1996/05/29

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衆院・金融問題等に関する特別委員会

○江田委員 加藤委員からさまざまな論点、今提起がございました。いろいろ疑問もわき上がってきたところだと思いますが、冒頭、私の方からも、国民の皆さんの大変関心の高いこの特別委員会において、どうも野党の意見に全く耳を傾けない運営、重要法案について審議を尽くすという姿勢がどうもない、とにかく何が何でも無修正、強行突破すればよい、そういう強引な運営方法が見られるので、強く抗議をしておきたいと思います。

 今回の与党の皆さんの強引な運営を見て、私は前に読み上げたのですが、二月九日の予算委員会の場で皆さんに御紹介をした東京都の女性の方からの新聞の投書、これを思い出しております。あれは予算委員会で、今回、金融特別委員会ですので、改めてもう一度読み上げてみたいと思いますが、「恥を知れ!」という投書なんです。「住専も銀行も「恥を知れ!」」東京都の主婦の五十二歳の方なんですが、

 夫の経営していた従業員十人にも満たない町工場が倒産して二年になります。役所や銀行、親会社以外、債権者はほとんど関連の業者仲間。「必ず返済する」との夫の言葉を信じ、「返せ」と押しかけてきた業者は一軒もありませんでしたが、工場を明け渡し、家も土地も競売に付され、生命保険すら解約。自殺もできないからと、夫は五時起きして図面を引き、仲間の好意で借りた工場の片隅で文字通り身を粉にし、日曜も祝日もなく働いております。毎月、たとえわずかでも都合のつく額を、今も債権者に返し続けております。

 夫はバブルに狂ったわけでも、金もうけに走ったわけでもありません。納得のいく機械作りに心血を注いでいただけです。資金繰りにほんの少しつまずいただけで、銀行にも親会社にも情け容赦なく切り捨てられ、今届くのは払えぬままの固定資産税と国民健康保険料の督促状ばかり。

 「住専」に怒らずにおられましょうか。怒りは日々募ります。わが夫のような思いをしながら、黙々と税金を納めている人たちが、全国にどれほどいることでしょう。

 バブルで散々甘い汁を吸い、なお平然と国民の血税を当て込む企業にも銀行にも、それを助けている官僚や政治家にも、「恥を知れ!」と言いたい。こういう投書で、「恥を知れ!」と厳しい言葉ですね。

 もちろん、この言葉は、政府・与党だけでなくて、私たちも含めた政治家すべてに向けられていると思います。このような国民の皆さんの怒りや悲しみに対して、私たちは政党同士での、ののしり合いをしてもだめなんだと思いますね。そうでなくて、本当に私たちができること、これは、この国会の審議の中で、この委員会の審議の中で真剣な議論を徹底的に尽くして、本当に国民の皆さんに納得していただける、そういう結論を出すことでなければならぬ、国民の皆さんに信頼してもらえる国会審議をしなければならぬと痛切に思っています。

 私は、この投書は国民の声を代弁するものだと思うし、二月の投書ですが、今なおその声は薄らいではいないだろうと思うのですが、総理、まず、本委員会に臨まれる総理の基本的な態度、これについてお伺いをいたします。

○橋本内閣総理大臣 ようやく御審議がいただけるようになったことを、私は大変喜んでおります。そして、その投書をされた方のお気持ちも、私は素直にそれを聞かせていただきました。そして、少なくともその方に御理解をいただきたいと思いますのは、住専を助けるものではないという、その一点であります。

○江田委員 もう少しこうした、今政治に本当に問われているものは何かといったことについて、導入ということでありますが、議論をしていきたいのですが、私は、総理、本当にこんなことを思うのですよ。

 今、この金融特別委員会で、数字の話がいっぱい出てまいります。もちろん数字の話は非常に大切な話なんですが、しかし、やはりこういう国会での議論で、私どもは総理そして各大臣といろいろな言葉のやりとりをします。そういう一つ一つの言葉のやりとりが、今、この国の形をこれから決めていくんだ、国民の皆さんが総理や大蔵大臣やその他の皆さんの言葉を一生懸命聞いているわけで、どうぞ国民の胸に響く言葉をぜひ語っていただきたい。総理はもちろんそういうお気持ちでやってくださっていると思います。別に総理を今非難しているわけじゃないのです。

 この特別委員会は、金融問題に関する六本の法律案を審査をし、さらに現行の金融、税制、財政制度及び経済構造全般にわたる改革を行い、あわせて金融機関等に対する諸問題についても協議し、処理するために設けられた。私もその目的に沿って質問をいたしますが、その前に、もっと根本にあることについて触れておきたい。それは、私たちは一体バブルの発生とその崩壊から何を学ぶのかということですね。

 戦後五十年、普通の生活者の皆さんは堅実に暮らしてきた。多くの皆さんは、バブルの発生とその見せかけの繁栄に実はまゆをひそめていたんじゃないかと思うのですよ。しかし、司馬遼太郎さんが言われたように、近所の農家の人が実は土地の値上がりを待つためにネギを植えていた、そこに労働の喜びも誇りもない、このままでは日本も日本人も本当にだめになる、土地を無用にさわることがいかに悪であったか、これを国民の一人一人が感じなければならないと司馬遼太郎さんが書かれた。

 このような思いから出た司馬さんの言葉を都合よく解釈される与党の政治家の皆さんもおられるようで、私も別に私の方に都合よく解釈するつもりもありません。私は、司馬さんのこの言葉を税金投入の口実に使うだけじゃいかぬと思う。

 私なりに司馬さんの言葉を解釈すれば、今回の住専問題は、決して住専七社、銀行、農協、大蔵省、農水省、借り手そして政治家などの当事者だけの問題ではない。土地を投機の対象としたバブル経済の存在を許した日本国民全体の問題だ。だから、この問題を解決する場合に、当事者たちの談合で解決策を決めるのじゃだめ、日本国民全体がこの問題の本質を知って、二度とバブル経済を発生させないために、国民一人一人が参加してこの問題に始末をつけなければならぬ。そこに司馬さんの真意があるのではないかと私も思います。

 さて、総理、ちょっと私の勝手な言葉が続きますけれども、私は昭和十六年生まれでございます。昭和二十年の八月十五日から始まる戦後史のまさにその中で大きくなったのです。戦後史そのものだと思っています。昭和三十五年に郷里の岡山から、当時まだ新幹線はなかったのですね、夜行列車に乗って友達何人かと東京に出てきて、そして大学を受験いたしました。そこから郷里を離れた生活が始まった。昭和三十五年からです。

 私なりに真剣に人生行路を歩みを進めてきたつもりですし、私の友達も皆そうしてきた。その中には、公務員試験を優秀な成績で通って大蔵省に入って、まさに衆望を集めて、総理も知っている、しかしセンセーショナルな舞台からの退散をしてしまった男もいます。

 彼だけじゃない。ある者は、本当に一流大学を出て一流の会社に入って一生懸命会社のために働いて、しかし気がついたら何億という詐欺、横領、こういう嫌疑をかけられて縛についている者もいるし、ある者は、それを裁いた友達もいるし、それを弁護人として弁護している友達もいる。しかし私は、確かにこんなに大きく違うけれども、みんな同じ戦後の歩みを一生懸命歩んできた者だと思うのですよ。その点で私たちは違いはない。

 私は、加藤さんも同じだと思うのですが、そんな意味で、別に恨みもつらみもあるわけじゃないし、そんなに違いはない。私たち皆同じ。違うのは、戦後の五十年の歩みと、それまでの日本の五十年といいますか、もっと長いかな、この歩みと、これが随分違ったんじゃないだろうか。あるいは、戦後の日本の五十年の歩みと、日本以外の国々のこの五十年の歩みと、これが随分違ったんじゃないか。そんなことを思うのです。

 バブルの発生とその崩壊、欲に駆られてひたすら富を追い求めてきて、バブルになった、これも必然の帰結、バブルが崩壊したのも必然の帰結ですが、その陰で、実は私たちは、例えば責任とか罪の意識とかあるいは信頼とか献身とか、こういうようなものを忘れているのじゃないか。

 先進国、先進国といいますが、どうも先進国というのは、物の豊かさだけが先進国で、実は、本当に子供たちのひとみは澄んでいますか、本当に皆、人の痛みを感じていますか、こんなことを考えたら、これは大変なところに我が国は来ている。

 それが今のこのバブル崩壊後、不良債権問題をどうするかということにも当然かかわっていることで、本当にまじめにやらなければならぬのだという、その思いを国民の皆さんと一緒に持つことがこの審議の一番重要な課題じゃないのか。物と金にとらわれるのじゃなくて、本当に人と心を取り戻す、そういう思いでこの審議をしなければならぬと思うんです。

 そういう意味で、総理、総理の言葉の一つ一つがこれからのこの国の形を、もちろんそれだけじゃないですよ。しかし、その総理の言葉は非常に重い重みを持ってこれからのこの国の形を決めていくんだと思っているんですが、どうです、そういうバブルとその崩壊で今不良債権を抱える状態に至っている、そして私たちみんなこうして議論をしている、このことについての総理の思いというもの、これをひとつお聞かせいただければと思います。

○橋本内閣総理大臣 数日前のあるテレビの番組で、あなたも御存じであったであろう、長島の愛生園医師として生涯をかけたある女性の姿が放映をされました。

 よく存じ上げていた方でありますし、たまたまその方のおいごさんが私の中学、高校時代の親友であり、その彼が山で遭難をいたしましたとき、私はその遺体収容に当たりました。それだけに、さまざまな意味でよく存じ上げているつもりの方でありましたが、改めてその方の全生涯を通して、映像としてこれを拝見したときに、我々がかつて持っており、そしてかつての日本人が通常であれば皆心の中に持っていたであろうものがなぜなくなったのか、そして今、事新たにこの方の生涯が報ぜられたのか、考えさせられた場面でありました。

 私は、議員より数年早く生まれておりますので、戦前戦中の、当時は国民学校でありますが、義務教育の一時期を経験したことがあります。同時に、敗戦で混乱をし、先生方が何を教えればいいのかに大変苦しまれた時代の生徒でもあります。そして、その時代の記憶と今日を重ね合わせますと、まさに私たちが何かをもう一度探し求めなければならない、そして再構築をしなければならない、言わんとされる意味は私もそれなりに理解ができるつもりであります。

 そして、昨日もそのバブル期についての反省という御質問があり、相当長い答弁をいたしましたから、それをあえて私は繰り返そうとは思いません。しかし、そのときそのときにおいて政策担当者として全力を尽くしてきたつもりであっても、結果において生じた事態、これを考えるときに、どこかに政策選択の過ちがあったであろうことを否定することもできません。当然のことながら、そうした反省の思いは私自身も持っておるつもりであります。

 そして、みずからの言葉の重さも私なりに、何も今始まったことじゃありません、政治家になったときから私はそのつもりで、むしろ正直に物を言い過ぎてしかられたこともありました。それだけの責任はこれからも持ってまいりたいと思います。

○江田委員 きのうもこの委員会で、バブル期の政策の選択の誤り、具体的にどういうものがどうであればよかったという、それは一々細かく検証しなければならぬと思いますけれども、そうじゃなくて、総じて、今日ここに至ったについてはやはり何かおかしいところがあった、こういう認識を示されたことに敬意を表します。そして、やはりその一番根本のところに、何か戦後の歩みに欠けたものがあったのだということ、これをぜひひとつ総理と認識をともにしたいと思っております。

 政府・与党の皆さんは、それなのになお今日も当事者だけの密室の談合で、国民にきっちり説明せず、いきなり税金の投入を勝手に決めた、そう思っている、少なくとも国民は。住専の経営者も銀行も大蔵省も農水省も政治家も、だれも責任をとろうとしない。

 去年の暮れですね、税金の投入を決めた最大の責任者である当時の総理大臣と大蔵大臣が、責任をとるどころか責任を放棄して、自分たちが生き残るための新党をつくる方が大事だということで逃亡した。そして、政府・与党は今またこの委員会の審議を尽くして国民の前に真実を明らかにするのでなく、とにかく議論をなるべくしないで、無修正で六本まとめて一気に強行突破、もしこういうことだとしたら、これはまことに残念なことだ。

 今橋本総理からお考えを伺いましたが、大蔵大臣、ひとつ、先ほどの私の指摘、それはまあどうでもいいですが、司馬遼太郎さんの言葉、こういうものをどういうふうに受けとめておられるか、お考えがあれば聞かせてください。

○久保国務大臣 当事者間の談合とか、あるいはこれを国民の皆さんに見えない、聞こえないところで決めているとか、そういう御批判は、私は当たらないのではないか。これだけ長期間にわたって、審議が途中行えなかった時間も長かったですけれども、しかし、随分長い時間かけて、それこそ公開の場で御議論をいただいてきたと思っております。

 それを通して、今、江田さんも認識をともにしていただけると思っておりますのは、住専問題の処理、つまり不良債権の象徴的なものとしてのこの住専問題をまず早期に処理すること、これ以上先送りは許されない、そして現在から将来にかけての日本経済にとって、この問題を処理することは極めて重要なことであるということについての認識においては、ともにしていただけるのではないかと思っております。

 その処理の方法について、なかなか意見が一致できない点もございます。しかし、これを早期に処理しなければならない重要な課題であると考えるならば、それならば、その処理の方法において違いがあるとすればどうするのかということについては、十分議論を尽くしていただけばよいと思っているのでありますが、政府といたしましては、今日までの長い議論も経た上で、今皆さんに御審議をお願いをいたしております方策が、とり得る、今日考えられる最良の手段である、このように考えているのであります。

 もう一つ、やはり誤解が国民の皆さんにあるといけませんので、住専処理法案ということでこれを簡略にして私どもは呼んでおりますが、正確に申し上げますと、住専の債権債務の処理を促進する特別措置法案でございます。そこのところは明確にいたしませんと、財政支出が住専を救援するかのごとき誤解を招くおそれがあるからであります。

 そうではなくて、私どもは、日本の経済のきょうからあすにかけての重要な問題として、この住専の持つ不良債権を住専を整理することによって速やかに処理することが重要である、そういう立場から債権債務の処理促進に関する法案として審議をお願いを申し上げているのであります。(発言する者あり)

○江田委員 少し小さな声で言った方が皆さん静かになるかと。

 それはまあいいので、私は、本当にこれは残念に思うのですよ。総理と今お話をして、総理もちょっといらいらするような風情も示されたり。しかし、それはやはりそういうことをお感じだからだと思うのです。

 ところが、大蔵大臣、副総理ですから、今の住専の問題というのは、確かに社会的コストを最小に抑えて今の金融危機を乗り切っていくという、それは大切ですが、社会的コストというのは単なる銭勘定じゃないのだ、国民みんながこの国、私たちの社会をどうするという気持ちを本当にみんなでもう一度持ち直すような、そういうことが大切なんで、そのために今こうして審議をし、政治家が言葉を出しているんだというその思いが久保副総理に伝わったのかな。何か久保副総理の言葉が胸に、少なくとも私の胸に響いてこないという気持ちがあるのですね。それはいいとして、次へ行きましょう。

 金融関連法案、これを審議する前にもう一つ申し上げたい。金融の健全性というのは一体どういうことかということです。

 今回の金融健全性確保法案、これは後からちょっとパネルで示しますが、については、「金融機関経営の健全性を確保していくための新しい監督手法として、自己資本比率等の客観的な指標に基づき業務改善命令等の措置を適時に講じていく早期是正措置を導入する」、こういうことが書いてあります。

 そのこと自体は、それはそのとおりだと思います。しかし、この法律案をつくった皆さんの頭の中にはどうも数字のことしかないような気がしますね。自己資本比率の充実、そうなるとまた土地や株の含み益というようなことになるのか。もちろん我が国は市場経済の国ですから法律や行政の監督ということになじまないかもしれませんが、それでもやはり金融機関というのは今までどおり土地担保主義でいっていいのかどうかということは議論しなければならぬことだと思うのですよ。

 初めに紹介をした投書の方の御主人のような、ほんのちょっといい機械をつくりたかっただけなんだ、そういう方にも、その人物やあるいはその業務の計画やこういうものを見てちゃんと融資の道を開く、そんなことができなかったら――少なくともそういう努力はすべきなんじゃないか。

 土地の担保がなくても、例えば、今いっぱいあるんだ。東京に市民バンクというものができています。あるいは、WWBというのをお聞きになったこと、多分博識の総理ですからおありだと思いますが、ウィミンズ・ワールド・バンキングという女性起業家に対する支援のそういう金融システムというのができているんです。ニュージーランドも随分金融の面でも改革をしたという。

 人の能力とか人柄を見、事業計画の将来性とか返済能力を見て、そこに夢を見出して、希望を見出して融資をするというそんなこと、一体何のために金融機関がこの社会に存在しているのか、こんなこともひとつ議論をする、そういうものがなければバブルの教訓を生かすことはできないと思いますけれども、総理、いかがですか。

○橋本内閣総理大臣 山崎豊子さんの、世の中に公表された最初の作品ではなかったかと思います、「暖簾」という小説があります。その中に出てくる金融機関の責任者の発言で、人を見てお金を貸す、その場合は、人という言葉のかわりにのれん、まさに、抵当はのれんですという言葉に対して、結構な抵当です、お貸ししましょうという一節がありました。

 そして、今議員から、これから先も土地でいいのか、土地が中心でいいのか。私は、それはノーという答えが既に出ているはずだと思うのです。むしろ、土地基本法を我々が制定をしたとき、土地というものが公共の財であるという概念は一つ私は定着したはずだと思います。そして、そういうものがベースにできたからこそ、私は、地価税という、土地の保有に対する特別な負担を求めるという税も世の中に認められたのではないかと思います。

 そして、当然のことながら、そうした世の中の変化というものは、私は、金融機関における担保というものに対する見方にも変化を生じてしかるべきものだと思ってまいりましたし、今もそう思います。もし、金融機関が人を見てお金を貸す、あるいは、まさにのれんを見て貸すというだけの審査能力を持っていないとすれば、これは非常に不幸なことであります。

 本来、金融機関の役割は、一つは産業に対する資金の供給の場であり、もう一つは庶民の資産運用の安全な場でもなければなりません。そうしたことを考えるとき、私は今、議員が述べようとしておられるお考え、恐らくそうであろうと私が推察するものと、金融機関に求めたい私の思いとは違いのないものと思います。

○江田委員 金融の健全性ということで、市場規律に基づいてということが書いてあるんです。市場規律だと思うんですが、しかし、その市場というのも人なんですよね。市場規律というともう物や金、金勘定。それだけじゃないんで、市場というのも人なんで、その人がつくる市場が本当に生き生きとした、夢のある、みんなが何かをやろうと思えばそこにお金が集まるべきは集まってくるという、そういう市場にするためにこそ私たちはこうして言葉を交わしているんだということだと思うんですね。

 さて、どうも前置きが長くなって恐縮なんですが、もう一つ、これは今のと関連するんです。

 私たちがなぜ自民党の加藤紘一幹事長の証人喚問を重要視するかということについて、ぜひ国民の皆さんにも御理解をいただくために申し上げておきたいと思うんです。

 自民党の加藤幹事長の証人喚問、もちろんこれは予算の衆議院通過のときの約束事だとか、橋本政権の大黒柱である与党第一党の幹事長が国会の場で繰り返し虚偽の発言をした疑いがあるとか、それ自体重大なことももちろん当然なんですけれども、もう一つ、加藤幹事長は、本委員会の目的の一つである当事者、関係者の責任追及の対象の第一号となるべき人だ、こう思うんですね。

 住専問題の責任追及は、住専、銀行、農協、大蔵省、農水省、借り手、政治家、対象は全部で七つある。そして、税金投入を最終的に決定したのは政治家です。当時の村山総理、武村大蔵大臣、これは責任者、先ほどちょっと申し上げた。そして現在六千八百五十億円を投入しようとしているのは、橋本総理と久保大蔵大臣、あるいは今後ろでお話をしている今の梶山官房長官もそうかもしれない。しかし、この住専処理問題の当初から一貫して、この問題の実質的な責任者は加藤さんだったのじゃないですか。

 平成三年から四年に大蔵省が住専に第一次立入調査を行って、住専というのが破綻状態にあることが詳細に明らかになる、もちろん国民には知らせずに。そこで、平成四年の八月に、時の宮澤総理が、軽井沢のセミナーで公的資金の導入について言及をされた。当時の加藤さんは宮澤内閣の官房長官。もちろん、まだ自民党分裂より前ですから、今新進党に来ている者の中でもそれは関係している者も当然おります。そのことを別に私たち何とも思っているわけじゃないのです。官房長官です。

 このころには加藤さんは関係者の皆さんと勉強会をつくって動かれていたというのですね、九段のすし屋ですか。加藤さんはいわゆる農水族の中心的存在、この問題について農協の皆さんから一体何を頼まれてどのように動かれたのか。平成五年の、九三年二月には問題の大蔵省と農水省の局長の覚書がつくられた。担当大臣はよく知らなかったということのようですが、まあそうなのかもしれません。

 しかし、加藤官房長官はどうだったのか。九三年二月から始まった第二次再建計画、これがとんざした、いよいよ最終的な住専処理に取りかからざるを得なくなったのが昨年。そのとき加藤さんは与党第一党自民党の政調会長、そして住専処理策作成の責任者の一人です。

 そして、昨年十二月十九日、六千八百五十億円の税金投入を決めたときには加藤さんは自民党の幹事長、与党の合意書に署名をした八人の政治家のうちの一人。住専問題の節目節目で、あるときは官房長官、あるときは政調会長、あるときは幹事長、こういうふうに、加藤さんは住専問題については最も長く最も詳しい実質的最大の責任者なんですね。

 その加藤さんが、住専から七十三億円を借りて返せないまま倒産した共和という会社から一千万円のやみ献金を得ていた。御本人は否定をされるけれども、国民の皆さん、当然これはあるなと思っていますね、疑惑をかけられているので。住専の不良債権の穴埋めに六千八百五十億円を使うと、それが加藤さんのやみ献金の穴埋めになってしまうかもしらぬ。住専と関係なくない、まさに住専問題そのもの。

 となれば、加藤さんはむしろみずから進んでこの委員会で証人喚問を受けて、真実を明らかにする責務があると思う。責任とか義務とかということを政治家が考えるなら、そのくらいのことをしなければいけない。

 今、国会で薬害エイズ問題、参考人招致が行われているけれども、肝心の厚生省の担当者や厚生省OBの政治家はなかなか国民の前に出てこない、フェアじゃない。住専問題も同じ。借り手の東西のチャンピオン、大阪の末野、東京の桃源社、こういうチャンピオンを捕らえるだけではなくて、もちろんそれも大切ですよ、しかしそれだけではなくて、国会はすべての当事者、責任者の話を聞いて真実を明らかにしなければいかぬ、追及すべき責任を明確に追及をしなければならぬ。

 国会がこの委員会で責任追及をきちんとやりますよというその最大のあかし、これが加藤幹事長の証人喚問だと私たちは思うのですね。だから加藤喚問をまず実現すべきだと主張しているわけで、決して何か党利党略、そんなことで言っているわけじゃない。総理も大蔵大臣も私の予算委員会の質問に対してたびたび、責任追及はやるのだ、民事、刑事責任追及、徹底的にする、地の果てまで追いかけると言明されている。借り手の東西のチャンピオンの責任だけではなくて、すべての当事者、責任者の責任を厳格に追及していくのだということならば、これは加藤喚問は避けて通れない。

 きのうから委員会の質疑が始まりまして、それはもちろん私たちも、この質疑、審議の中に本当に精いっぱい全力投球していきたいと思っているのだけれども、しかし私は、国民の皆さんは国会のこの審議というものを今どういう目で見ているかというと、実は、大変残念なことだけれども、それほど信用されていないのかもしれない、それほど注目されていないのかもしれない。

 それは、どっちみちあんなものは、まあいいかげんなことでやっているんでしょう、どっちみち筋書きが決まっているんでしょうなどと見られてしまっていてはいけないんじゃないですか。国会というのが本当にこの住専問題についてうみをえぐり出すんだという、そういう気持ちがあるなら、この委員会が本当に国民の皆さんにそういう目で見てもらえるようになるには、やはりこれは、まずこの住専問題の一番の責任者である加藤さんの喚問ぐらいできなくて、国民の皆さんに、委員会の質疑を注目してくれ、信頼してくれ、そんなふうに言えますか。

 あるいは、住専処理策について、私どもは、政府の皆さんの案と私たちの考え方と哲学の違いがあると思っています。我々は、うみを徹底的に出すんだという、裁判所の管財人に入ってもらって徹底的にうみを出そうというんだ。政府の方は、私たちから見ると、民間会社の債務の穴を税金で埋めて、後は臭いものにふたをして大勢の皆さんを免責してしまう、そういうふうに……(発言する者あり)そら、ちゃんと話がつけてあるなんて言うでしょう。国会審議がそういうことでいいのかというのですよ。そういうように見える。私たちはそう思う。皆さんはそうじゃないとおっしゃるのです。いいです、それは。そうじゃないとおっしゃる。地の果てまで追いかける、民事、刑事の責任は徹底的に追及するとおっしゃる。

 それなら、加藤喚問をそれほど避けて通るというのは、まさにそういう民事、刑事の責任追及の気持ちがないということを皆さんは身をもって国民に示しているじゃないか。身をもって責任追及をやらないということを示しているじゃないか、国民の皆さんはそう思わないか。加藤喚問というのはさっさと応じたらどうですか。総裁としてお答えください。

○橋本内閣総理大臣 まず第一、私は申し上げたいと思いますのは、確かに議員と我々との間には認識に差があるようであります。それは、私はあなたが言われたような理由からではありません。

 我々は、この住専処理問題、住専の処理というものを、我が国の金融機関の抱える不良資産問題を解決していくその突破口であり、喫緊の課題だととらえております。先般来からの御論議を拝聴する限りにおいて、それは氷山の一角という言葉を使われる、そして今、議員からは、うみを全部出す、それが国会の役割と仰せられました。私は、当然のことながらそういうことも必要でしょうが、解決策を用意する責任は我々にあると思っております。そして、その解決策の御審議を願っております。

○江田委員 だれに責任があるのか、この事態は一体どういうふうに現実として起こっているのか、そのことをはっきりさせる努力もせずに、単に何か解決策解決策と言ったってだめだ。国民みんながあのバブルを冷ややかに見て、そして今のことだって本当に冷ややかに見て、そして、ああいう人だけが勝手なことをやったところに税金投入というのが起こっているわけでしょう。

 さて、このことはこれから先も鋭く同僚議員が追及をすると思いますが……(発言する者あり)

○高鳥委員長 静粛に願います。

○江田委員 さて、この特別委員会の任務あるいはテーマについて、私なりに整理をしてみます。どうも、私もパネルを示してなんというのをやったことがないので、ちょっとやりなれないことですから、本当にうまくいくかどうかわかりませんが、このパネルのようになるんじゃないか。

 金融三法とか四法とか住専の法律とかいってもなかなかわからないので、ちょっとまとめてみました。きょうはテレビ中継の日ですので、国民の皆さんにもぜひ議論に参加をしていただこうと思いまして三枚つくってきたんですが、まあ国民の皆さんということでテレビにお見せしますけれどもね。

 法案は六本ある、これはいいですね。金融機関の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律案・・(発言する者あり)

○高鳥委員長 静粛に願います。静粛にしてください。

○江田委員 健全化法。

 それから金融機関の更生手続の特例に関する法律案。これがどうも変な誤解があるんですが、金融機関の更生手続の特例等というと、何か特別の法律手続をつくる。そうじゃないんで、会社更生法なんですね、これ。金融機関に対して会社更生法で破綻を処理する、それについて幾つかの特例を設けるということで、何か金融機関の更生手続というと会社更生法と全然違うように思っている人がどうもいるらしいんです。しかし、これは会社更生法だ。政府も金融機関には会社更生法適用を今現に法律として提案をされておる。これは間違いないですよね、当然ですよね。

 それから、三番目が預金保険法の一部改正法。四番目が農水産業協同組合貯金保険法の一部改正法。この一、二、三、これが金融三法と言われて、農水関係の貯金保険法、これは大蔵省でなくて農水省だからちょっと別で、しかし、これだけ四つが全部で金融四法。

 それで、五つ目が特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進に関する云々という、この住専法ですね。六つ目が特定住宅金融専門会社が有する債権の時効の停止法。これは役所が出した法律じゃありませんね。議員立法ですね。なぜ役所は出せなかったのか、なぜ議員立法になっているのか。まあこういう全部で六つの法案があって、この一、二、三、四、この四つについては、これは金融秩序、これをまあ農林系、系統も含めて健全化していこう、そのためにいろいろな措置をとっていこうということでございます。

 これはもちろん私たち、先ほども加藤委員からも指摘がありましたが、いろいろ問題点は感じております。感じてはおりますが、まあ一定の評価はしております。したがって、きちんと審議をし、与野党共同で修正するべきものを修正をする、そして速やかに成立させるという、そういう基本的な考え方を別に持っていないわけじゃないんです。不良債権を処理するということについては、私たちもその緊急性は認めているわけです。特に、例えばこの農水関係の貯金保険法なんというのは、もし農家の皆さんの心配があるならば、これだけでも今もう真っ先に通してもいいというぐらいにでも思っているわけです。

 まず、金融システムの安定のためにはこの四つ、わかりますね。この四つというのは、健全化法と更生手続特例法と預金保険法と貯金保険法、この四つ、これについては、まずこれは処理しようじゃないか。(発言する者あり)そんなことはないんですよ、全然わかっていない人がああ言う。時効の関係は住専法が通らなかったら何にもならないんです。あれは住専法と一対になっているんですよ。だから、時効のことだけ取り上げたってだめなんです。

 この四つについては、これは速やかに成立ということは、もちろん修正して。しかし、この五つ目、これが希代の悪法、住専処理法。そして政府は、あるいは与党は、四つまでが全部さっと行くと五つ目が取り残される、五つ目は国民の大変な怒りを浴びている法律ですから五つ目が取り残される、それは困るというので全部、六つを一緒にと言っているのじゃないですか。

 そういう硬直した態度じゃだめなんで、やはりこの住専処理法とそれに付随する議員立法、住専処理法ができなかったらこの議員立法の時効停止なんて、まあ時効停止のことは私はかなり問題があると思いますが、意味がないんで、この二つ、これは私たちは反対だ、廃案を求める。

 わかりましたか。この金融四法、これについては私たちは積極姿勢、あとの二つ、住専の問題については、こういうやり方でやるのをやめよう、廃案を求める。これが新進党の基本的な態度です。

 この法案の審査のほかにもいっぱいあるのですが、ちょっと今の法案の関係について、もう一つパネルを用意しました。私たちの案。いいですか。住専処理法とそれから時効の停止は、これは要らない。

 私たちの案、何か、きのうどこかで、いつの間にか引っ込めたとかいうようなことを言われた人もいますが、そんなことないです。ちゃんと出しています。見えますか。「新進党の住専処理策」。

 「新進党の住専処理策」。まず、会社更生法による法的処理。皆さんが金融機関に対してやろうとしていることです。金融機関にやれることが、なぜ住専にできないのか。住専は会社更生法によって法的処理をしましょう。

 そして、そうなりますと住専処理への税金投入は不要、要らない。これも前から予算委員会で言っていることで、繰り返すことはないかと思いますけれども、会社更生法で法的処理をしたら税金投入は、不要じゃないのです、本当は。不要どころか、入れる場所がないんです。入れたくても入れる場所がないんです。債務の穴埋めに税金を使うなんということは、会社更生法では全然その余地さえない、不要。

 そして、管財人が実質的公平原則、単なる機械的平等ではなくて、実質的公平原則で負担額を決めて更生計画をつくるんですよ。実質的公平ですから、貸した事情、借りた事情、あるいはそれまでのいろいろな処理の事情、途中で返せと言われても、なかなか返してもらえなかったとか、いろいろな事情がある。そういう実質的公平原則で負担額を決めて更生計画をつくる。

 そして、債権者会議で決議される等々です。(発言する者あり)決議された更生計画を裁判所が認可するんですね。何か、債権者会議で合意がとれないとかいうやじがありますが、これは後でちゃんと説明します。きっちり説明しますから、しばらく黙っていてくれませんか。

 裁判所が認可をすれば、皆さん御心配の株主代表訴訟は……(発言する者あり)だって、裁判所がこれが一番いいと言っているんですから、株主代表訴訟は起こる余地がない、あり得ない。

 私は、国会決議でも本当に株主代表訴訟を防げるかどうかわからぬと思いますよ。会社というのは、国会の言うことに従わなければならぬことはないんだ。会社の経営者は、株主に対して責任を負っているんですからね。しかし、裁判所がこうだと、それはちゃんと認可をすれば、後で裁判所によって株主代表訴訟を審査してくれといったって、そんなことが通るわけないんで、心配御無用。

 さらに、管財人による厳格な債権の回収、責任の追及を行う。(発言する者あり)正式意見です。いいですか。

 政府の案は、住専と住専処理機構と、これは言葉がややこしいんで混乱するんですけれども、住専というのは七つある会社です。住専処理機構というのは、別にもう一回つくる株式会社で、特別の権限も何もないのです。

 私たちは、そうではなくて、住専に裁判所から派遣された管財人が入っていって、そして管財人が会社更生法で持つ権限によって債権の回収をする。そうしますと、否認権もあります。あるいはいろいろな保全措置もできます。あるいは役員に対する損害賠償請求権の査定なんという方法もある。徹底的に民事の責任追及もできる。そういう管財人による厳格な債権回収と責任追及。

 そして、それでもまだ管財人だけではあるいは足りないかもしれないので、その管財人をバックアップする体制として日本版のRTCをつくりましょうと。アメリカでやっているああいうものを管財人を応援する体制としてつくりましょう、これ、日本版RTC。

 そして最後に、何か預貯金が払い戻しを受けられなくなったらどうするのだという意見がありますが、これは政府案と我々・・(発言する者あり)だからさっきも言ったでしょう、金融四法については私たちは積極なんだ。預貯金保険機構の拡充強化によって預貯金はちゃんと国民の皆さんに保証する、心配ない。預金や貯金が新進党案だと取れなくなるなんて、そんなことはないんだ。聞いていないだけでしょう。これが私たち新進党案なんですよ。きょうは国民の皆さんに――どうも恥ずかしいですね、こういうのは。ということでパネルを用意してきましたが、こういう案が私たちの案でございます。

 繰り返しますが、法的処理ですから、当然のことながら税金の投入は全く不要だ。管財人が入って関係人の調整を行って、債権額に比例した形式平等ではなくて、母体行責任や紹介融資責任、こういうあらゆる実態、あらゆる実情、責任の重さ、こういうものを十分考慮した実質的公平原則で負担額を決めて更生計画をつくる。したがって、もちろん系統の皆さんはいろいろとおっしゃりたいことがある。その系統の皆さんのおっしゃりたいこと、これは私たちもそうだと思う。そのことはちゃんとこういう実質的公平原則の中で生かされる。

 したがって、私たちの案で言えば、政府案よりもずっと私は農家の皆さんの負担は少なくなると思いますよ。五千三百億円の贈与は要らない。二兆二千億円の長期低利の融資も要らない、二兆二千億円も要らない。こうやって更生計画をつくりまして、そして関係人集会で決議されれば、その上で裁判所がこれを認可するから、代表訴訟の心配はない。管財人の保全手続、否認権の行使、損害賠償請求権査定の申し立てなどなど権限も行使する。

 いいですか。皆さんの案は、通常の株式会社である住専処理会社、住専処理機構が債権の回収をする。そこに裁判官経験者や検察官経験者や警察の経験者が入ってきたって、柔道や剣道のけいこはしているかもしれないけれども、法的権限はないんですよ、特別なものは。法的権限がなくて、ちゃんと回収できますか。強制執行の免脱に対して、刑事事件で関係者を引っ張ってくることはできるでしょう。

 しかし、では、例えばこの間のあの佐々木吉之助さんのケースでも、私、これは後で時間があれば聞いてみたいとも思いますが、刑事事件にはしても、あの事件について民事的にどういう対応をとっているのかということは、これはぜひ本当は聞いてみたいんです。

 民事について、例えば、登記が移っていればあるいは変な登記がついておれば、それについての処分禁止仮処分というようなものをやって登記を動かされないようにさせるとか、あるいは占有の移転も禁止させるとか、いろいろなことをやらなければいけないんだけれども、まして我々だと、会社更生法ですから特別の権限があるわけで、会社更生法という法律によって管財人に特別の権限が与えられるわけです。したがって、政府よりもよほど厳格な責任追及ができる。

 どうも私は、政府が住専処理に会社更生法を使おうとしないのは、何かやはり会社更生法を使うと困ることがあるのじゃないかと思う。いろいろあれが困る、これが困ると言いますが、本当に困ることは、会社更生法でそこに管財人が乗り込むと、――困ることがあるのじゃないですか。それを覆い隠すために会社更生法を使いたくないのじゃないか。大蔵省のOBとか母体行の出身者で占められた住専経営者、この皆さんは一体責任追及ができるのかと本当に心配している。本当に心配しているのです。

 私たちの提案の説明をしましたが、さて……(発言する者あり)


○高鳥委員長 静粛に。静粛に願います。

○江田委員 本委員会のテーマに戻りましょう。いいですか。特別委員会では、国会に特別な機能を与えることも含めて債権の回収とか責任追及を徹底して行おうという議論があった。社民党なども非常に熱心だったと思いますが、しかし今はどうなんでしょう。梶山官房長官もペコラ委員会という構想を出された。ノンバンク対策は一体どうするのか。

 いいですか。もう一遍ここへ戻ります。特別委員会のテーマ、今の法案、こういうことです。

 私たちの対案は今言ったようなことです。そのほかに、さらにこの委員会が、ペコラ委員会という言葉も出された。ペコラ委員会というのはアメリカの大恐慌のときの委員会ですかね、大変な活動をされたそういう委員会。そんな構想もあって責任追及とか債権回収、こうしたことについて正面からあるいは側面からこの委員会が活動をする、これもこの委員会の重要なテーマのはずですよ。

 さらに、不良債権問題の解決、これはノンバンク対策をどうするんだ、土地の流動化対策をどうするんだ、あるいは税制、規制緩和、公有地拡大等、いろいろあると思いますが、さらに金融機関の破綻処理の手法の一つとして持ち株会社の解禁問題も、これもたしかあったはずですよね。こういう問題、これは一体どうなっているのか。この委員会のテーマの一つです。

 そして、もっと大きなテーマとして、金融行政の改革、大蔵省の金融行政はこのままでいいのかどうか。今、皆さん、私のこの一番上の法律ですが、健全化法。これでいろいろ大蔵省はむしろ権限を拡大することになって、一方で大蔵省の権限の縮小、大蔵省の改革がなしだったらこれはまずいのじゃないか。一方で拡大するのだったら、やはりそれがちゃんとやれるように大蔵省も改革をしなければいけないのじゃないかという大蔵省改革とか、あるいは日銀法の改正とか、ざっとこういうことが私はこの特別委員会の議論のテーマになるんだろう、こう思っております。

 さあ、一人で随分しゃべりましたけれども、総理、この委員会のテーマというのはこういうことじゃないか、あるいは私が今申し上げたものの中で、何かここはどうしてもということがあればおっしゃってください。

○高鳥委員長 ちょっと待ってください。

 ただいまの江田委員の御発言の中で不適切な部分があるという抗議がございましたので、後刻、発言を、速記録を調べました上で適切な措置をいたします。

 取り消しを求めたわけではございません。後刻、御発言を点検の上、適切な措置をいたします。(発言する者あり)ですから、そういう抗議がございましたので、後刻、理事会において点検の上、措置いたします。
 橋本総理大臣。

○橋本内閣総理大臣 非常に幅の広い御意見の開陳の後、見解を求められましたが、私は特別委員会のテーマを政府が云々することは本来とるべきことではないと思います。これは院として御決定になるべきことでありますし、具体的には委員会御自身の御判断の中でお決めになるべきことでありましょう。

 ただ、先ほどペコラ委員会にお触れになりましたけれども、私が聞いておりますところでは、ペコラ委員会を与党から提案をいたしましたものが、御相談の中でむしろ与党からではなく外れたと聞いております。

○江田委員 大蔵大臣、何かさっき手を挙げておられたようですが。

○久保国務大臣 ここで私は反論を申し上げるつもりはございませんけれども、先ほど当委員会に付託されております法案について順序と思わせるような番号をおつけになりましたので、私の方から申し上げますことは、衆議院において御決定になり、議長の指揮に従って私が趣旨説明を申し上げました順序は、江田さんが五番とされましたものが一番でございました。そのことだけは事実を申し上げておきたいと思います。

○江田委員 結構ですけれども、総理もどうも、国会が、委員会が決めることと言えばそうですが、やはりみんなそれぞれいろいろな意見を出し合いながらということだと思います。順番のこともそれは大切なことでしょう。

 さて総理、今回の住専処理策が決定されてかれこれ半年、政府・与党の皆さんがあらゆる努力でPRをされましても、いまだ国民の九割が六千八百五十億円の税金投入に納得していない、こう言われておるのですね。

 さてそこで、ここにもう一枚パネルを用意いたしました。これは国民の皆さんが疑問に思っていること、いまだ政府が十分説明できていないこと、これを挙げてみました。

 まず委員の皆さん、どうぞ。よく見てください。いいですか。

 なぜ預貯金者のいない民間企業の倒産に税金を投入するのか、こういうことですね。なぜ税金を投入するのか。預貯金者のいない民間会社の倒産になぜ税金を投入するのか。これはいろいろおっしゃるので、それはああ言えばこう言うでいろいろありますが、国民がまだ疑問に思っている第一点です。(発言する者あり)思っていますよ。

 第二番目。六千八百五十億円の積算の根拠は一体何なのだ。ぎりぎりだ何だと、こういう話がありましたけれども、ぎりぎりがぎりぎりでないというのはその後の例の追加策とかいうのですぐにわかったわけですね。

 五千三百億円がぎりぎりだ。これも農林系、ぎりぎりという話ですが、しかし五千三百億がぎりぎりと言って、いろいろ言われて、幾らでしたかね、千八百億でしたかね、追加策でまだ出せるという。つまり、五千三百億というのは単年度のぎりぎりで、その翌年になったら今度、翌年からずっとしばらく続くだろうと思いますが、千八百億あるなんというのでは、ぎりぎりなんというのはどういうことですか。これもやはり国民は疑問に思っている。

 では、さっき何かありましたけれども、五千三百億円はなぜ贈与なのですか。これも国民は大変疑問に思っている。銀行の方は放棄でしょう。なぜ一体系統だけは、系統というのは農協それから信連、農林中金、そういうところだけはなぜ贈与なのか。これは、たしか五兆五千億全部返ってくるから、贈与なら、だから、五兆五千億全部返ってくれば責任者がこれで無罪放免になるからという、そんな話でしたかね。このなぜなのかということ。

 四番目、二次損失の二分の一はなぜ税金なのか。

 六兆四千百億でしたか、一次処理。そして二次処理、一兆二千億以上。それの二分の一は一体なぜ税金なのか。

 六千八百五十億を何とかかんとかやって、そして追加負担を一生懸命お願いをして、どうやら国民の皆さんの税負担なしで済むことができると、これも後で出ますが、仮にしましょう。それでもあと二次損失から、ここから先あるのです。住専だけで済むのか、ほかのノンバンクはもうないのか。あるいは、そういうノンバンクだけで済むのか、ほかの金融機関はないのか。二次損失の二分の一、これはなぜ一体税金なんですか。

 あるいは、この二次損失の二分の一の残りの二分の一、これの分担の割合は一体どういうことになっているのですか。一兆二千億以上と言われる二次損失の半分、これはどういう分担で、国民の税金を除いた分ですね・・(発言する者あり)底なし。二次損失の金額は一体幾らに本当のところなるのですか。

 三月五日に発表された与党三党のいわゆる追加策、これはどうなったのですかね、あれはその後。生きているのですか死んでいるのですか、それこそよくわからない。どうなったのか。

 税金を使わないようにするんだ、そういうかたい決意をお持ちなんだったら、なぜ一体法案を撤回しないのか。税金を使わないようにするというのですから、じゃ、なぜ法案を撤回しないのか。

 税金投入の責任者は一体だれなんだ。だれがこの税金投入などということを決めたのか。あるいはその責任を真に負うべきはだれか。私は、先ほど言いましたように、村山前総理、武村前大蔵大臣、そして今の橋本総理、久保大蔵大臣、そして加藤さんだ、こう思いますよ。

 なぜ法的処理を行わないのか。なぜ一体法的処理を行わないのか。

 あるいは番外として、不良債権の総額は一体幾らなのか、これもどうもわかりませんよ。

 きのう銀行局長が、ことしの三月末で三十四兆六千八百二十億円であると言明された。本当にそうなのか。何だかまだ隠された不良債権があるのじゃないか。七十兆とか百兆とかと言う人もいる。

 本当はこれらのことを全部一つ一つ議論をしていきたいところですが、きょうは全部をやるという時間はないので、これから委員会の審議の中で同僚議員にどんどんこれは審議を詰めていただきます。

 何か今、総括二日の一般二日とか、そんなことじゃ到底これはだめですよ。これだけあるのですよ。しかも、まだこっちにもこれだけあるのですよ。まだまだこれから解明していきたいと思います。

 さてそこで、大体これだけ疑問がある。きょうはこの中から一つだけ、なぜ一体法的処理を行わないのか、この点についてさらに議論を深めてまいりたいと思いますが、新進党の住専処理策である会社更生法による法的処理については、きのうの委員会でも与党議員の皆さんによって取り上げられておりますが、法律知識の欠如による誤解とか曲解の議論がどうも私には多いように思われまして、残念です。

 例えば、きのうも自民党の委員の方でしたかね、住専は三分の一占めているから決議ができないというような、株主総会と会社更生手続とを混同したようなわけのわからない議論もあったりとか、あるいは、会社更生手続では、住専の経営者は手続から排除されて裁判所の監督のもとに管財人によって債権者など関係者の間で更生計画が作成されていくわけで、住専の経営者、これはちょっとどきなさい、管財人がそのかわりにその立場に座る、そして管財人が裁判所の監督のもとで更生計画をつくっていくわけですから、住専の経営者の意思というのは関係ないのです。

 弁護士さんが三千人要るとかいう。どこからそんな数字が出てくるのか、そんなことありません。オウム事件で今、東京地裁は大変だから、裁判官がそっちにとられて、会社更生なんかが来たら裁判所はお手上げたとか、まあだれも答弁は要らないですよね。そんなもの。そんなことあるはずがない。(橋本内閣総理大臣「政府はそんなこと言っていないですよ」と呼ぶ)政府は言っていない。与党の人でそんなことをおっしゃった人がいるから、そのことは国民の皆さんも聞いているから、私はそれを言ったわけです。(橋本内閣総理大臣「いや、政府は言っていない」と呼ぶ)当然ですよ。政府がそんなことを言うはずがないですよね、幾らなんでも。それは当たり前だ。非常識なことを平気で言っているわけで、そんなことを言ったら、もしそんなことだと言うんだったら……(発言する者あり)皆さんの方だってテレビを使って宣伝しているじゃないですか。政府の提案している会社更生法の適用さえできないということになるのです。

 まず、大蔵大臣にお伺いをいたします。(発言する者あり)

○高鳥委員長 静粛に願います。静粛に願います。

○江田委員 今回の内閣提出の金融三法の中の金融機関の更生手続の特例等に関する法律というさっきの二番目の法律です。この法律があって、このもとになったのが昨年十二月の金融制度調査会の答申です。この金制調の答申によれば、「破綻金融機関はそのまま存続させない」、いいですか、「破綻金融機関はそのまま存続させないという原則の下で、破産等により事業の解体を行わずに円滑な倒産処理を図る必要がある場合もあることから、破綻処理手続の整備は会社更生手続をベースに行うことが適当」だ、こう書いてある。これは政府の認識だと考えてよろしいですか。

○西村政府委員 会社更生法についてのお尋ねでございますので、私どもの考え方を先ほどの御質問も含めましてお答え申し上げたいと存じます。

 今回の会社更生法も含みます三法案の提案に際しましては、江田委員御指摘のように、金融制度調査会におきまして長い時間をかけまして検討いたしました結果を反映させたものでございます。そこにおきまして、私どもといたしましては、決して、会社更生法、破産法を含みます法的処理というものを金融機関の破綻処理に際して使わないということを申し上げているわけではございません。住専に関しては使えないと申し上げていることでございまして、一般的に金融機関の破綻処理に際しましては、もとより関係者の話し合いによりまして処理されるケースもございますし、それが不可能な場合には法的な処理によって手続がなされることもあるわけでございます。

 そういう意味におきまして、会社更生法は既に今までも金融機関の破綻処理に際しては認められてまいった手続でございますが、今回、更生特例法案を御提案申し上げております理由は、大まかに分けますと、いろいろな理由がございますが、三つございます。

 一つは、従来は、金融機関の破綻処理について会社更生等の手続を行います場合に処理がおくれるケースが多かったわけでございますが、これを促進するために、監督庁に更生手続開始の申し立て権を認めるというような問題が一つでございます。

 第二に、金融機関の場合、債権者、すなわち預金者でございますが、その数が極めて多く、円滑に手続を進めることが困難だということもございますので、預金保険機構に預金者を代理する機能等を付与し、手続の迅速化を図ることとしたわけでございます。ちなみに、銀行では、平均いたしまして六百万に上る口座がございまして、それが債権者の数ということにもなろうかと存じます。

 また、従来、金融機関の中でも協同組織金融機関につきましては会社更生手続が適用されなかったわけでございますが、今回の特例法におきましては、この協同組織金融機関に対しても会社更生手続を適用できるようにして金融機関の処理を促進することができる、このような趣旨でこの更生特例法を御提案申し上げておるわけでございます。

 したがいまして、先ほど、住専処理については会社更生を適用しないのに、このような法案を提案するのは矛盾しているのではないかというような御指摘があったように伺いましたが、私どもといたしましては、この更生特例法は、今申しましたような理由によって、従来以上に会社更生手続を使いやすくするために必要だというふうに考えているところでございます。

 ところで、しからば住専についてはなぜそのような手続が使えないのかという点でございますが、これはかねてから予算委員会等におきましてもたびたび御説明を申し上げてまいったところでございますけれども、まず第一番目には、会社更生法と申しますのは、会社の再建というものについて見通しがあることを前提にしてとられる手続かと私どもは考えておりますけれども、住専につきましては、残念ながら、ただいまの経営実態から申しますとその再建を図るということはまことに困難であり、私どもとしては、これは破綻をさせるということを前提に対応策を考えざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。

 第二に、先ほど実質的な公平原則というお話もございましたが、私どもも今回の住専の処理に際しまして関係者の間でのお話し合いをいたしますに際して、実質的な公平原則という御主張と恐らく同じような考え方に基づいて話し合いを促したつもりでございます。

 それが私どもの御説明の言葉によりますならば、ぎりぎりの対応と申し上げておることがそういうことかと考えておるところでございます。関係者の間で納得できるぎりぎりの負担をお願いをし、そのような合意の上に立って今回の処理方策を決めているわけでございますが、そのことを会社更生手続の中で、今政府提案の中に示されておりますような配分と違った形で合意を得るということはまことに難しいことと存じますし、債権者の中には今回のような負担をするにつきましてもいろいろと御異論があったところでございますが、それをさらに負担を重くするというようなことで円滑に更生計画が合意を得られるということは、まことに難しいことかと考えております。

 なお、そのようなことを行いました上で預貯金は保証をするというお話でございましたが、私どもといたしましては、今回の処理方策は、現下の金融情勢にかんがみまして、十三兆円に上ります住専の債権債務を処理するに際しましては、やはり若干例外的な取り扱いにはなりますけれども、預金取扱金融機関を破綻させた後に問題を処理するという事後的な方式ではなくて、この問題につきましては事前的な処理方式、すなわち、住専そのものは破綻、清算させるけれども、しかしながら、住専に融資をしております預金取扱金融機関、例えば系統金融機関というようなところの、破綻をさせた上で問題を処理するということは、余りにもこの問題の処理の影響というものが大き過ぎることにはならないであろうか、このような考え方に基づきまして、この問題につきましては一般的な金融破綻処理の事後方式という方法はとりがたいというふうに判断をして、今回の御提案を申し上げているわけでございます。

 なお、先ほど数項目にわたって、多くの積算根拠、あるいは二次損失の国庫負担を二分の一にした理由、あるいは追加策の取り扱い等ございましたが、もしそれについてお答えを申し上げてよろしければ……(発言する者あり)それはよろしゅうございましょうか。

○江田委員 いろいろお話ししたいという、それはよくわかりますけれども、あれは、こういうテーマがあるからこれからこの委員会で十分やりましょうという、これだけのテーマがあるんですよということを示したんですから……(発言する者あり)まあ次へ行きましょう。

 今、更生手続の特例法について、これもどうも私が尋ねたことじゃないことを随分お答えくださったんで、御親切に感謝しますけれども、例えば事後方式じゃなくて事前方式とか、私どもそんなことを文句を全く言っていないんで、それは今の預金保険法、貯金保険法の改正で、事前方式でちゃんと預貯金を保証していくというようなことについては、それはだから大切なことだと言っているわけです。

 問題は、金融機関の場合でも、破綻した金融機関をそのまま存続させずに、しかし破産ではなく、円滑に倒産処理を図るという方法として会社更生手続をベースに行うんだ。あれですか、この会社更生手続で、破綻した金融機関を存続させない原則で処理をして、それで存続させるんですか、更生させるんですか、再建させるんですか。これは残さないんじゃないですか。存続させないという原則のもとでというのは、そうじゃないんですか。

    〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕

○西村政府委員 金融機関の場合には、破綻金融機関は消滅させるといたしましても、その事業につきましては、更生の見込みがあり、また地域経済の安定のために事業の維持更生を図る必要がある場合がございます。金融機関は一般の事業と異なりまして、多くの預金者、一般国民を含みます多くの預金者がこの金融機関の活動に依存しているわけでございます。

 したがいまして、金融機関が破綻をいたしました場合でも、地域経済の安定のために事業の維持更生を図る必要がある場合がございますし、また債権者の、すなわちこの場合は預金者という意味でございますが、預金者の間の利害の対立の度合いが少なくて更生計画案が可決されるという場合も少なくない、そういう意味では住専の場合とは事情が異なる場合も考えられます。そういうような場合には、必ずしも破産手続ということではなくて、更生手続を活用いたしまして金融機関の破綻処理を行うということが適切な場合もあろうか、こういうふうに考えている次第でございます。

○江田委員 なかなか議論は難しいといえば難しいのですが、やはり、よし、ひとつあいつの言うことも理解をしてみようという気持ちで聞いていただきたいのですけれどもね。もちろん皆さんの言うことも理解をして批判をしているわけです。

 いいですか。金融機関が破綻をした、それはもう清算をするんだ、しかしその事業は何かの形で残していく、そうでないとその地域の皆さんが大変なことになるから。したがって、会社更生法でその金融機関自体は処理をしながら、清算をしながらちゃんと事業は残す。

 じゃ、住専はどうなんですか。いいですか。住専は三兆五千億円、正常債権があるのでしょう。三兆五千億円、正常債権があるので、そのうちの幾ら、二兆円強ですか、これが個人の住宅ローンなんですよ。個人の住宅ローンの借り手の皆さんはどうされているか。住専はもうあんな調子だから、あれはそのうちなくなるんだから、じゃ、わかった、もうローンは払わぬことにしようなんて言っていますか、個人の皆さんが。今もちゃんと本気で皆、中にはそれは悠々と払える人もいるかもしらぬけれども、中には身を切る思いで払っている人もいるのですよ。そうやってきちんと個人の住宅ローンは皆返しているのです。そういうような正常債権が三兆五千億円からあるわけですね。

 それで政府はどうするか。その事業というのは全部もうなくしてしまうのですか。違いますね。政府がやろうとするのは、そういう債権を全部住専処理機構に集めて、そしてこれはずっと続けていくというのでしょう。事業を続けていくというのでしょう。それはまさに会社更生法でやろうとすることじゃありませんか。政府は、本来なら会社更生法を使ってやるべきことをああいう形でやりながら、しかもそこに税金投入までやりながら、しかし、管財人が入っていっていろいろなことを明らかにするということだけをやめさそうとしているのじゃないですか。どこに一体違いがあるのですか。

    〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕

○西村政府委員 もとより、例えば個人住宅ローンというような正常債権につきましても、住専処理機構設立後も管理をし、利用者の方には御不便をかけないようにしていくということは当然のことかと存じます。しかしながら、それは、積極的に事業を継続するとか、あるいは会社の更生を図ってその事業を存続させていくことを目的とする、そういうことではございませんで、処理、清算をすることをいかに円滑にしていくかという考え方のもとに取り組むことでございます。おのずから、会社を再建するとか会社を更生するということとはまた違った観点の問題であろうかと存じております。

 そのような意味におきまして、住専処理機構において正常債権の管理も行ってまいりますけれども、そのことと、先ほど申し上げました預金受入金融機関を地域経済の安定のために維持更生を図るというのはまた違った問題であろうかと考えております。

 私どもは、この地域経済の安定のために事業の維持更生を図るというのは、もしそういうことが可能であるならばその金融機関をもう一度生まれ変わらせて新しい事業に取り組ませる、そういうケースもあり得るのではないか、こう考えているわけでございますが、住専に関する限りは、そういうことは望み得ないし、またその必要もないのではないか、このような考え方で臨んでいるわけでございます。

○江田委員 どうもよくわからない。破綻金融機関はそのまま存続させないのでしょう。事業の維持更生とおっしゃるけれども、その金融機関自体、破綻した金融機関自体は存続させないのでしょう。存続させないけれども、しかし、何かの方法で、大切な仕事、地域に役に立つ仕事をやっている場合には、その仕事自体は生かしていくというのでしょう。住専だって同じじゃないですか。住専というものは存続をさせない。しかし、そこで、ちゃんとある三兆五千億の正常債権あるいは個人住宅ローン、これはちゃんと生かしていこう。どこに違いがあるの。違いは、金融機関なら裁判所から管財人が来ても大丈夫、住専は裁判所から管財人が来たら大変なことになる。何が大変なことなのかというと、いろいろなことがばれるからじゃないかということを言っているのですよ。

○西村政府委員 金融制度調査会の答申では、このように破綻処理の原則が述べられております。

 「金融機関の破綻処理においては預金保険が発動されることとなるが、預金保険の発動により保護されるべきは預金者、信用秩序であり、破綻金融機関、経営者、株主・出資者、従業員ではない。従って、預金保険の発動に際しては、」すなわち破綻処理に際してはということでございますが、「破綻金融機関は存続させないこと、」「経営者の退任及び民事・刑事上の厳格な責任追及が行われること、」「株主・出資者の損失負担が行われること、」「が前提条件となる。」このように述べられております。すなわち、破綻金融機関は存続させないというのは、今、江田委員が御指摘のとおりでございます。

 しかし、それは、例えば具体例で申し上げますならば、兵庫銀行の例が一つの事例かと存じますが、兵庫銀行自体はこのような、今申し上げましたような原則によって存続させないということにいたしました。しかしながら、地域経済に与える影響その他の事情を勘案いたしまして、兵庫銀行が行っておりました事業というものを完全に消滅させてしまうということは問題があろうと地域の方々がお考えになり、金融界がそのような判断に立ち、新しい組織としてその事業を継続するということをいたしました。例えばそういう事例もあろうかと存じます。

 しかしながら、住専に関しましては、今住専の行っております事業をそのような形で、地域の経済に不可欠であるとか、あるいは国民経済上今後とも不可欠であるとか、そういう判断に立って、一たん消滅させた後、何らかの形で事業を継続するという必要はないのではないか。

 そういう意味におきまして、金融機関の場合と今回の住専処理の場合とには違いがあろうかと考えているところでございます。

○江田委員 兵庫銀行の例を今お出しになって、私もけさの新聞をちょっときっちり読まずに来たのでよくわからないのですけれども、兵庫銀行のケースというのは、破綻したのですね。そして、兵庫銀行の持っている債権債務、これを移して、みどり銀行というのをつくって、そこでやっている。その兵庫銀行のいろいろな事業のうちに、これは関連会社でやるのですかね、抵当証券なんというのを出していて、そういうものに対して今民事の裁判が起きたりしていますよね。その関連かどうか、あるいは関連じゃないかもしれないけれども、抵当証券の関係で、けさ何か刑事事件、何か始まりますよね、そんなことが出されていますよね。

 問題は、その兵庫銀行の場合に、役員の皆さんが本当にきっちり仕事をしていたのかどうか、ここへこれはクエスチョンマークがついているのですよ。だから、民事の裁判も起きているわけです。そういうのがあるのです。

 ところが、そういう役員の皆さん方、これは大蔵省から来た方もおられるかもしらぬ、あるいは銀行から来た方もおられるかもしらぬ、日銀から来た人もいるでしょう。そういう役員の皆さんがきっちりとした仕事、その兵庫銀行のためにきっちりした仕事をしていないケースだってあるのですよ、たくさん。兵庫銀行の場合でもあるのだけれども、住専の場合には特にそれが多いと言われている。そういう皆さんに対して民事の裁判も債権者から起こされたりしているような状況。

 ところが、そういう役員の皆さんは今や退任している。しかも、退職金は幾らもらっているんですか、一億円なんというような報道をされているでしょう。いいかげんな、いいかげんと言うと後で怒られるかもしれませんが、役員の義務をしっかり果たしていなくて、そして住専が傾きかけた、これは大変だというので退職金をがっぽりもらって逃げている。今や豪邸に住んで高級車を乗り回している。そういう皆さんに対する責任追及というのは、例の兵庫銀行とみどり銀行の場合だってきっちりできないんじゃないですか。

 全部そういう役員の皆さんに対する損害賠償請求権、この役員はこういう事務の落ち度があった、そしてこんな損害を銀行に与えた、本来ならその人に対する損害賠償というものは行われなければいけない。ところが、そういうものはやっていないし、しかも、やれ債権譲渡ですというときに何か、全部ですから入っていますと言うのですが、そんなことにならない。これはまあちょっと、なかなかテレビで聞いている皆さんにすぐおわかりいただけないかもしれない、ややこしいところですけれども、要するに、債権譲渡というのはどこまでいけるのか。

 債権がAという人からBという人に移るときに、包括承継と特定承継というのがあるのです。包括承継というのは、とにかくもう全部、何もかにも一切合財移る。例えばAという人が亡くなって相続でBという人に移るとき、これは包括承継です。そんなときに一々どの債権とどの債権とどの債権が移ったなんて言わなくても、移ったBの側が一生懸命調べればいいのです。

 しかし、通常、そういう会社の合併とかあるいは私人の相続とかじゃない、Aという人とBという人と独立して別にあって、Aという会社とBという会社が独立にあって、その間に債権譲渡が行われるときにはこれは特定承継でなければ、包括承継で何だかわずか一行の言葉でそんなものが移るという、そんなことにはなっていないのが法律の建前なんですが、今の兵庫銀行とみどり銀行の関係、これなども今度の住専処理のスキームというのが実にでたらめだということだと思いますよ。なぜ一体会社更生でできないのか。

 さて、総理も大蔵大臣も、住専については更生の見込みがないから会社更生法を適用できないと再三言われている。私はまあ会社更生法についても多少実務、私自身が実務で会社更生法をやったわけじゃありませんが、実務のその世界におりましたので、ある程度実務の土地カンというのもあるつもりなんですが、そういう立場で言いますと、やはりこれは更生の見込みがあるとかないとか言ってもちょっと違うのです。裁判所が決めることで、もちろん総理や大蔵大臣が決めることじゃない、それは当たり前ですよね。

 大蔵大臣は二月九日の予算委員会、私の質問の答えで、住専の事業は今の時代ではもう立ち行かなくなってきているから更生法は適用できないと言われましたね。しかし、同じときにお隣に座っている農水大臣は、同じく私への答弁で「引き続いて住宅ローンの従来の役割を果たしていける、」と言われた。住専はもう立ち行かない、今の時代では。そうじゃなくて、農水系の住専である協同住宅ローン、これは更生の見込みどころか、今の時代で立ち行けるどころか、そのまま存続できる。今の時代でもう要らないというのと今の時代で要るというのと、かなり違いますね。

 要するに、存続させるとかさせないとかという大蔵大臣の意思というのは、これは会社更生法の更生手続開始の条件じゃないので、申し立てがあって、更生手続の開始のために必要な、その限度での再建の見込みというものがあれば、裁判所は更生決定をするのです。三兆五千億円の正常債権がある。債務が必要なだけちゃんとカットされてスリムになっていけば住専の再建の見込みも立つ。しかし、それはそのままの格好で再建させずに別に事業の存続を図っていくとか、それはいろいろありますよ。

 しかし、会社更生の開始決定がなされるための条件は、そういう三兆五千億も正常債権がある、そのうちの二兆円は個人住宅ローンで、しかもちゃんとその住宅ローンは返ってきている、これだけあれば開始決定はなされる。

 個人住宅ローンの債務者、これは今一体何人ぐらいいるのですか。

○西村政府委員 たしか十八万人ばかりだったと記憶しております。

○江田委員 それだけの皆さんがいるのですよね。地銀生保住宅ローンに至っては、母体行がもし全額債権放棄すれば、それは損失見込み額とほぼ同等ですから、即座に立ち直ってしまうとさえ言われておる。それでもなお、大蔵大臣、更生の見込みがないから会社更生法は住専に適用できない、こうおっしゃいますか。

○久保国務大臣 江田さんは、さっきおっしゃいましたように、御専門の方ですからお詳しいのだろうと思いますが、会社更生法の三十八条による判断はどうなるのか。それから、既に上場いたしております日住金や第一住金などは、三月二十六日に会社の整理、清算に入ることを、再建を断念して決定をいたしております。それに基づいて、多分株主総会に必要な提案がされるような状況になっているのではないかと思っております。

 そういう中で、三十八条に基づく裁判所の判断はどのようになるのかというのは、これはあくまでも裁判所がお決めになることでありますけれども、私どもの判断としては、更生手続に入ることは困難である、こう思っております。

○江田委員 これは、国民の皆さんから見ると、何でそんなこだわるのか。別に会社更生法でも政府のスキームでも、税金が使われないようになるならまあ同じことじゃないか、税金が使われるようになるかどうかというのは、これは問題ですけれども。

 私どもがこだわる理由は、本当に税金を使わなくて済むようにできるのかどうかという、これも一つありますが、同時に、やはり責任追及とかあるいは権限に基づく回収とか、そういうことは会社更生法と政府のスキームでは雲泥の差があるから、だから私たちは会社更生法と言っているわけです。

 さて、今三十八条と言われましたが、先ほどるる申し上げているとおり、三十八条については、それは更生の見込みはクリアできるのです。それからもう一つ、今の日住金、既に手続に入っておる。しかし、それは心配ないのです。既に手続に入っていても、いろいろな手続は進んでいても、会社更生開始決定が出れば、そちらが優先されるという法律の条文がちゃんとあるわけですから、日住金がそういうことになっているからといって、心配することはない。

 さて、銀行局長、仮に今提案されている今回の法律で、これで破綻した金融機関に対して監督官庁たる大蔵省が更生手続開始の申し立てをする場合、再建の見込みについては一体どういうふうにお書きになるつもりなんです。ケース・バイ・ケースだと思うけれども、さっきから住専についてはだめで、破綻した金融機関ならいいとおっしゃっているから聞くのですが、破綻した金融機関を存続させないという前提のときに、一体どういうふうに再建の見込みについて裁判所に出す文書の中で書くのですか。

○西村政府委員 これは言うまでもないことでございますが、すべてのケースについてそのような手続をとるということではございません。ケースによって、地域経済との関係であるとかその事業の状況であるとかいうことから、会社更生手続によって更生を図れる場合があるであろうということを言っているわけでございます。

 それで、それがどのようなケースであるかというのは、これは個々の事業の実情はさまざまでございますのでケース・バイ・ケースで考えていかざるを得ないと思いますが、金融機関の場合には、やはり多くの利用者、多くの国民の生活に密着して活動をしているものがかなりあると思いますので、ただ事業を消滅させただけですべて物事が済むというわけにはまいらないことがあると考えているところでございます。

○江田委員 ですから、住専の場合とそれから金融機関の場合と更生の見込みというのがそんなに違いがあるわけではないのです。こういう事業をやっている、ここにこれだけの正常債権もある、しかし、こんなにたくさんの不良債権を抱えてしまった、それをちゃんとカットしていけばこういう再建の道はある。再建させるかどうかは別として、この会社にはこういういろいろな人がまだかかわっているわけだから、だから破産というやり方ではなくて、会社更生というソフトなやり方で処理した方がいいのだということになるので、これは同じこと、住専だって破綻した金融機関だって同じこと。

 もう一つ、銀行局長、破綻した金融機関に会社更生法を適用するメリットといいますか利点、これはどういうところにありますか。以前いただいた資料だと、透明、迅速かつ円滑な処理ができるのだ、こう書いてありますが、破綻した金融機関に会社更生法を適用すると透明、迅速かつ円滑な処理ができる、それがこの会社更生法適用の利点だ、こう理解していいですか。

○西村政府委員 それは、どのような場合と比較してそうだという考え方になろうかと存じますけれども、関係者の間でそういう法的な手続によらない場合に比べれば今おっしゃったようなことになろうかと考えます。

○江田委員 私どもが住専について会社更生法の適用を主張したときに、政府もたしかいろいろおっしゃいましたよね。与党の皆さんは何か、いっぱいありましたね、いろいろ言いました。何年かかるかわからぬとか、金が幾らかかるかわからぬとか、弁護士が数千人だとか、あれやこれやおっしゃってくれましたけれども、だって、政府の方でも、金融機関の破綻の場合に会社更生法だと透明、迅速、円滑と言っているのですよ。

 なぜ、金融機関で政府、監督官庁が申し立てれば、もちろん一定の手続の整備はしますけれども、透明、迅速かつ円滑にすばらしい手続になって、我々が言う住専に会社更生法を使ったら、何年かかるかわからぬ、金は幾らかかるかわからぬ、とても大変だということになるのですか。どこが違うのですか、一体。

○西村政府委員 ちょっと私のあるいは御説明がまずかったのかもしれませんが、まず、大前提といたしまして、会社更生法という手法が使えるかどうかという問題があると申し上げておるわけでございます。その点において、住専は使えない、使いにくいケースであろう。なぜならば、事業の更生の見込みがないから。

 金融機関の場合には、地域経済の関係とかあるいは預金者との関係で更生という手法を使える場合もあるし、使わなければならない場合もあるであろう。その場合に、今回お願いをしております更生特例法は、従来の会社更生法ではなかなか迅速にいかなかったような問題についても手続を迅速に進めるとかあるいは透明性のある手続で進めるとか、そういうような使いやすい工夫をさせていただきたい、このようなお願いをしている、こういうことでございます。

○江田委員 それは金融機関の場合も、会社更生法で処理するのが適当な場合もあるし、そうでなければならぬ場合もあるし、それが不適当な場合もそれはあるでしょう。いろいろあるでしょう。同じことは住専についてだって言えるのですよ。住専七社、いろいろ個性があるのですよ。その個性を全部没却して、住専七社は全部一緒で、会社更生法は使えませんなんて、そんな議論は成り立たない。

 そうじゃなくて、使える使えないの話でなくて、仮に会社更生法を使ってやれば、今の透明、迅速、円滑、皆さんが透明、迅速、円滑と言っているじゃないですか。住専に会社更生法を使って、これは使える使えないの話はちょっとわきに置いて、もし……(発言する者あり)いや、それは、だって、その議論はまた別の議論ですから。使った場合に、透明、迅速、円滑というのは変わらないでしょう。

 さて、久保大蔵大臣、新進党案だと税金投入は政府案よりずっと大きくなる、こう再三言っておられたようだけれども、どうですか、ちょっと法務省民事局長、突然の指名で申しわけないのだけれども、会社更生手続、会社更生法の中で債務の穴埋めに税金を使うような余地というのはありますか。

○濱崎政府委員 突然の御質問でございまして、必ずしも精査しておりませんが、更生手続の中でそういうことが行われるということは、一般的にはないものと思っております。

○高鳥委員長 大蔵大臣、答弁ありますか。

○久保国務大臣 新進党の案といいますか、方針が示されました最初の半枚の紙では、農協関係の系統金融機関に関しては、預金者に、問題を生じた場合はこれは全額政府の責任で措置するという意味のことが書かれておりましたですね。そうすれば、結果的にどれぐらいここには必要となってくるというお考えでしょうかということを江田さんに私はお聞きしたことがございます。それで、それはお答えいただけませんでした。

 もし、会社更生法の適用によって母体行等の債権放棄等が今よりも少額のものとなっていきました場合には、そこに生ずる問題に対して全額財政支出で負担するということになれば、大変な額にならないだろうかということを申し上げたのであります。(発言する者あり)

○高鳥委員長 静粛に願います。

○江田委員 新進党案だと税金投入はという、まあいいです。
 しかし、いずれにしても、住専の処理のために……(発言する者あり)

○高鳥委員長 静粛に願います。

○江田委員 その債務の穴埋めに税金を使うというのは、我々の会社更生法を適用するということでは、これはそこの部分では使う余地はない、これはまあ当たり前のことで、今も民事局長、一般的にはとおっしゃったけれども、一般も特殊も、そんなことはありっこないんです。

 わかりました。大蔵大臣がおっしゃるのは、だから要するに、住専が会社更生法になったらああなってこうなって、そしてずっといって、ついに最後に農協の、これは預金者じゃなくて貯金者ですが、その貯金者の貯金が返らなくなるようなことがあって、それを保証するということになったら大変だ、こういうことですね。

 私ども、預金保険法、貯金保険法の今政府が出しているこのやり方については、それは基本的にそういう方向でよろしい、預金、貯金の保証についてはですよ。これはそういうふうに申し上げているわけですが、どうも仮定の話の連続で、たら、ればが七つも八つもついた、風が吹かないとおけ屋が損するといったぐいの議論を余りされても困るんだけれども、まあよろしい。

 次に、会社更生法を適用しても、三分の二以上の債権者の同意が得られない、したがって更生計画の決定は得られない、認可は得られない、そういうのではないかという、こういう議論があるわけですが、そこは一つの議論のポイントなんです、それは、債権者の同意が得られなければいけないんで。そこで、だから久保大蔵大臣は、その債権者の同意が得られないから、したがって、ころころ転がって、破産からずっとそっちへ行くだろうという、そういう議論だと思うんですが、同時に、その点こそ私は政府案の、政府の処理策の最もだめな点だと思うんですよ。

 つまり、この民主主義の社会、法治国家の中で、利害関係のある当事者だけの密室の談合、だから利害が対立したときには合意がなかなかできなくなるんです。それをその関係者の中だけの話し合いでやろうとするから、大蔵省がいろいろなことをやるわけですよ。念書を書けとかなんとかというようなことをやるわけでしょう。無理やりなことになってしまうんです。

 評論家の長谷川慶太郎さんのレポートですと、最近では、民間の銀行はどうも大蔵省の言うことを全く信用しなくなっているという。あげくの果てに、大蔵省は勝手に国民の税金を使うことを決めてしまっている。

 それに対して、会社更生法の更生計画の策定では、実質的平等、実質的公平の原則に立って、裁判所の監督のもとで、公正な第三者である管財人がいろいろ調査もする、実態の解明もする、責任の追及もする、債権の回収もする、そうして関係者みんなにそれが透明に、オープンになるんです。みんなが事実を、共通の認識を持つんです。

 それで、その上で、なるほどこれはこういう事情があるのか、なるほど原資はこれだけしかないのか、そういうことがみんなの共通の認識になって、しかもいろいろな議論をして、そして管財人が必死の努力でこの更生計画というのをつくっていくんですよ。その管財人が必死の努力で説得の活動をしながら、汗をかきながら、みんなの合意をつくるというのが必要なんですよ。

 それをやらずに、大蔵省が、大蔵省でなければできぬだろうと言って、いろいろなところへ行っておどし上げて、まあ、おどし上げてはごめんなさい、こういうようなやり方で合意ができました、しかしどうにも合意ができません、六千八百億円穴があきました、国民の税金、それは、民主主義とか法治主義とか、そういうものとは無縁ですよ。

 いいですか、会社更生法の中では、そういう大変な努力で合意をつくって、そして、今までの実務の経験では、そういう努力の中でちゃんと合意ができていっているんです。そういうような実質的な議論の中で事が決まっていく。農協系の金融機関の皆さんも、その中で、この更生計画、反対すると今度は自分たちの不利益になってしまう、あるいは銀行の方だって、これはやはりいろいろなことをわかりながら、考えながら、提案しながら決めていくわけですから。

 今、数字をいろいろここへ、私のメモに書いてありますが、それをもういろいろ申し上げる時間もありませんが、結論的に、私は、やはり管財人が、裁判所の監督のもとで、ちゃんと公的機関の支援を受けて、債権の保全もやる、回収もやる、あるいは責任者の責任の追及もやる、そういうことをきっちりすることによって、しかもそれが国民の皆さんに見えることによって初めてこの住専問題をめぐるいろいろなもやもやが明らかになってくるんです。そのいろいろなもやもやを明らかにしていくことで、国民の皆さんが、なるほど、私たちお互いの共同社会をもう一度つくり直そう、ああいう欲にまみれたやり方ではない、本当にすがすがしい世の中をつくっていこう、こうなっていくんじゃないですか。

 いいですか、梶山官房長官、国民の怒りは改革のエネルギーなんですよ。国民が怒っているときにそれに顔を背けてはだめですよ。やはり国民が怒っているときに、これと真正面に向かって、その国民の怒りを改革のエネルギーとしながら、私たち政治家はいい世の中をつくるために頑張らなければいけないんじゃないですか。そのために、今住専問題というのは、むしろ私たちに与えられたチャンスじゃないですか。なぜ一体そのチャンスを生かさないのかということを最後に申し上げ、大蔵大臣、お答えがあれば答えてください。

○久保国務大臣 何か問題が隠されているのではないかという不信感の上に立った御批判は、誤りだと私は思います。やはり、今、江田さんが言われましたような方法も検討された上、今日とり得る手段、その緊急性、重要性にかんがみれば、今この道を選ぶことが政府がとるべき責任であり、皆様方にぜひ御理解、御協力をいただく道だと考えております。

○江田委員 国民は、何か隠されているんじゃないかと思っているんですよ、残念ながら。冒頭の投書の「恥を知れ!」というこの言葉を、私たちみんなでかみしめたいと思います。
 終わります。


1996/05/29

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