2016年5月11日 |
森本真治参議院議員 質問
特定商取引に関する法律の一部を改正する法律案本会議質問
平成28年5月11日 民進党・新緑風会 森本真治
特定商取引に関する法律の一部を改正する法律案本会議質問
平成28年5月11日
民進党・新緑風会 森本真治民進党新緑風会の森本真治です。ただいま議題となりました「特定商取引に関する法律の一部を改正する法律案」につきまして、会派を代表して質問いたします。
まずもって、先月発生した熊本地震によりお亡くなりになった方々に対し、哀悼の誠を捧げるとともに、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。我々民進党も引き続き災害対応においては政府と連携をさせていただき、防災担当大臣でもある河野大臣におかれましては、被災者への支援、被災地の復旧、復興に向けて全力で取り組んでいただきますようお願いさせていただきます。
そこで本日はまず、震災に便乗した悪質商法への対応についてお伺いします。すでに熊本県消費生活センターには、いくつかの相談も寄せられていると伺っています。災害に便乗し、例えば壊れた家屋の修理を急ぎ、後で高額な請求をされる。「地震速報」などのタイトルのメールが届き、クリックすると出会い系サイトにつながる。義援金を集めているなどとうそを言って金銭をだまし取る義援金詐欺等、過去の震災時にも許しがたい事案が発生しています。被災者を狙ったものに限らず、義援金詐欺などは善意の国民を狙った悪質極まりない犯罪です。消費者庁として、震災に便乗した悪質商法に対し、どのように注意喚起し、対策を取られているのか河野大臣にお伺いします。次に消費者被害の現状について、特に高齢者が被害に遭う事案が増加していることについてお伺いします。現在我が国では、高齢者数の伸び以上に、高齢者に関する消費生活相談が増加しており、特に判断能力の低下した認知症等の高齢者に関する相談も増加傾向にあるなど、極めて厳しい状況にあります。特定商取引法についても、社会経済情勢の変化やそれに伴う消費者問題の変質に対応する形で、幾度も改正を行ってまいりました。しかしながら、消費生活相談件数は全体として高い水準にあり、その内容も多岐にわたるなど、一向に収束する様子が見られません。
今国会の冒頭、安倍総理は施政方針演説において、「高齢者を狙った悪質商法には、規制を強化し、消費者の迅速な救済を図ります。」と述べておられます。安倍内閣の一員である河野大臣には、本法律案に対する質問の前提として、高齢者を狙った悪質商法に関する消費生活相談件数がここ数年、依然として高い水準で推移している現状に対してどのような御認識をお持ちなのか、またそれへの対策をどのように考えていくのかお伺いします。消費者被害の防止に伴う経済効果についてお伺いします。本法律案の内容は、消費者委員会に設置された専門調査会が取りまとめた報告書の内容を基本的に反映させたものであると承知しています。専門調査会においては、消費者側の委員と事業者側の委員とで熱心な議論が行われたにもかかわらず、意見の一致をみなかったために、本法律案に盛り込まれなかった内容もたくさんあります。そもそも守るべき利益の対立する消費者と事業者で意見を一致させることは困難であるとの見方もありますが、消費者被害を防止することによって、被害で失われたであろう金額が正当な消費に向かうことは、事業者側にとってもメリットになると言うべきであり、アベノミクスの向かうべき道ではないでしょうか。長期的な視点に立ったときに、消費者の安心・安全に寄り添っていかなければ、最終的な内需の拡大にもつながらないと考えますが、河野大臣のご所見を伺います。
次に消費者庁等の移転についてお伺いします。政府が3月22日に公表した「政府関係機関移転基本方針」によりますと、消費者庁、消費者委員会、国民生活センターについて、徳島県の提案を受け、8月末までに移転に向けて結論を得ることを目指して、現在検証が行われていると認識しています。消費者庁等の移転に関しては、この間、日弁連や消費者団体等から多くの反対の声が上がっています。危機管理業務や、国会対応業務、さらに関係省庁間にまたがる消費者行政の司令塔機能を果たしていくには、消費者庁等を徳島に移転させることは現実的ではないという意見からです。
政府関係機関移転基本方針は、東京一極集中の是正の観点から、地方から提案のあったものについて、国として検証が行われているわけですが、検証の基本的視点でもはっきり示されているように、移転した際、全国を対象とした国の機関としての機能の維持、向上が期待できることが絶対条件です。すでに3月には消費者庁長官をはじめとする職員が「お試し移転」を行い、一昨日からは国民生活センターが試験的に移転し、業務を開始したと伺っています。
国民生活センターの試験移転では、全国の自治体職員を対象に研修を行っていると伺いましたが、参加者は圧倒的に徳島県の方と伺っています。研修の参加者について、徳島県とそれ以外の方の人数をお伺いします。徳島県の方ばかりの研修では、十分な検証は出来ないと考えますが河野大臣のご見解をお伺いします。
そもそも河野大臣は徳島県に移転することにより、消費者庁等の機能が向上していくとの手応えを感じているのか、さらに基本方針の中にある、「移転先以外から理解が得られる」と思っていらっしゃるのか明確にご答弁ください。次に本法律案の内容について、まずは違反事業者に対する指示の実効性についてお伺いします。
本法律案では、悪質事業者への行政規制を強化し、消費者被害の防止・救済を図っていこうとするものですが、一つとして、業務停止命令を受けた悪質事業者に対し、消費者利益を保護するために必要な措置を指示できることとしています。その一例として消費者庁や都道府県は、不実告知により行政処分があった旨の既存顧客への通知や、返金を求める消費者への適切な対応として計画的な返金等を指示できるとしています。
しかし、執行体制がぜい弱な地方自治体が多い中で、違反事業者に返金計画を作らせ、消費者への返金を行わせるために、監視を続けるということは難しいように思います。そこで、違反事業者に対する指示の実効性を高めて行くためには、更なる体制強化が求められます。国と地方自治体の連携強化、自治体担当者の専門性の向上に向けての支援等、制度の実効性をどのように担保していくつもりか、河野大臣の御所見を伺います。次に、違反事業者に対する行政処分の効果についてお伺いします。
近年、業務停止命令を受けた法人の役員などが、処分を受けた後も社名を変えて別の法人を立ち上げることにより、実質的に業務を継続するといった悪質な事案が頻発しております。
本法律案では、そのような悪質事業者に対処するため、業務停止を命ぜられた法人の役員等に対して、停止の範囲内の業務について新たに業務を開始することを禁止する内容を盛り込んでおります。
しかし、この業務停止命令のうち、都道府県のものについては、命令した自治体の区域外では全く効力が及ばないことになっています。これでは、問題の根本的な解決には至らないと考えますが、河野大臣の御見解を伺います。次に専門調査会で熱心に議論が行われたにもかかわらず、本法律案に盛り込まれなかった課題についてお伺いします。
まず、インターネット取引の虚偽・誇大広告規制についてお伺いします。
本法律案では、通信販売のうち、ファクシミリ広告への規制の導入は図られることになりますが、インターネット取引についての広告規制は見送られることになりました。インターネット通販に関する苦情相談件数は、平成21年度から平成26年度の5年間で約2倍に増加しており、商品・サービス・デジタルコンテンツのすべての分野で増加しています。中でも「誇大広告」に関する苦情相談件数は増加傾向にあり、専門調査会においても、通信販売に係る「虚偽・誇大広告に関する取消権」について、その必要性が主張されましたが、委員間の意見の一致をみることなく、引き続き検討事項となりました。
ますます、市場規模を拡大していくインターネット通販において、消費者が安心して利用できるよう「虚偽・誇大広告」に関して消費者の取消権を認めるべきだと思いますが、河野大臣の御所見を伺います。次に、事前勧誘拒否制度についてお伺いします。
平成27年に消費者庁が実施した「消費者の訪問勧誘・電話勧誘・FAX勧誘に関する意識調査」と全国消費者団体連絡会が実施した「消費者契約に関する意識調査」の両方において、いずれも96%を超える消費者が、訪問販売・電話勧誘販売を「必要ない・来てほしくない」と回答しています。
また、特定商取引法は、平成20年改正で訪問販売における再勧誘の禁止が導入されましたが、こちらも消費者庁の同調査によれば、「後日また勧誘を受けた」「断っても勧誘を続けられた」など、再勧誘を受けた消費者は、訪問販売・電話勧誘販売それぞれの類型で約4割に上っています。残念ながら、再勧誘の禁止という仕組みでは、販売業者は勧誘を拒否される前に一度消費者と接触することができてしまうため、消費者がいくら断ろうとしても、販売業者の巧妙なセールストークにより押し切られ、はっきりと断ることができずに不本意な契約を締結してしまうことになりかねず、十分な効果が得られないのではないかと思います。河野大臣は特定商取引法における、再勧誘の禁止の効果についてどのような認識をお持ちかお伺いします。
そこで、そもそも事前に拒否している消費者に対する勧誘を禁止する制度を導入するべきとの意見があります。訪問勧誘拒否制度「Do-Not-Knock制度」や電話勧誘を拒絶する意思を登録した消費者に対して事業者からの電話勧誘を禁止する「Do-Not-Call制度」について、アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国やEU諸国においては既に導入し、規制をかけていると伺っています。消費者庁としては両制度の効果をどのように整理されているのか。我が国においても導入することが可能と考えるか河野大臣の御所見を伺います。次に本法律案の施行期日及び見直し期間についてお伺いします。
本法律案は、悪質事業者への対応として、行政調査に関する権限の強化や刑事罰の強化、インターネット社会に対応した公示送達制度の導入などを盛り込んでおり、一つ一つの制度がきちんと運用されれば、悪質事業者に対して抑止力となり、その効果を期待できるものと考えています。一方で、本法律案は、「公布の日から起算して1年6ヵ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」と、施行まで大変長い期間を設けております。この間に消費者、事業者双方への周知徹底を図るとともに、悪質事業者に「やり得」をさせないための監視・指導の強化を実施していくべきと考えます。河野大臣の御所見を伺います。併せて消費者被害の動向を注視し、被害防止効果が十分ではないようであれば、施行後5年を待たず速やかに見直すべきと考えますがお伺いします。以上、質問してまいりましたが、本法律案が成立した後も腰を落ち着かせてしまうことなく、今回先送りになった論点について、速やかに検討を始めていただくことを改めてお願いし、質問を終わります。
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