1980/11/12 |
93 参議院・公害及び交通安全対策特別委員会
道路交通、駐車禁止について
○江田五月君 道路交通についての質問がずっと続いておりますが、いましばらく続けてまいります。
道路が、ドライバーとペデストリアンと、両方に使われるものであるというお話で、この両方の交通の安全と円滑化が図られなければならぬことは当然であります。同時に、自動車を運転する者にとって安全というものについてのモラルが確立されなければならぬこと、これも言うまでもありません。安全についてのモラルの確立の中に、恐らく道路交通関係法規を完全に守るということについての強い熱意とか、信念というものが運転者になければ困るという気がいたしますが、さて間もなくこの師走を迎えまして世上だれも皆気がせくということもあるのかもしれませんが、繁華街で非常にたくさんの数の違法な駐車車両が見られる。運転する者は駐車してある車の間を縫って走らなければいかぬようになる、買い物をする者は駐車してある車の間を身をこう横にして通り抜けなければならぬような状態になるということがあるわけですが、駐車のことについて少し尋ねてみたいと思います。
駐車違反の件数というのは、この二、三年どういう動向になっておりますか。
○政府委員(池田速雄君) 昨年一年間の駐停車違反の取り締まりの件数でございますけれども、百六十七万四千百六十二件となっております。一昨年、五十三年は、百七十七万二千五百七十一件ということでございます。ことしに入りましてから六月までの上半期では、八十七万九千百九十一件の検挙というふうになっております。
○江田五月君 さらにその前五十二年が百八十二万八千九百十件という数字はいただいておるわけですが、これは駐停車違反、両方足してですね。駐車だけはわかりませんか。
○政府委員(池田速雄君) 統計上同じ扱いをいたしておりますので、区別は現在のところ把握しておりません。
○江田五月君 しかし、停車違反で検挙するという者は非常に数が少ないでしょうから、おおむね、すべてとは言いませんが、大部分が駐車違反だと考えて差し支えないですか。
○政府委員(池田速雄君) 実態はそのとおりであろうというふうに思います。
○江田五月君 年々減少してきているわけですが、これはどういうことが原因で減少しているとお考えですか。
○政府委員(池田速雄君) 特別な理由はないと思いますけれども、ことしになりましてから、昨年に比べますと、また上半期だけ見ましても増加いたしておりますので、減少は一般的な傾向というふうには見られないと思いますけれども、実はたしか道交法違反、全体の検挙を見ましても五十二年ごろが一番ピークじゃなかったかと思いますが、それ以後全般的に若干減少ぎみでございますので、駐停車違反につきましてだけ特別に減少をしたという、現象ではないんじゃなかろうかというふうに思います。
○江田五月君 これは正確な根拠を挙げろと言われてもむずかしい話ですが、世間によく言われるのは、交通違反の取り締まりというのは、警察がちょっと暇ができたときに少しかせごうかというのでやるとか、まあ熱意の問題だ。それほどやる気がないときには余りやらないというようなことが駐車違反だけでなくてもよく聞かれるわけでありまして、そういうことがあるかどうか、あってはならぬと思いますが、どうも年々少なくなっている。一方で、道路における違法駐車の実情というものが全然改善されるようには常識的には考えられないわけで、何か駐車違反の取り締まりというものに熱意がないのじゃないかというようにとらえられても困るので、そういうことじゃないということをひとつはっきりおっしゃっていただけますか。
○政府委員(池田速雄君) お言葉を返すようでございますけれども、現在全国で交通警察官が三万四千ほどおります。警察官全部で二十万余りでございますけれども、現在深夜に至るまで街頭で活動しておりまして、大変に交通警察官というのは苦労しておるということで、私といたしましては部下職員に対して申しわけないというぐらいに思っております。特に最近では暴走族が出ましてから、土曜、日曜に休みをとった者はほとんどいないというのが実情でございまして、そういう点で決して熱意はないわけでなくて、ことしになりましてから交通事故の死者はふえておりますけれども、それに対しての一線の交通警察官の、心労といいますか、そういうものにつきましては、私どもただもう――私の立場で申し上げるのは不謹慎かと存じますけれども、頭を下げる以外にないというふうに考えております。決して熱意に乏しいわけでなくて、警察力の配分の問題ということで、もし御指摘のような点がございましたら御理解いただきたいと思いますが、特に駐車違反につきましては、その対象が大変に多いといったようなこと。それからいま御指摘ございましたとおり、繁華街等につきまして一遍に集まってまいります。それで、実は違反の切符を切るということも一つの方法でございますけれども、それだけでは違法の状態というのはなかなかなくならない。したがいまして、そのためには移動措置をとるというようなことが必要でございますけれども、それのための手続その他につきましても大変苦労いたしておりまして、なかなか効果的な手が打てないというのが実情でございますけれども、しかし、特に違法性の強いもの、危険度の高いもの、そういうものに重点を指向して取り締まりを行っている実情でございます。
○江田五月君 私は、一線で取り締まり、あるいは指導に当たっていらっしゃる警察官の皆さんを非難するつもりは毛頭ありませんし、むしろこの皆さん方の御努力には本当に敬意を表します。しかし、なかなか駐車違反というのは、本当のところ検挙がむずかしい犯罪になっているのじゃないか。昭和五十四年、年間で百六十七万四千百六十二件、しかし実際にわれわれが実感する数というのは、もうこんなものじゃとてもとてもないわけですね。多くの駐車違反車両が免れているわけですが、駐車違反のこの法規制、法の規制の仕方ですね。これは駐車について道路交通法二条一項の十八号ですか、定義があってそして禁止が四十四条、四十五条、四十七条、四十八条、四十九条とずっと続いている。七十五条の八もあるというようなことになって、そして違法車両、先ほどもお話になった直接強制が五十一条にあるという。それであとは罰則があって行政処分があるという、そういう形になっているわけですね。いずれにしてもこれはすべて車に対する直接強制以外は全部駐車をした者、駐車をした人間に対して不利益を課す形で駐車ということを取り締まっていこうという形になっていると理解してよろしいですか。
○政府委員(池田速雄君) 現在の道交法の構成の仕方は、運転者の行為責任ということを重く見ておりまして、一義的にはそれに尽きるわけでございまして、ただ例外的なものにつきまして、そういった運転を管理する者につきましての下命容認の規定でございますとか、あるいは両罰規定の適用があるというふうになっておりますので、あくまでも運転者が行為の責任者であるというたてまえで構成されております。
○江田五月君 昭和五十一年三月三十日、中央交通安全対策会議決定、交通安全基本計画というのがありますが、この中の「路上駐車の適正化等」という部分には、「禁止場所を拡大し、時間制限付き駐車規制を実施するなど、合理的な駐車規制を推進するとともに、違法駐車車両の指導取締り体制の整備を図る。」というふうに書いてありまして、違法駐車を行った者に対する指導、取り締まりというふうに書いてないんですが、これは何か意味はないんですか。違法駐車車両ということに着眼するのだというような意味はここにはないんですか。
○政府委員(池田速雄君) 先ほども申し上げましたように、道交法の規定上、違反者に対しまして、最終的には刑事処分でございますけれども、形式としましては反則制度の適用といったような行為者の責任を追及する場ももちろんございますが、現実にそれが交通の著しい妨害になっておりますような場合には、先ほど御指摘のような車自体に対しましての移動措置等もございますので、そういう意味も含めましてそういう記載の仕方になっていると思います。
○江田五月君 まあいまの点は突然お伺いしたんで、十分検討されていなかったのかもしれませんが、一方自動車の保管場所の確保等に関する法律は、これは自動車の保有者にいろいろな責任を課しておりますね。まあちょっといま条文の立て方を詳しく論じている時間的余裕がありませんが、保有者が自動車の保管場所として道路を使ったという場合、これはその道路を保管場所として使用するというのはそれは行為ですけれども、しかし、実際にその車をどこに置くかという人間とは別に、保有者に責任がかかるような形になっているのじゃありませんか。つまり、自動車をどこかに駐車をするという行為だけではなくて、駐車車両に対するさまざまな規制というのは、法律上知恵をしぼればいろいろ可能なのではないかと思うんですが、いかがですか。
○政府委員(池田速雄君) いま御指摘の車庫法につきましては、規制の仕方は二つあろうかと思います。一つは、車を保有する者は当然車庫といったものを持たなければいけない、車の保管場所を持たなければいけないということがございます。それと同時に、単なる駐車とは言えないような長時間駐車、それに対する規制の両方かけていると思いますが、それは法律の性格からいたしまして道交法とは若干違うニュアンスがあるんじゃなかろうかというふうに思います。したがいまして、道交法につきましては行為者主体に法が構成されておりますので、その運転者の行為自体について保有者なりの責任がどの程度まで問えるかという問題があろうかと思いますが、現在の法体制のもとでは、最終的には刑事責任を追及するというような形での法律構成になっておりますので、そういう面での規制というのはなかなかむつかしいんじゃなかろうかというふうに思いますが。
○江田五月君 私がこれから伺っていくわけですが、道路交通法の駐車の規制は確かにこの行為者を刑罰でもって規制していく、さらにそれにあわせて点数制度を通じて行政処分を科すということになっていることは確かですし、そのこと自体をやめろということではないのですが、しかし、それだけでは実効が駐車禁止に関する限り上がらない場合が出てくるのじゃないか。たとえば駐停車禁止の場合に、駐停車禁止違反行為というものは、これはまあある程度時間的な経過がなければ駐車と言えないというような場合はあるでしょうけれども、しかし、かなり短時間の間で完成する行為ですね。ですから、たとえば駐停車禁止場所に駐車をする瞬間を現認すればすぐにこれで検挙ができるわけですが、しかし、実際はいかがですか。その駐車禁止場所に駐車をする行為が成立した瞬間にその者を検挙するということをおやりですか。
○政府委員(池田速雄君) 実際の扱いといたしましては、特別な場合を除きましてある程度の時間の経過を見てから検挙するというのが実態でございます。
○江田五月君 そうでしょうね。そうでなければそれは幾ら何でも警察の横暴ということになってしまうかと思います。
さあそうすると、ある程度の時間が経過した、駐車違反の車があった、そこでお巡りさんが待っていた、人がやって参りまして運転台に座ってその車を乗り出そうとした、そこでとめて、お前駐車違反だというので切符を切ろうとする、さあそれでもうすぐにその人は確実につかまったということになるかどうか。自分がそこに置かなかったというふうに言いますと、これどうなりますか。
○政府委員(池田速雄君) いまお話しのとおり、最初から最後まで警察官が現認しているというわけではございませんので、御指摘のような問題が起こるわけでございます。
それで実際問題といたしましては、そこに待っていて運転者の方が帰ってみえてという例もございますけれども、なかなか実態といたしましては、警察官があるいは交通巡視員が待っているところに運転者が戻られてという例は少ないようでございますので、実態といたしましてはいろいろな警告票なりステッカーなりというものを車に張りまして、こういう違反でございますからいついつまでにどこそこへ出頭してください、こういう通告票によりまして後刻捜査が始まるというのが大部分であろうかと思います。
○江田五月君 ますますむずかしくなるわけです。とまっている車、駐車違反の車のところへ警察官がいたらちょうどそこへだれかが来たというのならば、そしてその者が鍵を持っていれば、まあ普通はその者が運転をしてそこへとめたんだろう、だから駐車違反をした運転者はその者だろうという一応の推認が働くでしょう。しかし、それも場合によってそういう推認が働かない場合もあり得るでしょう。自分はこれから乗って出ようとする男だけども、ここへ置いた男は違う男だと言われたらこれはどうしようもない場合がある。通常はそういうことはない、通常はそうではなくてステッカーなりを張って後から出てきなさいというわけですね。さあこれ出て来なかったら一体どうするのですか。
○政府委員(池田速雄君) 警察の方で車両がわかっておりますので、車両の所有者の方をまず捜査いたしまして、その所有者の方、その他関係の調査からそのとき実際に運転していたのはだれかということを特定いたしまして対処しているわけでございます。
○江田五月君 したがって、駐車違反の車を発見することが捜査の端緒で、そして被疑者が不明のまま捜査に入るわけですね。そしてまずはこの所有者、あるいは所有権留保の場合ですと保有者、使用者ですかというふうなところからこの捜査を始めていくんですが、これは所有者を呼び出して聞くわけでしょうか。そうすると、所有者の方が何も言わなかったらどうなるんですか。
○政府委員(池田速雄君) 所有者がわかりますと、そこから捜査が始まるわけでございますが、仮に黙秘されましても関係の方、その他からのいろいろな事情聴取によりまして被疑者を特定いたしまして措置いたすことになるわけでございます。
○江田五月君 そんなことまで駐車違反一件でやってられますか。関係の人をずっと呼び出すといったりて、だれが関係者か全然わからないですね。所有者が来て黙秘する、あるいは黙秘といかなくても、自分ではないけれども、二、三人あるいは四、五人人を挙げて、このうちのどれだかわからないというようなことになる。それを一々全部詳しく捜査をし、あるいは場合によっては運転日誌等を押収をして捜査をしというようなことを駐車違反で実際問題としてやるだけの余裕がありますか。
○政府委員(池田速雄君) 捜査の実態を申し上げますと、たとえば警視庁等でございますと、ほぼ一週間以内に出頭されまして処理を終わっている者が七〇%強あるというふうに聞いております。その残りの不出頭の被疑者につきまして事後のいろいろな捜査が始まるわけでございます。
○江田五月君 大部分がきちんと処理されているということだからそれはその限りではいいんですけれども、しかし、実はもう皆さんも十分御存じなんだと思いますが、その捜査をきちんと遂げて反則金を支払っていただいているうちに相当数、もちろん相当数といっても何十%というような数であったらこれは大変なんですが、どのくらいか数はわかりません、しかし、かなりの数ですね。たとえば実際に駐車行為を行った者ではない第三者が自分でございますとあらわれて、そのまま反則金を納付しているというような者があるのじゃありませんか。いかがですか。そういうことをお聞きになったことはありませんか。
○政府委員(池田速雄君) 捜査の過程でいろいろ事情を聞いております範囲にそういった身がわりと申しますか、そういう事例があったということは私どもも承知いたしております。
○江田五月君 わかる場合というのは恐らくきわめてまれで、だれか運転をしておりましたという者があらわれたときに、どういうことに注意をしてそこで切符を切るのでしょうか。恐らくその者が本当に違法駐車をした者であるかどうかという点には注意をされるのでしょうが、一体どうやってその者が本当に駐車違反をした者であるということを確認されるのですか。
○政府委員(池田速雄君) 捜査の方法は二つございまして、まず違反が行われました場所を中心といたしました捜査が一つございます。そのことによりましてほぼ人が特定できる場合がございますし、いま一つは、先ほど来申し上げました車の保有者等からの、その周辺から始まる捜査でございます。
○江田五月君 こういうことを言うのは本当に申しわけないのですけれども、それでは実に甘いんですね。駐車違反について適当にごまかしている例というのがいっぱいあるんです。これはだれがやったというのを私がここで申し上げたらまた妙な捜査になったりして困りますから申し上げることはできませんが、あるいは私自身がそういうことをやったかもしれないですよね。いっぱいあるわけですよ。自分はもう点数がなくなっちゃった。どうしてもこれでこのまま駐車違反やられたら停止になってしまう。そこで自分の使っている者に行かせるとか友達に、ペーパードライバーで点数がいっぱいある者に行かせるとか、金はもちろん払って後で一杯おごって。そういう話題が酒のさかなになっているわけです。いっぱいあるということはどうなんですかね、御存じないというわけにはいかないのじゃないかと思いますが。
○政府委員(池田速雄君) 私どもの立場から申し上げますと、これはそういうことは絶対あってはならないことでございます。事柄は小さいということで見逃すことのできない性格のものであろう。やはり正義を追求するということが私どもの一つの使命でもございますので、そういう観点から捜査にもし不十分な点があるとするならば、さらに工夫をこらしまして対処してまいりたいと思います。
○江田五月君 これはおっしゃるとおりで、あってはならないことで、幾ら小さいからといって見逃すことのできないことなんですね。そのこと自体がすでに刑法犯を犯していることになるわけですね、駐車行為者じゃなくて出頭していく方が。しかし、現実にはそういう者が本当にあって、これが交通関係法規の遵法精神をむしばんでいることになっているのじゃありませんか。私はそのことを恐れるんですね。交通関係法規というのは、だれが見てなくても、どこでどういう不利益を課せられなくてもきちんと守るということでなければ、これは、自動車は凶器ですから危なくてかなわぬわけで、ところが実際にはこういうことで不法に免れているケースというのは相当にあるわけです。
ほかにもいろいろと免れる方法はあるんですよね。駐車禁止場所にとめていると言われて、ドアをあけたままそこへとめていて、そしてそれがとがめられたら、場所にもいろいろよりますけれども、たとえば曲がり角から三メートルぐらいのところへとめておった、ドアがあいておった、いろいろ追及されたら、自分は六メートルぐらい離れたところにとめておいたのだけれども、だれかがそこへとめたいために自分の車を押してそこへ置かれてしまった、こういうようなことを言われたらこれはどうなりますか。
○政府委員(池田速雄君) 個々の例についてのお答えは、かえって適当ではないのじゃないかと思いますので御遠慮させていただきたいと思いますが、御指摘の御趣旨は私どもも十分了解してまいるつもりでございます。
御指摘の趣旨は、やはり道交法違反につきましては、潜在的なものというのが多いんじゃなかろうか、その中で現実に検挙される者につきましての不公平感というものはないだろうか、あるいは検挙されました者の中に万が一にでもそういうような、責任を負うべきでない者が負っている例があるのじゃなかろうかという御指摘であろうかと思いますので、そうかといって現実のいまの交通の実態を見ておりますと、法規違反として問擬せずにモラルの支えだけで交通の秩序を形成するというにはまだ余りにも残念ながら遠い現実でございますので、御指摘のような趣旨を踏まえながら、私ども指導取り締まりの任に当たる者が心してまいりたいというふうに思います。
○江田五月君 私が言いたいのは、さらに超えて、駐車禁止ということを本当に実効あらしめるには、駐車禁止行為というものをとらえてその行為者を罰する、そのことを軸にして反則制度を動かしていく、行政処分を発動さしていくということでは基本的に欠陥があるんじゃないか。もちろんそのことをなしにしろと言うわけじゃありませんよ。それだけではなくて、車自体について、あるいは車の保管ということ、所有ということについて着眼して、何か知恵をしぼることができないだろうかということなんですね。
たとえば、保管場所の確保に関する法律をそのままというわけにはもちろんいきませんが、そういうものにあらわれている一つの思想、自動車を持っている者はその保管に責任があるのだ――駐車も保管の一つの形かもしれません。そうするといろいろと知恵をしぼれるのじゃないだろうか、そういうことを申し上げたいのですが、同時に自動車に対する直接強制の点でもまだまだいろいろあるという気がするんですね。
たとえばいま、動かすことはもちろんありますが、動かす場合によく聞く話は、外車にはどうも弱いんじゃないか、なぜなら、外車というのは動かすとき、ちょっと傷をつけたら後で損害賠償その他、暴力団が外車というのはよく持っているわけですから、なかなか動かしにくい。だから、普通の国産のしかもおんぼろ車ばかりねらうのじゃないかというようなことを聞いたりもするわけで、そういうことはないと思いますよ。しかし、言われているわけですね。
そうすると、直接強制ももっときちんとやっていくとか、あるいは車を刑法十九条ですか――没収するというようなことはいかがですか。非常に高速で運転したような場合に、その車は犯罪の行為に供された物ですね。そういう没収を、これはもちろん警察庁がやるわけじゃありませんが、行ったようなケースはありますかどうですか。
○政府委員(池田速雄君) 御趣旨の点につきましては、現在の法律が行為者責任というものを前提にしておりますから、それはそれといたしまして、別の考え方を持ってまいりまして、そういう刑事上の責任以外の考え方での保有者の責任というものが導入できるかどうかということに尽きるだろうと思いますので、この点につきましては十分検討さしていただきたいと思います。
○江田五月君 終わります。
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