1984/04/20 |
101 衆議院・文教委員会
私学共済年金について
○江田委員 私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案、なかなか長い名前ですが、要するに年金の関係のことですので、ひとつ年金のことに絞って質問をしてみたいと思います。
年金改革ということが言われて、今も当院にもほかの委員会でその関係の法案がかかっている。現に継続している、審議をされている法案自体についての賛否はいろいろありますけれども、しかし基本的に年金に手をつけなければいけない、これは恐らくもうだれも否定をできないところだと思うのですね。国民年金がもう破産するんじゃないか、早く船から飛びおりないと泥船になって沈没する、国民年金に入っていらっしゃる皆さんの中でそういうふうにこの間まで言われておったりしたけれども、しかし、そんなことになって一体政治家は何のかんばせあって政治家のバッジをつけておれるのかということになる。これはみんなで知恵を絞って泥船にするようなことをしてはいかぬ、こう思って、この年金改革というものには真剣に取り組んでいかなければならぬと思うのです。
さて、私学共済年金、これはこういう年金改革全体の中でどういう位置づけを持っているものなのか。今回の改正の中にはもちろんまだ入ってこないわけですが、さらにこの次という展望、いろいろあると思うのですけれども、私学共済の年金が全体の年金改革の中でどういう位置づけかということをお聞かせください。
○阿部政府委員 私学共済年金でございますけれども、先生の御案内のように、昭和二十九年に私学共済組合法が成立をいたしまして共済組合年金という制度が明確につくられたわけでございます。それまでの間は厚生年金等に加入をしていたという状況にあるわけでございます。もちろん私学も民間の一つの機関でございますから、従来は厚生年金に加入しておったわけでございますが、その後、昭和二十九年の時点にそういう措置がとられたことの背景には、教育基本法等によりまして、国公私を問わず教員の処遇については適正な処遇が図られるべきだという規定がございます。国公立の教員と私学の教員とに著しい差があるのは好ましくないというような見地から、国公立学校の共済組合、その退職年金制度等とのバランスをとるという趣旨で、民間としては大変珍しいケースでございますが、私学と農林にこういうケースがあるわけでございますけれども、公務員に準じた共済年金という制度になったわけでございます。
この共済年金につきましては、最近の年金制度の一元化問題の中で、もちろん厚生年金、国民年金、その他とのバランスをとりながら、全体の一元化を図っていくというのが基本的な方向であることに間違いはないわけでございますけれども、種々そういった成立の経緯等それぞれ抱えているということもございますし、にわかに一遍にはいかないということもございますので、とりあえずは厚生年金と国民年金、それから船員保険、こういった系統の整理が第一段として現在国会に提案をされているわけでございます。
このことにつきましては、去る二月二十四日に閣議におきまして、そういうことを含めての今後の公的年金制度の発展を図るための措置についての方針が定められたわけでございまして、ただいま申し上げました国民年金、厚生年金保険及び船員保険制度については基礎年金の導入を図る等の制度改正を行うということを五十九年に実施をする、共済関係の年金につきましては、そういった基礎年金の導入という方向を踏まえながらこの趣旨に沿った改正を六十年において行う、こういうようなことが定められておるわけでございます。そして、昭和六十一年度以降から全体の調整等について必要なことをさらに講じていくという全体の流れになっておるわけでございますので、私学共済年金につきましても共済年金グループの一員といたしまして、昭和六十年から基礎年金導入等を踏まえた改正を図るということを前提にいたしまして、現在検討に着手をしたというところでございます。
共済年金グループは、国家公務員共済、地方共済、農林、私学とございますので、それぞれ関係の省庁が四つあるわけでございますけれども、その四省庁のメンバーにさらに学識経験者等にも若干加わっていただきまして、三月の末から既に勉強会もスタートをさせまして、できれば今年内ぐらいにはからっとした案を固めて、次の国会に提案をするという方向での検討をしようという体制をとっているところでございます。
○江田委員 その共済年金グループですが、これは検討に着手されたということで、どこまで検討が進んでいるかということなんですが、共済間の統合ということは一体どうなるのか。今四つあるものはそれぞれ四つ別々で、しかし、それぞれに全部基礎年金構想を採用していくということにとどまってしまうのか、それとも共済年金間の統合というようなことはお考えになっているのでしょうか、どうでしょうか。
○阿部政府委員 ただいま検討に着手した段階でございますので、これから、特に年金の一元化と一言で申しますけれども、年金の制度の一元化という意味もございますし、それから年金に関する各種の資金の運用の一元化もやるのかどうかとか、あるいはさらには年金関係にかわりまして、それぞれ共済組合という組合があるわけでございますけれども、その辺の一般の業務はどうなってくるのかとか、いろいろな問題があるわけでございます。したがいまして、なかなか難しい問題でございますけれども、年金の仕組みを統一のあるものにしていくということがまずは第一段階ではなかろうかということになるのではないかと思うわけでございます。これからの検討ということになるわけでございますけれども、したがいまして、共済組合を全部一本にしてしまうとかいうところまで考えて現在着手をしているというわけではございません。現在では、その基礎年金をどういう格好で導入するか、そして導入した場合に、全体の二階の部分と言っております報酬比例部分についてそれではどういう改善をしていくのか、さらには職域年金部分の三階と言われる部分がございますけれども、そういうものについてどう考えるのか、それも各共済なり厚生年金等とのバランスを考えながらどう整理していくかというあたりのところが、当面最大の検討の課題になるのではなかろうかと思っておるわけでございます。
○江田委員 確かに、共済というのは年金だけやっているわけではもちろんないので、短期の給付とか福祉事業とかいろいろありますし、資金の問題もありますから、それを全部一緒にというわけにはいかない。けれども、年金というものだけをとってみると、やはり年金というのは乗っている船が大きな船になっておらないと、小さな船で荒波にもまれたというのじゃ、例えばこの間うちは国鉄がまさに沈没しかかってえらいことになったわけですが、産業構造の変化、経済の変化などに伴って、年金の基礎が小さい場合には揺られ揺られて、まことに不安定になってしまう。
私学共済、これは年金という観点で見ると三十四万人足らずですから、国民年金、厚生年金という大きな船が一方である、国家公務員共済にしても私学と比べるとかなり大きい。そういう年金ということで見ると、果たして私学共済だけを年金で独立させておくことがいいのかどうか、これが本当に安定性を確保する道であるかという議論があると思うのですが、いかがですか。
○阿部政府委員 年金制度は、安定したものとして将来とも続けていかなければいけないという仕組みのものでございますので、御指摘のような問題点は確かにあろうかと思うわけでございます。
ただ、私ども、詳しいことをよく承知しているわけではございませんけれども、三十万、三十三万という規模が非常に問題であるかどうかということについてはにわかに結論は出ないわけでございますが、先般地方公務員の共済組合につきまして、八十九の共済組合を統合する、統合と申しますか、連合体をつくって資金の融通をある程度やっていこうということが、昨年の法律で成立をいたしております。これの場合ですと、百八十九万人全体の組合員で八十九の組合でございますので一組合当たりが二万一千人ぐらい、実態で申しますと、市町村の職員に係る組合について見た場合、最低が二千人ぐらいの組合から最高が六万二千人ぐらいの組合があるわけですが、八十九集まって、これでひとまず安定したというような感じのようでございます。そういう従来の地方公務員の個々の共済組合等に比べますと、三十三万というのはかなりの規模を持っておるわけでございます。
また、現在の年金財政の状況を現状のままで固定して将来のことを推計いたしますと、現在の財政で各年度の収支の関係では約二十年、さらに持っております資産食いつぶしというような格好で赤字が出るかどうかというところまで含めますと、あと三十年は大丈夫だというのが私学共済の現在の将来推計でもございますので、そういう意味で、私学共済の状況がすぐ危なくなってくるというようなことにはならないかと思うわけでございます。
ただ、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたような制度面での平均化、公平化等を進めていくにつれまして、いろいろな議論が出てくる可能性はあると思っておるわけでございますが、ただいま申し上げましたようなところから、直ちに私学共済も危ないから他の共済と一緒にならないとというふうには私ども、今の段階では考えておらないわけでございます。
○江田委員 当面危ないからということではないのですが、私学共済、恐らく年金のうちではかなり財政的には恵まれた年金、それにもかかわらず七十九年には単年度収支で赤字になる、さらに積立金を食いつぶしていっても三十年後ですか、赤字になってしまう。これは構造的なものですよ。ですから、いわんやをや、私学共済以外のものはということで、そして私学共済は結構やっていけるから自分のところだけでやるのだ。けれども、産業によってはやっていけないところもたくさんある、やっていけないところはどうぞ勝手にしなさい、それでは済まないので、全体の助け合いの制度ですから、大きな船というのをみんなでつくっていかなければならぬ。それで、この第三段階というところに私学共済も乗ろうということだと思うのですがね。
船を大きくする話で、同じようにいろいろな学校の教職員であっても、資格があるのに私学共済に入っていない。例の東京六大学の東大を除いた部分その他というのがありますね。これはこの間同僚委員から質問がありましたので、その部分はよろしいのですが、もう一つ、同じ教職員でありながら資格のない部分があると思います。各種学校、専修学校で学校法人及び準学校法人立以外のもの、これは学校教育法一条の学校ではないけれども学校、ここに勤務する者にはなぜ資格を与えないのですか。
○阿部政府委員 先ほど一番初めに申し上げましたように、私学共済法が昭和二十九年に制定されました当時の当初の考え方といたしまして、教育基本法等の定めるところ等を勘案して、国公立学校の教員と私立学校の教員の待遇のバランスをできるだけとっていきたいということで、その場合に、法律に定める学校というのは学校教育法一条の学校であるというようなこともあったかと思います。その際に、そういうようなことから学校教育法一条の学校について対象にして私学共済組合というのができ上がったわけでございます。
御疑問の点は、それじゃ何で各種学校、専修学校の教職員であっても、個人立てないものについては加盟しているのかというお話であろうかと思いますけれども、この点につきましては、当時から学校教育法第一条に規定する学校、一つの学校法人が一条の学校ばかりではなくて各種学校も一緒に持っているというケースがしばしば存在するわけでございます。それを区別して扱うのも大変難しいというようなことから、学校法人が持っております各種学校の部分は本体の方の一条学校と同じに扱わざるを得ないというような措置がとられたと承知しておるわけでございます。
いずれにいたしましても、二十九年の発足以来既に三十年間ということで、その間にこちらの私立学校共済組合に入っているグループは入っているグループ、それから入っていない各種学校、個人立の各種学校、専修学校等につきましては厚生年金その他の方のグループへ所属をして、その制度がいわば定着してきているというような状況にあるわけでございますので、現在の段階におきまして、他の年金制度に加入して定着しているものをこちらへ持ってくるというのはなかなか難しい問題になるわけでございまして、先ほど先生のお話にございました適用除外校の取り扱いにつきまして、昭和四十八年に特別の立法措置で、その後さらに追加して入ってきてもいいという措置を講じたことがございますけれども、そういった際にも厚生年金を所管している側からは抜けて出ていかれるわけでございますので、それににわかに賛成できないというような議論等も出てくるわけでございまして、どこに所属するかというのは、三十年間の経緯というものがございますからなかなか難しい問題ではあるわけでございますが、いずれにいたしましても、どこかで切って、どっちかに分けなければならないので、その切れ目のところではいろいろな問題があるわけでございまして、先生の御指摘も私、本当にもっともな御指摘だと思って答弁に悩んでおるような状況でございます。
○江田委員 お悩みなのだろうと思います。ある程度年限がたって制度として成熟しているとおっしゃっても、各種学校などは新しくできてきているわけですから、厚生年金という制度はそれは確かに成熟 年金の意味の成熟じゃなくて歴史を持っているわけですが、各種学校、専修学校で新しくできている、しかし学校法人立じゃないもの、それは何も一定の歴史を持ってというわけではないので、やはりこういう制度をなるべく広く取り込んでいくことの方が大切じゃないかと思うのです。
ところで、ほかの年金制度と比べて私学共済の年金の最大の特色、これはどういうところにあるのでしょうか。例えば成熟度が非常に低い。現在が三・七%。そして、きのう、おとといあたり文部省の皆さんにいろいろ教えていただいたのですが、どうもなかなかはっきりしないのですが、ピークになっても恐らく二五%くらいですか。厚生年金の場合が既に九%、ピークが三五%くらいまでいく。そういう基本的な違いが私学共済についであるという感じですけれども、これは一体どこに由来するのですか。
○阿部政府委員 先生、私学共済の特色とおっしゃいましたが、まさにそのとおりだと思います。
成熟度が三・数%というのは、他の共済制度がすべて少なくとも二けたのレベルに達しておるのに対しましては非常に低い状況にあるわけでございます。
このように成熟度が非常に低いということの原因はいろいろあるわけでございますけれども、一番大きな原因といたしましては、私立学校の数あるいは学校の規模そのものが、全体として制度の発足以後非常に大きく伸びてきたというところがあるのだろうと私ども思うわけでございます。国家公務員その他の共済組合もある程度は伸びておるかとは思いますけれども、私学の場合には、昭和二十九年に発足いたしました当時が組合員数が約五万人であったわけでございますが、その後、今日現在では三十三万六千人というようなことで、この間に約七倍という規模にまで著しく急成長してきたというようなことがございます。こういった点が、成熟度が低いということの非常に大きな背景としてあるのではないかということを考えておるわけでございます。
それからまた、制度の発足そのものが、他の制度が恩給その他非常に古い歴史を持っておりますが、これに対しまして非常に新しいということ。さらには、幼稚園等で短期間の在職者が相当数いるというような点があろうかと思います。
○江田委員 その急成長というのは確かに一つの特色ですが、しかし、それは、ピーク時の成熟度がどのくらいになるかということがこれほど、他の厚生年金と一〇%も開くということの理由にならないのですね。
私学共済の一番の特色は、例えば組合員で見ると、五十七年度が、男が十六万五千、女性が十七万一千。そのうち、大学の場合には男が六万八千、女が四万八千ですが、特色がもろに出ておるのが幼稚園で、これは男性一万二千九百、女性が七万一千。それから、被扶養者数が五十七年度で全体で一人当たり〇・九二。幼稚園というのは、全部で三十三万六千人の組合員のうちの八万四千人おるわけですからかなり大きな部分ですが、その幼稚園の被扶養者数が一人当たり〇・二六人だというのですね。これが非常に大きな特色です。つまり女性が多くて、幼稚園の先生を若いときに何年か勤めてすぐにやめる、そうすると通算年金を受ける人数が物すごく多いですね。
そういう特色というのが年金統合の中で一体どういう光と影、明暗を持っていくのかということを、これはきのう、おととい一生懸命議論してもどうもなかなかわからないのですが、きちんと勉強しなければいけないことじゃないかと思うのですが、いかがですか。
○阿部政府委員 幼稚園に勤務する女子教員という御指摘がございました。まさにその点が組合員の構成として非常に特色のある点でございまして、先生おっしゃいますように、比較的短期間でやめて交代していくケースが多い、あるいは扶養家族も少ない、いろいろなケースがありまして、それが通算退職年金の受給者が多くなっているというようなことにも響いているかと思います。通算退職年金を受ける者はそのほかにも、例えば国立を定年退職して私学に移った方々とかいうようなケースも相当数あろうかと思いますが、いずれにいたしましても、幼稚園に勤務する方々の数が大変多いということは、まさにそのとおりであろうかと思うわけでございます。
先生がおっしゃいました、これが他の制度との統合の――通算退職年金という制度はどこにでもあるわけでございますので、その率の多い少ないによって年金を仮に統合するとした場合に特段の支障になるかどうかということについては、私ども、必ずしもそこまでは現在の段階で考えておらないわけでございます。支障になるとまでは思っておらないわけでございます。
いずれにいたしましても、話をもとへ戻して恐縮でございますけれども、財源や何かを統合してしまうかどうかというような前に、まずはその掛金の率を平準化するとかあるいは給付内容を平準化するというあたりのところから手をつけていきませんと、なかなか全体の統合問題の議論に入れないということもあるわけでございまして、私ども十分勉強が行き届いていない点もございますが、ただいま先生から御注意いただきましたような点は、これからの研究に際しまして十分勉強しながら議論を進めていきたいと思っております。
○江田委員 私も障害になると言っているわけじゃないんで、ただ、そういう大きな特色がある制度を統合していく場合に、その特色というものがどう影響していくのかということをきっちり把握しておかないといけない。例えば通算退職年金の場合には、幼稚園に若いころ五年ほど勤めた人が幾らぐらいの年金をもらえるのか、しかし、それが統合年金になって最高五万円ということになると一体上がるのか下がるのかという影響がすぐ出てくるわけですからね。
ところで、積立金の運用状況で、実はきょうは時間を短縮しろということでもう時間がなくなってしまったのですが、私学共済というのは非常に効率的に運用されておって、五十七年度の運用利回りが厚生年金、国民年金と比べてはもとより、国公共済、地方共済と比べても、平均すると〇・五%かあるいはもっと、そのくらい私学共済だけが運用を上手になさっておるわけですが、これは福祉運用が随分少ないのですね。何かこれでいいのかという感じはしないですか。
○愛野委員長 簡潔に明確にお願いします。
○阿部政府委員 この資産運用につきましては、各共済を通じまして法律によりまして何割以上をどちらに充てるという基準があるわけでございますが、私学共済の場合にはその基準の中で現実に運用をいたしておりますが、他の共済の場合にはその基準の中での運用がなかなか難しいということで、特例措置によってその基準をオーバーした運用をしておるわけでございます。そのオーバーをしております部分というのが、家屋の建築等のための組合員への貸し付けという関係の部分であろうかと思います。
私学共済について、それがそれほどの額を用意しなくても済んでおるということの事情の裏には、先ほど先生がおっしゃいましたように、幼稚園等が多いとか女子の職員が多いというようなことから、みずから家を建てるということが余り必要がないということのようでございますので、これは特に意図的に貸さないということではなくて、それだけで済んでしまっているという状況でございます。そのために、もうちょっと高い利子回りの方にお金が使える状況になっているわけでございます。
○江田委員 これは効率的に運用するのがいいのは間違いないのですけれども、しかし年金の積立金を使ってどんどん金がもうかる。金がもうかればサラ金やっても何やってもよろしいということではもちろんないわけで、これはやはりそれなりの制度の趣旨、目的に合致した運用でなければならぬ。
そこで大臣、これは私学共済の積立金だけでできるわけじゃないのですが、参議院の方で予算委員会のときに、たしか民社党の伊藤郁男さんでしょうか、年金客船というお話をされたのを、予算委員会ですから大臣もお聞きだと思います。
年金の積立金の有効な活用の方法として、還元融資のような形でしょうか、第三セクターでもひとつつくって、そして三万トン級の定員二千名ぐらいの豪華客船をつくって、年金客船でお年寄りへのプレゼントにしたらどうだ。それでなくても海洋国家日本、大臣も私も、「我は海の子白波の」というような歌で育った。しかし、今や我は海の子じゃないのです。我はプールの子みたいなことになっていまして、何か海洋国家日本がどうも海を忘れているのではないか。そして何だか知らぬが、教育の現場でも経済の現場でも、夢やロマンがなくなってしまっているときに、ひとつ豪華な客船をつくって老後、定年後、世界一周となるとなかなか大変ですけれども、クルーズを楽しんでいただくとか、あるいはそういう船ですからお年寄りと若者と一緒に洋上研修をさせるとか、海洋スクールとか、あるいはまた海で亡くなった皆さんの慰霊祭を催すとか、いろいろな使い方があると思いますが、そういうことに使ったらどうかという海員組合の組合長さんの提案があるわけです。夢物語だというふうにおっしゃらずに、大変なロマンのある提案ですから、年金に関係している閣僚のお一人として、財政面などいろいろあると思いますが、この夢のある提案を大臣はどうお考えになるか、感想をちょっと伺って、質問を終わりたいと思います。
○森国務大臣 先般、参議院の予算委員会で民社党の伊藤さんから、そのような構想についてのお尋ねといいますか御提案もございました。一月四日の朝日新聞もすぐ取り寄せまして、今先生のおっしゃるとおり豪華客船の構想というのが出ておりました。海洋国家、ロマン、年金受給者が海上の慰安旅行ができる、いろいろな意味で多目的に、それぞれの目的が大変機能する、そういう意味では年金の船構想というのはおもしろいアイデアだなというふうに率直に申し上げることはできます。
この役なんですが、さて船をどう維持していくか、それから船員の問題、いろいろあるんですね。また委員長にしかられるかもしれませんが、かつてドルが余ってまして政府専用の飛行機があったらどうかという構想があって、ちょうど私が官房副長官をしておりました際に、飛行機を買い入れたらどうかという話で進めていったら、さあ乗組員をどうするのか、パイロットをどうするのか、所属はどうなるのか、今の日本では物すごく難しいのですね。そういうことを考えていきますと、アイデアとしては大変おもしろいのですが、これから後の維持をどうするかということはもちろん検討してみなければなりませんけれども、大変問題があるのではないか。
もう一つは、年金の積立金というのは、これは将来の年金受給者に充てられております財源でありますから、有利にまた安全に運用するということが基本的な原則でございますから、本当に組合員の福祉に役立つことがやはり本来の目的でなければならぬというふうに考えます。先生もお話しのとおり、他の年金よりも成績がいいということだけでありまして、現実には幾つかの問題があるわけですし、将来にも、いま御議論のとおり大変な問題も出ておったわけでございますから、そういうことを考えますと、構想として大変おもしろい、こういうふうに申し上げて、実現はやはり大変困難じゃないかな、こういう感想を申し上げるのが限界ではないかと思います。
○江田委員 最後に一言。政府の専用機とはやはり違うと思うのですね。広く大勢の人に乗っていただく、楽しんでいただくものですから。私は、政治というのは、そういう夢やロマンをどうやって実現するかに粉骨砕身するということがなければいけないので、お役人の頭ですぐ、これは財政的にピンチですからだめですよと言うのではなくて、そこはひとつお役人に大いに知恵を絞ってもらう、大いに苦労してもらうという姿勢を政治家は持たないと、これは国民に夢を与えることにならない、こういう気持ちがいたしますので、ひとつよろしくお願いいたします。
終わります。
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