1984/07/17 |
101 衆議院・社会労働委員会
男女雇用機会均等法案参考人質疑
○江田委員 参考人の皆さん方、きょうは本当にありがとうございます。お聞きのとおり今ベルが鳴りました。あれは本会議が始まるベルでございまして、もうほとんど時間がありませんので端的に伺いたいと思うのです。
男女の差別をなくしていこうという大目標、特に雇用の場において男女の差別をなくしていこうという目標自体について、きょうの参考人の皆さん方から反対の意見はなかったので本当にうれしいことだと思うのですね。私も生態系に反するとかいうお話を読んでみましたが、ああいう日本の純風美俗を害するんだという意見も一部にあるけれども、国会という場で国民の皆さんの意見を伺ってみようというときに、そういう意見が出てくるところまで国会のバラエティーが広いというわけではない。そういう意味ではある程度コンセンサスがあるわけで、これはよかったと思うのです。
田辺先生、高鳥さん、それから中島先生のお話はそれぞれよくわかりますし、角田さんの御意見も、一人の女性の生活からの意見としては十分わかるわけですが、喜多村さんの意見は大分違っておったので、喜多村さんに伺いたいと思うのです。
喜多村さんの意見は、私が誤解をしておったら恐縮ですが、世の中の変化に応じて企業というものは合理的に対応してきた、現に存在している世の中の秩序というのはそれなりに合理的なんであって、その世の中の秩序とか企業が大きく変わるわけにいかないんで、男女の差別というものも今の企業はそれほど差別があるとも思っていないわけだから、この程度のところで少しずつゆっくりとやらせてくれ、そういう意見だと理解をしたのです。そして同時に、余り大きく変化をすると伺ったのです。だけれども、今婦人差別撤廃条約を批准しなければならぬという、ある意味で言えば圧力かもしれませんが、大きな国際的世論の中に日本もいるわけですね。そういう婦人差別撤廃条約というものについて喜多村さんはどういうふうにお考えなのか。
これは、経済の活力というのもいろいろなとらえ方があるわけで、経営者的な経済の見方もあるでしょうが、同時に労働者側の経済の見方というものもある、あるいは社会一般には経済がどんどん大きくなって活性化していくのがいいという見方もあるけれども、必ずしもそればかりではない。公害のない世の中、みんながそう仕事仕事で追い回されずに、もうちょっとのんびりやっていきたいなという社会の要請もあるわけです。私はどうも、喜多村さんの御意見を聞いておったら、経営者の一つの意見、人を使う側の意見ということで、その意味で言えば、この婦人差別撤廃条約を批准しようという大きな世界の流れの中で考えるときに、余り客観性のある意見じゃないんじゃないだろうかという気がするのです。使われる側の立場というものもあるのですし。
それから、喜多村さんにぜひ経営者という立場をちょっと離れてみて、一人の社会人として、あるいはこれまでいろいろな社会的経験を積んでこられた人生の光雄として、男女の間のことというのは、特に雇用の面においてこのままでいいのか、それとも婦人差別撤発条約が言っているような方向もまた一つのあり方で、その方向で頑張らなきゃならぬというお気持ちなのか、この点だけを伺って、私の質問にかえさせてもらいます。
○喜多村参考人 いろいろな問題が含まれた御質問でございますので、ちょっと長くかかるかと思いますけれども、まず、差別があるとは思っていないというのは現状の話でありまして、この条約なりこの法律なりがねらっているところに照らすならば、明らかに今まで差別でないと思っていたことが差別ということになるわけです。ですから、そのためには、これから対応しなければならないというふうに私どもは考えております。
大きく変化すると混乱するというふうにおっしゃいましたけれども、実は私ども大きく変化すると混乱するとは考えておりませんで、急激に変化すると混乱する可能性があるということを申し上げているのです。そのために時間をかしてほしいということを再々申し上げているわけでありまして、恐らくは日本の社会は大きく変化していかなければならぬだろうと私なんかは考えております。一言で言いますと、縦社会が横社会になる可能性があるということですね。
それが、日本経済の活力とか成長率ということに対してどういう影響を与えるかということは今後の問題でありますので、今軽々にこれを簡単に申し上げるわけにいきませんけれども、とにかく、この条約を批准するということに対しては、私どもはやらなければならぬというふうに考えております。かつ、先ほども申し上げましたけれども、批准のために最低要件どういうことをしなければならぬかということは政府の御回答にございますので、現在御提案の政府案で十分に批准はできるというふうに私どもは考えております。それを飛び越えて、はるかに高い理想的な状況を当面すぐに求めなければならないというふうには私どもは考えておりません。
それから、活力という問題でございますけれども、産業界は、男であれ女であれ、それぞれの労働力を、それぞれの立場で、それぞれの特性に応じて生かしたい、活性化させたいということはもう従来から考えておるわけでありまして、そのために、もしこの法案ができなくても、やはり女性の地位の向上というものはぼつぼつ出てくるだろうと思うのです。ただ、社会的コンセンサスなりあるいは女子自身の就業形態、職業意識というものがやはり変わっていただかないと、総理府の調査でありますけれども、現在、一度勤めて家庭に入った方がいいというのが五五%ぐらいある、長く勤めたいというのが一七%ぐらいしかまだございませんので、そういう状況下において、企業側だけが急激に変われと言われてもちょっと困る、非常に混乱を起こすということになるわけであります。ただ、今の一七%とか五五%という数字は、事の本質から見ますと本当は余り意味はないと思うのです。といいますのは、個々人を見て扱えということでありますので、日本の企業は、女子が十人おれは九人か八人の状態でもって判断して全体を律してきたわけです。残る一人二人は割りを食っておったわけですね。それを生かせということになるわけでありますが、これをどういうふうにやって企業の中で管理していくか、これは今後いろいろな面で工夫を必要とすることではなかろうかと思います。
以上です。
○江田委員 どうもありがとうございました。
1984/07/17 |