の皆様方の御指導、御協力を賜りまして、その職責を全ういたしてまいりたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 国家の基本政策に関する件について調査を進めます。
 これより討議を行います。
 討議に当たりましては、申合せに従い、野党党首及び総理におかれましては、配分時間を厳守し、相互の発言時間を考慮しつつ、簡潔に発言を行っていただくようお願い申し上げます。
 また、委員各位におかれましても、議事の妨げとなるような言動のないよう、御協力をお願いいたします。
 発言の申出がありますので、順次これを許します。鳩山由紀夫君。(拍手)

鳩山由紀夫君 小泉首相、久しぶりの党首討論であります。
 最初に申し上げます。小泉総理、初心に戻りなさい。その一言でございます。

 小泉内閣が発足をしてほぼ一年、国民の支持率が半減以下になりました。何も国民が変わったわけじゃありません。私どもが変わったわけではありません。小泉さん、あなたが変わったんです。今まで国民の視線を受けていたはず、あるいは国民の方を向いて仕事をされていたはずの総理がいつの間にか永田町ばかり向いている。
 総理、是非初心に戻りなさい。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は就任以来全く変わっておりません。初心を忘れておりません。支持率が変わろうが、私の改革への決意は全く変わっておりません。

 現に、今まで自由民主党が反対してきたようなことも、今や私の内閣の方針に自由民主党は賛成してくれているじゃありませんか。それは、私の改革への決意を支持してくれて、実際の具体的な政策も、当時、皆さん方が、自民党は抵抗するであろう、反対するであろうと思われたことも、一部には反対がありましたけれども、最終的には私の方針に従って構造改革への必要性を感じて支持してくれているんです。

 一部の野党の皆さんは、私と自民党が対立したりけんかしたりしてくれることを期待しているようでありますが、むしろ自由民主党の方が私の改革に、異論はあるけれども、最終的に、議論をしていくうちに、やはり小泉内閣の示す構造改革を支持していこうというふうに、むしろ私が変わったんじゃなくて自民党が変わってきているんですよ。それを御理解いただきたい。

 私は決して初心を忘れておりませんし、これからも就任以来の改革方針を堅持していきます。

鳩山由紀夫君 そうおっしゃると思っていました。そこで、一言ずつ聞いてまいります。是非簡潔にお答えをいただきたい。

 まずは、BSEの問題からでございます。
 武部農水大臣に関して、そして農水省に対して重大な失政だという報告書が出されています。国民の七割の方が、武部さん、もうお辞めなさいと。同僚議員ではありますが、そのような大変厳しい国民の声であります。その声に対して、小泉総理、あなたが武部さんをかばったんじゃありませんか。辞めなくていいとおっしゃったのはあなたでしょう。与党の中からも、もう辞めるべきだ、責任を取らせるべきだと、そんな声が多かった中で抑え込んだのはあなたじゃありませんか。
 私は、改めて武部農水大臣辞任を求めます。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 総理をやれば、何やっても批判が起こるんですよ。今、私が武部大臣を辞めさせたならば、自民党の辞任要求を受け入れた、公明党の辞任要求を受け入れたといって、また別の批判が起こってきますよ。辞めれば済むものじゃないという批判が必ず起こってきますよ。辞めれば済む問題じゃないんです。

 これは、BSEの問題に対しまして、原因究明、これからの対応、機構の在り方、こういうことに対して武部大臣が必死に頑張っておられる。この問題の重要性を一番よく分かっているのは武部大臣なんです。そして、BSEの報告も、専門家の意見を入れて、マスコミに公開して、あえて農林水産省を始め耳の痛い批判というものを、指摘というものを謙虚に受け止めてこれから改革していこうという、そういう姿勢をはっきり打ち出しているんです。

 生産者重視というものに対して、これからは消費者の目というものを厳しく受け止めていこう、消費者あっての生産者なんだという、そういう指摘もこれからは真摯に受け止めて、新しい対応をしなきゃならぬということで、今までの経験から武部大臣はよく分かっていますから、辞めれば済むものじゃないんです。辞めればまたそういう……(発言する者あり)辞めれば済むものじゃない。自民党の辞めろ辞めろという声に従った、公明党の辞めろ辞めろという声に従った、小泉は結局……(発言する者あり)辞めれば済むものじゃない。辞めて問題を糊塗しようとする批判が必ず出るんです。

 そういう声を受け止めながらも、私は、やはりよく分かっている。一時的には国民の批判も受け止めております、何で武部さんを辞めさせないんだという国民の強い声も私は分かっております。しかし、武部大臣の今までの改革に示す強い意欲、そして批判というものを謙虚に受け止めて新しい体制を取るという意欲を買って私は続投をしてもらうことに決断したのでありまして、その点については公明党も自由民主党も了解しております。

会長(池田行彦君) 答弁は簡潔にお願いします。

鳩山由紀夫君 あなたは実は、一内閣一閣僚という御自分で決められた言葉に操られている。自縄自縛になっている。結局は派閥の論理の中で結論を出しただけじゃありませんか。国民を無視した政治をやっちゃいけません。

 国民の皆さんがどんな苦しみを味わっているか。武部大臣の様々な食言でどれだけ傷付けられたか。どれだけ多くの方が倒産をしたか。命を失った方までいるじゃありませんか。それに対して、けじめを付けるだけじゃないと。冗談じゃありません。まずはけじめを付けてから、それからスタートをしなきゃならない話がたくさんあるわけです。その責任も取らせない、こんなやり方は明らかに間違っています。

 続いて、鈴木宗男議員のことを申し上げなければなりません。
 鈴木議員議員辞職勧告決議案、一度はそれこそあなたがけじめを付けるべきだと党内に訴えたんでしょう。ところが、いつの間にか、二時間ぐらいですぐひっくり返って、党内の意見がそうじゃなかった、公明党からも様々な意見があったと、結局その話がうやむやになった。議員辞職勧告決議案、今でも宙ぶらりんじゃありませんか。

 あなたは、本当は鈴木さんには辞めてもらいたいと思っておられるんじゃないんですか。だとすれば、我々民主党、野党そろって、鈴木宗男さんには、正に国益を損なった、品位を欠いた政治家の存在でどれだけ国会が損をしているか、そのことをお考えになっていただいて、我々の議員辞職勧告決議案、すなわち我々は議員辞職を求めています。その言葉にこたえてください。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は前から言っているんです。与党であれ野党であれだれであれ、議員が出処進退を決めるとき、それは人から指図されるものじゃない、自分自身が考えて判断することだと。

 今回の議員辞職勧告案につきましては、これはよく、上程できないんならできない、できるならできるということについて、もう一度自民党、与党でよく議論したらどうかということを言ったのであって、私は、勧告せよとかいう要求に対しましては一貫しています。本人が決めることだと、出処進退は。私はこれは当然のことではないかと思うのであります。

 御自身が判断できないでどうするんですか。選挙民が最終的には判断すべき問題だと思いますが、その以前に、何か問題があった場合、国会議員というのは、世論を聞いたり、あるいは支援者の声を聞いたり、いろんな方々の意見を聞いて判断できるはずであります。そして、最終的には選挙で審判を受けるわけでありますから、その前に出処進退についていろいろ言われた場合には、本人自身が私は判断すべきことであるということは、これからも変わりありません。

鳩山由紀夫君 あなたはいつから評論家になったんでしょうか。正に人ごとじゃありませんか。元、党の中で大事な役職を担っていた人でしょう。その人に対して、すべてあなたは人ごと。

 何か起きたときに、ある意味で善良な人は辞めていくんですよ。悪い人ほど残るんですよ。だからこそ、その党のリーダーとしての判断が求められているんでしょう。首相としてのリーダーシップより、党の総裁としてのリーダーシップが求められているんでしょう。だからこそ、国民の二十代、三十代九割の方が、小泉首相、あなたは鈴木さんの問題でリーダーシップを発揮していないと喝破しているじゃありませんか。

 党の総裁として是非もう一度、そんな無責任な発言ではなくて、厳しく鈴木さんに対して議員辞職を求めてください。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 既に鈴木氏は自民党を離党しています。私は、議員自身の出処進退は議員自身が決めるべき問題だということは、これからも変わりありません。今までも一貫してこれを主張してきました。これ以上はっきり言う必要がない。

 最終的に、どうしてもその人は議員の資格がないというときには、選挙民が審判します。

鳩山由紀夫君 そこで、あなたはいつもそうやって鈴木議員をかばうんじゃありませんか。だから、結局、抵抗勢力に負けた姿が小泉さんの支持率を大きく下げたんじゃありませんか。そのことぐらい気が付かなきゃいけない。

 続いて、田中眞紀子前外務大臣のことを申し上げなければなりません。
 この件に関して、田中眞紀子さん、大変面白い発言を、これは外務大臣お辞めになってからでありますが、発言をされています。KBSという、これは韓国の放送、テレビに出たときの田中眞紀子さんの発言です。外務省と官邸は本当はつながっているんですよ、一緒なんですよ、お金の問題でと。それが極めてずさんで、いい加減で、しかも大きな額だったから、今だって完全に片付いていないわけですよ。

 正に外務省の機密費の問題、機密費の官邸への、いわゆる官房への上納問題。この問題に関して、どなたもはっきりしたことはおっしゃらない。改めて、この党首討論の場で小泉総理に申し上げたい。この問題が外務省の伏魔殿なんです。外務省の多くの人を処分して、これで終わり。とんでもないんです。この伏魔殿の中心的などす黒い部分、官邸への上納問題、この問題に対してはっきりやると明言してください。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは田中さんが外務大臣時代に既に答弁しているではありませんか、問題はないということを。辞めてからどういう発言したのか私は知りませんけれども、外交の問題について官邸と外務省は一体です。それは認めます。官邸と外務省が別々で外交したら、日本政府は、外交はどうなっているんだと逆に変に思われます。そういう点については一体であります。

 しかし、機密費の問題については、外務大臣時代、田中大臣は問題ないと発言しているじゃありませんか。私は、この問題については、機密費として直すべきことは直すということで改革を進めておりますし、そして守る、機密ですから、いろいろな機密状況というものはあると思います、守るべき機密というのはあると思います。そういう点について整理して、削減すべきは削減し、正すべきは正すということで既に外務省改革に着手して、予算にもそれを、予算編成においてもそれを生かしているということを御理解いただきたいと思います。

鳩山由紀夫君 全然理解できないんであります。
 この同じインタビューの中で田中さんはこうも言っているんですよ。官邸の裏金と外務省の機密費のことについて外務大臣当時にこれを公開するつもりでいたけれども、公開することは小泉さんが困ると。福田さんも、森さんが困るんですよ、小泉さんは森さんにも鈴木さんにもノーと言えないんですよと、こう明確におっしゃっているじゃありませんか。本人は、田中さん本人は言いたかった。ところが、あなたや官房長官がその発言を抑えた。

 たまたま田中眞紀子さんに関しても様々な秘書の給与の話が出ています。私は今、是非参考人にでも田中眞紀子さんを呼んでいただいて、その場でこういった官邸、官房への機密費上納問題に関してはっきりと言っていただこうじゃありませんか。どうも話を伺うと、自民党や官邸の方が眞紀子さんを参考人として出すことを嫌がっているというじゃありませんか。とんでもない話で、是非それでは眞紀子さんに話、聞かせてください。お願いします。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは委員会でちゃんと要求してくださいよ。私は、外務大臣時代、田中大臣からは、きちんと調査をします、国会の答弁においても問題ないと、外務大臣として答弁しているでしょう。

 それで、辞めてからどういう発言したかというのはつぶさには聞いておりません。私は、その発言については、責任を持ってお答えする立場にはございません。

鳩山由紀夫君 それでは、是非様々な委員会で眞紀子さんに出ていただいて、国民の前であなたがうそついているのか、眞紀子さんがうそついているのかはっきりと分かりますから、そこで発言をされていただくように私の方からも求めておきます。

 これは、テレビの前で、党首討論の場で求めたんですから、是非自民党さん、実現をよろしくお願いします。

 今日、自民党さんの面々を見ても、鈴木宗男さんとある意味では同じようなことをしておられる方ばかり。(発言する者あり)第二、第三の鈴木宗男さんがおるじゃありませんか。これは、だから自民党の体質の問題なんです。自民党の体質を変えるために、小泉総理、あなたは大変にいい提案をされたんです。公共事業の受注をしている企業に対して寄附を受けることを禁止しようではないか、そういう提案を、小泉さん、総理としてあなたはそのことを提案をしたと伺っています。(発言する者あり)私たちも当然のことながらそのことを求めています。

 くどいようですが、ちょっとやじがうるさいので私はもう一度申し上げますが、公共事業を受注をしている企業からの寄附を全面的に禁止することを是非小泉さんのリーダーシップでやっていただきたい。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) いろいろな政治と公共事業に関する問題で、国会でも議論が重ねられております。
 この問題について、不祥事をなくすためにはどのような対策が必要かということについて、今与党におきましても協議をし、もう一歩現実よりも踏み込んだ対応が必要ではないかということで今議論を詰めているところでございます。

 私は、今の鳩山党首のいろんな御意見というものを含めて与党でも議論をしておりますので、どういう点が今後必要かということをよく論点を整理して、できるだけ早く実効ある、改善点をどう処理すべきか、早く詰めていきたいと思っております。

鳩山由紀夫君 いや、そんな難しい話じゃないんです、これは。
 公共事業を受注している企業からの寄附の禁止は、選挙期間中はもう我々当然禁止したんです。それを選挙期間中じゃなくて、政党、あらゆる期間禁止しましょうという話ですから、法律作るのはそんな難しい話じゃありません。是非これはなさっていただきたい。このことを私どもの野党四党、岡田政調会長などが福田官房長官のところに持ってまいりましたら、福田官房長官が、自民党がこんなことをやったらつぶれちゃうから駄目だよと否定をされたという話であります。

 小泉総理、あなたは元々自民党をつぶすとおっしゃったんですから、誠に自民党をつぶすためにいい法案をあなたの手で作ればいいわけじゃありませんか。難しい話ではありません。是非このことの実現、よろしくお願いをいたします。

 それからもう一つ、これは外交の話に移ります。外交の姿勢に関してお伺いをしたい。
 総理、このイスラエルとパレスチナの問題、大変深刻です。御承知のとおりであります。この件に関して、私は、シャロン首相に対してアメリカが甘過ぎたんではないか。ようやく今パウエルさんが中東に行っていますが、大変遅い。もう時既に遅しというような状況になり掛かっているじゃありませんか。私は、同盟国の日本だから言うべきことははっきりと、アメリカに対して一言あってしかるべきだったと思いますが、何かアメリカに対してはっきりとした日本の態度、示されましたか。聞かせていただきたい。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は常に、アメリカに対しても、どこの国に対しても、日本の立場をはっきり表明しております。中東の問題につきましても、今イスラエルに対しても、あるいはパレスチナに対してもはっきり表明しております。できるだけ、イスラエル、パレスチナ両国に対しましても、自制心を発揮して話合いによってこの中東和平に努力を傾注してもらいたいと。アメリカに対しましても、この問題については最も影響力を持っているアメリカであります。世界平和のために、また今テロと世界が闘っているわけでありますけれども、このテロ問題、いろいろ、アフガニスタンだけの問題ではないと、中東の問題も多く絡んでいると。イスラムとの闘いにはしてはいけない、アラブとの闘いにはしちゃいけない。

 そして、この世界平和について、日本とアメリカは協力しながら世界平和のためにともに努力していこうと、協力していこうということを機会があるたびに私は表明しておりますし、アメリカも今そのために特使を派遣したり、あるいはパウエル国務長官を派遣したり努力をしている最中でありますので、私は粘り強く、中東和平に対しましても、あるいはテロ防止に対しましても、しっかりとした対応をしていくべきだと考えております。

鳩山由紀夫君 いろいろこの問題、伺いたいことがあります。ただ、時間がなくなってまいりました。

 イスラエル問題に対しても、今の総理の御答弁では何もアメリカに対して厳しい話に聞こえていません。シャロン首相、あるいはイスラエルの様々な戦闘行為に対してもっと厳しい立場を、日本として、同盟国なんだからしっかりと主張すべきだということを申し上げているんです。

 私は、外交に関しても対米コンプレックスが小泉内閣にあり過ぎると、これが非常に大きな問題だと思います。構造改革、ある意味で真の構造改革というのは対米コンプレックスからの解放ではないか、むしろそのぐらいに思っています。もっとしっかり日本が、独立国なんですから言うべきことははっきりとおっしゃるべきだ、このことを申し上げておきます。

 そして最後に、いよいよ時間がなくなりました。総理はあるところで、特に自民党に対するブラフではないかというふうに思いますが、解散をほのめかしたと言われます。解散、大いに我々は結構です。受けて立ちたい、そんな思いでございます。簡単に妥協する総理という評価が、今、ジェラルド・カーチスさんから出ていて、その言葉、簡単に妥協する総理が最悪のシナリオを日本にもたらしているという話が伝わってきています。誠にそのとおりだと思います。

 この間、後藤田さんにお会いしたら、日本は無政府状態だと言われました。無政府状態から日本を救わなければなりません。そのためには、小泉さん、あなたしかできないんです。解散という伝家の宝刀を抜いていただいて、国民に正しい政治を是非作っていただく、そのための国民の審判を仰ぐ解散を、総理、是非決断を願います。

会長(池田行彦君) 小泉総理大臣、時間が終了しておりますので簡潔にお願いします。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、就任以来、改革路線を進めるということについて妥協はしておりません。野党の皆さんほど妥協はしておりません。野党がそれぞれ、小泉内閣を打倒するために四党が共同していろいろやっておりますが、よくも主張の違う人たちがこうも小泉打倒で足並みをそろえて、もし打倒した暁にはどういう政策を掲げるのか心配するぐらいですよ。

 それに比べれば小泉内閣の方針は一貫しています。この改革路線について、妥協なしに改革なくして成長なしという路線を続けていきますし、解散は混乱したときには考えるかもしれませんが、改革を進めていくうちに協力していく限りは解散の必要はないんです。任期満了までやるべき仕事をきっちりやって、そして、いずれ時が来れば国民に信を問うということを考えればいいんであって、今解散は考えておりません。

会長(池田行彦君) これにて鳩山君の発言は終了いたしました。(拍手)
 次に、志位和夫君。(拍手)

志位和夫君 私は、鈴木・外務省疑惑に絞って質問いたします。
 鈴木宗男議員がかかわって日ロ領土交渉において日本政府がいわゆる二元外交、二重外交を行ってきたという指摘がありますが、その事実はありますか。端的にお答えください。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 何をもって二元外交というのかは分かりませんが、日本政府の対ロシア外交、一貫しております。二元外交というのは今のところ意味が分かりませんが、二元外交ということはしておりません。

志位和夫君 否定されましたけれども、昨年三月の下旬に、イルクーツクで行われた森・プーチン会談に先立って、三月五日、日ロ間で二つの会談が行われています。昼には日ロ専門家協議という正式の政府間の協議が行われています。私、ここに外務省が行った記者ブリーフのペーパーを持ってきましたけれども、日本側からは加藤外務審議官と東郷欧州局長、ロシア側からはロシュコフ外務次官とパノフ大使が参加し、この会談では、日本側は、政府の公式方針である四島返還論ですね、歯舞、色丹、国後、択捉、この返還論を要求し、会談は不調に終わっています。これ、昼の会談です。

 ところが、同じ日の夜に日ロ間で秘密裏に会談が行われている。私あてにその会談録が届けられました。総理にもお渡ししてお読みくださっていると思うんですが、この会談には加藤審議官に代わって鈴木宗男議員が参加し、東郷局長も参加し、ロシア側はロシュコフさんとパノフさんは同じです。

 そして、会談録を見ますと、まず、鈴木議員は、昼間の会談が不調に終わったのは、日本には冷戦時代の言葉を使って領土問題の議論をする人がいるというふうに述べて、そして四島返還論を当時主張していた橋本北方担当大臣、河野外務大臣、これ批判をしております。そこにおられる福田官房長官も、官房長官の言うことなんか聞く必要ないと言っております。

 そして、領土問題について、四ページ、ごらんになっていただきたいんですが、こう鈴木議員発言している。できれば、無人島であり、日本側に渡してもロシアが損することはないであろう歯舞諸島を日本に渡し、また面積は狭く、なくなってもロシアの国益を毀損することはないであろう色丹島を日本側に渡し、国後島、択捉島については継続的に協議を行うと、こういう発言ですが、要するに、歯舞、色丹を返してくれれば、二島で手を打ってくださいというメッセージですよ。ロシア側は歯舞、色丹の二島で返還したら領土問題は終わりという方針です。このロシア側の方針に正に迎合する発言をやっている。

 会談の最後を見てください。鈴木議員の言葉は、皆様の希望することは何でもやると、ロシア側の歓心を買う言葉ですよ。正に、昼の、七ページの最後を見てください、昼の会談で主張した四島返還論を夜の裏会談では否定している。そして、ロシア側の二島返還で終わりというその立場に迎合する発言をやっている。

 正にこれ二重外交じゃありませんか。国益を損ない国民を欺く、こういうやり方は私は許されないと考えますが、総理の御見解を伺いたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは、今お話を伺ったのは鈴木さんの発言でしょう。日本政府の発言じゃないんですよ。ここを間違えぬでください。

 我々日本政府の発言は一貫しています。四島の帰属、歯舞、色丹だけじゃない、国後、択捉も含めて、四島の帰属を明確にして平和条約交渉、締結すると、これは一貫しているんです。

 ただ、議員としていろいろな活動をせられる方はいますよ。また、いろんな発言をする人はいます。しかし、これは日本政府の発言ではないということをしっかりと確認したいと思います。

会長(池田行彦君) 志位君、持ち時間が迫っておりますので簡潔に質問願います。

志位和夫君 一個人の発言ということは、到底これは通用しません。
 なぜならば、東郷局長が同席しているんですよ。通訳じゃないんですよ。日ロ領土交渉の事実上の事務方の責任者が同席している。そしてその席で、横に置いて、鈴木さんは自分と東郷さんは一体の立場だということを繰り返し言っていますよ。これを政府間交渉とロシア側が受け取るのは当たり前じゃないですか。

 私は総理に、これ、求めたい。我が党は千島問題については全千島返還の立場です。政府の四島返還論とは立場を異にしております。しかし、私は、鈴木議員と東郷局長がやったのは、政府の公式の方針にも反して、ロシア側の主張に迎合して、交渉をゆがめて、正に国益を損なう、そういうことをやったわけですから、これはしっかり首相の責任としてきちんと調査をして国会に報告する、このことを求めたいと思いますが、いかがですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは政府の交渉ではありません。鈴木さん個人の交渉をどうしたのかは、私は定かではありませんけれども、政府としてこの問題について、歯舞、色丹の二島返還で平和条約交渉を締結するなんということは一度も言っておりません。

会長(池田行彦君) これにて志位君の発言は終了いたしました。

志位和夫君 これは、領土交渉を行う資格はそういうことじゃないと思います。

会長(池田行彦君) お約束の時間が過ぎております。

志位和夫君 以上をもって終わります。(拍手)

会長(池田行彦君) 次に、小沢一郎君。(拍手)

小沢一郎君 九月十一日の事件をきっかけにしてアフガンの戦争が始まりました。アメリカは、これは米国の戦争であって国連の要請も決議も要らぬという態度でもって始めたわけですけれども、小泉内閣はこのアメリカの戦争に対しまして自衛隊、軍隊を派遣して戦争に参加をしたわけであります。

 その理由については小泉総理自身が、政府の従来の解釈からいうとどうもつじつまが合わない、整合性が取れないと国会で答弁をなさっていながら、このような重大な海外派兵ということを行ったわけでありまして、その点についての議論を今日しようとしているわけではありませんけれども、これは多分、日米関係からくる政治的な要請ということが最大の要因、理由だったんだろうと、小泉内閣にとっては、と思いますけれども、そのほかに、事柄といたしまして、あのようなテロ行為は絶対許されない、断固闘うんだと、そういう理由であったろうと思います。

 そこで、お聞きしたいんですけれども、先ほど、イスラエル、パレスチナの話が鳩山さんのところに若干ありましたけれども、今、大変な抗争、正に血みどろの戦いがパレスチナで行われております。若いパレスチナの女性も含めて、爆弾を抱いて、自分の命を犠牲にしてイスラエルを攻撃をしております。これは、戦時中でいうと特攻隊、日本の、ということになりますけれども、このような方法はベトナム戦争のときにも、強大な米軍に対してベトナムの民衆がやはり同じような手法、手段を使って攻撃、米軍と戦いました。

 このような行動に対して、イスラエルはテロ行為だと言い、アメリカもテロだと言う。日本のマスコミの多くも自爆テロという言葉を使っておりますけれども、総理にお聞きしたいんですけれども、このようなパレスチナ人の行動を総理はやはりテロ行為だというふうに認識なさるのか、あるいはパレスチナ人の自治を要求する民族の抵抗運動であるというふうに考えるのか、そのことをお聞きしたいんです。

 事柄の善しあしをお聞きしているんじゃないですよ。暴力、殺し合いがいけないということは当たり前のことです。ただ、現実に起きているこういう行為を総理はどのように認識しておられるか。これは、その認識によって日本の国策、姿勢、そういうものが、対応が決められてくるんだと、私は事柄の本質としてそう思います。総理はどのようにお考えであるか、認識しておられるか、お聞かせください。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 現在の中東問題、特にイスラエル、パレスチナのいわゆる暴力の連鎖、この事態に私は大変憂慮しております。この中東の問題は、世界の大きな問題でありますが、同時に日本にとっても死活的とも言っていい問題と言えるかもしれません。

 特に、私は、初めて当選したのは昭和四十七年の選挙ですから、その翌年、第四次中東戦争で、あの中東のイスラエル、パレスチナの戦争が、アラブの戦争が日本にこれほど大きな影響を与えるというのかということを身をもって一年生の国会議員のときに感じたわけであります。現在、それがまだ続いている。

 そういう点から見て、私は、この中東の問題、非常に深く関心を持ち憂慮しておりますが、この問題についても、私は、日本としてできることは限られておりますが、イスラエル、パレスチナ両方に対しまして私は粘り強い話合いの努力、自制心を度々政府としても呼び掛けておりますし、私は、この問題については単に言葉の定義だけでなくて、この問題については今世界が真剣に憂慮をしておりますし、私自身もこの問題につきましては細かい配慮の上にできるだけの努力をしていきたいと思っております。

会長(池田行彦君) 小沢君、時間が過ぎていますから端的にお願いします。

小沢一郎君 はい、分かりました。
 憂慮していることもその解決のために努力することも、これはもう当たり前のことで、だれも異論ないことであります。

 ただ、私がお聞きしたのは、事態の本質として、自爆攻撃を含むこういうパレスチナの民衆のこういう攻撃をどういうふうに、俗に、さっき言ったように、イスラエルやアメリカやあるいは日本のメディアの多くもテロという言い方していますけれども、総理の御認識はいかがかということをお聞きしたわけであります。
 今、全くいつものとおりお答えいただきませんでしたけれども、時間ですので、終わります。(拍手)

会長(池田行彦君) これにて小沢君の発言は終了いたしました。
 次に、土井たか子君。(拍手)

土井たか子君 最初に、一言決意を申し述べます。
 この二週間ほどの間に、国民の皆さんから厳しい御批判や御叱正をいただきました。私は、深く、重く受け止めております。

 私たちは、厳しく自らの襟を正しまして、秘書制度、政治資金、政治献金の在り方について真摯に改革に取り組む決意でございます。

 今日は、有事法制の問題について総理に申し上げたいと思うんですが、総理は有事法制をめぐることについて度々おっしゃる語録がございます。一つは備えあれば憂いなし、一つは憲法の範囲内でと、あと一つは、二月四日の所信表明のときにおっしゃったんですが、国民の十分な理解を得ることが必要不可欠と。

 この最初の備えあれば憂いなしとおっしゃっていることについて、この表現はどうも使用方法を間違っていらっしゃると私は思うんですね。私たちにとっての備えということになりますと、少なくとも平和憲法で備えを図ってきたんじゃありませんか。アジアにおいて戦争が起こらないような状況を日本が率先して作り出すということであり、平和的な環境を醸成する不断の努力を怠らないことによって憂いを取り除いていくということだと思うんですね。

 第九条、憲法の。大半の国民が憲法第九条を守るということは大切だと思っています。そう考えていますよ。これ世論と言っていいと思います。

 したがって、ただいまの備えあれば憂いなしというのは、一言で言えば、これは戦時法制だというふうに言わなきゃならない中身を取り上げておっしゃっているわけですから、誠にこれは間違った使い方だということを言わねばなりません。

 二つ目の憲法の範囲内、このたび十六日に閣議決定かと言われておりますけれども、なかなか与党の方もごたごたされておりまして、はっきりお決めになる調整が大変なようですね。この憲法の範囲内になるのかどうかというのは、ただいまの要綱を見ておりまして、それぞれの法案要綱の中身だけでも、とてもじゃない、これ憲法の範囲を踏み破ってしかできないという問題がもう山積しています、あっちこっちに。

 二点だけここで、時間の関係がありますから私申し上げます。
 一つは、自治体に対しての自治というのが奪われかねない。あの周辺事態法でさえ協力を求めることができるとしか言い得なかった中身に対して、自治体との関係で、総理は自治体が指示に従わなかったら代執行措置というのが取れるという強権をここで発動するということも認められるようになるわけですから、これは憲法の九十二条からすると地方自治の本旨を踏み破るということになるんじゃないでしょうか。

 あと一つは、自治体法の中身を見ておりまして、国民に対して物資保管命令を出して、これを拒むと六か月以下の懲役、三十万以下の罰金、立入検査を拒んだ人に対しても罰金刑と、刑罰で事柄に対して対応するというやり方なんですね。これは憲法の保障している人権とか自由をあくまで尊重しと日ごろおっしゃっている総理からお考えになれば、こんなことが許されていいはずはないんですよ、罰則でもって強制するという中身ですから。

 そして、三番目、国民の十分な理解を得ることが必要不可欠とおっしゃっていますが、どこの国が軍事力を駆使して日本に攻めてくるんですか。こんな現実離れの甚だしい法案に対して国民の十分な理解を求めるというのはなかなか、並大抵の話じゃないと私は思います。

 今、与党間でも調整が困難を窮めておられるというのがニュースで伝わってまいりますけれども、私たちの方には法案要綱も、野党の方には届きません。したがって、この中身は、なかなかこれは調整が難しいなと、ましてや国民合意というのはほど遠いと思っております。

会長(池田行彦君) 土井君、時間が経過しておりますので簡潔にお願いします。

土井たか子君 まずは、分かりました、この法案に対して、提案なさるということには間違っていると。この法案の提案に反対をしまして、私はここで総理に対して考えを述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 備えあれば憂いなしを否定する政党があるとは驚きです。政治の要諦とは備えあれば憂いなし。古今東西、どの国も変わりありません。国民の生命、財産を守るためにいかに緊急事態に備えるか、この責任は政党にあり、政府にある。これを否定するということは私は考えられません。

土井たか子君 私が申し上げたことをそれほど誤解なさるとは私は知りませんでした、今まで。総理、正確に聞いてください。私は否定していない……

会長(池田行彦君) 土井君、発言時間は終わりました。

土井たか子君 備えあれば憂いなしの意味はこうですよということを私が言ったわけ、それを否定したというふうに受け止められるとは驚きました。

会長(池田行彦君) これにて土井君の発言は終了いたしました。
 以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。
 次回は、衆議院、参議院、それぞれの公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後三時四十九分散会


2002/04/10

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