1985/04/24 |
102 衆議院・文教委員会
臨時教育審議会における審議の概要に関する問題について
○江田委員 社会民主連合の江田五月と申します。随分長時間御苦労さまですが、私に与えられております時間はまことに短うございますので、どうぞお許しを願いたいと思います。
臨時教育審議会設置法を国会で随分いろいろ議論をしまして、これは内閣委員会にかかっておったのですが、我々の文教委員会も関係しておるものですから、議論に一部加えさせていただいたりして議論してきたわけです。どういうつもりで国会が臨教審というものを設置をしたか、どういうことを期待しているか、どういうことを危惧したかということは、これは委員の皆さん、会長さん、会長代理さんなどに伝わっておるのでしょうか。
○岡本参考人 そのいきさつにつきましては事務局からもよく聞いておりますし、私自身は議事録も拝読いたしまして、その趣旨については十分納得して、承知しておると思っております。
○江田委員 私どもの場合には、今教育が大変な事態になってきている、これで一体二十一世紀を担う国民が本当に育っていくのだろうかという危惧を感じ、しかし、この臨時教育審議会の皆さんに教育をどうするかということを全面的に白紙委任でゆだねてしまうということではなくて、ひとつ国民的に大いに議論をしていこうじゃないか、国民がみんなで議論をし、この際思い切って今のさまざまな問題について深い検討をして、メスを深く入れて、国民の議論の大きな渦の中心にもし臨教審というものがあって、そして、その渦を起こしながら何時に議論の渦を集約していって一つの方向を見出していただけるというならば、それはそれで意味があると思います。いろいろ最初の法案を修正もし、こういうことでスタートをしていただこうということを了解をしておったわけです。今までの会長のお答えあるいはこれまでの議論を伺っておりますと、自由化の問題にしても、賛否を含みながらかなり国民的に議論を起こした、騒然たる議論になってきたことはそれなりに私は評価をしております。これからますます議論を起こしながら、同時に、いろいろな議論を聞いていくという態度で審議をお進めいただきたいと思うのですが、その点はよろしいでしょうね、確認をしておきたいと思います。
○岡本参考人 仰せのように、私どもは政府から、国民とともによく声を聞いて教育の審議をせよということを委託されたと思っておりまして、その点、委託にこたえるように十分努力してまいりたいと思っております。
○江田委員 きょうこの「審議経過の概要(その2)」を発表してくださいまして、ここまでに至った御努力に敬意を表するわけです。これは国民に対する今の教育についての重大な問題提起だと思うのですね。ここで問題提起をされたことについてこれからさらに一層国民的な議論を起こさなければならぬ、大いにそれを聞いていかなければならぬ、こういう過程が待っているわけですね。それなのに、なぜ第一次答申は六月というふうに、これから意見を起こしていき、そしてこれを聞いていく経過を限定されてしまうのでしょうか。
○岡本参考人 予算というものに関係のあるものもあるということも最初は考えたりいたしまして、まず六月というようなことを考えておりましたが、仰せのように、これを出しました後は十分意見を聞かなければならぬということで公聴会も計画しておりますし、これからこの「概要」を各方面へ送りますときに、その上書きと申しますか、そういうものに忌憚のない御意見をいただきたいということを申して、これは二カ月でございますけれども、できるだけ真剣に審議して一次答申にしたい、そういうようなことを考えております。
○江田委員 まあ政治が絡むとどうも小田原評定がありまして、第一次答申が六月というのも、その背景をあれやこれや取りざたされるわけですが、いやしくも一部の政治家の政治的思惑に迎合するような形で答申するということがあってはいけない。そういうことは決してないようにしていただかなければ困ると思うのです。
いろいろな意見を聞いていくというわけですが、公聴会なども大いに結構です。今回のこの「審議経過の概要」でも随分たくさんの団体にヒアリングを行っていらっしゃいますが、それももちろん結構なんです。しかし、さまざまな団体、市町村長会や都道府県知事会や何とか学校長会や何とか会というようなものの意見を集約する過程で、実は少数意見といいますか、小さな声、小さな悲鳴、こういうものが随分落ちてきたのじゃないか、こういう形の意見の集約というのは実は壮大なる少数意見無視の体系じゃないかという気が、そう言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、するのです。今の日本の教育というのは、表通りのところで見えない、裏通りの陰の方でしくしく泣いている子供たちの声にそっと優しく声をかけていくという姿勢がなければ救えないんだという気がして仕方がないのです。いろいろな小さな実験というのがいっぱいあるのです、小学校にも中学校にも幼稚園にも。したがってこれからは、国民の大きな声、大多数の声を聞くということもいいのですが、そうでなくて、そういう本当に小さな実験、小さな悲鳴を聞こうというお気持ちを持っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○岡本参考人 ヒアリングでああいう団体の声を聞いたりということにつきましては、やはり仰せのようなことがあると思いますので、そういう欠も補うために、直接いろいろなメディアを通じて手紙を下さいということを申しまして、そういうものを大変たくさんいただいております。それを尊重して、整理などいたして審議に生かすように努力はいたしております。
○江田委員 具体的にそういうところを一つ一つ聞いていきたいところなんですが、時間がなくてそれができません。
ところで、いろいろな意見を聞くということの続きですが、臨教審に対抗するというか向こうを張るというか、そういう形で幾つかの審議の機関ができているのですね、臨教審に比べたらまことに力はないのかもしれませんが。教育改革研究委員会ですか、これは日教組の皆さんを中心におつくりになっている。教育問題研究会、都留重大先生を中心におつくりになっている。あるいは女性による民間教育審議会、これは俵萌子さんなどを中心におつくりになっている。臨教審の向こうを張ってつくられた機関だからというので、余り気持ちがよくないかもしらぬけれども、そこは意地を張らず、いろいろなところでいろいろな議論が起こっているので、臨教審という広い立場でこういう議論も吸収していこう、こういう皆さんからの意見も大いに参考にしていこうというお考えはありませんか。
○岡本参考人 今おっしゃいましたようないろいろな教育に関心を持った団体が審議にいそしんでおられることもよく存じておりますし、何かその後見解をおまとめになって提出していただいたりなにかすることもあると思っておりますが、特にその方たちとどうというようなことは考えておりません。大変多くの団体がございまして、今まででも慎重にその御意見を聞いてまいりましたので、やはりそういう方の声も尊重しながら聞きたい、そういうふうに思っております。
○江田委員 いろいろな声を聞くもう一つのものは、やはり国会だと思うのです。先ほども池田委員が尋ねておられましたが、実は国会の中にいろいろな意見が集約をされておる。国会というのが果たしてどの程度機能するのかということについてはいろいろな議論がありますが、しかし、ここにいろいろな議論が集約されていることは間違いがないのです。
そこで、国会といいますと、教育の問題ですと文教委員会ですが、国政調査権があるからもし来いと言えば行きますということだけでなくて、ひとつ国会の衆参の文教委員といろいろ意見を交換してみよう、そのことを臨教審としては希望するというようなことになってしかるべきじゃないのかという気がするのですね。それも、こういう参考人質疑で質問をし、片や答えるだけというのじゃない」――先ほども石川さんが何か発言されたいのにできないというようなことがあったり、岡本会長が質問してはならぬのですかというようなことがあったりで、なかなか形式がややこしいですが。そういう形式を一度取り払って、臨教審の皆さんと文教委員の我々とがお茶とお菓子でも食べながらざっくばらんに教育のいろいろな議論をしてみる、そういうことを臨教審としてはぜひお願いしたいという積極性があってしかるべきだ。教育についての議論を本当に国民的に起こしていって、そしてそれを吸い上げていく、聞いていきたいと思うならば、そんな意見が出ないのが不思議だという気がするのですが、いかがですか。
○岡本参考人 きょうは大変有益な御意見を聞かせていただきまして、私としましてはいろいろ得るところがございましたので、本当に有益だったと思って感謝いたしておりますが、何分、私初めての経験でございますので――進んで出てこいというよりも、最前申しましたように、実際上は、文教委員会が結束して出ろとおっしゃれば、これはやむを得ないというのが本当のところでございます。これは、大変有益なお話がお聞きできたのですから、またいろいろな機会を計画されて、そういうときにひとつ出てこいというようなことであれば、またお話を聞かせていただきたい、そんなことを思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○江田委員 文教委員会が出てこいと言うならじゃなくて、臨教審の方に衆議院の文教委員会が出てこいぐらいのことを言っていただければ、喜んで出ていくと思うのです。
そのほか、例えば第一部会の要旨の中では「明治、大正、昭和の日本の追いつき型近代化は、成功のうちにその百余年の歴史的役割を終えた。」成功のうちにといったって、それでは、第二次大戦はどうなったのかとか、あるいは第一部会の合宿の中では、二十一世紀の日本人に必要な能力として相変わらず先頭に立つ能力とかなんとか、何か貿易摩擦をますます進めるような議論が依然として行われておって、議論をしていきたいことは山ほどあるのですが、もう時間になりましたので終わります。どうぞ我々の意見も大いに聞いてください。よろしくお願いします。
1985/04/24 |