1968/01/30

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58 衆議院・本会議


○江田三郎君 私は、日本社会党を代表して、わが国政治の直面する焦眉の問題について所信を述べるとともに、佐藤総理にお尋ねしたいと思います。

 内外ともに大きな分かれ道に立つ日本は、時代の課題に対する深い洞察と強い実行力とを政治の指導者に切に求めております。ところが佐藤内閣の政治は、羅針盤も持たず大洋を行く船のごとくであります。外交においても内政においても、佐藤内閣が国の将来を誤る方向に向いているのではないかと不安を深める国民が日に日にふえているのであります。(拍手)一年前の総選挙で、自民党の得票率はついに過半数を割りましたが、今日佐藤内閣の政策を支持する者は、この得票率をさらに下回っておることは言うまでもありません。

 年頭の記者会見で総理は、「独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず」という福澤諭吉のことばを引いておられます。しかし、総理の言われる国防意識高揚の助けにこれを引くことほど福澤精神のはなはだしい取り違えばございません。論語読みの論語知らずとはこのことであります。(拍手)総理の引用したことばに続けて、福澤諭吉は「学問のすすめ」の中で、自分でものごとの理非を見分けて処置を誤らないのが他人の知恵によらざる独立であり、自分で働いて自分の生活の道を立てるのが他人の財によらざる独立であるということを言っておるのであります。

 アメリカのベトナム政策と、それが日本の安全とアジアの平和に及ぼす重大な脅威について、総理は、アメリカの知恵によらざる独立の判断を堅持してこられたでしょうか。ドル危機にゆさぶられる日本経済の現状が、他人の財によらざる独立の経綸と言えるでしょうか。いずれも、いなであります。

 日本はいま、国の安全とアジアの平和の確保について、また一億国民の生活の向上と繁栄の手だてについて、ほんとうに独立の考えに立った政策とは何かということに、深く思いをひそめなければならぬときであります。国を思うこと深切でなければならないということの今日における核心はこの点にあるのであって、国防意識の高揚とか核アレルギーの解消を騒ぎ立てることは、政治の指導者としての見識、時代の流れに対するその感覚を疑わせる以外の何ものでもありません。(拍手)

 総理は、一部学生の暴力を非難します。しかし、私たちはお互いに政治家なのであって、刑事でもなければ検察官でもありません。学生たちの行動と、それに対する国民一般の反応を含めて、それらのできごとの全体が物語る政治的意味合いを受けとめることこそ、政治家の任務でなければなりません。(拍手)昨年の羽田事件からさきの佐世保の事態に至る一連のできごとにひそむ深い政治的意味を、総理は、治安取り締まり官としてではなく、政治家として直視されなければなりません。

 佐藤内閣の最近の政策、とりわけ日米会談をはさむここ半年ほどの政府の動きに、平和憲法の精神をいよいよ危うくするおそれを国民は感じています。民主主義と国民生活の安定を脅かすものを読み取っております。憲法は、国民一般の間の道義の感覚、正義の感覚の政治的表現であります。それに合致しない政治の指導者が、国民に法の順守を求め、愛国心を説き、青年の教育を語るのは、とほうもない偽善ではないでしょうか。(拍手)そうした偽善、あるいは、もっとはっきりいえば、うそないしはその場限りの出まかせは、いまや佐藤内閣の政治の最も大きな特徴になりつつあります。(拍手)その特徴が余すところなくあらわれているのが、安全保障及び沖縄返還の問題に対する政府の態度であり、核兵器を持たず持ち込ませないという、総理の施政方針演説における発言であります。

 エンタープライズは、日本寄港にあたって核兵器を積んではいないと政府は言います。他方で、総理は、国民に核アレルギーからの脱却を求めて、おられます。エンタープライズが、第七艦隊核戦力の中核であり、常時核武装されていることは、世界の常識であります。(拍手)かねて、常識と現実の尊重を強調する政府が、アメリカの核配備に関する世界の常識に反した説明を国民に吹聴するのは、こっけいであり、子供だましであり、あるいは裸の王さまであります。(拍手)もし、エンタープライズが、核兵器をどこかに一時預けにしてきたというのが真実ならば、補給と休養に来たわけでもないと艦隊の責任者自身が説明しているのでありますから、この船は、一体何のために日本に来たのか、全く説明ができないのであります。政府は、目的も意義もはっきり説明できないことのために、佐世保に警官隊を大動員し、政治的不信を招く危険をおかしたのでしょうか。そうではありますまい。そうでなくとも人気のさっぱり上がらない総理が、取るに足らない目的のために、そのような政治的冒険をおかすはずはありません。

 日本政府の意思に反して行動しないというアメリカの約束を信頼して間違いないと政府は言います。しかし、すでに幾つかの実例があるではありませんか。一九六〇年のU2型スパイ飛行機の事件に際し、アメリカ政府は、撃墜ののがれられない証拠をソ連から突きつけられるまでは、頑強に事実を否定していました。一九六四年八月のトンキン湾事件について、当のアメリカ国内に、最近になって再び、当時の公式発表に対する疑惑が表明され出したことは、総理も御存じだと思います。水爆を積んだアメリカのB52爆撃機が、さきごろデンマーク領で墜落事故を起立した事件は、最も新しい教訓であります。デンマークは、ノルウェーとともに、平時において、その領土内に核兵器を持ち込むこと、その領空を水爆パトロール機が飛ぶことをアメリカに許しておりません。アメリカは、デンマークの意思に反して、水爆搭載機を飛ばしていたのであります。

 端的に申しましょう。エンタープライズが、核装備のまま佐世保にやってきたこと、この船の日本寄港が、日本本土に核兵器を持ち込ませないという政府のこれまでの政策のはっきりした変更を意味することは明白な事実だと私は思うのであります。(拍手)国民の多くもそう思っております。諸外国もまたそう思っているに違いありません。政府も、だからこそ佐世保の教訓にもこりずに、今後もエンタープライズの寄港を押し通すと意地になっておるのではないでしょうか。

 つまり政府は、中国の核開発に対抗するアメリカの核戦略に日本を全面的に結びつけるという重大な道に踏み出したのであります。核兵器についてのこれまでの留保を一切取り払った日米安保体制強化の階段を登り始めたのであります。(拍手)

 さらに、佐世保での記者会見で、艦隊の責任者が寄港の目的を聞かれて、第七艦隊に配属されているアノーカの艦船は、近くまで来たときには必ず日本に寄るのが慣例になっていると述べていることから考えてみても、西太平洋水域に配属されているポラリス潜水艦の日本寄港は時間の問題ではないでしょうか。いかに総理でも、核兵器をはずしたポラリス潜水艦などというお化けを発明するわけにはいきますまい。(拍手)

 沖縄の返還も、アメリカの核兵器におおわれて暮らすことを、本土並びに沖縄の国民に受け入れさせていく方向で実現をはかろうというのが政府の態度であることは、さきの臨時国会や、訪米後の記者会見などにおける総理の発言に、すでに疑う余地もなくにじみ出ておるのではないでしょうか。施政方針演説において、「安全保障上の要請を踏まえつつ現実的な解決策を生み出すべく努力する」と言っておられるのも、そういう意味ではありませんか。

 もしそれが政府の方針でありますならば、もし核兵器に対する歯どめをはずした日米安保体制が、日本の安全確保のためにも、沖縄の施政権回復のためにも、ほかに選択の余地のない最良の道だと総理が信じて疑われないならば、総理は何ゆえその信ずるところのありのままを国民に訴え、日米軍事協力の真実を告げて、国民の審判を求められないのでしょう。総理は、国の安全保障について国民的論議を起こすべきときだとしばしば言われますが、そのためにはまず政府が真実を告げなければなりません。(拍手)偽りの説明と、その陰に隠れて進められる既成事実の積み重ねのもとでは、国民的論議の公正は期待できないのであります。

 ジョンソン大統領のベトナム政策をめぐって、アメリカの国民の間に大統領に対する信頼感のギャップ、つまり大統領の言うこととやることのはなはだしい食い違いに対する不信感ということがいわれておることは、総理も御承知だと思います。いま日本の国民の間にも、総理に対する信頼感のギャップが広がっていることに総理は気づいておられるでしょうか。もし総理が、佐藤内閣の進みつつある方向こそが国のため国民のため最も賢明な安全保障政策だと思われるならば、いたずらにことばをもてあそぶことをやめられて、アメリカ核戦略との完全な一体化なしには日本の安全を守ることができないのだと正直に言われなければなりません。(拍手)そのために日本の国民が何を支払わなければならないかを正直に言われなければなりません。その上であなた方と私たちとどちらの考え方が世界の大局、アジアの大局に沿った日本の真の安全と繁栄の道であるかを堂々と国民に問おうではありませんか。(拍手)

 日本の安全にとっていま最大の問題は、ベトナム戦争であり、その背景をなすアメリカの中国敵視のアジア政策であります。北ベトナム爆撃のアメリカの飛行機は、中国国境からただの三十秒も離れていない目標を爆撃し、中国領空に侵入して撃墜された事件も、これまでにしばしば起こっております。昨年の秋、米中衝突の危険を警告した演説の中で、アメリカのマンスフィールド上院議員は、「アメリカは現在薄氷の上に立っている」と言いました。朝鮮半島の形勢は、エンタープライズの日本海出動など、極度に重大化しています。日本もまた薄氷の上に立たされております。日本が立たされておる薄い氷は、その地理的条件からいって、アメリカ以上に危険だといわなければなりません。(拍手)

 こうした状況において、戦争を終わらせ、アジアの国際緊張を緩和することに役立つあらゆる努力を尽くすことこそ、国の安全に責任を負う政府の最高の責務でなければなりません。ところが総理は、ベトナム和平に努力すると語り、日本の安全を論じながら、アジアにおける破局の食いとめと緊張緩和の何らの具体的政策、何らの具体的行動をも明らかにされないではありませんか。プエブロの拿捕事件についても、公海上のできごとだというアメリカの一方的説明を支持しようとしておられるのではございませんか。日本を取り巻くアジア、極東の形勢が、今日のようにいちずに危機激化に向かっていては、日本がいかに深くアメリカの核保護のもとに入り込もうと、国民の福祉を犠牲にして防衛費をふやそうと、わが国の安全の度合いを高めるごとはいささかもできないどころか、かえって緊張激化の悪循環の中に日本を一そう深く入り込ませるだけであります。(拍手)

 日本の安全確保にとって目下最大の急務は、一つはベトナム戦争を終わらせることであり、もう一つは中国との間の不自然な関係に終止符を打つことであります。

 ベトナム和平の道を探求するための根本は、ベトナム人民自身の手に彼らの運命の決定をゆだねること、そしてベトナム人民以外のいかなる外部勢力もこれに干渉しないことにあります。三木外務大臣は、ベトナム人の自決に触れられましたが、同じ演説の中の北爆問題に関する見解は、自決の原理に矛盾しておるのではないでしょうか。ウ・タント国連事務総長は、昨年七月の演説において、ベトナム人民の抵抗運動の原動力は民族主義であると述べ、ベトナム人民がこの戦争を民族独立戦争として戦っているのであることを、アメリカとその同盟国が認識しない限り、戦争は終わらないと警告いたしました。アメリカは、いまだにそのことを認識しないようであります。あるいは、認識したがらないようであります。総理の特使として、かつて現地を視察した松本元駐英大使の報告は、早くからそのことを認識していたように思います。さすが練達の外交官であります。総理は、自分の特使の観察よりも、戦争当事者たるアメリカの大統領の主張のほうが正しいと考えておられるのでしょうか。(拍手)共産主義の侵略に戦争の源があると心から信じておられるのでしょうか。政府や自民党は、社会党の国際情勢に対する見方や外交政策を、イデオロギー的、観念的だと批判するのが常でありますが、ベトナム戦争をもっぱら共産主義の侵略という観点からとらえることこそ、ベトナムの現実から遊離した、イデオロギー的見方の最たるものといわなければならないのであります。(拍手)

 アジアの一国として、日本がいまなさなければならないことは、そのような立場からアジア問題に対処することの根本的な誤りを、アメリカに直言することだと思います。ところが、総理はジョンソンのベトナム政策に全面支持を誓われたように国民の目には見えるのであります。そのことは、北爆に対する総理の態度にも示されています。北爆の無条件停止が、和平に至る最初の、そしてたった一つのきっかけであることは、いまや全世界の責任ある指導者の一致した考えであります。北ベトナム外相の最近の声明が伝えられてからは、なおさらそうであります。昨年の臨時国会で、総理は、わが党の勝間田委員長の質問に対する答弁の中で「私は、アメリカに対して、いわゆる北爆を支持するというような声明はしておりません。」と述べながら、それに続けて、ハノイの側にそれに見合う措置云々というジョンソン大統領の主張をそのままオウム返しにしておられます。一体、総理は、北爆問題についてのアメリカ政府の主張を支持しながら、同時に、ベトナム和平に、日本がアジアの平和愛好国にふさわしい国際的影響力を発揮する余地があると考えておられるのか。戦争は、南ベトナムの国境を越えて広がる様相を濃くしつつあります。この成り行きを総理はどう見通しておられるのでしょうか。また、外務大臣は、「日本がアメリカと関係の深い国であってしかも軍事的に圏外に立っている」と言われましたが、政府は、わが国がアメリカの戦争努力の圏外に立っておると思っておられるのか。ほんとうにそう信じ込んでいるとしたら、めくらであります。あるいは、耳をおおうて鈴を盗むのたぐいであります。(拍手)

 ベトナム戦争は、日本の安全に脅威を及ぼすだけでなく、ドル防衛への協力の要求という形でわが国の経済にも圧迫を加えつつあります。三十五億ドル以上の昨年のアメリカ国際収支の赤字のうち、ベトナム戦争に原因する赤字が十五億ドルだといいます。戦争をやめさえすれば、アメリカの国際収支はたちどころに改善されるわけであります。戦争を続けたままのドル防衛への日本の協力は、国際通貨体制安定のための協力ではなくて、実はベトナム戦争政策への協力にほかなりません。(拍手)ドル不安の日本経済へのはね返りを解消し、円の地位を守るためにも、ベトナム戦争の一日も早い終結が日本自身の最高の利益になっているのであります。そして和平実現のためには、初めに言いましたように、問題の解決をベトナム人民自身の民族自決にゆだねるという、ただ一つの正しい出発点に日本政府が立たなければなりません。アメリカにそのことをわからせるよう、あらゆる努力を尽くさなければなりません。そうでなければ、三木外相の言われる相互保障方式の構想もただの思いつきにとどまり、日本がアメリカの誠意の保証人になるとした場合、不渡り手形に裏書きをするようなことになるだけであります。(拍手)

 日中関係の正常化と両国共存の条件の確立は、日本の安全とアジアの平和のためのもう一つのかぎであります。施政方針演説が、中国に対する日本の政策についてただの一言、それもただ「これまでどおり政経分離の原則のもとに、」と述べているにすぎないことは驚くべきことであります。外務大臣の演説にも政策らしいものは何もありません。これでは、日本政府がまじめに日中関係の改善を志していると人にわからせるのは無理であります。

 中国に共存の姿勢を求めるならば、それにふさわしい政策をこちら側が、ことばではなく、具体的行動を通じて相手方に示すべきであります。共存の意思を具体的に裏づけるために、日本政府は、最小限度、中国の国連代表権問題について、アメリカとともに重要事項指定決議案の提案国になることをやめて、国連の世界的普遍性を取り戻すことに努力をすべきであります。(拍手)政府はまた、輸出信用について中国に対する差別待遇をやめなければなりません。台湾との関係あるいはベトナム戦争下のアメリカに対する遠慮などの政治的理由による現在の差別待遇は、政府のいろ政経分離のたてまえにも、そもそも反するではありませんか。(拍手)日本がこうした具体的行動によって、国交正常化への一貫した熱意と共存の身がまえを示し出したときに、初めて先方からしかるべき反応を期待することができるのであります。(拍手)

 ベトナム戦争その他アジアの問題はもとより、核及び一般軍縮、その他世界のあらゆる重要問題について、中国の参加しない効果的な協定は何一つ考えられない以上、日中関係改善はわが国安全保障政策の最も優先的な課題だといめなければなりません。政府や自民党は、中国の核兵器の脅威についてしきりに国民の注意を喚起しますが、それならばなおさらのこと、正常な関係の実現を急がなければならない道理ではありませんか。中国が核開発に乗り出すはるか以前から、日本はソ連のはるかに巨大な核軍備と隣合って暮らしております。これに国民が深刻な脅威を抱かない一つの大きな理由は、いまはなき鳩山総理の識見と勇気によって日ソ関係が正常化され、お互いの理解が深められてきたからではないでしょうか。

 中国の核兵器に対して、日本が、アメリカの、あるいは自分の核兵器をもって対抗することは、極東における際限のない核軍備競争を引き起こすのに役立つだけで、国民の感ずる脅威は少しもなくなるどころではありません。たとえ日本の周辺に迎撃ミサイルの網を張りめぐらしたところで、日本の置かれた位置からいって、その効果を期待することはできず、ただアメリカの防衛に奉仕するにすぎません。アメリカは昨年九月、中国の核兵器を対象とするいわゆる薄い迎撃ミサイル網をつくることを決定いたしましたが、もしアメリカ自身がそれほどに中国の核兵器をおそれているのだとしたら、そのアメリカにたよった日本に、どんな効果的な防衛の手だてがあるというのでしょうか。核兵器に対して核兵器で防衛しようというのは、奇跡を望むにひとしいことであって、核時代における真の安全は、平和そのものの中にしかあり得ません。

 核開発が進むについて、核兵器に対する中国指導者の態度も次第に慎重になってきた確かなきざしが見られます。中国人だけが核戦争に生き延びて、廃墟の上に新しい文明を築くことができるというような発言は、もはや聞かれなくなったのであります。中国は、自分のほうから先に核兵器を使うことは絶対にないと、繰り返し保証しています。そのことの意味を私たちは正当に評価しなければならぬと思うのであります。(拍手)

 総理は日本人のいわゆる核アレルギーを治療したがっていますが、原子力の平和利用に関する限り、原子力開発が基本法の定める平和利用、公開、民主の三原則にのっとって進められる限り、国民の間に総理の心配されるような核アレルギーはないのであります。国民が絶対に是認できないとしているのは軍事利用であって、これに対する抵抗反応は、どんなに敏感であっても敏感過ぎるということはありません。国民は、政府の唱える原子力の平和利用が、やがて軍事利用にすりかえられるだろうとおそれておるのであります。(拍手)核兵器に対するわが国民の絶対否認の感覚こそ、人間として最も正常な感覚であります。(拍手)

 日本の安全保障政策は、この感覚と、そして平和憲法の原理の上に立てられなければなりません。この足場の上に、アジアにおける緊急緩和への一貫した努力を積み重ねていくことが、日本の安全を確保する最良の道であり、最も現実的な方策であります。それこそはまた、沖縄支配の継続を正当化するアメリカの口実を打ち破り、九十万人の日本人を日本国憲法のもとに復帰せしめる最も確かで、最も早い道筋であります。

 政府・自民党は、社会党の非武装中立の政策を非現実的だと批評し、一片の中立声明を出すことで国の安全が守れると思い込んでいる空想論だと申します。自衛隊を一挙に解体できると主張する無責任なおしゃべりだとも言います。だが私たちは、政府や自民党が宣伝したがっているたぐいの現実無視の夢想家ではありません。あなた方の言う現実主義は夢を見ることもできないほど老い果てて、干からびているのに対して、私たちの現実認識は絶えず夢を見る若さに満ちておるのであります。(拍手)

 私たちは、安保条約をやめるにあたって、アメリカに対し、それが日本の安全にも、極東の平和にも、さらには日米両国民の真の友好のためにも有害であり、アジアにおける民族自決と社会変革の現実に逆行するものであると、粘り強い交渉を始めます。アジアにおける緊張緩和のため、関係国が相互に独立を尊重し、平和的に共存できる不可侵条約その他あらゆる可能な政策の実現につとめます。日本の核非武装を宣言し、志を同じくするすべての国と非核クラブ、非核武装地帯などの実現を目ざして協力を深め、核保有国をして、非保有国に対する核兵器の使用またはおどしを行なわないことを、個別にもしくは集団的に誓約させ、また核兵器実験の全面禁止、核兵器使用の禁止など、核軍縮への一連の努力を強めるでしょう。国連を真に普遍的な国際機関とすることに貢献するのと並行して、その平和維持活動に対しても、憲法の精神と規定にのっとったやり方で、効果的な協力につとめるでしょう。不要になる防衛費負担の相当部分をアジアの新興諸国の経済発展に役立てることによって、イデオロギーに左右されない、ほんとうの相互理解と友好協力の雰囲気を、日本のまわりにつくり出すことにつとめるでしょう。

 私たちの主張する非武装中立の日本とは、いわばそうした多面的な努力の総合が到達すべき目標であって、それらの努力なしに、一片の中立声明だけでそれを手に入れることができると思うほど、私たちは空想論者ではありません。

 自民党政府の安全保障政策なるものは、日本を取り巻く国際関係の現実に対する、日本の独立の認識に基づくものではありません。それは現実ではなく、単なる既成事実の次から次への積み重ねの上にふくれ上がってきた雪だるまにすぎません。日本がいま抜け出さなければならないのは、総理の言う核アレルギーからではなく、この既成事実の慢性中毒症からだと私は言いたいのであります。(拍手)

 もし総理が、本心から、核兵器をつくらず持たず持ち込ませないという国民総意の上に立つ政策を忠実に守っていくと言われるのならば、少なくとも総理の率いる自民党が、今国会における非核武装決議その他同趣旨の提案に反対するなどということは、よもやあるはずがないと思いますが、(拍手)そのことを総理は保証できますか。エンタープライズが核兵器を積んでいなかったという証拠、確信ではなしに証拠を国民の前に示すことができますか。沖縄の返還は核兵器と関係のない問題であると言明できますか。

 総理に対する信頼感のギャップは、内政問題についてもいよいよ著しいものがあります。社会開発は佐藤内閣の表看板であったはずでありますが、明年度予算の政府案に示されているように、いまやその看板さえはずされてしまった感があります。一世帯一住宅の五カ年計画は、三年目を終わる明年度中に、達成率が五割に満たないことになっております。残る最後の二年間に、はたしてどれだけのことができるでしょうか。質も量も不足の住宅予算であります。社会保障、生活環境整備その他国民生活の安定に直接かかわる分野は軒並み足踏みであるのに加えて、間接税の増税や各種公共料金の値上げが予定されております。総理が政治の指導性を一番発揮しておられるのは、まさに物価引き上げにおいてであります。(拍手)

 これと対照的に、防衛予算は今年度に対して明年度は一〇%をこえる増加率で、予算編成方針の中で、防衛費が重要項目の一つに数え上げられたのは、まさに十一年ぶりのことであります。歩行者優先の政治などと、かつて総理は国民を喜ばせるような標語を宣伝されたことがありますが、歩行者とは歩兵のことをいうのでありましょうか。

 勤労者の生活に負担を重くする言いわけに、政府は財政の硬直化ということをしきりに言いますが、いわゆる財政の硬直化なるものはひとりでに生じたものではありません。たとえば、農地報償や、在外資産補償におおばんぶるまいをするがごとき、もし必要があれば、社会保障の全体的な計画の中で処理されなければならない事項を、そうした全体の計画と関係なく、財政の長期的な見通しにも考慮を払われないで、もっぱら自民党の票田維持の方便として、国費の乱費を続けてきたことが大きな原因になっておるのであります。(拍手)国の補助金行政に見られるように、中央官庁のなわ張りを維持する手段でしかなくなっているこのからくりを、自民党が選挙地盤培養のためにこれに便乗して、各省の間の予算ぶんどりに拍車をかけてきたことが大きな原因になっておるのであります。目新しい事業計画が次から次に考え出され、予算をふくらますだけであって、その効率的な使い方や、事業そのものの効果の度合いにはほとんど関心を払わない行政の無責任体制に大きな原因があるのであります。(拍手)

 こうしたそもそもの原因にメスを入れることなしには、問題は何一つ解決するはずはないのであります。解決どころか、硬直化是正の予算と称しながら、どたんばになって恩給増額をむしり取るとは一体どういう神経なのでしょう。

 都市の過密、農村の過疎を一般的にいわれる数々の問題について、根本が正されないのでは解決は不可能であります。解決の最小限の条件は、一つには、なわ張り主義と権限の温存に閉じこもる官僚機構、行政機構のつくり直しです。二番目には、強い政治の指導力です。そうして三番目は、国民の多数の利益を反映し、もっぱら社会的、公共的見地に貫かれた計画の確立です。少なくともこれらの条件が整わない限り、解決は望めません。そのことは土地問題にはっきりあらわれております。物価問題懇談会は、すでに、土地の公共性という大原則に立った一連の具体策を政府に勧告しておりますが、政府の都市三法案には、それは全然反映されておりません。施政方針演説で、総理は、公共優先の観点から土地問題を再検討すべきだと言っておられますが、それは一体政府の政策なのか、感想なのか、夢なのか、それともため息なのかと言いたいのであります。(拍手)

 このように、国民生活にかかわる差し迫った問題についても、総理の言うことは、実行の裏づけのない、ただのことばだけであります。政府は広告会社ではないのでありますから、総理がキャッチフレーズのくふうにうき身をやつすのは、商売を間違えておるといわなければなりません。(拍手)広告会社でも、近ごろは誇大広告の取り締まりが多少やかましいのです。(拍手)まして総理は政治家なのでありますから、実際に問題を解決してみせなければなりません。解決の確実な希望を国民に与えなければなりません。社会の連帯や国を愛する心は、そうしたまじめな、希望のある政治と、それへの国民の民主的な参加を通じて、おのずから生まれてくるのであって、民族精神とか、国家意識とかの空疎な説教によって突然出てくるものではありません。(拍手)

 総理は、明治百年を強調し、これからの百年に思いをいたされるそうでありますが、これからの一年あるいは五年のことさえもじみちに取り組めないで、どうして百年の計を語ることができるでしょうか。(拍手)きょうの問題を解決できないでは、自民党は明治百年の追憶の党と化し、有権者の七割が昭和生まれで占められつつある現代の日本の政治を語る資格を全く失うのではないでしょうか。

 総理は、「民族の理想として、国際社会における名誉ある地位を占めることを念願している」と言われます。本末転倒ではないでしょうか。この国土に、日本民族のどういう共同社会を築いていくべきか。その理想とそれに至る具体的な道筋を明らかにするのがまず先決であって、それによっておのずから国際的尊敬をかちうるというのが、ものの順序ではないでしょうか。(拍手)そういう具体的な内容がない、総理のいわゆる民族の理想なるものは、結局世界の列強に連なるという富国強兵の夢の再現ではありませんか。

 外務大臣は、過去において日本が自給自足経済を試み、あるいは大陸国家たらんとしたときは失敗だったと述べ、これを歴史のとうとい教訓としておられます。つけ加えたいのは、うわついた中身のない民族意識や大国主義の鼓吹が、政府の指導者によって行なわれたときも失敗でありました。(拍手)政府が治安体制の強化を政治の中心に据えたり、教育やマスコミ機関に対する権力的干渉を意図したときも失敗でありました。(拍手)すべて歴史のとうとい教訓であります。明治百年の教訓であります。

 総理の施政方針演説は、私の聞いたところ、また、おそらく国民大多数の印象では、単なることばの継ぎはぎの域を出ません。総理が取り上げたような問題の項目があることは、国民はみな知っています。それをどう解決したらよいかを悩んでいます。そして、政治の責任者の具体的な答えを求めておるのであります。施政方針演説をもう一度やり直されるおつもりで、私の提起したすべての問題について総理のはっきりした考え方を聞かしてほしいと思います。社会党の言うことは具体性がないとあなたは好んで言われます。総理の言うことに現実性があり、具体性があることを、とくと見せていただきたいのであります。(拍手)

 もう一度申します。日本が敗戦の犠牲でかちえた憲法を羅針盤として、平和と繁栄の道を進むのか、大きなあやまちを犯した富国強兵の夢を捨て切らないで、ついに核安保の階段を登るのか、いま日本は、運命の岐路に立たされておると思います。(拍手)


○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 江田君にお答えいたします。
 私の演説に対する御批判と、並びに御意見を詳細に述べられました。私がお答えを必要としない面もあるようであります。それらの点を勘案いたしまして、私がお答えしなければならないと、かように感じました点をお答えいたしたいと思います。

 まず第一、日米協力関係ということについて御批判がございました。私はもうすでに御承知のことだと思いますが、日本は、戦争に負けてからいわゆる平和国家として出発いたしました。他国に対して脅威を与えない、また、攻撃的な兵器も持たない、いわゆる平和国家として日本は世界において主要なる地位を占めたい、これが私どもの念願であります。

 ところが、現実の問題で見ますると、平和憲法で認めております自衛権そのものはありますけれど、国際情勢はさようになまやさしいものではございません。私どもは、きびしい国際環境下にありまして、この国の安全を確保するという問題があるわけであります。社会党の諸君は、しばしば口を開けば中立主義を唱えられます。そうして一切装備をしないという、こういうのが社会党のお考えであります。各国がさような状況になれば、それはそのときにおいてそれも役立つでございましょう。

 しかし、現実はさようななまやさしいものではない。私どもは、あらゆる場合においてこの国の安全を確保する、そのために、ただいま日米安全保障条約を締結しておる、このことは御承知のとおりであります。そうして日米安全保障条約、これを築きましたのは、アメリカの軍備だけが、私どもはたよりになるというわけではありません。アメリカ自身が、世界の平和、繁栄について私どもと同じような考え方を持っておる。ここに日米両国のパートナーシップができ上がるのであります。私は、この関係において日米間の関係を十分見ていただきたいと思います。

 福澤先生が好んで引用されました、独立の気力なき者は国を思うこと深切ならずと言われた。これは明治初年においての発言でございます。その時分のわが国の力、これは御想像になればおわかりだと思います。開国したばかりの日本であります。そのときに、独立の気力なき者は国を思うこと深切ならずと喝破されたのであります。私はここが大事だと思います。国家あるいは国防、こういうことが戦後においては禁句になって、そんなことは使われない。これを使えば何か反動であるというような批判を受けたものであります。しかし、ただいまは、こういうことも皆さん方も快く聞いてくださる、そういう時代に変わっております。

 私は、いまの福澤先生のこのことばを思い起こすのであります。政府が、あるいは条約がいかにできましても、それだけで国の安全は確保されるわけではありません。国防のもとはやはり人なんだ、国民なんだ。そうして、その国民がその国を愛するという、独立さすという、他人にたよらないという、そういう気持ちになって初めてりっぱな国ができるのであります。(拍手)

 私が、ただ他人にたよらない、かように申しまして、誤解を受けては困るのであります。いま日米協力では、軍事的にはいわゆる米国の軍事力、ことに核のかさのもとに日本の安全が確保されておるということでありますから、これは全部他人にたよらないというものではありません。しかし、私どもは憲法で、この日本の国は平和国家として出ていこう、そうして核兵器は、あの苦い経験から再び持たない、持ち込みもしない、製造はもちろんしない、かように決したのであります。こういう状態のもとにおいて、この国の安全を確保しようという、そのために、同じ思いをしておるアメリカと提携する、これが一体何で間違いでありましょう。(拍手)この点では、日米協力体制、これをもっと強めることこそ、国民の期待するものであります。

 御承知のように、日米安全保障条約が締結された際に、これは日本を戦争へ導くものだ、必ず戦争に巻き込まれるものだ、今日もなお同じような議論をしておられます。しかし、戦後二十数年、日本が繁栄への道をたどり得たもの、これは日米安全保障条約のたまものであります。(拍手)私どもは、国民大多数がこの体制が望ましい、かように支持しておりますので、この安全保障体制を維持していくこと、このことをはっきりこの機会に申し上げておきます。(拍手)

 次に、ドルの危機についていろいろお話がございました。江田君も御承知のように、いまアメリカと日本との関係におきましては、貿易の約三割、輸出入ともアメリカと貿易をいたしております。アメリカから資材も買いますが、同時に、日本製品がアメリカに喜ばれておる、こういう関係であります。したがいまして、この状態は、私どももその重要さを忘れるわけにはまいりません。もちろん、日本はアメリカだけと貿易をしておるわけではありませんから、その他の地域につきましても、十分考えまして拡大強化をはかっていきますが、ただいまの、ドル危機云々からアメリカと貿易をすることが非常な危険であるという、この考え方は当たらないということを申し上げたいのであります。(拍手)

 次に、最近起こりました一部学生の暴力の問題についてお答えをいたします。この点では江田君も同じ政治家だ、佐藤も同じ政治家ではないか、そうすると、同じ立場でものごとを考えたらどうだという御注意であります。たいへん違う点があるのであります。私は、ただいま政局を担当して、総理であります。野党の領袖である江田君とは、立場が違います。私は、暴力行為で社会秩序が破壊されるのを見過ごすわけにはまいりません。(拍手)政局を担当する以上、国民のために社会秩序を確保すること、これは私が警察権を使おうが、そういうことは当然のことである。これこそ私に課せられた職務なのです。これをやらないで総理はつとまらない、このことをはっきり申し上げます。(拍手)しかし、御指摘になりましたように、あの種の行為が行なわれたこと、その背景を十分考えたらどうだ、そういうことがございますが、この点は私も江田君と同じ考え方を持っております。かような事態について、政治家はこれをただ取り締まるだけが能ではございません。よくその意味合いを考える、これは私どもがとらなければならないことでございます。

 次は、航空母艦エンタープライズの入港についての、いろいろのお話がございました。大事なことは、航空母艦が、日米安全保障条約に基づいて、そして入港した。そこで、いままで主として問題になりました点は、原子力が推進力であるために海水が汚濁ざれるのではないかということでございます。これは昨年の夏以来科学的調査をいたしまして、さような危険はない、これは他の潜水艦の場合においても同様である、その危険はないということがはっきりいたしました。そうすると、今回問題になりましたのは、ただいまのお話にもありましたが、核武装をしておるかしておらないか、核の持ち込みを許さないといった日本政府の方針がこれによって曲げられるのではないか、あるいは日本が核武装をするのではないか、こういう御心配のようであります。私は、江田君もよく御記憶だと思いますが、この席でしばしばはっきり申し上げておりますが、日本は核を製造もしないし、持たないし、持ち込みも許さない、これは日本のはっきりした態度であります。そこで、かような状態はアメリカ側にもよく伝えられております。安全保障条約では、いわゆる事前協議を必要とする事項がきめられております。その一つは、重要なる装備の変更、いわば核兵器、核武装する、こういうようなことは装備の重要なる変更でありますから、この持ち込み等について、事実があればこれは事前協議の対象になるわけであります。私どもは、日本としてこの点は、持ち込みはいけないということをはっきり申しております。また、アメリカ自身も、日本の政府の意思に反した行動はとらないという約束をしておるのであります。したがいまして、ただいまのこの心配は一切ないのであります。(拍手)したがいまして、私はこの種の事柄をはっきり申し上げまして、そうして、疑うのもいいかげんにされたらどうか、かように私は申し上げるのであります。(拍手)

 次に、安保条約から、日本はアメリカの核戦略の片棒をかつぐのではないかというお話がございました。これはとんでもない詭弁でございまして、日本はなるほど、アメリカの核の抑止力、これはたよりにいたします。しかし、日本自身が核兵器を製造せず、核を持たないし、持ち込みも許さない、こういう立場でございますから、いわゆるアメリカの核戦略の片棒をかつぐというものではございません。私どもは、これははっきり社会党の諸君にも理解していただきたい、せつ然と分けていただきたい事柄でございます。

 そこで、この核についてのお話でありますが、一言触れられましたように、平和利用についてはこれを進めると言われる。これはもう申し上げるまでもなく、原子力基本法が制定されております。これは社会党の皆さんからも賛成を得たものであります。そして問題になりますのは、核兵器と核の平和利用、これをせつ然と観念的にも分け、実際にも区別するということがいま行なわれておらないということであります。とにかく何としても、この平和利用の核、同時に核エネルギー、また核兵器そのものとを結びつけて、そして政府を攻撃する、あるいはエンタープライズが入ってくれば、そういう機会にこそこれを混同した議論をする、そういうことを盛んにやっておられる。先ほど誇大広告を非難されましたが、社会党の皆さんにこのことばは返上しておきます。(拍手)

 次に、中共問題についてお話をいたします。中共問題については、日本の態度は何ら変わっておりません。したがいまして、この際、特に声を大にして申し上げることはないように思います。私どもは、いつも、平和を愛好する国、相互に独立を尊重し、お互いに内政に干渉しないというその立場で共存していこう、これが日本の考え方であります。だから政経分離の形で経済的に、あるいは文化的な交流をしようというのが今日の態度であります。これについて、これは国民もよく承知しておりますが、私は中共自身を非難するわけではありませんが、いかにも中共のあり方は共存の考え方でないというような非難をただいま一般にされておる。こういう点が改正されればたいへん仲よくなれるのではないか、私はかように思います。(拍手)

 また、ベトナムの北爆についてのいろいろの御批判がございました。北爆支持をしておるのではないかということでありますが、私どもは、北爆の戦争がエスカレートすること、これはもう絶対に反対であります。一日も早く平和が招来されること、したがいまして、そういう意味において、この北爆自身を支持する、そういうような簡単なものでないこと、これを御理解いただきたいのであります。私どもは、一日も早くここに平和が招来される、そのために北爆もやめる、浸透もやめる、こういうことでお互いに平和の話の場につく、これが必要なのでございます。(「浸透はどっちだ」と呼ぶ者あり)浸透は北からの浸透であります。

 以上の点を申し上げまして、いわゆる社会党のかねてから主張されておる非武装中立宣言というものは、私はこれは空想ではないかと思います。したがいまして、もっと現実に即したことをやっていただく。私は総理として、一番大事なことは、現実問題をいかに処理するかということであります。お話のうちにも、どうも総理は十分それらの点について考えがないようだが、もっと現実の問題と取り組めという御注意がございました。このことは私ばかりじゃありません。社会党におきましても十分考えられまして、現実の問題と取り組んで初めて社会党もりっぱな国民政党になれるのではないかと、かように、よけいなことですが、申し上げておきます。(拍手)

 次に、エンタープライズの核兵器を備えておらないという確証を出せということ、これは先ほど申したので、私はこれを疑うことは、これは話の筋が違う、かように思います。

 次に、沖縄の返還と核装備のお話がございました。
 沖縄の返還、祖国復帰、これは沖縄同胞百万ばかりではございません。わが日本国民のほんとうの血の願いであります。そういう意味におきまして、私は、まず沖縄の祖国復帰、これを考えることが、今日私に課せられた責務だ、かように考えております。そういう意味であらゆるくふうをいたし、ジョンソン大統領と話し合って、ようやく両三年のうちに復帰のめどをつける交渉をしようというところまでなりましたので、そういう際に十分外交交渉をいたしまして、沖縄の方々の輿望にこたえるようにいたしたいものだと思います。

 そこで、問題の沖縄の基地の問題であります。この前の臨時国会でも申しましたように、この沖縄の軍基地については、私はまだ考えがまとまってないということを申し上げました。今日も同じ考え方でこの問題と取り組んでおります。申し上げるまでもなく、ただいまの祖国復帰、これにまず力をいたすことであります。そうして、ただいまの問題と国民の動向、世論の動向等を勘案いたしまして最終的に決定すればいいことだ、かように考えております。

 次に、核非武装の決議の問題であります。私は、もう御承知のように、施政方針演説でもその前にも、しばしばいわゆる三原則なるものを発表しております。したがいまして、私はこの際、この機会に国会においてかような決議をされる必要はないように思っております。私はそういう意味で反対であります。はっきり申し上げておきます。

 次に、社会開発の問題についていろいろお尋ねがございました。これはいずれ予算委員会等におきまして詳細に申し上げるつもりでございますが、ただいま御指摘になりましたように、たいへん予算の硬直した状態で、予算編成も骨の折れた状態であります。しかしながら、私は、いわゆる社会保障や社会資本の充実等につきましては、十分気をつけたつもりであります。ことに中小企業、その他学童あるいは児童、老人福祉等についてもこまかな注意をいたしたつもりであります。ことに私、金額はわずかでありますが、皆さんとともどもに、原爆被爆者の援護の制度がはっきりきまりましたことなどは、これは国民にも喜んでいただくつもりでございます。

 また、最後の問題として、いろいろお話がございましたが、この民族の理想ということについては、これは主として江田君のお話を聞いた、かように御了承をいただきたい。(拍手)


1968/01/30

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