1985/05/30

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102 外務委員会,文教委員会連合審査会

女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の締結について


○江田委員 予定の時間が多少ずれ込んでおりまして、参議院の方で文部大臣を呼ばれているそうですから、文部大臣にはまた文教委員会でゆっくりと御高説を伺うことにいたしまして、どうぞ参議院の方にお出かけください。

 そこで、外務大臣の方しか残っておらないので外務大臣に伺いますが、この条約は漸進性を持っているのだからというわけですが、漸進性ということはどういうことなのか、説明してくれますか。

○斉藤(邦)政府委員 この条約は、究極的には条約第一条に定義されております「女子に対する差別」を撤廃することを目的としております。しかしながら、この条約が対象としております事項は、社会状況の変化や進歩、人間の意識と深い関係を持っておりますので、条約の目的を直ちに一〇〇%実現するということは実際上困難がございます。したがいまして、この条約自体も、男女平等の達成には相当長期的なプロセスが必要であると認めている規定がございます。この点は、条約の審議経緯等に合わせても明らかでございます。したがいまして、条約批准時にこの条約の規定しておりますすべての規定を一〇〇%満足していることが必要ということではなくて、それぞれの締約国が自国の状況に応じまして、この条約の目的を相当程度の実効性を持って確保できる措置をとっていれば、この条約の批准時における義務を果たしたという意味におきまして、漸進性が認められているということを御説明している次第でございます。

○江田委員 つまり、現実の世の中の今の姿と、この条約がこういうふうにならなければいけませんよと言っていることとが開きがある、だけれども、この条約というのは啓蒙的な目標を持った条約なんで、そっちの方向に行こうとみんなが努力をする、その一歩が踏み出されておれば条約の批准はできるということですね。しかし、一歩踏み出した、しかしそこでとまってしまったら、それは漸進性を満たしていると言えるのですか。やはり少しずつ前へ進んでいないと、漸進性を満たしていると言えないのじゃないですか。

○斉藤(邦)政府委員 我々としては、その方向に向かって一歩を踏み出したということだけでは不十分だと考えておりまして、何がこの漸進性のもとで認められる適当な措置かということは、各締約国政府が具体的状況の中で自主的に判断する次第でございますけれども、それぞれの事情のもとにおいて最大限の努力をして、相当程度の実効性を持って条約を実施できるような措置をとらなければいけないというふうに考えております。

○江田委員 そこで、教育の場面でのこの条約の条件整備のことですが、この十条(b)項に「同一の教育課程、同一の試験、同一の水準の資格を有する」云々とあるわけですが、この「同、」ということですね。今の日本の教育の現状ではなくて、この条約が教育というのはこうなければならないよと理想としておる、予定しておる「同、」ということは、どういうことですか。

○斉藤(邦)政府委員 「同、」ということは、全く同じということでございます。十条で言っておりますのは、全く同じ教育課程を享受する機会を男女平等に与えろということでございます。

○江田委員 そこで、今はそうなっていない、特に家庭科がそうなっていないというわけてす。高等学校の家庭科はそうなっていないことが明らかですが、中学の「技術・家庭」はいかがですか。

○高石政府委員 中学校の技術・家庭科についても、改善をしていかなければならないと思っております。

○江田委員 外務省の方は、中学の「技術・家庭」についてはどういう認識ですか。

○山田(中)政府委員 お答え申し上げます。
 今文部省の方から御答弁ございましたが、外務省といたしましては、現行の中学校の家庭科の扱いにつきましても、女子に対し技術や体育の授業を受ける機会を必ずしも平等に与えておらないので、全般的な見直しの中で、先般報告書で同一の課程にするという決定がされておりますので、その方向で実施されるものと思っております。

○江田委員 中学の現在の「技術・家庭」の履修の状況は、「同一の教育課程」とは言えないというわけですね。

 そこで、これを改める方向に一歩踏み出したという御認識をお持ちのようですが、この家庭科教育に関する検討会議の報告は、現行の「高等学校の「家庭一般」の履修の在り方」はいけない、しかし「それとの関連で中学校の「技術・家庭」の在り方を考える」と言っているだけであって、高等学校のあり方を変えるときにそこへつながる中学の「技術・家庭」を考えようというだけであって、この条約の目指すものと中学の「技術・家庭」のあり方との間に開きがあるから、どうかしようというふうには言っていないのじゃないですか。どこでそういうことが読み取れるわけですか。

○高石政府委員 高等学校の「家庭一般」につきましては、明らかに女子のみ必修で、男子は選択である。したがって、「同一の教育課程」が保障されていないということになります。

 中学校の場合には、技術・家庭科として選択の領域を、男子は技術系五つの領域、女子は家庭系五つの領域、そして男子は家庭系の中から一領域を含む七領域の履修ということで、いわば履修の形態としては同じような仕掛けになっているけれども、選ぶ材料が限定されている。したがって、必修、選択というようなことではなくて、材料選択の幅が偏っているということで、これを平等にしていくということは必要であろうと思っております。

○江田委員 何かいろいろおっしゃいますが、七つの領域があって、女子はこっちの領域、男子はこっちの領域、間にちょっと共通領域があるというのが「同一」でないことは明らかなんですね。一歩踏み出したと言うならば、やはり中学についてもきちんとした踏み出し方をしなければおかしいんじゃないか。外務省の方は、一体この報告のどこで一歩踏み出したということを読み取っておられるわけですか。

○斉藤(邦)政府委員 「今後の家庭科教育の在り方について」の最後のページの3のところの表現、これをもちまして文部省としての方針が打ち出されたと了解しております。

○江田委員 これでこの条約の批准に向けての国内整備のための第一歩が踏み出されたという理解をするのは、外務省として随分甘いんではないかと思います。この三項は、これは中学の方も一層の充実を図ることが必要なんだということを書いてあるだけなんじゃないかと思うのですがね。

 時間が参りましたが、外務大臣、教育についての男女の平等ということについて、最後にひとつ御所見を伺って質問を終わります。

○安倍国務大臣 教育につきましては、男女共学といった理念もありますし、教育基本法その他によりまして日本の教育も男女の差別というものについては基本的にはあり得ない、そういう方向で進んでおると思いますが、ただ、条約に加盟する、条約を締結するという中で、条約の精神に従ってやらなければならない問題点があるということで、これまで努力をしまして条件を整えたということでございます。

 これから、今御指摘があったような問題につきまして、この条約を締結した以上は、条約の趣旨を誠実に守っていくというのは、日本政府の国際的な責任として生まれてくるわけでございますし、これに対する国際的な監視というものも行われるわけでございますから、政府としてこれから積極的にこの精神を実行していくということでなければならないと思います。

○江田委員 終わります。


1985/05/30

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