1988/10/25 |
113 衆議院・内閣委員会
行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律案
統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案
○江田委員 若干予定された時間よりおくれて始まりましたが、委員の皆さんの御出席がどうも思わしくないというのは大変残念なことでありまして、今、高度情報化社会という時代を迎えるに当たって大変に重要な二法案の審議ということですので、大臣それから政府側の答弁を下さる皆さん、ひとつ真剣に御答弁を願いたいと思います。
私は、きょうは日本社会党・護憲共同という立場で、議題となっております二法案について質疑をいたします。既にもう各会派の皆さんの一巡の質問が終わっておりますので、繰り返しにならないようにしたいと思いますが、それでも質問の脈絡上多少繰り返すこともあるかもしれません。そういう際には答弁は簡潔で結構ですから、ひとつ要領よくお願いしたいと思います。
まず最初に、この法律の――この法律というのは特に申し上げない限り最初の法律、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律案、きょうは二つかかっているわけですが、こちらの方をむしろ中心に質疑をしていきます。この法律の目的を伺いたいと思います。
目的はいろいろとおっしゃいますが、私は、第一条の一番最後のところの「個人の権利利益を保護することを目的とする。」というその「個人の権利利益」とは一体何ですか、これをまず伺いたいと思います。
○百崎政府委員 この法律で保護を予定いたしておりますこの「個人の権利利益」、これには実はいろいろな内容のものがございまして、この法案にも出てまいりますが、一つは、自分の情報が行政機関でどのように集積され使われているかということを知る権利というのが一つ入ろうかと思います。それからもう一つは、俗にプライバシーと言われているものが権利利益といいますか、要するに他人にみだりに自分の知られたくないことを公開されないという、それが保護されるという意味の権利利益がございます。それからまた、仮に個人情報が誤っていて、それに基づいて行政処分が行われる、その結果、例えば財産的な損失を受ける、そういう場合もあり得るわけでございますが、そういったことがないようにするという意味で、いわば財産権といいますかそういうことに関する権利等もございます。この法案で規定いたしておりますそれぞれの条文に関連いたしまして、いろいろな中身の権利利益があると考えております。
○江田委員 今のお話の自分の情報を知る、どういう自分についての情報が、この法律の場合には国の行政機関ですが、それによって把握をされているかということを知る。それからプライバシーといいますか、そっとしてほしい、そっとしておいてもらう権利というもの。あるいは自分の情報が誤ってインプットされていて、それが原因で不測の不利益を受けるようなこと。プライバシーの知られない、そっとしておいてもらう権利は守っていく、誤った情報によって不測の不利益をこうむることを防いでいく、そうしたこと。さらに、これは既に議論になっておりますけれども、今のプライバシーの中には、そっとしておいてもらう権利のほかに、自分の個人の情報については自分が管理をしていくんだ、みだりに人に自分の個人のことについて立ち入られない、自分で自分のことは、ここまでなら教えるけれどもここから先までいろいろ使われては困るよ、そういう個人情報管理権、コントロール権というものも、程度の問題はいろいろあるにしてもこの法律が承知をしておる一つの権利の形態だ、こう理解していいんだと思うのですが、いかがですか。
○百崎政府委員 今先生お話しの自分の情報を自分でコントロールする権利ということがよく学説等で言われておりますけれども、そういった権利はまだ学説上もいろいろ議論のあるところでございまして、一般的にはまだ定着していないと私どもは考えております。そういう意味では、そういった権利をこの法律によって実定法化するというようなことでは必ずしもございませんが、ただ、この法律の中にはやはり自分の情報がどういうふうに行政機関に集積されているか等々を知る権利、あるいはそれが間違っている場合にその訂正を申し出る、そういう権利が一応ございますので、そういった意味では、今おっしゃったような自分の情報をコントロールする権利というものに含まれているのではないかというふうにも考えられます。
○江田委員 学説上のいろいろな議論ですから、それがすぐに、この権利がここにこう出てきているというような話はなかなかしにくいことだろうと思います。
しかし、五十七年七月のプライバシー保護研究会の研究結果ですか、「個人データの処理に伴うプライバシー保護対策」、行政管理庁行政管理局でお出しのパンフレットがここにありますが、この中でも、研究結果として「プライバシー概念の展開」、これは八ページになりますが、「伝統的なプライバシー概念」、これは「ひとりにしておいてもらう権利」、それが展開して「プライバシー概念の新たな展開」として「自己に関する情報の流れをコントロール(管理)する権利」ということになってきている、こういうことを書かれているわけで、これは行政管理庁内の研究会の研究結果ということではありますが、やはり行政管理庁としてそういう流れになってきているということは、これは認識をしておられるのだと思いますが、いかがですか。
○百崎政府委員 いわゆる加藤研究会の成果といたしまして今先生が御指摘のようなことが述べられておるわけでございますが、確かに自分の知られたくないことを公開されないというそういう意味の消極的な権利利益ということだけではなくて、やはり御指摘のようなそういった動きに今世の中があるのではなかろうかというふうには認識いたしております。
○江田委員 そういう認識があるから、例えば情報の収集については、収集制限という制度の立て方には今回なっておりませんが、しかしそれなりに、第四条ですか、個人情報ファイルを保有するに当たっては所掌事務遂行のため必要な場合に限るのだ、できる限り目的を特定しなければならぬのだ、そういうような縛りもかけておるとか、あるいは利用についてもいろいろな縛りをかけている、こういうことが出てくるのだと私は理解をしておるのです。
そしてまた、一般の国民からしても、この加藤委員会の報告にもたしかあったと思いますけれども、例えば選挙人名簿がよその方に漏れていって、そこからいろいろなダイレクトメールが届いてくるとか、自分のことを知られたくないというだけでは済まない、知られた結果が、要りもしないのにダイレクトメールであれ買えこれ買えとか、この予備校はいいですよ、あの参考書はいいですよとか、いろいろなものが飛び込んでくる。そんなことは関係ないのだ、逆に、うちの子供の教育にそういうものが害になるのだと思っている親のところへまでどんどんいろいろなものが届いてくる。そういうことを防ぐためにも自分の情報というものは自分で管理していきたいのだという気持ち、あるいは自分で管理できないことによってとんでもない不快感、不快感で済めばいいけれども、不快感をさらに超えるような、何かおかしなことがちょっと漏れるために、金融関係のブラックリストに誤って名前が載って借りられるものが借りられなくなるとか、そういうこともあるから、自分の情報を自分でコントロールしたいという気持ちは非常に国民の中に今強い。どれがどの条文とは言いませんが、全体に個人情報というものが国民の権利利益にとって大変重要なものになっているからこういう法律ができてきているのだ、こういう理解をしたいのですが、間違っていますか。
○百崎政府委員 思想としては、今先生がおっしゃいましたようなそういう考え方に基づいた法律であるというふうに考えております。
○江田委員 私は大臣に伺いたいのですが、今の局長の答弁をさらに敷衍して、これは官僚の皆さんの悪口を言うわけじゃないのですが、やはり官僚の皆さんというのは、与えられた政治目標、政策目標をいかに用意周到に間違いなくつくっていくか、実行していくかということが使命であって、政治家というのは、その上に立って、今のこういう現代においてどういう政治目標、政策目標が必要かという一つの洞察力を持っていかなければならぬと思うのです。この個人情報保護法というのは、私はそういう意味で一つの時代の要請、大きな政治目標というものを実現する法律だ――これで十分できるかどうかはこれからの議論ですよ。しかし、少なくともそういう方向を向いているものとみんなが期待もし、努力もしたその結果の法律だと思っているのですが、この法律が目指す政治目標、政策目標、時代の思想というものは一体どこにあるか、これをひとつ大臣の政治家としての立場からお答え願いたいと思います。
○高鳥国務大臣 江田委員から今プライバシーの概念等を含めましての御質問がございました。私は法律学者ではございませんので、プライバシーの概念とはいかなるものかについてここで的確なお答えができるとは思いませんが、ただ、いわゆる個人データというものは、今非常に幅広い分野でいろいろなところで収集をされておるわけであります。委員御指摘のように、ダイレクトメールなどが全く自分のあずかり知らぬところから飛び込んでくるとか、この前も私、あるテレビを見ておりましたら、一家のうちで家族が何人で、収入が幾らで、借金が幾らで、そして車は何年式のものがあるとか入れかえ時期はいつごろだとか、そういうものが一軒一軒にわたって全部データに入っているなどというようなことが放映されておりまして、びっくりしたわけであります。
結局、私どもといたしましては、民間部門、公的部門の両方において電算処理されておる個人データというものは非常にたくさんある、本来ならば民間部門も含めて規制すべき時期に来ておると思うわけでありますけれども、なかなかその点についてはまだ論議が詰まっておりません。かつまた、民間部門ということになりますと総務庁の守備範囲を超えるわけでございます。さりとて、国が持っておりますデータにつきましてこのまま放置をしておいていいという状況にはない、少なくとも速やかにしかるべき規制をすべきである、そういう時期に来ておると考えたものですから、公的な部門について国の行政機関が保有する、しかも電子計算機で処理された個人情報についてこれを保護することが必要である、こういうふうに考えてこの法律を御提案申し上げたわけであります。
いわゆる自己の情報についての取り消し権などの問題についてもお触れがあったわけでありますが、これは私も外国の法制も若干勉強してみましたけれども、民間部門につきましては、確かに、自分の意に反した個人データがそういうところに集められておる、それは自分の意に反して収集されておるものであるから取り消せというような請求を認めるような制度もあるようでありますが、公的な部門におきましては、ほとんど大部分が法律の規定ないし行政目的を特定して、しかも大部分がその個人の申告に係るものが多いわけであります。そういうことからいたしまして、いわゆる取り消し請求というようなことではなくて、間違っておれば訂正を求めるというような形にしたというふうに考えております。
○江田委員 大臣の方から随分詳細な答弁をいただいたわけですが、まだ私が聞いていないところまで踏み込んで御丁寧にありがとうございます。
大臣、法律学者でないのでプライバシーというこの権利概念についての正確なことは答えられないというようなお言葉ですけれども、私は、まさに法律学者じゃない政治家なればこそのスピリットというのがあるのだと思うのですね。今大臣の方で、それにしても随分いろいろな個人の生活のあり方とか細かな情報がいろいろなところで世の中に伝わってしまっておってびっくりするような事態になっているというお話がございました。そのあたりのところをもう少し深めて聞いてみたいのですが、個人のことをむやみに人に知られたくない、あるいは個人のことがどこにでもどんどん飛び交っていってむやみに不愉快な、不利益な思いをしたくない、こういう気持ちというのは、これは大臣、憲法上の保護される気持ちであるというふうにお考えですか、そうではないと思われますか。
○高鳥国務大臣 憲法上、どの条項によって保護さるべき権利であるかどうかということについては、私の知識をもってしては正確なお答えができるとは思いませんが、少なくとも自己の情報がみだりに流出をして、それによって自分のことが知られることに対して、それは困るよという気持ちというものは、当然保護さるべきものであるというふうに考えております。
○江田委員 大臣、これは私、口幅ったいことを余り申し上げたら失礼になるかと思いますけれども、我々、こういう言葉が妥当かどうかわかりませんが、俗によく言われる自由世界といいますか、西側陣営というか、自由な憲法というものを持っている国に共通する大変大切な大切な憲法の基本理念だというふうに言って差し支えないと思うのですよ。
人間というのは、もともと一人では生きていけないので、みんなで一緒に助け合って生きていくようになりますね。お互いに足りないところを補い合いながら助け合っていく。そして、そこに社会というものができたり、また公権力、国家というものもできてくる。しかし、その社会とか国家とかいうものは、そう簡単に一人一人の人間を助けて幸福追求のためにひたすら努力するというわけにはなかなかいかないのですね。そう理想的にはいかなくて、強い者が権力を得て、これをむやみに使ったり、他を支配したり、そういうことになっていったり、あるいは仕組みそのものがその中の人間を支配するというようなことが起きてくる。そこで、フランス革命とかアメリカの独立戦争とかで、国家というものはその中に所属する一人一人の人間に踏み込むのに、ここまでは踏み込んではいかぬのですよ、一人一人の人間が個人としてとうとばれなければならぬのですよ、こういうことを高らかに宣言をして、国家というものに手かせ足かせをはめる、これがいわば憲法の一番の基本原則ですね。そこで、基本的人権、自由権というものが生まれた。イギリスにおいても、王様は何をしてもいいというものじゃないのだ、こういう限度ですよと、いわば国民の側が王様にいろいろなかせをはめるのが憲法。
私はちょうどたまたま机の上を見ていたらあったものですから持ってきたのですが、アメリカ独立宣言で、
われわれは、次の真理を自明なものと考える。すなわち、すべての人間は、平等に造られている。彼らは、その造物主によって一定のゆずり渡すことのできない権利を与えられている。それらの中には、生命、自由および幸福の追求がある。これらの権利を確保するために政府(国家)が人間のあいだに設けられる。政府の正当な権力は、被治者の承諾に由来する。どんな政治形体でも、これらの目的に反するようになったときは、それを変え、または廃止し、人民にとって彼らの安全と幸福をいちばん実現すると思われる原理に立脚し、また、そういう形式に権力を組織する新らしい政府を設けることは、人民の権利である。
こう独立宣言に書いてある。
我が日本国憲法では第十三条に、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」こういうことが書いてあるわけで、まさにこういう個人の自由とか個人の尊厳とかというものは憲法上の最大の要請であって、そこからこういう自分のことをむやみに人に知られたくないんだ、自分のことが人に知れ渡っていろいろな干渉を受けたくないんだという個人の思いを憲法上の権利として保障して、これを守っていこうという、そういう国の根本に我が日本国の場合もなっているんだ、こう理解をして、そこからこういう個人情報保護法といったような制度が必要になってきているんだと思うのですが、これは大臣、どうですか。
○高鳥国務大臣 基本理念といたしましてはただいま御指摘のような憲法上の規定等も踏まえておると考えておりますが、ただ、従来日本の官僚組織というのは非常に縦割り型であって、しかもそこに守秘義務というものが課されておりますから、個々の役所が持っておりますそれぞれのセクションの個人情報というものはよそに漏れにくい形であったわけであります。ところが今、電子計算機処理というものが非常に一般的に行われるようになって、これがいわば連結をされていくとオンライン化されていったり、いろいろな形で検索をされるという形になりますと、従来の守秘義務とかあるいはセクションごとにそれぞれ隔離されているからよそには流れないとか、そう言っていられない時期になってきたということからいたしまして、私どもとしてはきちっとした枠組みをつくるべきだと考えたわけであります。
○江田委員 そのとおりだと思いますね。今私が申し上げたような個人の自由とか幸福追求とか尊厳とか、これは時代時代によっていろいろなあらわれ方をするので、権力者が王様であるときには王様の手足を縛っておけばよかったけれども、今のようにこれほどコンピューターが進む、情報が大変機能的に管理をされ、流通し、飛び交っていくという、そういう時代になってきますと、単にあれをしてはならぬというように権力者を縛っているだけではこれはだめだというので、今いろいろな制度を我々は悩みながらつくっておるわけですね。
国家というのはもう一つ役割がありまして、国家は手足を縛っておればそれでいいわけじゃないんで、やはり国家は国民のために働くということが必要で、これが一方で基本的人権のいわゆる社会権といいますか生存権なるものもそれに含まれる。そういうことを実現するために、政府というのは人民の人民による人民のための政府でなければならぬ、そういう考え方が出てくるわけですが、社会権の方からいうと国民一人一人の幸せを願っていく、そういういい国家、いい政府ができていけばいいんだ、みんなで一緒に努力しましょうでいいのですが、自由権の方からいうとどうしても個人と国家とは対立してしまうのですね。そこで、多少国家の方は手足を縛られても、多少不便なことがあっても、個人の自由、尊厳というものを大切にしていきましょうという、そういう要請があって、これが時代の流れとともにいろいろな形をとってあらわれ、自由だ、尊厳だというのは人間社会の永遠のテーマになっていって、その永遠のテーマの現代的なあらわれがこういう電算機処理における個人情報の保護ということになる。
何かお説教しているみたいで恐縮ですけれども、大臣、私のこのあさはかな青っ白い議論についてどう思われますか。
○高鳥国務大臣 江田委員の高遠なる法哲学をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございます。私どもは、高遠なる法哲学もさることながら、もう少し現実的な場でこうした法律を考えてきたわけでありまして、実はもう既に委員御承知のように、総務庁ないし行政管理庁時代以来十年余りの歳月をかけまして勉強してきた成果をまとめたというのがこの法律であります。
プライバシーの全分野ではなくて、極めて限られた一分野ではありますが、少なくともプライバシーの一部を保護しよう、個人の権利利益を守ろうということを目的として、この法律を制定しようとしたわけであります。
○江田委員 私は細かなことも議論しますから、細かなことはちょっとお待ちになっていただきたいと思うのですけれども、私が今言っておるのは、そういう個人の自由とか尊厳とかをやはり極力大切にしなければならぬのだ、そうでなければ自由国家とは言えないんだ、今の電算機処理のこういう事態に当たって、行政が多少苦しいことがあっても、困ることがあっても、やはり個人の自由、尊厳を大切にしよう、これが憲法の要請であり、この個人情報保護法がそうした法制全体をカバーしているなんて思ってもいないし、そんなこととても言えないですね。そういうものを踏まえたごくごくささやかな法律なんだ、こういう理解でいいんだと思いますが、いかがでしょう。
○高鳥国務大臣 そのように御理解いただいて結構だと思います。
○江田委員 そこで、そうなると、この「目的」の第一条「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護する」というのは、これは実は矛盾しているんじゃないか、行政の適正かつ円滑な運営が多少阻害されても個人の権利利益を保護する、これを目的とする、こうならなければおかしいと思うのですが、いかがです。
○高鳥国務大臣 その「図りつつ、」については、率直に言って私も大分こだわっていろいろと考えてみたのです。しかし結論的には、ほかの法律の例等も踏まえましてまあこれでいいではないか、あくまでも第一義は個人の権利利益の保護であるというふうに理解をしたわけであります。
○江田委員 まあそういうことにしておきましょう。しかし、本当はやはりちょっとおかしいと私は思うのです。
そこで、今いかに個人の情報が収集され、そしてコンピューターに入り蓄積されておるかということについて明らかにならなければ、この法律の審査はできないと私は思うのです。一体、今行政の皆さんがどの程度の情報を持っておるのか、これはやはり明らかにしていただきたいと思うのです。先日来、総務庁の方といろいろやりとりをして、どうも大変遺憾なのですが、法案の審査に先立って今のような、どの程度の個人情報というものが公機関によって保有されているかというのを明らかにしてくれ、しかしそれはなかなかできないというので、審議に入ってそういうことを要求されたらどうですか、こういう話なのです。私は質疑に入る前にそれは必要なことではなかったかと思いますが、しかし今言ってもしようがないので、ここで資料を要求したいと思います。
六十三年六月末現在での各省庁が保有するすべての個人情報のファイルの名称、それから利用目的、担当部局、データ量、これをひとつ明らかにしてください。数は、先日井上委員の質問に対してお答えがありましたから、その数に照応するファイルを明らかにしてください。法案の六条の二項一号、二号で事前通知の除外がありますが、これも本当は知りたいところですが、これは出せないとおっしゃるならそれは結構ですから、それを除くものすべてを出してください。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
現在、先生からお尋ねのございました六十三年六月時点での全省庁が持っております個人情報ファイルの実態について調査し終わったところでございますが、その取りまとめになお若干の時日を要しているというところでございまして、私どもとしては、当委員会の審議に間に合うようにできるだけ早く取りまとめたいということで鋭意努力中でございます。
○江田委員 いつごろ出していただけますか。
○重富政府委員 今取りまとめ中でございますので、一、二週間のうちに当委員会に提出するようできるだけ努力したいと考えております。
○江田委員 一、二週間とおっしゃるのですが、今一体どの程度行政機関によって個人の情報がファイルされているかということさえ明らかにならずに、この法案が審査できると思われますか。
○重富政府委員 私どもとしては、この法案を検討する際に、各省庁の持っております個人情報ファイルとかデータ量の数量とか、代表的な事例などにつきまして各省庁からいろいろと資料を提出していただいて実態の把握に努めたわけでございますけれども、先生が今お尋ねのような、個別ファイルごとにきちんとした形で公表できる形で資料を整理したものを持ち合わせておりません。
○江田委員 きちんとした形でとおっしゃるけれども、かつてこれは五十七年二月という日付の「行政機関等における電子計算機処理にかかる個人等データ調」、行政管理庁行政管理局編集という本の中で出ているので、五十七年当時は警察庁、防衛庁、科学技術庁と、担当部局名、業務名、ファイル名、データ量、利用目的が一覧表になってあるんですね。五十七年のときにはこういうものができながら、今はできないのですか。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
五十七年のころは臨調答申以前のものでございまして、加藤委員会というのは先生御承知のとおり、OECD勧告に対応して個人情報の保護というもののあり方の基本的な哲学なり、基本的な理念の研究をなさったものと考えております。それ以降、私どもは臨調答申を受けまして、立法化を前提に具体的な資料を検討してまいったわけでございます。また、具体的な立法方策を検討してまいったわけでございまして、その際に各省庁に対しまして、公表を前提としない形で実態をできるだけ教えてくださいという形で調査の資料を出していただいたわけですが、これは非常に各省庁ばらばらのものでございまして、なかなかこういうきちっとしたところにきちっとした形で公表できるようなまとまり方はしていないということを申し上げておるわけでございます。
○江田委員 これは異なことを伺うということなんですが、いいですか、臨調答申前はいろいろと勉強をする、そこで各省庁からいろいろと出していただいた。臨調答申があって今度法案を立案しようということになると、なかなかそうやって各省庁から出していただいたものを公表できない。臨調答申前はこういう本で出せるのに、臨調答申後になったらこういうものでは出せなくなるというのはどういう、臨調答申というのはそんな秘密を皆さんに要請しているんですか。もっと開かれた行政をということが臨調答申の基本にあるんじゃありませんか。
また、立法化ということを予定したら今度は出せない。一般にはこういう本にして出すことができても、こういう国会のようなきちんとした場には出せない。これもどうもおかしいですね。むしろ国会にこそもっと、社会に本として出せるようなものはどんどんお出しになるということでなければいけないのじゃないですか。
○重富政府委員 まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもはそういう意味で、この法案を国会に提出いたしました直後の六十三年六月時点で最新のものをお出しすべく調査をし、その取りまとめに鋭意努力中である、そして一、二週間したらお出しできるよう努力するということを申し上げているわけでございます。
○江田委員 一、二週間ですが、ひとつこれはぜひ理事会でも御検討いただきたいと思いますが、やはり衆議院の委員会の段階でそういうものを明らかにして、それに基づいた審査をするということにぜひしなければならぬと思いますね。
省庁ごとのファイルの数、データの数はこの間公表していただいているわけですけれども、しかしその中身のことがわからないと、開示請求はこの程度でいいのかとかあるいはさまざまなことがわからないわけですよ。数だけで開示請求はこの程度、不開示はこんな程度なんというのがわかるのだったら、それはもうよほどすぐれた人たちばかりが集まっていればそうかもしれませんが、人間がやっている仕事ですから、そのくらいのことは明らかにしてもらわないとわからない。これはひとつぜひお願いをいたします。
そこで、先般井上委員の質問の中に出てきたお答えの数、この数のものが今整理をされている、結果として出される資料の中に明らかになる、こう理解してよろしいですか。
○重富政府委員 私が井上委員にお答えしましたのは六十二年の一月時点のものでございまして、それよりも、コンピュータリゼーションが進んでおりますので、ファイル数、データ量等、若干ふえているのではなかろうかと思っております。あのとおりの数字ではございません。
○江田委員 なるほど、六十二年から六十三年ですから、それはふえている。これは細かなお答えがいただけるかどうかわかりませんが、感じとして大体年ごとにどの程度のファイル数、どの程度のデータ量がふえていくのですか。
○重富政府委員 これは年によって違いますのでなかなかはっきりわかりませんけれども、五十七年当時に比べますと、六十二年段階ではデータ数が二倍以上、ファイル数が若干ふえている、こんな感じだと理解しております。
○江田委員 ふえていく。この数より減ることはありませんね。
○重富政府委員 確かなことは申し上げられませんが、減ることはないと思います。
○江田委員 例えば警察庁は六ということになっているのですが、この六つのファイルの名称、利用目的、データ量のリスト、こういうものが出てきますか。
○重富政府委員 六十三年の六月現在でお出ししますのは、本法案に基づいた形での公示できるファイル数、データ数でございますので、省庁によっては減るところも出てくるかと思います。
○江田委員 今ふえることがあっても減ることはまずないと、確かなことはわからないという注釈はありましたけれどもお答えになったばかりじゃないのですか。それが減るということにもうなるのですか、わずか何秒かで。
○重富政府委員 私が申し上げましたのは、全省庁では減ることがないであろう、ただし特定の省庁では、特に公安関係等の仕事をするようなところは、今回の法案から見たらファイル数が減ることもあり得るだろう、こういうことを申し上げているわけでございます。
○江田委員 警察庁はふえるのですか、減るのですか。
○重富政府委員 今回の法案の枠組みから見ると減ることもあるのではないかというふうに考えます。
○江田委員 これはかなり詰めていけば細かな議論ができるのですけれども、出していただいた後の方が細かな議論ということになると思いますので、ひとつその議論は同僚の委員にお残しをして、あとやっていただきたいと思います。
この法案になったら出し得るものが減る、そうでないときは出し得るという、何かこの法案というのは行政情報を秘匿する法案だということがはしなくも露呈されているような気がするのですが、なぜ一体この法案になったら減るのですか。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたように、五十七年度当初はどういう形で法案をつくるかというような模索があったと思います。それからOECD勧告等についても、我が国の法制度を十分勘案せずに理想的な形で追求されている。そういう場合に、法案の体系、枠組みというものを考えずにファイルを出したらこういうことになるというものであったかと思っております。ただ、先生も御承知のとおり、ヨーロッパ各国、アメリカ等でも、国の安全とか治安等に関するものについては公示を差し控える場合もございますし、いろいろございます。今回の法制が我が国の法制度の実態、伝統、文化、そういうものを加味して枠組みをつくっておりますので、特定の行政については、先生が御懸念なさるように若干公表するものが減ることがあるのは当然ではなかろうかと思っております。
○江田委員 五十七年のことをおっしゃいましたけれども、井上委員にお答えになったときのは六十二年の一月でしょう。六十二年の一月に警察庁はファイル数が六、情報量、件数は一億一千六百十六万と、こうお答えになっているわけですね。六十二年一月、これが六というのがなぜ六十三年六月現在のものだと減ることになろうということになるのですか。
○重富政府委員 六十二年のときには、今回の法案の枠組みというのは定まっていなかったのではないかと思います。六十三年になりますと、国会に法案も提出いたしましたし、政府としての法案の枠組みといいますか基本的考え方、そういうものが固まったわけでございますから、それに基づいて調べますと減ることもあり得るのではないか、こういうことでございます。
○江田委員 私は、それはやはり納得できないのです。法案というのはまだ法律ではないのです。法案として国会に提案をして今審査をしている段階でしょう。その段階で、なぜ法案に基づいた取捨選択をして出すということになるのですか。法案に基づいていないもともとのものを出して、こういうもともとのものがあって、これがこうだから、だから法案でこういうふうに整理をしなければならぬ、こうなるのが筋だと思うのですが、それは国会の軽視じゃないのですか、どうですか。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
各省庁から私どもは六十三年六月時点のファイルの実態、データ数等をお出しいただくわけでございますが、各省庁では政府提案の法案の枠組みを見ながら資料を御提出いただいているのではないかというふうに考えて申し上げているわけでございます。
○江田委員 これはまだまだ後に議論は尾を引くものだと思いますが、とにかく出してくださいね。それを出していただかないことにはやはり議論にならない。
ところで、お出しいただけるのは、今私はファイル名、利用目的、担当部局、データ量のリスト、こう言いましたが、このデータの中身は出ないのですか、データ項目、いかがですか。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
六十三年六月時点の調査では、ファイルの入力項目とか項目数などは調査いたしておりません。
○江田委員 その時点より前、五十七年当時までさかのぼっても結構ですが、ファイル項目、データ項目まできちっと調べられたことはありますか。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
大部分のものについてそういう調査をしたことはないと承知しております。
○江田委員 総務庁あるいは行政管理庁が調査をされたものであるかどうかはどうも私も自信がないのですが、あるファイルについてデータの項目まで、三十幾つ、四十幾つというような項目がある、そういう項目ごとに全部細かくきちっと書いてある、そんなような資料もあるのです。ちょっと出所の点がはっきりしないものですから、皆さんにこれがあるじゃないかと詰め寄れないところが大変残念なのですけれども、調べておられるのではないかという気もするのですが、これはこのくらいにしておきますか。ちょっと考えてほしいと思います。理事会でそのあたりのことを細かくやっていただきたいと思います。
ところで、そういう経過でできたこの法律、何か読んでみますと、個人の自由とか尊厳を守っていく、自分のことを勝手に人に知られたくない、自分のことが知られていろいろ迷惑を受けることは避けていきたい、そういう個人の願いを実現する法律としてはまことに不十分だと思うのです。これは大臣も十月十一日の田口委員の質問に対して、この法案でいつまでも対応できると考えているものではない、こういうお答えですが、将来見直しということは一体どうされるおつもりですか。
○高鳥国務大臣 個人情報の電算処理の技術などにつきましてはまさに日々新たな開発が行われておる状況でありますし、またそれらの利用につきましての国民の意識もだんだんに変化していくものと思われます。したがいまして、田口委員にもお答えしたところでございますが、私どもといたしましては、日本で初めての法律でございますので、まずこの法律をぜひ成立させていただいて施行いたしました上で、また広く国民各界の御意見も承って、改めるべき点があれば改めるにやぶさかではない。
さらにまた、私ども行革推進の立場から、みだりに審議会等を設けることはいたしたくないということで、この法律の中には審議会等の設置をいたしておらないわけでありますけれども、必要に応じては学識経験者等からも幅広く御審議をいただいて、今日この成案を得るまでにも既に御審議をいただいておるわけでありますが、実施した上で、さらに必要があればそうした審議等もいただいて改めることについては、私ども十分耳を傾けて対処していきたい、このように考えております。
○江田委員 今の大臣のお答えは、いかなる制度についても当てはまるまことに抽象的、一般的なお答えでございますけれども、私はもう少し踏み込んで考えてみたいと思います。
よく言われるOECD八原則あるいは加藤委員会五原則、こんなようなものがあるわけですが、それをそれぞれの各国の国情に応じて実現していくということで、その原則が一〇〇%貫徹するかあるいはそれがちょっと芽を出すという限度にとどまるのか、これは国によって、時代によって、考え方によっていろいろあろうかと思いますが、いずれにしても、このOECD八原則とか加藤委員会報告五原則とかいうものは、総務庁としてこうした個人情報保護法制をつくるときの大きな原則だと考えていると理解してよろしいですか。
○百崎政府委員 この法案は、今おっしゃいましたOECDのガイドラインを初めといたしまして、諸外国のいろいろな立法例あるいはその運用の実態、さらにはまた我が国の行政の制度なり国民感情等々を考慮して立案したものでございまして、保護措置の基本的な事項につきましては、私どもといたしましては原則としてOECDのガイドラインに沿ったものであると考えております。
なお、今お話のございました加藤研究会の五原則、これはOECDの八原則をいわば整理再編されたものでございまして、基本的には変わらないと考えております。
○江田委員 だから、そういうものを整理して我が国の国情に合わせて法案をおつくりになったということですから、そういう八原則とか五原則とかというものがプライバシー保護法制の原則なんだ、それを原則ではないと思っているわけではなくて、それが原則なんで、それをこの日本という、そしてこの現代というところでどう実現するかで苦労された、こういう理解をしているのですが、そうではないのですか。
○百崎政府委員 全く先生のおっしゃるとおりでございます。
○江田委員 ちなみに、これも間違いないと思いますが、加藤委員会の五原則、これは行政管理庁当時のものですが、総務庁はその考え方は、これは委員会の考え方ですが、委員会の考え方として受け取って引き継いでおられるという理解でよろしいですね。
○百崎政府委員 いわゆる加藤研究会の報告と申しますのは、先ほどもちょっと答弁がございましたが、OECDの勧告が出された後に、我が国として勧告に一体どう対応するかということを中心にいろいろ学識経験者の御意見等を伺ってまとめたものでございます。この法案は、その加藤研究会の報告を踏まえて臨調でいろいろまた御議論をいただき、その結果として出された答申を踏まえてつくったものでございますから、必ずしも加藤研究会の研究報告がそのままこの法案に盛られているわけではございません。
ただ、基本的には、先ほど申しましたように、OECDの八原則にしろ加藤研究会の原則にしろ、その精神としては生かされている部分が相当あるのではないかと考えております。
○江田委員 私がちょっと聞きたいのは、あれは行管庁時代だから関係ない、こういうことではないでしょうということです。
○百崎政府委員 行管庁とか総務庁とかいう、そういうことによって考え方が変わったということではございません。
○江田委員 そこで、OECD八原則、加藤研究会五原則、何でもいいですが、そういうプライバシー法制の基本原則というものは、我が国でも時代のいろいろな制約も受けながら、やはり今後とも十分に生かしていこうというお考えは、これは大臣はお持ちだというふうに理解をしていいのですか、どうですか。
○高鳥国務大臣 今日まで総務庁なり行政管理庁なりにおいて勉強してきました成果を集約をしたのが今回の法案であるというふうに理解をいたしております。したがいまして、基本線におきましては、加藤研究会なりOECD理事会勧告なり、そうしたものを踏まえたものであると考えております。
なおまた、OECDの報告が私の手元にございますが、そこには、この法案は全体としてOECDのガイドラインの原則に合致するものであるという評価がなされております。
○江田委員 では大臣、今のプライバシー法制についてのOECD八原則などの大原別、この大原則はこの法案の中で完全に実現されているというふうに思われますか、そうじゃありませんか。ちょっと聞き方がはっきりしませんか。その大原則が完全に法案化されているものだというふうに思われますか、そうじゃありませんか。
○高鳥国務大臣 OECD理事会勧告というものにつきましては、委員御承知のとおりそれぞれの国の実情に合ったやり方を認めておりまして、非常に留保条項が多うございます。それらを含めまして、OECDのガイドラインに合致しておるというふうに考えております。
○江田委員 そうですね、それぞれの国の実情に応じてこういう原則を生かしていきなさい、こういうことであるからその要請は満たしておるのだ、それはそれでそういうお答えしかなかろうと思いますが、OECDの言っておるこの留保を外した大原則というのは、今のこの法案で実現されている原則の実現の程度よりももっと進んだものであるという認識はおありですか、ありませんか。
○高鳥国務大臣 どうも江田さんとその点は受け取り方がちょっと違うのでありまして、OECDは、やはり世界各国にはそれぞれの実情があるということを十分認めながら、しかもなおかつ個人情報の保護をどうしても速やかにやるべきである、こういう観点から勧告をされたものであります。私の手元にありますのは、これはOECDの事務局のノートとして来ておるわけでありますが、ことしの十月十二日に出されたノートでありまして、そこには日本において最近個人情報保護法案が国会に提案をされたということが記述されておりまして、「ザビルアズアホールミーツザプリンシプルオプジOECDガイドラインズ」こういうふうにはっきりと書いておりますので、OECDは合格点をつけておるということであります。
○江田委員 議論がやはりすれ違ってしまうので……。大臣のお答えはそういうことだと思いますけれども、OECDは、国によっていろいろあるから日本はまあこんなものだろうと、OECDにばかにされたかどうかわかりませんが、そういうふうに言っているわけです。しかし同時に、今のプライバシー関係のことについてはこういうことを理想とするんですよということをやはり書いてはあると思うのですね。
それで、先ほども大臣がおっしゃった、一定の期間がたって見直してみて、これはやはりもう少し手直しをしなければならぬということがあればそういう手直しをするのにやぶさかでない、そういうときにこういう法制の目標とするものが何かなければ、手直しといったって見直しといったって何にもならぬわけで、原則も何もなしに見直しも手直しもないわけですから、別にそういう時期が来なくても日常不断にプライバシーの保護、個人の自由や尊厳の尊重ということはこの限度でいいだろうかということを見直していかなければならぬわけで、見直していく場合の価値の尺度としてOECDの八原則、加藤研究会の五原則といったようなものがあって、そういう価値の尺度からすればこの法案というのは常にそういう尺度に照らして見直されなければならぬ性格のものだ、こう思いますが、これはどうですか。
○高鳥国務大臣 OECDの理事会勧告の示すガイドラインというものが最高のものであるとも思っておりません、もっとそれ以上のものを考えなければならないかもしれませんので……。したがって、現段階においては、私どもはいろいろな役所のそれぞれの主張などを勘案をしながら、少なくとも政府として全体として合意に達しなければ法案は提出できないということでぎりぎりのところを模索した結果でございますので、それは理想を掲げればきりはございませんし、理想に向かって前進させたいとは考えておりますが、現在の段階ではぎりぎり精いっぱいのものであるというふうに御理解いただきたいわけです。
○江田委員 大臣のお気持ちもよくわかるのです。それは、総務庁のこれまでの取りまとめから次第に草案が出てきて、そしていよいよ成案になって国会に出される、その間の変遷を見ますと、行管庁から総務庁に移ってこられたそういう経過の中で、役所の皆さんが本当に苦労してやられたな、涙を出す思いでここのところは切ったのじゃないかな、そういうことはよくわかりますから、それを責めているのじゃないのです。ただ、今の日本のいろいろな実情――いろいろな実情がどういう実情であるかというのも十分議論しなければならぬけれども、そういう実情からしたら、取りまとめのこのぎりぎりのところはまあ皆さんの御努力なのかなという気もするけれども、いやしかし、もうちょっと頑張ってほしかったな、もうちょっと高い理想のところに近づけてほしかったなという気持ちもあるわけで、その辺で、今これが限度だというのはわかるけれども、理想を言えばきりがないと今おっしゃいましたけれども、そういう理想に向けて日々努力をしたいものだというお気持ちは大臣の中におありだ、こう理解をしたいのですが、いかがですか。
○高鳥国務大臣 江田委員御指摘のとおり、少しでもベターなものに近づけていきたいという気持ちは持っておりますが、ただいま何回も申し上げますように、私どもが今の段階で取りまとめられる限度において最善を尽くしたというふうに思っております。今後ともまた国会におきましてもぜひどしどし御議論をいただいて、また私どもに対しまして御鞭撻をいただければ幸いであります。
○江田委員 高度情報化、電算機の発達、これはまだまだ途上なんですね。これからもこの電算化というものはもっともっと進んでいくでしょうし、この法案は行政情報、国の持っている情報だけ、しかも電算機の情報だけですけれども、プライバシーということになれば電算機の情報だけではだめなんで、プライバシー関連ではマニュアルの情報だって随分ある。国だけではだめで、地方自治体だって、あるいは民間だって、いろいろなところにあるわけです。プライバシーというものを本当に大切にしていく法制度をつくっていこうとするならば、これで十分だなんということは到底言えない。この法律が射程に置いた範囲のことで、ここでぎりぎりの調整が総務庁としてできたのだ、その程度のことだというくらいに理解できないですかね。
○高鳥国務大臣 この前、田口委員にもお答えしたところでありますが、私どもはいわゆるプライバシーというものを保護することの必要性というものについては痛感いたしております。ただ、総務庁として手の及ぶ限界、範囲というものがございまして、それもまた政府が提案する法案にまでまとめるにはおのずからいろいろな障害を乗り越えてこなければならなかったわけでございますので、これをもってすべて事足れりとは考えておりません。でありますから、先ほど来申し上げておりますように、実施の上でいろいろと問題があれば改善を図りたい、さらにはまた今後の社会情勢の変化、国民の意識の変化に応じて、現在はそれは開示をしないよと言っておるものであっても、あるいは開示をすることが少しも国民感情に逆らわないというか背反しないというような事態が一般的になれば、それは今は開示しなくても将来開示することもあり得べしということになろうかと考えます。
○江田委員 御理解いただいた答弁で、ありがとうございます。とにかくこれでスタートしてみて実際にやってみよう、それからまた議論しようじゃないか、そのときには世の中の常識も変わっているかもしらぬし、電算機の状況もまた今より進んでくるだろうし、そのときになって、あのときには開示できないぞと言っていたものも開示してもいいよという国民の意識になるかもしらぬ、こういう大変すばらしいお答えだと思いますが、そういうことをやってみようじゃないですか。いつごろやってみようということをひとつおっしゃってみたらどうですか。
○高鳥国務大臣 今理事会においていろいろ御議論をいただいておるようでありますので、そこまで私が踏み込んで今ここでお答えをするのは差し控えさせていただきますが、理事会等の御意向も十分踏まえて対処したいと思います。
○江田委員 では、これはひとつ理事会で十分議論をいただきたいと思います。
しかし、それにしてもこれは、総務庁の皆さんの御努力は本当に多とするにやぶさかではありませんけれども、随分適用除外だらけの法律だと思います。まず最初に、そもそも民間部門が抜ける、マニュアル処理の個人情報は抜ける。三条では、国勢調査などの統計がずばっと全部適用除外になる。六条の事前通知、ここでは適用除外が何と十一項目。七条のファイル簿の作成、閲覧、これは一部の不記載、あるいは六項目の適用除外。ファイルの公示についても同じく。九条の利用、提供制限についても四項目の適用除外。十三条の開示請求権には三つの大きな適用除外。十四条では五項目と二つの開示しないという規定。十七条の訂正等は単なる申し出で、権利ではない。二十条の苦情処理は保有機関の長にさせて第三者機関はない。制度運用のための第三者的審議機関もない。さらにそれぞれ、条文の規定の中で政令にゆだねられている部分も多い。書き方もどうもあいまい。やはりこれは相当批判があると思います。
そこで、これから少し条文の中身について伺っていきたいと思います。
二条二号、「個人情報」というのは「生存する個人に関する情報」。死者のプライバシーというものはお認めにならないのですか。
○百崎政府委員 個人情報の範囲につきましては、今御指摘の二条二号で「生存する個人」というふうに規定いたしておりますが、これはもともとこの法案が個人情報の本人を対象といたしまして、電算処理に伴って本人が抱くいろいろな不安感あるいは本人の権利利益の侵害のおそれ、こういうことに対応することを目的として作成しているものでございまして、死者に関する情報の保護によって、相続人とか遺族とかそういった第三者の権利利益を直接保護することまで意図しているものではございません。
ただ、亡くなった方の保有しておりました財産等に関する情報でありましても、相続人とか遺族の氏名等と結びつけられた情報は、相続人、遺族みずからの個人情報という形になりますので、そういう意味で個人情報として保護されることになるわけでございます。
○江田委員 相続などの開始があったら、相続人名義の個人情報という形に整理をされる時点まで至らなくても、相続人の個人情報ということで死者名義でファイルされている情報が保護されるということは十分考え得る、そういう理解でいいですか。
○百崎政府委員 今申し上げましたように、相続人みずからの情報という形の場合に当然本人として保護されるということでございます。
○江田委員 相続人みずからの情報というのは相続人の名義でファイルされているものでなければなりませんか。死んだ途端にぱっとどこかへ行ってしまうというのでは、相続人は相続人名義に名義が書きかえられるまでの間に何か起こるか、コントロールも何もできないというのでは困ると思うのですね。
○百崎政府委員 もともとこの規定は、先ほども申し上げましたように「生存する個人」というふうに規定いたしておりますので、そういった意味では、御指摘のような死者の名義である限りはこれは保護されないという形になろうかと思います。
○江田委員 そうすると、やはりその間に心配なことがありますね。これは死者名義でファイルをされているものであっても、相続が起こったらそこでもう事態は明らかなので、ちょっと他の検索方法さえ加えれば次の生存する相続人個人の情報ということにすぐなるわけですから、それはそういう形で保護するということでよろしいのではないですか。
○百崎政府委員 今御指摘になられたような場合には、それでよろしかろうと思います。
○江田委員 そうすると、第六号「処理情報の本人 処理情報において識別される個人のうち、」云々、これはどういう解釈をするのか、ちょっと解釈を教えてください。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
他人を介して識別できる情報については保護されないということになっております。
○江田委員 他人を介して識別される情報――私の手元に、プライバシー・アクション88というグループの皆さんがおつくりのパンフレットがあるのです。別にこれでなくてもいいのですが、総務庁の原案では「処理情報の本人」、これは「処理情報によりて識別される個人をいう。」こうなっているのです。これが国会に上程をされる法案になった段階で何かやたら長たらしい修飾語がつくのですが、「電子計算機処理上他の個人の氏名、生年月日その他の記述又は他の個人別に付された番号、記号その他の符号によらないで検索し得るもの」という、この「他の」というのはどこに係るのですか。
○百崎政府委員 「他の個人」ということでございます。
○江田委員 なるほどということになるのかもしらぬけれども、「処理情報において識別される個人のうち、」つまり、処理情報の中にいろいろな識別される個人がある、その個人のうち「他の」というのは、何と違う「他の」ですか。「処理情報において識別される」その個人のうち「他の個人」、何か大変ややこしい話ですが、具体的事例か何かでもちょっと挙げながら、ここはこういう意味ですよという説明をしてもらえませんか。「その」だの「他の」だの、何か頭がくるくる回ってわからぬ。
○重富政府委員 患者のファイルがございまして、その患者のファイルの中に主治医のデータが入っている場合がございます。そういう場合に、その主治医のデータというものは本人から見ますと一応別のものでございますので、そのものは保護されない、こういうことでございます。
○江田委員 こういう理解じゃないのでしょうね。処理情報というものがあって、その処理情報において識別されるいろいろな個人のうち、「他の」が「記述」とか「符号」とかに係って、「電子計算機処理上他の個人の氏名、生年月日その他の記述又は他の」つまりその処理情報じゃない別の記述または別の「個人別に付された番号、記号その他の符号」によって処理情報の中の個人が識別される、そういう人ではない、その処理情報の中だけで検索される個人。そういう理解ではありませんね。
○百崎政府委員 先ほども御答弁申し上げましたが、ここで言う「他の」というのは「個人」に係っております。
○江田委員 まあいいとして、そうすると、その「処理情報において識別される個人」、先ほどの相続の場合を考えますと、その「個人」というのは、必ずしもその個人情報が個人別にファイルをされているそのファイルの中に項目として出てくる個人ではなくて、この六号は、相続などが起こった場合の相続人のあたりまでここの「個人」は含むと、それでいいですか。
○百崎政府委員 この「個人」は、いわゆる今生存している相続人ということに相なります。
○江田委員 私は余りそう細かなことは別にやりたくないのですが、ただ、今質問したのは、どうも全体が非常に細かく細かくできてはいても、やはりずぼっと何か抜けるようなところ、きちっと法案作成上整理されていないようなところが出てくるよということで、お答えまでに随分時間がかかりまして、会議録になるとその時間がかかったことは載らないのでしょうけれども、大分時間がかかったのですが、この法律が本当に周到に注意をめぐらすのは、行政機関が持っている個人情報を秘匿するためにはいろんな注意はめぐらされたにしても、こういう文字の扱い方なんかについての注意は十分でなかったんじゃないかということをちょっと感じたものですから、そんな細かなところを聞きまして、大変失礼しました。
ところで、第三条、統計調査関係すべて適用除外、この点について、国勢調査というものがプライバシーの侵害になるのではないかという心配をされる方が大勢いらっしゃるのですけれども、国勢調査の原票というのは、これはコンピューターに入力されるわけですか。
○田中(宏樹)政府委員 コンピューターに入力されます。
○江田委員 それがごそっと全部この個人情報保護法から外れてしまうのは、これはなぜですか。簡単でいいですよ。
○田中(宏樹)政府委員 統計調査によって集められました個人情報というのを本法案の対象から除外しました理由でございますが、三つ挙げさせていただきます。
本法案は、個人が識別され、その個人に着目した使用が行われる可能性のある個人情報を対象とするものでございますが、それに対しまして統計調査によって集められた個人情報というものは、統計を作成するため集計処理され、個人が識別されない形で使用されることが前提であること。
それから二つ目は、統計調査につきましては、国民との信頼関係を維持し、正確な申告を得ることを通じまして統計の真実性を確保するため、統計法において秘密保護の仕組み等が既に存在していること。
三つ目でございますが、行政機関が行う統計調査の実施に当たりましては、総合調整機関としての総務庁が厳しい管理を行っていること等の理由によるものでございます。
○江田委員 国勢調査の結果はどういうふうに利用されることになっているのですか。地方公共団体から依頼があった場合などはどういうようにしますか。
○田中(宏樹)政府委員 御質問の趣旨は、国勢調査の全般の集計ではなくて、地方ごとに利用される、こういう意味かと思いますが……(江田委員「両方」と呼ぶ)両方でございますか。御質問の個人情報といいますのは、国勢調査の場合には国勢調査の調査票だというふうに理解されますが、国勢調査の調査票は国勢調査施行規則によりまして三年間保存ということになっておりまして、その間は、総務庁の統計センターにおきまして厳重に保管しております。なお、保存期間が終了しました調査票は秘密保持のため溶解処分に付しております。
国勢調査を集計するために調査票の中身を記録しました磁気テープを作製するわけでございますが、その磁気テープには個人の氏名は入力いたしませんし、またこの磁気テープも総務庁統計センターにおいて厳重に保管しているところでございます。
なお、国勢調査以外の使用でございますが、この場合は統計法十五条の第二項の規定に基づきまして、総務庁長官の承認を得た場合に限りまして統計作成の目的に限り許されるという制度になっております。
○江田委員 その利用ですが、これは集計結果を公表するわけですよね。その公表の方法はどうなっているのですか。
○田中(宏樹)政府委員 報告書によります公表でございます。
○江田委員 報告書というのは書面ですか。
○田中(宏樹)政府委員 そうです。
○江田委員 磁気テープによる公表というのもあるのじゃありませんか。
○田中(宏樹)政府委員 公表いたしますものは報告書で公表いたしますが、その同じものを磁気テープに入れまして、最近は印刷物による利用よりは磁気テープによります利用というようなことが非常に盛んになりましたといいましょうか、そういうこともございますので、そういう提供の方法もございます。
○江田委員 磁気テープによる公表になりますと、御信頼申し上げますので怪しいことはないと思いますけれども、それでも国民から見るとわからぬわけですよね。書いてあるものだったら読めばわかるけれども、磁気テープではそれをディスプレーに出してみないことには何かわからないというので、本当に国調の結果というものが、プライバシーがきちんと守られているのだろうか。これがこの個人情報保護法からすぽっと抜けて、これに対する個人からのアクセスというものが全然なくなってしまったら不安だということになるのですが、間違いないのでしょうね。
○田中(宏樹)政府委員 先ほども申し上げましたように、調査票が溶解されました後は、磁気テープには個人の氏名は入っておりませんので、これは個人識別は実際上不可能でございます。
それから、余り口幅ったいことも言いたくないのですけれども、我が統計の関係は明治以来そういうことで事件を起こしたことはない分野でございますので、御信頼いただきたいと思っております。
○江田委員 明治以来今日まではそれほど計算機が発達していなかったから大丈夫で、今これほど計算機が発達したから皆心配しているわけですから、統計といえども、やはり個人の情報のコントロール権といったことも考えなければならぬ時代はそれなりに来るんじゃないかという気がしますが、きょうはその程度でおきます。
次に、六条は事前通知ですが、これが先ほども言いましたように、随分例外が多いのです。特に二項、これは一つ一つずっと聞いていくと、審議時間が幾らあっても足りないぐらいあるのですが、特に十号、「処理情報の本人の数が政令で定める数に満たない個人情報ファイル」この数は一体どのくらいなことをお考えなのか、さらに、数が少なければなぜ例外にするのか、これをお聞かせください。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
第六条の二項の第十号に規定します個人情報ファイルにつきましては、極めて小規模なものでございまして、実質的に、マニュアルといいますか手作業の個人情報と余り変わりがございませんで、かつ外部に提供されないものでございますので、個人の権利利益の侵害のおそれが非常に小さいということから事前通知の除外としたものでございまして、私どもは、ただいま申し上げましたような観点から、政令で定める個人情報の本人の数としましては、千程度を考えております。
千程度以下は保護しなくてよいのかという意味の御質問かと思いますが、千程度以下のファイルにつきまして一々事前通知とか公示を行いますと、行政事務のOA化の推進とか事務処理の効率化の要請、それからまたマニュアルの文書管理の個人情報、そういうものとの均衡を考えまして、総合的に判断して千程度が妥当ではないかというふうに考えております。
なお、千程度のファイルにつきましても、先生御承知のとおり、本法第五条で個人情報の安全、正確性の確保、第九条で利用、提供の制限、そういうことの保護措置が講じられておりますので、個人情報の保護に欠けることはないのではないかというふうに考えております。
○江田委員 念を押しておきますが、五条とか九条とかというのは、こういう例外になっている、例外というのは事前通知とかその他の例外になっているものにも全部係る、これはいいのですね。
○重富政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
○江田委員 やはり、そうはいっても、六条二項十号、気にはなるのですよね。保有機関以外の者に提供することが予定されていなくても、何とボタンの押し間違いで提供されてしまったなんというのは起こるわけですね。ですから、電算機というのは本当に怖いわけで、予定はされていないからいいんだといっても、思いもかけず変なところでその情報が漏れてしまったということはあるだろうし、それから、数がマニュアルとの均衡で少ないものは余りぎりぎり言わなくてもといっても、ここへ数を少なくすることはできるわけですよね。つまり、膨大なデータ量を集めたファイルであっても、それを今度、因数分解風に細かく区切っていけば、例えば犯歴カードというのが何万、何十万、何百万かな、ありますね、それを細かく犯罪類型ごととか、さらに細かく県別とか年齢別とかなんとかに分けてしまったら、そうやってずっと細かくして、それをどこかであと検索するコードさえつくっておけば、そうすると、一つ一つのコードというものはファイル数千ぐらいにすることができるじゃありませんか。そんなふうにして、非常に重要な国民の権利義務に大変な影響を与えるようなファイルが細かく分解されて、この十号に当たるようなものになってアクセスできないというようなことになることはありませんか。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
先生のおっしゃるようなことも十分考えられますけれども、私どもは、同一の検索システムでそういうばらばらになった小さいものが検索できるとします場合は同一のシステムとして扱いますので、そういうことは運用上認めるつもりはございません。
○江田委員 ここはよく気をつけてほしいと思いますが、なぜ一体そこまでいろいろ疑うかといいますと、今のほかに六条の二項の五号、六号、七号、八号、九号と、これは全部そう言えばそうだけれども、しかし、そういうところに逃げ込めば事前通知さえしなくて済むようなファイルというのがいっぱい出てくるのじゃないか。悪意に考えたら幾らでも悪意に考えられる。
まあ、行政の皆さんのやっていらっしゃることをそんなに悪意に考えなくてもいいじゃないか、もうちょっと信用してくれという気持ちもわかるけれども、冒頭申しましたとおり、もともとこの法律は個人の自由を守っていく、そういう意味では、行政の皆さんをある意味で大変不信の目で見て、悪いことするんじゃないかといいながらいろいろチェックをしていって国民を守っていく、国家を縛っていくという、そういう法律ですから、やはりそこは私たちを信用してくださいとはちょっといかないところだという気がしまして、これだけたくさんの例外があるというのは私は満足できないですが、しかし今のお答えはお答えとして、そういうふうにひとつ運用の間違いのないように気をつけてほしいと思います。
九条二項のことをちょっと伺いますが、四号ですね。これもやはり利用、提供制限の例外が九条二項にずっとあるわけですけれども、かなり怪しい感じがするのは、「統計の作成又は学術研究の目的」これはもう無制限に利用、提供制限がかぶらない、幾らでも利用、提供するということになってしまうのですか。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
先ほど統計局長の方からお答えがございましたけれども、統計の作成の際には、個人の識別ができないような形でデータを扱いますので、その点は心配ない。
それから学術研究のために行います場合は、大学の自治とかいろいろな問題がございまして、これも学者の良心その他によって大丈夫ではないか、こんなふうに考えております。
○江田委員 いや、それがやはり心配で、統計の場合には、そういうことで個人が識別できないようなシステムになっていると言うのですからそれでいいとして、大学の自治、最近は大学の自治もどうもちょっと心配ですね。
その九条二項のただし書きのところに「本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。」というので、ここの解釈もやはり非常に重要な解釈になると思うのですが、このあたりも、侵害するおそれがあるというものを余り狭くしてしまうともう無制限にどんどん出ていくということにもなるので、「おそれ」ですからひとつ……。それをちょっと聞いておきましょうか。この「おそれ」というのはどういう意味ですか。
○百崎政府委員 いわば可能性といいますか、そういった意味に解釈いたしております。
○江田委員 可能性ですね、蓋然性ではありませんね。これはどうも今までのいろんなことからして害するぞ、そういうような蓋然性があるぞというところまでいかなくても、権利利益を害する可能性があるという場合には厳しく利用制限、提供制限をしていきますよ、こういう理解でいいですか。
○百崎政府委員 おっしゃるとおりでございます。
○江田委員 「処理情報の本人以外の者に提供することが明らかに処理情報の本人の利益になる」というのは、ちょっとどうも顕が悪いもので、すぐぴんとどういう事例があるのかわからぬですが、ちょっと教えてください。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
私どもが具体的な例として考えておりますのを二つ申し上げますと、一つは、交通事故や災害で緊急に治療なり手術が必要というような場合に、その本人の血液型や病歴、そういうものを医者に知らせるような場合が考えられると思います。それからもう一つは栄典ですね、叙勲を受けるというような場合、その叙勲の際に本人の経歴や功績というものを推薦する人たちに知らせる場合、そういう場合等を考えております。
○江田委員 病歴と叙勲の場合の本人の経歴、ちょっとじっくり落ちついて考えてみるといろいろ出てくるような気がしますけれども、そうすると、今の病歴の場合には本人には提供しないが、本人以外の者には提供するんですね。
○重富政府委員 私どもは、この九条をお読みいただきますと、第二項の第四号に「本人の利益になるとき」というのがございまして、本人の利益になるときには外部に情報を提供してよろしい、こういう考え方でおります。
○江田委員 ですけれども、本人の利益になろうがなるまいが、本人にはその診療に係る、どういう文言でしたか、十三条一項ただし書き「病院、診療所又は助産所における診療に関する事項を記録する個人情報ファイル」これは開示しないんですね。本人には開示しないけれども、本人の利益だから第三者には利用、提供する、そういう仕組みになっているわけですね。
○重富政府委員 お答え申し上げます。
医療情報というのは本人に一般的に不開示でございますけれども、医師法等に基づいて現在行われている医者等による本人に対する病歴の開示等を私どもは否定しているわけではないということを申し上げておりますので、矛盾しないと思います。
○江田委員 矛盾しないと言い切られまして……。そうですね。
十三条のことは後からもう一度聞くとして、十四条の一項の二号ですが、これも「処理情報が第三者から取得した情報に係るものである場合において、保有機関と当該第三者との協力関係又は信頼関係を損なうこと。」というんですが、「保有機関と当該第三者との協力関係又は信頼関係」となるとこれは随分広い概念です。証券取引所から大蔵省が得た株のいろいろな割り当て関係、今リクルートで問題になっているような場合で、証券局はそれは取引所の方の信頼関係を壊すからとか言って明らかにしないわけですが、この協力関係、信頼関係というのは具体的にはどういうようなことを考えておるんですか。あるいは、協力関係、信頼関係を損なうということは、どの程度まで認められればここに当たるということになるんですか。
○百崎政府委員 この第十四条の一項二号は、行政機関が本人以外の第三者から収集した個人情報で、例えばその提供者が本人にも開示していないもの、あるいは提供者の承認なしに開示してはならない旨の条件が付されているもの、そういうものにつきまして受領機関が一方的に開示するということは、提供者との間の協力関係あるいは信頼関係を損なって、ひいては受領機関の事務にも支障を及ぼすおそれがある、こういうようなことを想定して、そういう場合には開示しないことができるというふうに規定したわけでございます。
なお、その開示するかどうかということは、これは開示の適用除外じゃございませんで、請求の都度本人の利益とそういった第三者の利益あるいは公共の利益を比較考量して個別的に判断するものでございまして、常に第三者との協力あるいは信頼関係を優先させるものではございません。
○江田委員 個別の判断である、個別の事案ごとに妥当な判断をしていくものであって、常に第三者を保護しないんだということですね。しっかり聞いておきたいと思いますし、同時に、今の例示として挙げられましたようなケースの場合だ、だから、一般にそれは第三者から何か情報を得れば、そこに信頼関係があるからといって、それがどこかへ行けばいつでもある程度信頼関係というものが壊れる可能性は出てくるわけですが、そういう一般論ではないんだということに伺っておきたいと思います。
罰則ですが、二十五条、これは処理情報の本人でない者が請求する場合ですか。処理情報の本人がこの罰則に当たる、該当してしまうということはありませんね。
○百崎政府委員 一般的には、他人がその本人と偽って情報を入手する、そういうような場合を考えております。
○江田委員 それは世の中の出来事をすべて何から何まであらかじめ想定するというのも無理な話でしょうけれども、しかし、本人が何かちょっと気になることがあって開示を受けたい、だけれども、何か本人でも開示をお願いをすると罰則があるそうななんと言って控えるというような、そんなような使われ方がすることはゆめありませんでしょうね。
○百崎政府委員 私どもはそういうことはあり得ないと考えております。
○江田委員 二十五条は、これはつまり本人の方、国民の方、個人の方は罰則がありますが、しかし、例えばどこでしたか、十二条か、十二条の行政側の方、こちらには何の罰則もないというのはどうなんですか、均衡はこれで保たれているんですか。
○百崎政府委員 この十二条に罰則規定を設けなかった理由といたしましては、一つは、個人情報の電算処理を行う行政機関の職員あるいは職員であった者、これらにつきましては国家公務員法の規定がございまして、懲戒処分を受ける可能性がある。それから受託者の場合には、いわば行政機関との受託契約の解除事由になる。それからまた個人情報の本人にとっては損害賠償請求の根拠事由になる、いわばその挙証責任が転換される。そういったようなことでこの十二条の義務の適正な履行が担保されるというふうに考えまして、特に罰則を科さなかったわけでございます。
ただ、この規定の違反者に対して罰則を科して刑事責任を問うかどうかということにつきましては、電算処理にかかわらない個人情報、あるいはその他の行政情報一般、さらにはまた民間部門の情報の取り扱い、そういったものとの均衡等々を考慮いたしまして、また別途慎重に検討する必要があるのではないかというふうに考えております。
○江田委員 どうも質問が下手で、二時間という時間は十分たっぷりあると思っておりましたらもう余りなくなって、文部省、厚生省、法務省、警察庁の皆さんに来ていただいているのですが、ちょっと時間がなくなって、大変恐縮ですがはしょって聞いてしまいますけれども、十三条一項ただし書き、これは教育関係、それから医療関係、そして刑事司法の関係、三つの大きな例外というものがあるのですが、まず、医療について聞きます。
医療関係のものがずぼっと抜けているというのは、一つは、がん告知など医療情報がすべて本人に知られると医療行為に阻害が起こることがあるからというのと、もう一つは、医療の場合には医者と患者の関係からそういう告知、説明というものがそれなりにきちんとできているからということだとおっしゃるのですが、しかし、今の診療の中でどれだけ本人に情報をきちんと公開していくかというのは、まだ議論の最中ですね。国によってもいろいろ違うわけです。そこで、先ほども大臣からちょっとお話がございましたが、将来、国民の常識というものが変わっていったらこの診療関係の記録を開示することもあるよ、こういうことにならなければおかしいと思うのですが、厚生省、いかがですか。
○矢野説明員 先ほど総務庁長官の方から、いずれこの法律を見直す時期も来るというお話があったのですけれども、私どももそういうときには、今先生のおっしゃったように国民感情の変化とか医学の進歩、こういったものを踏まえまして、開示のあり方についても検討してまいりたいと思っております。
○江田委員 今の国民感情の変化あるいは医学の進歩、そういうものは将来どうなるか、今こうなってほしいとかこうあるべきだとか、それは言えないにしても、そういうようなものは起こり得る。今、こういう医療、診療関係での本人への説明の方法であるとかいうことは大いに変化している過程にあるのだ、どこへ落ちつくかは別として。そういう認識は厚生省お持ちですね。
○矢野説明員 例えば一つの例でございますけれども、がんにつきましても、従来は医師の方で告げない、教えない、これが一般的じゃなかったかと思います。ただ、こういったものにつきましても、最近はむしろはっきり告知すべきじゃないか、こういう空気も高まっておるやに伺っておりますので、そういった国民感情あるいは医療の実態を踏まえていずれ見直す時期が参りますと、再検討する余地もあるのじゃないかと思っております。
○江田委員 なお、ついでに厚生省のファイル数五十九ということを言われているのですが、これはすべて事前通知と公示の対象にはなりますね。
○矢野説明員 これは対象になります。
○江田委員 文部省、教育関係もずぼっと抜けているわけですが、教育における信頼関係を壊していくのだというのですけれども、共通一次における受験生と共通一次実施機関との信頼関係というのはどういうことですか。
○泊説明員 お答えいたします。
共通一次におけるいわば個人の情報のあり方についてでございますけれども、これは御案内のとおり、共通一次試験を導入するに先立ちまして、御案内のような、ややもすると過熱化した受験競争といったようなことが見られる諸状況の中で、これらの点数等を本人にどういう形で知らせるのがいいかといったようないろいろな観点から、国立大学協会等において御検討いただいたところでございます。そこの結論といたしまして、やはり共通一次というのは入学試験全体としての一部ということであり、共通一次試験のみの結果によって進路指導等が行われるということは、例えば、俗な言葉でございますけれども、いわゆる大学の序列化といったようなものにもつながりかねないということで、本人に直接得点を知らせるということはいかがであろうかということで、現在知らせていない、こういう状況でございます。
○江田委員 これは文教委員会ででもまたゆっくり議論することにしたいと思います。しかし、明らかにすれば大学の偏差値、輪切りがますます進むといったって、もう十分進み過ぎるぐらい進んでいるわけで、そんなことよりもむしろそれぞれの個人に明らかにしていくことの方がいいんじゃないかという気はしますね。
この共通一次の採点のチェックが一体どの程度行われているのか、それが誤っているというようなことは本当に絶対ないものなのか、そんなことについても細かく詰めてみたいところですが、時間がありませんので後日に譲ることにしまして、ついでに聞きますが、文部省のファイルは本省で八つ、学校関係で千百十一ということですが、これはすべて事前通知、公示の対象になりますね。
○泊説明員 一年以内のものと学術研究用を除きまして、対象となります。
○江田委員 総務庁に伺いますが、今の医療の問題にしても教育の関係だって、例えば内申書、内申書は大部分が地方自治体だと思いますが、国立の学校もありますから若干入るかと思いますが、こういうものを生徒なり保護者なりに開示するかどうか、これもまだ議論があるのです。まだというよりも、むしろ最近議論が始まってきたと言えるかもしれないので、本当に内申書というものは教師と生徒の信頼関係だからもう一切教師に全幅の信頼を置いて任してしまうのがいいのかどうか、信頼関係であるからこそ子供たちに見せていく必要があるのじゃないだろうか、今そういう議論もあってこれもなかなか議論の決着を見ないところで、医療についても同じことです。
そういうように、国民の中でまだまだ議論があるところをこの個人情報開示という制度で一つの決着を無理やりつけてしまうということは妥当でない、だから、こういう例外にして開示制度から外しておるんだ、こういう理解だと私は善意に解釈をしておるのですが、いかがですか。
○高鳥国務大臣 先刻来医療関係について御答弁があったわけでありますが、教育につきましても、専ら教師と保護者なりあるいは本人なりとの間の信頼関係に基づいて、それぞれ成績等につきましてはもし教える必要があれば教えていただくということが妥当であろうと考えておりまして、それらのことにつきましては、私どもが判断するよりは、むしろ文部省の判断に基づいてこのようなシステムにしておるわけでありまして、将来必要があれば開示をすることもまた考えなければならない、そういう時期もあり得るであろうというふうに考えます。
○江田委員 法務省の方では二十五のファイルがあるということですが、これは検察庁の犯歴マスターファイルも含め、すべて事前通知と公示の対象にはなりますか。
○馬場説明員 お答えいたします。
法務省のファイルのうちで、例えば犯歴ファイルにつきましては、本法律案の六条二項二号でございますが、犯罪の捜査または公訴の提起もしくは維持のために作成する個人情報ファイル、これに当たると考えますので、事前通知の対象外になるものと考えております。
その他の点につきましては、実際私ども直接所管でございませんので、お答えする立場にございません。その点御了承いただきたいと思います。私ども責任を持って申し上げるのは犯歴ファイルということになろうかと思います。
○江田委員 ちょっと時間がないので次へ行きます。
警察庁のファイルは六つある。これは先ほどちょっとやりとりがあったわけですが、六十二年一月現在で総務庁によって把握されているファイルは六つ。それはこの事前通知と公示との関係ではどうなるか。さらに、今総務庁が取りまとめ中の、間もなく公表していただくファイルとの関係ではこの六つというのはどうなるか、これを説明してください。
○菅沼説明員 お答えいたします。
警察庁が保有いたしております個人情報ファイルにつきましては、運転免許に関する個人情報ファイル、風俗営業に関する個人情報ファイル、銃砲に関する個人情報ファイル、家出人に関する個人情報ファイルでございまして、なおこのほか、犯罪捜査のために保有しております個人情報ファイルもございますけれども、その具体的な内容等につきましては、警察の捜査能力を推測する手がかりにもなりますし、犯罪捜査活動への影響等もございますので、ひとつよろしく御了解をお願いしたいと思います。
○江田委員 おかしいですね。その警察の捜査能力というのをここでひとついろいろ質問してみたい気もしますが、しかし、時間もありませんのでやめておきましょう。
指紋のファイルはあるでしょう。指紋のファイルがないということはないと思うのですがね。指紋について、刑訴法上身柄拘束された被疑者の指紋の収集、これは法律上きちっと強制力もあってできるわけで、そういう指紋はファイルをされているんだろうと思いますが、指紋というと、そのほかに犯罪捜査の際に家族の方とかいろいろな方に協力をしていただいて指紋を採取しますが、そういう形で採取した、つまり刑事訴訟法上の採取以外で採取した指紋もコンピューターファイルはされますか。
○菅沼説明員 指紋に関するファイルにつきましては、犯罪捜査ファイルの一部として保有はいたしております。
なお、お尋ねのございました犯罪現場から採取した指紋についてですけれども、御承知のように、犯罪現場から採取した指紋の中には犯罪に関係のない指紋もたくさんございますので、それを識別して被疑者の指紋を特定いたしますために、犯罪には関係なく現場に出入りし得る家族その他の指紋も当然採取をして照合等するわけでございますけれども、これは必要がなくなれば直ちに焼却をし、また、もちろん同意を得た上でありますけれども、採取をした人の要求があれば返還をするということをいたしておりまして、ファイル化するというようなことはございません。
○江田委員 先ほどおっしゃった四つ、それに加えて犯罪捜査関係の指紋ファイルがある、そこまではわかって、六十二年一月では六つですから、あともう一つが実はわからない。さて本当に一つかな、警察はなかなか懐深いのかな、そんな感じもしますが、もう時間がありませんので、最後に、全体の運用として、訂正等の申し入れということはできることになっておりまして、そしてこの訂正等については六条一項十号の中の定義規定で、訂正、追加、削除、こういうことになっておるのですが、これは行政機関ですから間違ったことがあればすぐに訂正したり、追加、削除したりするから心配するなというお話で、これが申し立てになって、争訟制度を整えるということになっていないのだ、こういうことのようです。
しかし、そのように行政機関を信頼しないというところからこの制度はスタートをしているわけですから、そういうことをおっしゃっても、うん、そうですかとなかなかいかない。争訟は、その後にこういう情報が一定の処分になったときに争訟として成熟するんだから、そのときにのっかる争訟制度で争わせれば十分じゃないか、こういう制度の考え方ということもわからないわけじゃないけれども、しかしそこまでなぜ待たなければならないのか。そこまで待っている間に、行政機関の方はこれが正しいと言っても自分はそれは間違っていると思っておる情報がどんどんどんどんいろいろなところに広がっていくというようなことになったら、これは不安で不安でしようがないですよね。
ですから私は、訂正等というのは、これは申し入れではなくて、何かもうちょっとしっかりした制度にすべきである。こういう場合に、例えば中止請求権であるとか、あるいは訂正等を争訟制度にまでのせなくても、個別の事案の具体的妥当性について第三者が判断をするオンブズマン制度というようなことをここに導入するということも大いに検討に値するのではないかと思いますが、訂正等はこれはこのままでいかれますか、今私が申し上げたような配慮の余地がありませんか。
○高鳥国務大臣 少なくとも訂正を認める以上は、これに対して保有機関の長が明らかに誤りであるというふうに認めた場合には速やかに訂正をすべき義務があることは当然であるというふうに考えます。この第二十条関係におきましても、「苦情の適切かつ迅速な処理に努める」ということを規定しているところでありますし、さらに、この個人情報が的確に保護されておるかどうかということについては、問題のあります場合には総務庁長官がそれぞれ適切な対処をするということにもなってございます。行政苦情処理という形の中で、裁判を待つまでもなく解決する方途もあり得るというふうに考えます。
それから、第三者機関でということにつきましては、私もよその制度なども勉強をしてみましたが、各国それぞれいろいろな規定がございます。ただ、日本の場合には、やはり内閣が国会を通じて国民に責任を負うというのが現在の議院内閣制の建前であると思いますので、戦後アメリカの制度が入ってまいりましたときに行政委員会というのが随分できましたけれども、それは議院内閣制としては本来あるべき姿ではないのではないだろうかということで、総務庁がいわばコミッショナーとか受託官とかいろいろな役をしておりますが、その役割を果たしたいというふうに考えております。
○江田委員 時間が参りましたが、今の例えば行政相談委員制度なども不十分な制度だと思うのですね。私は、きょう十分な質疑にならなかったかもしれませんが、二時間、本当にありがとうございました。この質疑でやはり問題が随分たくさんあるということが、もちろんほかの委員の皆さんの質疑でも同じですが、わかったと思うのですね。大切な制度なので、本当は大きく産みたいけれども、小さく産んでということではあっても大きく育てるようにしたいとは思いますが、しかしそのためには、今のこのままで、はあ、そうでございますかと言うわけにはなかなかいかない。ひとつ理事会で、このきょう議論の修正の対象の関係のところも含めて十分な議論をお願いしたいと思います。
それでは終わります。
1988/10/25 |