1978/06/15

戻るホーム主張目次会議録目次


84 参議院・法務委員会

(民事執行法案及び司法書士法の一部を改正する法律案について)


○江田五月君 先に、司法書士法の一部を改正する法律案から伺います。
 現行の司法書士法には、この改正法律案の一条とか一条の二とかというような規定がありませんが、しかし、いまでももちろん司法書士の制度はあるわけで、その司法書士の制度がその業務の適正な実行によって、「登記、供託及び訴訟等に関する手続の円滑な実施に資し、もつて国民の権利の保全に寄与する」と、そういう制度であることはこれは間違いないし、さらに一条の二のような司法書士の義務があることもまた間違いのないところだと思いますが、いかがですか。

○政府委員(香川保一君) 現行法におきましても趣旨は同じだというふうに考えております。

○江田五月君 この司法書士法の改正法を立案するに当たりいろいろ聞いてみますと、司法書士会の意見はいろいろとお聞きのようでありますが、司法書士会も見方によれば一部のある業者の団体であって、それに対するやはり消費者の側の意見というものも十分に聞かなければならないところがあろうかと思います。消費者というのはその場合司法書士のお客さんであると思いますが。

 で、司法書士と国民とのつながりということになりますと、特定の司法書士を自分のところの顧問司法書士のように使っている企業等もあるかと思いますが、一般の国民にとってはやっぱり司法書士の事務所に行って書類を作成していただくというのは一生に何回かしか、何回もあるかどうかということではないかと思います。そういう一般の国民に対するサービスが十分に果たされているのかどうか、司法書士会の意見だけでなくて、もっと違った角度から、たとえば苦情の処理を受けつけるとか、いろいろなアンケートをとるとかいろいろありましょうが、国会の審議もその一つではあるかもしれませんけれども、そうしたことをいままでおやりになったことがおありかどうか、伺います。

○政府委員(香川保一君) 一般の国民からの司法書士制度全体についての意見というのは、苦情といいますか、そういうものは今日まで出たことはございませんが、個々の司法書士の業務ぶりにつきましてはいろいろ批判も法務局の方には届いております。

 そういうことの中で一番大きいのは業務の処理が迅速でないというふうなこと、あるいは報酬規定に違反しておるというふうなことが非常に多いわけでございまして、そういう都度会の方にも連絡して、そして極端な場合といいますか、責めるべき場合には懲戒処分を活用して懲戒処分をやっておると、こういうようなことで、国民の声は十分その業務の運用については反映されておるというふうに考えております。

○江田五月君 その懲戒ですが、これは現行の十二条に基づく懲戒であろうと思いますが、たとえばいま一番最新の年度でわかっている年度というどいつの年度になりましょうか。それをどういう内容の懲戒が行われたか教えていただけますか。

○政府委員(香川保一君) 一番新しい五十二年の四月一日から五十三年の、本年の三月三十一日まで一年間の懲戒処分を申し上げますと、一番重い認可の取り消しというのが三件ございます。それから業務停止、これは現行法のもとでのことでございますので、六カ月以上の業務停止が一件、それから三カ月以上六カ月未満の業務停止が二件、一ヵ月以上三カ月未満の業務停止が三件、一カ月未満の業務停止が二件、それから戒告でございますが、これが八件、計十九件の懲戒処分例がございます。

○江田五月君 そういう懲戒の事例は、たとえば現行法では十二条の場合に、この法律に違反したときということになりますが、仮に、品位を保持し、業務に関する法令、業務に精通し、公正かつ誠実に業務を行うという、こういう抽象的な規範に著しく違反しているような場合は、これは現行法では懲戒の対象にならないわけですか。

○政府委員(香川保一君) 各会則では品位保持の規定を現在設けておりまして、会則違反に当たる場合もございますし、それからこの司法書士法の委任に基づく司法書士法施行細則、これは法務省令でございますが、これにもやはりそういった業務の適正な運用ということについていろいろ規制を設けておりまして、それらの規定に違反するということが考えられます。

○江田五月君 そうした一般的抽象的な公正とか誠実とかというようなことに著しく違反しているような理由でこの懲戒を受けているような事例がどのくらいあるかというのはおわかりになりますか。

○政府委員(香川保一君) 詳細、懲戒処分例の内容、いま具体的に持ち合わせていませんのであれでございますが、たとえば先ほど申しました業務停止の中で処理遅滞というふうな理由で二件業務停止がなされております。これなんかがいまお示しのようなあれになるのじゃなかろうかと思います。

○江田五月君 今度の改正法では、一条の二に違反するというのは十二条にはっきりとひっかかってくることになると理解してよろしいですか。

○政府委員(香川保一君) そのとおりでございます。

○江田五月君 この監督ということをやはり相当に真剣にやっていただく必要がある例もあるのではないかと思いますが、先ほどの宮崎委員のお話の一枚落着ということでしょうか、訴訟関係の書類を作成する場合に読みにくい非常に大きな字で紙に書きなぐって一枚終わりと、次に二枚目といってどんどんお金をとるというような例もあるように聞いておりますし、あるいは裁判所に出すいろいろな書類の場合に、たとえば手形に関する訴状なり仮差し押さえ申請書なりはできても、それが小切手に変わるともうできないというようなケースもあるわけでありまして、十分な監督をお願いをしておきたいと思いますが、決意のほど伺っておきます。

○政府委員(香川保一君) 法務局長、地方法務局長には懲戒処分という権限があるわけでございまして、事案に応じてこの懲戒制度の趣旨に沿うように運用に努めなきゃならぬことは申すまでもありませんが、まあ私どもとしては一般監督権というふうなものはないわけでございます。したがって、できるだけ司法書士会あるいは連合会が自主的にそういった会員の非行のないように業務改善なりあるいは品位保持指導に努めていただくようには十分お願いして、ともども御指摘のようなことのないように努めてまいりたいというふうに考えております。

○江田五月君 いまの懲戒に関してもう一点。
 現行法では十二条三号認可の取消という処分になるわけですが、これが登録の取り消しに変わるわけです。登録の取り消しということと資格を失うということは、これは別になるわけですが、登録が取り消されたら資格はすぐになくなるというのが四条の五号の趣旨であると考えていいわけでしょうか。

○政府委員(香川保一君) 登録の取り消しを受けますと司法書士ではなくなるわけでございますが、司法書士となる資格は登録の取り消しだけではなくならないわけでございます。したがって四条の五号は登録の取り消しを受けますと、その処分の日から三年を経過しない者は登録ができませんから司法書士にはなれない、こういうことになるわけでございます。つまり国家試験に合格した者は司法書士となる資格が付与される、それが登録によって司法書士となるわけでございますから、そういう関係でございます。

○江田五月君 わかりました。
 いまの資格のことですが、改正法の三条の一号が資格試験、二号の方は特認ということですが、特認に関してはいろいろな検討すべき事項があろうと思いますが、あるいはこの国民の一部からは一生懸命自分たちは司法書士試験に合格するために勉強をしてやっとその資格を取得するのだ、それなのにある特定の人たちは一定の経験があるというだけで司法書士になる資格を与えられる、これが本当に法のもとの平等に合致すると言えるのかというような疑問を持つ向きもないわけではないのでありまして、この三条の二号の方が論功行賞的な運用あるいは天下り的な運用になっては、これは非常に困るわけでありまして、司法書士の制度の本来の姿を逸脱しないような運用をぜひともお願いをしておかなければいけないと思いますが、その点はいかがでしょうか。

○政府委員(香川保一君) 御趣旨ごもっともでございますので、そういう御懸念のないように十分運用は注意いたしたいと考えます。

○江田五月君 次に、民事執行法について伺います。
 民事執行法案は、これは昭和二十九年の法務大臣諮問第十二号に対する法制審議会の答申に基づいて立案されたものという理解でよろしいですか。

○政府委員(香川保一君) そのとおりでございます。

○江田五月君 その諮問第十二号に対する答申というのはいろいろな部門に分かれて、たとえば昭和三十二年の滞納処分と強制執行等との手続の調整とか、昭和三十九年の手形訴訟制度の改正とか、昭和四十一年執行官法の制定とかというぐあいにさまざまな部門に分かれているようでありますが、これで、この強制執行、民事執行関係のこの諮問に関する制度の整理が一応終わったといいますか、総仕上げになったというふうにお考えになっているわけでしょうか。

○政府委員(香川保一君) 手続法的な問題としては、今回の民事執行法案で終わりでございますが、一つ、これは直接関連――論理的に関連があるという意味ではございませんが、滞納処分との調整の関係はいま一度再検討する必要があろうかと思いますのと、それからもう一つ、この諮問の強制執行というのは、これは広義の意味でございまして、したがって仮差し押さえ、仮処分の関係の実態的な側面の検討がなお残ると、これは引き続き検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。

○江田五月君 そうしますと、多少保全の関係で残るところはあったとしても、執行に関してはこれが基本法になると、法制の近代化の最後の課題としての執行法の近代化をなし遂げた、いわば何といいますか、時代を画するものであるというような御理解をなさっていると理解してよろしいですか。

○政府委員(香川保一君) 長年の懸案であった強制執行競売の法律改正ができ上がるということでございまして、私ども画期的だとか、そういうふうな評価は、別にそう大それたことを考えておるわけではございません。

○江田五月君 民事執行法については、それは将来の運用からいろいろまた問題が出てくれば別ですが、いま考えられる範囲では、一時的な手直しとか手当とかというのでは、なくて、一つの単行法をつくったものだというお考えであることは間違いないのだと思いますが、いかがですか。

○政府委員(香川保一君) そのとおりでございます。

○江田五月君 そういうものであろうという私も理解をするわけですが、それにしては、どうも多少中途はんぱなところが幾つかあるのでは云いかという気がするのですが、たとえば配当要求ですが、配当要求が債務名義等を持っている者、それと仮差し押さえ債権者、これは強制執行の差し押さえの登記後の仮差し押さえ債権者、それと一般先取り特権を書面によって証明した者というようなことでありますけれども、もともと仮差し押さえというのは、これは配当要求をするための制度ではない。将来の執行を保全する制度でありまして、こういう仮差し押さえをこういった配当要求の資格に流用するということになると、果たして本来の仮差し押さえの審理のときに保全の必要がないというような結論に達した場合でも、なお配当要求のために必要だというようなことまで保全の必要に入ってくるのかどうか、どうも制度をむやみに流用してきて本当の、正面からこの配当要求のことを根本的に考えている対応とは言えないのじゃないかという気がちょっとするのですが、いかがでしょうか。

○政府委員(香川保一君) 法案御説明申し上げますと、仮差し押さえをしただけで配当要求はできることにいたしておりますけれども、さようにいたしました趣旨は、本来の仮差し押さえの趣旨で財産の逸脱を防ぐということで、仮差し押さえをしておる、そういう仮差し押さえ債権者というのは、一方で債務名義を得るための手続、本訴を起こしておるわけでございます。そうしますと、せっかく仮差し押さえをしておきましても本訴での判決が確定する前に配当が終わってしまいますと、仮差し押さえ債権者は何のためにあれしたのかわからぬという結果になりますので、したがって仮差し押さえ債権者はその段階では債務名義がないけれども、配当要求だけは認めると。そうしまして配当の段階になりました場合には仮差し押さえ債権者のために、その充てるべき配当金額を供託しておきまして、そして債務名義ができたときに現実に施行する、こういうふうな仕組みにしておるわけでございまして、したがって、これは現行法のようにだれでも配当要求ができるということならともかくといたしまして、先ほど申しましたような趣旨で配当要求あるいは配当手続の合理化を図るとしました場合に、仮差し押さえ債権者を全く配当から除外するということはかえって仮差し押さえ債権者の保護には欠けるという非難があろうかと思うのであります。そういうことで配当要求は仮差し押さえの段階だけで認めると。しかし、実際の配当は債務名義を得てなければ交付しない、こういうふうな立て方にしたわけでございます。

○江田五月君 そうすると、この九十一条一項の二号によって、供託された配当金については仮差し押さえ債権者が債務名義まで取得しなければ実際に配当金を受領することはできないということになるわけですね。

○政府委員(香川保一君) そのとおりでございます。

○江田五月君 そうすると、これまでの強制執行法の根本にある平等主義というものは果たして一体どういうことになるのか。一方で平等主義をとりながら、どうも手続上、非常にその平等主義を完全に変えてしまうような結果になるのではないかとちょっと思いますけれども、どういうことになりますか。

○政府委員(香川保一君) 確かに強制執行につきまして現行法のような徹底した平等主義をとるか、あるいはドイツ法のように優先主義をとるか、この辺のところは一つの大きな政策問題だと思うのであります。わが国の実情から申しますと、また関係の法体系の違うドイツのようないわゆる差し押さえ債権者を最優先にする、そういった優先主義というのは実情に合わないだろうと。しかし、さればといいまして、現行法のように債務名義を得て強制執行に着手する債権者と、債務名義が何もなくて配当要求する者と全く平等だという徹底した平等主義というものも、かえって不都合な結果になるのではなかろうかというふうに考えまして、したがって、いわばこの法案の今回のその面の改正は半分ぐらい平等主義を修正したというふうな見方が実質的ではなかろうか、こういうふうに考えております。

○江田五月君 仮差し押さえがあれば一応裁判所の、先ほどの局長のお言葉ですとレビューを経ているということでしたが、それだけでは本当に債権の満足を得られず、やはり債務名義までとらなければいけないという、それでよくわかるわけですが、仮差し押さえで配当要求の資格があるということになりましても、やはり、レビューはしていたとしても、無名義の場合よりは程度の差はあるかもしれませんが、仮装は不可能ではない。しかも仮差し押さえ決定を得る段階で担保は提供していたとしても、これは債務者に生ずべき損害であって、第三者に生ずる損害の担保ではないわけでありますから、どうも根本的な見直しということになると、もっと何か大きな見直しが必要なんではないかという気がしているわけです。

 それからもう一つ、一般先取り特権ですが、これは民法三百六条のほか、商法二百九十五条の先取特権も含まれると考えてよろしいわけですね。

○政府委員(香川保一君) 商法の先取特権も含まれます。

○江田五月君 雇い主が会社の場合と個人の場合とで非常に差ができるということになるわけですが、その点はいかがお考えなんですか。

○政府委員(香川保一君) その点につきましても、現行の民法、商法における先取り特権の制度というのは私はやはり再検討すべき時期に来ておると思うのでありまして、法制審議会の民法部会におきまして、近いうちに担保制度全般についてもう一度見直しをしていただく。そちらの方の実体法の改正まで今回一緒にやるべきだという御意見ももちろんあろうかと思うのでありますけれども、やはりなかなかそこまで広げますといつの日にでき上がるか、かえっておくれるおそれもございます。先ほど御指摘の仮差し押さえの問題も、確かに御指摘の問題は執行の問題ではなくて、むしろ先ほど申し上げました作業として残っておる仮差押さえの実体法の面を再検討しなければならない問題であるわけでありまして、その辺のところが今後の大きな課題として残されておるというわけでございます。

○江田五月君 ついでにいまの点で伺っておきますと、民法三百六条の方は退職金は含まれるというふうにお考えでしょうか。それから、商法二百九十五条に社内預金は含むというふうにお考えでしょうか、どうでしょうか。すぐにお答えなれなければちょっと後で結構です。

○政府委員(香川保一君) その辺についての有権的な解釈はまだなかなか確立してないわけでございますけれども、私は退職金は入っていいのじゃないかと。社内預金はちょっとむしろ消極的に考えるわけでございます、ただ、まだ自信のある答弁ではございませんが……。

○江田五月君 次に進めますが、いまの点やなんかもまだまだこれから根本的な見直し、執行だけでなくて実体法との絡みで見直していかなきゃならぬ点だと思いますが、もう一つ、最近公害の訴訟とかあるいは環境に関する訴訟とかで不作為命令が出されるケースというのが次第に多くなりつつあると思います。これからもだんだん多くなってくると思います。たとえばつい最近、ちょっと前ですが、非常に大きな問題になったケースで言えば、大阪高裁の昭和五十年十一月二十七日の判決、大阪国際空港公害訴訟、これが主文第一項の(一)は、「被告は」ある「原告らのために、大阪国際空港を毎日午後九時から翌日午前七時までの間、緊急やむをえない場合を除き、航空機の離着陸に使用させてはならない。」という、そういう主文でありますけれども、こうした不作為命令の執行について、一体いままでの給付命令は給付の内容が非常に厳密に特定をされていて、何の判断もなくそれを実現するということができなければ給付命令としてなかなか強制履行はむずかしいのだというような考え方で果たしてやっていけるのかどうか。その強制執行のあり方がこれからのこの複雑な時代にいままでの考え方どおりでいいのかどうかというような点も根本的な検討をしていかなければならないと思います。

 これは法務省民事局参事官室でこの強制執行法、これは強制執行法案要綱案というふうになっておりますけれども、第二次試案では不作為義務の代替執行のことも触れておいでですね。こうした不作為義務の代替執行というような考え方がこの成案を得る段階では完全に消えてしまったということは一体どういう事情なのか、御説明をお願いします。

○政府委員(香川保一君) この第二次案に盛られておった規定につきましては、理論的にはこういう方向が私は正しいとは思うのであります。ただ、これを実際運用していただくのは裁判所であるわけでありまして、最高裁判所初め一線裁判所の裁判官の御意見もいろいろ承ったのでございますけれども、とても裁判所としてはこういった規定の運用は責任が負えぬと、こういう――確かに理想過ぎる面もございますので、運用となりますと確かに裁判所としてはむずかしい問題だろうと思うのでありますが、そういうことでございましたので、余り理想に走り過ぎてもというふうなことでこれをやめにしたのでございますが、私は先ほど申しましたように、仮処分の実体的な面の改正を考えなきゃならぬわけでございまして、やはりあの問題と一緒にしてここのところはやはり考えないと法体系としてはきわめてちぐはぐなものになってしまうというふうな感じがしておるわけでありまして、なかなか理想的にはこの二次試案のような形が理論的にも正しかろうと私は思いますけれども、運用の問題としてはまだまだむずかしい。それよりは仮処分制度の実体的な面のひとつ十分な検討をして、成案を得ていずれ国会に提出申し上げるわけでありますが、その際にやはりこの問題もあわせて検討をしなきゃならぬかなというふうに考えております。

○江田五月君 いまの点は、不作為命令だけじゃなくて、作為の給付命令の場合でも、たとえば相隣関係の場合とかあるいは所有権に基づく妨害予防というような場合に、工事を実際は命ずる権利があっても現実にどういう工事をするかというようなことが特定をすることは非常にむずかしいわけで、したがって、あらかじめ工事をして後に費用を要求するというようなことにならざるを得ないというのがいまの実情になっているわけで、そういう場合に、執行する方法がはっきりしないものだから、権利があってもその実現ができないということがいまあるわけでありまして、裁判所の苦労はもちろんわかるわけですけれども、非訟的な観点を執行の中にも次第に取り入れていかなければいけない分野が広がってきていることだと思います。

 さらにまた、このいまの第二次試案だと、保全についても仮差し押さえ、仮処分ということで、保全の命令と執行と両方合わせて一つの考え方をお出しになっている。そして、その中では、保全の命令と本執行への移行の点までもきちんとした整理をされているわけですが、こういう点も落ちているので、この民事執行法案、まだまだこれから検討しなければならない問題がたくさんあるのだというふうに思います。そうしたことについてこれからさらに一層の御検討をお願いをしておきたいと思います。
 その決意を伺って質問を終わります。

○政府委員(香川保一君) 仮差し押さえ仮処分の実体的な規定は、今回の法案に落しておりますのは、やはり民事執行法案ということの法律の中にさような実体規定が入ってくるのはいかがかという法律の体裁の問題があるわけでございます。しかし、さればといって、仮差し押さえ、仮処分、保全訴訟の実体的な整備と申しますか、検討もやはり早急にしなければならぬということで努力してまいりたいと思います。

 それから、そのほか先ほどの作為、不作為義務の履行の関係でございますが、これも何もかも後に置いてきたような感じでございますけれども、これはやはり民法自身の実体法の問題を何とかしていただかぬことにはなかなか強制執行の面で現在起こっておる諸問題を解決するというのはちょっと私は限界を超えているというふうに思うわけでございまして、当然いわば執行法の関連の実体規定というものを、先ほどの先取り特権も含めまして、やはり早急に再検討すべきだということで努力してまいりたいと思います。


1978/06/15

戻るホーム主張目次会議録目次