1982/05/12

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96 参議院・公害及び交通安全対策特別委員会

合成洗剤の問題について


○江田五月君 参考人の皆さん方お忙しいところ本当にありがとうございます。
 貴重な御意見あるいはおしかりをいただきまして、皆さん方が皆そろっていまの日本の湖沼の状況に対して警鐘を鳴らされている、国が湖沼法をなかなか熱意を示していかないことにいら立ちを覚えていらっしゃるということをお聞きをして、がんばらなきゃならぬと改めて思った次第ですが、湖沼の問題、富栄養化防止と窒素、燐という問題はいま大きく問題になっておるわけですが、三ツ松参考人お一人が合成界面活性剤のことについてお触れになっていらっしゃいましたので、三ツ松参考人にこの合成界面活性剤についてもう少し敷衍して説明していただきたいと思います。

○参考人(三ツ松要君) 先ほども申し上げましたが、私どもが生活しております手賀沼というのは非常に小さい沼で、すでに植物も死んでしまったということを先ほどお知らせしたわけですけれども、植物が何で死んだのだろうかということについて、たとえば環境庁にせよ千葉県にせよ、まだ本気で調査検討、結論を出されていないわけですね。

 私どもは日常その周辺で生活をしておりますから、こうじゃないかああじゃないかということをいろいろ推測するわけですけれども、特に沈水植物が死んだ原因についてはいろいろたとえば水が濁って植物が光合成ができなくなる、つまりもう呼吸困難になってしまうということが理由じゃないのだろうかというふうなことは言われるのですけれども、それじゃ水面に葉っぱを浮かべている浮葉植物が死んだ原因にならぬじゃないか、浮葉植物は光合成はいつでも太陽光線受けているわけですからできるわけで、そこで何らかの毒物が作用しているに違いないというふうに私どもは考えているわけです。

 それはいろいろな調査の結果、合成の界面活性剤ではないか、なぜならば合成の界面活性剤はたん白質を変性するといいますか、言ってみればぶち壊す毒性を持っているわけで、それがたとえ微量であれ、常時水の中に存在しているということは生き物に対して悪い影響を与えるのはもう当然だというふうに考えております。そういう意味で、合成界面活性剤のもっと系統的な水環境に対する影響というものをぜひとも環境庁としても、あるいは自治体としても検討をしていただきたいというふうに思っておるわけです。

○江田五月君 三ツ松参考人、手賀沼を守ろう=合成洗剤追放市民会議の代表ということですが、職業の方は何でいらっしゃいますか。

○参考人(三ツ松要君) 柏市民生協という生活協同組合の役員をいたしております。

○江田五月君 としますと、いまの合成界、面活性剤も、一市民の立場からああでもないこうでもないといろいろお考えになっているということで、これはどうなんでしょう。いまのような三ツ松参考人の認識というのは学者の立場から見るとそう言えるというのか、あるいは違うのか。どなたかそうした方面の研究をなさっている方、たとえば鈴木参考人、簡単で結構ですから。

○参考人(鈴木紀雄君) 合成洗剤の問題は、一般的に申しますと人体に及ぼす影響が一つ。それから二番目は、生物の生態系に及ぼす影響が二つ。それから三つ目が合成洗剤の中に含まれている燐が富栄養化を促進する。もちろん界面活性剤そのものが赤潮の発生につながるという調査報告もありますが、一応それは別といたしましても燐が富栄養化を促進する。そういう三つの問題があるというふうに思います。

 それで、ただいまの御質問は第二の問題でありますが、これは実は実験室の中で、たとえば一〇ppmというのは、これはちょうど家庭排水、洗濯した後家庭排水が出てまいります濃度とほぼ等しいわけでありますけれども、その濃度で魚が死ぬかどうか調べてみますと、一時間で合成洗剤は死んでしまいます。ただし石けんの方はその濃度では死なないわけです。そういう意味で、生物に対する影響がある。その他植物や動物についていろいろ実験室の中でやっております。ところが議論の問題は自然の環境の中でそういうことが果たして起こっているかどうか、この辺が大きな議論になっております。

 それはどうしてかと申しますと、たとえば魚の場合には川の水がある程度汚くなってまいりますと、先ほどお話がありましたようにたん白と結合してそれで毒性が低くなるので、魚に対しては影響ないのだというような反論がメーカー側から出ております。確かに実験やりますとそういう点はございます。しかしその前提は川が汚ければ害がないというようなことになるわけでして、もしも川がきれいになれば毒性があるということで、本来非常に矛盾したことだというふうに考えます。

 それで、実は私も自然環境に対して実際どういう影響を与えているだろうかということに関心がありまして、たとえば現在下水道が整備されていない段階で、家庭から出てまいります非常に小さいような排水路がございますが、その排水路で合成洗剤を使うのをやめまして石けんに切りかえますと、たちまちイトミミズが増殖いたします。もちろん三面コンクリート張りの場合はちょっとむずかしいのですけれども、普通のような溝の場合でしたら大量のイトミミズが発生いたします。それでいろいろ調べてみますと、夏、少なくとも夏はかなりの濃度の有機物質を分解して水の浄化に役に立っております。

 そういう意味で合成洗剤が生物に対して毒性を与えて生物が死んでしまう、そしてそれが間接的に環境に対して浄化能力を低下するという意味で悪い影響を与えてくる。手賀沼の場合に実際どういうことか、合成洗剤がどういうふうに影響してどうかということについては私実際に調べておりませんのでそれはわかりませんが、一般的に申しますと、合成洗剤そのものは環境に対して悪い影響を与えているというふうに考えております。

○江田五月君 窒素、燐、これを規制していくことはもうもちろん早急にやらなければなりませんが、同時に合成界面活性剤についてもそろそろ注目をしていかなければならぬぞという、そういう御指摘だと思いますが、そうしますと、三ツ松参考人は生協の役員で、生協もこれ事業活動をやって、もちろん合成であるかどうかは別として洗剤なども売らなければならぬことになるのだろうと思いますが、合成洗剤追放ということを掲げていると生協の事業活動に差しさわりがあるのか、あるいは差しさわりがなくて逆に生協というものの一つの使命を全うしていく道になっていくのか、住民とのつながりは一体どういうことになっていくのか、そのあたりについて体験を交えてひとつお考えをお聞かせ願います。

○参考人(三ツ松要君) 事業活動には直接影響はありません。
 というのは、洗剤は合成洗剤ばかりじゃないので、石けんがございまして、私どもの生協では幸い初めから石けんだけを事業の中に入れておりますので、直接事業には影響ありません。生協ですから組合員がつくっているわけですが、むしろ組合員が自分たちが石けんによる生活を行っていることによって環境破壊にくみさないでいられる、自分自身の生活のあり方をこの問題を通じて考え直すきっかけにするという意味で、非常に問題そのものは組合員には有効な影響を与えていると思います。

○江田五月君 最後に、いまのお話で、とにかくやっぱり住民の意識の変革というものが自然を守っていく最大の力なんだということなのだと思いますが、三ツ松参考人のお話ですと、人口圧力膨大な手賀沼、そんなに人がいっぱい住んでいる真ん中にある沼ならば、汚れて困るのならばなくしてしまって、いっそのこともう埋めて川にしてしまえというようなことを言う人があるいはいるかもしれない。現にその昔、千葉県の有名な代議士川島正次郎先生あたりはそういうことをおっしゃっていたということも聞くのですけれども、こういう御意見についてどうお考えになるか。どういう怒りをお持ちになるか。これを伺って終わります。

○参考人(三ツ松要君) 先ほども申し上げましたが、小さいと言いながら面積は都下の狛江市よりもやや大きいぐらいの面積を持っております。もし埋め立てれば六万人か七万人の人口を軽く収容できる土地利用がきっとできるだろうと思うのです。

 しかし、もうどなたも御存じのように、環境に対する人間の反応といいますか、これは先日も何か文化庁の方でたしか調査をされて、そのアンケートの結果が新聞に出ていたのですが、ちょっとその資料どこか置いてしまいましたが、人間生活の中で自然環境を要求する度合いというのは、むしろ逆に人口が稠密であればあるほど自然環境を欲するという結果が文化庁の世論調査では出ているわけで、数字はたしか一平方キロ当たりの人口密度で二千七百人を超しますと、緑が欲しい、もう窓から見える緑だけではどうにもならない、自分自身が行動を起こす、自然環境に接触したいというそういう反応を示すのだそうで、人間生活にとって自然環境というのはいかに大切であるかということを如実に示していると思います。

 あの周辺でもし六万人の新しい住宅地ができてしまったら、そこに新しく住む人たちが一休どんな自然を求めるだろうかという矛盾を生ずるわけで、私はどんなことがあってもあの自然は残しておかなければいけないというふうに考えております。


1982/05/12

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