○上原委員長 この際、江田五月君から関連質疑の申し出があります。西岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。江田五月君。
○江田委員 我が国が今抱えている課題というのは、これは本当に多岐にわたり、かつ複雑である。金融不安の問題もあります、いろんな問題がありますが、この際、私は、西岡委員の質疑の範囲内で、関連をして、項目を極めて絞ってお伺いをいたしたい。主として今お話のあったオウム事件の関連、それと、その関連で、今これから課題になってまいります宗教法人法改正の問題、この二つに絞って伺っていきたいと思います。
総理、先ほど、オウム教に対して破防法を適用するかどうか、これについて、行政の段階とその後の準司法手続の段階に分けて考えておるんだというお話でしたね。それで、行政の段階のことなんですが、私も、これはやはり非常に重要なことで、そんなに何か政治があおるとかあるいはしりをひっぱたいてとか、そういうことではない。しかし、やはり国民は今依然としてオウムのことについては非常に不安に思っていると思いますよ。
三月の二十日に、まさに公衆の乗り物ですね、地下鉄、ことしですが、ここでサリンがまかれた。大勢の人が死に、また重軽症者が多数出た。そういえば、去年の六月の松本のサリン事件、すぐこれはぴんと皆ざます。そのすぐ後に連休がありましたね。連休のときに一体どうなるんだ、日本じゅうがバニックになるんじゃないか。その直前に総理は、四月でしたか、本会議で、こういうふうにやるから、こういうお話をいただいて、国民の皆さん安心してください、政府はしっかり対応をとっている、こういうことを言われましたね。
しかし、依然まだやはり国民は、それは麻原彰晃は逮捕をされて、今司法の手続が進んでいっている、大勢の被疑者あるいは起訴されて被告人、こういうことになっていますが、だからといってまだ安心しているわけではない。つい先日も、ある山の中で逃げた跡があった、そこに青酸が発見をされたというようなことがありましたね。サリンはもう多分まあないだろう、だけど、完全にありませんというところまでまだ国民の皆さんに言い切ることが残念ながらできないんじゃないか。いや、別に国民の危機感、恐怖感をあおっているんじゃないんですよ。
そういう状態ですから、とにかくオウムにもう一度あんなことをさしてはいかぬ。オウムの再発といいますか、また別のそういう団体が出てきちゃいかぬという話は置いておいて、オウムにもう一度あんなことをさしちゃいかぬ、これは国民の強い強い希望だろうと思うんですよ。ですから、オウムにああいうことをさせないために行政としてありとあらゆることをしてほしいという、そういう気持ちがあると思うんですね。
ですから、その国民の気持ちにやはりこたえなきゃならぬ。世論は沸騰しているわけで、沸騰している世論にそのまま流される、これはやはりいけないと思いますしっかりとそれは受けとめて、十分そしゃくをして、冷静な頭で、しかしやはり沸騰している世論にきっちりこたえるということは必要なんじゃないですか。
そこで、私どもは、今西岡さんを中心にいろいろな方面からの事情聴取をしてみました。オウム真理教というのが直ちにそのまま、破防法がもともと予定をしていた団体にすとんとこう入るというのは、それはいろいろ議論はあるでしょう。あるけれども、そこの守備範囲にどうも入る可能性は随分高いぞ。そういうことならば、これはやはり国民のそういう気持ちをしっかり理解をして、そして、そのことについてはひとつとるべき手段はちゃんととる、そのときの政治の責任はきっちり引き受ける、そういう不動の姿勢がやはり要るんではないか。
もちろん、総理がおっしゃる慎重にというのは、私は別に誤解をしているつもりじゃないんで、破壊活動防止法の二条には「この法律は、国民の基本的人権に重大な関係を有するものであるから、公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであって、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。」と。
あるいは、一々読み上げませんが、三条にも同じような趣旨のことがいろいろ書いてある、そういう法律。この法律のここに書いてあるような運用方針でもって適切に、厳重にこれを適用すべきである。総理から慎重にと言われますと、これは何かいろいろ書いてあるからやっちゃいけないんではないか、あるいは国民の皆さんは、総理が慎重にと言うと、これはひょっとしたら政府はそういう毅然たる決意がないんじゃないだろうか、そんな不安を持つ。そうではないんだ。不動の姿勢でやっていくんだという、そういう気持ちがおありかどうか、これを聞いておきたいと思います。
○村山内閣総理大臣 破防法を適用するかどうかという問題については、これは今もお話がございましたように、それは基本的人権にかかわる問題でもございますし、それなりに私は法と証拠に基づいて厳正に取り扱っておると思いますよ。
それから、オウム事件については、これはもう、今そういう意味で厳正に、一つ一つやはり犯罪の証拠をとらえて、そして捜査を続けておるんであって、だんだん日がたつに従って拡大されて逮捕が進んでおる、こういう状況にございますね。これからまた裁判も行われるわけです。やがてこの全体像は解明されていくと思いますね。このオウムに関連をして起こっておるいろいろな違反事件、こんなことをもう二度と繰り返してはならぬというので、これはもう厳正に法と証拠に基づいてやっているわけですけれども。
一方、破防法を適用するかどうかという問題についても、私は、予見を持たずに、やはり法と証拠に基づいて厳正にこの作業が進められておるというふうに思いますね。
したがって、そういう作業をやはり見きわめながら、決断をするときには決断をしていかなきゃならぬというふうに思っていますけれども、しかし、これはやはり最初から申し上げておりますように、あなたもそうだと思いますが、政治的な、一つの恣意を持って権力的にやるとかやらないとか、そんなことをやるべき性格のものではない、これは当然の話ですね。そういう意味で申し上げているわけですから、誤解のないようにお願いしたいと思います。
○江田委員 総理、やはりここは非常にデリケートなところで、国民の皆さんも本当に総理の言葉に聞き耳を立てているわけですよ。法と証拠に基づいて厳正にというのと、法と証拠に基づいて慎重にというのは、やはりそれは違うように受け取るんですよね。総理、そこは、やはり国民がどう受け取るかというのは考えてほしい。
もちろん、国民の中には、それはこういう世論の沸騰で、もう法や証拠はどうでもいい、この際、もう法や証拠をねじり曲げてもやっちゃえという、そういう人もいるかと思います。確かにいると思います。そういう声をそのまま受けてというのではこれは世論に流されてしまうわけで、それでは法治国家の宰相としての責任を果たすことにならぬ。だけれども、やはり法と証拠に基づいて厳正に、的確に、生きている法律はきっちり使わなきゃならぬ。
さて、総理のいろいろなお話の中に、国民は敏感に、これはオウム真理教は、どうも生きている法律というよりも半分死んだ法律だ、どうもこれは憲法に適合するかどうかについて不安がある。だから、オウム事件についての見方の揺らぎじゃなくて、破防法という法律の憲法適合性についての心の揺らぎ、これがあっていろいろ揺らいでおるんじゃないかという、まあ誤解ならいいんですけれども、そういう心配があるので、破防法が憲法に適合しているという、そういう確信は自分はちゃんと持っておるんだということをここでおっしゃることができるかどうか、お伺いをいたします。
○村山内閣総理大臣 破防法は合法的に成立している法律でありまして、憲法に反するとは思っておりません。
○江田委員 私は、これは後でこれからいろいろ聞いていきますが、確かに破防法というのは、もともとオウム教のようなカルト集団、カルト・テロ集団といいますか、こういうものを予定していたのではないだろう。それはそうだと思います。
ただ、それでも守備範囲に入ってくれば、これはやらなきゃいけないということだと思うのですが、今、残念ながらオウム教のようなああいう集団を団体としてとらえて団体として規制する法律というのは、団体規制の法律というのは破防法と暴対法ですかね、このくらいしかないので破防法ということになる。
しかし、オウムのようなああいう集団犯罪、団体犯罪、テロ集団が反社会的な行動を起こしていく、こういうことに対して私どもどう対応すべきかというのは、これは今立法府に一つ問いかけられている課題ではないのかな、こんな感じがするんですね。
破防法ができた当時は、日本の体制に対して反体制運動がいろいろある、これをどうするかということでしたが、今は、国家の体制が揺らぐ、これに対してという話ではなくて、社会が揺らいでくる、これをどう社会防衛をしていくかということで、諸外国でもやはりこの問題は非常に大きな問題で、今課題になっている。
いろいろな集団犯罪というものが、これはいろんなことをやるわけで、麻薬のこともあるでしょう、銃のこともあるでしょう、その他もろもろのことがあって、そういう団体犯罪にどう対抗していくかということが、例えばアメリカにおいてはRICO法というんだそうですが、そのようなことが考えられていて、日本でも、オウム教がああいうことをやったのは、これはオウム教というのが宗教法人だからやったというんではない、宗教法人の属性でああいうことをやったんではないので、今団体というものがそういういろんな犯罪的傾向を持っていろんなところでうごめいてきているというのは国際的にもあるわけで、それを、日本における一つの団体がサリンという非常に世界じゅうが心配をした、ナチス・ドイツのときにできたと言いましたかね、そういうものを使ったというので、これでもう世界じゅうが震え上がったわけですね。
そういう事態に対する日本の社会防衛の方法はどうなのか。これは私は、単に対症療法的にいろいろ考えるのではなくて、やはり総合的にオウムについての徹底的な検証をして、そして対応策を考えていくという、そういうときが来ているんだと思いますが、総理、そのあたりについてどういう見解をお持ちですか。
○村山内閣総理大臣 当面は現行法を最大限に活用して取り組みをしていく必要があるというふうに思いますけれども、今お話もございましたように、主として個人を対象にした取り締まりの法体系になっておる、したがって、団体を対象にして云々するものは破防法しかない、こういう現状ですね。
したがって、これは今の捜査の状況やら今の社会の動向等もとらえながら、外国の例等も参照しながら、そういうものが必要なのかどうかということはやはりこれからの課題として検討する必要はある、私はそう思います。
○江田委員 そういうオウムにどう対処していくか、今のオウム教がまた同じょうなことをやることにどう取り組むか、これをどう防いでいくかということと、もう一つ、オウムのようなああいうことがまた再び我々の社会に起きないようにいろんな手だてをどう講じていくか、両方あって、この後者の方はかなりやはり突っ込んだ、広い、多方面の検討をしなきゃならぬ課題だと思うのです。
そういう徹底的な検証の前に、それをやるより前に、なかなか政府は素早い対応を幾つかとられておる。どうも素早いと言っていいのかどうか、この予算委員会が始まる直前に田沢法務大臣を更迭、更迭といいますか、辞表をお受け取りになったわけですが、これはどうですか、総理。どうしてあの時期にああいうふうにといろいろ言われておるんですけれども、世に言う二億円の問題とか、あるいはいわゆる裏取引とか、こういうことで辞表をお受け取りになったんですか。
○村山内閣総理大臣 私が報告を受けて、そして田沢さん御自身が辞任届を持って来られましたけれども、その後記者会見をやられていますけれども、その記者会見の中でも明らかにしておりますが、こういうことを言っているわけですね。「私の気持ちは一日も早く補正予算が成立して、国民に安らぎを与えたいという心情で一杯でございますので、閣内において円満な国会対応ができるために、自ら身を辞することがいいという判断の下に、辞表を提出した理由でございます。」こういうことを言われているわけですね。
そして、裏取引云々とか、それから例の立正佼成会との関係とかいうふうなことについては、一切疑惑を持たれることはございません、こういうことを明確に言っているわけですから、私はその田沢さん御自身の気持ちを素直に受けとめて辞任届を受理したわけです。
○江田委員 その疑惑を持たれることは一切ないというのをそのとおり受けとめて、こうおっしゃるわけですが、本当はそこはもっと疑惑解明をしたいところですが、本人がいなくなっちゃったわけですから、これはなかなか総理にしてやられたと、まあそういう、どうも困ったものだと思いますが。
今総理がおっしゃる、田沢大臣が、やめられた前大臣が辞任のときに読み上げた文章、私もここへ持っておるんですが、「一日も早く補正予算が」、その前のくだりがあるんですね。これをちょっと見てみますと、「第二次補正予算の早急な成立を国民が求めておる」、これはそうだ。またこういうのがあって、「宗教法人法の改正も重要法案であり、宗教界の大勢が慎重審議を求めており、私が閣内にあって何かと取りざたされることで、国会審議が遅れるようなことがあれば、国民に対して申し訳ない」。私が閣内にあって何かと取りざたされておる、宗教界の大勢は慎重審議、その前に宗教法人法改正。そうすると、やっぱりこれは、田沢さんをやめさせたのは、田沢さんが宗教法人法改正について消極の見解を持っていたからだ、こういうことになりますね。
○村山内閣総理大臣 これは記者会見されたその文章を正確に全部読みますと、そこだけ取り上げると何かそういうふうにとられますけれども、その後の方のくだりを見ますとこういうふうに言っているわけですよ。「オウム真理教の一連の凶悪事件を契機に、政府与党は今国会において宗教法人法の改正を目指していることは承知しており、私も閣僚の一員として公正・誠実にその職務を果たす所存でありましたし、今日の社会の著しい進展に伴う宗教法人法の認証後の実態変化への見直しについては、当然見直し、改正しなければならない点があると考えておりました。」これは明確に言っているわけですね。
したがって、私は、そういうお話も本人から直接聞いたんですよ。そして、今度の辞任についてはそんなこととは一切関係なしに、とにかく国会の審議に迷惑かけてもいかぬ、一日も早く予算の成立を図ってほしい、こういう一念で私は辞任をいたします、こういうお話ですから、そのことを私はそのまま素直に受けとめて辞任を受理したということであります。
○江田委員 いや、どうもにわかに納得できないんで、村山総理の場合は、これまではやめたいという人はすぐにそのままやめていただくということではどうもなかったのではないかなと。
御本人も含めていろいろあるかと思うんですが、しかし、もともと総理御自身が、形式的にはもちろん任命権者ですが、どうも実質は違うんじゃないかという話もあったりするんで、もうちょっと別の人に聞いてみたいんですが、自民党の加藤幹事長は、これはもう明確ですね。新聞の報道ですが、「宗教法人法(改正)は党の命運をかけた法案であり一丸となって取り組まなければならない。その矢先に慎重論を言われたのでは運動を進めていくのに馬力が出ない。党全体の規律の問題」、こういうこと。
これは橋本大臣、自民党の総裁として、この幹事長と同じ御見解ですか。
○橋本国務大臣 私が記者会見で申し上げましたその原稿そのものでお話をさせていただきます。
たしか先週の金曜日であったと存じますが、一部の報道機関で、参議院における質問の中で、平成会の方の御質問が田沢法務大臣の要請によって一部削除されたといった報道がございました。
そして、これはその日の閣議の終了後、総理からも事実関係を調査するようにという御指示を私が受けまして、参議院議員会長と参議院幹事長にその辺の事実確認をお願いをいたしました。私が報告を受けましたのは、月曜日、九日の十時であります。
その時点におきまして、いわゆる二億円の借り入れの問題について、これは資料等も取りそろえてあり、予算委員会等であっても明らかに自分は説明ができる、そして、そういう状況であるからいわゆる裏取引と報道等で伝えられたことは事実に反する、なぜなら自分はきちんと説明ができる、しかし、景気対策上、第二次補正予算の早期成立を国民が求めておられる現状下において、自分の問題について論議をされ、それが結果として審議をおくれさせることは不本意であるので大臣を辞任する、こういうお話でございました。
それで、私は、それを総理に官房長官立ち会いの場所でお伝えをし、なお、御本人をお呼びをいただき、その意思を確認をしていただきました。
御本人からは、その席上、いわゆる二億円の月々返済をしてきた残額を返済するについて、このとおりきちんと返済は済んでいるという領収書までお見せをいただいたということであります。
○江田委員 どうもまあ、一度記者会見で述べられたことをもう一度お聞かせをいただいてありがとうございますが、やはり加藤幹事長の方が率直。宗教法人法、党の命運をかけた、それが慎重論がいては馬力が出ない、馬力を出すためにという、まさにこれでは党利党略ということになってしまうと思うのですが、馬力を出すといえば、ほかにも馬力が相当出た方がおられる。
島村文部大臣に伺いたいのですが、かなり馬力は出ていますね。
一部の週刊誌では、これは九月の二十二日の金曜日から翌週にかけて、大手六社新聞社ずっと回って、宗教法人法についていろいろお願いをしてきたということが報ぜられておるのですが、これはあれですか、こういう事実はあったのですか。
○島村国務大臣 お答えいたします。
そういうことがあったことは事実であります。
理由を申し上げますか。
○江田委員 いや、後で。
そのときには、これはお話しになったのは今の宗教法人法の改正についての説明ということですか。この報道ですと、秘書官のコメントがあって、これは行政として説明を申し上げるという大臣の言葉があって、文部大臣としての公務で出向いたんだ、こういうコメントですが、これでいいのですか。
○島村国務大臣 そう受けとめられて結構でございます。
○江田委員 あなた、そのときの説明ですが、実は島村さん、これはまだ大臣になられる前ですが、文芸春秋でいろいろ言っておられますね。
そこで、島村文部大臣、もちろん大臣になる前ですが、宗教法人に対しては監督とか指導とか規制とかいろいろなことをする必要があるんだと、こうずっといっぱいおっしゃっている。そういう説明をされたのですか。それとも、きのうでしたか、一部の新聞ですと、やはり座談会にお出になって、そして、後でまた戻りますが、宗教法人審議会の報告がある、その報告のとおりの法の内容に大体なるんであろう、それによると、規制とか監督とかはやらないことは明らかだ。どっちの説明をされたんですか。
○島村国務大臣 言葉が足りませんと誤解を受けますので、まず補足いたしますが、法案の説明に伺ったわけではありません。検討状況について大方の何か絞り込みができたという話について、まず説明に上がりました。
通常ですと論懇というのがありまして、論説委員の方をお招きして、御担当のですね、そういう方々とまとまっていろいろお話はするんですが、それが実際に皆さんの御都合がそろわなかった。こちらの都合でもありましたので、私は冒頭のところだけ出向いて、あとの説明はそれぞれ専門の人が説明をした、こういうことでございます。ただし、経過でございます。
○江田委員 通常なら論懇でいろいろと説明をするところを出向いだというのは、よほどやはり急いでおられる。しかもまだ宗教法人審議会で審議をしている最中で、その審議の結果、これもまたいろいろ問題なんですが、報告が出る。その報告は、先ほどのあなたの文芸春秋の話と、それからきのうの新聞に出たあなたの話と。そうすると、あなたがもと思っていらっしゃったことと違うような報告が出ている、そういう経過について、一体どういう報告をしたのか。
それはそれで、ここであれこれやってもわからぬことですけれども、あなた、そのときに、どういう報告でもいいですが、それとあわせて著作物の再販制度の問題については触れておられますか、おられませんか。
○島村国務大臣 まず、私が一政治家の立場で、文部大臣としてでなくて、請われて文芸春秋に書いたことは確かにあります。しかし、その意思と、現在は文教行政全体の責任者でありますから、おのずから立場上の制約や、公平、公正を期さなきゃならない、時によっては個人の感情や主張も抑えなきゃいけない、こういう立場にあることはよく自覚いたしております。
第二点の、例の再販問題について話が出たかどうか。これは全く話が出ませんでした。
○江田委員 全く出なかった。しかし、そう報道されていますね。これももちろんそう大勢の中で話したわけじゃないでしょうからわかりませんけれども、再販問題に絡み圧力をかけに行ったか、あるいは裏取引をしに行ったか、それはわかりません。わかりませんから、ここで余り何とも申し上げられないけれども、再販問題というのが新聞社にとって非常にデリケートな、神経にさわるような問題である。しかも、あなたは著作物を所管する役所である文部省のトップである。あなたが歩いて新聞社へ行けば、再販問題、これはどうなると、すぐもう、お茶も一級品のお茶を出しておかなきゃとか、新聞社はみんな思いますよ、それは。
そういうときに、こうやって、いや論懇で呼ぶならまだ、ずっと出ていって、しかも宗教法人法についてまだ審議の途中なのにいろいろな解説をされるというのは、どうですかこれは、ちょっと配慮を欠いているのじゃないですか。文部大臣として慎重さを欠いているのじゃないかと思いますが、いかがですか。
○島村国務大臣 私は何でも誠実に事に当たる、それから行動をする、これを自分の日常の旨としておりますが、私は、今回文部大臣になってから、この宗教法人法のいろいろ検討がなされておるのはよく承知しておりまして、当然私のところにも宗教法人審議会のメンバー表などが来るわけです。
しかし、それを見ると、万が一私の親しい方がそのメンバーであったりすれば、どこかで出先で会ったりなんかすれば、私情において、何かそういう話が出たりするといけないので、私は三角さんという方が会長であることはたまたま話の中で承知をしましたけれども、その方を含めて一切私は電話一本しなかった人間であります。今回のことも、当然に再販問題について何かちらつかせるとか、そういうおかしな動きは一切しておりませんし、御指摘の一級品のお茶をごちそうになった記憶はありません。
○江田委員 いや、余りお茶を濁してもしょうがないので、やっぱり新聞というのは、世論の鏡でもあるけれども、同時に、世論に大変な影響を与えるものですね。
その新聞社の皆さんが非常に今神経質になっている、その再販問題を担当しているんだという、それはやっぱり十分認識をしておいていただかないと、あなたの本当に言葉一つで、まああえて配慮を欠くとは言いません、十分配慮されてかもしれませんが、新聞の方があるいは世論に訴える筆の先がちょっとどうかなるということはないとは言えない。大勢皆さんおられてそんなことを言ってはいけませんが、あってはいけませんけれども、ないとはやっぱり言えないんだ。権力というのは、そのくらいやっぱり小心、肝を小さくして行使をしなきゃいけないんだということは、私はわかっておいてほしいと思いますが、これはまあこの程度にして、次の質問に移ってまいります。
オウム事件の検証を、多岐にわたりますからすべてにわたってはできませんけれども、できる限りちょっと試みてみたいわけで、どういう事件であったのか、背景は何なのかとか、あるいは行政に手落ちがあったんじゃないかとか、再発防止策とは一体どういうことなのか、あるいはこれまでのいろんなオウム事件に対する行政の規制、捜査その他、オウム事件が今宗教法人であったからというので、それで宗教法人法改正と、こう来ているわけで、これは非常に短絡で、しかも私はピント外れだと思いますが、一体宗教法人であったことが障害になったようなケースがあるのかどうかということなどについて伺ってまいります。
オウム事件でやはり一番、どれが一番ひどいなという比較はできませんが、これは大変なことだと思うのは、いずれもですけれども、やはり坂本弁護士一家の拉致事件ですね。拉致ですけれども、これは後に、拉致では済まなかった、殺害事件ということが明らかになっているわけです。坂本弁護士、私も弁護士登録をさせていただいていて、本当に胸が痛む思いがいたします。
この事件を含めその他の大勢の被害者の皆さんのために、ここで本当だったら予算委員会挙げて黙祷ぐらいしたいところですが、しかし時間がありませんから進みますけれども、憲法三十二条は、何人も裁判を受ける権利は奪われない、裁判を受ける権利を保障しているわけですね。裁判所がちゃんとある。だれも皆裁判所へのアクセスは権利として持っているわけで、しかし、まあなかなか普通の人に裁判所へといっても簡単じゃないのは、これはもう当たり前です。
そこで、弁護士制度というのがあって、弁護士というものが、これはもう徒手空拳なんですね。警察の力をかりるわけでもない、何の力をかりるわけでもない。弁護士が、まさにペン一本あるいは自分の足でいろいろと調査をしながら、裁判を受ける権利を国民に保障するためにいろんな努力を日々やっているわけです。その弁護士が、事件とのかかわりで相手方から殺されるというようなことがあれば、これは法治国家と言えるんだろうかという、法治国家が泣きますね、これでは。こういうことは到底許せない話でございます。
坂本弁護士事件を見ますと、平成元年、随分古いですね、十一月に起きた。その前のてんまつあるいはその後のてんまつも省略をしますが、お母さんが届け出をせられた、捜索願。磯子署の当直員が深夜現場に行ったら、茶わんとか炊飯器とかあるいは財布や眼鏡、そのままの状態で、家族だけがいなくなっているというそんな状態。
まあいろいろ捜査機関もやられたと思います。十一月十五日に公開捜査、十七日には神奈川県警の百二十名体制の捜査本部、ところが、一向にらちが明かない。平成二年二月になって、佐伯というのですか、佐伯こと岡崎という人の投書がある、長男龍彦ちゃんの遺棄の場所がそこに書いてある、捜索をしたが不首尾であった。
そしてまたずっと下って平成七年五月下旬の岡崎供述、これで輪郭がやっとわかって、そして平成七年九月の一日に警視庁と神奈川県警の合同捜査本部、九月六日に弁護士さんと奥さんとが遺体で発掘された。私も聞いたのでちょっとびっくりしたのですが、そこでやっと殺人被疑事件として認知をして、殺人事件としての手続が進んだというので。
これは私もいろいろ警察庁の人に聞きまして、それは捜査ですから難しいです、私もそれはよくわかっています。わかっていますけれども、世間から考えますと、世の中の人が見ますと、単なる行方不明の事件ではなくてもっと早く犯罪なのだと、そういう目でなぜ一体やってくれなかったのか。もっと早く犯罪だということで日本の誇る警察力を動員してやれば、法治国家が地に落ちるというようなこんな事件を早く解決できたのではないか。被疑者不詳で、だれが犯人かはわからなくても犯罪事件として捜査できるわけですから、なぜ一体もっと早く犯罪事件として取り扱えなかったのか。これは公安委員長、お答えください。
○深谷国務大臣 江田議員の御指摘のように、坂本弁護士一家の遺体が発見されたときに本当にあふれるような怒りを感じたのは全く同じ思いでございます。心からお慰め申し上げたいと思っております。
ただ、坂本弁護士がいなくなったその時点で捜査は開始したわけでありますが、何らかの形で犯罪に巻き込まれているというので捜査本部は設置したのであります。しかし、法律の中で捜査を行うということは、委員御承知のように、まことに至難なわざでありまして、一つ一つ証拠を積み重ねていくという作業を丹念に担当警察官は積み上げてまいったわけであります。
この件に関して申し上げますと、極めて証拠が乏しい、おまけに宗教団体であるオウム真理教が集団で証拠隠滅を挙げて行うといったようなことから、極めて時間を要するという結果に相なってしまったのであります。
マスコミの報道がにぎやかになる中で、しかし、捜査員は全力を挙げて、それこそ体を張って努力をいたしてまいりました。そして、その結果として、麻原を中心とする六名の者たちの逮捕にこぎつけて、今日、鋭意取り調べをしているところでございます。
時間的に遅い云々の思いというのは、私どもにもかつてなかったわけではありませんが、捜査の状態を細かく報告を受けてまいりますと、全力を挙げたが結果的にはこのような形であったというふうに了解せざるを得ない、そのように思っております。
○江田委員 これは私も詳細に聞いてみました。それぞれの段階で、それは捜査機関としてやむを得ないということはあったでしょう。そして事後的にはああすればよかった、こうすればよかったということはあっても、それは後知恵で、なかなかそこは難しいというのはよくわかります。
わかりますが、いや、捜査に誤りはなかったんだと言われますと、やはりそれは何だということにもなるので、やはり一生懸命やって、しかし、こうおくれてしまった、そのことについては申しわけないという、その気持ちだけはやはり持ってほしいと思うのですね。
ところで、この事件、確かに今おっしゃるような、オウム教というのが組織を挙げて証拠を隠すというようなことがあった。それはありました。ありましたが、しかし、宗教法人だ、だから捜査がやれなかった、これはあるのかないか。私はそんなことはないと思いますが、いかがですか。
○深谷国務大臣 犯罪に対する捜査というのは、宗教団体であれ他の団体であれ、差をつけるべき筋合いのものでは全くございません。すべてに対して、犯罪の要件があり、認知されたならば、全力を挙げて取り締まりに臨むというのは当然のことでございまして、今回の場合も、そのような姿勢で臨んだことは間違いがありません。
○江田委員 そのような姿勢で臨んで、そして確かに後知恵ではいろいろあったけれども、宗教法人だという何かの壁があって乗り越えることができなかった部分があるということはないんだ、そう理解してよろしいですね。
○深谷国務大臣 全くそのとおりでありますが、ただ、事実上の問題として、個人の捜査をする場合と集団の、組織の捜査をする場合にはどうしても差がございます。組織の捜査の方が難しい。そこへもってきて、いわゆる尊師と言われる者と弟子との人間的なつながり、宗教的なつながりでは、隠ぺいその他もろもろについてもかなり難しさが生まれてきたということは言えると思います。
○江田委員 それはそうだと思いますね。組織が総がかりで犯罪をやる、しかもその組織の中には異常なつながりというものがあるということで。ですから総理、これはほかの場合だってやはり起きてくるんですよ、こういうことが。総合的な立法を考えなきゃならぬと私がさっき主張したゆえんなんですが、坂本事件はまあそこまで。
次に、松本サリン事件。サリンの事件についてちょっとこれも伺っておきたいのですが、だんだん時間がたってきているのでちょっとスピードを上げたいと思いますが、松本サリン事件は平成六年六月二十七日に発生。そして、これも時間がかかったんですね。六月二十八日に捜査本部を設置しましたが、同じ六月ですが、平成七年の六月十二日、丸一年、こうしてやっと警視庁と長野県警の合同捜査本部が設置されて解決に向かった。こういうことになっているので、この間に河野さんが大変なとばっちりを受けたわけですね。これも結果論のところもありますけれども。
それで、決して被疑者として事情聴取したんじゃないんだとか、いろいろそれは弁解はあるでしょうけれども、やはりこの事件で一市民にあれだけの迷惑をかけた。新聞のこともあるでしょう、いろいろあるでしょうが、総理、一言やはり河野さんに何かおわびの言葉といいますか、総理から言葉があってしかるべきじゃないかと思うのですが。機会を提供しますので、ひとつ河野さんに。
○村山内閣総理大臣 今お話がございましたように、捜査の過程で松本さんに大変な御心労を……(発言する者あり)ああ、河野さん。訂正します。河野さんに大変な御心労をおかけしたことについては、これはまことに遺憾なことだったというふうに思います。
それで、当時、前の自治大臣は家庭を訪問して、そしてごあいさつに伺ったというふうに聞いておりますけれども、その気持ちはお互いに皆持つべきものであるというふうに思っております。
○江田委員 河野さんですが、松本サリン事件は、これはかなり、もちろん早い段階でサリンとわかっているんですね。ところが一年かかった。そして、同じサリンで地下鉄サリン事件が平成七年の三月の二十日に発生をした。死者十一名かな、五千五百名の重軽症。私は、この地下鉄サリン事件は、これは防ぐことができた事件ではないか、これは後知恵じゃなくて本当にそう思うんですよ。
阪神大震災、これは天災。しかし、これも行政の、きょうはまあここで話題にしませんけれども、行政の対応いかんによっては、あんなに被害が膨らむことはなかったと思っているのですが、その意味では行政による殺人だ、ちょっと言葉はきついですが、というような感じもするのですが、この地下鉄サリン事件、これも防ぐことはできたと思いますよ。
この事件、平成六年の七月の九日に上九一色村で異臭事件というのがあった。これはもう御家庭の皆さん全部、何しろこのオウムの事件というのは、ああいう状態ですから、もうよく皆さん御存じの異臭事件があった。平成六年の七月です。その異臭事件について、去年の十一月十六日にはその事件の付近で採取した土から、サリンが分解してできた物質であるというそういう物質が鑑定で出てきているんですね。サリンですよ。
七月の事件、すぐでなくても十一月には、上九一色村の異臭があったそこからサリンというものが、サリンそのものじゃありませんが検出されているんです。サリンなんてどこにでもあるものじゃありません。すぐこれは松本事件と結びつく。そして上九一色村ですからオウムと結びつくんで、これは本当にそこに敏感な感覚を持って、情報をしっかり判断をして、そしてああいうサリンなんというのは一日も早く抑え込まなきゃならぬという信念、使命感があれば、そんな三月の二十日、翌年の三月二十日ですよ。十一月から四カ月以上たっているわけです。そこまで何もできないなんということは考えられないんですがね。
これは実は、三月二十日までずるずるといったについては、もう言っちゃいましょうね、時間ないですから、一つかぎがあるんですよ。それは、平成七年の二月の二十八日に仮谷さん事件が起きたということなんですね、仮谷さん拉致事件。これも拉致事件ですが、今や監禁致死であることがわかっています。
ポイントは、この事件は警視庁の管内で起きたということなんです。前の事件は警視庁の管内じゃないんです。ほかにいろいろ事件がありますが、警視庁の管内じゃないんです。宮崎のことだってそうなんです。いろいろそうなんです。警視庁の管内でこの拉致事件が起きた、そこでやっと初めて、こういう事件について捜査をする能力を持っている警視庁が立ち上がって、合同捜査本部をつくることができて、そして、さあやろうと。
二月の二十八日からですから、それが三月二十日というと、まあいろいろな準備をやる、サリンというのがあるんですからこれは防毒マスクも要るでしょう、その装着訓練も要るでしょう。そんなことをやっているうちに三月二十日になってしまった。
警視庁管内で起きた事件がなければ、なぜ警視庁の捜査能力を活用できないのか。そこに何か問題があるんじゃないか。行政の運用の問題があるかもしれない。あるいは法の不備があるかもしれない。法の不備があったら我々は正さなければいけない。行政の運用の不備があったら、これも我々は改めてもらわなければいけない。そういうことをしっかり見ていかなければいけないと思うのですが、どうですか、これは。
今の、十一月の十六日にサリンが検出をされた。サリン情報が出てきた。松本サリンとこの上九一色村のサリンと、この二つの情報はどこかで結びついていたんじゃないですか、行政全般の中で。
○深谷国務大臣 ただいまの江田委員の御質問は、捜査の経過という具体的な問題でございますので、刑事局長から御報告させます。
○野田(健)政府委員 長野県警察において、六月二十七日の事件発生当初から捜査を開始いたしました。
で、サリンの生成方法、あるいはサリンの生成に必要な薬品というものがどういうものかということで捜査を始めていったわけでありますけれども、地道な薬品の販路捜査によりまして、オウム真理教がダミー会社を使って各種のサリン原料、薬品等を大量に購入しているという事実が判明してまいりました。
一方で、昨年十一月に上九一色村の土砂からサリンの分解残留物の一部を検出いたしました。これでオウム真理教がサリンを製造しているのではないかという疑いを持つに至りまして、その後、具体的な実行行為者の特定等に努めてまいりましたけれども、残念ながら強制捜査に着手することがそれまでの間はできなかったということで、七月の十六日に松本サリン事件の強制捜査に着手したものであります。
○江田委員 松本サリン事件では、サリンというのはこれは当然わかっている。そんなに何カ月もかかるわけじゃないんです。何カ月どころか、あっという間にわかっている。次に、平成六年十一月十六日には、上九一色村の異臭事件に関連してサリン副生物が検出されている。
その二つの情報というのは、そんなに十一月十六日から遅くない段階で行政の、政府部内のどこかでわかっていたんじゃないか、具体的に言いましょう。警視庁、警察庁は、その二つの情報はちゃんとわかっていたんじゃないですか。
○野田(健)政府委員 松本市でサリンが検出されたということと、上九一色村の周辺でサリンの分解したものが出てきたということについては、警察庁で両方とも把握しております。
○江田委員 それならば、その二つ、結びついているわけですから、なぜ膨大な捜査能力を持つ警視庁がすぐに犯罪捜査に乗り出せなかったのか。それは警視庁管内の事件が起きてなかったからだ、こういう理解でいいですか。
○野田(健)政府委員 それぞれの物質がサリンであるということはわかりましたけれども、実行行為者がオウム真理教のしかるべき者だということについて、その時点では判明していなかった。その後、一連のオウム真理教関係者の逮捕等によりまして実行行為者等がわかって、その結果、七月十六日に松本サリン事件について強制捜査に着手した、こういうことでございます。
○江田委員 その辺がやはり考えなきゃならぬ課題なんですよ。今のは、松本サリン事件はいつ強制捜査に入ったかという答えなんですが、そうじゃないんです。
オウム教という集団がいろんなことをやっているんですよ。それをあの事件、この事件、この事件といって、ばらばらにして対応したんじゃやはりだめなんですよ。あるいは、警視庁というのがあれだけの捜査能力を持っているのは東京都のためだけじゃないんですよ、やはり国民の税金でこういうものをちゃんと持っているわけですから。
そうすると、やはりこういうときにはもうちょっと機動的に、単に捜査の協力だけでなくて、自分の管轄の中に入ってきた事件以外にもいろいろな能力を発揮して、こういう団体犯罪、集団犯罪、テロ犯罪というものに対して対応できるようにしなきゃいけないんじゃないか。
警察庁、公安委員会、公安委員長、お答えいただきたいんですが、警察法がネックになっているのか、改正の必要があるのか、あるいは改正までいかなくても運用を改善する必要があるのか、そういうことについて検討されているかどうか、お答えください。
○深谷国務大臣 江田委員御承知のように、我が国は都道府県警察といういわゆる地方自治警察という形でございます。そういう意味では、国家警察ではございませんから、このような広域犯罪の対応について若干のすれ違いがあったということの御指摘に対しては、全面的に否定するつもりはございません。
しかし、これからこのような犯罪がまだ起こる可能性があります。今までの経験的な手法でまいりますと、このような宗教団体が毒ガスを使って大量に人を殺すなんということは想像の範囲になかったわけでありますが、これからはこういう事件も起こる可能性がございます。今までもやってはまいりましたが、共同捜査、合同捜査はこれから一層緊密にやっていかなければならないと思うのです。
さきに、昨年の六月でございますが、警察法を改正させていただきまして、合同捜査の際の指揮権はどちらにあるかということについてきちっと決めるといったような内容も決定させていただいております。したがいまして、従来よりはかなりスムーズになると思っておりますので、私は、今日の法律を運用することによって適切な対応は可能だと思っております。
そして、どうしてもそれがまだ足りないということであれば、改めて皆さんと御相談しながら法律改正等も考えていくという時期が来るかもしれないと思いますが、現状では十分合同捜査はできるし、過去の経験を生かしながら積極的にこのような犯罪の防止のために努力をさせたいと思っております。
○江田委員 私も国家警察をつくれと言っているのじゃないのです。ただ、事態がいろいろ変化をしてきて、今のこの社会でそういう広域犯罪、団体による犯罪というのがこれからもいろいろ出てくる。それをどう抑え込むかというのは相当真剣に考えなきゃならぬ課題だということを言っているので、國松長官は、新聞によりますとこうしたことに触れて、管轄権の問題から、日本の警察で最大の組織と体制を持った警視庁が仮谷事件が起きるまで捜査に加われなかったことを今後もそのまま放置しておいていいのか、こういう言い方をされていますね。
管轄権の問題ということは、要するに警察法の問題で、警察法の一条でしたか二条でしたか、警察の任務がありますね。しかし、その任務を分掌するのは各都道府県警察となっていて、したがって自分の管轄範囲内で事件が起きないと管轄権を持てないというのはあるのですね。だから、それで都道府県警察ということが成り立っているのだと思います。
いろいろなチェックポイントは必要でしょう。チェックポイントは必要だろうけれども、やはりもうちょっと弾力的に運用できるようなことを考えておかないと、必要なら法改正もしないと今後の対応はできない。野方図に何でもやれというのじゃないのですよ。そこはよく真意をわかっていただきたいと思います。ぜひ御検討ください。
次に、今いろいろな情報が、松本からも上九一色村からもあるいは神奈川県からもいろいろ上がったんだろうと思いますね。そういう情報をやはりちゃんと集中する、情報をきっちり収集する、現場情報、こういうシステムというのは必要だと思いますね。現場情報をちゃんと収集をして、その情報を評価をしながら、常にこうした犯罪が起きることを防止する努力をしていくということは今後必要になってくると思うので、トップダウンでの対応というのはなかなか難しいです。
何か事件が起きたら法改正をすればそれでぱっと解決つくなんという問題じゃない。やはり現場のやる気というのも非常に大切でして、そういう現場の皆さんが今もうみんな係長になってしまっているじゃないかという指摘をする、係長と言うとちょっと申しわけない、その指摘はあるジャーナリストがやっているわけですが、そういうような指摘もあるのです。つまり、前例踏襲とか先送りとかというようなことだけではだめ、だけといいますか、それではだめだという。
やはり社会のネットワーク、この市民社会のいろいろなネットワークというのは生きているのですよ。市民社会というのはやはり脈々と、毎日毎日皆そこで生活をして生きているわけです。そういう中でずっと行き交っている情報というのはかなり貴重なものがある。
犯罪の場合だけじゃありません。そのほかにだっていっぱい、経済の問題だってあるでしょう、あるいは原子力の問題だってあるでしょう。そういういろいろな、地域の住民の中、市民社会の中に行き交っている情報というものにもう少しセンシティブになって、そういうものに反応する、そんなシステムというのはやはり要るんじゃないか。
今回の事件でいえば、被害者弁護団の皆さんのいろいろな警告、要請などもありました。地域の住民の皆さんの話もいろいろあります。双眼鏡でじっと見ていたらどうしたこうしたというような話もある。あるいは元信者の皆さんの内部情報もある。怪文書なんというのもありました。ところが、その怪文書は当たっていたのですね、かなり。
というようなこともあるわけで、こういうような広域的情報把握、これはやはり国家公安委員長、そういうことについてひとつ問題意識を持って検討するかどうか、お答えください。
○深谷国務大臣 犯罪の捜査に当たっては、捜査当局が全力を挙げるのみならず、国民の皆さんの御理解と御協力が極めて重要であります。現にさまざまな犯人逮捕に当たって一般国民からの通報、それが非常に効果を上げているわけであります。銃器の問題等について今度私たちは国民大会を開きますが、それも国民挙げて協力をしていただこうという機運をつくるためでございます。
そういう意味では、各都道府県警察はもちろんでありますが、警察庁を中心にして、本当にきめ細かく耳を傾けながら、万全を尽くすような体制をつくってまいりたい、そう思っております。
○江田委員 これは警察庁はもちろん頑張っていただかなければならぬと思いますが、それだけじゃないのです。消防の関係だってあるでしょう、あるいは建設関係だってあるでしょう、厚生関係だって通産関係だっていろいろあるでしょう。そのほかにもいっぱいあるでしょう。そしてやはり自治体なんですね、県とか市町村とか。これがそういうような、そこに住んでいる皆さんの、地域の市民の中の情報についてもっと敏感な感覚を持つ。何も別にスパイ網を張れと言っているんじゃないですよ。そこは誤解しないでくださいよ。そういう気持ちを持つ必要がある。情報収集も含め、ひとつそうした総合的な対応策を、これは内閣としてもぜひ今後検討をしていただきたいと思います。
阪神大震災のときには、私どもは緊急災害対策本部をつくるべきだ、なかなかこれが腰が上がらなかった。非常災害対策本部でしたか、何かそれこそさっきの話じゃありませんが、お茶を濁したというようなことでと私たちは思っていますけれども、今度のこの地下鉄サリンあるいはオウム教、こういういろいろな教訓を残しているんだと思います。
そういうさまざまな教訓をしっかりこの事件から得ながら、二度とこうしたことのないような体制をつくるために内閣としても取り組んでほしいと思うのですが、今、内閣でそういうような問題意識で取り組んでいるようなことが何かございますか。
○村山内閣総理大臣 阪神大震災で五千五百人を超すとうとい方々がお亡くなりになったのですね。こういう事件について、こういう席上でお茶を濁しているなんということを言われたのでは、これは私はもう内閣の立場はないと思いますよ。ですから、それは私はやはり御配慮いただきたいと思いますけれどもね。
これは、今の災害対策基本法による緊急対策本部というのは、なるほど総理が本部長ですけれども、あとの部員というのは担当の局長がそれぞれなるのですね。したがって、それよりも、総理が本部長になって各閣僚が部員になって、そして内閣全体として取り組むような体制をつくる、それの方がより強力ではないかというのでそれは設置をしたのであって、決してそんなものではないということについては御理解をいただきたいと思うのです。
それから、今公安委員長からも答弁がございましたけれども、今回の事件に関連をして、広域捜査の場合に現状のようなあり方でいいのか、運営の面で改善ができる余地があるのか、あるいは法律の改正が必要なのか等々については、それなりにやはり教訓に学んで私は検討されておるというふうに承知をいたしております。
それから、単にこうした犯罪捜査だけではなくて、阪神・淡路大震災等の経験にもかんがみまして、やはり情報をいかに正確にいち早く収集するか、そして正確な情報をつかんだ上で、その情勢に対してどう機敏に対応できるかということについては、現行制度の中でやり得る範囲のものは何かということをあらゆる角度から検討して、とりあえずやれるものについては先にやろうじゃないかというので、そういう取り組みを今しているわけです。
なおかつ、防災問題懇談会等で各委員から意見を聞きながら、法制度を改善をする必要がある問題点やら、あるいはその他必要な問題、あるいは民間の協力の問題、あるいは自治体との関係の問題等々について必要な検討もした上で、この国会に基本法の改正案を提出をして、皆さん方の御審議をいただきながら、これからは起こった事件について疎漏のないような対応をしていこう、こういう取り組みでおることについては御理解を賜りたいと思います。
○江田委員 総理が、これはことし五月二十三日に衆議院の本会議で、先ほどちょっと言いました、当時の野中国務大臣がサリンの問題について報告をされた、そのときの質疑でお答えになっているのですね。
次に、これは国民の安全を守るための今後の対応についてのお尋ねですが、今回の事件は諸外国においても大きな関心を呼んでいるところでございまして、安全な国という日本に対する評価を損ないかねないものであると認識しておる、速やかな解明、そして政府におきましてもサリン法、この法律の策定、そして関係省庁連絡会議の設置等の対策を講じて、今後とも国民の安全の確保と信頼の回復に全力と、こういうお話をされておられる。
私もちょっと調べてみたのですが、総理の言われる関係省庁連絡会議というのは、サリン問題対策関係省庁連絡会議のことだと思います。時期的にそういうものがあるのですけれどもね。ここはこれまで五回ほど、拡大のものも開いていますけれども、具体的にはサリン法、これができて、あとサリン使用犯罪の再発防止ということをいろいろ検討はされたようですが、今はもう仕事が終わったからというような感じになっていると聞きます。
もう一つ実はあるのです。もう一つあるのは、オウム真理教問題関連対策関係省庁連絡会議というのが、よく似ているのですが、片っ方はサリン、片っ方はオウム真理教。こちらは何を研究しているかというと、これも私調べて、聞いてみたのですが、警察庁とか法務省とか文部省とか厚生省とかいろいろ入られて、オウムの関係の信者、元信者、こういう皆さんあるいは子供たち、こういう人たちの、言ってみれば社会復帰といいますか、とりあえずの監護、養護、こういう関係のことをやっておるというので、この事件というものを総合的に検証しながら、そこからいろいろな教訓を得て、いろいろな法整備であるとか再発の防止策であるとか、そういうことを研究するという体制は内閣にはないと思いますよ。内閣の中には今そういう意味の特別のシステムというのはないと思うのですが、どうですか、これはやはり何かそういう連絡会議か何かをつくってやるべきじゃないんですか。
○村山内閣総理大臣 さっき申し上げましたように、危機管理の体制というこの問題で、これは今度の阪神・淡路大震災の経験にかんがみてみてもいろいろやはり欠陥があった、ある。しかも、これは制度疲労みたいなもので、制度的にいろいろな問題があったということはもう率直にこれは認めざるを得ないと思うのです。
そこで、今の制度、仕組みの中で何ができるか、何が必要かということをいろいろ検討していただきまして、そして事件によってその関係省庁が直ちに官邸に集まって、そして集まったグループがそれぞれ正確な情報を提供し合いながら、全体としてそれぞれの受け持ちについて組織的に取り組めるような体制をつくっていこうというので、いろいろな事件に関連をして関係省庁の連絡会議を直ちに開くということにはしてあるわけです。
ですから、ハイジャックの事件のときなんかも、やはりハイジャックに関連をする各省庁が全部官邸に担当者が集まって、そして四六時中情報を集めながら対応していった、こういうことですから、私は、その点についてはいろいろな教訓に学んで、危機の管理体制については、当面今の制度の中でできる範囲のことは講じておるというふうに思っております。
○上原委員長 野田刑事局長。
○江田委員 いいです、もういい。
今の制度、仕組みの中でと、今の制度、仕組みを超えたいろいろな検討が要るんだということで……(発言する者あり)まあ、いいです、もうちょっと時間がないんで次へ……
○上原委員長 まだ御発言の許可は与えていませんよ。
○江田委員 続けますよ、質問。
○上原委員長 じゃ、江田五月君。
○江田委員 今の制度、仕組みということだけでは済まないいろいろな問題があるということでして、先ほども総理ちょっとお話しになりましたが、例えば刑法でも個人の責任ということを中心に刑法体系全体ができているんだけれども、しかし、もうああいう団体犯罪になると、個人の責任ででき上がった刑法、刑事訴訟法体系だけではなかなか進んでいかない。
そうすると新たな捜査の手法というものも、もちろんいろいろなデュープロセス、適正手続というのは必要ですが、そういうことも、保障も踏まえながら、新たな捜査の方法、コントロールドデリバリーなんてのもありますね、麻薬の関係とか銃の関係とか。こうしたものも考えていかなきゃならぬし、また、刑事法をもう少し超えて、団体的な反社会行動に対する対応策というのは世界どこでもこういう先進国はいろいろとっているようですから、ぜひ、我々も勉強する、新進党としても、今私もプロジェクトチームの座長で勉強を始めたところですが、勉強して提案をしますので、政府もやはりそれはそういう見地から今の時代認識というのを持って、今の時代というのはなかなかこれまでの過去の、牧歌的というと変ですが、そういう時代とちょっと違ったなかなか大変な時代にもなってきているんだ、新たな社会に対する脅威というのが出てきているんだ、そういう時代認識を持って対応していただきたいと思います。
○村山内閣総理大臣 さっきの質問は、現在何もしていないじゃないかという御質問ですから、いや、そうじゃなくてそうやっておりますという話を申し上げたのでね。
それから、先ほど来、今度の阪神・淡路の地震やらあるいはオウム事件やら等々の経験に学びながら、広域捜査の問題等については、今の制度の中で運用を改善をすれば十分やれるのか、あるいは法律の改正が必要なのか等々については検討していると承知しております、こう申し上げているので、先ほども今の刑法なりいろいろな法体系の中で、団体の組織的に行うような事犯について今の法体系で十分対応できるのかというような問題についても、これは外国の例等も十分に参照しながら、やっぱり検討に値するなというふうに思っておるということは申し上げたので、御答弁をもう私は申し上げているというように思います。
○江田委員 だんだん時間が来ておりますが、私は、さらにオウムの関係について、今専ら犯罪について聞いてきたんですが、犯罪以外にもいろいろ、犯罪といえば犯罪ですが、いわゆる刑法犯以外にもいろいろな違法行為があったんですね。子供のこと、子供がああいう状態に置かれていて、児童相談所長が何かできたんじゃないか。あるいは学校に行っていない、これは教育委員会が何かできたんじゃないか。あるいは私の古巣の話ですが、人身保護法というのもあるんですがね。
人身保護法という法律は、これは一二一五年のマグナカルタ以来の人権の歴史の中で、まさに歴史の中で光り輝く。とにかく人が拘束されている、その人の拘束が適法かどうかというのはすべからく裁判所が判断しますよという、裁判所の前にとにかく連れてこいと言ったら連れてこなきゃいけませんよというそういう法律なんですが、平成二年にはこれが若干威力を発揮した。しかし、その後、弁護士さん方の話によると威力を発揮できなくなって、これも聞きたいところがあるんですが、ちょっと時間がありません。
薬物の関係であるとか化学物質のこととか、建物への立ち入りのこととか、その他いっぱいあります。水道法、医療法、大気汚染防止法、自然公園法、食品衛生法などなど、言っていれば切りがないぐらいいろんな法律にひっかかっているんですね。
そういういろんな法律にひっかかっているこのさまざまなものが実はずっと見過ごされて、三月の二十二日の強制捜査、捜索、それ以来わっと出てきて、できなかったんだろうかなと。私はできたと思いますよ。本当にそれぞれのその立場にある、建設の関係でもあるいは消防の関係でも、あるいはいろんな関係のところが本当にその気になれば、できたことがいっぱいあるんで、それがさっきからの、市民社会の中の、地元の皆さんのいろんな情報にもっと敏感に網の目を張っておれば、ああ、こういうことがある、ああいうことがあると、いっぱいできたはずなんです。
それをちゃんとやってきていなかったんじゃないか。そこがこの問題の一番のポイントではないか。そういうことをきっちり検証をせずに、オウム真理教、これは宗教法人、したがって、宗教法人をコントロールすればこれはなくなるというふうにやるのはおかしい。
宗教法人法は八十六条で、「この法律のいかなる規定も、宗教団体が公共の福祉に反した行為をした場合において他の法令の規定が適用されることを妨げるものと解釈してはならない。」宗教法人だからといって、変なことをやったら、いろんな法規は全部適用されますよ、宗教法人法というのはそのときの障害にはならないのですよとちゃんと書いてあるのですね。そのことをやはり忘れてはいけないと思います。
そこで、宗教法人法改正問題に移りますが、加藤幹事長は宗教法人法改正問題に取り組む、党の命運をかけて、こういうことも言われたようですが、これはあれですか、総理、オウム対策なんですか、それともオウム対策じゃないのですか、どっちなんですか。
○村山内閣総理大臣 オウム対策のために宗教法人法を改正するつもりではない、これはもう断言しておきます。
○江田委員 これは明快なお言葉をいただいて大変、何か感激しますね。
余分なことですが、新聞によると自民党の山崎政調会長は、再発防止が重点で、それだけと言っても過言ではない、こういう言い方もしているのですが、これは自民党の総裁、橋本通産大臣、オウム対策なのかそうではないのか、そこのところをお答えください。
○橋本国務大臣 このオウム真理教の問題を契機として、宗教法人のあり方に対して国民の中に非常に強い関心が高まったということは、委員もお認めであろうと存じます。
それを受けて宗教法人審議会が今日まで議論をしてこられ、一定の結論を出してこられました。これは、宗教法人のあり方について宗教法人審議会が議論をしてこられたものでありまして、それ自体がオウム対策という性格のものではございません。
ただ、この事件をきっかけに、宗教法人のありようについて国民が強い関心を抱いておられるということは、つけ加えて御答弁を申し上げたいと思います。
○江田委員 オウム事件をきっかけとして、あるいは契機としてと言ってもいいでしょう、国民の中に宗教法人あるいは宗教団体の今のあり方についていろいろな批判がある。これはそうだと思うのです。確かにいろいろある。
あれは誤解もあるのですよね。税の問題などはかなり誤解をされている向きもあるかと思いますが、いろいろな批判があるのは事実で、そういう批判を宗教団体、宗教法人の皆さん受けとめながら、国民と宗教とのつながり方というのをよりいいものにしていかなきゃならぬということは、それはそうだと思うのです。したがって、そういう検討は、これは私どももやぶさかではないのです。
ただ、今お二人から確認いただいたのですが、オウム真理教対策、その再発防止、そのためにこれをやればいいのだとか、そのためにやるのだとか、そういうことではないのだ、もっと広くというそういう趣旨だということで、それならば私は、なぜ一体こんなに大慌てでやるのだ。何か本当に随分慌てているような気がしますよ。宗教団体の皆さんの動きというものをもっと大切にされたらどうなんだ。
例えば、ここに一つ私、文書を持っておるのですが、立正佼成会が十月になって、「宗教法人法改正問題に対する見解書」というのがあるのです。これによると、立正佼成会の皆さんは、今回の改正問題は自分たちは反対だ、そのことははっきりさせておいて、しかし、見直しを全く拒むものではないのだ、そして見直しのことをちょっとお書きになって、「こうした意味において、見直しは、広範な宗教界の参加と各界の参加協力を得て、宗教界の自浄・自主の努力によって行われることが適当であり、そのためにも第三者機関の設置を提案したいと考えます。」こういうことも言っておられるわけですね。
宗教界の中にも、いろいろそれは問題はある。世間の指摘を受けるところはある。そういうことを見直しながら、宗教法人のあり方をしっかりしたものにしていくために自浄・自主の努力、これは私はその方がいいと思うのですね。やはり信教の自由というものもある、政教分離ということもある。自浄・自主の努力、それはその方がいい。そういう自浄・自主の努力をしたい、そのために第三者機関を設置をしたい、こういうことを立正佼成会の皆さんおっしゃっている。
これは別に今、立正佼成会の皆さんだけじゃないと思いますよ。宗教界の中にもそういう機運が出てきているので、そういうものをしっかりと育てていく。私は、そのことを大切だと思いますが、総理、いかがですか。
○村山内閣総理大臣 自浄・自主でやっていただくことは、これは建前としては私はそのとおりだと思いますね。大学の自治だってそうです。
しかし、先ほど通産大臣からも答弁がございましたように、このオウム事件をきっかけにして、宗教法人というのは一体どういうものなのか、どういう活動をしておるのかといったようなものが非常に国民の関心を高めていますね。最近の世論調査なんかを見ましても、やはり宗教法人の見直しをすべきだという声は大変率が高いですね。
同時に、昭和二十六年に宗教法人法が制定されて、それを一遍も見直しもされていないし、改善もされてないのです。これは、やはり宗教法人自体ももうそれは大変な状況の変化にございますし、それから取り巻く社会的環境も随分変わっていますし、私は、やはりそういう観点から見ても見直しをされるのはある意味では当然のことではないか。
その上で、国会に法案が出れば、これは慎重な審議もしていただく必要があろうし、あるいはまた公聴会等を開いて、意見が必要ならば、これは議会の運営ですから私が言うことではありませんけれども、慎重な議論は当然していただくことだと思いますが、それは私は、今これだけ世論が高まって、関心が高まっているときに議論をするというのは、ある意味ではやはり政治の責任ではないかというふうにも考えておりますから、そういうふうに御理解を願いたいと思うのです。
○江田委員 だから、私冒頭申し上げたので、世論が沸騰している、その世論にちゃんとこたえていくというのは政治の責任なんです。しかし一方で、世論が沸騰しているときに、その世論の動きにただただ流されるというのではいけないので、そこはやはりしっかり見きわめなければいけないのです。いいですか。
だから、例えば、法と証拠をゆがめても何でも、とにかく、ねじ曲げても、破防法を使ってオウムをというのは、それは違うと。法と証拠に基づいて厳正にと。今これは、私はやはり宗教法人法改正というのは信教の自由にかかわる問題だと思いますよ。
あなたの内閣の中にこういうことを言っている人がいます。いや、これはすばらしい発言だと思うのですがね。
中外日報という新聞がございまして、これは宗教界で教派を超えて、それこそキリスト教から仏教、神道まで広く読まれている。もちろん宗教界以外のところまで、どのくらいかわかりませんが読まれている新聞なんですが、その中で、あなたの閣僚の一人が、
私は、本音では改正に反対だ。ちょっと長くなりますが、ただ閣僚として、見直しの論議を国会で行なうということには賛成せざるをえない。ちゃんとおっしゃっております。だが、「信教の自由」「政教分離」は現平和憲の根本原則である。日本の覇権主義による無謀な十五年戦争とその敗戦によって、また連合国や日本ばかりでなく、アジア各国の民衆の尊い血を流し、犠牲を払った上でもたらされた尊い原則である。その原則によって、日本は有史以来、初めて「信教の自由」を制度として確立てきたのではなかったか。極論すれば、日本は気の遠くなるような長い長い歳月にわたって祭政一致、政教一致できたのではなかったのか。敗戦亡国のつらい体験の中で与えられた信教(宗教)の国家権力(政・官)からの解放ではなかったのか。
そのことに思いをめぐらせれば、日本の宗教界や韓国、台湾などから反対論、慎重論が湧き起こるのもよくわかるのである。外国(先進国・議会制自由民主主義=政党政治の国)の識者たちから改正推進論者に対して向けられている厳しい批判の声にも耳を傾けなくてはならない。議会制民主主義と宗教とは相入れないというようなことを自民党政調の某幹部が言ったと報じられたが、あれはイギリスをはじめとする欧米のキリスト教国で議会制民主主義、政党政治が成立し、発達してきたものであるということを知らないか、知っていてもその辺をとぼけて言ったものとしか受けとれない。途中ちょっと省きますが、
信教(宗教)の自由は、自由民主主義国において、最も根源的な基本的人権である。それほど重大な問題を一つの国会や二つの国会ぐらいで性急にまとめようということの方がどうかしていると思う。国家百年の大計に属することだから、二、三年、時間をかけて議論していったらいいと思っているし、今度の臨時国会でその議論が始まったということで、政府・与党も面目が立つのではないか。
オウムのことは警察も検察も公安もなんの障害もなく自由自在に動いているのだから心配はない。むしろ坂本弁護士失踪事件の時の行政側の失点が大きいのではないか。ちょっと途中飛ばして……。済みません、ちょっと長くなって。
なぜ「信教の自由」と「政教分離」という憲法、人権の根幹にかかわる大問題を、つまり「宗教法人法の性格」を全く改変してしまうようなことを、大いそぎでまとめあげようと無理しているのか、その辺に疑問を抱かざるをえない。
国会でも、民間でも、国際的な学術界でも、今から大いに議論を深めていくべきであると思う。以前はうちの党にもクリスチャンの政治家とか、赤松常子さんといった仏教者何党がわかっちゃいましたか。仏教者の政治家が案外いたから、信教の自由が民主主義の絶対的基盤であるという政治哲学的教養とか理念のようなものが党内に割合とあったものだが、今はそういう議員もいなくなったようで、そんなせいからなのかどうか、そういう空気も体質も無くなったような感じがして淋しいね。こう結んでおられる。あなたの内閣の閣僚、「表現は、置かれている立場が立場だけに、活字では表現しきれない、苦渋に満ちたものであった。」と他の文で書いてありますけれどもね。
これは総理、やはり本当に真剣に、深刻に考えてもらいたいと思うんですよ。私は、この発言は本当にそのとおりだと思います。一々胸に響きます。宗教界の人々の声をもっと総理、聞くべきだ。
足を踏んだ人はそのことをすぐ忘れる、しかし踏まれた人は忘れない。戦前、一体日本の宗教界がどういう状態に置かれたか、こういう昔の経験を今も、当然ですよ、覚えていて、そういう声を発する皆さんの声、そういうことをおっしゃる皆さんの声、これを総理は、そういう宗教界の声をあつものに懲りてなますを吹くと聞くのか、それともそういう声にしっかり耳を傾けるという気持ちがあるのか、いかがですか。
○村山内閣総理大臣 戦前の状況に戻そうなんていう考えはもう全然ございませんし、信教の自由と政教分離というものは、これは憲法で保障されている基本的な人権ですから、これは当然尊重しなければならぬということを前提にして、今の社会情勢に対応し切らない面、あるいはこれだけ変化している状況の中で改善をした方がいいと客観的に思われる点等々を踏まえて、最小限度のものはやはり改正した方がいいんではないかという考え方に立っておるんであって、私は、その考え方を支持するのはやはり国民の中でも圧倒的に高いと思いますよ。
それは、感情的にあおられた世論に流されるなんて無責任なことではなくて、政府は責任を持ってそれにこたえる必要があるというふうに考えてこの臨時国会に提案をしたいという準備を進めておることについては御理解をいただきたいと思うんです。
○江田委員 信教の自由、政教分離、基本的人権は大切、これを侵害しない。侵害されるおそれを感じている皆さんの声というのがあるんですね。だから、足を踏んだ者はすぐ忘れるけれども、踏まれた者は忘れないんだ。自分たちはそういう信教の自由を侵害されるという心配を持つからといって宗教界の皆さんが声を上げているんで、そのことにしっかり耳を傾けないと、それは総理、「人にやさしい政治」とは言えない。
この宗教法人審議会で二十九日に審議がまとめられた、報告が出された。この宗教法人審議会自体も、私はこれ、大問題があると思うんですが、そのすぐ後ですよ、この委員であったある宗教法人審議会委員、天台宗宗務総長の杉谷義純さんが、これは文部大臣に手紙を出しておられるんじゃありませんか。
手紙といったってこれはもう公になった手紙ですけれども、反対意見、慎重意見が十五名中七名を数えた。十五名ですが、会長がいますから十四名で、十四名の多数決で決するわけですが、七名を数えた、しかし一任を求められた、これはまだ審議が尽くされていないからさらに審議を尽くすべきだという意見が多いことにも配慮せよ、これも会長一任を求められて一任をした。
ですから、もう一遍さらに報告をまとめた段階で事前了解を求められると思っていたら、それもなく、あっという間に文化庁の言うとおり、こういうことで、これは責任を負うことができない、公表せざるを得ない、こういう事態を。「茲に貴職」、貴職というのは審議会会長の三角さんですが、「貴職のとられた行動に対し、強く抗議するものであります。」こういう文書がある。宗教界の声だ。この人一人じゃないんだ、ほかにもある。
審議会はどういう審議をしたのですか。審議会のこの二十九日の議事録、これを提出してください。
○上原委員長 文部省小野文化庁次長。
○江田委員 文部大臣、答えてくださいよ、文部大臣。
○上原委員長 指名しましたので、聞いてください。
○江田委員 じゃ、とにかく。時間がないんだ、時間が。
○小野(元)政府委員 お答えを申し上げます。
審議会の報告をまとめるに当たりまして、審議会として採決という法はとっておりません。したがって、何人が賛成で何人が反対ということはございません。委員の一部には、報告の中身についてさらに審議をすべきだ……(初言する者あり)さらに審議を続けるべきだとする意見があったことは事実でございますが、既に十分審議が尽くされているということで、会長が議事を総理されて報告を受けられたものでございます。
○江田委員 私が聞いたのは、議事録を出してくれと。
じゃ、聞きましょう。
では、宗教法人審議会規則の十四条では、「会議の議事録の作成その他審議に関する事務は、文化庁文化部宗務課において処理する。」議事録の作成は「宗務課において処理する。」と書いてあるのですから、議事録がないとはまさかおっしゃらないでしょう。議事録の作成は宗務課で処理するのですから、あるでしょう。あれば出してくださいよ。文部大臣。
○島村国務大臣 お答えいたします。
議事録は非公開でございますので、出しておりません。
○江田委員 それは、非公開というのも今までならわかりますよ。だけれども、この日はいつなんですか、これは。九月二十九日の午後でしょう。九月二十九日の午前中に皆さんの内閣は閣議決定されているのじゃないですか、閣議決定。閣議決定はどういう閣議決定ですか。午前中ですよ。「会議の公開、議事録の公開などを行うことにより、運営の透明性の確保に努める。」一般の審議会は。ちゃんと閣議決定で審議会等の透明化、見直し等について決定しているじゃないですか。決定したことをやらないのですか。皆さんはそういうふうにして、ちゃんと自分たちで決めたことを自分たちで守らないのですか、どうなんですか。
とにかく、あなたじゃだめ、総理あるいは文部大臣、どっちか答えてくださいよ。そうでなければ時間がどんどん進んじゃう。答えてください。
○島村国務大臣 お答えいたします。
行政処分を行う審議会でございますので、公開をしないということで御理解いただきたい。
○江田委員 私もその閣議決定はちゃんと見ているんですよ。確かに、審議会を二種類に分けて、行政処分を行う審議会と一般の審議会と分けていらっしゃる。行政処分を行う審議会の方はこれこれ、一般の審議会はこれこれと書いていらっしゃる。だけれども、法の改正とか、そういうことについて建議をする、報告をする、それがなぜ一体行政処分を行う審議会なんですか。性格が違うじゃないですか。これはぜひ審議会の議事録は公開してください、出してください。(発言する者あり)
○上原委員長 お静かに願います。
○島村国務大臣 去る九月二十九日の「審議会等の透明化、見直し等について」の閣議決定におきましては、透明な行政運営を確保する観点から、審議会の会長に当該省庁の出身者を選任しないことや、議事録の公開等を行うことを定めております。(発言する者あり)ちょっと冷静にお待ちください。私もまだ就任早々なものですから。
行政処分、不服審査等にかかわる審議会につきましては適用から除くこととしておりまして、宗教法人審議会も宗教法人に関する認証等に関する審議を行うことから、会長の人選や議事録の公開については、特例的な扱いがされることとなっております。
なお、先ほど来、内部のいろいろ審議会のお話がございましたけれども、議員も御承知かと思いますが、十五人の委員中十一人が宗教家のいわば委員で構成されておるわけでございまして、いろいろな御意見があったことは、長い間なれ親しんだ、いわば四十数年間そのまま放置されていた既得権でございますから、私はいろいろな異議があることは当然だろうと思います。しかし、今回のいろいろな状況に照らし、また、国民の意見等も踏まえて、この際やはり法治国家として最低限度の改正というのはやはり必要である、こう認識いたしております。
○江田委員 審議会のことについてもっともっと聞きたいんですが、残念ながら時間が来ましたので、終わります。