1996/02/23 |
○江田委員 おはようございます。 永井労働大臣、このたびはどうも御就任おめでとうございます。永井大臣は、もうこれは労働問題の大専門家であられるわけで、まことに適材適所かと思います。この内閣、今エイズ問題で私の昔の同志の菅直人君も非常に頑張っておって、これも適材適所かと思いますが、永井大臣にも大いにひとつ、活躍を期待をされている大臣だと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。 実は、私と大臣とはいろいろ偶然がありまして、くしくも議員会館の部屋はお隣同士で、かれこれ十年以上ですか、やってまいりました。岡山県と兵庫県ということもございます。 実は私ども、新進党という新しい政党をおととしの暮れにつくったわけで、去年一年間私は党役員の方をさしていただいておりましたが、ことしから、明日の内閣というのがあるんですが、その労働・雇用政策大臣というのを受け持てということになりまして、ちょうど時期を同じくして永井さんが労働大臣になられた。 私たちは、やはり議会制民主主義というのは政権交代がなきゃいかぬ、政権交代の可能性ぐらいせめてなきゃいかぬ。そのためには、本日ただいまの内閣があって、そこにいろいろ大臣がおられれば、もう一つ政権交代の可能性を持った政党にもやはり同じようにカウンターパートがいて、これがなかなか対等とはいきませんが、ひとつ大いに我々も頑張って対等の議論をしていく、政治家同士の議論をしていく、そういうことをぜひやりたいということで明日の内閣をつくっているわけでございます。 いろいろ縁のある永井大臣とこうして、大変な専門家であられる本日の労働大臣と、私は実は労働行政というのは本当に経験がないんですが、素人は素人なりに、それでも意欲だけは持って頑張ろうとする私どもの方の明日の労働・雇用政策大臣と対決をさしていただくということで、ぜひひとつ実のある議論をさしていただきたいと思います。 大臣の所信表明をつい先日聞かしていただきましたし、また、その後も改めて読ましていただきました。いろいろなことが注意深く適切な言葉で入ってはおるんですが、大臣自身恐らくお読みになりながらお感じになっておられるんだと思いますが、やはりお役人のつくった文章なんですね。大臣の言葉もいろいろ随所に入ってはおるんだとは思いますけれども、それでも役人の文章で、きょうはひとつそうではなくて、もう政治家同士の生の言葉で議論をしたいと思っております。 通告をしていない話でちょっと恐縮なんですが、大臣はたばこは吸われますか。 ○永井国務大臣 酒は飲みませんけれども、たばこはたくさん吸います。 ○江田委員 昨日、労働省はなかなかすばらしいことをされたんですね。たばこの煙から非喫煙者の健康を守るために、分煙を柱とした職場での喫煙対策のガイドラインを労働省は初めて策定をした。これは通告はしてありませんが、どうです大臣、労働行政責任者としてどういう意欲をお持ちですか。 ○永井国務大臣 私、たばこを吸うものですから、吸う者の立場に立っていつも発言をしているんですが、この社会の中で嫌煙運動をされる方もありますし、たばこをお吸いになる方は、これは一つの嗜好品でありますから、その吸う権利もという議論もあります。 そういう中で、社会の中でたばこを吸う喫煙者がたばこを吸わない人々にどれだけ迷惑を少なくするようにするかということからすると、職場の中でも一定の節度ある対応が必要なのではないか。これは、喫煙者である私の立場からいいましても、その節度というものはやはり守らないかぬだろう。 現に、飛行機に乗りましてもあるいは電車に乗りましても、新幹線もそうでありますが、禁煙車というのがきちっとつくられておりまして、私どもたばこを吸う者は禁煙車に乗らない、禁煙車にしか乗れないときはそこではたばこを吸わないということを自分でもずっと守ってきたわけでありまして、その程度のことは社会の共生という中ではやはり必要なのではないかということで、今回のこの通達についても、ぜひひとつ関係者の皆さんに十分な御理解をいただいて、お互いが気持ちよく社会の中で生きていけるようにするということで、私はこのことは高く評価をしているわけであります。 ○江田委員 いいですね、そういうことだと思いますよ。たかがたばこでけんかになったり、あるいは気分悪くなったりというのはたまらぬので、吸う人も吸わない人もそれぞれが皆仲よくやっていけるといいと思う。 大臣、今最後に高く評価をしておるとおっしゃいましたが、これは大臣自身がやられたことですから、評価というよりも自分の意欲をひとつ示していただきたいんですよね。評価は我々がするわけでございますから、ひとつぜひ間違わないように、大臣、当事者ですから、よろしくお願いをいたします。 さて、労働行政全般のいろいろな議論をさしていただく前に、まず一つお伺いをしておきたい。それは今議論になっております独占禁止法改正問題、特に持ち株会社の解禁と労働問題についてでございます。 今やはり時代の大きな転換期ですし、企業がいろいろな形の企業展開をしていくということももちろん必要で、日本の場合には戦前あるいは戦争中いろいろな経験を持っておって、財閥というものが弊害を引き起こしておった。そんなことを乗り越えて、戦後、公正な競争市場というものを確保していかなきゃならぬということで独禁法をつくって、持ち株会社というものを禁止をしたわけですね。 しかし、どうもこれも一定の限度で必要性があるのではないかというので、いろいろな類型なども検討しながら持ち株会社解禁の議論が起きておるわけでありますが、一方しかし、ことしの一月三十一日、連合の鷲尾事務局長は談話をお出しになった。どうも今の持ち株会社解禁の動き、持ち株会社原則自由化、これは労働問題の観点からの検討が抜けておるではないかと、「労使関係や、雇用・労働条件に関わる合意形成に関して、重大な懸念がある。」「国民的議論が不十分なまま持株会社の解禁を強行することには断固反対する。」こういう談話を出されて、強い意思表示をされました。 連立与党の中でも永井大臣の所属政党である社会民主党ですか、何となく懐かしい響きのある名前ではありますが、この社会民主党の方は原則自由化に強い異論を唱えて、与党の間での調整がつかずに、この部分先送りで、公取の組織強化、本当に強化になるかどうかちょっとわかりませんが、そういう改正となった。しかし、一国会の中で、一つの法案について、この改正とさらにもう一回改正を出すというような動きもあるとか、三月中にも結論を出すのだとか、いろいろな議論が聞こえてくるわけです。これは一体どういうことなのですか、まず永井大臣にこの持ち株会社解禁ということについての基本的なお考えを伺っておきたいと思います。 ○永井国務大臣 現在、江田議員からも御指摘がありましたように、連立与党を組んでおります与党の中でプロジェクトチームをつくって、検討しているわけであります。 戦後の独禁法の制定されました経緯については、今先生言われたように、公正な社会をつくるというその原点に立っているわけでありますが、今現実のこの高度に発展してきました社会の中で持ち株会社というものを解禁するというこのことについて、果たしてそのことが社会的に見て、経営者の側と働く側との関係においていろいろな問題が想定されますけれども、その想定される問題について的確に対応できるか、あるいは経営団体とか労働団体の要望を最低限満たすようなものになり得るかどうかが検討の焦点になっているわけであります。 その点につきましては、今直ちにそれがどうのこうのということのコメントは差し控えたいと思うのでありますが、プロジェクトチームで与党は与党なりに検討している経過というものを慎重に見守った上で労働省としても対応していかざるを得ない、このように実は考えているわけであります。 ○江田委員 公正取引委員会の方、お見えですね。 今、永井大臣は、持ち株会社の原則自由化、解禁、これによって労働関係に重要な影響が出てくる可能性があるので、労働関係への影響の検討というものは重要な課題になっておるのだということで、労働省としては関心を持っておるのだ、そういうお話なのです。 四章研と言われましたか、独占禁止法第四章改正問題研究会の中間報告書、これを拝見しますと、一番最後の方に「他の関連法制」というので、「一定の範囲で持株会社を認める場合には、独占禁止法だけでなく他の法制に内在していた問題が明確になり、その見直しを必要とするものがでてくることが予想される。」「これらの問題については、今後どのような措置が必要とされるかについて、関係各方面において早急に検討が深められていくべき事項であると考えられる。」こういう記述があるのですが、この記述は労働関係のことも頭に置いて書かれたものなのですか、どうなのですか。 ○舟橋説明員 御説明申し上げます。 今この持ち株会社禁止制度、これは全面禁止になっておるわけでございますが、これに対しましては、その規制を緩和すべきであるという意見、要望が寄せられてきておりまして、最近では規制緩和、そういう観点からこの持ち株会社禁止制度のあり方を見直すべき、こういう御主張がございます。 昨年の三月三十一日になりますが、規制緩和推進計画、これは閣議決定されたものでございますが、ここで公正取引委員会は、その持ち株会社規制について検討を開始して、結論を得るということでございます。 先生御指摘の他法令との関係でございますが、これにつきましては、現在全面的、一律に禁止されている持ち株会社、これを一定の範囲で認めるという場合には、いろいろな法制との関係、これが当然出てくるわけでございます。 労働法規ということでございますが、労働界から、例えば使用者の考え方に影響があるのではないか、そういう御指摘があることも承知いたしてはおりますが、この問題につきましては、現行の法制下において認められております会社の親子関係、ここにおいても議論されておる問題でございまして、持ち株会社禁止制度を見直すということに伴って新たに生ずる問題というふうには考えていないわけでございます。 今後何らかの措置が必要かどうか、これは関係方面において十分議論が深められていく問題、かように理解をいたしております。 ○江田委員 非常に言葉がたくさんございまして、その中から私が質問したことについての答えの部分を探し出すのに今一生懸命注意しながら聞いていたのですが、もう一度言いますと、「持株会社を認める場合には、独占禁止法だけでなく他の法制に内在していた問題」、他の法制にいろいろ内在していた問題がこの持ち株会社を認めることによってもう一度見直しをしなければならぬ、そういう必要性が出てくる、そういうような問題がいろいろあると予想される、だからさらに細かく検討を、こういうふうに書いてあるので、この「見直しを必要とするものがでてくることが予想される。」という予想されたものの中に労働関係というのは入っておるのですか、いないのですか。今入っているというふうにどうも聞こえたのですが、それはそれでいいですか。 ○舟橋説明員 先生御指摘の四章研の報告書の、ここで指摘しております「他の法制に内在していた問題」、その中に労働法規がストレートに入っているかどうか、これは四章研の検討の場でも明示的には議論はされていなかったというふうに私は理解いたしております。 ただ、この四章研の報告書は別といたしまして、労働法関係について、先ほど申し上げましたが、労働界から使用者の考え方とかそういう影響があるのではないかという指摘がある、これは私ども承知しておる、そういうことでございます。 ○江田委員 よくわからないですね。 例えば使用者性という問題がございますね。これは従来からも、親会社、子会社という関係で、もちろん親会社の従業員は問題はないのですが、子会社に雇われている者の場合には一体だれを使用者として交渉していったらいいのか。 現実に、労働契約で使用者となっている者といろいろ交渉してもらちが明かない、これはやはり親会社と話をしなければいけないのではないかということがしょっちゅう起きて、そして法は「使用者」としか書いていないわけですから、使用者というのは言ってみれば包括的、あるいは価値評価をある程度含んだ概念でしょうから、実態をずっと解明しながら、これが使用者だというようにして使用者性を認めていくというやり方をやってきたわけですね。ですから、従来からも使用者性というのは内在されていた問題で、それを法人格否認の法理とかなんとかでクリアをしてきた。 しかし、今持ち株会社というものを認めるという方向を検討し始めると、もう一度この使用者性という問題が浮かび上がってくる。だからこれについて検討しなければいけないというので連合の方から言われた。確かにその問題は、ここへ書いてある「他の関連法制」の中にそういえば入っていると認識をしなければならぬな、こういう経過で今認識をされておる、そういう理解でいいですか。ちょっとよくわからない、舟橋さん。 ○舟橋説明員 答弁がつたなくて恐縮でございます。 四章問題研究会の二十五ページだったかと思いますが、ここに書いてある範囲で労働法関係が明示的に入っていたかどうか、ここは研究会の報告でございますのではっきりはいたしておりませんし、研究会の議論の過程でも特段それが明示的に議論になったこともない。 ただ、それは別といたしまして、現在私ども持ち株会社関係の規定の見直しについて検討いたしておるわけでございますけれども、それとのかかわりにおければ労働法関係も関連する問題だというふうに認識しておる次第でございます。 ○江田委員 課長がそこを注意深く答弁されるのは、大臣、こういうことなのだと思うのですよね。 確かに労働法関係も、当たり前なんですよ、持ち株会社を解禁すればいろいろな形態の会社が出てきて、親会社、子会社よりももっと、どう言いますか、すっきりと言えばすっきりだけれども、はっきりした支配、被支配の会社が出てくるわけです。しかし、会社というのはもちろんそこで人が働いているわけですから、そういう働いている関係からいろいろな労働関係というのが出てくるのは当然で、これについての検討なしに持ち株会社問題を考えるというのは、これはおかしな話。 ところが現実には、大臣、大変なことなんですね。この第四章改正問題研究会のメンバーには、ずっと見ても、労働法関係、労働問題について見識、まあ見識は皆さんそれぞれお持ちでしょうが、専門的な知識経験を持っていらっしゃる方が一人も入っていないんですね。入らずにやったものだから、その点の議論がきっちりできずにこうなってきて、後で言われてあわてた、これは確かに関係あるなと。そこで、その関係を議論をしていかなければならぬというので、労働省ともいろいろ協議を始めたという、そんな感じのようですが、大臣、どうです。 さっき大臣は、これは重要な関係があるとおっしゃったので、過去の経緯は別として、これからいよいよ法案取りまとめというようなときに、与党内の協議でもあるいは閣議の中でも、まあ閣議というのは大体花押か何かを一生懸命書いて、それだけで済んでしまうような形式的なものですが、広い意味での閣議で、閣僚の中で、労働問題についてしっかりした検討なしに議論を進めることはだめですよと。 しかし、もちろん持ち株会社解禁という一定の社会的要請は今あるわけですから、何が何でも反対とかというわけではもちろんないので、きっちり節度ある、自由な競争力のある市場を維持していくために前向きに取り組まなければならぬけれども、一方で、労働問題についてはやはりちゃんと労働省なり労働大臣なり、十分言いたいことは言わせてもらうという覚悟を持っていただきたいのですが、いかがですか。 ○七瀬政府委員 ちょっと技術的な点でございますが、現在でも使用者性の範囲についてはいろいろと議論がある。問題は、この使用者性を広げるかどうかという点につきましては、労使を含めた幅広い議論で判断することになると思うのですが、持ち株会社の解禁に伴ってどんな問題が生じ、どんな形態ができ、それが労使関係にどう影響を及ぼすかという議論は必要なことだというふうに考えております。 ○永井国務大臣 最前も御答弁申し上げましたように、今さまざまな問題点が想定されますので、実はプロジェクトチームで検討してもらっているわけでありますが、労働団体側からいえば、果たして従来の親会社、子会社という関係の労使問題ということで処理することで済むのかどうなのかという問題が一つ提起をされているわけであります。 経営者側からすれば、いや、それは今までから親子関係にある労使関係と同じような形態でやれるのではないかという議論もあります。あるいは、現在の労組法や労調法で対応できるのではないかという議論もあります。 その根拠となるべき背景は、それぞれの持っていらっしゃることは随分あると思うのでありますが、それを一つ一つ引き出して、実際に心配されるような異常な労使関係というものが、産業界の発展に混乱をもたらすことがあってはならないという立場で検討してもらうということで今検討してもらっているわけでありますから、これについては私自身は、江田先生も言われましたように重大な関心を持っているわけであります。 労働省としても、労働者の保護ということも十分に頭に置きながら、その推移を見て対応していきたい、こう考えております。 ○江田委員 大臣のその御決意は多といたします。頑張っていただきたいと思うのですが、もう少し事実関係、今局長お答えになったので、詰めてみたいのです。 この持ち株会社解禁問題について、まず舟橋課長、労働省とはいつどんな形で協議を開始されましたか。 ○舟橋説明員 御説明申し上げます。 持ち株会社関係の独占禁止法の改正法案につきましては、通常、法案を提出する前に政府部内の調整が行われるわけでございますけれども、一月の下旬から調整を行ってきております。当然労働省もその対象ということでございます。 ○江田委員 これはもっともっと細かく詰めていってもいいのですが、まあいいでしょう。 局長、それでいいのですか。いつ公正取引委員会の方からこの協議を持ちかけられました。 ○七瀬政府委員 一月下旬に提出予定法案の協議という形で御相談を受けております。 ○江田委員 それは各省庁全部を集めての法案協議でしたか、すべてにやるということですか。それとも個別に公取と労働省と協議をされたのですか。 ○七瀬政府委員 法案協議の場合には、各省とそれぞれ個別に協議をする一環として私どもが御相談を受けたというふうに承知いたしております。 ○江田委員 その協議はこれからどうされるのですか。 ○七瀬政府委員 私どもの理解では、労使関係にどういう影響を及ぼすかについての関心がございますので、この法律の趣旨その他についてわからない点があるということでいろいろと問題点を指摘し、それに対する公取の考え方をお聞きしておったわけでございますが、トータルとしてどういう判断をするかは、与党三党のプロジェクトチームで判断をするという手続が進んでおりましたので、そういう段階でいろいろと問題点について御質問をしたという形でとどまっておるところでございます。 ○江田委員 いまひとつよくわからないのですがね。 大体この持ち株会社の解禁、私は、くどいようですが、反対と言っているわけじゃないのです。しかし、労働関係にいろいろな影響があるから、むしろ持ち株会社の問題なんかが出てくるときには、何か一月下旬になって法案協議の場で言われて、それから労働省が動き出すんじゃ本当はおかしいので、その問題はうちにも関係あるから、ひとつぜひ協議をさせてくれと積極的にもっと前から出ていかなければいけない場面じゃないのですか。どうなんですか。 ○七瀬政府委員 先生の御指摘はよくわかりますが、事実といたしましては、私どもはこういう動きをその時点で承知した。それについての承知の仕方が遅かったということに御批判があれば、その御批判は甘んじて受けるほかはない、率直に申し上げてそういうことでございます。 ○江田委員 いや率直なあれで、甘んじて受けられてもこっちも困るのですけれども。まあやむを得ませんが、これから本当に重要ないろいろな影響がありますから。 私、先ほどちょっと言いましたが、例えば使用者性ということについては、今の親子関係、親会社、子会社関係でも、法律上なかなか難しい問題なんですよね。その問題を法制度的にちゃんとした解決をせずに、言ってみればほったらかしてきたわけですよ、言葉は悪いけれども。 まあ判断機関、それが例えば労働委員会であったりあるいは裁判所であったり、そういうところの判断にゆだねて、ゆだねられたら困るのはだれかというと、労働者の方なんですよね。使用者の方は別に困らないのですよ。労働者の方が、だれを相手にいろいろなことをやっていいかわからないものだから、大変手間暇かかる裁判所の手続なんかをやらなければいけない。それで今日まで来て、裁判所も困るわけですよ、なかなか判断の枠組みというのがないので。 それで、しようがないから、法人格否認の法理とか、これなんかも、法人格否認の法理なんというのは威張って言える法理じゃないので、言ってみれば逃げの法理なんですよね。あるいは救済の法理なんですよ。そういうもので何とか解決をしたり、何か超法規的に、いや、こういう実態ならこうだとかいうような解決をしてみたり、いろいろやってきたわけです。言ってみれば今日までの法制度の中に内在していた問題点なんですね。ですから、今回こういう持ち株会社といったことが表に出てきたときには、そういうものもひとつ法制度的に解決をしていくんだという労働行政の積極展開があってもいいのではないか。 この使用者性については、例えば立法で解決という方法もあるでしょう。あるいは、たばこ問題を最初に申し上げたのは、実はそこにちょっと伏線があるので、ガイドラインでちゃんと解決していく。こういうようなときには持ち株会社にも使用者性を認められたい、こういう形態の持ち株会社のときにはと、いろいろあるでしょう。そういうようなガイドラインを出していって、無用にいつもいつも長い手間暇かかる裁判手続などをやらなくても、労働者側がちゃんと相手方を見定めることができるような労働行政があってしかるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。 ○七瀬政府委員 使用者性の判断基準については、現行法では労働契約の当事者である法人、しかし実質主義ということでございますが、この点については、今の段階では判例の集積にまつほかないという形でやってきております。 ただ、そういう判例の集積を経て交通整理をするということは、いろいろ検討に値するのではないかと思いますが、おっしゃいますがイドラインについては、使用者性の範囲を広げる必要があるのかどうかという本質的な議論についても十分詰めておかなければいかぬし、あるいは使用者性の範囲を法律的には広げないけれども、あるべき姿として、あるいは啓蒙指導的な観点でこういうふうにした方がいいというようなやり方をとることも考えられると思いますが、いずれにしても非常に重要な問題なので、少し論点を整理する必要があると思っております。 ○江田委員 これはちょっと技術的なことになるので大臣はよろしいですが、そういうような問題があるということ、したがって、これは労働省としても無関心ではいられないということ、これはぜひひとつ念頭に置いていただきたいと思います。 労働組合側から、使用者性の問題だけでなくて、団体交渉応諾義務のこと、労働協約の拡張適用のこと、あるいは労使協議制度の義務づけなどいろいろ問題を提起されておって、それぞれに法律上も技術上も実体上もいろいろ難しい問題もあるが、同時に、やはり持ち株会社解禁ということになると問題として浮かび上がってくるテーマであることは間違いないので、ひとつ積極的に検討をしていただきたい。大臣、簡単にひとつ覚悟だけ聞かせてください。 ○永井国務大臣 今、江田先生から御指摘がありましたように、この問題について内在する問題点は、できるだけ早期に全部洗い出しをしてプロジェクトチームの方に反映をさせていきたい、このように一つ考えることと、いずれにいたしましても、この結論というものが、今せっかく安定してきた労使関係というものを損なうことのない、そういうものだけは基盤としてしっかり踏まえたようなものにしていただくことを念頭に置いて労働省としても対応していきたい、こう考えております。 ○江田委員 労働省側とそういう十分な協議をすることについて、公取の方にもぜひ決意を聞かせていただきたいと思います。 ○舟橋説明員 持ち株会社の部分的な解禁に伴いまして、例えば労使関係で生じるとされるいろいろな問題につきましては、今後関係方面において議論が深められていくことを期待しておりますし、私どもといたしましても労働省を初めとする関係省庁と密接な連絡を図ってまいりたい、かように考えておるところでございます。 ○江田委員 さて、持ち株会社の問題はその程度にしまして、労働行政全般について広く大臣とひとつ議論をしてみたいのですが、大臣、労働というのは一体何ですか。 私もよくわからなくて、きのう広辞苑をちょっと引いてみましたら、一として「ほねおりはたらくこと。体力を使用してはたらくこと。」二は経済学の言葉としてですか、「人間がその生活に役立つように手・脚・頭などをはたらかせて自然質料を変換させる過程。」とか、何かややこしいことが書いてあります。 それでもどうもよくわからぬので、きのう夜、息子の何か法学入門とかいう本を見ていましたら、労働の特質というので、一つは、人間から切り離せないとかあるいは売り惜しみなんかができないそういうような特質から、労働というのは経営とか資本に対してどうしても弱者になる。これを支えていかなければ、近代市民法の形式的ルールだけでは実質的な公正というものは図られないから云々というようなことがいろいろ書いてありました。 それはそれで確かに当たっているのだろうと思いますが、どうも最近はもうちょっと違ってきているのじゃないか。何か労働というのは、苦楽でいえば苦、苦役、労役、そういうふうに考えて、そのような搾取の形態としての労働、どうしてもそこでは力関係上人間が人間として扱われなくなるから、労働行政では、労働者が人間として扱われるように、使用者に対するいろいろな規制をするとか労働者を奨励するとか救済をしていく、それが労働行政だ、そんな感じがずっとあったのだろうかと思います。 しかし、最近は、もちろんその面も大切だけれども、それだけでなくて、労働というのは何かもっと明るいもの、苦と楽でいうと楽しいもの、そんなものになって、労働というのは苦役じゃなくて、苦役の面もあるけれども、やはり社会をつくっていく、社会を成り立たせていく、それは人間としての自己実現ですね。社会を成り立たせていく自己実現として人間がやること、これが言ってみれば労働ということですね。 そんな意味で、労働行政というのは、一人一人の人間が社会人として仕事をしていくときに、その仕事が全部自分も実現していく、社会もそれで成り立っていく、そんなバラ色というと変ですが、夢のある、未来のある、本当に人間と密着した行政になっていくときが来ているのじゃないか、そんな気がするのです。 そんな意味を込めて、大臣、一体労働というのをどういうふうに考えておられるか。長い労働運動の経験ですから、そこからほとばしる言葉があるのじゃないかと思うのですが、聞かせてください。 ○永井国務大臣 なかなか専門的に難しい御指摘でございますから、的確にお答えできるかどうかわかりませんけれども、実は、私が長年の間労働運動に携わってきて、そこからつくり出した私の座右銘というものがございまして、その座右銘は、政治家になって十六年、この間ずっとそれを使い続けてきたわけでありますが、「人の喜びは我が喜び」という言葉でございます。それは端的に言えば、今先生の御指摘になった労働ということのすべてがそこに集約されていると言ってもいいのではないかという自分自身の気持ちでございます。 いずれにいたしましても、自分が働いて自分の生活を成り立たせるという単純な昔からの発想ではなくて、自分が社会の一員として、歯車の一つとして働くことが世の中をよくすることだ、世の中をよくするということは自分自身の置かれていることもよくなっていくのだ、そういう立場でのものではないかなという気がするわけです。 したがって、そこには友情もあり、あるいは弱者という言葉は私は適切ではないと思うのでありますが、いろいろなハンディを持っていらっしゃる方々に対する思いやりも、そういう自分の労働を通してそれを果たしていくという、そこには福祉をつくり上げていくという精神もその中に込められているのではないかな。したがって、端的に申し上げる言葉はないのでありますが、私の座右銘である「人の喜びは我が喜び」というところにすべて集約させていきたい、こう考えているわけであります。 ○江田委員 私はなぜそんなことを言うかといいますと、今時代の大きな転換期で、日本はなかなか不況から脱し切れない。多少明るい兆しは見えてきたとはいうものの、まだまだなどと言われるわけですが、時代を大きく区切ってみますと、かれこれ二百年ぐらい続いた経済成長の時代、産業発展の時代、そういうものがどうやら終わりになってくる、次の時代へ移行していく。学者の言葉で言えば、国民経済という時代がそろそろ終わりつつあるのじゃないか。まだまだ途上国の皆さんなんかもあるわけですから、世界じゅうが一色でというわけじゃないのですが、日本なんというのはその中で特にそういう何か新しい時代に入っていく。 過去の産業時代、経済成長時代、これは例えば利潤追求が企業の目的であって、したがって、例えば赤字決算となる場合には企業としては失敗。しかし、今はそうでもないので、赤字のときもあれば黒字のときもある。しかし、企業が企業としてちゃんと存立をし、そういう企業活動が全体として国の経済をつくって、その中で例えば物価を安定し、あるいは完全雇用が実現できておれば、それはそれでいいのだ。 企業というのは単に利潤追求だけじゃないですよ。利潤追求という点でうまくいかないときでも、例えばメセナもあります。あるいはいろいろなことがあって、しかもそこで働いている労働者にとってはすばらしい労働環境がちゃんと保障されておって、給与もきっちり支払われてとなれば、不況というのはある時代の特徴であって、そういうのを乗り越えていけばまた次の展開が来るという、そんなことも考えていいのじゃないか。 そうすると、労働というのも、ただひたすら利潤追求をする資本経営、これに従属して働かされて搾取される形態、これが労働、そうとらえるだけでなくて、もっと別のとらえ方があって初めて、労働行政というのがいろいろな多彩多様な展開ができてくるのじゃないか。 人間というのは何だというので、ホモ・エコノミックスとかホモ・サピエンスとか、ホモ・ファベルなんというのもあるのですかね、工作、道具人ですかね。ホモ・ルーデンスとかホモ・ロクエンスとかいろいろあるのだけれども、マルクスという人が、たしかホモ・レーバーと言ったのですかね。労働するというのは人間の本質的な特徴だという。 マルクスという人は、資本主義の中ではそれは搾取になってしまうから、社会主義にして解放して、本当に労働が人間にとって自己実現できる営みにしようと考えたわけです。それはそれである一定の歴史的な時代の考え方でしたが、何かそんな時代に我々、実はマルクスを卒業しながら入りつつあるのじゃないかというような感じもするのです。 今、いろいろな労働のタイプが出てきていますね。終身雇用、日本の場合には一つの日本の労働の場のあり方としての典型例なんでしょうが、終身雇用も崩れつつある。もちろんまだございますけれども、必ずしも終身雇用ばかりじゃない。昔からある季節労働とか出稼ぎとか、こんなものもあるけれども、パートタイムとか、あるいは何年と年期を区切った契約労働とか、派遣労働とか請負とかボランティアとか、あるいは最近はフリーターとか、いろいろな形の職業生活、労働生活というものがあって、一人の人が自分の一生の中でこれをいろいろな格好で組み合わせながら自分の一生を送っていく。 そのどういう労働の形態をとってみても、それが安心できて安定、それぞれの形で安定の度合いは違いますが、それがあって、そしていろいろ保障されておって、それぞれ人が心豊かな労働生涯をそういう形で送っていけるようにしていくっそこで労働行政は、例えばパートタイムだったらこういうふうなこと、あるいは派遣労働ならこういうふうなこと、いろいろな労働の場面について、今の安心とか安定とか保障とか、そういうものがちゃんと裏打ちされている、そんな労働行政が必要な時代が来ているのではないか。 つまり、労働行政というのは、そういうパートタイムというのが最近出てきました、困りました、これは大変ですから何かとか、派遣労働という形が出てきました、これはいろいろ問題がありますからとかじゃなくて、後追いではなくて、もっと積極的に打って出て、前向きに出ていって、いろいろな形の労働の条件をきっちり整えていく、こんな姿勢が必要なのではないか。そして、それをやれば、労働行政というのはこの新しい転換の時代に物すごく大切な、物すごく可能性を持った行政になるのではないか、こういう思いがあるのですが、いかがですか。 ○永井国務大臣 今先生御指摘のありましたように、社会が進展することに伴って、まさに多様な労働形態が生まれてまいりました。とりわけ今のように景気が低迷してきている中では、さらにその傾向が強まってきていると私は思うのです。ですから、先生の御指摘になっておりますように、そういうものを想定して、それぞれに事前に的確に対応するようなことを労働行政として打って出よという御指摘でありますが、意識的にはそのことを常に頭に置いて労働省としては実は対応してきているつもりであります。 とりわけ、パートの皆さんは随分と数がふえてまいりました。ちなみに、ちょっと数字的に申し上げますと、就業形態の多様化に関する総合実態調査ということを平成六年に実施をしているわけであります。その結果からいいましても、正社員でない人の割合は、これはいわゆるパートであったり臨時であったりということになっていくと思うのでありますが、全体の二二・八%ということになっているわけです。五人に一人という状況が生まれてきているわけであります。 そういう実態がありますだけに、本来の正社員ではないパートの皆さん、あるいは労働組合も組織されていない皆さん、そういう人たちに対して労働行政としてどこまで働く人の立場に立った、保護と言えばちょっと語弊がありますけれども、その人たちの労働条件を守るためにどこまで行政が深くかかわることができるか、この視点こそ今大事だということで、労働省としてはいろいろなガイドラインもつくってみたり、パート労働法もつくりましたが、不十分な点についてはさらにこれからの対応についても検討しているというのが今の実情であります。 言われましたように、多様な労働形態に対応するような労働行政、これは大変なことでありますけれども、それをやらねばならないという立場で取り組んでいるのが現実であります。 ○江田委員 これは、そういう問題意識も確かにお持ちなんだろうと思うのですよ。大臣の所信の中でも「労働者一人一人が職業生活のあらゆるステージを通じてゆとりを持ちつつ、その能力を開発・向上し、健康で安心して働ける環境整備を進めるとともに、就業形態の多様化等に対応して、労働者の多様な個性や能力が十分に発揮できるような環境整備を一層進めることが重要です。」こうお書きで、こういうところはそういう問題意識なんだろうけれども、もっとその問題意識を膨らませて積極的に展開をする、ほかの省庁も全部労働省が引っ張っていくという、そのくらいの覚悟を持ってやってほしいのですね。ぜひお願いをしたいのです。 これは例えば派遣労働法でももっともっといろいろな展開の仕方があるだろうし、そのほかでもそうです。シルバー人材センターだってそうです。いろいろな展開の仕方があるのです。一方で、今は働く場がある、その働く場の形態が今いろいろと多様になってきていますよ、働く皆さんの自由な選択というのがもっともっとできるようになった方がいいですよという話ですが、働く場がないという、これがまたもう一つ問題なのですね。 雇用自体をいかに確保していくかというのが今大変な状況であって、失業なき労働移動というのは非常に重要なこれからの労働行政のポイントで、着眼点はいいのですが、失業なきというのは、ちゃんと雇用の場があるという前提ですね。雇用の場がない、雇用の場をいかにつくっていくか、これがやはりこれからの労働行政の一つの重要なポイントだと当然お考えでしょうね。雇用の場をつくっていく労働行政、いかがですか。 ○永井国務大臣 新しい事業を創出するといいますか、つくり出すということについても、中小企業の皆さんを初めとして多くの事業者の方々に労働省としてもお願いといいますか、これだけの支援をいたしますから積極的に取り組んでくださいということも、今までいろいろな法律の改正も通しまして行ってきているところであります。 そういう場合に、例えば新しく事業を起こす人について、それに合ったような能力を持った労働者が必要である。では、その人たちの能力開発をどうするか。もしその能力開発のために教育をするのであれば、それに対して財政面も含めて支援をしていこう、あるいはそういう労働者を雇い入れた企業については、それだけの雇い入れた人たちに対する一定の人件費についても事業者に補助をしていこうとか、労働省として考えられることについては、財政的な援助も含めていろいろなことを行ってきているところでありますが、それをさらに厚みを持たせて、実際に実行できるようなことをこれからも積極的に取り組んでいきたい、こういうことで今懸命の努力をしているところであります。 ○江田委員 雇用対策については、今の労働行政の中心的な考え方というのは第八次雇用対策基本計画だ、こう考えてよろしいのですね。 ○征矢政府委員 当面の対策でいろいろやっていることもございますが、基本的に今後二十一世紀に向けての中長期的な対策の考え方としては、御指摘のとおり、新しい第八次雇用対策基本計画の考え方に沿って対処してまいりたいということでございます。 ○江田委員 これもなかなかおもしろいこともお書きなんですが、やはりもっと積極的にと言いたいのですよね。重点方針で、経済社会の変革期において雇用の安定を図る、労働者が主体的に可能性を追求できるための環境を整備するとか、超高齢社会の到来に対応し、職業生涯を通じて安心、あるいは国際化などとお書きですが、新しい雇用をつくり出していくというのは、これは労働省だけの課題じゃない。他省庁とどういうような連携で新しい雇用をつくり出す仕事に取り組んでおられるのか、ちょっと説明してくれますか。 ○征矢政府委員 御指摘のとおりでございまして、雇用創出ということが当面非常に重要な課題でございます。 私ども雇用対策を進めていくわけでございますが、雇用対策というのは、狭い意味での労働省の所管する雇用対策と、より広い意味での雇用創出という観点でいきますと、御指摘のように、これは産業経済が今後どう発展していくか、そういう中で新しい雇用をどこにどうつくり出していくか、こういうことになるわけでございまして、そういう観点からいきますと、産業官庁と十分連携をとりながら、そういう視点から新分野の展開、そういうものを図っていただくことが必要である、こういうことでございます。 そういう観点からいきますと、私ども、例えば通商産業省等とは定期的に連絡協議会、そういうようなものを持ちながら、産業政策との整合性をとりながら雇用対策を進めていく、こういうこともやっておりますし、あるいはこの前、二十一日に、内閣総理大臣を本部長といたします、全閣僚を構成員とする産業構造転換・雇用対策本部、これを開催いたしましたけれども、こういうところでも、当面の最重要課題が雇用問題であるという観点から、労使の意見を聞く、あるいは関係閣僚の間でいろいろな意見の交換を行っていただき、雇用問題についての認識を改めてしていただき、雇用創出ということを頭に置きながらそれぞれが政策を進めていただく、そんなような取り組みをいたしているところでございます。 ○江田委員 私ども新進党、昨年の参議院選挙のときに実はいろいろな公約をしたのですが、そのときに新産業創造・三〇〇万人雇用創出三か年計画というのを提唱しまして、いろいろな分野でいろいろと新たな雇用というものをつくっていく、新たな雇用をつくっていくというよりも、もっと本質的には日本の産業社会の構造自体を変えていくという、そんな提案をしているのです。 きょうはこの細かなことを一々言うつもりはないのですけれども、やはり産業空洞化とかいろいろ言われるわけで、そういうものを乗り越えていくのに、空洞化だから企業は外国へ出ていってはいかぬなどと言ったって、これはしようがないことでして、そうすると新しい産業をそこへつくっていかなければならぬ。 これからの経済発展をリードしていく産業ということになると、例えばそれは科学技術であるとか情報通信であるとか、こういったことになって、情報通信についてスーパーハイウエート光ファイバー網をもっとどんとつけろ、これはもちろん労働省だけでやるわけには当然いきませんが、やはり労働省が雇用創出、新産業をつくって、そこへ労働の場を広くつくっていくというような観点から、関係する省庁と大いに協議をし、大いにハッパをかけて頑張っていかなきゃならぬ課題だろう。 そして、そういう新しいリーディング産業、そうしたものに働く能力を持った労働者を大量に用意をしていくために、能力開発、自己啓発その他をむしろ早手回しにつくっていくといった、そんなことが必要だろうと思うのですね。今もちろんやられていないわけじゃないだろうと思いますが、どういう程度のことをやっておられるのですか、そうした問題意識で言えば。 ○征矢政府委員 御指摘のとおりであるというふうに考えます。 私どもといたしましては、そういう意味で、新しい分野がどういう方面でどうあるか、これが非常に今後の重要課題でございます。そういう新分野展開とあわせて、それに必要な人材をどう確保するか、あるいは既存の企業・産業の労働者にどう円滑にそちらの方に移っていただくか、こういう観点が極めて重要であるということでございます。あるいは、新しい分野における必要な人材についての能力開発を積極的に進めていく、こういうことが極めて重要であるというふうに考えております。 当面、そういう観点からの具体的な対策としましては、主として大企業が中心になるわけでございますが、業種雇用安定法という法律、これは昨年の国会で改正していただいたわけでございますが、そういう中で、新しい分野に企業が展開していく場合に、それについての配置転換あるいはそれに伴う教育訓練が必要な場合にそれに対する支援をするとか、あるいは、サービス関係その他新しい分野で別のところに労働者を移す場合、移った先で労働者が職場になれるまでの間の一定期間について賃金の支援をして、失業しない形で労働者に移っていただく、そういうことによって新分野が新しく広がっていく、こういうような面での対策が一つございます。 それからもう一つは、いわゆるベンチャー企業あるいは中小企業が新しい分野を展開する場合に、それに必要な人材の採用がなかなか困難だ。こういう新分野展開をする場合、あるいは新しくベンチャー企業が出発する場合に必要な人材を確保する場合に、それについても一定の賃金面での支援をすることによってその人材が確保できやすくする、そういうような対策、そんな形での雇用創出という面からの労働省としての対策を始めているところでございます。 ○江田委員 きょうは総論ですから、各論に入るといろいろ出てくるので。 今いろいろおっしゃいましたが、その一つ一つに、じゃどの程度の人員とかどの程度のお金とかどの程度の規模とか、そういうことを考えていきますと、決してなかなか満足できる状況じゃないんだろうと思うんですが、大臣、ひとつそうした観点から、時代の大きな転換期に、日本の産業構造の転換、新しい科学技術、情報通信、そうした産業を大きく育てていく、そういう場面での大臣の決意を聞かしてください。 ○永井国務大臣 今いろいろと先生御指摘がありましたけれども、目まぐるしく産業構造が転換してきているということでありますから、それに対して、とりわけ少子・高齢化社会という背景がありますから、その中で勤労者の意識の変化に対応するような労働行政でなければならぬと一つは決意をしているわけであります。 あわせて雇用の創出、大変難しいことでありますが、この雇用の創出のためには、今言われましたように、労働省の枠を超えて、関係省庁と十分連携をとって新しい分野を開拓してもらう。そのためには、もう既につくってまいりました中小企業の労働力の確保法であるとかあるいは新分野展開に対する援助の措置を決めたいろいろな施策を総合的、機動的に運用していくといいますか、そういう立場で対応してまいりたいと思います。 今も職安局長から申し上げましたように、二十一日に、これは初めての試みでありますが、全閣僚出席のもとに、経済界の代表と労働界の代表も入っていただきまして御意見を聴取いたしました。 その中で、経済界の代表の方も労働界の代表の方も、今のこの産業構造転換にあわせて、新しい分野の開拓であるとか新しい雇用の創出であるとか、こういうことが今日本にとって極めて重要な問題であるという御指摘がございまして、そこは共通の土俵が私はできていると思うのですね。その共通の土俵にどうやって行政がこたえることができるかということでありますから、これこそ関係省庁と十分連携をとって実は対応してまいりたい、こう思っておるわけであります。 何にしろ新たな展開を図っていくという場合にはいろいろな障害が起きてくると思いますが、その障害を乗り越えるためには、各党派を超えてひとつ御協力をいただいて、必要な法改正などについても積極的に対応していきたい、こう考えております。 ○江田委員 もちろん我々も協力すべきは協力するにやぶさかでないので、大いに頑張っていただきたいと思います。 ただもう一つ、経済の構造が大きく変わっていく、そして次の時代の日本の産業展開、経済社会の発展のためには、こういう産業分野、新しい分野が牽引車になっていかなきゃならぬよということで、今の科学技術とか情報通信とかいうものを大いに伸ばしていかなきゃいけないというものがありますが、私は、やはりそれだけでは足りないんだろう。 つまり、新しい時代になっていって、本当に安定成長軌道に乗せながら、完全雇用とかあるいは物価の安定とか生活の充実とかそういうものを図っていこうと思いますと、そういうリーディング産業をぐうっと伸ばしていくと同時に、すき間産業と言うとちょっと変なんですけれども、そうでない、例えばこれまでの経済の延長線上で、どうしても効率のいいところ、いいところへと行きますから、非効率の部分というのはぽかっとあきますよね。 そこの部分は、非効率であるがゆえに産業がきっちりできていく、非効率であることを活用した雇用の場ができてくる、こんなものもあるんですよね。これは例えば教育であるとか福祉であるとか、あるいは医療であるとか、あるいは緑であるとか環境であるとかコミュニティーであるとか、観光なんというのもあるいはひょっとしたら入るかもしれませんね。これからの観光というのは、もうひなびた田舎の宿で温泉につかりながらなんというのがすばらしい観光だなんということも出てくるわけですからね。 そうすると、そういう新しい雇用をつくっていくというときに、そうした何か今まで我々が見落としていた、つまり、経営のトップと労働のトップが集まって話をしただけじゃどうしても見逃されてしまうような、そういう地域に密着した新しい雇用の場というのがあるんじゃないか。だから、何かこうばあっと旗を振ってというだけではつくっていけない。地道に地域に足をつけ、地域住民の目線に立って見ると、あ、こんなところに新しい雇用がある、こういうところにもあるじゃないかというのがいっぱいある。これはやはり私は労働省として支援をするという問題意識が要るのではないかと思うんですが、これはいかがです。大臣、どうです。 ○永井国務大臣 実は先日、産業労働懇話会を開きました。その席上でも御意見があったわけでありますが、今先生が言われたように、雇用創出を行っていくあるいは雇用対策を進めていくためには、地域の実情に合ったそういう政策も必要だということも御指摘をいただいたところであります。 したがって、現在労働省としては、そういう実情も踏まえながら、多角的な視点に立った雇用対策が必要だろうということで、そういう立場で推進をしているわけであります。とりわけ、産業構造の変化等に対応した業種雇用安定法による対策などを実施しているわけでありますが、地域の実情に根差した雇用対策という立場から、円高、これは円高の関係は非常に大きな影響を及ぼしてきたわけでありますから、円高等雇用対策協議会というものを設けているのでありますが、これをより具体的に実効あらしめるための活用をしていきたいという決意を、先日その産業労働懇話会でも実は申し上げたわけであります。 したがって、今後とも都道府県や市町村等と密接な連携を図って、今御指摘のあったようないろいろな多角的な面からも踏まえた地域振興施策との連携をとった雇用対策というものも積極的に進めていきたい、こう考えているところでございます。 ○江田委員 これは本当に具体的なことなんですね。個別の具体的な、しかし普遍性を持った課題だと思いますよ。 例えば、今ちょっと本があるんですが、福祉の分野で寝たきり老人が現在六十万人だ、痴呆性老人も六十万人だ。これらの人を一人介護しようとすると三人が必要だと。そうすると百二十万寝たきりと痴呆性老人でいるわけですから、三人必要だとすると三百六十万人ヘルパーが必要だ。しかし現在、公的なところでは三万人、私的なところを合わせても四万人しかいない。さあこれからこのヘルパーということ、寝たきりとか痴呆性老人の介護ということだけを考えてみても、今でさえさらに百倍の担い手が求められている。そこをきっちり雇用の場にしていけば随分新しい雇用というのはできてくる。 そういうことは、まあ今大臣おっしゃいまして、まずそういうことなんでしょうけれども、もっともっと具体的にやらなきゃいけませんよね。ひとつぜひ新しい雇用創出という産業の新しい展開、その新しい産業の展開であるがゆえに、しかし、影の部分と言うと本当は変なのですが、地域にいろいろなものが残っている。それを十分埋めていくことによって日本の社会というのが本当に心豊かに暮らせる共生の社会になっていく、こんなことが必要なのですね。 今、大臣ちょっとおっしゃいましたが、中央レベルだけではこれはもちろん無理で、全国一律の新産業育成などということはできるはずがないのです。それぞれの地方から地方振興の政策と一体になった雇用創出、これもそうですし、同時に地域に密着した、それぞれの地方、地域にいろいろなことを今努力をしてやっておる人たちがいるのですね。それぞれの地域にいろいろな方々がおられるわけですから、そういう皆さんの努力をひとつエンカレッジしながら、福祉にしても医療にしても、あるいは教育にしても緑にしてもコミュニティーにしても、新しい観点から取り組んでほしい。 そんな中で、労働行政としても、例えば今よく言われますNPO、非営利法人というのですか、こんな問題についてのビビッドな問題意識ぐらいは持っていなければ、地域に展開をしていく草の根雇用開発なんというのは、雇用創出なんというのはできないのじゃないかと思います。 NPO、これは大臣、ちょっと通告してないのですが、もちろん御存じですよね。どういうお感じでおられるか、労働行政担当者としてどういう問題意識をお持ちか、ちょっと聞かせてください。 ○永井国務大臣 余り専門的な知識はまだまだ持っていないわけでありますが、例えば震災のときにボランティアの皆さんが大変な活動をされました。あれに触発されまして、このNPOの問題も必要性ということから提起をされているものだと私は理解をしております。 そういう社会全体の動きの中で、具体的な問題点として提起されていくことについては、労働行政の中でも、積極的に取り入れることのできるものは取り入れていかなければいかぬなという気持ちを実は今持っているわけであります。 まだこのNPOの関係について、私自身具体的に専門的に検討をしている段階ではありませんので、細かいことは言えませんけれども、重要な問題だという認識は持っております。 ○江田委員 労働行政がやはり転換期の行政として非常に重要なときなので、こんな言い方をすると申しわけないですが、労働省という一つの狭い枠組みの中で、タコつぼ型に閉じこもっているようなときではないですよ。もうどんどん外へ出ていって、取り込むと言うと向こうが怒るかもしれませんから、出ていっていろいろやっていただければ、今のNPOとかNGOとか、いろいろな場面があると思うのですね。 そうした形で新しいきめの細かな雇用創国政策というのが要るんだということになりますと、私は今、労働省の皆さん、なかなかいいことを実は気づかれた、なかなかいい芽をお出しになろうとしておるというのが今度の予算の中にあると思うのですね。 女性起業家への支援という、余り聞きなれない言葉ですが、これはどういう問題意識でこの女性起業家支援ということをお考えになりました。 ○太田(芳)政府委員 女性起業家支援につきましては、ことし初めて予算要求をさせていただいたものでございます。 近年、女性の働き方がいろいろな形になってきておりまして、特に再就職型の女性を中心に、女性たちが自分の力を生かす就労の機会というのを、企業に勤めることもよいことでございますけれども、みずから企業を起こしてやっていきたいという方が増加しておりますので、こういう方々に対していろいろな支援が労働省としてもできるのではないかということで、勉強をさせていただこうではないかということで始めさせていただいたものでございます。 ○江田委員 これは今度の予算の中にあるのですが、金額は幾らですか。 ○太田(芳)政府委員 金額は、まだ芽出しということで、八百万程度お願いをしております。 ○江田委員 いやいや、いいですよ、八百万でも、それはもう大したものです。初めてですからね。だけれども、ずっと八百万じゃいけませんよ。ことしはそうだけれども、来年はその十倍とか百倍とかね。 大臣、女性起業家という言葉を御存じでした。 ○永井国務大臣 最近テレビや新聞の報道で随分出てきましたから、十分認識はしているつもりであります。 ○江田委員 私は、やはりこういう問題意識、別に女性でなきゃならぬことはないので、男性でもいいんですけれども、要するにそういう問題意識がなければ、さっき申し上げたような、きめの細かな心豊かに暮らせる共生社会をつくっていくための雇用創出というのはできないんだろうと思うんですね。 どういうことかといいますと、例えば私の友人でも、私の大学の後輩で県庁へ勤めておりまして、奥さんがある日、まあ長い間温めておられたのでしょうか、ガラス細工か何かを始めまして、いろいろなおもしろいガラスのつぼなんかをつくって、これを単に趣味でやるだけではなくて、売ったりするんですね。どうも御主人の方が後ろで糸を引いていたのか、あるいは奥さんがやっているのを見て、生き生きしていて、自分の県庁での人生はどうもなかなか灰色だなと思ったりしたのか、県庁をやめて、今度奥さんの方の仕事を手伝うようになって、そこにある雇用がちょっとできてとか、そういうのが今いろいろあるんです。 どうも既存の職場では男社会で、男論理で、その中で太田局長も大変苦労をしてこられたのだろうと思いますけれども、女性がなかなか安心して働けない。男女雇用機会均等法というのをつくった。これもまだまだいろいろ不十分な点のある法律でした。 しかし、私も法案の審査のときに当時の赤松局長に申し上げたのですが、女性の地位向上というのは一朝一夕でできるものではないので、長い歴史の中でやっとここまで来た。男女雇用機会均等法、いろいろ問題点はあるが、しかし、その問題点があるからこれはだめだというのではなくて、ここまで来て、女性の地位向上はさらにこれからもずっと取り組んでいく課題なので、この法律ができましたら、はいそれで終わりです、あとは腰をおろして休んでしまうというんじゃだめだ。これをこれまでの成果とし、そこに立って、さらにこれを土台としながら次の女性の地位向上に取り組んでいこうじゃないか、そんなことを話したことを思い出すのですが、なかなか難しいです、既存の労働環境の中で女性の地位向上をやっていこうというのは。 しかし一方で、さっきもちょっと申し上げたように、例えば非効率であるがゆえの新しい雇用の場の展開とか、あるいは利潤追求でなかなかうまくいかないがゆえに一つの特徴を持った雇用の場の展開とか、そういうことがあって、まあどっちかというと、生活価値事業なんという言葉もあるようですが、生活の中に価値がある。 なかなか利潤は上がっていかない、なかなか効率は悪い、だけれども生活の中に価値がある、そういうものを女性が、私は別に何も偉くなりたいからやるんじゃない、隣近所の皆さんのために何かこういうことをやったら意味があると思って始めたら、それが一つの雇用になっていくという、そんな女性ならではの発想からの業を起こしていく起業家というものが今だんだんできつつあるわけです。 こういうものをずっと育てていけば、既存の職場の中ではなかなか女性の地位が向上しない、しかし、大きな社会の別のうねりで、女性が社会の中で非常に重要な役割を果たしていく。これがむしろ企業社会の中にも大きく影響を与えていって、本当の男女雇用、男女の共生社会ができていく。八百万ですけれども、そういう芽を持った取り組みではないか。これはちょっと高く評価し過ぎですかね。どうでしょう。大臣、私が今言ったのは大げさ過ぎますか。 ○永井国務大臣 一つ一つそういう現場をこの目で見て、体験をして申し上げるという経験をまだ持っていないわけでありますが、最近女性起業家を中心にした動きがテレビなんかでも特集番組として出されてまいりまして、非常に興味を持って私も見させていただいたわけであります。そこには、先生が今言われたように、我々が今まで頭の中で想像でき得なかった分野に、現実に新しい起業家という方たちが動きを見せている。これはやはり大事に育てていかなきゃいかぬ、こう思うのですね。 だから、今婦人局長が申し上げましたように、先生に大変お褒めいただきましたけれども、わずか八百万円であっても、これを一つの突破口にしてこの起業を希望する女性の実態把握などもやっていきたい。そして、そういう実態を把握した中から、労働行政としてどういう支援をすることができるかという支援策について検討を進めたいということから、ことし突破口を開こうとしているわけでありまして、大変興味を持ち、重視をしているというふうに御理解をいただきたいと思います。 ○江田委員 本当にそのとおりなんで、どこまで行くかわかりませんが、私は、やはりこれは相当大きな可能性を秘めた問題意識だろうと思っているのです。 一九七五年に国際婦人年がございまして、そこからいろいろなことが国際的に展開をされてくるわけですが、一九八〇年にウイミンズ・ワールド・バンキング・システムですか、WWBニューヨーク、これは国際的にそういう女性起業家に対するいろいろな金融支援というのをやっていこうじゃないかというプログラムができて、第一号がニューヨークにできて、一九九〇年にWWBジャパンが三十九番目にできた。大臣御存じないでしょうね。知らないですね。太田局長、御存じですか。 ○太田(芳)政府委員 存在は存じております。その詳細については不勉強で存じませんが、あるということだけは存じ上げております。 ○江田委員 みんなそういういろいろなおもしろいことをやっているんですよ。どうぞそんなこともひとつ今の八百万円でぜひ勉強して、取り組む先をいっぱい見つけていってほしいと思います。 労働行政、こうやって考えてみますと、今私はほんの一部分だけちょっとつまみ食い風に議論しただけですが、やはりこれから先の時代を開いていく本当に重要な行政で、そうした労働行政の中にこれまで労働運動の長い長い貴重な経験をお持ちの永井大臣がかなめの役として就任をされたのですから、これは期待も大きいけれども、逆に大臣、怖いですよ。期待を裏切ったときには我々は、ちょっと大臣、そこどいてください、私がかわりに座ります、こういきますよ。それが政権交代ですからね。 私どもも一生懸命、そういう意味で、新しい時代の労働行政はいかにあるべきかという勉強をします。労働省の皆さんもひとつそういう覚悟でやってほしい。これはやはり切磋琢磨というのがなきゃいけないので、きょう私が申し上げたのは、これまでの万年野党型批判の態度じゃなくて、いつでもとってかわりますという意味で言っているわけですから、批判の言葉が鋭くなかったからといって安心していちゃいけないと思っていただきたいと思います。 さて、もう時間があとわずかでございますが、幾つか小さな、小さなじゃない、本当は大きな問題です。新卒の人がいよいよ間もなく期限切れということになるのですが、新卒の就職問題はどんな状況ですか、ちょっと報告しておいてください。 ○征矢政府委員 新規学卒者の就職内定状況でございますが、これは十二月末現在の状況でございます。 大学卒が八一・七%、短大卒が五六・五%、専修学校が七八・四%でございますが、昨年三月末の最終的な状況で見ますと、大卒が九六・三%、短大が八八・三%、専修学校が九三・七%という状況でございます。 ○江田委員 これはとにかく一生懸命努力するということしかない。いろいろ新しい試みもされているのだろうと思うのですが、これまでになかった新しい試みというのはどんなものがありますか。 ○征矢政府委員 御指摘のとおりでございまして、なかなか新しいいい知恵があるということではございませんけれども、三月に向けまして最大限の努力をしてまいりたいということでございます。 昨年に比べまして拡充強化した点について申し上げますと、公共職業安定所の中で具体的に相談するセクションとしまして、大都市に、全国六都道府県におきまして学生職業センターという専門的に相談するセクションがあったわけでございますが、それでは間に合わないということで、全県下で学生職業相談室という形で職業相談、職業紹介をする、そんなセクションを設けております。 それから、あと求人開拓に全力を挙げて就職につなげるということでございますが、その具体的な方策として全国的な規模で求人一覧表というのをつくりまして、これは大学、安定所を通じて提供するということでございます。これも昨年は一回三月にやりまして、ある程度一定の効果がありましたので、ことしは、また三月で三回目になりますが、三回にわたって実施するというようなこと。 それから就職面接会、これは各地でやっているわけでございますが、これも昨年に比べまして大幅に回数をふやして、一人でも多くの方が就職できるように一生懸命やっているところでございます。 ○江田委員 労働省予算の中に、これもなかなかおもしろいと思うのですが、パソコン通信を使った職業紹介というのが出てきましたね。これは来年度からだから、ことしは間に合わないのですか。 ○征矢政府委員 今後の産業構造の変化に伴う就業構造の変化あるいは雇用の流動化の進展、あるいは求人・求職のミスマッチがいろいろ大きい。そういう中で迅速かつ効果的に行政を行うためには、御指摘のとおり、情報機器を活用した職業情報の提供をすることが重要になってきているのではないか、こういうことでございます。 これにつきましては平成八年度の予算で手当てをいたしまして、公共職業安定所や人材銀行におきまして、求職者・求人者が安定所内あるいは所外においてみずから求人・求職情報を検索できる装置の試行的な導入、あるいは求職者・求人者が自宅や事業所にいながらパソコン等により求人・求職情報を検索できる装置の試行的な導入、あるいは全国の学生職業センター、学生職業相談室、主要公共職業安定所におきます新卒者を対象としたパソコンによる求人情報の提供、求人開拓や合同就職面接会等、公共職業安定所の外でも即時に求人・求職情報を提供できる携帯端末装置の導入、そういうものを平成八年度から実施したいというふうに考えているところでございます。 ○江田委員 ミスマッチを最大限なくしていく、そのためにありとあらゆるきめの細かな方策を用意するということは大変大切なことで、私はパソコン通信というのはなかなかいいところへ目をつけたなと思ったのですが、来年度からで今年度には間に合わない。ちょっと残念です。 そのような状況ですが、大臣、新卒の人たちに対する就職問題、これは最後までひとつ頑張っていただきたいと思いますが、大臣のこの問題についての決意、これを最後に聞かせてください。 ○永井国務大臣 私が前に労働政務次官をしておりましたときに、新規学卒者の就職が非常に厳しいということで、各業界をずっと歩きまして、採用枠の拡大を求めて集団面接会を開催したことがございました。ことしも百カ所を超える箇所で集団面接会もやっておりますが、そのために求人をふやしていかなければいかぬということで、今月の二十一日の早朝に産業労働懇話会を開きましたときにも、改めて強い決意を持って経営側の代表の皆さんに採用枠の拡大をお願いしたところであります。これからも引き続き、三月末に向けて、さらに新卒者の就職が可能な限り最大限、一〇〇%に近づくような努力をしていきたいと思っているわけであります。 なお、今パソコンの関係もございましたけれども、現在持っている能力でいきましても、本当に高度なコンピューターの能力を駆使いたしまして職業開拓などをやっておりまして、一つの例で言いますと、求人側の企業の全体像がパソコン通信で見られるということまで現在の能力でも持っているわけであります。それをさらに強化しようというのがこの八年度の計画でございまして、雇用の確保のためには、ある意味で言うとなりふり構わぬ立場でこれに当たっていきたいというのが私どもの決意であります。 ○江田委員 期待をしておると同時に厳しい目で見ておりますので、ひとつ頑張ってください。 終わります。 |
1996/02/23 |