2002/07/12 |
154 参院・政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会
10時20分から2時間半、政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会で、あっせん利得法改正案の質疑。与党案と野党案を一括して審議し、私は野党案の筆頭提出者として、与党の質問と民主党の質問に対する答弁を、小川敏夫さんと一緒に引き受けました。8日の参考人質疑の結果を踏まえた質疑が多く、3人の参考人がそろって与党案に批判的だったことを指摘し、また直近のムネオ疑惑や宮路副大臣疑惑にも触れて、修正の必要性を強調しました。
○委員長(沓掛哲男君) 公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案(衆第一六号)及び公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案(参第一七号)の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○千葉景子君 おはようございます。民主党・新緑風会の千葉景子でございます。
この質疑も二回目ということになります。今日は、ちょっと少し焦点といいますか課題を絞りながら、質問をさせていただきたいというふうに思っております。
つい過日、この法案の内容につきまして参考人の皆さんから御意見をちょうだいいたしました。私も聞かせていただきながら、大変示唆に富むいろいろな御意見をいただいたものだというふうに感謝をしているところでございます。
土本先生、それから飯尾先生、板倉先生と、それぞれ自らの専門領域を中心にされながら数々の御指摘をいただいたところでございますけれども、それを聞きながら、残念ながら、どの参考人の皆さんの御意見をお聞きいたしましても、野党案もすべてよろしいということではございませんけれども、与党案でこれで十分だという御意見をお述べになった参考人はおいででなかったように思います。幾つかのところを御指摘をされまして、これで本当に納得できる法案ができるのかどうか、中には、ちょうど一年ぐらいでまた修正がなされる、朝令暮改というようなこともおっしゃりながら、土本先生でしたか、また、余りきちっとしたものができないとまた改正をするようなことになってしまうのではないかという厳しい御指摘などもございました。
それぞれ与党、野党の提案者の皆さんも参考人の御意見をお聞きになったことかと思いますし、あるいは速記録などでチェックをいただいているのかと思いますけれども、まずこの参考人の意見についてどのように受け止められたかどうか、与野党それぞれ御意見あるいは御認識を聞かせていただきたいと思います。
○衆議院議員(保利耕輔君) 先日の参考人の質疑につきましては、私もこの職を務めております以上、拝聴させていただくのが適当であると思いまして、こちらに出てまいりました。
そのときに議員から、山下議員から私のこともおっしゃっていただいて、大変恐縮をしたのであります。さはさりながら、御三方からのお話というのは非常に私どもも耳をそばだててと申しますか、一生懸命拝聴させていただきました。町村議員も来ておりましたが、やはり専門家というのは違うなという感じをいたしたところであります。
ただ、私は残念に思いましたのは、特に土本参考人が地方の私設秘書について入れないというのは論理矛盾だとまで言い切られたところが非常に気になったわけであります。これは、土本参考人には私どもから事前の細かい説明をしておりませんでしたので、極めて常識論として、中央の私設秘書が入るならば地方の私設秘書も入って当然だというような、私設秘書という言葉そのものからくる印象を述べられたものじゃないかなと思っております。私どもが申しておりますのは、せんだって来申しております私どもの論理がございまして、ここのところをお分かりいただけなかったことは残念だなという気がいたしております。
なお、これは私どもの方から申し上げることではありませんが、賄賂という言葉は適切でないということは複数の先生方から御指摘があったということは、なるほど専門家の御意見だなというふうに拝聴させていただきました。
その他いろいろございましたが、衆議院では参考人質疑がございませんでしただけに、私が参考人質疑を聞かせていただいたということは、大変こういった問題を今、今回だけでなく、将来とも考えていく場合に大変重要な御指摘をいただいたものだと、そのように認識をさせていただいたところでございます。
○委員以外の議員(江田五月君) 先日の参考人質疑は、私自身はこの委員会の委員でないので、残念ながら聞いておりませんでした。しかし、非常に重要な質疑であるということで、後ほど同僚の委員からの御説明も受けたり、あるいは昨日、まだ未定稿ではありますが、会議録を熟読させていただきました。
特徴的なのは、やはり三人の専門家の皆さんがこぞって、今の衆議院から送付された与党案ではいけない、このことを強調しておられたということですね。私ども野党の案についても、これで絶対全部いいとおっしゃった方はおられませんでしたが、しかし今の保利先生の言われる賄賂という言葉はどうかということ以外のところは、これで本当にもうアリのはい出るすきもない、そういうものになっていると、こういう意見もございまして、意を強くしているわけでございます。特に、土本教授は最後のところで、行政への口利きこそ政治家の仕事だという日本の政治の常識を転換させることを目指して本改正作業が進められるべきものと考えるのでありますということで終わっておられまして、正にそのとおりと。
昨日、今日、また起きましたですね。宮路厚生労働副大臣のケースは、これは相手が公務員でないから私どもの法律ができたとしてもすぐ当たるわけじゃないけれども、しかし、やっぱりそれは口利きの典型ですよね。私も、それは法にも欠陥があって、国民の皆さんが、法律ではそうなってもこれは政治的にやはりどうしても救済してほしいというようなそういう声を政治家に寄せられる、それを我々は行政に届ける、そういう仕事も大切な仕事だと思います。しかし、そういう場合じゃなくて、一般にもう口利きが横行しているじゃないですか。この社会、私たちの社会がコネ社会、リベート社会になっているじゃありませんか。その中枢に政治家がいるじゃありませんか、中央、地方を加えて。ですから、これはやはり参考人の皆さんの意見も聞きますと、どうしてもここはしっかりした改正をしなきゃならぬと思っています。
もちろん、私ども野党の案の提案者として、野党案は万全だと、こう言いたいところでありますが、しかし多くの皆さんの声を聞きながら、およそ三点ほどに絞られてきているんじゃないか、今回改正すべき事項は。それは、やはり一つは処罰の対象、これを私設秘書を国会だけじゃなくて地方の政治にも及ぼすと。今、保利先生、そのことについて土本教授に十分説明していなかったのでというお話ございましたが、私はやはり土本教授のこの判断というのは適切だと、これが一つ。それから、あとは権限に基づく影響力行使ですね、これを削除する。そして第三者供賄、これをちゃんと加える。これはもうほぼ一致しておりまして、参考人の皆さんのこういう強い御意見というものを私たち国会として真剣に受け止めなきゃならぬと。与野党対立の話じゃありませんから、是非とも与野党の合意をそういう辺りで探ることが参考人の皆さんに対する私たちの責任だと思っております。
○千葉景子君 今それぞれから御意見を、御認識を聞かせていただきましたが、やはりその中で与野党共通するのは、やっぱり衆議院ではなかった参考人の意見聴取もさせていただいたということもあり、それらの意見も十分に尊重しながら良いものを作っていこうということではやはり一致できるのではないかと、こう思うわけでございます。
そういう意味で、与党の皆さんの方でも、可能であるならば、やっぱりこの点は参考人の皆さんがこぞって指摘をする問題もあるし、修正などの御検討もされておられるか、あるいはしなければいけないとお考えであるのか、その辺を今日は聞かせていただきたいというふうに思います。
どうでしょうか。与党の側で原案出されておられますけれども、それにやっぱりいろいろな意見を加味していこうと、修正も余地ありとお考えなのかどうか、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。
○衆議院議員(保利耕輔君) できますことならば、与野党が合意をして与野党とも納得できる案を作るということが、こういった法案の性格からいって大切なことかと思っております。せんだって来、九項目にわたります改正についての検討、御要望といいますか、検討課題と申しますか、そういったものをお示しをいただきまして、私どもも数回にわたりましてこの項目についてそれぞれ勉強をさせていただき、検討をさせていただいたわけでございます。
今、江田議員から重点的には三項目ぐらいになるのかなというお話がございました。そういった問題については私どもも重点的に検討したことではございますが、現在この問題については、私どもそれぞれ与党三党として機関決定をしたいきさつがあり、さらにまたその背後には、それぞれの党の中のそれぞれの機関で了承を取って持ってきているということもございまして、なかなか動きにくいのが実際でございます。そしてまた、私自身衆議院におきましても、また参議院におきましても御答弁申し上げておりますように、もろもろの理由から、この修正についての御要望については私どもが了とするには非常に難しいというふうに申し上げておきたいと思います。
○千葉景子君 難しいというお話ではございますけれども、まだ時間も多少あることでもございます。やはり多くの国民が納得できるような、そして専門家の皆さんから法案を見ても、これなら納得できる、筋の通ったものだとやっぱり評価をいただけるような、そういう法案に仕上げることがやっぱりこの委員会としても責任であろうかというふうに思いますので、是非難しいというところを更に御努力をいただきますようにお願いをさせていただきたいというふうに思っております。
この法案を考えるに当たってやっぱり一番基本になるのは、一体政治活動というのをどのように考えていったらいいのかということにやっぱり最終的には尽きるのではないかというふうに思っています。
今お話がありましたように、また厚生労働副大臣が言わば口利き的行為があったということで非常にまた問題視されているところでもございます。これは確かに行政機関に対する口利きということではありませんけれども、その態度を拝見いたしますと、政治家というのは口利きが商売だ、それが当たり前だとのごときの何か御発言もあると聞いて、私も大変唖然としているところでございます。
やはり、政治家が本来の仕事をする、それがこの法案によってきちっと担保されるかどうかと、こういうところが問われるものだというふうに思いますので、改めてこの際、確認をさせていただきたいというふうに思いますが、与党、野党、それぞれこの法案を策定されるに当たりまして政治活動というのをどういうふうに認識されているのか。まさか、口利きが政治家本来の仕事だというふうにお考えになられましてこの法案を作られたということではないというふうに思っております。
特に、与党の皆さんにちょっと付け加えてお尋ねをさせていただきたいというふうに思うんですけれども、この法案の趣旨説明の中でも、「あっせん行為による利得の禁止と政治活動の自由とのバランス」ということを述べられておられます。これをこのまま読ませていただきますと、あっせん行為による利得の禁止をすると政治活動の自由というのが制約されると、こういうふうにお考えなのかなとも読み取れるわけですね。どうもそれは、あっせん行為による利得を、得たからといって、政治活動の自由が制約されるとはとても私は思えないのですけれども、こういうことも含めまして、それぞれ政治活動の本来の姿というのは何なんだろうか。口利きというのがその一部で、やっぱり一応認めてそのバランスを取らなければいけないんだと考えておられるのかどうか、そこの認識をそれぞれお聞かせいただきたいと思います。
○衆議院議員(保利耕輔君) 後ほど我が党の町村議員からも補足説明をしていただきますが、少し余計なことかもしれませんけれども、私が初めてこの国会に出ましたのは昭和五十四年でございましたけれども、そのとき先輩から私呼ばれまして、君、憲法四十一条を知っているかと、こう聞かれまして、実は私はお答えができなかったんであります。そこで、戻りましてから憲法四十一条をきちんと読み直してみまして、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」、そのことを頭の中にたたき付けられました。と申しますことは、やはり我々が第一義的にやらなければならない仕事は立法活動である。そして、民意を酌んでその国民生活を律するところの法律を作るのである、そういうことを第一義に、一番最初に頭にたたき込まれたわけでございます。そのことは今も全く変わりはございませんで、我々の仕事は立法府において働くことである、いい法律を作ることであるということは変わりありません。そのための準備行動でありますとか、あるいはその法律の、いろいろな法律の検証でありますとか、あるいは予算を編成する作業でありますとか、あるいは予算を審議することでありますとか、そういったことに力点が置かれるべきであるというふうに私は理解をいたしております。
細部の点、いろいろ御質問がございましたので、町村議員から答弁をいたします。
○衆議院議員(町村信孝君) まず、あっせんという言葉についてお触れになりました。どうも昨今あっせんというといかにも悪いことというふうに言葉自体が変化をしてきているような印象があることは、私はちょっとおかしいんじゃないのかなと、こう思っております。
これは法令用語事典というのを改めて見てみたのでありますが、ある人とその相手方との間の交渉が円滑に行われるよう第三者が世話をすることをいうと、こういう法令用語事典のあれがあります。実際、法律上も職安法五条一項、雇用関係成立のあっせんとか、災害対策基本法三十条、職員派遣のあっせん、都市再開発法百三十八条一項、資金のあっせん、労働関係調整法の労働関係については紛争の解決のための調停、仲裁とともにあっせんというこういう制度がありまして、こういうあっせんが悪いということはもとより言えないわけでございます。あるいは土地収用の際の当事者間の紛争についてのあっせん、著作権法の著作権紛争について、その解決のためのあっせんの制度などなど、法律の数にして二百五十七、使用件数八百十二回、これは専門家に検索をしていただいたので私が全部当たったわけではございませんが、事ほどさように、あっせんということがすべて悪だという前提の御議論は、これは当たらないんだろうと、こう思っております。
その上で、委員はそのあっせん行為による利得の禁止と政治活動の自由とのバランスというのは何かおかしいんじゃないかというようなお話がございました。私は、政治活動の自由というのは、極めてこれは憲法上に認められた重要な権利であるということであって、それが最大限尊重されなければならないということは言うまでもないわけでございまして、このことはこの法律の制定時、あるいは今回の審議におきましてもこの法律によって政治活動の自由が萎縮されてはいけないということははっきりさせようという趣旨で、法律上もこのことが明記されているのは委員御承知のとおりでございます。
したがって、政治活動の自由を含む表現の自由を確保するために、この構成要件の明確性を求められるということもまた当然のことであろうということで、いろいろな定義の規定等々を明確にしているということでございまして、逆に今回の野党案では、むしろあいまいな形で、「特定の者に利益を得させる目的」、これは非常に私はあいまい過ぎてかえって政治活動そのものがゆがめられるおそれがある。例えば、正に特定の企業のために受注をさせるような働き掛け、これはもう、そして利益を得る、これはもう論外でありますけれども、例えば地域の方々が、この地域には公民館あるいは福祉会館、教育会館、そういうものがないからこういうものを是非造ってくださいと市会議員の方にお願いをする。陳情をする。市会議員の皆さん方がそれを市長に働き掛け、ある意味ではあっせんをして、そしてその地域に立派な会館ができたということ、こういうような正に一般住民あるいは幅広いそれが全国団体であるかは別にして、そういうような活動もあるわけでありまして、そういう活動と、やはり犯罪性のある行為とをどこかで線を引くという意味で構成要件を明確にするということはこれは当然のことではないだろうかと、こう思っております。
○委員以外の議員(江田五月君) あっせんは政治活動なのかという御質問ですが、今、町村さんから非常に詳細な答弁ございましたが、しかし考えてみますと、今、町村さんがお挙げになったような例は、すべてこれは制度化された機関の下であっせんというのが行われるわけですよね。しかも、そのあっせんをする人は一定の中立性であるとか廉潔性であるとか、いろんな義務を負ってやっているわけですよ。今お挙げになった例のどれか一つでも、あっせんをして、そして利得を得たら、それはそれで許されるというものがあるかどうか、私はむしろ逆に伺いたいのであります。
保利さん、憲法四十一条を引かれました。そのとおりだと思います。同時に、私は憲法四十三条というものを引いてみたい。「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」というものですね。つまり、国会議員というのは、自分がいろいろ知っている、いろんな関係のある組織や団体や個人やそういうものの代表じゃないので、全国民の代表として立法活動を行うわけですから、やはり国会議員の活動、これは行政と国民との関係をあっせんをする、これが国会議員の活動であるということは、到底それは容認できないことだと思います。
しかし、私、先ほど述べたように、法律に抜け道があったり、あるいは法律が曲がって適用されたり、行政の目が届かなかったり、そして非常にそうした中で困っている人たちがいる、こういう人たちの声がもう最後にやむにやまれず政治家のところに届けられる、それを行政に伝える、そんなことはやっちゃいけないとは思いません。ただ、私は、それも制度化される必要があるだろうという気がするんです。
今から三十年以上前ですが、イギリスに留学をさせていただいて勉強したことがありますが、イギリスにオンブズマン制度というのがありまして、これは行政に対するオンブズマン。これは制度がきっちりできていて、国会議員が選挙民から要請を受けてオンブズマンにそれを伝える、オンブズマンが行政に乗り込んでいっていろんな調査をする、そういうことが制度化されているわけですよね。
そうでなくて、全く個人的な関係であっせんをして、しかもそれから利得を得るがごとき、これは許されることではないと。今、本法案審議に当たっても、厳しくすると政治家の政治活動の自由を阻害するんだという、そういう声が出てくるというのは、国民から見ると、やっぱり国会議員にいろんなコネを持たなきゃこの世の中生きていけないのかと、そういうふうに聞こえるんですよ。それは、国会議員がそういうことを言って、自ら全国民を代表する議員であるということを否定するような言辞が見られるということは誠に残念でございます。
○千葉景子君 それでは、少し具体的な法案の何点か項目についてお尋ねをしたいと思います。
まず、先般の参考人の御意見にもございました処罰対象についてでございます。
野党案では、この処罰対象に私設秘書全般、地方首長、議員の私設秘書までをも含めるという形になっております。こういう全般含めることになった、した理由、これについて御説明をいただきたいなと思います。
○委員以外の議員(小川敏夫君) その点につきまして、まず論理的な側面から説明させていただきますと、この保護法益は何かということになりますと、公職である者の廉潔性及びこれに対する国民の信頼とともに、被あっせん公務員が行う公務の公正さに関する国民の信頼というものであります。そうした観点から考えますと、公設秘書も私設秘書もそうした保護法益を侵害する対象としては変わらないということでございます。
次に、実際上の理由から申し上げます。
これまで数多く起きたこの種事件を見ましても、公設であると私設秘書であると、ともに同じように起こしておりますし、また公設であると私設秘書であると、給料の出どころが違うだけでして、その仕事の内容は変わらないという実態にございます。そして、実態を踏まえて、公設の公務員だけというのは、これは余りにも実態にそぐわないし、むしろ抜け道を、悪いことをするときには私設秘書を使うというような抜け道を残すということにもなります。そうした意味で実効性を高めるためにも必要であるということでございます。
○千葉景子君 それに対しまして、与党案の方では、既に先ほどちょっと触れていただきましたけれども、処罰対象に国会議員の私設秘書は加えられてございますけれども、地方議員、首長の私設秘書は加えていないということでございます。これも先般、参考人質疑で私もなるほどなと思いました。保利先生は、いや、そこが違うんだと先ほどおっしゃっておられましたけれども、やはり公設、それから私設秘書、実態としてはなかなか区別ができないんだ、だから国会議員の私設秘書も加えたという従来からの御説明でございました。
ただ、それにもかかわらず、地方議員、首長の私設秘書、これは公設の制度がないので私設秘書も加えないという御説明なども先般来ございましたけれども、どうも論理的に私は納得できない部分がございます。今、野党提案者の方からもありましたように、結局、この私設秘書を除外をしておくことによって抜け道をやっぱりたくさん残してしまう、そういう結果になるのではないかというふうに思います。
やはり、先ほど、この法案の基本的な考え方として、一体政治活動というのはどうあるべきかということを考えますと、できるだけやはり抜け道がない、そして議員の、政治家の政治活動が本当に透明性を持って、そして多くの皆さんから信頼されるような形を担保できるものが必要だと思いますが、この処罰対象に地方議員、首長の私設秘書を加えておられない、この点について改めてお尋ね申し上げ、この点について再考されるお考え方はないのかどうか、改めてお聞きしたいと思います。
○衆議院議員(町村信孝君) 千葉議員、あるいは理事会等で三点の特に強い御指摘があったと聞いております。その一点が、地方議員、首長の私設秘書を加えないのかという御指摘であることを私どももよく承知をしております。
そういうことで、改めて与党三党でも十分議論をいたしましたが、私どもとしては、従来の答弁の繰り返しで大変恐縮でございますけれども、やっぱり国会議員の秘書というのは、公設秘書だけが国民の税金で給与を払われているという公務員であり、さらに法律上も国会議員の政治活動を補佐するものとして国会法百三十二条で明確に位置付けられている存在であると。また、国会議員の権限に基づき影響力を行使し得る立場にあるということから、独立の犯罪主体として従前の法律でもなってきたわけでございまして、本法の性格に照らしますと、基本的には議員秘書あっせん利得罪、あっせん利得罪は、議員、首長と、それから秘書、両方あるわけですが、議員秘書あっせん利得罪の犯罪主体の中核というのはやはり公設秘書であると、こういうまず私どもはスタートに立っているわけでございます。
ただ、さはさりながら、委員御指摘のような昨今のいろいろな事件があるというようなことから、国民の政治に対する信頼回復という観点から立って、公設秘書か私設秘書かの区別は国民のサイドから見ると判然としないではないか、あるいは国会議員の政治活動を補佐するという実態に着目すると公設も私設も変わりないじゃないかというようなことから、今回、私設秘書を追加する必要があるということに判断をしたわけでございまして、犯罪主体の中核になります公設秘書のいない地方公共団体の議会の議員あるいは首長の私設秘書についてまで犯罪主体を拡大すべきではないと、こう考えたわけでございます。
したがいまして、抜け道を残しておきたいのではないかというような御指摘は、私どもそういうことを考えているわけじゃございませんし、したがいまして、今、この法律を修正をするというお考えに私どもとしては賛同するわけにはまいらないわけであります。
○衆議院議員(保利耕輔君) 今、町村議員から御説明をしたとおりでありますけれども、若干補足をさせていただきますならば、先ほど、国会議員の公設秘書と私設秘書については、国民の側から見ての区分けが付かない、付きにくいという答弁をいたしましたが、それと同時に、あっせんを受ける側、言わば役所の方、そちらが、この間来た秘書の方は私設秘書なんですか公設秘書なんですかと。あっせんを受ける方が区別がしにくいという実態があるだろうと思います。
それからもう一点は、地方の問題でございますけれども、今回、私どもでは地方の私設秘書については、今、町村議員が申しましたとおり、外しておりますけれども、これで、地方の議員については、秘書については、このあっせん利得罪から外れたぞと、さああっせん利得をどんどんやれというようなムードが起こるということはちょっと想定しにくいのでありますけれども、またそういうことがないように私どもとしては地方の議員についてもその高い倫理性というのを再確認をしていただいて、確立をしていただくことを私どもとしては要望をしてまいりたいと思います。
○千葉景子君 どうもそこのところは私はまだよく分かりません。
もし論理的に御説明をいただいたことからいうと、国会議員の私設秘書を加えることが逆におかしくなってしまう。で、国会議員の私設秘書は実態から見て加えることがやぶさかでないということであるのであれば、どうして地方議員や首長の私設秘書を加えることにそこまで何か否定すべき理由があるのか。どうもそこが私ははっきりいたしません。指摘だけをさせていただきたいと思います。
さらに、処罰対象として与党の案の中には親族というのは触れておられません。野党案の方では親族についても対象となっておりますけれども。これ、親族だからといってすべて加えることがいいかどうかというのには議論があろうかと思いますが、ただ、全く実態から見て無視をしてよいのかどうか、あるいは除外してしまって納得できるのかどうか、されるのかどうか、その辺りは与党の提案者の皆さんとしてはどう考えておられますか。
○衆議院議員(町村信孝君) 親族が全部この法案の中で除外をされているわけではないということは御理解をいただけると思います。なぜならば、衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院、参議院議員の政治活動を補佐するものに該当する者は新たに私設秘書として独立の犯罪主体となるということに今回決めたわけでございますから、その人が親族であってもなくてもその場合は対象になるということですから、親族でも現実にそういう政治活動を、政治家に使用され補佐しているものであれば、親族だって当然これは対象になるという法律構成になっていることをまず御理解をいただきたい。親族だからといって全部アプリオリに除外されているわけではないということでございます。
何でそういう理屈になるかということでありますけれども、やはり常識的に見て、一つは、国会議員の親族である、国会議員の公職にあるそういった政治活動に全く関与していない、そして公職にある者本人の影響力をかりて権限を行使し得ない親族まで処罰対象にするというのはやっぱりおかしいと思いますし、また親族以外の例えば後援会の会長さんというような役員のような、公職にある者本人の持つ影響力を借用して行使し得る立場の者をすべて処罰対象にしているわけじゃないわけでありますから。要するに、公職にある者本人の持つ影響力を借用して行使し得るか否かにかかわらず、親族という身分だけで直ちに犯罪主体となり得るというのはやはり相当ではないんだろうと、こう私は考えておるわけであります。
○千葉景子君 次に、現行法では犯罪の成立に、権限に基づく影響力の行使というのが要件にされております。この、一体、権限というのはどういうことかとなりますと、例えば政党における地位あるいは役職などは多分この権限というものには入らないのではないかというふうに私も解釈をいたします。
ただ、考えてみますと、実態から見て、本当にそういうものを除外をしてしまうような法案内容で十分に目的を達成することができるのかどうか、こういうことを大変私は懸念をいたします。
政党幹部としての影響力などの実態から考えますと、この権限に基づく影響力の行使という要件の存在というのはやっぱり法の実効性を著しく弱めてしまう、こういう結果になるのではないかというふうに思いますけれども、この点について、野党の案ではこれを削除をするという形になっております。その辺の理由。そして、与党の皆さんには、この権限に基づく影響力の行使、こういうものによってこの法案の非常に実効性を弱めるものになるのではないかと思いますけれども、その点についてのお考え方をお聞かせいただきたいと思います。
○委員以外の議員(小川敏夫君) このあっせん利得の処罰法の実効性ということを確保することが国民の期待にこたえるものだと思いますが、権限に基づく、これを国会議員の例に例えますと、当然、国会議員の法律上の権限ということになります。
そうしますと、例えば、具体的に言いますと、国会議員ですと国政調査権がありますので、国の行政に関しては権限が及ぶかもしれないと。しかし、例えば地方自治体に対しましても補助金や交付税の関係がありますので権限が及ぶ範囲があるんですが、例えば地方自治体の職員の採用といったような自治体固有の問題ですと国会議員の権限には影響しないと。そうしますと、例えば国会議員が東京都なら東京都の政党の幹事長、代表という地位を利用してその自治体の人事に関して何らかのあっせんをしたというような場合、これも当然社会的に批判されるケースだと思うんですが、国会議員の権限には当たらないということで放逐されてしまうと。そうしますと、この法律としては実効性がその部分に関して全くなくなってしまうということになりますので、この法律の実効性を高めるために、そうした抜け道を少しでもふさいでおこうということでございます。
また、権限に基づく影響力の行使ということを犯罪の構成要件にいたしますと、影響力の行使が権限に基づいているという因果関係をこれは検察側が立証しなければならないということになりますと、これは請託の有無というような問題と同じように、検察側に重い立証要件を課すことによってこの法律そのものがまた実効性が失われてしまうということでございます。
実効性をより高めることが国民の期待であるということを考え、またこの法案そのものの趣旨を考えれば、当然実効性を高めるということに持っていくべきでありまして、そうした意味では、権限に基づく影響力の行使という構成要件は除外すべきものと考えております。
○衆議院議員(町村信孝君) 権限とは何かという、これも累次お答えをしているとおりでありますから余り細部にわたるのは避けますが、特に国会議員については、議案発議権とか修正動議提出権、表決権、委員会における質疑権等々があろうかと、こういうことであります。
政党における地位、幹事長であるとか政務調査会長等々、こうした役職に基づく権限が含まれるかどうかと。委員御指摘のとおり、こうした政党における地位、役職等に基づく権限は、公職にある者が法令に基づいて有する職務権限に直接該当いたしませんので、したがって本法で言う権限であるということにはなりません。これは委員の御指摘のとおりでございます。
しかしながら、具体的な証拠関係に基づく事実認定の問題にかかわってくるわけでございますけれども、国会議員である政党の役員が影響力を行使して公務員に対してあっせんをする場合を考えてみたときに、政党の役員としての影響力の行使だけではなくて、国会議員としての権限に基づく影響力の行使を含むのが通常であろうということになるわけでありまして、その場合には、権限に基づく影響力の行使として、他の国会議員に対して、幹事長が他の一般の国会議員に対して法案に賛成あるいは反対といったようなことを働き掛ける事実上の職務行為から生ずる影響力というものも権限に基づく影響力の行使として含まれることもあり得るかなと、こう思いますので、当該国会議員の権限に基づく影響力の程度の判断において、当該国会議員の政党における地位、役職等が考慮されるということはあるだろうと、こう思います。
そして、こういう規定があると実効力を、法律の実効性を弱めるのではないかというお尋ねでございますけれども、例えば、先ほど野党の提案者の御質問のように、国会議員と例えば地方公共団体、確かに直接的な権限ということを地方公共団体に持っているわけじゃございませんけれども、国会議員がある県の職員に対して、あなたの県の行う公共事業についてどうも国の補助金の出方がおかしいのではないかということを所管委員会で質問をするぞと言いながら特定の業者の物品購入をしなさいというようなことを働き掛けるようなケースは、やはりこれは影響力の行使の具体例としてもあるわけでありまして、したがって、およそ地方自治体に、例えば職員採用とかいうような話が、もし今、先ほど例が出されましたが、一切こういうことが関係がないというわけではございません。
いずれにいたしましても、実効性を弱めるという目的のためにこの権限に基づく影響力の行使という項目が入っているのではなくて、あくまでもこの法律の構成要件を明確にするという観点からこれを立法当初から入れてあるというふうに御理解を賜りたいと思います。
○千葉景子君 先般、これも参考人の意見を引かせていただきますと、土本先生でしたか、これもいったん死んだような要件だというようなこともおっしゃっておりまして、やはりこの権限に基づく影響力の行使という要件が、これまでも、結局は職務権限があるや否かというような論点の中で処罰から外れていくということもあったわけでもございまして、やっぱりこの法案の実効性を高めていく。そして、やはり今回は議員としての職務の廉潔性、そういうものが基本にあるわけですので、その実効力を高めるという意味では、私は改めてこの要件をやはり与党の側の皆さんも削除をすることを検討をすべきであろうということを指摘をさせていただいておきたいと思います。
次に、第三者供与、これを野党の側では処罰対象に含めてございます。これは元々、刑法上のあっせん収賄罪についてもいろいろと指摘がされてきた問題でございますけれども、この第三者供与を処罰対象に含めようとした理由についてお聞かせをいただきたいというふうに思っております。
また、与党の側には、第三者供与を処罰対象からやはり外していることによって、これまたこの法案のいろいろな、先ほどから幾つか指摘をさせていただいておりますけれども、そういう論点と併せて、幾つも抜け道をあっちこっちに作ってしまうということにこれもまたつながるのではないかというふうに思います。
例えば、この第三者供与を処罰対象にしないとすると、政党支部に対する資金の提供などが除外をされるということになろうかというふうに思うんですが、この際ですから、政党支部というのが一体どれぐらいそれぞれあるのか、自民、公明、保守、それぞれどんな程度か、ちょっと教えていただいて、そういうところのものは全部オーケーになってしまうのかな、こう思いますものですから、ちょっとその辺りも説明をいただきながら、この第三者供与を処罰対象にしていないということに対する御認識を与党側にはお聞かせいただきたいと思います。
○委員以外の議員(江田五月君) 第三者供与というのは、贈賄側と収賄側がいて、収賄側が賄賂は第三者のところへ持っていっておいてくれと、こういう場合ですよね。これは普通の贈収賄ではあるんですが、あっせん収賄の場合にない。
しかし、昭和三十三年当時にあっせん収賄罪の創設を答申した法制審議会でも議論をされている。また、それを審議、可決した衆参の法務委員会でも導入すべしという決議がなされている。昭和四十九年の刑法改正草案でも規定が置かれている。第三者供与というものは必要だという認識はずっと続いていたんですね。先般の参考人質疑でも、土本教授は、まずあっせん収賄の方に第三者供与を入れるべしという、そこから始めろということをおっしゃったんですが、それも筋かと思いますけれども、しかしせっかくここであっせん利得処罰法というものを作るわけですから、長年の懸案にきっちりと結論を出す、第三者供与をこの際入れるべしというのが私どもの考え方でございます。
とりわけ、政治家の場合に、どういいますか、第三者供与を受けるものが山ほどあるわけですよ。政党の本部もあります。支部もあります。支部については、もう今、自民党の政党支部というのは既に七千を超えるという話ですね。最近のことでいっても、鈴木宗男議員の場合も、あるいはまた昨日からの宮路副大臣の場合も、お金がそういうところへ入ってきているという事実が現にあるわけです。さらに、資金管理団体というのもある、あるいは政党の場合の政治資金団体もある。
その他、後援団体等、もう山ほど対価を受けるところがあるのに、全部それが抜け道になってしまうというんじゃ、これは何のためのあっせん利得処罰法かということになるので、この際、何としても第三者供与を処罰対象に含めたいというのが私どもの願いでございます。
○衆議院議員(町村信孝君) 御指摘のあった政党支部、政治や政治資金管理団体、これは外形的には、本人以外の第三者があっせん行為との間に対価性があると認められる財産上の利益を受け取ったとされる場合でも、当該財産上の利益に対して本人が事実上の支配力とか処分力がある、実質的にその人のものであるというふうに認定できる場合には、本人が収受したものとして本法所定の罪が成立をする可能性があるわけでありまして、したがってそういう場合には、第三者供与の処罰規定を設けなくても本法の保護法益は十分保護できると。逆に、本人と全く何の関係もないところに供与された場合でもこの罪が成立するというのはやっぱりおかしいんだろうと思います。
そして、お尋ねでございますから簡単に申し上げます。政党支部の数、自民党、十三年末で七千百二十三であります。ついでに公明党、保守党の分もお答えをして、お許しをいただいてお答えをしておきますが、公明党さんは、平成十四年の一月十五日現在で四百五十五。保守党さんは、平成十三年末現在で七十七。お尋ねではございませんでしたが、共産党さんは、たしか筆坂書記長代理が二万六千とか二万七千とかいう数を言っておられました。
したがって、これは政党により政党の構成の仕方というのは様々でございまして、支部の数が七千あるから多いと。これは政党活動が活発であることの現れ。多分、共産党さんは、私どもの数倍の活発な政党活動を行っている大変尊敬に値すべき政党だなと、そういうふうに思ったりもいたしますので、一概に数によって、数が多いからどうだ、少ないからどうだというのは私としてはいかがなものかと、こう考えるわけでありまして、特に政党支部は、通常は、きちんとしたいろいろな審議機関とか決定機関というのが本人の意向とかかわりなく存在をしているのが通例でありまして、自由にどこから受ける、どこに支出をするということが決められないのが自由民主党の支部の通常の姿であるというふうに御理解を賜りたいと思います。
○千葉景子君 時間ですので、終わります。
ありがとうございました。
○山本保君 公明党の山本保です。
これまで、このあっせん利得の法律について修正をするということで、申し訳ない、改正をするということで議論をしたわけでございます。この法律、いろいろの問題があったとしても、しかし、まずこの段階で一歩前進であって、まず成立させようということについては、私、野党さんについても同じじゃないかなという気はしております。ただし、これまで参考人も含め、またこの議員の委員会での質疑というのはもうどうしてもこれは時間的に制約されておりますけれども、それ以外にもいろいろな形で慎重にまた協議をしてきたというこのことを、何かコンセンサスを何らかの形で残していきたいなというふうに私も考えております。
そういう観点から、少し絞ってお聞きしたいなと思っているわけですけれども、全部は聞けないかもしれません。今、既にお話も出たところがありますので、少し削ってお聞きするかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
最初に、主に問題点が三項目ということになってきたようでございますので、この辺についてお聞きいたします。
第一に、この処罰対象の問題であります。地方議員とか首長さんのいわゆる私設秘書と言われる人を含むと。ただ、私、これは私設秘書という言い方をするものですから何か非常に混乱があるので、正に法文にありますように、使用される者でそして議員を補佐するものと、こう考えますともっと話が分かりやすくなるんじゃないかなとは思います。
これはもう今もお話が出ましたので、これについては与党の方にお聞きする予定でしたが、しないでおこうと思います。ただ、先回の感想だけ申し上げますと、確かに法の理論、解釈論として、この条文ができたときに、今までのような公設秘書からの連続ということよりは、もっと幅広い観点、別の観点から、正にその議員の秘書、議員を助ける仕事というもの、そしてその方たちがこういう行為をしたときに罰せられるという、そういう新しい解釈論が成立するのであるという学者の考え方というのは相当有力なものになりそうだなという気はいたしました。ただ、これまでの経緯からこの法律改正が作られてきたのは、先ほど与党提案者からお話があったとおりでありまして、この二つをどのように調整するのかなというのが今私も課題だと思っております。
そこでまず、野党の提案者にお聞きしたいんです。
そうしますと、例えば正に地方議員の奥さん、配偶者というような方も当然これは含まれるわけでございます。野党のように親族という言い方はしておりませんが、先ほど答弁にありましたように、当然、「使用される」という言葉がちょっと不適切な言葉だとは思いますけれども、補佐をしている方であれば入ると。そうしますと、ほとんど議員の配偶者というのは、やはり一生懸命政治活動を応援しているわけですから、すべて入ることになるだろうと思う。
こういうような非常に重要な変更をもたらそうということになりますと、やはり法律を作るときの手続としても、そのためのいろんなコンセンサスを得たり、また理解をしていただくための手続も必要ではないかと思うわけですけれども、その辺については野党の提案者としてはどのようにお考えでございますか。
○委員以外の議員(江田五月君) 議員の御質問は、地方の議員や首長の場合にも、ここでいろいろこれは野党提案のような改正をすると影響が及ぶ、そこでそういう皆さんの意見も聞かなきゃいけないという、そういう御主張かと思います。
私ども、もちろん地方分権というものは非常に大切なことであり、これを推進する立場である、積極的に努力をする立場である、このことはまず冒頭申し上げておきたいと思います。
ただ、既に地方の議員や首長さん方に対してもあっせん利得処罰法は適用になる、そういう法律を私たち作っているわけですね。そこで、地方の公職にある者も、こういうあっせん利得という関係において、政治の廉潔性、清潔さ、これを保たなきゃならぬということは、既にもうこれは全国あまねくそういう法規制というものが掛かっているということになっているわけでありまして、それを更にその周辺にまで広げる法律を作るというのは、これは国と地方との関係をどうするということでなくて、政治の廉潔性、政治の清潔さというのをどう保つかということでありますから、改めて地方の政治家の皆さんの意見を聞く手続を取らなきゃならぬというものではない。
むしろ、国民一般からすると、それは国会議員もいろいろあるけれども、地方議員もいろいろあるんですよ。本当にもう聞いてびっくりというようなことがたくさんあるわけで、いろいろ言い出すと時間ばかりたちますから申し上げませんが、そういう、国民から見ると、地方の議員、地方の首長についても、怪しいものはちゃんと取り締まれるような法律を作ってくれというのが今国民の気持ちであろうと思っておりまして、そういう意味で、特別、この際、地方分権、地方自治という観点から地方の政治家の皆さんの意見を聞かなきゃならぬという事態には至っていないと思っております。
○山本保君 江田先生のおっしゃることも分からないでもないんですが、そうなってきますと、やはり与党が言っておりますように、「公職にある者」ということで今の議員はやはりそれなりの縛りがあるわけでございますから、このことに関して、作ることについては当然だと思うんですが、今回の形ですと公職にない者が含まれるわけですので、私はやはりここは少し手続が難しいのかなという気もしますけれども、これは私の感想だけ述べさせていただきまして、次の問題に移ります。
次は、「その権限に基づく影響力」ということでございます。
これは先ほどの質問もございましたので、私も同じような形でお聞きしたいわけですけれども、どうもこれがないとやはり難しいのかなという気もしますが、そのときにどこで線を引くのかというのが難しい。もちろん、これは個別事例によって、判例で作られていくものだとは思いますけれども、やはりこの法律を制定者としてある程度その基準のようなものを示す必要があるのではないかなと思うんです。
つまり、先ほども話ありましたけれども、国会議員である限り、確かにすべての国の官庁について調査権等があるということで影響力は持つとも言えますけれども、逆に、一度も委員会にも出席したことがなく、党の部会にも出たことがなく、質問もしたことがないような委員会のその関係する官庁について、一般の国民よりは国会議員があるぞということについては全く異存がないんですけれども、その場合にどこまでそれが含まれるのかなというような気がするわけでございまして、先ほど答弁の中で、この規定は決して、これはここまでは許されるというものではなくて、実効性を高めるための規定であるというお話があったわけですが、与党提案者から、もう少しこの辺、繰り返しでも構いませんけれども、御答弁いただけますでしょうか。
○衆議院議員(西博義君) お答え申し上げます。
若干手間取りまして申し訳ございません。
本法に言われる権限に基づく影響力、これは先ほどから再々議論があったところですが、また若干の繰り返しになるかもしれませんが、お許しを願いたいと思います。
本法まず制定時の質疑の中でもいろいろ議論がございますが、そのときには、公職にある者が法令に基づいて有する権限に直接又は間接に由来する影響力、こういうふうに述べております。すなわち、法令に基づく公職にある者の権限から生ずる影響力だけではなくて、法令に基づく職務権限の遂行に当たって、当然それに伴ってくる事実上の職務行為、これから来る影響力も含まれる、こういうふうに解釈をしております。
行使をするということにつきましては、これもこの影響力を積極的に利用すること、言い換えますと実際にあっせんを受ける公務員の判断を必ずしも拘束する必要はないということでございますが、そのありようとして、被あっせん公務員の判断に影響を与えるような形で、この被あっせん公務員に影響を有する権限を行使する又は行使しないということを、これも明示的に更には黙示的に示すということにあるというふうに言われております。
そして、どのような行為が被あっせん公務員の判断に影響を与える行為に当たるのかということについては、具体的な証拠関係に基づく事実認定の問題であるということは先生がおっしゃったとおりでございます。あっせんを行う公務にある者等の立場、それからあっせんの際の言動であるとか、それからその受ける側の公務員の職務内容、その他諸般の事情を総合して判断をされることになるというふうに承知をしております。
○山本保君 ありがとうございます。
確かに、幾ら影響力を行使しようと思っても、全くそでにされてしまうということもあるわけで、その場合確かに影響力がこれはないんだなと、こういうことになるのかなと思うわけでございます。
それで、じゃ次の問題でございますけれども、先ほど江田先生から触れられました、あっせん収賄罪の創設の経緯というのを触れられましたので、今日、法務省の担当官に来ていただいております。この第三者供与、供賄に関してどのような議論がされたのかについて簡単に御説明いただけますでしょうか。
○政府参考人(河村博君) あっせん収賄罪につきましては、昭和三十三年の刑法改正によりまして、公務員が請託を受けまして他の公務員に職務上不正の行為などをなさせるといったことのあっせんをなす、その報酬として賄賂を収受した場合に、懲役三年以下といった刑に処します刑法百九十七条の四が追加されたわけでございますが、その後、昭和五十五年に法定刑が三年から五年に引き上げられる改正がなされておりまして、また平成七年にいわゆる現代用語化がなされまして、現在の刑法百九十七条の四が制定されているわけでございます。
このあっせん収賄につきまして、いわゆる第三者供与の処罰規定を置くかどうかにつきましては、昭和三十三年の刑法改正により今申し上げましたあっせん収賄罪が導入された際に議論がなされたわけでございますが、将来の立法措置の検討を要望する旨の附帯決議がなされましたものの、条項としては置かれるには至らなかったものと承知しております。また、法定刑が引き上げられました昭和五十五年の法改正の際にもこの点につきまして議論がなされましたが、同じく条項としては置かれるに至らなかったものと承知いたしております。
それで、この第三者供賄というものにつきまして、これは請託を受けまして第三者に賄賂を供与させるものでございますけれども、これまでの適用例ということで、例えば判例などで出ておりますのは、警察署長がその町と町などが設立しております病棟の組合に寄附金をするから寛大な取扱いをされたいという請託を受けまして、そして町とその町などの組合に寄附金を提供させた、寄附金名下で金員を提供させた事案などがあるわけでございます。
こういったあっせん収賄罪につきまして第三者供与の処罰規定を設けることにつきましては、まず前提としまして、外形的に第三者が賄賂を受領したかのように見える事案につきましても、あっせん者本人が事実上支配又は実質的な処分権を有していたと認められる場合には本人が収受したと認められることになるわけでございまして、結局その第三者供賄の規定と申しますのは、あっせん者本人が収受したと認定できない場合に適用されるものでございます。
その上で、現行のあっせん収賄につきまして第三者供与を処罰する規定を設けることにつきましては、不正な行為をさせるという現行の要件を前提といたします限り、そのような不正行為のあっせんの報酬として第三者に賄賂を供与させると。そして、本人自身が利益を受けないという行為類型が理論的にあり得るといたしましても、実際どれだけ存在するのかと。また、そういった類型の行為におけます賄賂とあっせん行為の対価性などの問題点が考えられますし、他方、あっせん収賄罪の不正な行為をさせるという要件を外すといったようなことも考えられるわけでございますけれども、そういたしますと、賄賂とあっせん行為の対価性、あるいはこの処罰価値といった点でより問題のある事例が処罰対象に入るのではないかといったような問題点が考えられまして、慎重に検討する必要があるという状況でございます。
○山本保君 ありがとうございます。
それで、ちょっと一問だけ、申し訳ありません。
今回の参考人の意見から、先にまず刑法、若しくは並行して刑法での収賄罪の方に先に第三者供与を作るべきではないかという意見があったわけでございますが、江田議員、この辺についてはどのようにお考えですか。それだけお願いいたします。
○委員以外の議員(江田五月君) 先ほども申し上げましたが、確かにあっせん収賄罪について第三者供賄、これを導入すべしという強い強い議論があることは確かで、しかしこれがないからあっせん利得処罰法にあっせん第三者供与が要らないということにはならない。やはりこれは、今こういう事態ですから、とにかく今ここにテーマになっているのはあっせん利得処罰法を改正しようというときですから、この際あっせん第三者供与をここに入れるべきであるというのが私どもの考え方です。
○山本保君 ありがとうございました。
以上です。
2002/07/12 |