1957/09/12 |
26 参議院・大蔵委員会
昭和三十二年九月十二日(木曜日)
○委員長(豊田雅孝君) これより委員会を開会いたします。
本日はまず租税及び金融等に関する調査を議題といたし、国際収支その他財政金融一般問題について、大蔵大臣に対する質疑を行うのでありますが、一萬田大蔵大臣、坊、白井両大蔵政務次官より発言を求められておりますので、この際これを許可いたします。
○国務大臣(一萬田尚登君) 今度私、大蔵大臣を拝命いたしました。よろしくお願いいたします。若干この機会に、今問題となっております国際収支の兄通しということについてお話を申し上げたいと思います。どういうふうな計表をさし上げてあるか、私、存じませんが、大体三十一年度の会計年度末、三十二年三月末の外貨の保有は約十二億というふうに押えてもらっていいと思います。そうしてその当時において使い得る外貨の量は約五億ドルとお考え願っていいと思います。そういう状況下におきまして、輸入決済は累月増加している。七月末では、四、五、六、七というふうな月で、すでに御承知のように三億五、六千万というものが赤字になっておる。そうしてみますると、ほんとうに使い得る金額というものは、七月以降はきわめて少くなっておるということが判断できるわけです。そういう状況でありましたので、五月でしたか六月ごろから、国際収支の改善に関する総合施策を実施するに至ったのであります。その後これらの総合施策が効を奏しまして、国際収支に関しまして、輸出入の信用状設定高は六月以降近接をいたしました。八月の輸出入信用状設定高を見ますると、一応均衡を得るに至っている、若干黒になったかと存じますが、そういう状況です。が、しかし、この状態は、輸入を特に抑制をしておるという事柄からきておるのが多いのでございまして、日本の経済自体が均衡を回復して、その結果国際収支が均衡を保つに至ったというのではありません。逆であります。むしろ為替面から日本の経済の均衡をはかるように働きかけておるという意味において、まず為替面において均衡を取りもどしつつある。これはむしろ政策的と考えてよろしいのでありまして、従いまして今申しましたように、日本の経済自体が均衡を回復して、国際収支が自然の形において均衡を得るのには、やはり今後努力を要する。総合施策を、特に金融引き締めという施策をやはり続けていかなくてはならない。単に為替面で収支が合ったからそれでいいのだという安心はできないのであります。いわんや今後におきまして、年末において為替の収支がとんとんになる。来年度に入って黒字になっていくというにいたしましても、差しあたりは巨額の債務を今回のことにおいて負ったわけであります。国際通貨基金を初めとして、輸出入銀行と、相当の債務をこれを払わなくてはならない。これは第一当面の問題でありますが、さらに従来のように相当の外貨の手持ちもいたさねばならん、こういうこと、それで初めて日本の通貨も安定し、日本の経済が国際的に信用を回復できるということになるのであります。ですから、これはそう今後努力を要する。まあしかし、さようにして参りますれば、国際収支に関する限りにおきましては、私は応来年に入りまして、若干ずつの黒字を見るに至るだろう。そうして三十三年度において今申しましたような情勢をよく認識をいたしまして、朝野あげて冗費を抑制をいたしまして、そうして輸出増大に努力をするということになりますれば、私は今後日本経済が、徐々ではありますが、日増しに堅実性を取りもとしていくということを確信いたしておる次第であります。簡単でありまするが、これだけにいたします。
○説明員(坊秀男君) 貴重なる時間をちょうだいいたしまして、一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。
先般はからずも大蔵政務次官を拝命いたしました衆議院の坊秀男でございます。何分ふなれ不行き届きで、この重大なる責務を果し得るかどうか、大へん心配しております。いずれにいたしましても、本委員会におきましては、特に御寛大なるお取扱いと御厚情ある御指導を賜わりまして、重大責務を果したいと考えておる次第であります。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
○説明員(白井勇君) 私も坊政務次官に引き続きまして、八月一日付をもちまして政務次官に就任いたしました。一生懸命やるつもりでおりまするが、皆様御承知の通り至って、微力なものであります。かつて当委員会におきまして御厄介になっておりました当時の御交誼以上今後は何かと御鞭撻御指導を特にお願い申し上げる次第であります。どうぞ、よろしくお願いいたします。
○委員長(豊田雅孝君) それではこれより質疑を行います。
○江田三郎君 大蔵大臣に一点だけお尋ねしたいのですが、この間の来年度の予算編成についての閣議決定を行われた、その新聞に発表されたものを見ますと、はっきりしているようでもあるが、しかしその後のいろいろなものを読んでみると、何かこうアクセントをどこに置くかということでどうでも解釈できるのだというような説もあったりして私どももどうつかんでいいのか理解に苦しむ点があるのであります。そこで私がお伺いしたいのは、ただ一点だけでして、三十二年度の予算に比べ歳出の実質的増加を厳に抑制する、こう書いてあることは、これは数字に翻訳すると一兆一千三百億円程度の予算だ、こう解釈してよろしいのですか。どうですか。その点だけです。
○国務大臣(一萬田尚登君) 私はおおよその目標として今お話のような考えを持っておりまするが、これはしかし、たとえばどうしても当然増がありましょう。それから三十二年度の節約はどうなるか、これらによって差異をいたして参ります。今、量的にどうというふうなことを申し上げかねるわけであります。
○江田三郎君 何かそういう含みを持たされる、含みがあるということは当然ですよ。常識的にそんな数字というものが今から伺ってつかまえられるわけのものではありませんけれども、しかし、今の大臣の答弁でも、聞き方によって、アクセントの置きどころによると、これはどうでもなるようなことになってくるので、くどいようですけれども、私はもう一ぺんお伺いしておきますけれども、大体一兆一千三百億円という三十二年度予算規模を大してはずれることはないのだと、これだけは言えるわけですか。
○国務大臣(一萬田尚登君) 今、私がここで責任を持って申し上げ得ることは、歳出の増加についてほんとうに厳に抑制をする、こういう決意を持っておるということを今の段階では申し上げる。それ以上金額が幾らということは申し上げかねる。
○江田三郎君 だから、今のあなたのおっしゃるのは、今、私が申し上げた閣議決定の文章の中のしまいの方だけを言われたわけですね。実質的増加を厳に抑制するということだけを言われるのだが、厳に抑制ではなくして、私が聞きたいのは、三十二年度予算に比べてあまり動かないものになるのかという、その上の方を聞いておるのです。
○国務大臣(一萬田尚登君) その文面には歳出の増加について厳に抑制しと書いてあるわけです。
○江田三郎君 増加を厳に抑制するということになると、三十二年度の予算規模と大して変らないものだという私の解釈でいいわけですね。減ることはあってもふえることはないでしょう。
○国務大臣(一萬田尚登君) そういうふうに厳格に……先ほど申し上げましたように、これにつきましては、三十二年度の歳出自体について厳重な再検討を加える。さらに先ほど申しましたように、一方では当然増というもの――たとえば人口増による経費増――当然増というものを考えなければならん。それからまた重点的であるが、新しい経費というものも考える。それらを勘案して初めて全体の数字的な規模がきまるのでありますが、ただそういうふうなことをきめる場合において、歳出の増加は厳に抑制する決意を持っておるということを、これは閣議決定として政府よりそういう決意を表明しておるわけです。
○江田三郎君 それから、私どもとあなた方とは見解は違いますけれども、たとえば米軍が撤退した事態に伴うて自衛隊の規模を拡大するという問題が出てくる、あるいは恩給の問題が出てくる、そういうことは、今のあなたのお話からいくと当然増ということになるのですか。そういうことについても、三十三年度予算規模全体が三十二年度とあまり変らないものになるような範囲内でかりにおやりになるとしても、その範囲内でおやりになるということですか、どうですか。
○国務大臣(一萬田尚登君) ただいまの時期におきましては、予算編成に関しまする基本的な考え方、構想ということにとどまっておるのでありまして、これに基いて具体的にどういうふうに按配していくかは今後にかかる問題であります。
○江田三郎君 今、私が聞いているのは、具体的に、何を幾らにするかということではなしに、そういうふうにあなた方が今まで放送されたところによると、ふえると予想されるものがある。しかし、そういうふえると予想されるものがあったところで、総体の規模においては、三十二年度の予算規模が大きく変ることはない、増加は厳に抑制する、支出的増加を厳に抑制するということになれば、大きく変ることはない、そうしか解釈できぬのですが、そういう私の解釈は違っているのですかどうですか。それだけ答えてもらいたい。
○国務大臣(一萬田尚登君) 繰り返しての答弁でありますが、大体おわかり下さったと思うのでありますけれども、私は、今、どれほどが三十三年度の歳出の現額であるか、そういうふうには申し上げ得る時期ではない、言いかえれば、たとえば、歳入自体にしても、厳格な意味で言えば、まだ三十三年度についてはわからない。推測を加えれば幾らもあるかもしれませんが、ですから、同時に、歳出についても検討を加えなければならないものが多いのでありますから、規模というものを今ここで言えというのがむしろ無理なので、そういう規模を今後作っていく上において、どういうふうな態度でいくかということが今日の問題である、そういうような意味において、ああいう構想を閣議決定したわけであります。
○江田三郎君 大臣の答弁は、政府部内のいろんな諸情勢等と政府との関係、党内の情勢といったようなことを考えれば、私ども、同情と言っては失礼でございますけれども、あなたに同情なんかしたってしょうがないのですが、理解できる点がないとは言いませんけれども、しかし、ほんとにおやりになるのなら、もう少しこのあたりできっぱりした態度をとられないというと、今のような、右顧左眄せられて、一つのことを、腹の中ではこう思っておっても、それをはっきり出されないというようなことでは、今度の予算編成ということは大へんむずかしいことになる、国民の期待を裏切ることになるのではないかと考えるのですが、これ以上やったってコンニャクにもならぬ問答になりますからやめます。
○土田國太郎君 ただいま大蔵大臣から、国際収支悪化防止につきましての御説明があったのでありますが、全くそういうふうに運んでいただかなければならぬのでありますが、それに関連いたしまして、国際収支の悪化を防ぐ手段として、輸入の抑圧という御説明であったのでありますが、その結果として、内地の物価が高くなりはしないか、物価騰貴を抑圧する自信をお持ちであるかどうか、これは、一番私は大事な問題であると思うのでお伺いすることが一点と、それから、この経済情勢によりまして、一番大切なのは、預金、貯金の増強、これであろうと思いますが、どうもこの春以来、貯金、預金の増加ということについて、もう少し、昨年の減税の程度から見て、ふえてもいいのじゃないかと考えられるのですが、どうも私どもの考えでは、そう増加率もはかばかしくないようでありまするが、来たるべき国会において、これらの点につきまして、何らかの処置に出でられるお考えがあるかどうか、まず、この二点についてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(一萬田尚登君) 一点は物価の点であったようでありますが、これは御承知のように、最近の日本の経済が非常な急テンポの成長をした、言いかえれば、これは非常に物の需要を喚起した、そうしてむろん輸出も伸びたが、内需において一そうの伸びを来たした。それで、物価を上げない必要からも、それだけではありませんが、一つの方向として、輸入がふえた。ところが、その輸入力というものは、もはや限界に来ておる。そこで、どうしても日本の経済の活動、これを抑制しないと、輸入でカバーができませんから、今後は物価騰貴の情勢を招くおそれがある。それで、内閣においては、前内閣からでありまするが、総合施策、いわゆる国際収支改善に関する総合施策を強く打ち出して、日本の経済の伸び過ぎるというところを押えて、そうして、いわゆる経済の内部における不均衡を是正して、均衡の方策を立てる、物資の需給にバランスをとらせる、こういう方向で参ることになったのであります。それで、他面、経済が大いに成長したこの期間において、日本の生産力は飛躍的な増大をしておる。そこに、今度需要が押えられて、特に、総合施策によってできるだけ内需を抑えて、輸出を増大させる方策をとる限りにおきまして、私は、今後物価は下る傾向にある、こういうふうに考えておるわけであります。
それからいま一つの貯蓄でありますが、これも、結局輸出の増大ということに中心がある。輸出が伸びないと、なかなか資本の蓄積というものも日本の経済では困難である、そうしてまた、その根本にあるのは、輸出についても、あるいは貯蓄についても、物価が安定をしておる、国際水準において安定をする、ということがやはり必要になるのでありますが、先ほど申しましたように、今後は、輸出の増大、輸出を大いに伸ばすことに全力を上げる政策、先ほど政府で発表いたしました三十三年度の経済の見通しによりましても、三十二年度において輸出がおおよそ二十八億ドルというのに対しまして、三億五千万ドル増の三十一億五千万ドルをぜひ一つなしとげよう、こういうようにいたしております。それですから、これだけの輸出増大が国内に蓄積になりますように、そこで私としましては、国民みんなの御協力を得まして、この事態に対処して、できるだけ貯蓄できますように、むろん先ほど申しましたように、物価の安定をいたしまするが、同時に、生活態度として、貯蓄ができますように御協力を願いたい。また同時に、貯蓄をしやすいようにいたします政策はできる限りとりたい、それで、各方面に対しまして、今貯蓄を増大する具体策の立案をお願いしておる次第であります。これができ次第よく検討を加えまして、適当と思うものについては、あるいは立法化もいたしまして対処いたしたい、かように考えておるわけであります。
○土田國太郎君 もう一つお伺いしたいことは、現在の間接税でありますが、これは、非常に不公平、不均衡になっておることは御承知の通りでありますが、これを来国会あたり是正のお考えはございませんか。そのお考えを。
○国務大臣(一萬田尚登君) 間接税につきましては、ただいま臨時税制調査会にお願いをして検討を加えていただいておりますが、成案を得ますれば考えるということにいたしたいと思います。
○土田國太郎君 最後に、中小企業の現況について御意見を伺いたいのでありまするが、政府の総合施策の結果、引き締め面が中央の大企業あるいはその関係したものに非常に影響が大きかったのでありまするが、最近に至りまするというと、この影響が地方にも強く出て参りまして、次第に金融難が中小企業の方にも、これは中央といわず地方にもこの悪影響が出てきておるのでありまして、従来現金払いであったものが、手形に切りかえるとか、手形で三十日のものが六十日になり、百二十日になり、ひどいのは台風手形と申しまして二百十日というようなものもある。これは中小企業が非常に困っておることは私が申し上げるまでもないことでありますが、ついては、昨日も三公庫の参考人においでを願いましていろいろ御説明を伺ったのでありまするが、この二公庫及び中金あたりでも、ぜひともこの年末の金融の金繰りが困難であるから、何とか財源がほしい、こういうような申し出もあるのでありまするし、また私どもといたしましても、この春の大蔵御当局の説明によりまするというと、三百五十億の財源を与えたからまあ大丈夫だろう、もし、それで不足のような場合にはまた考慮してもいいからという御説明が、六月の本委員会においても実はあったのでありまするが、この三百五十億のうち大体百三十億というものは、これは両公庫の貸付金に相なりまするので、大体中小企業の設備投資に回る金と私は想像しておるので、実際の手形の切りかえとか商品の支払い等に充当するものは、わずか中金の二十億程度ではないかと、こういうように考えられます。そのほかに二百億の金融債の問題があるのでありますが、昨日も大月さんの御説明によりますると、七月から始まったことでもあるから、今のところ十五、六億程度の金融債が消化しただけだということでありまするので、三百五十億もらったのはいいが、現在においては中金の今申し上げた二十億程度と、それから金融債の十五、六億程度が消化されただけで、約半分以上のものはまだ絵に描いたぼたもち式のもので、中小企業の手に入らない状況である。同時に今申し上げましたように、大企業の支払いを怠っておりまするために非常に困難で、この十二月のやりくりについて皆非常に不安を感じておるようなわけでありますので、先般も産業機械工業の某会社に対しましても、公取の方から支払い促進の警告を発したというような話も聞いておるような状態でありまするので、どうか一つこの年末のやりくりの財源を、これは地方銀行とかあるいは相互銀行、信用組合、信用金庫というものを御督励下さって、大体そういう方面が中小企業の金融の大宗をなしておるものですから、一段の督励を願えるかどうかという一点と、これも絵に描いたぼたもち式ではなくして実現をしてもらいたいということと、それと今の三公庫に対しまする実際に使える金というものはわずかしかないので、これでは中小企業の方がやっていけないという説明も昨日ありました。また、第四・四半期の分も、すでにもう政府の御了解によりまして使用済みになっておりまするので、これが穴埋めをしなければならぬ。そのほかに三公庫におきましては増額を是非してもらいたい、こういうことで、きのうもお話があったのです。それについて一番大切な問題は、この金融の措置のタイミングでありますが、これが適当の時期を失しますとこれは何にもならないのでありますので、この点、大蔵省におきましては、年末の資金繰りについてどう考えられておるか。この中小企業はこれは全く政府の政策の急激なる変化によっての影響を受けたのでありまして、だんだんそのもとを探って見れば、政策の変化とでも申しましょうか、多分にこれは政府の方にも中小企業に対しましては、大企業と違いまして設備もそう大して使ってもおりませんし、実際目の前の手形の切りかえ、手形の支払いというものに困難を生じておりまして、神武以来の不渡手形を先々月も先月も出しておるような情勢、加うるにこの十二月を目の前に控えておりまするので、これはどうしても十一月までに準備しなければ暮の支払いには間に合わないのでありまするから、この点、何とかしてもらわなければならぬと思いまするが、この点どういうお考えでありますか。大蔵大臣の実際のところをお伺いいたしまして、本会議はないのでありますから、当発委員会を通じて、中小企業でありまする方々に安心を与えたいと思うのでありまするが、この点お伺いいたしたいと存じます。
○委員長(豊田雅孝君) それでは両参考人及び専売公社当局に対し質疑を行います。
○江田三郎君 今の兵庫の方にお尋ねしますが、百五十トンくらいの目標で出発をしたところが、二百トンもあるいはそれ以上もとれるようになったということになると、結局ようもうかったということになるわけですか。
○参考人(沢田豪一君) ようもうかったということの計算は、それだけとるのにつきましてはいろいろ準備……そういうことはのけにしまして、準備をする、準備費とか、建設費とか、そういうものがたくさんかかっておりますから、そういうことは一応度外視して百五十トンというものができたのでございます。ところで、だんだん欲が出て参りまして、この海水濃度を濃いくするとか、あるいは枝条架の位置を、向きを変えるとか、そういったようなことに投資をしていきました。それが順次こういうことになっていっているわけなのであります。ですから百五十トンになったから、前が百トンであったから、たとえば百五十トンになったその五十トン分はその割合でもうかっているのかということにはならない。それにつきましても借入金が相当ございますので、これを償還財源に充てなきゃなりません。そういう関係で初めの入浜当時とならば、この入浜当時でございましたらとても問題になりませんが、入浜当時のことを考えれば経済状態は幾らかよくなっている、こういうことは事実であります。
○江田三郎君 そうすると、百五十トンと最初計画したときよりはずっと数量はふえたが、しかし設備投資というものが百五十トンを目標にしたときとはうんと違ってきたのだ。しかしまあ実質的にはそれだけ生産数量が上ってくればトン当りのコストはやっぱり下ってはおるということなんですね。
○参考人(沢田豪一君) トン当りのコストと申しましても、借入金の償還償却等を一応考えなきゃなりませんので、これが済めばうんと下って参ります。それをやる間は、下るというよりもまあ上ると、私の方を一例にとりますと、昭和三十六年度がピークになっております。昭和三十六年度以降になりますと下って参ります。そういう状態であります。
○江田三郎君 まあそうすると、あまりもうからぬということになりますが、まあもうからぬもうからぬと、言う話だけでも、何だろうと思うのですが、そこで今、本年及び今後の問題につきまして、公社の方から、あなた方の方に一つの対策が諮問されているわけなのですが、それに対しては、これは会長にお尋ねいたしますが、連合会としてはどういう態度をおとりになっているのですか。
○参考人(平野亮平君) お答えいたします。先刻申したような状況でありまして、公社の方としては、公社の一案として、こういうことを示されておるのであります。塩田の一ヘクタールの生産量は二百トンをもって制限したらどうかということが一つの条項であります。その他、余った塩をソーダ業にもっていくとか、いろんな条項がありますけれども、今の制限の方について申しますと、塩田については、たとえば、三百五十トンとれるような所であっても、これは勝手にとるわけにはいかない、それは、そう野放図にとればどんどん塩が余ってくるから、塩田に対しては二百トンで一応線を引いて、それまでは食料塩として買ってやる、それ以上になっては、これはソーダ工業として買うよりほかしようがないという一つの案が公社から示されております。それから、価格の点につきましては、これは、公社の方で非常に精細なる生産費調査をして、その結果によりますれば、相当下る余地がある、トン当り六百五十円くらいの余地があるように思うから、これはぜひ下げなければならないと、こういうことが、生産制限に関する数量方面、価格の方面についての一つの公社の案であります。それに対して、私どもの方では、そういうふうに、二百トンというような線を引かれては非常に困る、すでに平均して二百七十トンもとる所もある。多い所は、三百トンも三百五十トンもとるような所もある。現に、岡山県とか香川県には事実あるのでありますから、そういう低い線を引かれては、とうていやっていけないということが事実でありますので、この線はこのままには承服できませんということをお答え申しておるようなわけでありまして、今御相談中であります。それから、収納価格の問題につきましても、公社の方は、下げる余地がある、こういうふうにお考えであるようでありますが、われわれ業者の方にとりましては、とうていそれではやっていけない。これも御承知と思いまするが、塩の収納価格は全国一本の価格になっております。なるほど、その所によっては、改良事業に早く手をつけた所とか、あるいは資金の余裕が相当ある所とかいう方面の人たちは、若干の余裕があることは、これはもちろんのことでありますけれども、全体で申しまして、非常に困っておる所もあるのでありまして、地方的に申しますと、山口県とか大分県とか、広島県とか、兵庫県の一部とかいう方面においては、非常に現在の収納価格では困っている所があるのは事実でありますから、私どもとしては、どうしてもこれは一つ引き上げていただきたいという要望をいたしておる次第であります。なお、将来のいろいろの国策の問題につきまして、たとえば、今までは食料塩というものは自給という方針であったけれども、余ったものはソーダ業の方にも持っていくというようにするとか、その他いろいろの問題がありますが、今の制限に関する問題について二点だけを申し上げたのであります。
○江田三郎君 公社の方にお尋ねしますが、今の、業界へあなたの方で諮問されておる内容というのはどういう内容なのですか。これはすでに業界へそういうものをお出しになっているというなら、いずれ印刷物があると思うのですが、そういう印刷物をお配りしてもらう親切はございませんか。
○説明員(三井武夫君) 先般来業界の方に示しまして、あらかじめ折衝を重ねておりまする要点は、今平野さんから申された通りでありまして、その他にこまかい三、四の点がございますが、これは大きな問題ではないわけであります。この業界に示した案につきましては、いずれ資料として当委員会にも提出する用意をいたしております。
○平林剛君 その資料について、私は、委員会が開催される一週間か十日前に請求をしておいて、委員会にも御提出願おうということを要求してあるわけです。ところが、口頭で申し上げるというお話があったから、何かいろいろ今後の折衝に差しさわりがあるのじゃないだろうか、そう思いまして、私は、それならば口頭で説明をしてもらおう、こう思っていたわけです。ところが、自由民生党の塩業対策小委員会には、すでにそれがプリントで渡されている。そうして、専売公社の諮問と自由民主党の塩業対策小委員会のこの問題に対する決定が対比としてプリントにまでなっている。これは少し片手落ちじゃないか。私は、専売公社の御都合もあろうと思いましたから、今日まで黙っていたわけですよ。黙っていたところが、与党に対しては示されておる。そうして野田試案とか、いろいろなことがあります。あなたの言葉を信用して、私はあなたの都合を考えてやったんですけれども、こういうことをやられては困る。
○説明員(三井武夫君) ただいま申しました通り、業者に示した案につきましては、御要求があれば、ここでくわしく御説明いたす考えでおりまするし、また、資料として書いたもので出せということであれば、その御要望に沿いたいと思いまするが、今お話の、自由党の小委員会に正式に書面で出したということは実はないのでございます。あるいは、その他の方面から提出されておるというようなことがあるかもしれませんですけれども、私の方では、まだ公社の案というものは小委員会には正式にはお出ししてないわけでございます。その点は御了承願いたいと思います。
○江田三郎君 これは、平林委員から、前から要求しておったものでしてね。そういうものが、どこからどうなったのかしりませんけれども、要求しているのに、一向出して来られない。しかも、そういう公社案といわれるものが、そういう肩書きをつけられたものが、あなたの方でお出しになったのかどうかしりませんが、配られておるわけですね。あなたの方が配ったんじゃないということですけれども、そうなってくると、何だかばかにされたような気を持つのは私は当然だと思うのでして、平野会長の方から話があった、要点はそのくらいのものだ、あとは大したものじゃないといっても、私はそうじゃないと思っております。ただ二百トンまでを云々とか、あるいは将来の問題とかいうことをだけでなしに、一体これだけの大きな転換をするということになると、塩業政策全体を一体どうするかという非常に重要な問題であって、平野さんが今おっしゃったようなことが重点だということだけでは私はないと思うのです。そういう点、きのうのたばこのときにもちょっと申し上げたんですけれども、公社というものが、何だか非常な専売事業という権力を持っているだけに、イージー・ゴーイングな、居眠りをしておらなければ、あぐらを組んでいるということになりましょうが、そういう態度について、私どもは、縦本的に今後公社の態度というものを改めてもらわなければならぬと思うのですが、そこで、そういうことはまあよろしい、よろしいが、公社の案というのは一体どうなっておるのか、詳細に示してもらいたい。
○説明員(三井武夫君) ただいま塩業者にお示しいたしております公社の案を、御希望がございますので説明さしていただきたいと思います。いずれ、書いたものにして後刻提出いたすのは別といたしまして、一応私から御説明申し上げます。
公社の今回の案は、先ほど平野会長からお話があったと思いまするが、昭和二十五年の閣議決定におきましては、食料塩の全量自給ということを一応の目標にしておりました。今日まで公社が努力いたして参りましたのも、この方針に沿ってでございます。これは昨日も私から申し上げた通りでございます。これを今回の場合には食料用塩の全量自給の上にさらにつけ加えまして工業用塩の一部を国内で自給する。これを今後の基本方針にいたしたい、かような考え方でございます。
この考え方に基づきまして昨日も御説明いたしましたように、一応昭和三十六年度におきまする国内食料用塩の需要を百十万トンといたしまして、この百十万トンに見合う食料用塩を確保するために、塩田につきましては一ヘクタール当り二百トンを一応の線といたしましてこの点までを食料用塩として買い上げる。それから塩田をもっておりません海水直煮その他の製塩につきましては、現在許可いたしておりまする能力を一応食料用塩の限度といたしまして、食料用塩の価格で収納する。かようにいたしまして、それをこえたものは工業用塩として収納する。つまり従来の収納価格は一本の収納価格でございましたが、これを食料用塩の価格と工業用塩の価格と、この二段に区別いたしまして、それぞれの数量に応じてそれぞれ区別した価格でもって収納する。これが基本の考え方でございます。そうしてその両方の収納価格の目標といたしましては、食料用塩につきましてはトン当り一万円以下にするということを目標にいたします。それから工業用塩につきましては、五千円程度ということを目標にいたしまして、この目標に向って順次引き下げていきたい。かような考えをもっております。
そこでこの二百トンの制限と、それから百十万トンの食料用塩の需要量とをマッチさせるためには、現在ございます塩田がすべてヘクタール当り二百トンの生産をしたのでは、百中万トンよりも生産が余りますので、そこのところを百十万トンの需要と合せるためには非能率塩業というものを一部整理するということを考えなければならない。その方法といたしまして、公社の案は二つの考え方をとっておりまして、一つは能率の悪い塩業を優秀な企業に統合するという表現にいたしてございます。この場合には統合いたしました塩業に対して、統合されました塩業の、いわば従来の生産量というものがございまするので、それの幾分というものを、大体これは半分と一応予定いたしてございまするが、つまり半分の生産量だけは先ほど申しましたヘクタール当り三百トン、あるいは機械製塩の場合等には従来の許可商にプラスいたしまして、これは食料用塩として買い上げる限度のワクをそこまで広げるという考え方でございます。こういうふうな考えをとりましたのは、ヘクタール当り二百トンの制限量というものが、全国的にみますと全国統一した限度といたしましては、私ども二百トンということを考えたわけでございまするが、一部の優秀な地帯におきまして、今日の二百トンという制限は確かに低過ぎると考えた次第でございます。しかしその二百トンも低過ぎるというの、でありまして、その二百トンを一律に緩和したのでは非常な食料用塩の需要以上に生産が出て参りますので、そこでそういう優秀な企業におきましては、能率の悪いところのいわば権利を買い取りまして、その権利を買い取った場合には、その半分を二百トンの基準量にプラスをしてあげる、こういう考え方をいたしたのでございます。
もう一つ付け加えて申しますれば、ただいま申しました結果は、現在三百トンまでとれておりません塩田ももちろんございますが、そうした塩田は二百トンまでは今後もあるいは必要があれば改良を加えて生産の増加することを認めるのでありますが、二百トンをこえておりまする所は――現状すでに二百トンをこえております場合には、その状況を抹殺するわけに参りませんので、従来通り生産は継続してもらうのでありますが、ただそのままにしておけば、二面トンをこえたものはすべてソーダ工業用塩の安い価格で買われることになりますので、その塩業としてそろばんをとりまして、権利を買ってきて他の弱少企業を統合するということになりますれば、それに応じた基準量の拡張が認められるわけでございまして、個々の塩業としてはそろばんをはじいて、二百トンをこえたものは将来は五千円程度の値段で買われる方が得か、それとも金を出して権利を買って参りましても、二百トンにプラスしてもらって、その分は一万円で買ってもらう方が得かということを、そこのところはそろばんをはじいて、それぞれの考え方でやってもらってよろしい、こういう考えといいますか、二百トンの一律の制限という弊を除去するための緩和手段を考えたのでございます。しかしこのような業者間のいわば権利の売買、これはちょっと言葉は悪いと思いますが、権利の売買によりまして、弱少企業の統合をはかりましても、まだその全体の生産量が百十万トンをこえてしまうという場合もあり得ると考えまして、塩業者が希望する場合には整理を考える。その場合にはやはり国家補償と申しまするか、一定の補償金を出して整理をいたすことも考えなければならない。この弱少企業の優良企業への統合とそれから国家補償による整理、この両方をやりまして、食料塩の生産量は百十万トンの需要に見合うようにいたしたい、かような考え方をいたしたのでございます。
それから一方では今後におきまして、内地の生産塩なりあるいは鹹水なりというものをソーダ工業に利用いたさなければなりませんので、そのための研究等に対しましてはできるだけの助成措置を考える、また海水の総合利用工業の発展につきましては適当な助成措置を考えまして、塩業をそういう面から多角経営というような点への助成を十分いたしていきたい、こういう考えでございます。
こういう措置を前提といたしまして、つまり将来の収納価格を考えれば、二段価格制というような新しい体制をとるわけでありますが、これは来年度から実施することにいたしまして、来年度から食料用塩の価格とソーダ業用塩の価格を作りまして、初めはできるだけその開きを少くいたしておきまして、それをだんだん下げていくと同時に、その両方の価格の開きをだんだんと大きくして参りまして、昭和三十六年度を目標としておりまするが、昭和三十六年度には二万円、五千円といった目標価格に到達したい。そうして今年度は一応従来通り一本の価格で食料用とソーダ用とに分けませんで一本の価格にして生産費の低下の実情、すでにいろいろとお話がございまするように、非常な増産が行われておりまするので、その増産の結果生産費が低下いたしておる。その低下いたしておる実情に基いて収納価格を引き下げた。で、詳しい計算をいたしまして、トン当り六百五十円程度の引き下げは可能と認めておりますので、一トン当り六百五十円の引き下げ案を示しておるのでございます。
それからもう一つは、従来真空式の製塩につきましては九三%以上という基準を設けてございまするが、蒸気利用式につきましては八八%、それから平釜式につきましては八五%以上というのが収納基準になっております。しかしこれは非常に甘いと申しまするか、非常に低過ぎる基準でございまして、こういう塩は現在すでに元売り、あるいは小売店では売れなくて困るということで非常に苦情が出ております。公社といたしましてもこういう質の悪い塩の始末に困っておりまするので、これをこの蒸気利用式につきましては八八%を九〇%、それから平釜式につきましては八五%を八八%に引き上げたい。ただしこれは即時実行するのは非常に気の毒でございまするので、この引き上げに応ずるいろいろな措置をいたす必要も考えまして、適当な猶予期間を置きまして実施いたしたい、かように考えております。
そうして以上のような手を打ちました後にも、なお新規の製塩の許可が申請されて参ったり、あるいは全く従来とは違うような他の新しい方法でもって塩を作りたいというような申請がありました場合には、現在すでに工業用として五千円程度の目標価格以下の塩ができるんだという場合には、その製造を許可いたしまするけれども、それ以外の場合には今後の新規許可はいたしがたい、かように考えております。そのことを項目として明示いたしたわけであります。これは考え方によりましては他の工業用塩をだんだん下げて参るのであるから、それに応じて下げられる限度で、今後のソーダ工業の新規の許可もしていいじゃないかという考え方もございますけれども、従来新しい許可申請に対しましてはみな、何と申しまするか、非常に甘い計画を出して参りまして、それを許可いたしました後に状況が変化した、物価が上ったというようなことでなかなかコストが下らない。現在の機械製塩がすでにそういう状況でございまするので、今後はその点を厳格に考えまして、即時に五千円以下の塩ができるというような計画でなければ許可いたさないようにしようという考えでございます。
以上が生産の対策でございまするが、次に販売の対策につきましては、主として販売価格の問題でございまするが、塩業者の方面からは、この点につきましては現在御承知のように塩の会計は昨年度におきまして十億円以上の赤字が出ておるような現状でございまして、これの改善のためにも収納価格の引き下げということをわれわれは言っておるのでありますが、収納価格をできるだけ下げぬで販売価格を上げることによって収支の均衡をはかったらいいじゃないかという非常に強い御意見が出てくるのでありますが、私どもはその点につきましては最も謙虚に考えまして昨日も申し上げましたように、販売価格の引き上げというようなことは、安易にこれは考えてはならない、まあ従来塩の種類の間にも多少価格の均衡のとれてないようなものがございまして、これを是正するといったような方面でできれば、上質塩を多少上げる、そして白塩を引き下げるといったような塩の種類の間での調整ができるならば、その限度でしか考えられないのではないか、塩価の引き上げ、販売価格の引き上げということは不用意には取り上げるべきではないというふうに、この点については対策を示しておるのでございます。
それからもう一つ現在の塩の販売価格の点につきまして、法律で認められております特別価格制度というものがございまして、これはソーダその他の工業用に使いまする塩と、それから魚の塩蔵用に使いまする塩とにつきましては、特別価格で塩を売り渡してよろしい、つまり安く売ってよろしいということになっております。この点をできますれば、輸出増進というような見地から、直接間接に輸出に役立つような場合に使われる塩については特別価格を適用して安く売る。その他の国内向けの塩につきまして特別価格をもうこの際積極的に存置する必要はないのじゃないかといったような考え方をいたしまして、できますれば、この輸出用の特別価格制度というものを将来の重点に持って参りたい、これはもちろん法律の改正を要しますので、いずれまた御意見も伺って実行するとすれば御協力を得なければならない問題でありますが、一応の考え方としてこの現在の特別価格制度の再検討ということを考えました次第でございます。
こういうような措置をとりましてその上に公社の経費あるいは中間の配給機構に要しまする経費等の節約をも十分に行いました上で、将来は塩事業会計の収支の均衡がとれるようにいたしたい。大体昭和三十七、八年ごろになりますれば、私どもの計算でも収支のバランスがとれるようになるのではないか、それまでは相当の塩事業会計に赤字が出るということになりますが、これだけの各方面にいろいろと御協力を願って、塩業の将来の方策を新しく立て直そうという時でありますので、公社もある程度までは赤字をしのびまして、財政当局にもこの点のお認めを願いまして、そうして将来収支の均衡がとれるようなところまで持って参りたい。かようなことを最後につけ加えておきます。
大体以上が塩業者に示しました案の大要でございます。
○江田三郎君 聞いていますと、これはなかなか大へんな問題を含んでおるわけで、いわば塩業の一つの革命とでも言うべきものだと思います。そういうことをわれわれが資料を要求しても一向にお出しにならぬ、そうしてただ業者の方とだけ話をされて、おそらく業者の方との話という場合には、従来の専売公社の権力をかさに着たところの態度がよろいの下に出てくるだろうと思うのですけれども、これはちょっと容易なりません。それであまり問題が大きいので、簡単に取っ組めんようなことになるのですが、あなた方が今の業者の方のお話を聞きますというと、生産は百五十トンを目標にして、それがずっと目標数字を上回ってきた、しかしそれは最初の設備投資の額が違うのだから、そうもうかってはいないのだという話が出ておるのに、今部長のお話では、昭和三十六年を目標にして工業塩は五千円程度を目標にし、あるいは食用塩は一万円以下にするんだということになると、これはちょっとあまりにも話が違い過ぎるわけなんですが、実際こういうことができるのですか、それはあなたの方の目標は従来の食糧塩の全量自給だけでなしに、工業塩の一部も自給におくんだと言うけれども、これじゃさっきの業者の方のお話を聞いておるというと、増産になるのではなしに、日本の塩業をつぶすのだということになってしまうと思うのですが、そういうことが実際あなたの方は三十六年までにここへ持っていくという自信があるのですかね。それをもう少し聞かして下さい、あんまり話が違い過ぎるのですよ。
○説明員(三井武夫君) きのうも御説明いたしましたように、現在の塩業をそのまま放置いたしまして、塩業者自身がいろいろと計画しておられる増産をすべて完了いたしますると、昭和三十六年度におきましては、百四十五万トン、これは百四十九万トンという数字も出ておるのでありますが、きのうお示ししました数字には百四十五万トン、そのくらいになります。そうなれば、きのうもお話しましたように、百十万トンをこれるものが四十万トン近く出て参る、こういう状況になりまして、そいういう状況であれば、その四十万トン近くのものを工業用に消化する以外には手がない、こういうことになります。ただいま申しました施策をかりに公社が考えておりまする程度に実施いたしました場合には、一応私どもといたしましては二十万トン程度の余剰が出てくるのではないか、つまりこの場合の食料用以上に生産される数量は、大体二十万トン程度が余りまして全体の生産量は百二十万トン程度にいたせるのではないか。今後は従来のような増産はこの辺でストップをかけまして、現在もうすでに計画中のもの、あるいはすでに能力が相当のところまで達しておるものは、そのまま生産を継続してもらいまして、それ以上のものは、先ほど申しましたように、単位当り一再トンというところで生産をとめてもらいたい。しかし二百トンで生産をとめましても、経営の合理化、塩田方式の改良によりまして一万円までは下げられる。また現在すでに能力を持っておりまするものは二百トンをこえまして生産いたしましても、その超過分は五千円程度で引き合う。つまり全体としては八千円なり八千五百円なりというような平均価格で生産されるのであれば、その企業としては十分にそろばんがとれる、かように考えておるのでございます。従来食料用塩自給ということで増産増産ということでやって参りましたから、百八十度転換ということになるのでありまするけれども、しかし食料用塩の全量自給が目標でありましたのですから、全量自給がもう一、二年のうちに達成されるという今の時期に、やはり従来とは方針を変えまして、この辺で将来の対策を立てなければならぬ。ただし、現在すでに今申しまするように百十万トン以上にできそうな態勢にございまするので、その部分はできるだけ押えまするけれども、できてしまう塩については、そろばんのとれる値段でもって買い上げてそれをソーダ用に振り向ける、かような考えで立案いたした次第でございます。
○江田三郎君 従来の食料塩の全量自給ということが、さらに工業塩の一部自給まで拡大された、そういう方針が変ってくるということは、これはわかります。けっこうです。けっこうですけれども、今まであなた方はいろいろ増産の奨励をしてこられた、指導をしてこられた、それはおそらく業界の方方は将来合理化が進むに従って多少の値段は下るということは予期しておったであろうけれども、それが昭和三十六年になると、今の一万三千円が八千円程度になるのだというのでは、これはあまり違い過ぎて、どんな業界だってそんなに急激に値段が変ってくる、しかもそれはアズキのような投機の対象になるものは別ですよ、国が専売事業として権力的な運営をして、そうして指導し奨励をしてきておったものが、わずか三、四年先になるというと一万三千円が八千円平均になる、こんな指導というものが実際あり得るんでしょうか。しかもあなたの方は、きのうも話を聞いているというと、ごく最近に至ってこういう情勢になったというのだけれども、そんな説明は塩脳部長通りますか。
○説明員(三井武夫君) 昭和三十六年度におきまして塩の収納価格を一万円に下げたい。これは公社でもかねがね考えておりましたし、塩業者自身もすでにその点につきましては用意をいたしまして、塩業者自身が計算した生産費の見通しというものもございまするけれども、これはやはり昭和三十六年度におきましては一万円近くになるということを塩業者自身が従来考えて、それに努力してきているわけであります。今回変りましたのは、今までは三百トンとってもあるいは四百トンとっても一万円に買ってもらえるのだという点を塩業者は考えておったかと思いますが、その点は一定の合理的な線までは、一万円で買うけれども、それをこえたものは安くなる。しかしそれは乱暴にそろばん勘定かまわずに安くするというのではなくて、そういう企業は優秀な企業であります。すでに設備もできているというような企業でありまするから、この企業のコスト計算をしてみれば、そういう優秀な企業については超過した部分だけは五千円くらいに計算しても昭和三十六年においてはそろばんがとれる。しかしそれも年々下げていってそこまで下げさせるということなんであります。相当の時日をかけてそこまで持っていくということなんであります。全体の塩の生産費を八千円に下げるとか、あるいは七千円に下げるとかいうことを申し上げているのじゃないのです。一方では先ほども話がありましたように、一作年の塩の生産は五十万トン弱であります。去年は六十万トンでありました。ことしはすでに九十万トンもとれようという状況であります。ほかの産業でこれほど短かい期間にこれほどの増産が実現できているものは私はあまり例はないのじゃないか。それだけの大増産ができていれば、それに伴いまして生産費が下ってくるというのは当然であります。またそれが期待できるからこそ、今まで公社としたは多額の補助金を出し、国家資金を投入して生産費を下げようという考えでやって参ったのであります。生産費が下ってきた実情に応じて塩業者も将来の目標としては一万円にできますといって努力しているのを受けて、こちらも今後の塩の価格を下げて参るという計画でございますので、決して私はこの計画は実現不可能ではないというふうに考えております。
○江田三郎君 平野さんにちょっとお尋ねしておきますが、公社の方は将来は一万円程度になるのだ、こういうことで指導してきたというのですが、業界の方ではそういう形で公社の指導を受け、そうして業界の方々はそういう指導に基いて拡張なりあるいは改良工事というものをなさったのかどうかということなんですね。もしそうでありますならば、私は業界の方々がこれは考え方を改めてもらわねばならぬ。
○参考人(平野亮平君) ただいま塩脳部長からお話がありましたが、大体国内塩業の価格は漸次下げていかなければならぬということは、これは大方針でありまして、これは塩専売以来の問題であったと私は思っているのであります。われわれとしてもだんでん下げていくということについては何らの異存はないのであります。ただし現在においては、非常なる改良事業をやりまして、それがために非常に多額の経費を、借金をしてやっているのでありますから、単に増産ということの一点だけをみて、物の値段というものは増産によって下るものであるというようなお考え方については、私どもは反対しているのであります。
それからもう一つ、これは公社当局に対して私は批評のようなことになりますが、大体この問題が起きましたのは、塩専売会計が赤字である。この赤字をどうしても消さなければならぬということが根本になっているように私は始終思っているのでありますが、収納価格というものは生産費をもととしてまず決定されるのが当然であって、業者側としてはそれをやってもらいたいということをしきりに主張しております。御承知の通り塩の専売は最初においては一千万円の国庫収入を得るために、日露戦争後の財政措置として始められたのでありますが、大正八年に高橋さんがなくなられたときに、塩のごとき日常生活品からもうけをとることはよくないから、これは収支とんとんにすべきものである、こういう方針がきまりまして、今日は塩の専売は公益専売であります、でありますから、理想をいいますと、収支とんとんでいくのが当り前でありますけれども、ときによりますと、運賃が非常に暴騰するとかいろいろな情勢の変化によって塩専売が赤字を出したことはしばしばありまして、そのたびごとに、これは専売の納めます金は専売益金として納まっておるのでございますから、あるいはたばこの方からこれを補給するというようなことでずっとやってきておったのであります。また専売公社になりましてからも、ずっと塩専売会計は、これは何も生産者の努力ではありません。生産方面の努力ではありませんけれども、黒字をずいぶん続けておりまして、たしか八十九億ぐらいの黒字を国庫に塩専売会計として納めておるのであります。そういうような関係もありますから、かような塩田の革命において非常なときに当って、その改良工事の途中において収納価格を下げるというようなことは、業者の生産意欲を非常に阻害し、非常な悪影響を及ぼすから、せめてこの改良事業の終了するまで待ってもらいたいということをたびたび、昨年来申し上げておるのでありますけれども、これは生産コストから見ても下るのである、あるいは塩専売収支の会計の赤字が出るということは塩専売会計としてどうしても余儀なからざることであるとの一点張りで、それを復唱される点において、私どもなかなか不満に思っておるのであります。
それから今もう一つお話がありました一万円の問題でありますが、これは将来の目標としては一万円程度にしなければならぬということは公社もこれを言い、業者の方もそうしなければ、何しろ外国塩が非常に安いからという意味において、私どもは賛成を表しておるのであります。これは将来の問題にかかってくるわけで、現在の収納の価格の問題ではないのであります。そのことを申し上げておきます。
○江田三郎君 業界の考え方もわかりましたが、塩脳部長さんのおっしゃることも私は非常に独断が多いと思うのですね、たとえばあなたの話によるというと、三十一年度六十数万トンであった、それが今度は百万トンになるのだ、これだけ大きな飛躍をする業界が一体どこにあるか、このことを考えてもコストの引き下げはできるはずだと言われますけれども、しかし同時にあなたの方は生産費調査をやってみて本年度一ぺんに三十万トン以上のものがふえているという状況の下においても、あなた方の一方的な生産計算によってもわずかに六百五十円しか下げる余地がないのでしょう。一体一万円といったところで平均すると、工業塩と平均すると、あなたは八千円ぐらいと言われます。一万三千円から八千円まで、五千円ですよ。この一年間に六百五十円下った、ところが三十三、三十四、三十五、三十六までにこれを五千円下げるというようなことが、こんなことが一体、あなたが生産の増強から見てもそのくらいのことはできるのじゃないかと言われますけれども、私どもはこれは納得できませんよ。従ってあなたの言われるところの生産費調査というものを出して下さい。これをちょっと仔細に検討してみたいと思います。
それからさらにもう一つお聞きしたいのは、一体あなたのお話を聞いておっても、今後塩専売の方では若干の赤字を覚悟しなければならぬということでありましたが、そういう赤字は今までの計画を進めていくということになるというと、今後年々どのくらいの赤字ということを見込まれておるのか。
それからさらにもう一つお伺いしたいのは、何年でありましたか、例のソーダ工業塩の輸入をこれははずされました。そういうようなソーダ工業塩の輸入を専売からはずしたということは、私は非常な、ことここに至ると専売業に大きな混乱が出てくると思うのですが、先ほどの対策の中にはそのことは一つも触れておられませんが、このことは一体どう考えておられますか。
○木内四郎君 関連質問。さっき塩脳部長からお話があった、六百五十円ですか、下げる可能性があるということをお話になったようです。これはまあ塩の買い上げの価格は全国一律である点を考慮してのお考えじゃないかと思うのですが、そこで私の伺いたいのは、しかも今日問題になっておるのは、あなたの方で指導された流下式ですか、枝条架式ですか、それの収量がずっとふえたというところに問題があると思うのですが、そこであなたの方が初め指導されるころは一ヘクタールあたり百五十トンという計算で指導をして、そしてそういう計算で設備費が幾らかかる、国庫の補助をどうする、資金の融通をどうする、それでそれに対する運転の資金もどのくらいかかるというようなことを計算されておやりになったのだろうと思う。そこで問題は、そこに集中してきていると思うのですが、それは最後の結論はともかくとして、あなたの方でヘクタールあたり百五十トンということで指導された。そのときの設計図、設計図というか、見積りでやったところが、多少電力その他の資金はかかったにしても、百五十トンの見込みのものが二百トンとれ、二百五十トンとれたときの計算は、何千円下げ得るかという計算が、すぐそこに出てくると思うのですが、そこを一つの例にとって、当初の指導のときに百トンの計画でとんとんだった、一万三千円だった、それが二百トン、二百五十トンとれたときにそれが六千円になるか、七千円になるか、八千円になるかという計算を一つ見せてもらいたい。
○説明員(三井武夫君) 江田先生の言われた現在一万三千円のものを数年の間に八千円に下げるということは乱暴ではないか、まさにその通りであれば、これはもう乱暴と批評されてもいたし方ないと思うのでありますが、先ほど来しばしば申し上げているように、公社が現在考えておりますのは二百トンまでの生産を全体の塩業については確保したい。その場合にはこれはもう一万円というのが目標でありまして、現在一万三千円のものを何とかして一万円に下げたい。目標は三十六年度に一万円でありまするけれども、それは今後の状況によってはあるいはその完成年次が多少ずれるといったようなことは当然あり得ると思いますけれども、一応目標としては三十六年度に一万円に下げたい。それで先ほど申しましたように現在すでに相当設備を持ち、優秀な成績をおさめておるものは、二百トンを越えたものは五千円に収納されることになりますから、そういう優秀な企業については全体のコストが八千円かそこら辺の見当に下ってくる。これは優秀な企業とそうでない企業とのコストの開きとしては……十分その程度のものは期待できると私どもは考えております。現にこれは私から申し上げるのは多少いかがかと思いますけれども、塩業者の方でも昭和三十六年度には一万円に近い生産費になってくる。一万八百十五円という生産費の計算をいたされております。もちろんこれは私どもに言わせれば、まだ甘い計算でありますけれども、それでも一万八百十五円にはなり得るのだという計算をしておられるわけでありますから、こういうことを私が申し上げるのは、あるいはいきすぎかもしれませんけれども、実はそういう点も私どもとしては参考といたしまして、決して目標としての一万円は不可能ではないというふうに考えております。
それから木内先生のお尋ねの点はまことにごもっともでありまして、今手元に的確な資料を持っておりませんので、あらためてそういう資料をお出ししたいと思いますが、先ほど沢田参考人からも言われましたように、当初の流下式転換の目標生産量は再五十トンであった。従来の入浜塩田の全国の平均は大体百トンと言われております。ところによりましては百三、四十トンぐらいとっておったところもありますが、また低いところは六十トン、五十トンというところがありまして、平均は百トンと言われております。これが流下式に転換いたしまして五割の増産ができれば、これは大へんな塩業革命であるという考えで実は始めたわけです。それが現在では三百トンを越えているようなところも出て参っている、これが実情であります。これは現に三百トン以上とっているところもある。百トンが三百トンになるというのは、これは三倍の生産量ということでありまして、容易ならざる増産であります。そうであれば、多少そのために設備費がかかる。もちろん鹹水がたくさんとれますから、鹹水だめもたくさん要りますし、その他の設備もよけいに要りますから、それに応じまして建設費はよけいにかかる点もございますけれども、しかし単位当りのコストというものは百五十トンと予定したものが三百トンとれれば、それに応じて下ってくるのが当然でありまして、私どもが初めに考えました以上の生産費の低下というものが、現に優秀な産業においては実現されておるのだ、これは否定できない事実だろうと思います。その実情につきましては、木内先生のお話のような資料を調製いたしまして提出いたしたいと考えております。
それから自己輸入の問題でございますが、自己輸入の点につきましては、昨年度は実は公社といたしましてはこれに賛成でなかったのでありますが、政府の方針といたしましては、戦前の自己輸入の制度を再開するということで方針がきまりまして、私どもも昨年の下期からそれに従っております。ただ自己輸入制度は戦前、御承知のように長いことこれを実行いたしまして、それによりましてソーダ工業を育成して参ったのでありまして、やはり基幹産業としてソーダ工業をできるだけ育成するという政府の方針は、現在でも継続されておるのであります。そのために一方では工業用塩の特別価格制度というものも認められておるのでありまして、私どもといたしましても、政府の方針がきまりました以上は、これに従っていかなければならぬ。ただ従来公社が輸入をいたしておりましたときと、それから現在の自己輸入のときと比べまして、別に公社がソーダ工業用塩を輸入していたためにもうけておった、つまり食料用塩をソーダ工業用塩にかぶせておったということは実はないのであります。従来のやり方でも工業用の塩の価格はときどき変更いたしましたが、それは平均の輸入価格をもとにいたしまして、できるだけそれに近い価格で売り渡しまして、その実際の平均輸入価格と公社の売り渡し価格との差額あるいは差損というものは、あとで調整するということで大体はやって参りました。従って公社はソーダ工業を扱うことによりまして別に利得を得ていたわけではないのであります。従いまして現在自己輸入を認めまして、公社はやはり形は公社輸入でございまして、塩船が入って参りますと、それを検査し、量目をはかり、分析をする。そして買い入れと売り渡しの手続をとるというようなことで、公社の仕事もやはり残っておりますので、その経費といたしまして、トン当り四十円を徴収いたしまして、それをソーダ工業に売り渡すということになっておりますので、ソーダ工業の何と申しまするか、全体の計算では自己輸入前とあとで大した違いはないのであります。それから将来五千円程度の工業用塩が公社で収納されるときをとってみますれば、公社で五千円で収納いたしまして、それに必要の経費を加算いたしました価格でもって、その塩をソーダ用に売るわけでありますから、ソーダ工業用としてはやはり収支がとんとんになる。食料用は食料用の方で収支はとんとんになる。従って公社はいずれの場合につきましても、収支のバランスがとれるようなことにいたしたい、これが理想でありまして、ソーダ用でもうけるとか、あるいは食料用で損をするとかいう考えはないわけでございます。
○江田三郎君 さらに公社の方で赤字をどういう工合に見るかという御答弁がありませんでしたが、それはあとでもよろしいが、とにかく今のお話を聞いても、われわれはなかなかこれは納得できませんよ。われわれも直接塩業を営んでいるものではないからわかりませんけれども、しかし業界の主張とあなたの方の主張とは非常に開きがあるし、あなた方は業者の見方は甘いのだと言われるけれども、一体あなた方にその資格があるのかということになるのです。突如としてこういうような大転換を持ち出すようなことをするあなた方に、タバコを例にとってみれば、減反案を持ち出すようなあなた方に、一体専売公社副総裁はその資格があるかどうかということなんです。その点まず資格審査からしていかなければならぬと思うのですが、そこで一体いつまでにおきめになるのか。私はそういうおきめになるまでに、今私が申し上げましたような生産費の調査、これは木内さんの言われたような、そういう意味の調査というものも必要であります。それからあと国家補償というような問題がありましたが、国家補償ということについて、公社の場合に国家補償というものの具体的内容はどういうことか。さらに、これからこのコストの引き下げをやっていくということになると、これは相当の設備を改善しなければ、ほっておいてはできるわけのものではないのでありまして、そういうことのために、あるいは金融措置なり、あるいは補助の措置というものをどういうふうにとっていかれるのか。そういうことなしに業者独自の考え、あなたは八千円になるのじゃない、一万円、一万円と言われるけれども、しかし平均単価を見ても、八千円ということもまた根拠のある数字であります。一万円でも八千円でもいいけれども、そういう大きなコスト・ダウンをするためには、設備の改良資金を一体どこから引き出してくるかということが問題になる。そういうことを聞いてみなければならない。
それから今の工業用塩の輸入問題につきましても、なるほど工業用塩の輸入で、あなたの方でもうけるのでもなし、損をするのでもないということは、そうでしょう。しかしながら、これほど大きな塩業革命をやるということになるのなら、あるいはソーダ工業というものにも負担の余地があるのじゃないかということを考えざるを得ないわけなんです。もちろんソーダ工業というのは基幹産業であるし、そうして現在の経営状態というものも、むしろ関連産業ということによってカバーしておるという面があることも、私どもは知っておりますけれども、それにしても、これだけ大きな転換をやるなら、これはやはり専売事業の一環の中に、専売の方へもとのように取り入れて、そこで全体の計画を立てていかなければならないのじゃないかということを考えなければならぬ。最近の神武景気がくずれたというような問題についても、国内の資源開発なしに高度の経済の成長をはかるということが、どんなにおそろしいものかということがはっきりしてきたわけでありますから、そういう点ではやはりソーダ工業のようなものも、国内の資源開発ということについては、もっと本気で考えていかなければ、とんでもないところでまた外貨危機というような問題も出てくるわけなんでありまして、そういうような点から私は言うのであって、何もすぐに今損をするとか得をするとかいうことを言っておるのじゃない。
そこで、まだほかにいろいろな問題がありますが、これは委員長にちょっとお尋ねし、委員長から一つはっきりしていただきたいと思うのですが、公社の方がもし早急に、現在業者との話し合いをしておる問題を解決しようというのなら、私はそれまでに今申しましたような資料をあらためて公社の方から出してもらって、そうしてこの話をつける前に、もっとわれわれの納得のいくように、この問題を今後検討しなければならぬと思います。あるいはその時期が延びるのでありますれば、そうしてその間にもう一ぺん委員会を開かれるというのでありましたならば、今の予定では来月の二、三日ごろとかいうことでしたね、そういうころまでにこの問題はまだ最終的結論に至らぬで、最終的結論に至るまでに、われわれがもう一ぺんこの問題を扱うというチャンスがあるならよろしいが、そうでなかったら、さらにこの委員会を開いていただかなければならないと思いますので、この点は委員長から公社の方に向ってはっきりお確かめになって、私の希望がかなえられるように取り計らっていただきたいと思います。
○委員長(豊田雅孝君) 承知いたしました。
昨日来すでに今江田君から発言のあったようなことは、公社の方も看取をしておられると思いますが、公社側からはすみやかにやるというお話がありました。すみやかにという経度の問題ですが、すみやかが、ここ一カ月足らずの間にやるということのすみやかというようなことになれば、これは委員会としては、その前に委員会を開き、さらにそれまでの問に資料の提出を求めて、詳細検討しなければならぬということになると思いますが、すみやかという程度は、どの程度のことでありますか、あらためてお伺いいたします。
○説明員(舟山正吉君) 公社の立場といたしましては、この状態を続けますと、それだけ赤字がふえるわけでございますので、できるだけ早く解決したいという希望を持っておる、これは公社の立場として一つ御了承願いたいと思うのであります。そこで先ほど塩脳部長から申し上げましたような案を業界にお示しいたしまして、意見も伺っておる最中でございます。そこで当委員会の御審議に御必要な場合には、先ほど来御指名になりましたような資料は速刻調整できまずから至急御提出申し上げたいと考えております。
○江田三郎君 そこで委員長にお願いするのは、われわれがこの次の委員会に来てみたらもうとうに問題は業者に押しつけられて、不合理な形で解決ついてし去ったということでは困ると思うので、それを一つ委員長からお願いいたします。
○委員長(豊田雅孝君) その点きのうは塩脳部長からすみやかにと、きょうは剛総裁からできるだけ早くということで、やっぱりはっきりしないのですね。大体どれくらいの日取りであるのか、今お聞きの通りです。次回の委員会は十月の二、三日に開こうというのですが、その間は何事もないのかどうか、そこのところはどうなんですか。
○説明員(舟山正吉君) この問題がこういうふうに国会の問題になりました以上、業界の方々も公社の圧力に屈して早く御賛成になるようなことは考えられませんから、ただいまの御質問のようなことはその心配はないのじゃなかと考えます。
○平林剛君 大体今のお答えでいつごろまでにまとめるかということはわかりました。たぶん本委員会の要望についてもごしんしゃくになると思います。ただそれをどうやってきめるかということがあとに残ると思います。私はその点について専売公社側の考えを聞いておきたい、どうやってきめるか。先ほど私は資料の問題で遺憾の意を表しましたが、もう一度申し上げます。大体私がこの資料を要求いたしましたときは一週間ばかり前で、そうして総裁もこれは私の方に出すと約束されたのに、あなたが口頭で申し上げるということを言っておる、それじゃ私が理事として委員の要求があったときに、今日のような事態になるわけです。やはり自民党の方でも十分検討しておるのでありますから、そういう資料くらいは社会党の方にも出してもらいたい、それを要望しておきたいと思います。これを言わないと虫がおさまらないからもう一皮申し上げます。そこでどうやってまとめていくかということになるのです。今日私が専売公社の動きをずっと見ておりますというと、業者との間に当然話し合いをなされた、九月九日までにその回答を寄せられるという方式でおやりになっておる、もしこの間で業者が納得されるならば、この間で解決したかもしれない。しかしなかなか納得できる問題でもないし、塩業界全般から見れば、大転換を遂げるわけですから、政治問題としても当然発展をして全般の塩業政策を議論しなければならない段階に来ておると思う。そういう意味から今後これをどうきめるかということはかなり政府でも慎重に考えなければならぬ要素を含んでおると思います。ただ私は大蔵委員として確かめておきたいことがある、たとえば第二十六国会に、政府は塩専売法の一部を改正する法律案を提出をされたことは御承知の通りであります。そしてこの法律案によって今後塩の値段については審議会を設けて、この審議会の建議ですか、あるいは諮問でありますか、とにかくそこで検討してきめるという考え方を明らかにして議会に法律案を御提出になったわけであります。これはその他の法律との関係で審議未了に終りましたけれども、この精神というものは時代の進展に従って当然取り入れなければならない性質のものであります。ところが今専売公社が試案として業界に示されたものも、少くとも昭和三十七年までに塩の値段はどうする、こういう予定の計画が立てられておりまして、年次ごとに塩の収納価格は大体その線できまるということに相なろう、いろいろ紆余曲折はあるでありましょうが、ともかく関係方面と了解が達せられ、政治的にも困難な問題が解決せられるとすれば、昭和三十七年あたりまでは少くともその計画に従って塩の生産をはかり、収納するということに相なろうと思います。そうすると疑問が起きてくるのは、塩専売法の二部を改正して塩の収納価格審議会をきめる意義というものが失われてくるということになる、少くとも大半の意義というものは失われて参りますね、そういうことに私どもとしては疑問にぶつかるわけでありますが、この塩専売法についてはどうするおつもりか、これをお答え願いたいと思います。
○説明員(三井武夫君) お話の塩専売法を改正いたしまして塩の価格の審議会を設けられることについては、公社の考えは現在も変っておりません。次の機会にはぜひこれを提出させていただきたいと考えております。従って今後のさしあたりの収納価格は別といたしまして、少くとも明年度以降の収納価格につきましては、その審議会ができました上で、その審議会に諮問いたしまして決定していただく、これは審議会の十分御検討を願った上できめるということに考えております。お話の一応の収支を算定する必要上明年度以降の価格をかりにこういうふうに下げますれば赤字はこの程度になりますということを計算いたしましたので、これはそういう必要も……どのくらいの赤字を公社は一方では確定するつもりかというような問題もございますので、かりに明年度以降の価格をこういうふうに下げてゆけばこの程度の赤字になりますということを申し上げましたので、決してこれでもって収納価格審議会を縛ろうとか、あるいは収納価格審議会の存在を無にしてしまおうという考えはございませんので、その点はお含みを願いたいと思います。
それから資料の問題でございますが、今お話がございました総裁にお話がございまして、総裁が御承諾なきったということは私は初耳でございまして、私がいろいろ出過ぎたことをしたと思いますが、私が昨日この委員会にお出ししました資料につきましては、それぞれ御相談をいたしまして御了解を得て、昨日はあの程度でよろしいということで提出いたしましたので、決して御要求があった資料を私拒否するというような考えは持っておりませんので、念のために申し上げておきます。
○平林剛君 私も念のため申し上げておきます。九月の三日の日に総裁はその案を私の方に提示してもよろしいということがあったんでございます。念のために申し上げておきます。そこで今塩専売法改正案にからんで今後の見解を明らかにされたのでありまするけれども、今日の問題については臨時国会もない、通常国会もないということで、それらの審議会の審議をなくしてきめられるというような情勢にあると思うんです。元来こういうやり方はどうなんだろうと、つまり先ほどからお聞きしておりましても、塩の値段が三十七年までに八千円になるか、ならないかという議論であるとか、一体塩業者はどの程度の採算があるのかというようなことで、それぞれ思惑があると思う。私は塩業者だって今あなたのお話のように予定しておった百五十トンですか、それを三百トンにでもなるということであれば、値段についてもかなりの含みを持っておる、業者だって商売ですから。そういうことも予想せられるし、またそのことがそうでなくして逆の場合であっても、業者は不当に専売公社の権力行政に泣かされなければならぬということもあり得るでしょう、それを今のように業者の意見を聞いて、そうしてやるというようなやり方でこの重大な転換期に当っての決定を進めるということは適当ではないんじゃないか。これはよろしく塩専売法の一部改正案を出してきた精神にならって、国家が認めた一つのそういう機関で検討して、そうして塩業政策全般について万遺憾のないような措置をとるのが、政府としての責任ではないかと私は思うのであります。そういう意味で、今回の取りきめ等についても、ただ大蔵委員会で質疑をして、それにあるいは問答をし、そうしてまた業者との間に話し合いをする、そういう進め方で最後の取りきめをするのでなく、やはり何らかの機関というものを作ってやるべきだ、こう思うのであります。これはまあ私の意見になりますけれども、皆さんの方でもそういう程度の慎重な態度をとって取りきめられていきませんと、そうでなくても専売公社の権力行政が批判になりましたり、あるいはその取りきめ等において正規を失するというようなことがないとは限らない。だからその点については慎重に、また先ほど江田委員から、委員長からもお話があったように、私どもの意向をしんしゃくして取り運んでいただきたいということを要望いたしておきます。
1957/09/12 |