1985/12/11

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103 衆議院・公職選挙法改正に関する調査特別委員会

定数配分違憲判決について


○三原委員長 この際、菅直人君より委員外発言を求められておりますので、これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○三原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 菅直人君。

○菅議員 ただいま、この公職選挙法特別委員会の席におきまして、社民連に対しまして委員外発言の機会を与えていただきましたことを委員各位にお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

 早速ですが、ことしの七月十七日に最高裁判決が出されまして、定数に関する国会の怠慢を厳しく指摘をされてきたわけであります。私もこの国会に籍を置く一人として大変じくじたるものがあるわけですけれども、野党の提案者の一人でもあります、また裁判官の経験を持っておられる江田五月議員にひとつお聞きをしたいのですが、この最高裁判決をどのように受けとめ、そして、どういう改革が必要だと考えておられるか、その点についての見解を伺いたいと思います。

○江田議員 お答えいたします。
 私は平裁判官であったのでございまして、最高裁は雲の上でございまして、とてもこの最高裁判決をコメントするような立場にはいなかったのですが、せっかくのお尋ねですし、また野党案審議の本会議でも答弁に立ちませんでしたので、考えを申し述べます。

 御承知のとおり、我が国は三権分立の制度をとっておりますが、この三権分立というのは、何の関係もない三権がお互いに立っているというのじゃなくて、相互に関係をし合っているわけですね。一切の法律、命令、規則または処分が憲法に適合するかどうかを裁判所が判断をするんだ、それも最終的には最高裁が判断を行う、最高裁の中でも大法廷で判断をするのが最高の権威だというわけですから、裁判所が国会に干渉するがごときは許されないという御意見もあるようですが、制度の理解に欠けた意見だと言わなければいけません。いろいろな意見があっても、最高裁が、特に大法延で憲法違反だと言ったことですから、だれも皆これに従わなければ制度というのが成り立たないわけです。しかし、裁判所は決して違憲審査権限を安易には行使していないので、むしろ私などからすると、もうちょっと自己抑制を外してやってくれたらいいのにと思うことすらあるほどなんです。それにもかかわらず今回裁判所が違憲宣言を行った、これは私は、最高裁裁判官のやむにやまれぬ心情がその裏にあると思います。これにこたえることは国会の最も重要な義務です。

 ところで、最高裁判決は一体何を言っているかということですが、憲法十四条一項についてわかりやすい表現をしていますね。憲法十四条一項は、選挙権の内容の平等、換言すれば議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等、すなわち投票価値の平等を要求するものと解すべきである、こう言っているわけです。もっともこれが唯一絶対の基準ではないとは言っておりますが、同時に、選挙区割りと議員定数の配分を決定するについては選挙人数と配分議員数との比率の平等が最も重要かつ基本的な基準であるというべきである、こう言っているわけで、この判決は、形式的には五十八年の選挙当時の定数配分規定が五十五年の国勢調査の結果に照らして合憲かどうかを判断したものにすぎませんけれども、その判断の大前提をなすものは以上の憲法原則ですから、今私たちがしなければならないのは、昭和五十五年国調の結果に照らして合憲の定数是正をすることで足れりとするのではいけません。昭和六十年国調の結果は既にもう将来の範疇から現在の範疇に入っているというべきであると私は思いますので、昭和六十年国調に照らして合憲の是正をしなければならぬと思います。しかも、最高裁判決は、国会のやることに可能な限り干渉しないために、実に広範な裁量権を国会に認めているわけで、国会は最高裁判決に甘えるのではなく、その意を酌んで、単に違憲と言われなければいいというような態度ではなくて、投票価値の平等、つまり一票等価を最大限実現するように裁量権を行使しなければならぬ。その意味で、私は、野党案もまた今次第にその欠陥が明らかになっているというのが、実は提出者のみんなの心の内の本音だというふうに思っておりをする。


1985/12/04

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