1996/02/26 |
○江田委員 総理、いろいろ数年前のことまで事細かにと、しかしそうしたことを言われる立場にいて、その責任を仕事で果たしていくと、今そうお答えになったわけですが、しかし私は、これは国民は本当に、総理もあるいは大蔵大臣も、あるいは官僚の皆さん方も政治家みんな我々も含めて、みんな国民から見たらあなたたちは被告ですよ、こういうふうに言っているのじゃないかという気がするのですね。被告同士が、何かもちやだんごで話をまとめて、やれスキームです、国民の皆さん六千八百五十億円払ってください。これに対して、本当に国民は怒っているのだ。 総理、冒頭、京都の市長選挙、いや四千九十二票ですからね。どうお感じですか。 ○橋本内閣総理大臣 昨日私は、夕方ロサンゼルスから帰ってまいりまして、疲れ果てて割合に早く横になりました。十時半過ぎに当選を知らされて、ほっとしてそのまま寝続けました。けさ改めてその投票の内容を聞きましたが、瞬間、私は田辺前市長が最初に立候補されましたとき応援に行きました者として、あのとき三百数十票差だったということを思い出しました。それとともに、前回に比べて共産党さんの得票が一万数千票ふえている、この重みはきちんと受けとめておかなければいけない、そのような感じを持った次第であります。 ○江田委員 これは与党の側と我々と一緒に推薦をしたわけで、私どもの律儀な支持者はそれは入れてくれましたけれども、やはり国民は、住専問題がこんなになっているときに――私としてもひとつ率直に質問したいと思うのですよ。こんなになっているときに、有権者に物を言わせろ、こういう気持ちが非常に強い。まあ共産党に市政を任すわけにはいかない、ぎりぎりでね。だけれども、やはり物を言わせてほしいという、そういう怒りが、これはやはり住専の問題ですよ。住専の怒りがあの結果にはあらわれているということを私たちは読みとらなければいけないのじゃないかと思うのですが、いかがですか。 ○橋本内閣総理大臣 それは、私自身京都の、我が党を含めともに推薦をいたしました候補者の応援に行き、応援演説に立ちましたから、そして、住専の問題に触れずに済ませてきたわけではございませんから、その風当たりというものは十分私は存じておるつもりであります。その上で、先ほど感想を聞かれましたので、率直なことを申し上げました。 ○江田委員 私も応援に行ったのですけれども、やはり住専の問題は、これは総理、国会は通せても国民はなかなか許してくれない重い課題だと思いますね。実は、政府や与党に怒りが向いているだけでなくて、私たちも実はその怒りをやはり買っているのだ。同じ穴のムジナという言い方はちょっと変ですけれども、しかし、過去をずっとさかのぼっていったら、私たちのところに今結集している人たちももちろん政治、行政、いろいろな立場で責任を負っているわけですから、私たちも責任を回避してはいけないのだと思っているのです、過去を言うとね。 ですから私は、これからどうするのだ、これからもああいうような被告同士が談合で事を丸めるというやり方でやるのか、それともそうではなくて、やはり日本にも法律というのはあるのですよ、法律で最後はきっちり処理するのですよという、そういうことをやるのか。 私たち新進党は、今の政府のスキームに対してしっかりした対案を出さなければならぬ、その上で私たちは別の選択肢を国民に示す、そういうことをしていかなければならぬ。きょうは予算の審議ですから、まず予算について、私どもは六千八百五十億円は削除をするという、そういう組み替えの対案を、これを出すことにしておる。予算ですからね、ここは。そういうことにして、さらにその金を使わない処理の仕組みとして一定の対案を、今、政府の方は法案をお出しになっていますから、それはまだ審議は始まっていないわけですけれども、その法案についての対案はちゃんと用意をする。それをやらなければ、これは京都市長選挙にあらわれた国民の怒りなり願いなりにとてもとても私たちはこたえることができないと思っております。 私は、二月九日でしたよね、予算委員会総括質問で一時間半、私どもの考える、私が個人的にと言ってもいいでしょう、考える対案をお示しをして総理といろいろな話をさせていただきました。何かどうも法律的に細か過ぎて、しかも早口で、マスコミの皆さんにはよくわかっていただけなかったみたいで反省をしておるので、総理からもしばしば専門的過ぎると言われたのですけれども、しかし、総理、やはりあれは今政府がお出しのスキームの基本的な問題だと思うのですよ。 私どもの公述人である清水直弁護士あるいは財部誠一経済評論家、こういう皆さんがきっちりと会社更生法という提案を公聴会でやられましたが、そのほかにもいろいろなところでこういう提案が出てきております。 例えば三月に国会提出予定の政府の金融関連三法案、だんだん案がまとまってきておるということですが、金融機関の更生手続の特例法案というものがあって、金融監督当局が更生手続開始の申し立てができるようにする、預金保険機構が預金者の代理機能を持つ、あるいは協同組織金融機関への会社更生手続導入などの新しい規定を設けるということになっているようですが、総理大臣、今の内閣はもうそこまで会社更生法のことを実は考えておる。もちろん、総理、御存じですよね。 ○西村政府委員 私どもただいま検討中の金融関係の三法案の中で、別途会社更生の手続というものを活用しようとしておるのは事実でございます。 しかしながら、今回の住専の処理と、会社更生手続を利用しようとしております預金受け入れ金融機関の個別処理を迅速に行おうという問題とはおのずから性格を異にする問題でございまして、法律の専門家である江田委員はその辺はよくおわかりかと存じますが、問題の性格の違いということで十分御説明できると存じます。 ○江田委員 まあ、通告もしていないのですけれども、総理もそこまでの認識はどうもなかったのでしょうか、あるいは大蔵大臣もそういうことが進んでいるという認識をお持ちになっていないのですか、どうなんですか。 ○久保国務大臣 今、正確に申し上げた方がいいと思って、銀行局長に答弁をさせました。承知いたしております。 ○江田委員 政府部内においても、金融機関の破綻状況を乗り越えるために会社更生法というものを使おうということが検討されている。金融制度調査会が、去年の十二月二十二日、「金融システム安定化のための諸施策 市場規律に基づく新しい金融システムの構築」こういうものを答申としてお出しになっているのですね。これをずっと見ますと、おもしろいのですね、これも。 これは、「3 金融機関の破綻処理のあり方」、「(1)基本的考え方」、「(2)破綻処理手続の整備、預金保険制度の見直し等」というので、その中に、これは「イ」というところがありまして、「会社更生手続をベースとする処理手続の整備」「破綻金融機関はそのまま存続させないという原則の下で、破産等により事業の解体を行わずに円滑な倒産処理を図る必要がある場合もあることから、破綻処理手続の整備は会社更生手続をベースに行うことが適当である。このため、協同組織金融機関についても同様の処理手続を可能とするよう所要の制度整備を図ることが適当である。」この答申に基づいて今法案の検討をされているということかもしれませんが、いずれにしてもそうしたことを検討しておられる。 私は、逆じゃないか、今のスキームをこのまま焦ってやるのでなくて、こういう会社更生手続について、一定のさらに完成された処理、処理といいますか手続をつくって、そこでちゃんと法的処理をするのがむしろ筋じゃないか、そこまでやらなくても、既存の用意されておる倒産関係の法律でもできると思いますがね。それが常識だと思いますよ。 きのう、加藤自民党幹事長はテレビで、問題は日本的処理と法的処理の対立だ、こんな言い方をされたと、私は聞いていなかったんですが、後でそう聞いたんですけれども。日本的処理と法的処理、何か言葉のごろが上手に合っていておもしろいんですが、ここで加藤さんがおっしゃるのは、とにかく法律なんてかた苦しいことじゃなくて、最後はみんなで丸くおさめていこうやという、それを日本的処理と言い、何だかぎすぎすした角の立つやり方を法的処理と言ったのかもしれません。 そうではなくて、日本にも法はあるんだ、法律はあるんだ、最後は法律がちゃんと出てくるんで、そういうものがあるからこそみんな安心して自分自身の良心に従い一生懸命努力をしている。最後になったら何だかわけのわからぬことになってしまうというのじゃ、これは経済活動にだって悪い悪い影響を与えるので、今何か金融システムの安定とか経済への悪影響を防ぐとか、だからこのスキームが必要だというような言い方をされていますが、本当にそうなのかな。 もし、このスキームでなくて、きっちりした法的処理でいけば本当に金融システムが崩壊しますか。金融システムが本当に崩壊するようなことが仮にあるなら、なぜ一体、銀行は六千八百五十億出すのを惜しんで崩壊へと行かせるようなことになりますか。銀行はそんなことは考えていない。金融システム崩壊なんというのは風が吹けばおけ屋がもうかる式のおどしで、やはり最後はちゃんと法律が出てくるんだ、そこに社会のお互いの信頼関係を築こうじゃないですか、総理、いかがですか。 ○橋本内閣総理大臣 私は、真っ向から議員の御議論を否定するつもりはありません。ただ、会社更生法というものから議論を組み立てておられる江田議員の御意見に対し、私は前回も意見が違うということを申し上げました。 今の情勢の中で住専というものが残る形が望ましいのかというならば、私は、やはり住専というものはここできっぱりとなくしてしまうべきものだと思うんです。むしろ会社更生法によってこれの存在が続くこと、これは私は金融機関にとって絶対にいい影響はもたらさないと思います。 そして、それなら破産法という考え方もありましょう。その場合に、今度はこれだけ多数の金融機関がかかわっておりますと、それぞれの損失額を確定するのに時間がかかってしまう。その間、体力の弱い金融機関に対しての不安が起きると.いったことを考えますと、私は、現在のスキームが最も望ましいと思い、御提案を申し上げているわけであります。 ○江田委員 まことに申しわけないんですが、総理、私ももう法律実務を離れて長いですから勘違いしていることもあるかもしれないし、もし勘違いをしていたらまた専門の皆さんに教えていただければいいのですが、総理も法律の専門家ではもちろんございませんから、法律のことをお話しになるときには余り断定的に言われない方がいいのかなという気はするのです。 というのは、会社更生法は会社を生かすのだと、必ずしもそうでもないのですよ。現に、この金融制度調査会の答申でも破綻金融機関はそのまま存続させないという原則のもとで会社更生法ということを言っているわけで、東京地方裁判所民事八部というところがこういうのをやっているのです。そこでも、もっと清算型の会社更生法というやり方を、清算型、つまり清算させてしまう。破産だとどうしてもある程度かたいから、だから本当に具体的妥当性を大切にしながら清算をさせるということで会社更生法を使う、そういうこともあるのです。ですから、総理、総理の方の立論は、私に対する反論の根拠にはちょっとなりにくいのです。 まあ、それはいいです。それはいいですが、時間が余りないので先を急ぎます。 二月九日にいろいろなことを聞いたのですけれども、これまでの議論の中でも、例えば政府のスキームの債権額の根拠は一体どうなのか、今はもう変わっているのじゃないかとか、疑問がありますね。あるいは損失負担の配分方法についてあれでいいのか、その経過がいろいろあって、やれ覚書がどうしてとか、いろいろなことがございました。 私たちは、確かに農林系の金融機関については、金融機関だけではなくて農協そのものもいろいろこれから体質改善、リストラ等をやってもらわなければならぬ部分はあると思います。しかし、確かに今回の負担そのものについては農林系に負担を求める根拠というのはないので、これは母体行責任主義というものがいいと思いますけれども、そんなような議論もあった。 あるいは回収努力をいろいろしょうということもあった。あるいは金融不安ということについて、やれ預金保険機構、貯金保険機構に手当てをして、国民の預金については不安が起きるようなことはないということを政府がちゃんと明確にすべきだといった議論もございます。それはそれで、私は、今の政府案でもどこかの段階でまたしなければならぬときも来るのじゃないかという気もします。そのようないろいろなことがある。 しかし、一番大切なのは、今回のこのスキームの一番の中核は、住専という会社が持っている債権を住専処理会社に債権譲渡をする、これが一番の中核ですから、その住専が持っている債権を住専処理会社に債権譲渡をするということによって多くのものが落ちてしまうのだ。住専が本来追及をしなければならない責任、はっきり言いましょう、住専が本来持っている損害賠償債権、これを住専処理機構が追及することができなくなるのだ、あるいはできなくさせるのだ、そこに実は今回のスキームの一番のねらいがある。 そして、やれ大蔵省から天下りで来た、あるいは銀行から天下りで来た住専で、いいかげんと言うと言葉は悪いですけれども、取締役あるいは監査役、いろいろな役員の義務を忠実に果たすことなくいいかげんな融資をして住専に大変な負担をつくって、住専をいわば破綻させてしまって、そして今どこかへ行って、逃げてしまって、しかもそのときに大変な額の退職金をもらっていって、それで今や豪邸に住んでいる、高級車に乗っている、そういうような皆さんを全部免責してしまう、そのスキームになっているのじゃないか、これが私は根本のところだと思うのですね。 大蔵大臣は、地獄の底までそれを追いかけるのだ、損害はちゃんと賠償させるのだ、布団をかむって知らぬ顔は許さない、布団をはぎ取って、全部身ぐるみはいで寒いところへ追い出すのだ、そういう覚悟はおありですか。大蔵大臣。 ○久保国務大臣 けさも今おっしゃったことを申し上げたと思いますが、ただ、私は人道主義者でございますから、布団をはいだり身ぐるみなんとかという言葉は余り使いたくありませんけれども、徹底的に責任と債権は追及されなければならぬ、こう思っております。 ○江田委員 私も人道というものは大切にしたいので、今の布団の話は言葉のあやなんですけれども。もちろんそれはそうなんですが、これは総理にも聞いておきましょう。 民事、刑事の責任はちゃんと追及するとこの間もおっしゃいましたよね。もう一遍ちょっと、それでいいですね、本当にその覚悟はおありなんですね。 ○橋本内閣総理大臣 午前中、久保副総理から地の果てまで追うんだという御発言がありました。私も同じような気持ちであります。 ○江田委員 そこは総理も大蔵大臣も官僚の皆さんにごまかされちゃいけない。これは、本当に地の果てまで追いかけるつもりが天国へ全部逃してしまうということになりかねないんですよ。刑事事件はある程度できるんですよ、時効の問題はありますけれども。刑事事件というのは検察庁や警察がやる気になればできるんですけれども、民事というのはそうはいかないんですよ。 住専の持っている今の、例えば住専の役員に対する損害賠償債権、住専の従業員に対する損害賠償請求権。ほかにもあるんですよ。例えば銀行が、母体行が紹介するでしょう、その紹介は、母体行が自分のところではとてもこんなのは手に負えないというので住専に持っていってやれというので紹介してくる。それで、その住専の役員が担保余力についてちゃんとした審査もなしにこの融資を実行する。そういう紹介をした母体行の取締役も住専に対しては共同不法行為者になるということは、これは当然あり得ますよ。法制局長官、そうですよね。それで、この母体行の役員の行為は母体行の業務として行われているわけですよ。それはそうですよ。そうすると、母体行にも損害賠償責任が生ずるのですよ。 あるいは住専の借り手の方にもそういうことがいっぱいあるかもしれません。住専は、いっぱいそういう損害賠償請求権を自分のところにも母体行にも借り手にも持っているのですよ。だから、銀行は債権回収どころか損害賠償しなければならぬ。しかも、その損害賠償というのは銀行側から相殺できないのですよ。民法の規定がある。そういう損害賠償請求権を一体どうやって住専処理会社に移すのか。 これについて、私は前回もくどいほど聞きました。総理、覚えておられると思います。西村銀行局長がくどいほどお答えになりました。その答えは、「譲渡の時点において賠償の金額や具体的内容が特定されている必要はなく、賠償の相手や」、賠償の相手というのは賠償義務を負っている人間のことを言っているのですよ、「賠償の相手や不法行為の事実がある程度特定されていれば足りる」、これを西村銀行局長は三回同じ答弁をされて、最後は「もう一度読みますと、」とまで念を押して言われたのです。総理、それを記憶されていますよね。 ちょっと局長の方に聞きます。いいですか、その答弁で。 ○西村政府委員 先ほどから清算型の会社更生法についてまで御指摘がございましたが、私ども、そういう問題も含めまして比較考量した上、この損害賠償請求権の問題についてもこの方法が一番適切ではないのか、あるいは他の手法も含めて、民事、刑事の責任を追及する方法としてこれが最も適切ではないのかということで、今回のスキームを提案させていただいておるわけでございます。 ところで、今御指摘の損害賠償請求権の問題でございますが、これは前回もお答え申し上げましたように、住専処理機構は、住専から損害賠償請求権を譲り受ける際、必ずしも不正の事実等を特定したものに限る必要はなく、住専の保有するその他の損害賠償請求権も含めて包括的に譲り受けることが可能であり、これは譲渡契約の当事者間で有効なものと解されているというふうに政府の中でも十分すり合わせを行いまして対応することにいたしております。 ○江田委員 あなた、いっそのすり合わせはやったんですか。二月九日に読んだときの文章と違うじゃないですか、それは。包括的な債権譲渡と言われますが、二月九日には、「賠償の相手」、それともう一つは「不法行為の事実がある程度特定」と言っていたんですよ。だれに損害賠償を求めるのか、どういうことについて損害賠償を求めるのか、そのことはやはり言っておかなければ、こういう損害賠償請求権を債権譲渡をするんだというふうにならなければいけないというのが二月九日のあなたの答えじゃなかったんですか。もう相手も特定は要らない、不法行為の概要も特定は要らない、とにかく住専が持っている損害賠償請求権、それでぽっと移るというんですか。 ○西村政府委員 具体的な契約の記載方法といたしましては、特定できるものについてはできるだけ特定して記載するとともに、その他住専がいつ現在保有する損害賠償請求権を譲渡するというような記載をすることによりまして、網羅的に譲り受ける方法があると私どもは考えております。 ○江田委員 網羅的に譲り受ける、もう何もかにも住専の持っている損害賠償請求権を。では何と書くんですか。契約書、債権譲渡契約書をつくるんでしょう。何と書くんですか。 ○西村政府委員 今申し上げたつもりでございますが、その他住専が何年何月何日現在保有する損害賠償請求権を譲渡するというような記載になると理解をいたしております。 ○江田委員 まあ本当に一切ということで、だれに対する、しかも自分の住専の取締役ではない母体行の取締役あるいは母体行そのもの、そういうところに対する損害賠償まで含めて全部、はい譲渡いたしますと。何ですかね、これは、何とかのアッコちゃんとかいうようなそんな話じゃないんですよ。そんなことで譲渡できますか。 私、ちょっと判例をさっき見てきたら、これは東京高裁ですが、昭和五十七年七月十五日の東京高裁第十二民事部の判決なんというのは、それは当事者間で基本合意として、後々いろいろなことが出てきた場合にそういう債権譲渡をずっと個別にやっていかなければならぬという、そんな契約はそれはできるでしょう。しかし、これは目的債権の不特定、これは売り掛け代金債権についてそういうことがあったんですが、「無限定な債権譲渡の合意は、目的債権の不特定の故にその効力を生じない。」なんというそういう判例もあるんですよ。 百歩、もう千歩も譲って、それでも債権譲渡できると仮にしても、では一体だれが、その譲り受けた損害賠償債権をどうやって行使するんですか。だれに対する損害賠償債権なのか、どういう事実に基づいた損害賠償債権なのか、そんなことは全然わからずに一切とか言われて、一切と言われた人は一体どうやってそれを行使するんですか。どうやって行使するんですか、それを。 ○西村政府委員 行使するのは譲り受けた住専処理機構になろうかと存じますけれども、その場合に、あるいは委員の御指摘の問題は対抗要件の問題とかそういうことを御指摘になっておられるとすれば、住専そのものも通知するというような行為が必要になろうかと思っております。 ○江田委員 私も質問の前にいろいろ役所の皆さんと議論しましたから、それはどういう答えが出てくるかはわかっているのですけれども、債権譲渡の通知が要ると。相手も特定せずにどうやって通知ができるのか。それはその特定して請求したときに通知をすればよろしいのだとか言う。ではそのときに住専という会社は、これは解散して清算するのでしょう。清算結了の登記をした後だったらどうするのだ。いや、清算結了の登記の後であっても、債権譲渡の通知というものが残っていればその限りで清算はまだ終わらずに残っているのだなどと言うのですけれども、いいのですか、そんな、何というのですか、法律の最後の最後のところで何か救済の理屈をつけようと思って一生懸命言っているだけの話なので、もっと大道を歩んだらどうですか、ちゃんと。 しかも、だれがその債権を行使するのですか、だれがどういう債権、損害賠償請求権があるということをちゃんと処理するのですかという前の質問のときに、初めは住専処理機構と答えて、途中で、いや、譲り受け人が。だって何を譲り受けたかを譲り受け人が決めるなんてことはないじゃないか。譲り渡し人がこれをお渡しします、譲り受け人がはいお受けいたしましたとなるのが債権譲渡なので、譲り受け人の方が何が譲られてきたかを自分で決めるなんて、そんなむちゃな話はないと私がそう追及したら、いやそれはやはり、間違いだとは言わなかったかな、住専がやりますと。それで今はまた、今度は住専処理機構がやりますとかね。混乱しているのですよ。そういうむちゃなやり方でやっていくのじゃだめ。 一つ聞きますと、いいですか、住専が持っている債権は、対価を払って債権譲渡を受けるわけですよね、対価を払って。損害賠償請求権は幾らという値段をつけたのですか、大蔵大臣。 ○西村政府委員 私は、御指摘のような問題は御提案の清算型の法的処理においても同じようにあろうかと存じますけれども、今御指摘の点については、損害賠償請求権というものを対価を払ってその段階で譲り受けるという性格の問題ではないと存じます。 ○江田委員 そのほかの債権については全部これはちゃんと評価をして、そして価格を決めて債権譲渡するので、損害賠償請求権については対価を決めるというような性格じゃない。ただでしょう。ただだったら本当に行使するのですかという問題になる。 清算型の会社更生法でも同じことが起きると言うけれども、そんなことないのですよ。だれがやるのかというのは、やはり同じ穴のムジナがやるのじゃだめなんですよ。被告同士が幾らやったってだめなんですよ。だから、ちゃんと既存の用意されている手続を使ったらどうだと。 会社更生法になれば管財人が入ってくるのですよ、管財人が。その管財人は裁判所が監督をするのですよ。そして乗り込んでいって、これまでの経営者は全部退陣をさせて、管財人が、ですから例えば稟議書だってちゃんと見ますよ、全部。帳簿でも全部見ますよ。稟議書なんかを見ると、どこにどういう紹介融資で変なものがあるというのはわかってくるのですよ。それが今のスキームではわからないのですよ。だからみんな天下りでうまい汁を吸って逃げた連中を逃げたままで免れて恥じなきことにさせてしまうと言うのですよ、私は。 これは将来本当に、今、地の果てまで追いかけると言われましたけれども、例えば半年先、一年先に一体どのくらい住専の役員あるいは母体行の役員、どのくらいの人に本当に損害賠償できるか、見通しぐらい持っているのですか。余りはっきりした見通しでなくたって、いや、このくらいはいたしますという何かあるのですか。大蔵大臣、大蔵大臣。 ○西村政府委員 そういう問題は、今後処理計画を詰める段階において、あるいは債権を譲渡する段階において、関係者で十分詰めて検討すべき課題だと考えております。 ○江田委員 私は本当に、もう国民にかわってここで机をごんとたたきだいぐらいひどいですよ。だって、きょうの新聞でも出ているでしょう。どんどん財産を隠匿とかなんとか、隠したりしているじゃないですか。 会社更生法には保全手続があるんですよ。保全管理人というのが申し立ての段階で選任できるんですよ。そうすると、その保全管理人が会社へ行っていろいろなことができるんですよ、保全処分が。 この間ちょっと聞いたら、いや保全処分は一般法でできます、普通の法律でちゃんとできます。できますはいいですよ。なぜやらないんですか、今すぐ。 ○西村政府委員 私どもは、このスキームを検討いたしますときに、破産法による手続あるいは会社更生法による手続をも比較考量して検討したわけでございまして、それぞれできることできないこと、一長一短があると存じますけれども、最もこの点において債権の確保がしやすい、弾力的にやり得るという方法を選んだということでございます。 ○江田委員 なぜ保全しないんですか、直ちに、と言っているんですよ。 では、もう一つ聞きましょうか。この間、偽造の納税証明書という話がありましたね、偽造の納税証明書。あれは公文書偽造で捜査に着手されましたか。 ○西村政府委員 先ほどの問題も含めてお答えをいたしますけれども、今回のスキームにおいては、債権者は合意をしておるわけでございますので、会社更生あるいは破産の手続という問題との比較において申しますならば、関係者の合意ができる前の問題とは取り扱いが違うのはある程度当然のことだと考えておるところでございます。 ○江田委員 もう終わりますが、とにかくもうちょっとまじめにやってほしいんですよ。庶民はもっとまじめに生きているんだ、毎日毎日。こんなものは認められないですよ。 終わります。 |
1996/02/26 |