1982/05/13 |
96 参議院・運輸委員会
道路運送車両法の一部を改正する法律案について
○江田五月君 長丁場になりましてお疲れでしょうが、最後ですので質問をお許し願いたいと思います。
この車検の問題については車の性能が昔と非常に違ってきている、あるいはその台数も非常に違ってきている、いろいろ車をめぐる環境というのが大きく変わっていて、そこで前々から、いまのこの車検の制度は見直さなければいけないのではないかということが議論になっている。それで今回のこの改正案になっていくのだと思いますが、どうもきょうの議論も、おおむね点検指示制度、過料を伴った点検指示制度が本当に妥当なのかどうかにかなりしぼられているようでありまして、私もまずその点伺っておきたいと思います。
この過料を伴った点検指示制度を設けた趣旨といいますか、なぜこれが必要なのか。従来のものの一体どこがいけなくて、過料を伴った点検指示の制度にしなければいけないという判断になったのか。突然、どうもこういうものが出てきたものですから、皆戸惑う、全然わからない。大臣、局長、部長の答弁を聞いてみてもどうもわからない。恐らく皆さんもそれほど自信がないんじゃなかろうか。ひょっとしたら、参議院で早くその点修正してくれたらいいのにというぐあいに思っていらっしゃるのじゃないかという気すらするのですが、一体、なぜこういう制度が必要になったのですか。ちょっとわかりやすく答えてください。
○政府委員(飯島篤君) 今回の検査、整備制度の見直しをした結果、定期点検なり検査なりについての制度改正を実施をした場合に、定期点検についての重要性というのは非常に高まってくる、特に十二カ月ごとの点検についてはそうであるという運輸技術審議会の認識が強く出されたわけでございます。そして、「定期点検の励行策」として、「定期点検整備記録簿の整備の励行、定期点検標章の制定、街頭検査の強化等の検討が必要である。」という御指摘をいただいたわけでございます。私ども、これに基づきまして、法制技術的にどう受けとめるかということで関係省庁とも検討をしたところでございますが、ステッカーを法制化するということは、定期点検義務あるいはステッカーの貼付義務それ自体に罰則云々というような議論に発展しかねないということで、それを見送ることにいたしまして、陸運事務所の職員等が街頭検査の際に有効な行政手段ができるようにするための最低限の制度として、御説明している点検の指示及びこれに従い点検を実施し、報告をしていただくと。先生よく御存じのとおり、通常、義務を履行されることが整備命令等におきましても実態でございますので、ユーザーの御協力がいただけるのではないかというふうに考えられますので、最後の報告義務違反に秩序罰をつけたわけでございますが、実態上これが運用されるというケースはまれであろうというふうに考えたのでございます。あくまでも自主的な定期点検の実施の確保というものがこの制度のねらいでございまして、ただ、大臣が先ほどから申し上げておるように、先生方の御意見をよく伺って今後考えてまいりたいと思っております。
○江田五月君 どうもよくわからないんですがね。
点検の要請が高まるんだと、制度を改正すると。その定期点検、特に十二カ月点検をやる要請が高まるんだというのは、それは新車の車検を三年に延長するからですか。
○政府委員(宇野則義君) 定期点検が現在六カ月、十二カ月、二十四カ月という半年ピッチで動いておりますが、それともう一つ、検査期間が現在二年ピッチで動いております。今回の法改正の法案に従いますれば、初回三年で後二年、二年という形になってまいります。それで自動車の部品の中には、走行距離とともに傷んでくる部位もございますし、寿命が予測できないために、一定時期ごとに取りかえを推奨するようないわゆる定期交換部品があるわけでございます。そういう定期交換部品が現在は一年とか二年とかという形で、いつの時期かといいますか、検査の時期、大体二十四カ月ピッチの時期には重なってきているのが現状でございます。ところが、運輸技術審議会で検討する過程におきまして、この定期交換部品等につきましても、部品によってはもう少し安全性を確認した上で寿命が延ばせるものがあるのではないか、そういうものは寿命を延ばしていくべきだという指摘も受けており表すし、ただいま申し上げましたように、初回三年、次回以降二年ということになりますと、定期交換の時期とちょうど検査の時期とがずれてくる形になります。
そうしますと、現在若干の批判を受けておりますように、検査のときに重なっております二十四カ月点検が過剰整備ではないかという御指摘もいただいておるわけでございますが、今後の定期点検というものが、できるだけ適正な整備を行うように、過剰整備にならないように考えていきますと、検査の時期における二十四カ月点検とは別に、また十二カ月点検というような時期に、この定期交換部品等を適正な時期として交換をしていく、こういうことが出てまいるわけでございまして、そういたしますと、必ずしも検査の時期にいろんな部品を交換するのではなくて、その中間においても必要な時期に必要に応じて交換していく、こういうことが適正な整備につながるのではないか。そうしますと、中間の定期点検というものが、従来にも増して定期点検の実施ということが重要になってくるというふうに結論づけられたわけでございます。
しかしながら、先ほど来話がございますように、車が性能向上してきた、あるいは使われ方が変わってきたという、こういうことを踏まえた上で、定期点検の項目につきましては、それぞれのピッチに応じて簡素化が可能であるから、それはそれで十分検討する必要があるという指摘とあわせまして、新しい形の制度をつくってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
○江田五月君 丁寧なお答えをいただいてありがたいんですけれども、いささか実のところうんざりもするわけで、もうちょっと端的にお答えを願いたいんですがね。
一つは、制度改正というのは新車の車検が三年に延びる。もう一つは、部品の、パーツの交換の時期と車検の時期とが必ずしもぴたりぴたりと合っていかないようなことにこれからなっていく、だから定期点検は大切なんだ。しかし、三年に延びることの方を言えば、最初の新車のときから数えて二十四カ月目の定期点検だけをそれじゃこうがっちりやっていただくというふうにすればいいじゃないかと。そのほかの定期点検まですべて過料まで伴って強制しなくてもいいじゃないか。あるいはその部品の関係にしても、過料まで伴った定期点検の強制というのをしなくてもいいんじゃないかという気がするんですがね。そこまで、制度改正によって定期点検の要請が質的にそこまで高まっている、変わったものになっているというふうにはとても考えられないんですがね。
どうも私ども、いろんなこう美意識というものがあると思いますけれども、何か義務というものを一度課してみると、その義務が何が何でも履行されなきゃいけないんだと、罰則――この場合は行政上の秩序罰ですが、そういうものまで課してもとにかく一〇〇%履行を確保しなきゃならぬのだという、そういう性質の義務もあろうと思いますけれども、しかし、世の中の法律上の義務というのはそういうものばかりじゃないんで、まあ国民の自主的な判断によって自主的に履行されるものが望ましいというような場合もありましょう。あるいはそういう罰則などのサンクションを用いずに、いろいろ指導その他で義務の履行を確保していくというようなことが望ましい場合もありましょう。現に定期点検にしても、整備工場の方から、あなたの定期点検の時期が来ておりますよ、どうぞお持ちくださいというようなはがきが来出したのはつい最近のことじゃないですか。これまでそういうことはやってなかったんじゃないでしょうか。そういう整備業界の方の定期点検確保のいろいろな知恵と努力とがいままでなかった。それを、急に何かこの過料というようなものをサンクションにして実行しようという。
私は、先ほど局長は新たな義務を課すものじゃないんだとおっしゃったけれど、これは全く質が違うと思うんですよ。いままでは、車検のときにはこれはユーザーの方が保安基準適合性を車検という形で自分の努力で確保しなきゃいけない。しかし、車検のとき以外のときは、罰則を伴わない定期点検というのはあるけれども、罰則という点に関する限りは、むしろお役所の方が保安基準に不適合であることを証明して整備命令を出す、使用停止をする、懲役なり罰金なりを科すと、そういう立て方だったんですね。車検のときにはユーザーの方が保安基準適合性を確保する、そのほかのときには公務所の方が保安基準不適合性を証明してユーザーに保安基準適合性を確保させるという、そういう立て方だったんですね、いままでは。今度はそうじゃないんですね。今度はこれが変わって、車検のときにもそれから定期点検のときにもユーザーの側が保安基準適合性を自分で確保しなければならぬという、そういうふうな変化になっているんですね。これは全然この質が違うと思うんですがね。どうしてそういう質の違う、法体系上性格の違う制度をつくらなきゃいけなかったんですか。
○政府委員(飯島篤君) 先ほど制度改正だけで定期点検の重要性が高まったと申し上げたのでありますが、定期点検の項目の簡素化についてどちらかというと考え方を変えているわけでございます。いままではベターであるものも令部取り込んで、まあよく批判されます、たとえば六カ月なら四十六項目というような決め方をしておったわけですが、今回は最小必要限のものに限ろうではないか。それで使用形態が違うような場合は、これはまさにユーザーの判断でそれは対応してもらおうという思想が打ち出され、また、ユーザーがこの車の管理についての主体なんだと、これはまあ法律的にはいままでもそうだったと思うのでありますが、それを特に運技審の答申等では強調をいたしまして、ユーザーの認識を高めていただく、またユーザーもそのかわり参加できるような仕組みをいろいろ考えでいこうと、またそのために手引きなどもつくって、国もユーザーのそういった意識の高揚に努めようという前提で、そういう整理された形での定期点検というものについてはユーザーの責任というのはむしろ重くなっておるので、ひとつきちっとやってくださいという考え方をとったわけでございます。したがいまして、私どもの方も街頭検査の際に行政指導を強化する必要があるだろうということからこういう仕組みを一応立案したというわけでございます。
○江田五月君 何か義務を課すともう全部こういう過料というようなサンクションまでつけてこれを実行させなきゃならぬというのは、私はこれは官僚的美意識だという気がしますね。もうちょっと世の中の美意識というのはいろんなものがありますから、ちょっと余りそう官僚的美意識にとらわれてやってしまうとおかしいんじゃないかと思いますが、定期点検を必要最小限のものに限っていったと。しかし、六カ月点検は確かに必要最小限のものに限っていった。十二カ月点検もなるべく簡素にしていった。そのかわりだんだんと押せ押せになってきまして、後ろへ後ろへ延ばされて二十四カ月点検から、何もかにも外すというようなわけにいかなくなったから、二十四カ月点検は相変わらず分解整備をしなきゃならぬ個所がたくさん残っているという、そういう形に、これはこれから検討されるんでしょうが、なるんじゃありませんか。
○政府委員(宇野則義君) 現在の定期点検の制度は六カ月、十二カ月、二十四カ月となっておりまして、二十四カ月のときには当然のことながら六カ月の内容を含んでおります。これはもう先生御承知のとおりだと思います。そういう制度の中で、車の性能向上あるいは部品の寿命の延長あるいは車の使われ方の変化、こういったものを踏まえて検討してまいりますと。先ほど申し上げましたように、六カ月点検の部分についてはかなりの部分、それで特に六カ月点検がかなりの部分というのは先生おっしゃいましたのと一部合致するところがあるんですが、六カ月ごとに点検する必要はない、十二カ月でもいいだろうと、こういうものが出てくるわけですが、これはいわば六カ月ごとをやってたのが一回ごと間引くという形になるものですから十二カ月でふえるわけじゃございません。そういう意味で、性能向上等に伴いまして全体的には逐次簡素化されていくと、合理化されていくという形になろうかと思います。
○江田五月君 しかし、それにしてもその過料まではやはり要らない。これはやっぱりバランスの問題ですからね。こういうものはやはりすべてバランスの問題なんで、とにかく何が何でも履行確保をすればいいんだと、履行確保を、ちゃんと法に従ったことさえやっていれば何も義務を課すわけじゃない、特に悪いことが起こるわけじゃないんだからと。だけれども、法に従ったことだけやってもらわなきゃ困るからこういうことをやるんですよとこういう罰則を加えるということになるのならば、罰則なんて重い方がいいんで、世の中の法律違反は全部死刑にしてしまえばいいわけですからね、それなら。そうじゃないんで、やっぱりそこはバランスの問題があるわけで、そこでそれほどにこの定期点検の必要性がもうどうしても高まっているというなら、それならばこの定期点検を受けていない車についてはすべて点検の指示を出し報告を求めて、その違反には過料を科すんだということにならなきゃおかしいわけです。ところが、どうもそれではこれは困るぞと。大変な国民に対する負担が増していくぞ、臨調の精神にも反するぞと。そこで大臣、先ほどおっしゃったのは、不正な改造車、違法な行為を行っている白トラック、ダンプカー、その他の整備不良の車両に対してこの点検の指示から続くこの手続を課していくんだと、そうメモをとったんですが、それでよろしいですか。
○国務大臣(小坂徳三郎君) そのことなどを中心といたしましてということでございまして、われわれの方から注意を喚起いたしまして、それにちゃんとこたえてくれればそれでよろしいということであって、こういうものが全部過料の対象になるとは限らないということでございます。
○江田五月君 その不正な改造車など整備不良の車については、これは交通安全週間などに見つかりますね。そうするとこれはどうするんですか。整備不良の車は点検の指示をされるんですか。整備不良の個所の整備命令というのはお出しにならないんですか。どうなるんですか。
○政府委員(宇野則義君) 交通安全運動の期間中等で街頭でやりましたときに発見といいますか、判明いたしました保安基準に違反しているような車につきましては、その保安基準の違反個所を適合させるように整備命令を出すということになるわけでございます。その整備命令を出す場合に、先ほどもちょっとお答え申し上げましたけれども、重要部位が不良個所なのか、あるいは比較的軽い個所が不良個所なのかによって、若干、行政指導的な面でとどめる場合と、整備命令という法律上の手続をとる場合とあるということでございます。
○江田五月君 いやいや、整備命令は、だからその不良個所の重要性に応じて出したり出さなかったりと。
点検の指示はどうするんですか、定期点検の指示。
○政府委員(宇野則義君) 整備不良車が判明した場合に、その車が定期点検を実施していないということが判明いたしますれば、そういう車に対しては指示をするということになります。
○江田五月君 そうすると、整備不良個所については、たとえばライトが片目になっていると。その程度だと整備命令まではいかないですわね。ちゃんと直しておきなさいよと、定期点検の指示だけをされると。定期点検をしていない場合には、いまの整備命令かあるいはその指導をするだけで、まあそれ以上はできないですわね。そういうことでいいんですかね。
○政府委員(宇野則義君) いま具体的の事例につきましては、行政指導的な方法であります警告という形で指導いたしております。
○江田五月君 どうも、整備不良の車両等を中心としてこの保安基準適合性を担保するということならば、従前の整備命令から続く手続だけで十分なんじゃないだろうか。行政指導の手段を確保しておきたい、そのために過料という制度が要るんだというようなお話もあるようですけれども、もし行政指導の手段を確保しておきたいなら、定期点検の指示をして、そしてその報告を求める。報告のない場合には、たとえば保安基準に適合しているかどうかのチェックのために、たとえば車を持っていらっしゃいと。それでチェックをして、保安基準に適合していなければ整備命令を出すというような形でやりさえすれば、何も過料というような国民に財産上の負担を課す制度をとらなくても、行政指導の手段というものは十分確保できるんじゃありませんか。
○政府委員(飯島篤君) 街頭検査で整備不良車を排除すると申しましても、実務上は排ガステスターとかハンマーぐらいしか持ってやらないわけです。したがいまして、主として外観検査で見得る範囲で整備不良車を発見するということで、気持ちとしては、整備不良の状態のまま走っておられるような方ならば定期点検をおやりになっていないおそれもかなりあるのではないかという趣旨で、定期点検の記録簿等でその実施状況をチェックさせていただく。定期点検は、別に項目が決まっておって、たとえば十二カ月点検であれば一個所を分解整備幸してチェックをするという項目がございます。そこまで街頭検査では見得るわけにはいきませんので、併用という話になるわけでございます。
○江田五月君 いまのは、私の質問ももうちょっと詳しく質問しなければあるいはおわかり願えないのかもしれないけれども、ちょっと質問の趣旨と違うんですがね、答えは。
まあそれはいいとして、それでは定期点検というのは非常に形式的なものですね、ある時期に点検をしているかどうかという。ところが、車なんというのは別にその時期に修理をするだけとは限らないわけで、何か不都合があればいつだって修理などはするわけですからね。そうすると、たとえば整備簿などを見本して、定期点検の時期には定期点検をしていないけれども、その直前に何か、たとえばブレーキがちょっと調子が悪くなったとかなんとかでこの定期点検に必要な個所の点検はやっているというような場合には、これは定期点検義務を履行したことになるんですか、ならないんですか。
○政府委員(飯島篤君) そういうケースは当然弾力的に運用する所存でございます。このことは衆議院でもお答え申しております。
○江田五月君 弾力的運用といったって、これはこの構成要件といいますか、形式的には当たってしまうわけですね。形式的には当たってしまう、しかし、幾ら何だって、そんなしゃくし定規に運用するのはおかしいじゃないかという程度のことは、それは過料までつけて強制するのがおかしいということにむしろなるんじゃないか。
ですから、たとえばその場合の点検の指示、まあいつごろそういう整備をしているか、これによって変わってくるだろう。三カ月前か五カ月前か、あるいは整備簿で見て、整備をした内容もいろいろあるでしょう。それによっていろいろ変わってくるんだろうと思いますが、何かこの点検の指示を出すか出さないかについて行政裁量というものが非常に大きなものになってしまうんじゃないか。それほどの裁量によってこの過料というところまで行くか行かないかが決まってしまうというのが本当にいいのか。まあいまの、定期点検に法律上ぴたりと当てはまる時期に点検整備をしていなくても、十分まあそれに、保安基準適合性を担保し得ると考えられるそれに近接した時期に必要な点検整備をやっておれば、これは弾力的に運用して、定期点検は実質的にはやっていると考えるということならば、そうすると、たとえば十二カ月点検などの場合に、あるいは二十四カ月点検もそうですが、特に十二カ月点検。分解整備を要するところは、まずブレーキですね。あるいはブレーキのみと考えてもいいんでしょうかね。そのブレーキの部分だけを定期点検という形ではなくて整備をして、そのほかのところは自分でチェックするというんですか、というような形で済ましておる。これでも定期点検、十二カ月点検の義務は履行しているというふうに判断されるんですか。
○政府委員(宇野則義君) 自分でやれるものを自分でやって、それから残りの部分、自分でやれない部分を整備工場に依頼してやるという方法も、方法としては考えられます。
ただ、点検という項目はそれぞれの定期点検の時期によって決まっておりますので、それらはすべて一応点検の対象にしていただく。そういうことが今度の定期点検記録簿の中で十分記載をしていただけるように今後考えていきたいというふうに考えております。
○江田五月君 この過料というものが一体どうして出てきたのかということについて、いろいろな話が、それほど証拠によって裏づけられているというわけではない。しかし、まあいろんな話がある。ある程度証拠によって裏づけられていると言ってもいいのかもしれませんですね、その業界の新聞、雑誌などにいろいろ出てくるというようなところを見ますと。
さて、運輸大臣、四月の一日にこの運輸委員会で田英夫委員が質問をしたときに、大臣は業界の事情についてお答えくださっておりますね。余り表に出ないことではあるけれども、というような趣旨で、零細企業の整備業者が非常にたくさんある。その生活が大変なんだと、深刻な話題であって、大臣のところにも大変に多数の方々がおいでになって、どうしてくれるんだというような話が日々続いておる。行政改革も必要だけれども、一方で零細な多数の人が生計を得ているという、そういう事業部門であると、このことも考えなければならぬのだということをお答えになっている。これは別に、このお考えは変わったわけじゃないんでしょう。
○国務大臣(小坂徳三郎君) まさにそのとおりであります。
○江田五月君 さて、その場合に、この過料ということによって定期点検を強制していくことがこういう業界の仕事の確保に役に立つ、そして、業界の皆さんに制度の改革による急激なショックをやわらげることになる、生活破壊的な変化をやわらげることになる、そういう機能を持つということは、これは大臣、お認めにはなるでしょうね。
○国務大臣(小坂徳三郎君) われわれの運輸省における試算でございますが、大体初年度で約二千七百億円ぐらい整備業界の収入が減るであろうと、五年たちますと約八千億だというような試算がございますから、私はそれだけの膨大な企業の営業が縮小する可能性があるということは、これは大変なことではあるというふうに思っておるのです。もちろんユーザーの方から言えば、この点検なんてめんどうくさいことをしたくないのは当然なのでありまして、しかし、これと整備業者との生活の問題とはまた別個の問題でありまして、私はその時点で田さんにお答えしたときに、この過料制度というもので二千億もあるいは累積されれば八千億にもなる落ち込みを、とてもそんな程度のことでどうこうって考えたこともないのであります。そのことをきょうたまたま御質問いただいたので御答弁さしていただいてありがたいのでございます。
そんな意味でございまして、でありますから、自動車局に対しては、整備業界の現状とそれに対する対応策というものをもっと詰めて実のあるものに早くしろと言って盛んにいま催促しているところでありまして、先ほど来も江田委員ほかの皆さんからその問題について強いお考えをお述べいただいておるので、これは大変私も考えておることは間違っていないというふうに考えておるところでございます。その対策がいまここで明確に申し上げられないのは大変残念でございますが、方向としてはもっと大きな国の運輸行政の中でやれることだけはひとつやって差し上げたい、そんな気持ちでおります。
○江田五月君 この過料をユーザーに科すことによって仕事を確保して何とかやっていくんだというのは、私はこれは経済人としてははなはだ安易に流れるというか、堕落しているというか、そういう感じさえするんですね。確かに幾ら制度の改革が必要なんだと言っても、その制度の改革によってかなりの規模の人たちに生活破壊的な影響が出てくることはこれは何とかしていかなければならない。中小企業の一つや二つつぶれたってどうしようもないんだというようなわけにはこれはいかない。それはそうなんですが、しかし、一方で何とかしろ、何とかしろと言ってきたって、この関係についてはこれはもう国家賠償的な意味で賠償をしろというような声もあったわけですけれども、そういうことには当たらない。補償の対象ということにも当たらない。それは本四架橋のときだってそうですよね。そうじゃないんで、やはり時代が変わっていって、その時代の変化に伴っていい制度をつくっていくというときに、いままでの制度の中で事実上得ていた利益がなくなったからといって、それをすぐに補償だ賠償だということにはそれはなっていかないんで、時代の変化に伴って自分の自助努力、創意工夫で新しい方向を、生きる道をつくっていくと、これが日本経済がこれまで大きくなってきた秘密でもあろうし、さらにその活力ある福祉社会ということを目指していくとしても、その活力が社会に生まれてくるゆえんですね。
ですから、私もこの整備業界の関係の雑誌で、実は先ほども話がありました梶原議員と対談をさしていただいたんですが、そこでも言ったんですけれども、補償とかなんとかで整備業界の皆さんが何かこう腕を組んで運輸大臣のところへ行って何とかしろと談じ込むと、そういうことじゃなくて、たとえばさっきの定期点検を、時期が来ておりますが、どうぞお持ちになってくださいというようなはがきをお客さんに出していくとか、いろいろありますよね。あるいはもっとサービスをどういうふうにしていくか、これについて自分たちの創意工夫を重ねていく。そして、その中である程度はそれは淘汰されていくこともあるでしょう。それはしようがない淘汰であって、ただ、そういうしようがない淘汰が生活破壊になってしまわないように国で多少の援助をしていく、あるいは誘導をしていく、指導をしていくというようなことは、これは必要なんでしょうがね。そういうことこそ必要だという気がするんですが、大臣は官僚上がりじゃないわけでして、第一級の日本でも有数の経済人でいらっしゃるんで、むしろ大臣の方から整備業界に、ひとつ何といいますか、活を入れるといいますか、そんな甘ったれたことじゃだめですよ、もっと自助努力でやりなさいという、そういうおしかりがあってもいいんじゃないかという気がするんですが、いかがですか。
○国務大臣(小坂徳三郎君) 私は、いままで御議論にあった、過料を取るということでそれで整備業界が生きていけるなんということは、数字から計算したってあり得ないことでございます。したがいまして、ただいまの江田議員のお話は当然そのとおり私も思っているのでして、できるだけ早く業界の方々にお目にかかって、ひとつ生きる道をお互いに考えようじゃないか、われわれもできるだけのことをしたい。それについてはやはりある程度のファンドが要るのでございますが、そうしたファンドを何とかして政府としても準備をしてお助けをしなければいけないなと、そのファンドをどうやってつくるかということをいま自動車局に課題として出していろところでございます。
いずれにいたしましても、大きな時代の変化の中で起こるいろいろな事象に対して、いま委員のおっしゃいましたとおり、すべてこれを何か税金で補償するなんということはとてもできることじゃございません。ましてや、繰り返して申し上げます、が、千人ぐらいの程度の人間がチェックして、そして見つけたことについて、報告をしない者に対して十万円というものをかけてみたところで、一体年間幾らになるんだと試算してみたって、全くそれは問題にならない金額でございますから、そんなことでないのでございまして、今後零細企業に働く方々、私の選挙区にもたくさんおられまして、こうした方々が非常に苦しんでおることもよく見ておるので、自動車行政の一つとしまして努力をさせていただきたいと、そんな気持ちでおります。
○江田五月君 終わります。
1982/05/13 |