1992/03/12

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衆院・予算委員会第二分科会

○江田分科員 第二分科会で、外務省のことに関して伺います。長丁場で御苦労さまでございます。
 言うまでもありませんが、歴史的な大転換期に差しかかってきたということだと思います。冷戦が終わった、そして新しい国際システムをつくっていかなければいけない重要なところへ来た、これはもう皆同じ認識を持っていると思いますが、しかし、その新しい国際秩序というのはどういうものであるべきかということについていろんな議論がある。先ほどの小沢調査会もそうしたことの一つの提案、しかしあれでいいかどうかはこれは大臣おっしゃるとおり大いに勉強したらいいことだろうと思いますが、さてそこで、私は、まずアジア・太平洋地域における集団的安全保障の枠組みづくりについて質問をしたいと思います。

 地域的な安全保障の枠組み、これは地域的集団的自衛権ではなくて、集団的地域的な安全保障の枠組みとして今現に存在するものとしては、コンファレンス・オン・セキュリティー・アンド・コオペレーション・イン・ヨーロップ、全ヨーロッパ安全保障協力会議、これが注目をされると思います。

 考えてみると、ヨーロッパというのは、私どもも中学、高校のときに世界史なんというのを勉強したわけですが、ずっと戦争の歴史であったわけですね。やれ三十年戦争、百年戦争、バラ戦争、何とか戦争、何とか戦争とずっと続いて、これがいよいよ一九九〇年にパリ憲章ということで、もうヨーロッパは戦争のない時代に入るんだ、こういう宣言がなされた。

 そこへ至るについて、一九七五年のヘルシンキ宣言で、領土の現状の承認を前提に安全保障、経済協力それから人権、これの尊重を柱に欧州三十五カ国が協力をうたいとげて、長い努力を重ねてきた。現在では旧ソ連の共和国もほとんど参加して四十八カ国になりました。ユーゴスラビアの紛争ではその弱点も明らかになったわけでございますが、まずこういうヨーロッパでの秩序をつくり上げるについて私は大きな役割を果たしたと思いますが、CSCEについての外務省の評価、今後の動向についての外務省のお考え、これを伺います。簡単にひとつお答えください。

○兵藤政府委員 まさに先生御指摘のとおり、一九七五年の欧州安保会議というのは、ある意味では戦後のヤルタ体制を一応ヨーロッパの指導者が集まって追認したという意味で、画期的な会議でございました。このときには、ブレジネフ、グロムイコ両首脳がモスクワから参りまして、ソ連にとっては大成功と言われた会議でございました。

 さて、それからいろいろな紆余曲折があったわけでございますけれども、一九九〇年十一月十八日の、今度はパリの欧州安全保障会議は、私は全くそれと逆であった。つまり、その体制が今度は崩れて、新しい体制がヨーロッパにできた。それを追認する会議であった。そこでコール首相、ゲンシャー外相がその最大の役者と言われたということで対照的であったと思いますけれども、過去においてはそういう役割を果たしてきた。

 今CSCEの役割についていろんな議論がなされているわけでございますけれども、まさに東西のヨーロッパにおける対立が終わって、NATO対ワルシャワ条約機構、そういう軍事機構の対立の構図が終わって、いわば東側にとってはそういう組織が完全になくなってしまった。したがって、安全保障問題については旧ソ連邦、東欧も含めて今空白状態になっている。そこにやはりこれらの諸国にとりましても、CSCE、安全保障会議の一つの大きな意味が出てきたということで、先生御指摘のとおり、旧ソ連邦の共和国も積極的にこれに参加する、また旧東欧諸国もこれに積極的な役割を果たしたいということで、チェコ等も積極的に動いていることは御承知のとおりでございます。したがって、今後そういう意味でも一つの政治的な役割が増大していくであろうというふうに私どもも見ているわけでございます。

○江田分科員 やはりこの冷戦後という時代をどう認識するかなんですが、冷戦構造というのは、対立する二つのブロック、これが安定的に対立して、その対立がバランスを崩さないようにというのでいろいろやってきたわけですが、冷戦後になりますと、そういう対立事項をいっぱいつくってそれを安定させるのではなくて、お互いに共同、協力しながら世界の秩序をつくっていくという、そんな思考方法が非常に重要になってくる。米欧関係についてはCSCEというものがある、あるいはECそしてEFTA、これが一緒になってEEA、あるいはNATOそして旧ワルシャワ・パクト、これが今度はいろいろな関係でNACCといったものになっていくとか、いろいろなネットワークを重ね合わせて、そして紛争の起きない、あるいは紛争を未然に処理する、そういうシステムをつくろうという大変な努力をして、これが功を奏しつつあるように私は見るのです。

 さてそこで、渡辺外務大臣の御意見を伺いたいのですが、私は以前からこのCSCEのような枠組みをひとつアジア・太平洋地域にもつくるべきじゃないだろうか。コンファレンス・オン・セキュリティー・アンド・コオペレーション・イン・エーシア・アンド・パシフィック、すなわちCSCAP、Pが必要だと思うのですが、ということを提案をしてきておりまして、オーストラリアのエバンス外相も同じような考えのようで、と私が言うとどうも大変借越ではございますが、日本の外務省はずっとどうも否定的な態度をとっておられる。ヨーロッパとは地政学的な条件や歴史的、文化的条件が違うとか、アジア・太平洋では同じ価値観を共有してないとか、いろいろおっしゃるわけです。

 確かにそれは、ヨーロッパというのは、例えばローマであるとか、同じヨーロッパが一つになっていたという時代があった。アジアというのは、アジアが一つになっていたということは、アジアは一つとよく言うけれども、しかし現実にはないとか、いろいろあります、確かに。あるけれども、やはりそういう対立軸をどう組み合わせるかじゃなくて、お互いに共同していく、そういうネットワークをどうつくるか、これはどんなに困難でもやはり粘り強くこれからやっていかなきゃいけない、そういう時代が来ているんで、あれがだめだ、これがだめだ、だからアジアでは難しいんですと、これはやはりまずいんじゃないかと思うのです。

 CSCAPは日米安保条約と矛盾するという議論もあるようですけれども、これはアメリカも入れる、ソ連も入れるというような関係ですね。しかしそれは冷戦時代のことなんで、冷戦終結後の新しい世界では状況は変わってまいりました。私はこの二月にワシントンヘ行って議会の上院のスタッフレベルともいろいろ話してきましたが、大いに検討に値する構想であるとの評価を受けました。

 私は、むしろこの集団的な安全保障システムとしては、全体として国連が役割を果たす、国連もいろいろこれから変わっていかなきゃいけませんが、それと同時にそのサブシステムといいますか、地域的な安全保障システムと二段構えにして、そういうものをコモンセキュリティー、共通の安全保障システムとして信頼度の高いものにしていく、そういう必要がある。その中に日米安保条約というものもきちんと位置づけて、これは日米関係の一番基軸となる条約関係ですから、それを大切にしながらその関係をもっと意味のある関係にどんどんつくり直していく、そういう日米のグローバルパートナーシップを全体の中で位置づけることが可能である。こうしてアジア・太平洋地域にいわば国連とCSCAPと日米のグローバルパートナーシップ、三層の安全保障システムを構築すべきであると思っております。

 こういう構想について、ちょっとばっと広げてしまいましたが、外務大臣、どんなお感じをお持ちになりますか。

○渡辺(美)国務大臣 外務省の考え方は、委員が今自分でこうこうこうこうだと言われたようなところに大体集約をされております。

 もう一つの問題は、アジアの諸国が安全保障面でみんなでやっていこうという関心は果たしてあるのかということが一つ。それよりも、当面経済問題では何とか一緒にやっていこう、その方には興味が非常にありますが、余り今のところでは興味を持っているとは我々はまだ見ておりません。

 そこでだれが旗を振るか。日本が旗を一遍振り出すと、これまた変な誤解を与えかねないようなこともありますから、もう少し私は勉強をした上でないと、外務大臣としては、それはいい構想だからひとつ旗振ってやりましょうとはちょっとまだ言えない段階であります。

○江田分科員 そういうことかと思いますが、ひとつ一緒に勉強しましょう。
 変な誤解というのは、多分アメリカのことや何かをお考えなのかもしれませんが、それはあるかもしれないけれども努力しなければならぬ。あるいはこのCSCEの場合でも、当時の旧東側それから旧西側、思惑違っていたのですよね。思惑が違っていたけれどもそういう枠組みをつくって、それで信頼関係醸成、いろいろやってきたらそこに結果があらわれてきたということなので、やはり努力をすることだろうと私は思っております。

 続いて、今度はがらっと変わりまして、死刑廃止問題についてお伺いをいたします。
 先日、フランスで死刑を廃止をしたときに強いリーダーシップを発揮された元法務大臣バダンテールという人が来日をされまして、私が事務局長を務めておりますアムネスティ議員連盟でも懇談会を開きましてお話を伺ったのです。昨年の七月には、十カ国の批准をもって死刑廃止条約、正確には「死刑の廃止を目ざす市民的及び政治的権利に関する国際規約の第二選択議定書」と、ちょっと長い名前ですが、そういう議定書も発効したということでございます。

 一九九〇年の死刑に関する国際連合事務総長の報告書によりますと、死刑廃止国三十八カ国、十年以上死刑を執行していない国は三十カ国、また一部の罪に対して死刑を廃止しているという、もう大部分の罪に対して死刑を廃止しているのだと思いますが、これが十七カ国。日本もこの二年三、四カ月ほど死刑が執行されておりません。私は、そろそろ日本も死刑廃止へ向けてアクションを起こすべきときが来ていると思っております。

 これは、死刑を廃止するについてのことを担当されるのは法務省でございますが、外務大臣、閣僚の一人、しかも副総理、重要な役割を日本の政治の中で果たしておられる政治家の一人止してどういうふうにお考えになるか、ひとつお考えを聞かせてください。

○丹波政府委員 事務的にちょっと一つ。
 先生もおっしゃったとおり、この死刑の廃止の問題は、国民感情及びこれに基づきます国内法制に直接かかわる問題でございますので、外務省としては、国内感情等、協議しながら慎重に検討している段階でございます。

 そういうことでございますので、実態的な問題としては国内感情、国民感情というものを見ながら対応していくというのが、外務省の少なくとも事務的な考え方として今日まで来ておるわけでございます。

○渡辺(美)国務大臣 これは昔から両論ありまして、私はどっちももっともだと思っておるのです、どちらも。これは五分五分。大体そうです。

○江田分科員 大臣の頭の中、大臣のお考えの中で五分五分だということだと思うのですが、それは確かに両説あります。むしろ世論調査などをすると死刑というのは必要だという人の方が多いのですね。ですから、大臣のおっしゃる毛針論でいえば、死刑を廃止しない方がいいという方がむしろ国民の支持を受けるのかもしれません。しかしフランスでは、このバダンテールという人がおっしゃるには、選挙でミッテランさんが公約をした。フランスでも死刑廃止に反対という人が六十数%、それにもかかわらず公約をして、断固これを実現すると言った。その政治家としての見識と強い態度に対して、それを支持するということでミッテラン勝利の一因になったのではないか、そんなような言い方もしているわけでございまして、私はこれは、政治家としてどういう理想像を描き、そこへ向かってどういう努力をするかという一つの見識の問題だろうと思っているわけです。

 外務省の事務的立場はわかりましたし、法務省の方も、まあ国民的な課題だということなんだろうと思いますが、法務省のお答えも伺ってもいいのですけれども、ちょっと伺いしましょうか。簡単にひとつ。

○山本説明員 法務省としましては、国民の大多数が極度に凶悪な犯罪を犯した者に死刑を科することは正当であると考えておりますし、しかも、死刑に凶悪犯罪抑制の特別な効果があると信じていると思われることや、重大凶悪事犯が現在もなお後を絶たないことなどの事情にかんがみて、今直ちに死刑を全面的に廃止することは適当でないというぐあいに考えております。

○江田分科員 まあしかし、国民的な課題なんですよね。世界がこういう動向にある、日本も国際国家として生きていこう、国際社会の中で名誉ある地位を占めようというわけですから、こうしたこともひとつやっていかなければいかぬと思うのです。

 技術的なことで外務省の方に伺いたいのですが、条約への加入とか批准の手続について簡単に説明してください。

○柳井政府委員 お尋ねの点がどういう側面か必ずしも私よく理解いたしませんでしたけれでも、批准とか加入の手続でございますが、条約によりまして、いわゆる最終的にその条約に拘束される意思を表明する方法というものはいろいろあるわけでございます。

 その一番伝統的で重い形が批准というものでございます。それから、ただいまおっしゃったと思いますけれども、加入あるいは署名をもって拘束されることになるということもございますし、千差万別でございます。この条約につきましてということでございますれば、七条におきまして、批准しまたは加入するということでこの条約に入るということが規定されているわけでございます。

○江田分科員 批准ということが必要なのだろうと思うのですけれども、批准のためには国内法の整備というものが必要ですね。この条約を批准するとすればどういう国内法の整備が必要であるかということを検討をされていますか。

○柳井政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、この問題は国民的な課題でございますし、世論の動向それから国内法をどういうふうに考えるかといういろいろな点があるわけでございます。したがいまして、まだ具体的にこの条約の締結の準備というものは始めておりません。いかなる国内法的な手当てが必要かという点は、あるいは法務省の方にお尋ねいただくのがよろしいかと思いますが、いずれにしましても、この条約の一条で、この議定書の締約国の管轄圏内のいかなる者も処刑されないという趣旨のことを言っておりますし、また、第一条の二項では、締約国は、その管轄圏内において死刑廃止のために必要なあらゆる措置をとるということを言っておりますので、常識的には刑法の改正が必要になろうとは思います。

○江田分科員 どうも伺っている様子ですと、批准の前提としてどういうことが必要なのか、これをまだ検討されていないような感じですが、ひとつぜひ検討していただきたい、既に発効しているわけですから。法務省に聞けということですが、例えば女子差別撤廃条約などのときには外務省の方がむしろ、私の理解ですが、リーダーシップを果たして、例えば労働関係あるいは教育の関係あるいは国籍の関係、そういう点について外務省の方が問題提起をして国内法の整備をしていったわけで、法務省に聞けというのはちょっとそうじゃないんじゃないかなという気がするのです。

 そこで、仮に死刑執行停止法というようなものをつくって死刑執行ということを法律上停止する、こういうことになったら、これは批准の条件ができたということになるでしょうか。

○柳井政府委員 先ほどちょっと読み上げましたけれども、この議定書の一条の規定が先ほど申し上げたようなことになっておりまして、締約国の管轄圏内でいかなる者も処刑されてはならない、さらに、死刑廃止のために必要なあらゆる措置をとるということを規定しているわけでございます。このような規定に照らせば、御指摘のような措置だけでこの議定書の定める義務を完全に履行できるかというのは、初めて伺いました御提案でもあり、よくわかりませんけれども、とりあえず考えましたところなかなか難しいのではないかという感じがいたします。

 なお、国内法の関係につきまして先ほど御答弁申し上げましたのは、私どもとしてまだ具体的に検討は開始していないということでございますが、それはほかの条約につきまして外務省がいわば音頭をとって関係の各省と御相談するということはしばしばあるわけでございます。ただ、先ほど国連局長から申し上げましたとおり、まだこの条約の締結の方針というもの、あるいはその方向というものを決めておりませんので、まだ関係の各省に御相談するという段階には至っていないということでございます。

○江田分科員 しかし、第一条の一項「何人も、処刑されない。」ということについては、今の死刑執行停止をしてしまえば処刑はされないわけで、あとは二項の方は必要のある措置をこれからとっていくということですから、あるいは批准の条件を満たすということになるのかもしれません。

 しかし、私は死刑執行停止法というのを実は提案をしないのです。それはなぜかというと、やはりちょっとその法律自体に無理がある。一方で立法府が司法府に対して死刑という法定刑を定めた法律を用意して司法府に死刑の宣告の権限を与えておいて、他方でそれを執行する行政府に対してこれは執行しちゃいけないという停止法をやるというのは立法府として自己矛盾になってしまうわけですから、これはちょっとまずいんじゃないかという感じを実は持っているので、その提案はしないのです。

 しかし、何か死刑廃止に向けてのプロセスを考えたい。本来なら法制審議会で十分議論をかけて、専門家の英知を集めて刑法、刑事訴訟法その他関連法制のあり方を検討してもらう。その間に世論調査もする、広く国民の意見を聞く場も設ける、いろいろなことをやらなきゃいけないということだと思いますが、法務省は法制審議会に諮問するとか、あるいは近々総理府に依頼して世論調査をやるとか、そういうようなお考えは今ございますか。

○山本説明員 死刑廃止へ向けてのステップとして死刑執行停止法をつくるかどうかというようなことに関連してお答えいたしますと、刑事訴訟法四百七十九条には心神喪失の状態にある者または懐胎する女子に対して死刑の執行を停止する旨の規定がございまして、これを一般化して御指摘のような制度を設けるということは、立法論としてはあるいは可能なのではないのかなというぐあいに感じておるわけでございますけれども、基本的な考え方としまして今直ちに死刑全面廃止ということは適当でないと考えておりますし、それへのステップとしてのこのような立法化ということにつきましても現在のところ考えておりません。

 世論調査につきましては、死刑に関する世論調査を行うか否かにつきましてはその実施時期を含めて検討中でございます。ただ、現在のところ平成四年において死刑に関する世論調査を行うという具体的予定はしておりません。

○江田分科員 世論調査を行う計画があるというような報道があったものですから、その点をちょっと伺ったわけです。

 私はやはり立法府のリーダーシップが必要だという感じがしておりまして、立法府で死刑廃止について積極的な問題提起ができるのではないか。そのため例えば、これは今度は提案なんですが、死刑停止法、議員立法の法案を検討してみたいと思うのです。これは、法定刑の中の死刑という規定はそのまま残しておく。そして例えば本格的に法定刑から死刑をなくする方向へ向かうまで十年なら十年の時限つきの特別法で、処断刑として死刑が選択された場合に、もっとも刑法八十一条の外患誘致は法定刑が死刑しかないのでその場合は選択じゃないですが、死刑をもって処断する場合に少年法五十一条のように無期懲役を科すということにする。そして、この規定によって無期懲役を宣告された者については刑法二十八条の仮出獄を適用しない、つまり仮出獄の余地のない終身刑という類型を一つつくる、こういうやり方があるのではないか。

 これは伺ってもちょっと検討していないとおっしゃることになるのでしょうが、このような内容の法律が議員立法でできたとしたら、そうすると死刑廃止条約の批准の条件を満たすことになりますか。

○柳井政府委員 今のような御提案、勉強させていただきたいと存じますが、今この場で結論的なことはまだ申し上げる段階に至っておりません。

○江田分科員 渡辺大臣、五分五分、御自身のお気持ちの中でもどちらかということにまだ決めかねるということだろうと思うのですが、それでも死刑がいいことだというわけにはいかぬと思うのですよね。私も裁判官の経験もあるわけですが、裁判というものも人間のやることですから間違いがある。ところが、人間の命を奪うというのは、これは間違いでしたでは許されないことでもあるので、死刑をしなくて済むならやはり死刑がない方がいいということだと思うのです。もちろん凶悪犯罪を憎むということにおいて人後に落ちるものではない。しかし、国家が刑務官に殺人を強制できるという、これもまたどうもつらいことなので、いろいろな知恵を出していかなければならぬ。

 アメリカなどでもいろいろあって、州によって違うのだけれども、どうも凶悪犯が多いところが死刑が残っている。これはどういう因果関係なのか、いろいろ議論もあるようです。日本では平安時代に、何と保元の乱で源為義が死刑になるまで三百四十六年、死刑がない時代があったんですね。平安時代というのはいい時代だと思うのです。

 私の先生の団藤重光先生が「死刑廃止論」というのを上梓されたということもあり、この国際条約も発効したという時期でもあるので、ぜひ死刑の問題について真剣にひとつ大臣も考えてみていただきたいと思いますが、最後にもし御所見を例えれば伺いまして、私の質問を終わります。

○渡辺(美)国務大臣 真剣に研究します。

○冬柴主査代理 これにて江田五月君の質疑は終了しました。


1992/03/12

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