1985/06/14

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102 衆議院・文教委員会

家庭科共学必修について
いじめについて


○江田委員 女子差別撤廃条約がやっと間もなく批准という運びになりまして、いよいよ男女平等新時代ということになろうかと思います。

 私は、前々からこの委員会で中学校と高等学校の家庭科の勉強の仕方についてこだわってきておるのですが、外務省の皆さんにお伺いすると、高等学校の家庭一般の履修の方法のみならず、中学の技術・家庭の履修の方法も今のこの女子差別撤廃条約が予定しているような同一課程の教育ということになっていないというお答えで、文部省の方は、高等学校の方はそうだけれども、中学の方は必ずしもそうでない、しかし高校の教育課程を改めるに伴って中学の方も改めなければならぬというお考えのようです。いずれにしても一歩踏み出たところで女子差別撤廃条約は批准になる。家庭科問題に取り組んできておる者からいうと、何か、汽車は出ていく煙は残る、煙は一体どうなってしまうのかなという不安があるわけです。

 この条約は漸進性を持っているんだ、少しずつ前へ向かって進んでいくんだ、条約の目標としているところに一歩一歩近づいていく、そういう性格を持った条約だということです。
 さてそこで、外務省に伺うのですが、批准後、その漸進性を担保するといいますか、一歩一歩前へ進んで行くということを確保するために、外務省はどういうことをお考えになっていらっしゃいますか。

○瀬崎説明員 お答え申し上げます。
 この条約の十八条によりますと、批准した国がとります措置、立法上、司法上、行政上その他の措置、この措置を国連に置きます委員会に報告することになっております。まず一年以内に、その後は四年ごとに当該国がとります措置につきまして報告することになっておるわけでございます。この取りまとめはかなり広範囲な各省庁にわたるわけでございますが、外務省が中心になりまして取りまとめるわけでございます。こういった見地から、外務省といたしましては、この条約が誠実に履行されるようきちんとフォローいたしまして報告書を取りまとめたいと考えておるわけでございますけれども、こういった条約の制度上からも、条約をきちんと監視していくということは外務省に課された任務かと、かように考えておるところでございます。

○江田委員 その外務省の任務を遂行していくために特別な機構か何かをおつくりになるのですか。例えば今女子差別撤廃条約批准準備室ですかがありますが、これはこれからどうなっていくのですか。

○瀬崎説明員 先生御指摘の準備室には現在五名の職員が働いているわけでございます。この五名が約一年間にわたりまして、この条約の批准のために、関係省庁と協議したりいろいろな書類をつくりまして広報措置に当たる等、かなり広範な仕事をやってきたわけでございます。幸いこの条約の批准のめどもほぼつきかけているということでございまして、これからまだ参議院の方で御審議いただくわけでございますが、私どもといたしましては、この五名につきましては一応それぞれもとの課に戻すということで、特別の機構というのは考えておりません。

 ただ、条約上諸般の措置を講ずる必要があるわけでございまして、これにつきましては、一応国際連合局内の社会協力課におきまして条約の実施をきちんとフォローしていくということを考えておるわけでございます。

○江田委員 そうすると、この中学及び高校の家庭科の履修についての改善は、今のペースだと一年後に国連にいい報告ができるというようなことにはちょっとならないようですが、それから四年後ですから五年後ぐらいにはいい報告ができるように外務省としてはこれを監視していくということのようですね。

 今度は文部省に伺いますが、中学の技術・家庭がこの条約に抵触するかしないかがどうもはっきりしなくて、技術・家庭という一つの科目の中の中身だからどういう材料でその科目を構成するかということである、その科目自体は男の子も女の子も学ぶんだからいいんだ、そんなような説明ですが、しかし、学ぶ子供の方からすれば、男の子は技術領域を中心として、女の子は家庭領域を中心として、こうなって、やはり男女で学ぶ中身が違うということははっきりしておる。男の子はこう、女の子はこうというふうに違うというのはこの条約に違反をする、素直に考えれば当然そうなると思うのですが、そこのところをもう一度説明していただけませんか。

○高石政府委員 高等学校と中学校の基本的な違いは、まず高等学校は一般家庭については女子のみ必修、男性は選択ができるというような形になっていますから、これは明らかに違うわけでございます。中学校の場合は、技術・家庭科を必要な単位修得させるというその前提は男女とも同じである、ただ、技術・家庭科の中で幾つかの領域がありますが、その中で、家庭科に類するような領域から幾つ選びなさい、それから技術系続から幾つ選びなさいという意味で男女に差があるという点があるわけでございます。そこで、構成の仕方として、技術・家庭科という現在の履修単位はそのままにしておいて、その選び方の領域を、七領域から一つとかいうような制限を取っ払って、もう少し内容をふやしたりして、男女とも平等にそれが履修できるという形態にしていけば別段問題がないというふうになろうかと思います。したがいまして、高等学校の家庭科のあり方が検討されれば、現在の高等学校の家庭科も、一般家庭科という領域をもう少し広げて、男性も勉強しやすいような、いわばもう少し生活的な要素の領域を広げていくという検討が当然に行われると思います。そうしますと中学校におけるその領域もおのずから拡大してくる、拡大された中から平等に選ぶというような仕掛けにすればおのずから解消していく、そういう意味で申し上げておりまして、現在の中学校における技術・家庭科が条約上全く問題ないというふうには考えておりません。

○江田委員 そうすると、中学の場合も、一定の領域があってその中でどう選択するかを、男子はこう、女子はこうというふうに選択の仕方まで決めてしまってはいけないのだ、そうではなくて、そこの選択の仕方はやはり個人個人に任されるんだ、高校の場合にも家庭一般にほかのものをくっつけてある領域をつくって、女子は家庭一般、男子は何々とやると同じことになるので、仮に家庭一般を選択必修にする場合にも、周辺領域まで広く取り込んだ上で、男子、女子の区別でなくて個人の選択に従ってその領域の中から選択させる、そういう方向だ、要約してこうお伺いしておけば間違いないですか。

○高石政府委員 基本的にはそういうふうに考えております。

○江田委員 中学の場合に、そういうように技術・家庭という科目の中の幾つかの領域、それが幾つになるかはこれからの検討課題だとして、これを男女の区別でなくて個々の生徒の選択に従って選ばせるというふうにすればこの条約には適合することになるのでしょうか。外務省、いかがですか。

○瀬崎説明員 ただいまの文部省側の御説明のとおりであれば、条約上特に抵触するということはないと思います。

○江田委員 したがって、外務省としてはそういう方向を監視していただくということにもなるわけですね。

○瀬崎説明員 先生のおっしゃるとおりでございます。

○江田委員 そうしていきますと、やはり問題が残るのは、家庭科というものの重要性を一体どう認識するのか、あるいは家庭科をご札からどういうふうに位置づけて、これをどう改革していって時代に適合した家庭科にしていくのか、その必要ありやなしや、そこに移っていくわけで、これはもう女子差別撤廃条約との関係ではなしにまさに家庭科の問題になるわけです。

 文部大臣、これからの高齢化社会あるいは核家族という時代に生きていく人間として、家の中のことは女子に任せておけばいいんだ、男は外に出て働いて、あとは、家に帰れば飯、ふろ、寝るで家のことはもう全部お任せという時代じゃない。本当に子育てにしても家庭経済にしても、さまざまな家庭生活一般、男も女もともに一これは簡単じゃないですが、どちらかというと力は男の方が強いかもしらぬ。だけれども、本当にやってみるとそれはわかりませんけれども、もちろんそういうような男子、女子の多少の違いはあるし、また子供を産み育てるというのは、育てるは別ですが、産む方は女子しかできない、逆に産ませる方は男子しかできない、そんな違いはあるでしょう。しかし、もっとお互いに共同の役割を受け持ちながらやっていく、そういう時代が来ているので、家庭科というのは今までのような女子だけに向いた、調理とか裁縫とかに中心が置かれている家庭科から大きく変質をしていかなければならない、変えていかなければならぬ、こういう主張を私は前々からしておるのですが、文部大臣のお考えを伺いたいと思います。

○松永国務大臣 私は、家庭といえば、夫婦が中心でそこに子供がおるという状態を頭の中に浮かべるわけでありますが、どういうふうな形で家庭を運営するか、これは夫婦が対等の立場でじっくり協議して決めるべき事柄であって、どういうふうにすべきだ、どうなるであろうという予測は私はしない人間なんでございます。ある夫婦は話し合いの上、専ら奥さんの方が家庭をきちっと守る、御主人は外に行って働いて帰ってくる、そういう家庭も、夫婦が円満な話し合いの上でそう決めたならばそれはそれでよかろうと思います。あるいは一日交代でやるのも結構でしょうし、一カ月交代でやるのも結構でしょうし、あるいは常に一緒にやるのも結構でしょう。いずれにせよ、家庭の運営、家庭の経営というものは夫婦が対等の立場で協議をした上でやっていくべきことだというふうに私は思っております。

○江田委員 協議というのがどういうことになるのか、余り協議、協議と言うと大変かた苦しいような感じもするけれども、いずれにしても対等でそれぞれの夫婦の型をつくっていく。しかし、そのためには男はこうで女はこうでとあらかじめ決めてしまっておっては協議も何も成り立たないわけですから、男の子もあるいは男の親もいろいろ家庭の雑務もやる能力と感覚とを身につけていかないと、これからはどうしようもないという気はしておるのです。

 家庭科の問題はこの程度にいたします。外務省、御苦労さまでした。ありがとうございました。

 それから、次に、時間が余りありませんが、法務省の人権擁護局がいじめの問題について乗り出してきた。ひとついじめの問題と取り組もうという野崎局長のハッスルぶりが報道されたりしておりますが、これはどういうところまで踏み込むおつもりなのか伺わしてください。

○堤説明員 最近深刻な社会問題となっているいじめの問題につきまして、これはひとり学校教育の問題にとどまらず人権問題でもある、こういう認識に立ちまして、三月十二日に人権局長の通達をもって各法務局長、地方法務局長あてに、このいじめの問題の解決に積極的に取り組むようにということで指示をいたしまして、六月五日、六日に人権擁護部長会同を開催いたしまして、この問題についての具体的な取り組みの方策について実は協議いたしたわけでございます。

 まず第一に、いじめは実は相手の人権を侵害するものであるということとともに、その背景を見てみますと、やはり他人に対する思いやりとかいたわりの心というものが欠けておる、すなわち人権意識の立ちおくれがあるということでございまして、私どもといたしましては、この基本的人権の中核にある個人の尊厳性、人間の尊重ということを基盤に据えた啓発活動を積極的に展開したいと思うわけです。

 第二番目は、これまで各法務局、地方法務局あるいは人権擁護委員の先生方で人権相談というものを実施してきておるわけですが、そうした人権相談の体制を強化することによっていじめの情報というものを把握していく。情報を把握した場合の処置でございますが、これは学校教育ともかなり深く関係する問題でございますので、原則としては、これを学校にお伝えして、学校側に御対応を願うということになるわけでございますが、人権擁護機関としても保護者や地域社会に対してはやはりそれなりに啓発活動をやっていく。それに、できるものなら各地域社会においていじめの問題対策の懇談会みたいなものができる可能性ということも探ってみようというようなことで、そういった方針でこの問題に取り組んでいくことにいたしておるわけでございます。

○江田委員 啓発活動と情報収集活動はそれなりに意味があると思うのですが、具体的事案の解決ということになりますと、いじめの問題が例えば訴えとなって出てくるようなケースというのは非常に少ないわけで、どっちかというと、親にも言わない、先生にも言わない、陰に隠れたところでいじめが陰湿に進行するというのが現実で、人権擁護局が乗り出してきたから、地方の法務局が乗り出してきたから、人権の観点から具体的事案が見事にどんどん解決されたというぐあいにはなかなかいかないんじゃないかと思います。その心意気は買いますが、これはやはり文部省としては、人権擁護局が出てきてくれたからもう安心だなんて言っていたら大間違い。確かに人権という観点からの見方は非常に重要だし、そのことは大切にしなければなりませんが、むしろ逆に、教育の場のことですから、教育という立場から見ると、人権侵害をする方もされる方もともに、教育のゆがみあるいは学校のゆがみ、社会のひずみの犠牲者であり、人権侵害をする方はする方で、やはり心を痛め人格を害しながらそういうことに陥ってしまっているわけですから、文部省としては、法務省に立ち上がられてむしろ大変に残念なことだと思わなきゃいけないと思うのですが、そのことについての御見解と、それから、このいじめの問題について文部大臣は、通学区の規制の緩和ということをおっしゃいましたね、これはどういう趣旨でおっしゃったのか、もう少し敷衍して御説明をいただきたいと思います。

○松永国務大臣 法務省がこの問題について、いじめられておる子供の人権を守るという立場、それからまた、いじめをする子供が思いやり、いたわりといった人権思想が欠落しているという視点、こういう点から人権擁護あるいは人権思想の普及という立場でこの問題に積極的に取り組んでいただくということは極めて結構なことであると思っております。

 このいじめの問題は、先生御指摘のように、例えば少年犯罪がふえたとかあるいはその他の犯罪がふえた、これに対する対応策をやって、そしてその犯罪の増加をとめるなどということよりはさらにやり方が難しい、また時間のかかる、即効的な薬のない、そういう問題だと私は思っておるわけでありまして、これをやったからこれで治ったというふうなことにはなかなかなりにくい難しい問題だというふうに思います。

 今先生御指摘のように、この問題の背景には、社会的な風潮の問題もあれば、学校における教師の指導のあり方の問題もあれば、あるいはいじめをする子供が幼少のころから家庭でどういう育てられ方をしたのか、家庭環境はどうであったのか、いろいろな問題が絡み合ってこのいじめという陰湿な、そしてまた継続的にあるいは人にわからぬような状態でやっていくいじめですね、そういうものが起こっておるというふうに思うわけでありまして、問題の解決には、これが特効薬だというものはない、いろいろな方面から手を打っていかなければならぬというふうに思うわけでありまして、文部省としては、臨教審などの答申を待つまでもなく、これは重大問題として既に取り組んでおるわけでありまして、生徒指導の充実を図るような措置を各都道府県教育委員会を通じて徹底をすると同時に、教師向けの指導資料の作成もし、それを配付して、教師が生徒指導に当たる場合の資料を届けた、さらにまた、今後さらに対応策を立てていくために、専門家、有識者を集めての検討会議をこの四月に発足をさせたわけでありまして、その有識者や専門家のいろいろな意見を闘わせていただいた上の対応策をいただきまして、それに基づいてこのいじめの問題が早急に、できるだけ早い機会に静まるように、少なくなるように、そして最終的には根絶できるように、積極的に努力してまいる所存でございます。

 なお、私は、いじめの問題に関連をして学校の転校の問題に触れたわけでありますけれども、教育の立場からすれば、いじめをする子供あるいはそのグループがある、一方においていじめられておる子供がおるという場合に、教育の立場からすれば、いじめをする子供がいなくなる、いじめをするグループをなくしていくということが教育でございましょう。しかし、そうたやすく直らぬということはあり得まずし、そういうことを考えますと、このいじめられておる子供の健全な成長を図っていく上であおいはまたその人権を守る上で、父兄と学校と教育委員会とが協議をした上、この際ほかの学校に移したならばこのいじめのグループからねらわれずに済むというような場合には、現在の法律を弾力的に運用をして、そうして学校の指定がえをするということが認められていいのじゃないか。そのことが、いじめられている子供を健全に教育していく上でも、また人権を守る上でも適切であるという考え方を申し上げたわけでございます。

○江田委員 今の通学区についての文部大臣のお考えは、それは通達か何かにして実現をするということになるわけですか。

○高石政府委員 現在の学校教育法施行令の八条で、 「市町村の教育委員会は、第五条第二項の場合において、相当と認めるときは、保護者の申立により、その指定した小学校又は中学校を変更することができる。」ということで、現行政令上も可能であるわけです。ただ、一般的に市町村は学区を設けて、住所が移れば移すということをやってきておりますので、そういう意味の教育的な観点での配慮、そういう運用措置ということには余り力を入れてやっていなかったわけでございます。したがいまして、今後そういう事態に対応できるようになるためには、運用上この政令の解釈をより広げて運用していけば十分に対応できる、こういうふうに考えております。

○江田委員 時間が参りましたが、最後に一問だけ……。
 私、これはびっくりしたのですが、徳島新聞という新聞がありまして、ここは社団法一人だそうで、しかも去年の八月一日の法務委員会での質疑を見ますと、監督官庁が決まっていないというような状態がある。その後、この監督官庁が文化庁に決まったということですが、全国でもう一社とこかにあるらしいのですが、いずれにしてもレアケースですね。こんな新聞を発行している機関が社団法人なんというのを前提にして、公益性を満たす新聞に変えるために一生懸命に新聞の報道の仕方とか経営の仕方とか全部文化庁の方で御指導なさるのか。それとも、これはやはりほかと同じように株式会社でやりなさいよというふうに御指導なさるのか、その方針はもうそろそろお決まりでしょうか、伺いたいと思います。

○加戸政府委員 御質問のございました徳島新聞社は、昭和十九年の五月に、当時の内閣総理大臣及び内務大臣によりまして、民法三十四条の法人として設立の許可を受けたわけでございますが、その後、わずか半月でその監督権限が地方長官、当時の徳島県知事に権限が委任されまして、今日に至っているわけでございます。この問題につきましては、中央官庁つまり主務官庁はどこになるのかということにつきまして不明確なままで今日まで推移したわけでございますが、昨年の国会におきます御質問もございました関係上、一応関係する省庁と思われます総理府、自治省、文部省の三者間で協議をいたしまして、四月に至りまして、この問題は、文化を所掌する文部省において主務官庁としての取り扱いをするということが三者協議として意見がまとまったわけでございます。

 現在、徳島新聞につきましては、当方といたしまして、まず今までの経緯、事実関係の把握に努めているわけでございまして、徳島県からいろいろな事情を聴取しておる段階でございまして、いずれ事実関係を把握した上で関係省庁とも相談しながら、今後の対応を考えてまいりたいという段階でございます。

○江田委員 終わります。


1985/06/14

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