1982/04/27 |
96 参議院・建設委員会
土石流災害について
○江田五月君 治山治水の仕事というものも、戦後三十六年たってずいぶん変わってきたような気がいたします。
私などはまだ小学生の低学年のころに、アメリカの方の女性の名前のついた台風が次から次へとやってきて大変な風水害を起こしておったのをかすかに覚えておるようなことで、その後、そういう河川が大規模にはんらんをして町が一面水につかってというようなものも全くなくなったわけではありませんが、そういうことよりも、何か風水害という点で見ると、局地的な災害が数多く発生してくるようになってきた。最近はどうも土砂崩れ、鉄砲水、土石流というものが何か風水害の主流なように見受けられますが、いつごろからこういう傾向の変化というものが起こってきて、あるいはその原因というものは一体どういうことなのか、お伺いいたします。
○政府委員(川本正知君) わが国におきましては、地形的な状況あるいは自然現象といった宿命的なファクターによりまして大変災害が多い国でございまして、毎年災害によりまして多くの人命や財産が失われておるということも事実でございます。ただ、戦後から三十年代の半ばごろまでは、たとえば三十四年におこりました伊勢湾台風災害、これは死者だけで五千名以上数えたわけでございまして、こういったきわめて大きな災害、あるいは大河川のはんらん等によりました大規模な、かつ広範囲な地域に被害をもたらす災害が相次ぎまして、毎年の平均でいきますと千人を超える死者、行方不明者を出しておったわけでございますが、三十年代の後半ごろからは、戦後次々に毎年のようにわが国を襲いました超大型の台風といったものが幸いにして上陸するケースが少なかったということ、あるいは三十五年から始まりました治山治水緊急措置法によります五カ年計画によりまして、まず大河川の整備が進められてきたということも確かにその一因であろうかと思います。四十七年の豪雨災害というのは際立っておりますけれども、そういったものを除きますと、平均的に申しまして毎年三百人程度の死者、行方不明者というふうに減ってはきております。
最近の風水害による被害、特に土砂害といったものの特徴といたしましては、いま申し上げたように大河川のはんらんというものの災害は少なくなっておりますものの、局地的な豪雨といったものによります山崩れ、土石流、あるいは中小河川のはんらんといったものが相対的に目立つようになってきたのではないかというふうに考えておるところでございます。また、いわゆる情報網の発達といいますか、そういった情報が得やすくなったということもあるかとは思いますし、また核家族化も一つの影響かと思いますが、いろいろな意味で家屋が、住家が相当の地域まで広がってきたというふうなことで、かえって災害が起きやすいということも一つの要因にあるように考えております。
○江田五月君 先ほどの栗林委員の御指摘の中にもありましたが、治山治水で手を施していくと開発がずっと奥まで進んでくる、そのためにかえってまた手を抜けなくなってしまうというようなこともあるいはあるのかと思います。
たとえば私は、いまここで例として、昨年の七考えてみたいんですが、十三日午後、わずか五、六時間の間に二百ミリを超える集中豪雨に見舞われて、全体でこれはたしか死者が四名になりますか、災害が起こったわけです。この災害の全体的な姿というものは後で明らかにしていただきたいと思いますが、いまのお話の核家族化が進んで住居が広がってきたという点について一つだけまず具体的にお尋ねをしますと、この災害のときに、真庭郡湯原町という町で教員住宅が土石流に襲われました。そこで、これは二十四歳の女性の小学校の先生、村の誇りとしておった女の若い先生だったようですが、この人が押し流されて死んだわけです。この人が住んでおったのは教員住宅、つまり公共の住宅です。その場所が、山のすぐ一番根元のところに建っておって、そして土石流の直撃を受けたというわけですが、そういう住宅の開発、特にこういう公共的な性格を持った建物までがそういうところに開発されておるという点をどうお感じになりますか、この点はお調べになっていらっしゃいますか。
○政府委員(川本正知君) 先生いま御指摘の、具体的な女子教員の方々の場所等について詳しくは私も存じておりませんけれども、最近の傾向といたしまして、先ほど申し上げたように、非常に岡山県の真庭郡の災害のケースにおきましてもきわめて局地に集中的に大変な雨が降った。連続雨量が二百二十八ミリというような雨量でございました。そういった、きわめて集中的に、しかも局部的に豪雨が柱のようになって降ったと言ってもいいぐらいのことでございました。そういったことで、大変がけの崩れるということが、不測といいますか、全く思いもかけなかったような事態が出てきたということもあろうかと思いますけれども、家屋の建築等につきましては、それぞれその地元の公共団体等も、危険区域については危険区域の指定をするとかいうことも含めまして、そういった災害が起こることがないようにいろいろと配慮されておるところが多いわけでございますが、何といたしましても、全国、特に山間部は広うございまして、そういった中でいまおっしゃったような事故が起きたということはきわめて残念なことだと思っております。
そういった実態から考えましても、土砂害対策、またがけ崩れ対策といったものが非常にたくさんの個所が挙がっておりますけれども、そういったものを重要なものから適時対策を講じていかなきゃいかぬ。きわめて整備水準としてもまだ低いという段階でございますのでさらに努力していかなければならない、そういうふうに感じたところでございます。
○江田五月君 いま私は、全国のどこに集中豪雨がある日突然襲ってくるか恐らくわからない。襲ってきたときに、本当にバケツをひっくり返したような雨が降ります。別にこの岡山県の真庭郡の例だけではなくて、どこでも、普通ならばこんなところが、渓流が、――渓流とも言えないんですね、水なんか流れていないようなちょっとしたくぼみが、突然たけり狂う土石流になるとは思いもかけない、そういうところは全国至るところにある。そういった山合いのすそのところに住宅が建っているというような状況があるんだと思うんです。この住宅が山のすぐ根に建っているような状況について、一体何か対策はないんだろうかという、もう一番具体的な対策の話を質問したんですが、お答えの方はその前の抽象的なお答えになったようですが、もう一遍ちょっとその具体的なことについて伺ってみたいと思います。
○政府委員(川本正知君) そういった具体的な家屋の背後の急傾斜地のがけ、そういったものに対する安全対策ということは、私どもとしても現在がけ崩れの対策として考えて事業も実施しているところでございますが、ただ、ある程度の戸数、ある程度の規模といったものがありませんと現在はまだ採択できないということでございまして、それにいたしましても大変な数の対象個所があるわけでございますので、なかなか一戸の家だけに対して手当てをするというふうなことは、がけ崩れの急傾斜地の対策事業として取り上げるというふうなことにはいま直ちにはできておらないわけでございます。そういったもの、さらに基準に合っております、現在やっております事業を進捗させまして、だんだんと対応を広げていかなければいけないというふうに思っておるところでございます。
○江田五月君 ごめんなさいね。どうも私がきのう申し上げた順序で聞いていないもんですから困るんだろうと思いますが、そういういまの女子教員の住宅などの場合は、特に公共の建物なんですから、そういった山のすぐ際に建てなきゃいいんじゃないかと思うんです。至るところ危険な場所はあるわけで、しかも、普通なら危険と思えないような場所でも土石流は起こるわけです。それを一体どういうふうにとめていくかというのはもとより大切なことなんですが、そういった土石流をとめるということだけではなくて、今後、そういう山のすぐ際に家を建てるようなことをなるべくやめていく。すぐに移転させると言ってもこれはなかなか困難でしょうけれども、少なくても公共の建物などは、川のすぐへりへ持ってくるのも大変でしょうが、そんなにいま、田もつぶしていいわけじゃありませんが、それでも少しは耕作するのをやめなさいというような時世ですから、もう少し経済性よりも安全性を考えて立地を指導していくようなことを考えてはどうでしょうかということを伺いたいんですが。
○政府委員(川本正知君) 土石流に対する人命被害ということが各地で発生しております現状にもかんがみまして、従来いろいろな対策工事をやっている、そういったもののほかに、土石流の危険渓流の周知ということ、あるいは警戒避難体制の整備といったことも、いわゆるソフトな面での総合的な土石流対策ということをわれわれは考えておりまして、すでにある県におきましては、そういった危険渓流の表示ということをテスト的にやっているケースもございます。従来から学識経験者等集まっていただきまして技術検討会を設置いたしまして、そういった避難体制の整備、情報の収集、防災意識の高揚、そういったあらゆる面を含めましての諸施策の促進について協議をしております。五十七年度から順次こういった危険渓流の表示といったものを含めまして、警戒避難体制の充実といったことを実施してまいりたいというふうに思っておるところでございます。
また、土石流の影響を受けますおそれのある地域の住宅の移転につきましては、先ほども申し上げましたけれども、建築基準法によります災害危険区域の指定といったもので住宅の建築を禁止するとか、あるいはがけ地近接危険住宅移転事業というふうな事業もございます。そういったもろもろの事業によります住宅移転の促進とか、そういったもので関係機関の部局とも十分連絡調整をして、地方公共団体を指導しているというところでございます。
○江田五月君 少なくても教員の住宅などというような公共の建物については、やはりこれはどこに建てるかというのは、私は具体的な場合にこれが県であるのか町であるのか調べておりませんけれども、そういうところも責任なしとは言えないと思うんです。これはよく考えていただかないと今後困ると思うんです。
さて、もう少し一般論に戻りまして、いまも先に答弁の方がずいぶんあったもんですから、質問前に答弁があってどうも戸惑っているんですけれども、全国で土石流が発生する危険のある渓流というのが一体どのくらいの個所いまあると把握されておるのか、これをお知らせください。
○政府委員(川本正知君) 土石流の発生の危険がある渓流というものは、昭和五十二年に総点検いたしまして、五戸以上の人家あるいはこれと同等の施設に被害を与えるおそれのある渓流を選び出しまして、結果といたしまして全国で約六万二千三百渓流ということになっております。
○江田五月君 それは五十二年の調査ですね。そうしますと、いまの六万二千三百渓流と調査をされていた部分に、この岡山県真庭郡の土石流の被害の住宅のあった場所は含まれておりましたか、それとも含まれていないですか。
○政府委員(川本正知君) 具体の事実でございますので、説明員から御説明をさせていただきます。
○説明員(釣谷義範君) お答えいたします。
ただいま先生のおっしゃいました岡山県真庭郡の災害の際でございますが、土石流の災害のあった渓流は五渓流ございましたが、保全対象五戸以下のものは先ほどの六万二千カ所の中にはカウントしないことにしておりましたので、それは入っておりません。
それから、災害前は、先ほど先生おっしゃいましたように渓流の形をしていなかったという個所がございまして、その一カ所は入っておりません。あと二カ所の渓流につきましては、土石流危険渓流に指定されております。
それから、先ほど先生がおっしゃいましたがけ下の人家等につきましては、これは急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律という法律がございまして、急傾斜地崩壊危険区域に指定されておる場合は、そこへは新しく人家が入ってくるのを制限いたすことにしております。
○江田五月君 急傾斜地のすぐ下ならば非常にいろんな制約も受けますが、とるべき方法もはっきりする。しかし、そうでないところでどんどん土砂崩れが、どんどんと言うとおかしいんですが、予想もしないところで起きてくるわけで、急傾斜地の対応だけではちょっと足りない、何か考えなきゃならぬときに来ているんじゃないかと思うんです。いまのカウントされないところでも実際にいろいろな被害が起こっているというぐあいでして、これから、かつての治山治水のあり方よりももっともっと中小河川、特に小さな河川あるいは河川と言えないようなところに至るまで災害を予防する形での治水、あるいはまたこれはちょっと観点は違うかもしれませんが、やはり予防的な治山というものが今後必要になってくる、そういうきめの細かさがこれからの治山治水事業に必要になってくるんじゃないかと思いますが、建設省が現在まで、そういった全国に数多く存在しておる、しかもカウントで漏れて、しかもそこで人命の被害が出てくるというような土石流危険渓流に対してどういう対策をとってきたか、あるいは今後第六次の五カ年計画でどういう対策をとろうとされているのか、これを明らかにしてください。
○政府委員(川本正知君) 建設省におきましては、従来から土石流災害を防止するための土石流対策の砂防工事というものを積極的に推進してきておるところでございまして、その整備率が昭和五十六年度末におきましてやっと一四%というような水準でございました。また現在、一方では、先ほど来先生おっしゃっておりますように、毎年土石流による人命被害が発生しているという現実もございまして、建設省におきましては、従来の土石流対策砂防工事をさらに促進していかなければいけない。第六次の五カ年計画におきましても、土石流対策というものを一つの重点事項に掲げまして促進を図ってまいりたいということを考えております。
また、そういう砂防工事の促進に加えまして、先ほどちょっとお話を申し上げたわけでございますが、ソフトな面の対応といいますか、いわゆる土石流の危険渓流の周知徹底をいたしまして、やはり危険なときにはまず退避する、避難するということも一つの方途であろう、大事な安全対策であろうというふうに考えておりまして、警戒避難体制の整備というものも含めまして、総合的な土石流対策といったものを実施するように考えておるところでございます。
いろいろといままで検討を重ねてまいりましたけれども、五十七年度からはだんだんと実施ができるという態勢になってまいりましたので、そういった促進を図ってまいりたいと思っておるところでございます。
○江田五月君 土石流対策はやはり大切なのが砂防工事ですね。どういう規模の砂防工事を今後重点を置いていかれるかという点はいかがですか。
○政府委員(川本正知君) 砂防工事も河川工事と同様でございますけれども、いわゆる大河川に対する砂防工事というものと中小河川に対する砂防工事というものがあろうかと思います。大河川の砂防工事というものは、やはり基本的に一たび災害が起こりましたときの流域に対する影響というものも大きいわけでございますので、そういったものをまず重点的に促進を図っていかなければならないというふうな構想で来たわけでございますけれども、もちろんそれにあわせましてといいますか、対応いたしまして、中小渓流の安全対策といったものも促進しなければいけない。ある程度のバランスのとれた対策、それをもって全国的にバランスのとれた安全度の向上といったことが必要であろうかと思います。そういったことで、中小砂防渓流に対しましても先ほど申し上げたように、現在での整備率一四%を五カ年の終期の六十一年度末では一九%程度にまで上げたいというふうなことで、現在作業に取り組んでおるところでございます。
ちなみに、大河川の方の対策ということで申し上げますと、現在の四八%の整備率を五四%まで上げたいというふうに考えておるところでございまして、中小渓流の対策というものがまだまだ大河川に対しておくれていることも事実でございますので、中小もあわせて対応を図ってまいりたい、五カ年計画におきましていま申し上げたような整備水準をぜひとも達成するように努力してまいりたいと思っておるところでございます。
○江田五月君 中小河川の対策というものが大切だという話、これから力を入れていかれるのだというお話を伺って心強いんですが、中小河川の対策を考えます場合に、治水の面からの対応とそれから治山の面からの対応がばらばらであってはならぬのじゃないか。治山の面から土どめ工ですか、堰堤ですか、そういうものをつくっていく、これが比較的小規模、まあ数百万円規模の砂防ダム的なものをつくっていく、治水の面はもう少し大きなものをつくっていく、それが相互に機能的にうまく関連しておらないと一つの渓流をうまく治めていくということはできないわけです。この治山の事業と治水の事業との連係プレーというのはどうお考えですか。
○政府委員(川本正知君) いまおっしゃいましたように、ある一つの地域を考えましたときに、一つの渓流は治水の砂防事業でやっておる、また、別の渓流は治山事業としてやっておるというケースも確かにあるわけでございますが、そういった事業の調整といいますか、そういったことにつきましては本省段階、中央段階ということと、それから各府県別での地方段階、こういったものにそれぞれ建設省と農水省の林野庁の方との協議機関をつくっておりまして、そこで毎年の事業の実施の内容につきまして協議をいたしまして調整を図っておるというところでございまして、いまおっしゃいますように、全体がバランスを持った砂防対策といったものが必要であるということは当然でございまして、極力そういった協議会の場をさらに活用いたしましてその調整を十分徹底してまいりたい、事実やっておるところでございますが、さらに努力をしてまいりたいと思っております。
○江田五月君 この連係プレーというのはぜひしっかりやってもらいたいと思うんです。さらに言えば、道路を守っていくという観点からもいまの山を、どう土砂崩れを防いでいくかという点が出てくるわけでして、そういうものがそれぞれに縄張りでやられたのでは困るわけで、いかにすればその地域が上手に治山治水ができていくかということで連係プレーを果たしていただきたいと思うんです。
ちょっと話は違いますが、砂防ダムが少しずつそれまでの雨によって埋まってしまって、砂防ダムの機能をなかなか果たしにくくなっているというようなことも聞くんです。先ほどの真庭郡のケースでも、道路の上の方に治山目的の砂防堰堤があって、これが崩れて一拳に大量の土石流が押し流されてきて、そして消防団員の人が亡くなったとか、もう一つは、この場所じゃありませんが、この直後の八月には今度は別のところで、道路を走っておった新聞社の方が道路の上の方から落ちてきた土石流で流されて川に落ちて亡くなったとか、いまの二番目のケースは砂防ダムの崩壊ではありませんが、最初のケースは砂防ダムが崩壊をした。そこでダム自体の機能回復といいますか、これもこれからやっていかなきゃならぬ対策の一つになろうかと思いますけれども、これをいかがお考えでしょうか。
○政府委員(川本正知君) 砂防ダムの機能は、先生おっしゃいますように、山腹や河床を安定させて土砂の流出を防止するという機能も確かにございますが、さらには上流からどんどん流れてまいります土砂を貯留する貯砂機能のほかに、満砂した後でも、大洪水に伴いまして出てまいりました土砂を一時的に砂防ダムにためまして、その後の中小洪水といいますか、大洪水の過ぎた後のその後に起こります中小洪水などによりましてこれを徐々に長期間かけて下流に流下させるといった調節機能もございます。これらの機能がいずれもその効果に大小がありますけれども、長期間持続するということでございまして、土砂がたまってしまったダムにおきましても砂防の効果はそれなりにあるのだということでございます。しかし、土石流発生の危険が特に大きいような市街地の直上流部の渓流であるとか、あるいは土石流が頻発いたします活火山地域の渓流、こういったものにおきましては砂防ダムを新設いたしますとともに、満砂した砂防ダムの土砂掘削を行うということも現在実施しておりまして、砂防ダムの貯砂機能のそういった意味での回復ということも必要であるという地域もございまして、防災のための一層の効果をこういうことによって図ってまいりたいと思って実施しておるところでございます。
○江田五月君 大臣、いまのやりとりをどういうふうにお聞きになっていらっしゃったか。災害というのは思わぬときに起こるわけですから、いつも結果論であのときこうしておけばよかったというようなことがどんどん出てくるのかもしれませんが、しかしいまのようなお答えですと、遠くの方で文章づらだけで何か言われているように、恐らく災害の実際の地元の人たちはお感じになるんじゃないかという気がするんです。もっときめの細かい、後からだから言えるのだということはたくさんありますけれども、それにしてももっときめの細かな治山治水の対策というものがこれからますますだんだん必要になってくるんじゃないかという気がするんです。ちょっと抽象的な質問で恐縮なんですが、治山治水事業についてのきめの細かさ、配慮の細やかさということについてどういう御覚悟でいらっしゃるのかを大臣からひとつ聞いておきたいと思います。
○国務大臣(始関伊平君) 先ほど来江田委員と政府委員側の質疑応答によって明らかになりましたように、悲惨な土石流災害から国民の生命、財産を守るためには、大渓流対策とあわせまして中小渓流に対する施設整備が必要でございまして、従来から促進を図ってきたところでございますが、今後ともきめ細かな、かつ予防的な砂防工事を積極的に進めてまいりたい。
その内容は、新しい五カ年計画にも盛り込みたい意向でございますが、いま御指摘にもございましたように、非常に方々にございまして、しかもそれがちょっと目が届きかねるような場所にも起こるわけでございますので、都道府県、市町村等をも協力の相手といたしまして、それらの力をも活用いたしまして、建設省また林野庁と力を合わせまして、そういう点について本当に血の通った、何か聞いておっていかにも怪しげだということのないように今後一層努力してまいりたい、かように存じておるわけでございます。御理解をいただきたいと思います。
○江田五月君 ひとつよろしくお願いいたします。
さて、ちょっとこう観点が変わりますが、砂防工事、河川工事というものが速やかに実施をされて、そして再度災害が起こらないようにしていくことが非常に重要と思いますが、そういった観点から、工事の発注時期を一体どういうふうにしていくのかという点も重要なことになると思うんです。
いまの、私何度も申し上げて恐縮ですが、岡山県の北部の方の山間部はやはり冬は雪が相当に降ります。雪に閉ざされる場所でありますが、しかし、どうもこのあたりの中小零細の土建業の皆さんに聞くと、非常に雪の多いときに発注をされて工事がやりにくくてかなわぬ、何とかこれは考えてもらえないのかという話があります。伺いますと、しかし、出水期にやることはかえって二次災害をもたらす危険があるんで無理だ、さあそうすると出水期でなくて、しかも雪の降らない間に工事をしようということになると、これは発注の量が非常に少なくなってしまう、そのことはもちろん業者の望むところではないわけで、こういう中小零細の土建業の皆さんも雪の中で仕事をするのをいとうわけではないんです、一生懸命やるんです。しかし、たとえばことしの冬なんかを見ても、作業量の三〇%、四〇%ぐらいが除雪作業に追われてしまうと言うんです。それじゃ一体その除雪費はどうなっているかということなんですが、北陸とか東北とか、雪の地方ならばそういうことも十分お考えくださっているんだろうと思いますけれども、残念ながら中国地方の山地などについてはなかなかそこまでお考えいただいていないということなんです。
これも建設省に伺ったら、いやそうではありません、五年程度期間をとって、その間の平均積雪量をとって除雪費はちゃんと計上しております、さあきちんと計上しておるというような話を聞いて、地元に電話をかけてみますと、そんなことはない、一体どういう費目でそれが入っているのか、諸経費で入っていると言われても、それじゃちょっといかにも少ないじゃないか、とてもとてもと。県庁の方に聞いてみますと、いや、それは雪のあるときに工事をするように計画しておりませんので除雪費は入れておりません。建設省と県庁との間の意見の違いの谷間で零細な土建業者が一生懸命雪をかきかき仕事をしながら、その除雪費は全然もらえていないという。ほかのところでもうけさしてやるからいいじゃないか、それじゃちょっとこれはおかしな話なんで、もう少し雪の中で工事をするというような場合に、この費用の面で暖かい手当でというものができないものかどうか、陳情めいて恐縮ですが、どういうことになりますか、お答えいただきたいと思います。
○政府委員(川本正知君) 先生からいまお話がございましたように、冬期間に、積雪期にどうしても工事をやらなければいけないというような地域もあろうかと思いまして、そういった場合には、やむを得ず工事をしなきゃいかぬというケースには、現場におきましても、現地の除雪費はその地域の積雪の状況を勘案しまして工事費の中に入れてもいいということにはなっておるわけでございます。山地部の特に積雪の多い地域におきます砂防工事におきましては、全国的にもそういう指導はしておるところでございます。特にそういった積算に見るかどうかということと同時に、発注の時期というものもやはり考えていかなければいけないのではないかというふうに思います。
砂防工事は、特に工事をやっておる最中に集中豪雨等によって土石流が押し出してきたりいたしますと、非常に人命災害も起こしやすい、安全の問題もあるということもございますので、出水時期を避けるというのが普通やっているケースではございますけれども、それは降雪の少ない時期に、少ない地域においてはそういうことでいいと思いますけれども、先生おっしゃるような降雪のあるような地域におきましては、できるだけ施工のやりやすい時期に工事を発注するということがやはり基本的な問題になるのではなかろうかと思います。本年度は特に大幅な前倒し発注をするということで現在進めておりますので、特にそういった意味での早期発注ということを心がけて、御心配のようなことができるだけないようにしてまいりたいと思っております。
○江田五月君 終わります。
1982/04/27 |