1982/05/11 |
96 参議院・建設委員会
土地区画整理法の一部を改正する法律案について
○江田五月君 最初に、大臣に総括的なお答えを聞いておきます。
都市問題というのがいろいろ騒がれ始めて、もうかなりの期間がたってまいりました。高度成長の中で都市に人口がどんどん集中をしてくる、都市がスプロール化して、あるいはまた土地が非常に少なくなってくる、土地の値段がどんどん上がってくる、住環境が非常に悪くなる。そのほかにも都市問題、たとえば青少年の非行化の問題であるとかさまざまな問題、公共施設の問題であるとか、いろいろな問題が都市に集中的にあらわれてきているという中で、一体どういう都市政策をつくっていくのかというのが昨今のかなり重要な国の施策の中心になってきていると思うんですが、こうした都市政策というものの中で土地区画整理事業が占める役割りといいますか、どういう役割りを期待しているのか、どういう位置づけを土地区画整理事業というものに、都市政策という観点から見てお与えなのかという点について、まず最初に聞いておきたいと思います。
○国務大臣(始関伊平君) これはひとり建設省の行政を進める上からだけではございませんが、土地問題というものが現在の日本の抱えております最も根本的なかつ困難な問題でございますが、この点につきましては申し上げるまでもございませんけれども、平たん地が少ない、単位面積当たりの人口あるいは生産活動、GNPの中で統計を見ますと、アメリカあたりに比べて日本は二十何倍、西ドイツに比べても二倍半だというようなことでございます上に、自由経済社会でございまして、土地は私有に属するものが大部分、しかもこれは公共的使命を本来当然持たなきゃいかぬものですから、その間の調整が非常にむずかしいと思っております。
私有でございますから、先ほどから政府委員が答えておりますように、極力調整とか統制とかということを避けまして、誘導政策ということでやってまいっておるわけでございますけれども、しかし、区画整理の問題にいたしましても線引きの問題にいたしましても、これは私権に対する一つの制約でございまして、今後の都市政策の要点はそういった私権の制限、制約をどういう形でどの程度まで取り入れていくかというところに重点があるんじゃないかという気がいたしております。
それで、土地区画整理事業でございますが、すでに政府委員から大木さんの質問に対してもお答えしておりますけれども、宅地供給の最も有効な手段でございまして、五十五年度末までに全国で約二十八万一千ヘクタールに着工しておりまして、これは既成市街地面積の約三分の一に当たるということでございます。また、最近では全宅地供給量の約四五%が土地区画整理によって供給されておるということでございますので、今後とも土地区画整理事業は、宅地の供給と市街地の整備を一緒にやってまいらなければなりませんが、一番大事な主導的な役割りを果たすものと期待をいたしておる次第でございます。しかしながら、一方におきまして、現下の宅地需給の逼迫の状況と市街地における都市基盤施設整備の立ちおくれの状況等に対処するために、本事業の一層の推進を図る必要があると考えておりますので、今般の土地区画整理法の改正を初めといたしまして、今後とも、諸制度の改善と充実によって実際に宅地が供給されるようになるということにつきまして全力を尽くしてやってまいりたい、かように存じております。
○江田五月君 宅地の供給と市街地の整備とその二つの役割りを担わせていくんだというお話ですが、この土地区画整理事業というのは都市計画の母だとかと言われているそうです。ところが、現実には大都市だけではなくて中小の都市に至るまで非常に乱開発が進んでしまって、見るも哀れというような都市の姿になっている部分もたくさんある、そういうところを一体どういうふうに整理をしていくのか、本当に住みよい都市環境にしていくのかという問題、防災などの問題も非常に深刻です。それと一方で、これから広がっていくところをどう誘導しながら秩序ある都市につくり上げていくのか、快適な都市につくり上げていくのかという問題があると思うんですが、前者の方は後から後追い的に手当てをしていく、後者の方はいわば先取り的に都市をつくっていくということになると思いますが、すでに市街化されてしまったところというのはなかなか土地区画整理事業などもやりにくいだろう、これから先取りをしながらまだ市街化されていない、あるいはちょっとしか市街化されていないようなところを土地区画整理事業で良好な市街地にしていくということは、むしろすでに市街化されてしまったところをやるよりははるかにやさしいんだろうというような気がいたしますが、一体どの程度市街化率と事業費とが関係していますか、どのくらい市街化率が進めば事業費が上がるということになっているか、そういう資料は一体どういうことになっているか、お示し願いたいと思います。
○政府委員(加瀬正蔵君) 事業を行う場合に、市街化率の二〇%の場合と八〇%の場合とを比較いたしますと、私どもの資料で一対五という数字があるようでございます。
○江田五月君 一対五ですか。いただいております資料では、市街化率〇から二〇%の場合を一〇〇とすると、二〇から四〇が一二八、四〇から六〇が一六二、六〇から八〇が二五四、八〇から一〇〇が四六〇、二〇と一〇〇で一対五ですか、そうですね。そうしますと、後追い的にとにかくこれからむちゃくちゃになったところを整備する、これももちろん大切ですけれども、それにも増して、やはりこれからどういう市街地をつくっていくかということを見通しながら、まだ市街化されていないところに良好な宅地の供給の確保を図っていくために、区画整理をどんどん行っていくということも非常に大切だと思いますが、今後の見通しは一体どういうふうにお考えなんでしょうか。
○政府委員(加瀬正蔵君) 昭和七十五年の市街地面積は、私どもの推計では百七十万ヘクタールと見込んでおるわけでございます。五十三年から七十五年までの間に新たに面的整備を必要とするものが約七十二万ヘクタールございます。このうち土地区画整理事業によりまして面的整備を図るべきものとしては約四十一万四千ヘクタールというふうに見込んでおるわけでございます。
○江田五月君 昭和七十五年までに四十一万四千ヘクタールですか。そのうち一体どの程度がいまの市街化率の低いまだ市街化されていないところで、どういうものがもうすでに市街化されてしまったところというふうに見通されているのかという点はいかがですか。
○政府委員(加瀬正蔵君) いま申し上げた数字の中で、既成市街地の中で面的整備を必要とする部分が十七万ヘクタールございまして、そのうち六万二千ヘクタールを区画整理でやりたいと考えておるわけです。それから既成市街地でない新市街地部分につきましては、要面的整備が五十五万ヘクタール、うち区画整理三十五万二千ヘクタールを見込んでおるわけでございます。
○江田五月君 既成市街地中面的整備の必要なものが十七万ヘクタール。これはたとえば地方中小都市などでも、戦災で焼け残ったところで、道路も狭く消防車も入らないというようなところとか、あるいは戦後たとえば大阪周辺、いわゆるあれは文化住宅というんですか、が建っているようなところで、もう狭いところにぎっちりと家が建て込んでしまって、そこに人が鼻を突き合わすようなかっこうで生活をしているような、そういうところまで全部きちっと十七万ヘクタールの中にカウントされておるんでしょうか、そこまでは入っていないんでしょうか。
○政府委員(加瀬正蔵君) 一応は入っていると考えております。そういったところにつきましては、区画整理事業によらないで都市基盤施設の整備を面的に行っていくというようなことを考えておるわけでございます。
○江田五月君 伺いますと、まだまだ土地区画整理事業及びいまの都市再開発その他の面的整備を行わなければならぬ日本の国土というのは非常に広い、ひとつしっかりやっていただかなきゃいかぬと思います。
土地区画整理事業といいますと、どうもともすれば思い浮かべるイメージというのは、道路を真っすぐにして土地を全部正方形、長方形というようなものにして、網目状に土地を整備してしまうというそういうイメージを思い浮かべるんですが、しかしどうも都市といいますか住環境というのは、これから網目状のところでいいのかという問題が出てきているんじゃないかという気がします。網目状につくってきれいにでき上がった、何というんですか、蚕の棚に人間が住むような感じになってしまってもいけない。あるいは網目状だと道路を車がどんどん走って交通事情という点からも良好な住環境とはなかなか言いがたいようなところが出てくる。そうしますと、わが国では京都、奈良の時代から網目状が整備された都市の典型のように思われておりますけれども、住環境を考えたときには、網目状以外のイメージを考えていかなきゃならぬだろうという気がいたしますが、そういう点で今後の土地区画整理事業、いまのデザイン風に言いますとどんなイメージをお持ちになっていらっしゃるでしょうか、大臣に。
○国務大臣(始関伊平君) 私からお答え申し上げまして、その他不十分な点は政府委員から申し上げますが、ただいまお話しのように、土地区画整理事業をいたします場合に、住環境として整備するということと、そこに広範な範囲を考えた道路網その他を整備するという問題と二つの要素がございまして、この取捨選択は大変大事な問題だと思っております。
土地区画整理事業につきましては、幹線道路だけではなくて、その区画の中の区画街路、公園等の公共施設を系統的に整備いたしますとともに、土地の区画化、形質の変更をあわせ行いまして健全な市街地の造成を行うという事業でございます、申し上げるまでもございませんが。その場合に、幹線道路については、主に都市骨格の形成、近隣住区の構成といった観点から都市全体との関連である程度放射線状に、あるいは環状等の、いま江田さんのおっしゃいました盤目状のネットワークとして計画せざるを得ないそういう側面もあるということを一点としてお答え申し上げたいと思います。
しかし、なお補助幹線、区画街路につきましては、主にその住区の中だけの生活道路といった観点から通過交通が侵入しがたいように設計する、歩行者の歩行者天国でございまして、これは歩行者が快適に通行できるように十分配慮して計画をしておるのでございます。今後とも地域の特性に応じ、歩行者専用道路の整備の促進等の道路計画の工夫でありますとか、地区計画制度、それから都市計画に対しましてその地区だけの計画制度があるようでございますが、地区計画制度の活用等、いまおっしゃいました画一的なイメージではなくて個性のある魅力的な町づくりの推進に努めてまいりたい、かように存じております。
○江田五月君 抽象的なお答えしか仕方がないのかもしれませんが、ひとつ、いままでのイメージを大きく変えていかなきゃならぬ、そういう国民のニーズの変化が起こっているんだということを十分配慮いただきたいと思います。
ところで、今回の土地区画整理法の改正の一つは、技術検定制度の導入、もう一つが地方住宅供給公社を施行者に加えるという、その二点だと思います。
まず、技術検定制度の導入ということについて伺いますが、技術検定制度の趣旨はもう伺っているとおりだと思いますが、どういう内容の技術検定を予定されているのか。技術検定というんですから試験を行うわけでしょうか、どういうことを試験として行うことを予定されているんですか。
○政府委員(加瀬正蔵君) 土地区画整理事業の円滑な推進を図る上で事業担当職員に最も必要とされます能力は、土地区画整理事業の中核的な業務でございます換地計画を初め、調査、事業計画、資金計画、事業運営、補償理論、関係法規等の土地区画整理事業全般に係る総合的かつ高等な専門的応用能力でございます。技術検定におきましても、こういった能力の有無を判定するということを主眼としているわけでございます。このため、技術検定の内容といたしましては、学科試験と、それからこの学科試験に合格した方を対象といたします実地試験の二本立てといたしまして、学科試験におきましては土地区画整理事業に関する一連の専門的学識の有無の判定、それから実地試験におきましては、事業の円滑な推進を図る上で必要とされます高等な専門的応用能力の有無を判定することを考えておるわけでございます。
○江田五月君 たとえばその場合に、いま私が言いましたようなこれからの住環境を考えると、網目状だけじゃなくて、通過交通を妨げるような工夫であるとか、それからきめの細かな、いろいろなところにちょっと心の安らぎを得ることができるような工夫であるとか、そういう住環境についてのイメージについての能力までもちゃんと検定をするようなことをお考えになっているんですか。
○政府委員(加瀬正蔵君) いまおっしゃいましたようなことは、事業計画の立案の段階、それから実際の区画整理事業の設計の段階でその中身が具現化されるわけでございまして、最近の土地区画整理事業を行う上でいま先生おっしゃいましたような配慮というのは当然必要なことでございますし、実際にそういう事業計画のプランニングの能力とかあるいは設計の能力というものも試験の内容としてはあるわけでございますので、どの程度そういう能力がどういう試験で判定されるかというのは今後の検討事項でもございますが、御趣旨も踏まえまして、そういう能力というものも含めた制度の実現ということについての検討をしてみたいと思っております。
○江田五月君 これはどういう人が受験資格を持つんでしょうか。
○政府委員(加瀬正蔵君) 土地区画整理事業は、換地、減歩といった独特の手法によりまして地権者の財産を大きく変えるということでございまして、一般的な学識と換地業務を中心とした土地区画整理業務に関する高度な専門的知識と応用能力が必要でございます。このため、技術検定の受験資格につきましては学歴と、それからもう一つ土地区画整理事業に関する実務経験年数というものをあわせまして考慮して決めたいと考えておるわけでございます。
いま考えておりますのは、大学卒業者におきましては実務経験三年程度、短大卒業者にありましては五年程度、高校卒業者にありましては七年程度、その他の者にありましては実務経験十年程度というものを受験資格の目安として考えておるわけでございます。
○江田五月君 実務経験ゼロという者には受験資格を与えないというお考えですか。
○政府委員(加瀬正蔵君) さようでございます。
○江田五月君 先ほども大木委員が御懸念の点がありました。それぞれの地方で土地区画整理事業の担当職員として働いている者に対する、何というんですか、天下り先を、天下り先というとちょっと言い方がおかしいですが、そういう者に対する行く先を整えていく、税理士の場合にもそういうことがあったではないか、そういう心配がやはりそこで出てくるんじゃないかという気がするんです。実務経験を持っている者でなければ受けられない、あるいは実務経験によって技術検定の試験を多少免除をしてもらえるとか、一部を免除をしてもらえるとかというようなことまでお考えにもしなるとすれば、ますます職員の行き場を確保するということになってしまうおそれがあると思うんですが、その点はいかがお考えでしょうか。
○政府委員(加瀬正蔵君) いまも申しましたように、仕事の性質上やはり実務経験のおありの方を前提とした技術検定ということを考えておるわけでございますが、実務経験と申しますのは、何も公的な機関で仕事をやっておったというだけでなくて、たとえば、コンサルタントの中で区画整理に関する設計等の実務をやっておればそれも実務の経験の中にカウントされるわけでございます。そういった点はある程度広く私ども考えておるわけでございます。
○江田五月君 心配の点が現実のものになってしまわないように、ひとつ注意をしていただきたいと思います。
これは先ほども話が出ておりましたが、技術検定に受かった者はやはり土地区画整理士とかというような名前を使うということになっていくでしょうし、そのこと自体は排除ができないんだろうと思いますが、そうしますと、たとえば土地区画整理士会とか、その会長ができる、その土地区画整理士会でさまざまな会の内部での規制がいろいろできてくるとか、そういうことになっていくんでしょうか。
○政府委員(加瀬正蔵君) そういうことを期待しているのではなくて、純粋に事業の掘り起こし、あるいは業務の運営の円滑化ということを期待しているわけでございます。おっしゃるようなことがないように、十分戒めて運用を図りたいと思います。
○江田五月君 どのくらいな数の技術検定合格者を予定されておりますか。
○政府委員(加瀬正蔵君) 技術検定の合格者につきましては、事業施行中の地区及び事業準備中の地区について、各地区最低一名以上が必要であると考えているわけでございまして、今後の事業量の一層の拡大を図ることとあわせて考えますと、六十五年ぐらいまでに八千人程度の合格者が必要であるというふうに考えているわけでございます。
○江田五月君 技術検定合格者の責任といいますか、技術検定を合格した者がいまの区画整理の換地設計その他をずっとやっていくと、たとえばこういう人が、関係者からいろいろな報酬をもらって換地計画に手心を加えていくとかというようなことになると、これはちょっとゆゆしき問題も起こってくるんじゃないかという気がしますが、この技術検定合格者の責任というものはどうお考えなのか。これはあるいは法令によって公務を行う者と同じような責任を負わせるのかどうかというような点はどうですか。
○政府委員(加瀬正蔵君) 仮に技術検定に合格した者でございますが、これは公務員がそのまま技術検定に合格した場合もあるわけでございますが、そういった場合には当然刑法の適用があるわけでございます。それから、一般のたとえばコンサルタントの方あるいは土地区画整理組合の職員の方、こういった方々につきましては、たとえば刑法公務員というような形での責任規定は考えておりませんが、私どもは、こういった土地区画整理事業というのは、やはり組合の中で行う場合には組合の構成員の方々の合意のもとに換地計画が決められたり、あるいは事業計画が決められていくという形でございますので、おっしゃるような御懸念はなかろうと思いますし、あってはいけませんので、ないように運用していきたいと考えているわけでございます。
○江田五月君 責任を重くしていくと、排他的な、独占的な地位を与えていくということに結びつきやすい。排他的、独占的地位を与えないようにしようと思うと、あまりそう重い責任を負わすわけにはいかないという、何かちょっとむずかしいところだと思いますけれども、ひとつ間違いのない指導を行ってほしいと思います。
次に、地方住宅供給公社を施行者に加えると。この地方住宅供給公社は、施行者としての人的、技術的能力は十分あるという判断なんでしょうが、地方住宅供給公社でもいろいろなレベルのものがあると思いますが、その能力についてはもう心配ないんですか。
○政府委員(加瀬正蔵君) 地方住宅供給公社は、都道府県または政令で規定いたします人口五十万人以上の市におきまして設立されるものでございまして、現在は五十六の公社が存在するわけでございます。この五十六公社の役職員数は約四千八百名おりまして、従来から数多くの宅地開発事業あるいは個人施行、組合施行の土地区画整理事業を行ってきた実績がございます。これは個人施行あるいは組合の中に入ってやってきたという意味でございます。それから、昭和五十一年度から昭和五十五年度までの五年間に実際に三千百ヘクタールほどの宅地を供給しております。そういったわけでございまして、すでに新住宅市街地開発事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業等の施行者としても認められておりまして、土地区画整理事業の施行能力は十分にあると判断しております。
○江田五月君 一方で、施行者の中に行政庁施行というのがあります。どうも法の全体の立て方から言うと、行政庁施行というのは何か異質のものが入っているような気がいたしますが、一体どういうお考えで行政庁施行というのがこの中に入っているのか。何かちょっと紛れ込んじゃっているような感じがするんですが。そして、行政庁施行のものが一体どの程度あるか。唐突な質問かもしれませんが、どの程度行政庁施行の実績があるかという点とあわせてお答え願います。
○政府委員(加瀬正蔵君) 具体的な数字がございませんので、後ほど数字はお届けしたいと思いますが、行政庁施行というのは、国の利害に直接関係のあるようなものにつきまして、機関委任で行政庁が実施しているということでございまして、実例としては戦災復興の時期に行ってきたようなものの残りが少しあるわけでございます。最近では、たとえば横浜の本牧の米軍の住宅地でございますか、ああいったところの返還に基づくような区画整理事業といったものを行政庁施行で実施するようなことを考えておるわけでございます。
○江田五月君 国の利害に関係あるといっても、どうもぴんとこないんで、行政庁施行というのは、都道府県知事、市町村長、それと都道府県、市町村というのが同じ法律の中に施行者として二つあるというのは、法律の立て方としてはどうもよくわからないような気がします。何か沿革上そういうことになっているんじゃないかという気がするんですが、沿革上そうなっているものであるならば、ひとつ整理をされたらどうなのかなという気がするんです。
それと、地方住宅供給公社の宅地造成業務の実績というものは一体どのくらいあるのか、そしてこの地方住宅供給公社の宅地供給業務ということについて、地方住宅供給公社が土地区画整理事業の施行者になり得るということはどういうメリットがあるのか、これをお答えください。
○政府委員(吉田公二君) 地方住宅供給公社は、従来全面買収方式によりまして宅地の造成を行いまして、必要なたとえば分譲住宅あるいは宅地分譲といったことをやってきたわけでございますが、昭和四十年に地方住宅供給公社法が施行されて以来、約一万三千ヘクタールの宅地開発事業に着手しておりまして、現在までに約九千ヘクタール程度の供給を行っております。現在七千ヘクタール程度の事業の実施または計画をしている段階でございまして、各地域におきます宅地供給の実施、あるいは住宅供給といった実施機関として非常に大きな寄与をしているわけでございます。
そこで、供給公社に土地区画整理事業を行わせるということによってどういうメリットがあるかということでございますが、近年、従来公社が行ってきたような全面買収で相当程度の土地をまとめて取得するということが非常に困難になってきている面がございます。でございますから、相当程度まとまった土地でも、たとえば買収困難な土地が残るというような場合に、非常に造成に苦慮するというような面が多いわけでございまして、土地区画整理方式によって秩序ある市街地をつくりながら宅地供給をするということをいたしますと、健全な市街地の形成に役立つわけでございますが、公社の宅地供給のための事業としても、従来できなかった面についても可能性を広げるというようなメリットがございます。
さらに、土地区画整理事業に対します現在の補助制度でございますとか、管理者負担制度でございますとか、または金融公庫法の改正で、新たに土地区画整理事業に対します公庫融資を加えるというようなことをしたわけでございまして、こういったものが加わりますと、さらに実態的にも事業の円滑な運営が進められるというふうに思われるわけでございまして、私ども調査しているところにおきましては、各公社等の現在考えております地区等は、昭和六十年度ぐらいまでに全国でいま四十地区ぐらい、面積で千二百ヘクタールぐらいのものを実施したいということで、私どものところへ要望と申しますか、希望が出ているような状況でございます。
○江田五月君 土地区画整理事業には、土地区画整理法によるもののほかに、大都市法による特定土地区画整理事業というものがありますが、この特定土地区画整理事業というものはもう大都市圏にしか行われていないということなんですが、この施行状況が一体どういうことになっているか。
それと、土地区画整理事業の必要というのは大都市に限らないわけで、土地区画整理事業を地方の中核的都市周辺でも施行できるようなことをそろそろもう検討しなきゃならぬときに来ているんじゃないかというような声もありますが、その点はいかがかということを伺います。
○政府委員(加瀬正蔵君) 大都市法に基づきます特定土地区画整理事業は、昭和五十五年度末までに全国で六十六地区、面積で約四千二百ヘクタールにおいて実施されております。
それから、特定土地区画整理事業を地方の中核都市周辺まで範囲を広げて施行できるようにしたらどうかという御意見でございますが、特定土地区画整理事業につきましては、市街化区域のうち住宅地等として開発されるべき条件の熟度が著しく高く、早急に開発すべきであるにもかかわらず、諸般の事情によりまして開発が進んでいない土地の区域につきまして、土地の所有者等に住宅地としての開発の義務づけを行う、土地区画整理促進区域内において行われる事業でございます。このように、一方で地権者に対しまして住宅地としての開発の義務づけを前提とする制度でございまして、人口、産業の集中により深刻な住宅難が生じており、住宅宅地の大量供給を早急に図ることが必要な地域について認められている制度でございます。現在までのところ、三大都市圏以外の地域においてはそこまでの状況には至っていないというふうに考えているわけでございますが、今後も地方におけるこれらの必要性の有無について十分調査し、特定土地区画整理事業の施行についても検討してまいりたいと考えております。
○江田五月君 繰り返してお願いをしておきますが、土地区画整理事業は、先ほども伺ったとおり、市街化されればされるほど事業費が多くなるわけで、やはり先手先手ととにかく先を見通して、そして一つのビジョンを持って町づくりをやっていくという方向で、まだ市街化率がそれほど進んでいないところを大胆に、しかし心をよく配って行っていただきたいということ。
それからもう一つは、高度成長期の大変な勢いでとてもこうお役所の方の手に負えなかったのかもしれませんが、しかし無秩序に広がってしまって非常に危険がいっぱいという状況になっているところ、あるいは戦前からある、いまではもうとてもとても老朽化してなかなか人が住む、現代のたとえば交通の利便その他の利便を十分享受できる形で人が住むような状況ではなくなってしまっているような市街地、あるいは戦後、住宅難の中で急ごしらえでどんどん広がっていったような非常に質の悪い市街地というところも、土地区画整理事業だけではない、そのほかの手法もいろいろ必要だと思いますが、そういうものを組み合わせてこれから良好な住環境につくり上げ、つくり直していただかなければならぬわけで、そうした役割りは非常に大きい。建設大臣、ひとつ激励をしておきますので、がんばってやっていただきたいと思います。
○国務大臣(始関伊平君) ただいま大変適切な問題点を御指摘になりまして、私ども御激励を賜りました。御激励の趣旨に沿うように今後事務当局と一緒に十分努力いたしますので、御支援をいただきたいと思います。
○江田五月君 終わります。
1982/05/11 |