1985/04/19 |
102 衆議院・文教委員会
国立学校設置法の一部を改正する法律案について
○江田委員 国立学校設置法の一部を改正する法律案ですが、もう大勢の同僚委員の皆さんからいろいろな角度から質問がありましたので、なるべくダブらないように多少角度を変えて質問をしてみたいと思います。
医学部附属看護学校を医療技術短期大学部に改組するということですね、これによって一体どういうメリットが出てくるのですかね。いろいろあると思うのですが、簡単にお聞かせください。
○宮地政府委員 短期大学に改組転換をすることのメリットはどういう点かというお尋ねでございますが、専修学校と比べますと、教育課程、教員組織、施設設備、図書等の基準が比較的高く定められているというようなこともございまして、充実した教育条件のもとで、医学、医療の進歩あるいは社会的要請の変化に対応できる医療技術者の養成が期待できるという点がございます。
それから、直接の事柄と言えるかどうかわかりませんが、短期大学でございますので、四年制大学との間での例えば教官の人事交流が可能となること、あるいは学生の編入学制度が出てくるというような事柄なども、短期大学とすることでいわば正規の学校として学校教育法一条の学校になるわけでございますから、そういう面での副次的な効果が出てまいるということが言えるかと思います。
○江田委員 なぜメリットを聞いたかといいますと、確かに医療技術短期大学部というものに改組転換をすることが時代の要請に合うという面もある。しかし、同時に、看護学校のままでも今、時代の要請に合うようにいろいろと教育の内容、方法などを充実させなければならぬ点があると思うのです。ですから、看護学校の方もひとつ大いに充実をさせていただく。しかし、同時に、もっと質的に高い教育施設として医療技術短期大学部をつくる、こういうことでなければいけないと思うのです。
さて、この提案理由によりますと、「近年における医学の進歩と医療技術の高度化、専門化に即応して、資質の高い看護婦及びリハビリテーション関係技術者を養成」するとあるわけですが、これはもうちょっと具体的に言うとどういうことなんですか。近年における医学の進歩と医療技術の高度化、専門化ということに対応する、それだけで今の医療をめぐる国民のニーズにこたえることができるというお考えなんでしょうか。
○宮地政府委員 具体的には、例えばリハビリテーション関係の技術者の需要の増大というようなことなどがあるわけでございます。それから、教育内容で申しますと、先ほどもちょっと御説明をしたわけでございますが、例えば御提案申し上げております鹿児島大学の医療技術短期大学について申せば、専門教育科目で心身医学、救急医学、老年医学というような科目を具体的に取り上げていくというようなことがございまして、一般的に申せば、短期大学にすることによりまして、基礎的な一般教育科目の充実とさらに専門科目についてより深めたもの、さらに近年の社会的な変化に対応するような学科目の構成というようなことで対応し得るということがあり得るわけでございます。
専修学校についても、時代の要請に対応する改革ということは考えなければならないことではないかという御指摘は、まさに先生御指摘のとおりかと思います。ただ、先ほども申しましたように、専修学校の場合の設置基準と短期大学の場合の設置基準とはおのずから異なる点がございまして、国立の施設で申しますと、短期大学に切りかえることによりまして教官組織の充実というようなことが具体的に図られるということなどがあるわけでございます。
○江田委員 ただいまの答弁は、それはそれでそうだと思いますが、しかし、一方で、近年における医学の進歩と医療技術の高度化、専門化の中で、実は、普通の庶民といいますか、悩みがある、あるいは不安がある。余りにも医療というものが高度化、専門化してきて、一体、人間を扱うということがどうなっているんだろう。病院に入りますと、検査検査でいろいろいじり回されて、本当に人間と人間との触れ合いといいますか、患者というのは体も悪いけれども、同時にいろいろな悩みを持って病院に入院もしたりあるいは通院もしたりする。一方で医療の方がどんどん技術化、高度化していく。その間を埋める、本当に人間を看護する、人間を病から救っていくというものが看護婦じゃないかという気がするんですね。したがって、「医学の進歩と医療技術の高度化、専門化に即応」という「即応」の意味なんですが、技術をどんどん進めることも大切ですが、同時に、これからの看護婦というのはもっと人間的な魅力といいますか、能力を養成していくとかそうしたことが大切で、これは看護学校にも同じように言えると思いますが、何かその辺のところが抜け落ちているのじゃないかという気がして仕方がないのですが、いかがでしょう。
○宮地政府委員 その点は、確かに医学そのものについてもまさに言われている点でございまして、医学教育自体についても、医の倫理の問題でございますとかそういうような観点をどのように今後重視をしていくかということが、単に医療技術の高度化ということだけではなくて、人格面においてといいますか、特に看護婦さんなんかの場合で言えば、患者に直接接する職種でございますので、そういう面ですぐれた資質を持つということが大変大切なことだということはもちろんあるわけでございます。したがって、医学教育についてもそうでございますが、この医療技術者の養成の場合においても、短期大学においては一般教育科目の重視というようなことで、哲学、倫理学、心理学というようなもの、あるいは専門教育科目での医学概論とかカウンセリングとかいうようなものを設けて特色を持たせていくということが考えられているわけでございますが、考え方の基礎に、基本的な点として、先生御指摘のような、単に技術の高度化だけを追っかけていくということではなくて、もう少し人格面を重視をするということが必要なことはもとよりでございまして、私どももそういう点をこれからのカリキュラム構成でも十分重視をしていくということは、積極的な対応をこれはそれぞれの大学でやっていただかなければならぬことでございまして、当然のことでございますし、そういう方面を重視してまいりたい、かように考えております。
○江田委員 大臣、政治家というのは病気をしたりしたらすぐに殺されてしまいますから、しないにこしたことはないんですが、入院をされたことがありますか。
○松永国務大臣 昭和二十六年ごろ、二週間ばかり入院したことがございます。
○江田委員 昭和二十六年というともう大分昔ですが、最近、入院でなくても人間ドックなんかでも同じだと思いますけれども、これだけ医学あるいは医療技術が進歩、高度化していって、その陰では何か機械と技術とのはざまに患者が置かれて、自分はどこにいるのだろうというような感じを持っているケースというのが非常に多い。あるいは死に直面した場合でも本当に機械だらけ、コードだらけで、人間が全部コードでつながれて死んでいくというような状況の中での看護婦の役割というのは、私は時代の変化に伴って今までと違った大変大きな役割が必要となっていると思いますが、こういう認識はいかがお思いですか。
○松永国務大臣 私自身はさようなわけで三十何年前に入院した経験があるだけですけれども、子供の入院あるいは親の入院等は私も経験をいたしました。したがいまして、お医者さんあるいは看護婦さんその他医療関係者の患者あるいは患者の親族等に対する接し方等は非常に大事だと思います。それだけに、お医者さんもそうでありますが、医療技術者、看護婦さん等は、単に技術を身につけているというだけではなくして、難しい言葉で言えば医療に関連する倫理観的なものをきちっと身につけて仕事をしていただく、また患者やその親族等に対する接し方、これも非常に大事なことではなかろうか、こう思うわけであります。
したがいまして、医療技術者を養成するのを今度専修学校から短期大学部に改組することにつきましては、その新しい短期大学部におきましては心理学とか倫理とかいった面の教育もして、そして、今先生が御指摘のような事柄についても関係者の適切な対応ができるような技術者に養成していきたい、こういう考え方があるわけでございます。
○江田委員 「資質の高い看護婦及びリハビリテーション関係技術者の養成」というのは一体どういうことかというのを今質問させていただいたわけですが、次に、近年の医学の進歩、医療技術の高度化、専門化だけではなくて、これは今さら改めて申し上げるまでもなく、高齢化社会、これから大変な速度でお年寄りがふえていくという時代になって、これもこの時代の変化に即応するといえば即応しなければならない非常に大きな課題だろうと思うのです。
そこで、先ほど老齢医学とちょっとおっしゃったと思うのですが、高齢化に即応していくために、看護婦さんの養成の中にももっと今まで以上に老人介護といったことを、寝たきりの老人あるいは老人性痴呆の方々に対する介護、こうしたことをしっかりと看護学校とか医療技術関係の教育課程でやっていくということが必要だと思いますが、いかがですか。
○宮地政府委員 基本的には御指摘のとおりかと思います。医学教育の改善につきましては、ただいま私ども医学教育の関係者にお集まりをいただきまして、特に質の高い医学教育ということで議論をいただいておるわけでございますけれども、医療技術者についても先生御指摘のようなことは当然考えられるわけでございます。そういう時代の変化というのは、老齢化問題等についても対応するということは当然含まれるわけでございまして、関係者でそういうような面を積極的に御議論をいただくように私どもはお願いをしたいと思うのでございます。
○江田委員 この老齢医学というのがどういうものであるのかを一遍私も勉強してみたいと思いますが、老齢医学も大事ですが、同時に、老齢看護学といったものが必要だと思うのですね。それから、高度な医療機械を操作するとか医療技術を駆使するとかいうことでなくて、例えば今の老齢看護学というようなものが仮にできていけば、こういうものは市民に一般に開かれていくということが必要だろうと思うのですね。短期大学の社会への開放は、せんだって、五十九年六月六日に出された大学設置審議会大学設置計画分科会の報告でも出ておりますが、この医療技術短期大学部のさまざまな講義も、ひとつ必要なあるいは妥当なものは市民大学とか公開講座とかというような形で、市民にオープンにしていくということもお考えになるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
○宮地政府委員 大学を市民に公開するという考え方、基本的にそういう施策を従来からも進めてきておるわけでございます。特に今お話しのような観点から、この医療技術短期大学等においても積極的にそれを考えるべきではないかという御指摘でございまして、既に幾つか、例えば具体例で申しますと、名古屋大学の医療技術短期大学部でも公開講座というような形で、「身近な医学」というような形で実際に実施をしているというようなことも伺っております。そういうようなことがより広く行われていきますように私どもも積極的に対応してまいりたい、かように考えております。
○江田委員 この鹿児島大学の場合を除いて、あと九大学国立の医学部附属看護学校があるというお話でしたね。そして、これらについては岡山大学の場合、徳島大学の場合に調査費がついているということですが、これはそういうような順番で次々と改組転換の計画を実施に移していこうという腹づもりだ、こういうふうに理解をしていいのですか。
○宮地政府委員 医療技術短期大学の設置については、先ほど来御説明をしておりますように、六十年度では御提案のものをお願いしておるわけでございますが、具体的な準備としては、さらに岡山大学、徳島大学についてそれぞれ設置準備調査あるいは設置調査というような形で事務的な経費を計上いたしておるわけでございます。これらについては、大変財政状況も厳しい中でございますけれども、私どもとしては準備状況を見ながらそれぞれ今後の六十一年度以降対応してまいりたい、かように考えております。
○江田委員 この地元の関係の者はそれぞれ皆心待ちにしていると思いますが、とりわけ、六十七年のピーク時を迎えるに当たって六十一年から計画的に七年間で整備をしていこうというような報告がなされておるわけですから、今回はしばらく飛んで一つまたということになっておりますが、ぜひひとつどんどん改組転換をするという方向に向けて最大限努力をしていただきたいと思いますが、大臣、どうですか。
○松永国務大臣 そういう方向で努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
○江田委員 終わります。
1985/04/19 |