1985/06/05 |
102 衆議院・文教委員会
○江田委員 岐阜県の学校で起こった二つの大変に悲劇的な事件を例にとられた簑輪委員の今の、人の肺腑をえぐるような質問がありましたが、確かに学校現場が大変に荒廃をしておる。学校だけではなくて社会全体もどうもとげとげしい世の中になってきているような気がします。
文部大臣は、この事件の正確な把握というのを、どうも裁判記録をしっかりと精査をすると正確な把握ができるかのように御答弁をされましたが、やはり教育の問題ですから、事件の正確な把握もまた司法と別の観点からの把握というものが必要なんだと思いますが、そういう世の中の今のとげとげしい状態の中で、しかし、何とかとげを抜いていかなければならぬ、もっと本当に心の通う学校にしなければならぬし、社会にしていかなければならぬということが大切だと思います。それのためにいろいろなやることがあると思いますが、私はひとつここで具体的なことを尋ねてみたいと思います。
御承知と思いますが、私たちの国会議員の有志で鳥類保護議員懇話会というのをつくっておりまして、この懇話会がついせんだって総会をもちまして、その席で「義務教育課程において野生鳥獣の科学的知識、鳥獣保護、自然保護の教育を積極的に組入れることについて」という一つの決議をしております。
今、児童が自然を愛し、豊かな心を持つため、日常生活の中で自然と触れ合う機会、特に教育面で野生鳥獣について正しい科学的知識を持ったり、野生鳥獣を通して生物愛護の必要性を学んだり、自然の仕組みやその大切さを知ることが非常に重要。確かに、例えばバードウオッチングであるとか、あるいは野生の鳥のサンクチュアリーであるとか、いろいろなことがこの世の中に芽生えてきておるわけですが、学校教育の中でどうもそうした鳥獣保護、自然保護が十分に扱われていないのではないか、そういう指摘があるのですが、大臣どういうふうにお考えになりますか。まず、総論を伺います。
○松永国務大臣 教育基本法に人格の完成が教育の目標と、こう書いてあるわけでありますけれども、私は、その人格の完成の中には、弱いものとかあるいは鳥類とかそういったものをかわいがるとか、いたわるとか、そういう心をきちっと持っているということも、人格の完成の中の大変大事な分野だと思うのです。そういう心というものは、これは小さい段階から、弱いものあるいは鳥類等動物類についてでございますけれども、やはりかわいがる、大事にする、愛する、そういったことを身につけさせる教育というものが必要であろう。私は、そういう心というものは、むしろもう学校教育の前の段階から身につけさせなければならぬ問題だというふうに思うわけでありますが、学校教育の場におきましても、自然保護とかあるいは動物愛護とか、そういった心を育てる教育というのは非常に大事なことだというふうに認識をしているわけでございます。
○江田委員 今、義務教育の教科書でどの程度、この鳥類、特に野鳥とかあるいは自然保護というようなものが取り扱われておるかをお答えください。
○高石政府委員 学校教育の場では、社会科、理科及び道徳、こういう教科で、自然保護、動物愛護、鳥類保護、そういうことを含めた教育を行っているわけであります。
例えば社会科では、小学校五年の段階で環境の保全や資源の有効利用ということで自然環境の保全の必要性、それから中学校の段階においてもそういう内容をもっと深めた学習。それから理科では、小学校の段階では、低学年の段階では小鳥を含めた動物の飼育や観察、植物の栽培、中学校の段階では自然と人間とのかかわりについての学習、そしてこれを通じて動植物についての理解、そして生命の尊重、こういうことを教えております。また道徳では、小学校の指導目標の一つに、自然を愛護し、優しい心で動物や植物に親しむということを示しておりますし、中学校においても自然を愛する豊かな心を持つことを示しているわけでございまして、いろいろな教科を通じ、また教科以外の特別活動を通じましても、自然との関係、そして鳥類、動植物に対する愛護、そういうことをかなりやっていると思っております。
○江田委員 かなりやっているという御見解のようですが、ここに一つの調べがありまして、小学校の六年間に鳥に関する情報が載っかっているページ、これを分子として、全部の理科の教科書のページ数を分母としてパーセントを出すと、つまり全部の教科書のページ数のうち鳥が載っかっているページは〇・五%しかないという調査がありますが、しかも、その鳥が載っかっている場合にも、飼っている鳥に関するものは比較的あるんだが、野鳥、自然の中で自然の生命として存在をしている鳥についての情報というものが非常に少ないという、そういう指摘がある。〇・五%が多いか少ないか、どうもほかの比較の対象が難しいですから何とも言えませんが、やはりもっとこの自然保護というものを学校教育の中で大切にしていただきたいとお願いをしたいと思いますが、いがですか。
○高石政府委員 基本的に自然とのかかわり合い、そして鳥類、動植物に対するそういう教育をやるということは非常に重要でありますし、特定の理科という教材の中では今御指摘のとおりでございますけれども、先ほど申し上げましたような教科を通じてやっておりますし、なお、そういう点の自然との触れ合い教室、自然教室、そういうものの中でも大いにやっていかなければならないというふうに思っております。
○江田委員 時間が余りありませんので次に移りますが、先般、著作権法を改正をしまして、コンピュータープログラムも著作権の成立する対象になるということで所要の規定の整備をしたのですが、その際、ひっかかりながらどうも質問ができませんでしたのですが、公務員が職務上作成した著作物は、これは著作権はだれに帰属するわけですか。
○加戸政府委員 著作権法第十五条で法人著作の規定を設けておりまして、法人等の発意に基づきその業務に従事する者が職務上作成する著作物の著作者はその法人等とするという規定がございまして、例えば国家公務員の場合、その仕事として著作物をつくれば、今の要件に該当する場合には国が著作者であり著作権者になるという考え方でございます。
○江田委員 大学の先生、これは研究するのが職務ですね。その研究の結果コンピュータープログラムを開発した、これはどうなるわけですか。
○加戸政府委員 ただいまの、職務上作成する著作物と申し上げました場合に、まさにそのプログラムをつくることが大学の教官の職務である場合には国が著作者であり著作権者の地位に立ちますけれども、大学の教官は当然研究をいたします。研究は職務でございますけれども、その研究の成果として得られたプログラムである場合には、当該教官が著作者であり著作権者である場合が多かろうと思います。と申しますのは、例えば大学の教授が講義をする、その講義をすることは職務でございますけれども、その講義をするために作成をする講義案というものは当該教官の著作物であって国の著作物ではない、同様な考え方が類推適用できるだろうと思います。
○江田委員 そうすると、そういうコンピュータープログラムをつくることを職務としている者でない一般の研究者が、大学の文部教官、国立大学ですと文部教官として研究の成果としてつくられたプログラムについては、それを例えば民間に回してそちらの方で大いに活用していただく、さらにその対価を得るということがあっても、それは構わないということになりますか。
○加戸政府委員 著作権法の建前からいたしますれば、先生おっしゃるとおりでございます。ただ、実際に開発するに当たりましては、自分の勤務時間中に職場で、例えばコンピューター等を操作しながらつくられる場合が多うございますから、そのことによって大いに稼ぐということにつきますと、公務員としての立場でいかがかという問題はあろうかと思います。法律上、著作権法上は先生のおっしゃるとおりでございます。
○江田委員 そういうコンピュータープログラムも今の大学の中で随分日常的に見ることができるようになっていると思うのですが、これは今度また文部省に戻りますが、今国立大学でコンピューター関係の研究施設、教育施設、設備ではありません、施設はどういうものがあって、かつどのくらいの数あるのでしょうか。
○大崎政府委員 主なものを申し上げますと、大型計算機センターということで全国共同利用の計算機センターが七大学に設置をされております。また、学内共同の施設といたしまして総合情報処理センターあるいは学術情報処理センターという名称で五大学に設置をされております。それから、やや規模の小さいもので情報処理センターというような名前で同じく二十二大学、それから、情報処理教育センターということで、専ら学生の教育上のためのものとして十大学、あとデータステーションという形で四十七大学、これは国立についての数字でございますが、概況そのようになっております。
○江田委員 今大きいものでは大型計算機センター、それから総合情報処理センター、情報処理センター、さらに情報処理教育センター、これは文部省で言えばそれぞれどういう部局の所掌になっておりますか。
○大崎政府委員 ただいま学術国際局の学術情報課というところで所管をしておりますが、ただし情報処理教育センターにつきましては高等教育局の技術教育課というところで所掌をしております。ただ、現在の方針といたしましては、教育機能というものもむしろ同じセンターで処理した方がいいのではないかという方向で整理を進めておるところでございます。
○江田委員 その所掌の局が違うのはなぜかということを伺おうと思ったのですが、今までの経過がそうなっておって、これから何とかそれを整理していきたいということで伺っていいのですか。
○大崎政府委員 これは経緯、主として経緯上の理由でございますが、当初情報処理教育の必要性というのが非常に叫ばれた時代に、まず教育目的のセンターをつくるということが若干先行した気味があるわけでございますが、その後総合的な形で整備するということで、漸次そちらの方に方向を転換させていただいたというのが理由でございます。
○江田委員 大型計算機センター、これはだれが使えるのですか。
○大崎政府委員 これは全国共同利用のためのものでございますが、現実には個々の大学と結びまして、個々の大学からアクセスを可能なようにする、その大学数をできるだけふやしていこうということで努力をしておるところでございます。したがいまして、全国とは申しますが、七大学というのはおのずから地域の中心になるような大学に置いてございますので、その地域を中心とした諸大学とのネットワークを第一次的には形成したい。ただ、将来はそれを全体として統合したようなネットに持っていきたいという計画は持っておるわけでございます。
○江田委員 国立大学からはアクセスできる、その他の研究機関、教育機関、私立大学にしても公立大学にしてもあるいは民間からはアクセスはできないのですか。
○大崎政府委員 私立大学、公立大学につきましてもこれはアクセスが可能でございます。もちろん個々の大学で現在結んでおるものとおらないものとございますが、原則的には可能でございます。
それから、民間との問題につきましては、これは私どもで学術情報システムということを構想いたしておりまして、まず大学内部での学術情報のシステムを完成するというのが第一段階ではないか、そして、それがある程度形をとりました時点で民間との交流というのは次の課題にさせていただきたいということで、現在では原則として行っておりません。
○江田委員 大型計算機センター以外の今の総合情報処理センターとかあるいは情報処理教育センターとか、こういうものに対するアクセス、これはどうなんですか。
○大崎政府委員 総合情報処理センター等につきましては、学内共同でございますので、原則学内の研究者がそれを使用するということになっております。ただ、筑波大学だけは、これはデータベースサービスの試行等をやっておるという関係で、一部学外の研究者等の利用にも供しておるという状況がございます。
○江田委員 そういうふうに、全国共同利用の大型計算機センターを除いて、その他のセンターについては、学内の施設であるということで他の大学あるいは他の研究機関あるいは民間はアクセスできないということになっていもわけです。しかし、これは技術上は何ら差し支えない、できるわけですね。専ら制度上の、制度の設置目的ということでそういう制限をつけているだけであって、技術的には大いにひとつネットワークを結んでいくということは可能なんじゃありませんか。
○大崎政府委員 技術的には可能であろうと存じますが、ただいまの段階では、むしろ他大学へのサービスは大型計算機センターが直接行うという形で整備を進めておる状況でございます。
○江田委員 しかし、大型計算機センターは旧帝大にあるので、旧帝大にあればそれで全部賄えるじゃないかという、もしそういうお考えだとすれば、それは大変な思い違いじゃないでしょうか。そうではなくて、むしろ旧帝大以外に地方の大学もそれぞれに特殊な専門性を持って、どこの大学にもそれぞれのいいところがある、すばらしい点があるという方向にこれからの大学を持っていかなければいけないので、だから、旧帝大のものだけが全国共同利用になっているからそれでよろしいのだ、どこか地方の駅弁大学に少々情報があったって、そんなものは全国どこにも利用できなくても構わぬのだというお考えだとすると、これは大変な時代錯誤だと思いますが、いかがですか。
○大崎政府委員 大型計算機センターの利用につきましては、各大学を通じまして大体千四、五百ないし六千程度の利用者が、これは広く国公私立大学、短大、高専等にわたってあるわけでございまして、そういう意味でそれぞれの大学へのサービス網は確保しつつあるわけでございます。ただ、さらにきめの細かいサービスとして、そういう総合情報処理センター的なものについても近隣の研究者等に開放するかどうかという点につきましては、これは、その大学の情報処理センターの利用の状況、つまり学内だけでいっぱいだというような状況がどうかということともかかわろうかと思います。いずれにせよ、各大学間の交流強化という観点から、全体の情報システムの問題として今後考えてまいりたいと思っております。
○江田委員 何か非常におかしなことがあって、私ついせんだって岡山大学の総合情報処理センターを見学に行ってきたのですが、そこで話を聞いてみますと、例えば岡大の人が東京に学会に出てくる、そしてちょっと一つデータが欲しいのだということで、東大の大型計算機センターへ行って、そこから岡大のコンピューターを使って岡大にあるデータを検索するということは可能だ。しかし、東大の人が岡山で開かれた学会に行って同じことをやろうと思って岡大へ飛び込んでも、それはできない。何でそんなことになるのか、まるっきり理解に苦しむ制約があるというのですね。広島と岡山との間の大学間のプログラムも全然接続ができていないとか、そういう妙な縄張り風の制限はやめて、ひとつ大いに全国のコンピューター、せっかくこれだけ整ってきているわけですから、随分のお金をかけて大変すばらしいハードを入れているわけですから、これをもっと最大限利用できるようなシステムにしなければ、これは税金のむだ遣いというだけではなくて、これから大学が社会に開かれていかなければならぬとか、学際領域の研究などもどんどん必要なんだというようなことを考えるならば、当然取り組まなければならぬ課題だと思いますが、文部大臣、余り細かなことは結構ですから、まず私の質問についての感想を伺って、それからあと実務的にこれからどうされるかを伺って質問を終わります。
○松永国務大臣 全国的な学術情報システムを整備することは大事なことでありまして、今先生御指摘のように、いろいろな大学で相互に活用できるようなシステムにすることが望ましいと思います。
○大崎政府委員 先ほど申し上げましたように、学術情報システムを完成させますためには、学術情報センターといういわば中央に全体の調整をする組織がどうしても要るのではないかということで、ようやく東京大学内部に東京大学の文献情報センターという形で全国共同のセンターをつくってそのための準備作業を開始した時点でございますが、考え方といたしましては、そのセンターができますれば、むしろその中央センターは大型計算機センターとも結ぶと同時に総合情報処理センターとも直結するというような形で、総合情報処理センターの機能をさらに活性化するという方向で努力したいと思っております。いずれにせよ、今後全体の情報システムを考え、整備していく過程で、ただいまの御趣旨も体して努力してまいりたいと思います。
○江田委員 終わります。
1985/06/05 |