1982/04/02 |
96 参議院・公害及び交通安全対策特別委員会
ごみ問題について
○江田五月君 来年度の予算の審査を各委員会で委嘱して行うというこの参議院の新しい制度が始まりまして、委嘱審査もいよいよもう最後になってまいりました。原環境庁長官、先ほどからお話を伺っておりまして、環境行政に対して並み並みならぬ熱意で取り組まれると、しかもただアドバルーンを上げるというだけじゃだめなんで、実効ある施策を講じていくんだという決意のほどを聞かしていただいておりまして、ひとつ参議院の代表でもありますから、がんばってやっていただきたいと思います。
志布志の問題あるいは屋久杉の問題、湖沼法の問題その他もろもろずっと各委員からお話がありまして、私はさらにこれまでに触れられた問題と違った点を少しお伺いをしておきたいと思います。
まず最初に、臨海環境整備センター法の問題について伺っておきたいと思います。
昨年の六月でしたか、この臨海環境整備センター法が成立をしまして、いま一体どういうことになっておるのかということをまず伺っておきたいと思います。
○政府委員(清水汪君) この法律、ことしの一月八日に広域処理対象区域としてまず大阪湾圏域のうち滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県及び和歌山県の各府県が厚生省の告示によりまして指定をされました。それからまた広域処理場整備対象港湾として大阪港、堺泉北港、神戸港及び尼崎・西宮・芦屋港が指定をされました。東京圏につきましては、関係都県の調整をいま進めているところでございますので、調整がつき次第ここも形をなすものと思われます。
それから大阪湾の圏域の方に戻りますけれども、ことしの三月一日に同法の規定に基づきまして事業の実施主体でありますところの大阪湾広域臨海環境整備センターが成立をいたしまして、同センターによりまして調査の実施、基本計画の策定等に入りつつあるというところでございます。
○江田五月君 センターが成立したというのは法の言葉で言いますと何になるんですか。
○政府委員(清水汪君) 設立の認可を受けたということでございます。
○江田五月君 そうすると、いよいよ近畿圏についてはこれで具体的な活動、まず最初は調査と基本計画の策定という、そういう手続に入っていくわけでありますが、いや安心しました。これは運輸省とか厚生省とかのマターだから、聞いてもわからないというふうにお答えになられるかと思いまして、環境庁できちんとそうしたことを押さえていただいておるということを聞きまして安心をしたわけでありますが、この法案の審査の際に、鯨岡前環境庁長官、たとえばこれは運輸、地行、社労、そして当委員会の連合審査の際には、この大阪湾に限らず東京湾にしてもどこにしても原則としては環境庁は埋め立てはしてもらいたくない。しかしながら、いろいろな事情でどうしても埋め立てしなければならないという場合はありますから、そういう場合はいろいろな法律に基づいて詳細に計画を立てるときに被害が最小限にとどまるように私どもは考えていかなきゃならない。つまり基本的には埋め立てというのは環境に影響があることなんだと、しかしやむを得ないから
やむを得ないといってもやはり環境を守っていかなければいけないので真剣に対処するという、そういうお答えをいただいておったわけですが、環境庁長官、この東京湾の場合には千二百ヘクタール、四千五百億円かける、大阪湾の場合には八百ヘクタール、二千五百億円かける、こうやって湾に特別の島をつくって、そこをごみの最終処分場にしようというのでいろいろな手段をもちろん講ぜられると思います。しかしやはりそれだけのものを東京湾なり大阪湾の中につくるとこれはどうしても環境に対する影響がないとはとうてい言えない。やはりいろいろな影響が出てくると思うんですが、環境庁としてあるいは長官として、この広域臨海環境整備センターが今後行おうとする業務について一体どういう関心をお持ちなのか、環境保護という観点から。このことをひとつ伺っておきたいと思います。
○国務大臣(原文兵衛君) 江田委員御指摘のように、埋め立てをする、それも相当大規模な埋め立てをするということになると、当然これは環境に影響がくることはあたりまえのことでございます。ただ、私が廃棄物の処理の問題、これ日本は狭い国でございまして、何かもっといい方法がないのかなということを常々考えているわけでございますが、いろいろ技術的にもいい処理方法が開発されるとかなんとかいうことも望んでいるわけでございます。しかし、港湾の埋め立てによる処理ということは影響があるわけでございますけれども、そういうことについて鯨岡前長官が言ったことは私も全く同感でございますが、やむを得ず埋め立てに廃棄物を使わなくちゃならない場合でも環境に与える影響が最小限でなければならない。そういう点で、環境庁がこれチェックする機会が三段階あると思うんですね。まず基本計画を主務大臣が認可する場合に、これ第一段階として環境庁に協議をすることになっております。それから次に港湾法にいう港湾計画の中でフェニックス計画を定める場合に、このときにもまた環境庁はこれに関与をする。さらにまたフェニックス計画に基づいて海面を埋め立てすることについては、これは港湾管理者の長が行う公有水面埋立法による免許ということがございますが、その際にこれは運輸大臣になると思いますが、認可を行う場合にはいずれも環境庁に対して協議をするということで、その場合にも環境庁は関与することになる。そういう場合を通じて、二重にも三重にも環境に与える影響が最小限で済むようにチェックをしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
○江田五月君 三つの段階があると、それぞれの段階で環境に影響を与える程度が最小限に済むように厳重にということで安心をするわけでありますが、ひとつ本当に真剣にチェックをしていただきたいと思うんです。
いまのまず最初の基本計画策定のときに環境庁が協議を受けるということですね。この協議を受けた際に、環境庁はこの協議は一体どういう法的効果を持つと認識をされておるか。協議はまあ相談されるだけであって、もう相談はしたよということで環境庁の言うことは無視されるような性格のものだとお考えか。それとも、やはり協議がちゃんと調うということがそこから先の手続を進める上の前提になるんだ、環境庁はノーということも言い得るし、ノーと言うこともあるんだよというようなそういうお気持ちをお持ちなのか。その点を聞いておきたいと思います。
○政府委員(清水汪君) それは申すまでもなく後者の方の立場でわれわれは仕事していく考え方でおるわけでございます。
○江田五月君 本当に一つのごみの最終処分場をつくるという目的はあっても、その目的の達成のために起こってくるさまざまな副作用というものを最小限に抑える方法、ここにもあるあそこにもあると、こういう方法も講じたらいいじゃないか、あれもできるじゃないかと。そういうものがいろいろある場合には、これをやらなければ、環境を保護していくためのさまざまな手段を十二分に講じなければノーと言うこともあるんだという環境庁の環境保護に対する強い姿勢をもってこれに臨むと、そう伺ってよろしいですか。
○国務大臣(原文兵衛君) そのとおりでございます。
○江田五月君 さて次に、ごみの問題をちょっと伺いましたが、ごみ問題のもう一つの問題として、ごみの問題というのは本当にいろいろな分野にわたっておりまして範囲が広いわけですが、散在ごみ、散在空き缶ですね。日本じゅうに空き缶が非常に多くの数散らばって、富士山の山頂から各地の海水浴場に至るまで、白砂青松の自然環境のまことに美しいところでもちょっと見れば空き缶がごろごろと、新婚旅行に行けば空き缶ごろごろと、どこでも空き缶が転がっているというような状態にいま日本がなってしまっておる。こういう状態を何とかしなければいけないと思いますが、まず一体この現状というものをどう認識していらっしゃるか、環境庁長官に伺っておきたいと思います。
○国務大臣(原文兵衛君) 空き缶問題は非常に身近でしかも環境汚染がすぐ目につくところでもありますし、また資源問題からいっても非常に大事な問題であるということで、私も長官就任早々からこの問題に真剣に取り組んでいるわけでございます。現在、関係する十一省庁でもってこの問題についての連絡協議会を開いておりまして、どうやったら一番効果が上がるかということで検討しておりますが、なかなか関連するところが広うございまして簡単な問題ではないようでございますが、とにかく実効の上がる対策をどうしても立てていかなければならないということで真剣に取り組んでいる、また細部については局長からお答えさせますがこれを続けていきたいと、そして何とか実効ある対策を打ち立てたいということをいま念願し努力しているところでございます。
○江田五月君 私たちの住んでいる環境を守ってそして次の世代にいい環境を伝えていくという、これはもちろん行政の責任もあります。同時にやはり一人一人の国民の責任でもある。みんなの責任なんで、ごみ問題空き缶のぽい捨て問題一つとってみても、これから先一体国民がどういうような気持ちで自然環境の保護に取り組むか、一人一人の問題でもある。
そこで、これもどうも前の環境庁長官鯨岡さんの話ばかり出して恐縮なんですが、去年の六月三日の当委員会でこの問題、前環境庁長官は質問に対して、この国会のすぐ近くに永田町小学校という学校がありますが、そこの生徒さんたちの話を引き合いに出されて、「いまの永田町小学校みたいなああいう運動がそこらじゅうに起こっていますから、」これはごみを、空き缶をぽんと捨てないという運動ですが、「子供までそうやっているんですから、私は、何かの成果が上がることを期待します。しかし、もしそれてことしの夏」――去年の夏ですが、「夏が終わったときに、この夏の行楽期間にやはり去年と同じだったということになれば、メーカーの責任でないなどとのんきなことは言ってられませんから、そのときは思い切ったことを考えなきゃならぬと、こういうふうに決意をしておるわけでございます。」これはこのぽい捨てについてメーカーあるいはディーラーも責任を持ってひとつ対処をしていくというような、そういう施策を考えてはどうかということに対する前長官のお答えだったわけですが、去年このぽい捨てをやめさせるためにひとつ市民運動とも提携をしあるいは労働組合の皆さんとも提携をし一大国民的なキャンペーンをやるんだという、そしてその結果をひとつ見てくださいと、これでひとつやっていこうという、そういうお話だったんですが、どういうことをやられて結果は一体どういうことになったか、そろそろもう結果が出ていると思いますが、これをお答えください。
○国務大臣(原文兵衛君) 去年のキャンペーン、これ、その結果はやや散乱場所が減ったとかいうあれは出ております。そういうことにつきまして後ほど政府委員からお答えさせますが、私はやはり国民全体がこういう問題について関心を持つと同時に、この自然保護ということにつきまして、子供のときからこれをひとつ教育の場でもって十分に取り上げていっていただきたいということで、自然保護憲章というりっぱな憲章があるわけでございます。ところが、これがなかなか小学校教育などに取り上げられておりませんので、私先般も文部大臣にこれぜひひとつ子供のときから小学校の教育にも取り上げるようにしてもらいたいということで、いま文部省の方とも事務的にいろいろとどういう方法でやるかということを打ち合わせをさせているところでございます。
○政府委員(大山信君) 補足説明をさせていただきます。
一昨年の八月から昨年八月までこの一年間の間に、実は一昨年全国での散乱状況を調査いたしました。昨年、また一年後どうなったかということを調査いたしまして、その結果四三%の散乱個所で改善が見られたと、それから六%の場所が散乱しなくなったという答えが出ております。これは、私どもいろいろ政府あるいはその関係業界いろいろ含めまして一生懸命やった結果がこういうことでございますが、それなりの改善があったのではなかろうかというふうに私どもは考えているわけでございます。
それから、この具体的な政府におきますキャンペーンでございますが、これの内容を御説明申し上げますと、昨年の四月十三日に「空カン散乱防止等のための普及啓発活動の充実について」という十一省庁の間での申し合わせを行いまして、普及啓発活動を強化することにいたしました。この具体的な内容といたしましては、政府公報及び関係機関、団体等が発行している機関紙による広報、ポスター、パンフレット、ステッカーの印刷、配布及びマスコミを通じたいろいろな呼びかけの強化等がございます。たとえば政府におきましてやりました中でも、壁新聞の「空カンのポイ捨てはやめて」というようなのを四万枚刷って全国に配布しております。あるいはパンフレットで「空カン公害――とりもどそう美しい自然」といったようなものを二十万枚学校等に配布しております。あるいは大型の立て看板をたとえば東京で言いますと八重洲口のところに立てたわけでございます。こういったのを九都市等に設置したというようなことがございます。それから統一美化マーク、丸いのに、ぽい捨てでくずかごに捨てているのがありますが、そういうのに対する印刷及び自動販売機への貼付とか、富士山のクリーン作戦とか、いろいろなことをやりまして努力したわけでございます。
○江田五月君 いやまあ、本当に大変な御努力をなさってくださったのだと思いますが、さあそこで、そういう努力をこの普及啓発活動で一生懸命やって、恐らくもう精いっぱいやってくださったのだと思うのですが、その結果がいまの数字、改善の方はおっしゃいましたが、散乱に変化なしというのはこれ五〇%あるわけですね、ひどくなったのが七%と、さらにそのほかに散乱場所がこれは前の数のおよそ二〇%ぐらいの数ですか、新しく散乱場所ができてきたと、そうじゃない一〇%ぐらいですか、全国で六千八百十四ヵ所散乱地域があったのに対して新たに六百七十二ヵ所散乱地域が出てきたということですからね。
そういう普及啓発活動をお役所が先頭に立って一生懸命やる、それはもちろんいいですよ。それから道交法などを使ってひどいものを検挙していくというようなこともそれも一つの方法です。しかしそれだけではこれはとてもやまないんじゃないですか。鯨岡前長官が去年おっしゃっておった、一年一生懸命やってみるとやはり去年と同じだということになればメーカーの責任ではないなどとのんきなことは言っていられないから思い切ったことを考えなきゃならぬと、そういうときにもう来ているんじゃないか。思い切ったことが何であるか、これはデポジットがいいのか、あるいはそのほかのいろいろな方法がありましょう。これはみんなでいろいろ知恵をしぼらなければならぬと思います。回収方法について回収産業といったものをどうやって育てていくのかということもありましょう。
それはさまざまなことがあると思いますが、もう捨てる人が悪いので、三Pの原則だというので消費者にだけ、消費者のモラルのアップだけに頼っておるということではそろそろいけないんじゃないか。もっと人間ね、消費者のモラルといっても、たとえばだれが考えてみても自分が夏の暑いときに缶ジュースを百円玉入れてさあやっと飲んでほっとのどを潤して一息ついて、その缶を一体どうしましょうと、その辺に置く場所も何もなかったら、悪いけれどもその辺の道のへりの方にちょっと置いてしまうんじゃないでしょうか。ですから、たとえばたばこだってこれは健康に悪いというのを幾ら言ってもやはり吸うわけでして、モラルだけじゃだめなんで、やはり知恵をしぼってこれからの自然環境を整えていくためにいろいろなシステムをつくっていかなければいけないんじゃないか、そう思うんですけれども。
そして、いまの質問に対するお答えと、ついでに五十六年一月に十一省庁で空き缶問題連絡協議会をおつくりになりましたね。この中で環境庁は一体どう行動されていくおつもりか。それと、京都市できのうから条例で一つの制度が始まったですね。これについて一体環境庁どういう御関心をお持ちなのか。このことをあわせ伺って質問を終わりたいと思います。
○政府委員(大山信君) ただいまの先生の御意見まことに私どもも非常にこの協議会の運営に当たりまして念頭に置いているところでございます。ただ、一つの散乱の改善の問題につきましては、私ども前大臣のお言葉ございましたけれども、空き缶問題に関心が持たれ、それに対して政府並びにボランティアあるいはその地方自治体の努力というのが行われるようになりましてからわりとまだ日が浅い状況でございました、したがいましてその間の一年間の改善というのは少ないんじゃないかということでございますが、これにつきましてはその後ずいぶん自治体の動きとかいろいろな各地の動きが活発になってまいりました。したがいまして、私どもといたしましてはこういった改善の効果というのはまたさらに上がってくるのではなかろうかというふうに期待している次第でございます。
それから、いまの協議会の運営状況等につきましては先ほど福島先生の御質問の際にもちょっと申し上げたのでございますが、いろいろ関係者も多い、散らかる態様も違っている。それに対して一発で効き目のあるようないい施策というのはなかなかむずかしい状態でございまして、私どもいろいろそういった問題を念頭に置きながら鋭意検討を進めているところでございます。できるだけ早くひとついい考えをまとめるように持っていきたいという気持ちでやっている次第でございます。
それから京都府の動き、京都市の条例等の問題につきましては、まあわれわれ各地方自治体におかれましてそれぞれの地域ごとの散乱状況等を踏まえていろいろなアイデアを出しながら御苦労しておられるということにつきましては大変敬意を払うものでございまして、できるだけこういった問題については、いま国が直接関与しているわけではございませんけれども、温かく環境庁としては見守ってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
○国務大臣(原文兵衛君) まあ、メーカー、ディーラー等の問題も出ましたが、そういう問題も含めましていま十一省庁の連絡協議会でもいろいろと検討しているわけでございまして、先ほども申し上げましたようにこの問題非常に大きな問題でございますので、何とか実効の上がる対策を確立したいと思って今後も努力したいと思っております。
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