1993/10/29-2 |
○鹿熊安正君 この十月十七日に、ロシア海軍の専用船TNT27が、ウラジオストクの南東約百九十キロメートルの海上で大量の放射性廃棄物を投棄したことが国際環境保護団体グリーンピースによって通告され、同海域を漁場とする関係者ばかりか、日本国民全体に驚きと不安を引き起こしております。ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄はこれまでにも大きな国際問題となっているところであるが、日本海は海洋というより湖のごとき形状に近いとされているだけに、一たび放射能汚染されれば滞留し、悪影響が生ずるおそれは払拭できないのであります。 今回投棄された規模が法外なものと報道されていることから、果たして海洋汚染はどの程度なのか。また、海産物の安全性の有無についても判断を下し、不安におののく国民に適切な情報提供を行うことが当然と思いますが、これに関して政府はどのような対応を考えておられるのか、まずお伺いいたします。 ○国務大臣(江田五月君) 先般のロシアによります日本海、第九海域というようでございますが、ここに対する液体放射性廃棄物の投棄、これは大変に遺憾でございます。エリツィン大統領がお見えになって、エリツィン・細川会談でいろんな課題を乗り越えていこう、新しい日ロ関係をつくっていこうと、こう約束をしたそのやさきのことですから、大変私どもびっくりもいたしましたし、遺憾にも思いました。しかも、今委員御指摘のグリーンピースの努力でこれが発見され、私ども政府はロシアから通知を受けることなく、後から知るというようなことでございまして、この点も大変遺憾に思ったわけでございます。 そこで、海洋投棄に関連して、これはもう直ちに、去る十月二十日に放射能対策本部の幹事会を開催いたしまして、そしてその開催をした同日、本件投棄の影響を調査するために海上保安庁の調査船を出向させる、こういう対応をとりまして、海上保安庁、気象庁、水産庁による我が国独自の調査を決定、実施しているところでございます。この調査により採取した試料については、これはもちろん国民の皆さんの大変な御関心の高いことでもございますし、正確を期した上で可能な限り早急に分析を行って、専門家による評価、検討を経て、その結果を放射能対策本部幹事会等を通じて迅速に公表しようと考えております。 いずれにしても、委員の御地元を含め、この投棄の影響については国民の皆さん大変御心配になっている。これは十分留意し、今後とも適切に対処していきたいと思っております。 ○鹿熊安正君 今大臣のお話を聞きますと、まだその結果が出ておらないようでありますが、早急にひとつ判断をして国民に情報を提供していただきたいと重ねて要望いたしますとともに、科学技術庁は現在海洋調査船である「しんかい六五〇〇」を所有しておられますが、同船を使って日本海における核廃棄物の探査を早急にすべきではないかと思います。 特に、ロシア政府から関連資料の提出があるのかないのか。あるとすればいいんですが、ないとすればなおのこと早く政府の方でこれらの近海を調査していただきたいと思います。 ○国務大臣(江田五月君) 関連資料の提出の関係については、これはもう機会あるごとにいろんな情報はしっかりこちらへ提供してくださいよということは申し上げているところでございまして、先日もロシアのミハイロフ原子力大臣がお見えになりまして、私も何回もお会いしましてそういうことをお願いしたところでございます。 先般の第九海域における廃棄物の投棄についてもさらに一層細かな情報を、きのう、おととい、二十七、二十八日とモスクワにおいて行われました専門家会合で提供を受けたところでございまして、必要なら申し上げますけれども、「しんかい六五〇〇」によって調査をしなさいという、こういうお話なんですが、私は技術者でございませんのでよくわからないんですけれども、これはどうも聞くところによりますとなかなか難しいんだと、「しんかい六五〇〇」というのはそういう調査には向いていないんだということでございまして、この点どういうことで向いていないかというのは政府委員の方から答弁をさせます。 ○政府委員(石井敏弘君) ただいまの大臣の答弁に補足させていたただきますと、先生御指摘の調査船「しんかい六五〇〇」というものでございますが、その前にいわゆるロシアの廃棄物海洋投棄の問題については、人工物体の廃棄物というようなものと液体の廃棄物というようなものがございます。液体廃棄物につきましては水を採取するというようなことで、海洋センター等の採水器を使って、四月、五月にもいろいろな協力をしたというような実績がございます。 特に、人工物体につきましての探査というようなものになりますと、その地点が極めて明確に把握されるということが必要になるわけでございまして、通常は曳航式の探査装置、ディープトウと申しておりますが、こういったもので事前に調査をし、調査すべき地点というものを把握するわけでございますけれども、非常に深海のことでもあり、このディープトウを使って面的探査をするということは一日当たりに四十平方キロメートルばかりしかできないというような状態でございまして、いわゆるロシアの人工物体の海洋投棄というようなものにつきましては、これまで私どもが聞いておる限りでは調査対象海域は数万平方キロメートルに及ぶというふうに聞いておりまして、その当該地点を明確に特定化するということが非常に難しいというのがまず第一点でございます。 また、この「しんかい六五〇〇」というのは有人の探査船でございまして、人が乗っておるわけでございます。したがいまして、まず人の安全ということが非常に重要でございます。そうなりますと、人工物体等の投棄物の状況というものも十分に事前に把握して潜らなければ衝突の危険性が生ずるとか、あるいはその放射能のレベルというものもそれなりに事前にわかっていなければ、もともとこの「しんかい六五〇〇」は放射能調査を想定してつくったというものではございません。したがいまして、そういったような意味から、直ちに六五〇〇を使うべしという点につきましては技術的にもいろいろ慎重に検討すべき問題がある、かように認識しておるところでございます。 ○国務大臣(江田五月君) 十月十六日に行われました海洋投棄のさらに詳しい概要を申し上げましょうか。 ○鹿熊安正君 いや、後で時間があれば。 聞くところによりますと、十一月上旬に水産庁の調査船陽光丸が日本海主要漁場における魚介類の放射能調査を行うとのことであるが、今までなぜ速やかに調査船を出さなかったのか、その理由をまずお聞きしたいこと。それから、調査船による調査項目はどんなような内容のものか。海水とか海底の土とか海洋の生物とか、あるいは調査期間等々をひとつお聞かせいただきたいことと、その結果はいつごろ公表できるものか、それらについて御説明いただきたいと思います。 ○説明員(吉崎清君) 私どもの西海区水産研究所の調査船陽光丸は本来日本海の調査は担当しておりませんが、日本海がしけてきておりますので陽光丸という大型船を急遽回すということで、十一月一日という期日に出航になった次第でございます。 陽光丸は調査の漁具はトロールというものを持っておりますので、そのトロール漁法によって魚類等を採取いたしまして、それを検査するということにしております。なお、検査のデータは科学技術庁の方へ提出いたしまして、安全評価委員会で評価をしていただいて公表するという段取りになっております。 ○鹿熊安正君 調査項目をもう少し詳しくお願いします。 ○説明員(吉崎清君) ただいま申し上げましたように、トロール漁法でございますので、トロール網に入った魚種を持ち帰って検査をするということでございます。他省庁が水を持って帰って検査をするのに対しまして、一般の国民の方々が一番不安になっておる魚介類を対象に調査をするということでございます。 ○鹿熊安正君 では次に、ロシアにおける廃棄物処理貯蔵施設の完成が早くても一九九七年以降とされておることから、それまでの間、再び海洋投棄が行われるおそれはないとは言い切れないのであります。このため、日本海沿岸地帯振興連盟等を初めとする多くの地域より、これ以上の放射性廃棄物の海洋投棄は後世に甚大な禍根を残すとして即時停止を求めているのは当然のことであります。 こうした国民の声に対し、強硬なロシアの姿勢に打つ手なしとすることは許されないと思うが、政府はどのように対応する用意があるのかお聞きしたいのと、また仮に汚染魚の不安による消費者の魚離れに伴う漁業の経営不振や危機が発生した場合、対ロシア政府への補償交渉の余地についてどう考えておられるか、お尋ねいたします。 ○国務大臣(江田五月君) これは、去年まで随分長い間、ロシアによって日本海各海域に随分たくさんの放射性廃棄物が投棄されていたわけです。私どもその事実を察知いたしまして、ロシアが公表した白書、これを直ちに手に入れて、そして日本独自の調査もいたしまして、さらにロシアに対してはこういうものの即時中止と共同の調査、それから資料の私どもへの提供、こういうことを申し入れたわけでございます。 そして、調査もいたしまして、その結果、中間報告もいたしまして、ことしの八月には最終報告もさせていただいたわけでございますが、さらに先般のものがございましたので、これは二回に分けて行うということですけれども、一回目が行われた直後にその事実を知りまして、知って直ちにその中止とそれから情報の提供を強く求め、ロシア側から中止の表明をいただいたというのが現在のところでございます。 中止をしまして、さらにまたいつやるかわからぬということでございますが、先日ミハイロフ原子力大臣はもうやらないということを言っておるんですけれども、しかしそれでもわかりません。今ロシアの方ではこういう液体放射性廃棄物をためておくキャパシティーがもういっぱいいっぱいなのでこれは出さざるを得ないんだと言いながら、出しません、こう言っているわけですから心配になるのも当たり前で、そこで、じゃいろいろ手助けもしましょうと。 もちろんロシアが一義的には自分でやらなきゃならぬことですけれども、しかし私どももいろいろ技術的にもあるいはその他の点でも手助けもしますからそういうことがないようにひとつやってくださいというので、きのう、おとといの会議、あるいはモスクワで会議をやった皆さんはきょうからあすにかけてウラジオストクでいろいろ視察などをすると思いますが、さらに十一月十日、十一日の作業部会、こういうところで、さあどうするかという取り組みを具体的に詰めていこうとしているわけでございます。 資料の提供等についても決して日本政府として弱腰で対応しているわけじゃありません。ただ、いたけだかになるだけではこれはしょうがないんで、現実にどうやったらこういうことをやめさせることができるかということについて鋭意実務的な作業を行っているということでございます。 ○説明員(林暘君) 損害の件についての御質問がございましたが、一般論で申し上げれば、ロシア側によります放射性廃棄物の投棄によりまして我が方が損害を受けるというようなことがございますれば、これは一般の国際法上の問題として損害賠償の請求はできるものというふうに考えております。 ○国務大臣(江田五月君) もう一つ、魚に対する影響について委員の御懸念がございましたので触れておきたいと思いますが、ことしの八月の私どもの調査結果の報告では、いろいろ調査をいたしましたが、直ちに今日本国民の健康に影響が出てきているような状態ではない、これが調査結果でございますので、これを報告させていただいたわけでございます。 今般のロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄については、調査をする前に予断を持っていろんなことを言うわけにはいきません。調査をしてみないとわからないことではありますが、しかしロシア側が捨てたものはこういうものですよということを言ってきている。これをそのとおり事実だと仮定して、今までのものと常識的に対比をして結果を考えてみると、直ちに魚から国民の健康が損なわれる状態になっているということはないんではなかろうかな、こう思っておるんですが、しかしこれは予断を持って調査をしてはいけませんから、厳密な調査をやって、そしてその結果を国民の皆さんにお知らせする、こういう態度でございます。 ○鹿熊安正君 大臣、非常に丁寧に御説明いただいておるわけでありますが、時間がないものですから簡潔に、要点のみで結構でありますから、お願いいたします。 ○国務大臣(江田五月君) はい。 ○鹿熊安正君 核廃棄物の海洋投棄が許されるべきものではないということは言うまでもありませんが、しかし現実にロシアの核廃棄物の処理施設が十分でない以上、対日抗議ばかりでは核廃棄物の海洋投棄問題の根本的な解決にはつながらないわけであります。そこで、一歩踏み込んだ政府の対応が必要になるのではないでしょうか。 そこで、報道によれば、江田長官とロシア原子力相との会談において、放射性廃棄物処理施設建設の資金難に関連して、日本に対しその建設資金調達のためウラン燃料を購入してほしい旨の申し入れがあったとのことであるが、それは事実でありますか。 そもそも我が国は核燃料の調達に関して長期的視点から計画的に対応してきており、しかもこの問題は基本的に電力会社の問題として位置づけられているところであり、このような申し入れを政府としてどのように考えておられるのか。仮に我が国がロシアの核燃料を輸入するにしても、国が主体となって核燃料を購入すれば内外からの批判も予想されることも考えられることから、日本一国で行うのではなく、例えばIAEA等の国際機関の関与のもとで周辺諸国とともに共同して輸入し、利用していくならば、核管理の透明性が確保されるというメリットも期待できるのではないでしょうか。特に、東アジアにおいては電力需要がさらに増大すると予想される中で、ロシアの核燃料の有効利用は十分検討に値すると考えられるのではないか。長官にひとつその考え方をお聞かせいただきたいと思います。 ○国務大臣(江田五月君) 実は、ミハイロフ大臣とは先般のIAEAのウィーンでの総会でもお会いをいたしました。日本にお見えになってからは十月二十二日、二十五日会談を行いました。いずれの機会にも、ミハイロフさんはぜひひとつ日本はウランを買ってくれ、それが日ロ両国人民のためになる、こういう強いお話でございました。したがって、その要請があったことは事実でございます。 私の方で申し上げたのは、放射性廃棄物というものを出さないようにするために、それはもちろん第一義的にはロシアの責任なんですが、しかし私たちはいろんな技術的な協力もやりましょうと。それはそれで進める。それとウランを買う買わないという話はこれはまた別の問題で、あれはあれ、これはこれで、別々に分けてその話はひとつしようじゃありませんか。廃棄物を出さないようにするための努力は、これはもうずっと会議の日程も決まっているわけですから、これはこれでちゃんと進めてくださいよ、ウランを買う買わないが前提になるということでは困りますよと、これをまず第一に申し上げました。 さらに引き続いて、委員ただいま御指摘のとおり、ウランの購入については、これは基本的には我が国の電気事業者の方の仕事でございまして、供給安定性、経済性を考慮しながら二〇〇〇年ごろまでに必要な濃縮ウランについては既に確保しておる。そこで、これは電力事業者の方に話してみてくれればいいけれども、私どもとしてはなかなか難しいと思いますよと、こういうことをミハイロフ大臣にお伝えをしたところでございます。 各国との共同ということも、これから議論を詰めてみるとしても、なかなか現実的ではないという判断でございます。 ○鹿熊安正君 では次に、ロシアの放射性廃棄物処理施設建設は基本的にはロシア自身の問題ではありますが、現実に資金不足という問題がある以上、援助の実施はやはり必要とも考えられます。無論、援助目的が核廃棄による汚染防止である以上、今後ロシアが核廃棄物の海洋投棄を交渉の条件に資金援助の限りない要求といったことにならないように、資金援助には一定のルールが必要ではないかと考えられますが、どう考えておられますか。 また、仮に核廃棄物に対する対ロ支援を行うことになった場合、政府はどのような対応をするのか。今ほどもお聞きしましたが、重ねて特に財源についてはどの省が責任を持って対応するのか。それもお聞かせ願っておきたい。また、仮にロシア国内の放射性廃棄物処理施設が実際に稼動するためにはある程度の年月がかかると考えられます。それまでの間、政府はロシアの核廃棄物の処理に対してはどのような態度で臨むのか。それらについてもお伺いいたしておきたいと思います。 ○国務大臣(江田五月君) おっしゃるとおり、基本的にはロシアが自分で対処をすべき問題である。しかし、ロシアが、いや、できませんからしょうがないんですと言って捨てるということがあってはこれは困るわけでございまして、私どもそういうことにならないように、先ほどから御説明しているとおり、先日、十月二十七、二十八日のロシアでの専門家会合、さらに二十九、三十とウラジオストクにおける視察、そのときももちろん単に見るだけじゃなくていろんな話し合いをすると思います。さらに、十一月十、十一日の作業部会、こういうところで技術的な詰めを行っていきたいと思っておるところでございます。 一方で、これは際限ない援助になってはいけないじゃないかというような委員の御指摘もこれも事実であり、さらにまた援助ということになりますと、枠組みがしっかりしていないとおかしな軍事援助というようなことになってしまうということもありますので、その辺はロシアとしっかりした話し合いを詰め、枠組みをきっちり決めてやらなければいけない。これはそのとおりだと思っております。 それから、軍事用の原子力潜水艦にかかわる問題であるということ、この点は非常に私たち意を用いなければならぬポイントだと思っております。 ○政府委員(石田寛人君) 今の大臣の御答弁に補足いたしまして、技術的な観点から一言申し上げさせていただきます。 鹿熊先生御指摘のように、確かにタイミング論というのは非常に重要でございます。したがいまして、私ども技術的に考えておりますのは、もしも今大臣のおっしゃった前提のもとに対ロ協力をするということといたしますと、どちらかといいますと比較的軽便に液体放射性廃棄物の処理ができるような、そういう装置についての勉強をすべきかなと思っておるわけでございます。 液体放射性廃棄物の処理でございますから、一番簡単にはろ過する、イオン交換樹脂を通す、あるいは蒸発乾固で水を蒸発させまして放射能部分と水の部分を分ける。いろんな装置、考え方があるわけでございますけれども、比較的軽便に持ち運びできるような、そういう装置でもってとりあえずの対応をするということも考えていくべきかと思いますし、もちろん全体の液体放射性廃棄物を一時的にためるという、そういうための施設も速やかに建設する努力もしなくちゃいかぬと思っているわけでございます。 こういうことも含めながら、何と申しましてもロシアの放射性廃棄物の実態がどうであるかということを確認することが非常に重要でございますので、そのファクトファインディングを含めまして努力していきたい、かように考えておるところでございます。 ○鹿熊安正君 ロシアが今回投棄した廃棄物は日本で言う低レベル廃棄物であり、放射能は高くないとのことでありますが、科学技術庁でも当面の心配は本当に必要ないとのことでありますか、お尋ねをしておきます。しかし、一回の投棄の影響が少ないとしても、同じことを積み重ねることが大きな問題を引き起こす可能性があるということでありますから、その点についても一応見解をお聞きいたしたいと思います。 そこで、海洋投棄についてお伺いしたいのですが、まず今回海洋投棄された放射性廃棄物の量は正確なところどのくらいであったのか。また、旧ソ連及びロシアは一九五九年から九二年にかけ継続的に日本海、オホーツク海、北太平洋、バレンツ海などに放射性廃棄物を投棄してきたとのことで、ことしに入りこの事実が明らかになって大きな国際問題に発展してきました。過去における海洋投棄の実績はどうなっているのでしょうか。ロシア側のデータを入手しておられるのでしょうか、お伺いいたします。 また、ロシア側のデータは本当に信頼できるものとお考えでしょうか。ちなみに科学技術庁の前回の海洋投棄についての調査結果では一応安全であるとのことでありますが、その根拠を示されるとともに、今後食物連鎖を通じて魚介類の放射能が蓄積されるという心配はないでしょうか。先般、五月に第一回目の日ロ合同作業部会が行われましたが、その後の進捗状況及び今後の見通しはどうか。また、海洋投棄に関するロシア側のデータの公開を求めていくべきと思いますが、この点についてもどうお考えでしょうか、お伺いいたします。 ○国務大臣(江田五月君) 質問の項目がたくさんございますので、全部メモとれたかどうか心配ですが…… ○鹿熊安正君 ちょっと、大臣よりも科学技術庁それから外務省等々の方にも説明をしていただきたいと思います。大臣は責任ある立場でよろしゅうございます。大変あなたはいろいろ熱心に御説明いただくのはありがたいが、やはりその直接の所管官庁からの事務当局から聞いた方が、政府当局から聞いた方が大変参考になりますので。 ○国務大臣(江田五月君) 国会に対して責任を負っているのが私でございますので、私からまず答えておきますが、当面の心配ということについては先ほどちょっと申し上げたとおりですけれども、今回のことについてはこれは調査を今やっているところですから、予断を持った調査ではいけませんので厳正な調査をしたい。 それから、長期にわたってどうなるかということについては、これは廃棄された核種がどういうものであるかといったことを正確に分析していかなきゃならぬことだと思いますが、いずれにしてもいいことであるはずがないんで、これは厳重に対処していきたいと思っております。 今回のものの量、これはきのうモスクワで開かれました日ロの専門家会合の席でロシア側から明らかにされたものでございます。二度に分けた一回目が投棄をされまして、前回公表の数値は一・〇八キュリーということでしたが、そうではなくて〇・三八キュリーだということでございます。前回との違いは、タンカー内で一番濃度の高い部分のものを積算根拠として出したからそうなったので、正確には〇・三八だと。投棄をされた廃棄物の核種等も明確になっております。必要なら申し上げます。 さらに、細かくこういう点について詳細の情報提供をするよう要求をしているところでございます。一九五九年から九二年のことについては後ほど政府委員から答弁をさせます。それがなぜ安全であるかという判断の根拠、これも後ほど政府委員から申し上げます。 ロシアの情報が本当に信頼できるのか、こう言われるわけですが、それは私どもうそだと決めつける根拠も特にないのでありまして、今まで向こうが言ってきていることに特にここは違うじゃないかということがない以上、言っていることを信頼していきたいと思いますけれども、しかし調査にそういう予断があっちゃいけませんから、調査は厳正に行うということです。 作業部会につきましては、先ほどから申し上げているとおり、十一月十日、十一日とロシアで第二回目の作業部会が行われるということです。 ○政府委員(笹谷勇君) 過去三十数年にわたりました旧ソ連、ロシアの投棄の実態でございますが、四月に公表された白書によりますと、日本海、オホーツク海、カムチャツカ沖の極東海域におきましては、総放射能量にして一万二千三百キュリーという量でございます。このうち、日本海に限って見ますと、ウラジオストク沖の投棄地点において一万二千キュリーの液体、それから三千八百キュリーの固体廃棄物が投棄されたというふうに報告されてございます。 これらによります影響に関しましては、既に大臣から先ほど御答弁がございましたが、過去の四月から六月にかけた調査によりますれば有意なデータが出ておらないということで、今回のものについては常識的には影響がないものであろうというふうに考えております。 以上でございます。 ○鹿熊安正君 外務省。 ○説明員(林暘君) 合同作業部会その他についてのお尋ねであったと思いますが、御案内のように四月にロシア政府によって白書が公表されました以降、政府としても即時そういう海洋投棄は中止してもらわなくちゃいけないということ、抗議とともにそういうことを申し入れまして、その結果五月に合同の作業部会というものを開催するに至りました。この作業部会におきましても、我が国からは国内の懸念、投棄の即時停止の必要性を強く主張するとともに、日ロ間における共同海洋調査の実施を提案した次第でございます。 五月の合同作業部会については、原則として日ロ間の共同海洋調査の実施が同意をされたわけでございますが、その後、種々交渉した結果、かつまた先般エリツィン大統領が訪日した際に細川総理と直接話し合われた結果も踏まえて、先ほど来江田長官からも御答弁がありますように、一昨日、昨日と専門家会合を開きまして、また十一月十日、十一日と第二回目の合同作業部会を開きまして、日ロ間による共同海洋調査を年明け早々にも、できれば年内にも実施をしたいということで調整をしてまいりたいというふうに思っている次第でございます。 ○鹿熊安正君 今回のロシアによる核廃棄物の日本海への不法な投棄は、本日、大臣の所信表明でもおっしゃったように、エリツィン大統領の来日の機会をとらえて停止を求められたという御発言でありました。にもかかわらず、ロシア大統領の訪日直後に突然行われたものであり、日本とロシア両国の信頼関係、協力関係に水を差すものとなり、極めて重大な外交問題として認識せざるを得ないわけであります。 今回の不法な投棄に先立ち、ロシア側から我が国に対して何らかの事前通告があったのでしょうか、お伺いいたします。 ○国務大臣(江田五月君) ございませんでした。 ○鹿熊安正君 これまで数十年にわたってロシアが廃棄し続けてきた核廃棄物の全容について、政府は把握していたのかどうか詳しい説明をお願いしたいことと、日本政府としてはこの海洋投棄の事実をどのようなルートを通じて認識するに至ったのか。一部報道によれば、グリーンピースによる報道が先行するなど、政府の情報収集は後手に回ったという指摘があります。もし事実であるならば、政府はロシア関係の情報収集体制の立て直しを図っていく必要があると考えられますが、いかがなものでしょうか。 ○説明員(林暘君) 先ほど江田長官の御答弁がございましたように、政府として、ないしは外務省として今回のロシア側の海洋投棄の事実を事前に入手していたということはございません。入手できませんでした。 IAEAにはロシア側は十月五日付で書簡を送ったことも事後的には確認をいたしましたが、御案内のとおり、IAEAはIMOと違いまして法律上その通告を締約国政府に連絡する義務を負っている機関ではございませんでしたので、IAEAとしてはその中身について技術的検討を加えていたということが後から知り得た事実でございます。そういうことでございますので、我々といたしましても関係の国際機関等に対しては、そういう情報があった場合には法律的義務いかんにかかわらず関係国にはすぐ通報してくれるようにということで求めている次第でございます。 グリーンピースがいかなる情報ソースからこの情報を得たかということについてはいろいろ報道されております。我々もその報道は承知しておりますが、かつグリーンピースの関係者も外務省に来られて、その話は我々もお伺いをいたしましたけれども、残念ながら我々としてはそういうソースは持っておりませんでしたので、事前に入手するということができなかった次第でございますが、政府、外務省としましても今後とも情報収集の体制については一層意を用いて、こういうことがないように努力をしていきたいというふうに思っております。 ○国務大臣(江田五月君) なお、もう一つ私の立場でつけ加えれば、十月二十日に国際原子力機関のブリクス事務局長が日本にお見えになりまして、私、お会いをいたしまして、確かに条約上はIAEAは日本にロシアからの通報を通知する立場にないことはわかるけれども、しかし関心のある、非常に国民も心配していることであるから、これから適宜そういうことはお知らせを賜りたいということをお願いし、そうするというお約束をいただきました。 ○鹿熊安正君 我が国のみならず韓国など諸外国からの強い批判などを受けて、ロシアはその後海洋投棄を一時停止しているようであるが、その事実を政府は確認しているのかどうか。確認しておられるとすれば、その内容についてどのようなものかお聞かせいただきたいと思います。 ○説明員(林暘君) 第二回目の投棄の中止につきましては、十月二十一日、ロシア外務省からモスクワにあります我が方の大使館を通じて連絡がございました。さらに、二十一日、モスクワにおきまして、モスクワの本件についての担当大臣でございます環境大臣が記者会見をして、本件を中止するということを正式に発表いたしております。 発表の内容につきましては、第二回目の放射性廃棄物の海洋投棄を中止するということでございますが、環境大臣が記者会見その他で言っておりますのは、近い将来に投棄がないというようなことも環境大臣は発言をいたしております。 ○鹿熊安正君 その確認はわかりましたが、仮に海洋投棄が中断されているにしても、ロシアの海洋投棄が国内の放射性廃棄物処理施設の不備が原因であれば再開の可能性は常にあると考えなきゃならない。この点について政府はどのように見ておられるか。 ○説明員(林暘君) 環境大臣の発言は今申し上げたとおりでございますが、他方、御指摘のとおり、ロシアにおける処理施設が十分でないということも事実でございまして、特にロシア側の処理工場というのはすべて欧州部にありまして、極東部にはないということも事実でございます。したがいまして、貯蔵施設がいっぱいになれば再度海洋投棄を行う可能性があり得るということもそのとおりであると思います。 そういった観点から、ロシア側の動向については注意を要すると同時に、我々としては、先ほども江田長官からるる御説明がありましたように、どうすれば将来にわたって投棄をしないということが確保できるのか。一義的にはロシア側にやってもらう話でございますが、我々として協力し得るところもあるかと思いますので、その辺の話し合いをいろいろな会議を通じてロシア側と話していきたいというふうに思っている次第でございます。 ○鹿熊安正君 もう最後だと思いますが、核廃棄物の海洋投棄についてはロンドン条約などのもとで国際的に取り組んでいくことが重要だと考えております。 その前提となる次の点について政府の考え方を確認しておきたいと思いますので申し上げますと、その第一点はロシアの原子力潜水艦の解体に伴う放射性廃棄物の発生の見通しとその処理の内容について伺っておきたいこと、第二点は北欧諸国を含め世界各国はロシアの海洋投棄にどのような対応をしてきているのかを確認しておきたいこと、第三点は我が国としてはロンドン条約締約国会議に対しどのような方針で対応しようと考えておられるか、以上三点についてお伺いいたしたい。 もう一つは、ロンドン条約締約国会議などにおいて、再発を防ぐため海洋投棄の全面禁止の国際的な枠組みをつくるよう提案していくことが必要ではないかと考えますので、お伺いいたします。 ○国務大臣(江田五月君) 今後、このロシアの原子力潜水艦の解体ということはずっと進んでいくだろうと思われまして、そこから放射性廃棄物というのがさらに出てくるということは十分予想されることでございまして、これには対処していかなきゃいけないと思います。各国の対応というのは、これは外務省の方で後ほど答えていただきたいと思いますが、北極海の方についてはロシアとノルウェーでいろいろ対応を今やっているところだというふうに聞いております。 ロンドン条約の締約国会議は来月に入りましたらすぐ開かれることになるわけでございますが、そこで一体どうするかという議論が行われると思います。どういう議論になりますか、あるいは決議になるのか何になるのか、具体的な案文がどうなるのか、そうしたことをこれから見ていかなきゃいけないわけですが、我が国としては、やはりこういう状態になりましたら、八三年のときのモラトリアム決議、このときは我が国は反対、八五年のモラトリアム決議、これは我が国は棄権であったわけですけれども、しかしやはり海洋投棄というものは禁止をするという方向性を持ってひとつ国内の意見をまとめていきたいということで、今関係機関の調整をしているところでございます。 科学技術庁としては、今回のロシアはそうじゃないんですけれども、IAEAの基準にのっとった海洋投棄ならば科学技術的な見地からいえば安全だという、そういう認識を持ってはいるんですけれども、しかし世の中は科学技術だけでできているわけじゃないんで、海というものの重要性、海というものが言ってみれば生命の根源というようなそういうことがありますから、そこへ捨てていいというような態度は各国ともとるべきではないという、そんな考えで対処していきたいと思っております。 ○説明員(林暘君) 北欧諸国を初め世界各国がどのような対応をとっているかという御質問でございますが、ロシアの放射性廃棄物、四月に白書が公表されまして以来、G7諸国を初め北欧諸国、韓国等、多くの国から懸念が表明をされております。今回の投棄につきましても、アメリカ、韓国等が深い憂慮の念を表明しておりますし、投棄の中止を呼びかけております。 また昨日、羽田外務大臣は来日中のノルウェーのホルスト外相と会談をいたしましたが、その際にも両国で本件についての共通の懸念が合意されましたし、今後ともお互いに協力をしていこうというふうに意見が一致いたしております。 なお、韓国は日本海における調査を日本と同様にロシアと共同してやろうということで話し合いをしつつあると承知しておりますし、ノルウェーは北方海域についての共同調査をこの夏以降実施している状況にございます。 ○委員長(中川嘉美君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。 |
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