1999年3月3日 |
中村法務大臣の不適格な問題発言と行動
|
○委員長(倉田寛之君) 関連質疑を許します。江田五月君。
○江田五月君 私からも幾つかお伺いをいたします。
一昨日も申しましたが、私どもは個人に対する追及というのは余り得意でもないし、また好きでもないんですが、しかし中村法務大臣は、司法あるいは法務・検察行政の根幹部分である公正さ、あるいはその公正さが外からちゃんと見える公正らしさ、そういうことにいろいろ疑問の起きるような言動をされていますので、かつて司法の場に身を置いた私がこれはただしていかなきゃならぬ課題だと思いますので、ぜひお許しください。
きょうは金融問題などの集中審議ですが、金融ということになりますと、ついに北海道拓殖銀行について元役員の逮捕という事態に発展をいたしました。
法務大臣、これはまさかあなたが指揮されたものじゃありませんね。○国務大臣(中村正三郎君) 個々の事件については、一度も指揮をしておりません。
○江田五月君 私も指揮をしていないと思います。
しかし、あなたは金融機関の乱脈融資等についてあなた自身の見解をいろいろなところでおっしゃっていますね。そういう記憶はありませんか。○国務大臣(中村正三郎君) これは、政府でいろいろなところで、総理大臣もおっしゃっていますし、破綻した金融機関の刑事、民事における責任は厳正に追及されるべきであるというようなことは方々で言われていると思います。
私も同じようなことを検察長官会同だとか担当検事の会だとか、これは事務局で原稿をつくるわけですが、そういう場で発言をしております。○江田五月君 いろいろなところで言われています。
例えば、本院、昨年の十月八日の法務委員会で質問をされまして、捜査に言及をされて、金融監督庁あるいは住専の処理の機構、住専管理機構ですか、といったものに言及をされ、告発の数がどうとかというようなことも言われ、また、「起訴に値するかどうかは私どもが判断いたしますので、どうぞ情報をどんどんお与えいただき、告発もどんどんしていただいて結構でございます」、こういうことも言われました。
これは一般論ですが、これは検察に対する指揮に当たると思われますか、思われませんか。○国務大臣(中村正三郎君) 私は法律家でありませんのでよくわかりませんが、検察に対する指揮でなくて、一般論を述べているんだと思います。
○江田五月君 あなたは法務大臣就任直後に検事総長をお呼びになった、そして、自分が指揮者である、言葉はちょっと違いますが、国会が選んだ小渕総理が指名をした法務大臣の指揮のもとにいるんだから、そのことを厳密に心に置いて事に当たれ、こういうことを言われましたね。それは間違いないですね。
○国務大臣(中村正三郎君) それはこの間も先生の御質問にありましたのでお答えせていただきましたけれども……
○江田五月君 間違いあるかないか。
○国務大臣(中村正三郎君) そういうことは最後のところで申しましたけれども、私の申し上げたかった主題は、検察といえどもこれは国会に対して連帯して責任を持つ行政の一環であるから、国民の要請を体してやる検察でなきゃいけないし、国民の要望にこたえなきゃいけないと。その意図は、民主主義のルールで国民に選ばれた国会、そして議院内閣制の大臣、そういったものを通じてなされるであろうということで申し上げたわけでございます。○江田五月君 もう検事総長はそういうことはちゃんとわかっているはずなんですよ。あなたがわざわざ検事総長を呼んでそういうことを言われた。自分が指揮者ですよ、そのことを厳密に心に置いて仕事をしなさいと言われた。これは布石ですよ、検事総長に対して。そして、後にいろんなあなたの思いをさまざまな形で検事総長にメッセージとして伝わるようにする。
金融監督庁の五味検査部長、お見えですか。──おられますね。あなたは、五味検査部長に金融機関の乱脈経理等のことについて何かおっしゃったことはないですか。
○国務大臣(中村正三郎君) きょうはテレビが入っているので、私の方の事実関係も聞いていただきたいと思います。
私が呼んでわざわざそれだけ言ったのでなくて、事務引き継ぎでいろいろなことをお話しした中の一環にそういうことがあったということでございます。
それと同時に、この間、委員と検察庁法十四条の御議論をいたしましたけれども、私が指揮すべきは検事総長だから、私が必要なところは検事総長を指揮しますよと。だけれども、そういうことはめったにやることじゃありませんということもちゃんとお断りしているわけであります。
五味さんの件は、私はよく五味さんを知っています。○江田五月君 いや、知っているかじゃなくて、今の金融機関の乱脈経理などの調査、捜査、その他のことについて、五味さんに何かおっしゃったことはないですか。
○国務大臣(中村正三郎君) 極めて親しい人ですから、ここいらでもよく声をかけてしゃべりますけれども、そういったことは言っておりません。
○江田五月君 五味検査部長、何も言っておらないという法務大臣の話ですが、事実関係、何か心当たりがありましたらちょっとお話しください。
○政府委員(五味廣文君) 今大臣がおっしゃいましたように、廊下などでお会いしますとごあいさつを申し上げたり二言三言言葉を交わすという間柄でやらせていただいておりますが、いわゆる金融機関の今回の話に関しての捜査というようなことでお話をいただいたということは、私の記憶にはないのでございますけれども。
○江田五月君 捜査に関してではなくて、金融監督庁、いろいろ協力をしろよとか、資料があったらよこしなさいよとか、いろいろ教えてくださいねとか、あるいは頑張ってやってくださいねとか、そういうことを言われたことはないですか。
○政府委員(五味廣文君) 資料というようなお話は記憶にございませんが、君も今大変だねというようなことで、頑張ってくれというようなお話はいただいたことがあったような記憶がございます。
具体的にどうということでなくて、日ごろから、例えば、私が日銀法の改正を担当しておりますときは政務次官をしておられましたけれども、そのときも同じように、大変だろうけれども頑張れというお話も同じようなことでいただいたような記憶はございます。○江田五月君 要するに、不用意なんですよ。金融監督庁の方で、資料を出せと言われたとか、いろんなことが伝わっておる。あなたの不用意な言動に端を発しているんじゃないかと思うんですが、それはおいて、指揮権発動についてちょっと伺います。
おとといの私どものやりとりで、法務大臣の答弁と刑事局長の答弁が食い違ったということがございます。検察庁法十四条の解釈ということなんですが、検察庁法十四条、「法務大臣は、」「検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」、この規定は非常に重要な規定だ。これはもちろんおわかり。検察というものは全部一体で仕事をしていて、個々の検察官はしかし独立して仕事をする、だけれども全体としてこれは一体である。検事総長を頂点とする上命下服の関係ができていまして、その検事総長に対してだけ個々の事件については指揮できる。
指揮する相手、指揮する主体はだれか。これは「法務大臣は、」と書いてありますから法務大臣なんですが、法務大臣はみずから直接、中村正三郎という個人が検事総長と相対して直接やる以外に指揮をする方法があるのかないのか、そういうことで議論をしたわけです。法務大臣は、いや私は検事総長を直接自分が指揮するんだと、そういうお考えの話をされたと思います。刑事局長は、そうではないと。法務省という全体系があって、法務省というのは法務大臣のもとにある機関だから、法務大臣の手足ですから、ですから例えば検察というものを所管している刑事局長が法務大臣から指揮を受ければ、指示を受ければ、職務命令。そうすると、刑事局長は検事総長に対して、これは法務大臣の命でございますと言って指揮をしなきゃいかぬ、そういう指揮の仕方があると。そこで食い違ったんですが、さあ、どうですか。
○国務大臣(中村正三郎君) あのときは一方通行の時間だったのでよく御説明する時間がなかったので、よく御説明させていただきます。
検察庁法十四条というのは、この後の、今委員が御議論なさいました部分は大臣の権能に規制を加えている、制限を加えている条項でございます。
その制限はどうかといえば、個別の事件の取り調べと処分については直接検察官を指揮しないで検事総長を指揮することができる。その理由は何かといえば、それは個別の捜査の検察官の独立性を担保するためということでございます。それですから、私は法の解釈上厳密に、非常に重要な規定だから、こういうことを発動するときは私は検事総長に直にお願いしますよということを就任以来申しております。これは実体論であります。
その反面、委員が御指摘のように、私が例えば事務次官なり刑事局長に話をして、じゃあなた、こういうふうに検事総長のところに行って指揮してきてくれということを頼む、これは代理論ですね、これはやることはできます、論理的には。そういう指揮は私はそういうことはやらない。ただ、私が例えば事務次官にこういう事件を捜査しろと命じたとしますと、事務次官は検事総長の分身でないからできませんし、私がそれをやることは違法行為だからやりませんと、こういうことを申し上げたわけでございます。○江田五月君 あなたは、これまで検事総長に対する指揮は自分が直接やるんだ、刑事局長その他を通じてやるというようなことはあなたが検事総長を指揮するやり方としてはそういうようなことはないんだと、そういうお答えじゃなかったんですか。
○国務大臣(中村正三郎君) 今言われたのは指揮の実体に関する私の考え方であって、ですから、それは私はあのとき素直に十四条を読んで重く受けとめて行動いたしますということを言ったので、だれでもそれは、例えば私が私の秘書官を呼んで行ってこいと言ってもいいのかどうか、これは実体論が含まれてくると思いますが、うちの幹部に対して、頼む、検事総長のところへ行って私がこういう指揮をするから、これは仮定の問題でございますよ、行って検事総長に指揮をすることを私がだれかに委託する、依頼するということは論理上あり得ると思います。
○江田五月君 見解を変えられたような気がしますが、いずれにしても、今まで例えば刑事局長にこういうことを言ったんじゃないかと言ったら、あなたは、いやそれは指揮をするのは検事総長に対してだけで、自分が検察に指揮するような、そういう適格性を欠く者に対して指揮するようなことはあり得ないと、言うんだったら検事総長に言うんだというふうにあなたは言っていましたね。
○国務大臣(中村正三郎君) 私は個別の事件に対して指揮はしたことはないし、していないと申し上げたわけです。
○江田五月君 だから、指揮をしたことはないということの一つの根拠として、自分は指揮するんだったら検事総長に指揮する、だから刑事局長なんかに対してはそんなことを言うはずないんだという、そういう言い方だったんでしょう。
○国務大臣(中村正三郎君) はずはないのではなくて、私は十四条というのを重要に考える。なぜなら、これは私の権限に制約を加える、そのために一番偉い検事総長を指揮すると。検事総長を通じて指揮するという重い条文があるんだから、私が実態に動くときはそういうことをやるでしょうという仮定の問題を申し上げたわけであって、そういうことをやったとかやらないとかいうことではございません。
○江田五月君 あなたはことしの二月一日、ついこの間、衆議院です、これは予算委員会で上田清司委員の質問に答えて、これは刑事局長に指揮をしたのではないかという質問ですが、それに対してあなたはどう答えているかというと、今の石垣島のことですよ、これ。「これは私が就任いたしましてすぐにお話ししたことですが、法律上、私が捜査について指揮をとれる相手というのは検事総長でございまして、指揮をとれない人にそんなことを言うわけもございません。」と、こう答えているじゃありませんか、あなたは。これは、このときには違うんですか、今おっしゃったことと違うのかあるいは見解を変えたのか。
○国務大臣(中村正三郎君) それは先ほど申し上げましたように、刑事局長は検事総長ではありませんから、検事総長に、おまえこの事件を捜査するということは、言うのは違法であるし、言わないということであります。
○江田五月君 あなたは法務大臣です。検事総長にこの事件についてはこう捜査しろとか処分しろとか言うのは違法ですか。
○国務大臣(中村正三郎君) 十四条は、私が個々の事件に対して捜査できるのは、捜査というか指揮できるのは「検事総長のみ」と書いてございますから、検事総長を指揮しないのは法律に従わないことになりますね。
しかし先ほど、十四条には、下段の今委員が議論しておられますところには、個々の事件については、「法務大臣は、」「検事総長のみを指揮する」と書いてありますから、それ以外の人を指揮しようとしたらそれは法律違反になりますということを申し上げました。
ただ、さっき委員の言われた、だれかをして委任するということは、それは分身論であって、私が委任された人は、その人は私の意思を持って検事総長のところへ行って、大臣がこう言っているから、あなたこうやってくれと言うことは論理上可能であるということも申し上げております。○江田五月君 論理上可能な話はきょう初めて出てきたんじゃありませんか。今までは、「法律上、私が捜査について指揮をとれる相手というのは検事総長でございまして、」、刑事局長に対しては、「指揮をとれない人にそんなことを言うわけもございません。」と、こう言っているんで、いいですか、あなたは今まで、指揮権はあるんですよ、あなたに。それは検事総長を通じて指揮するということは合法なんです。合法ですけれども、検事総長を通じて指揮をした場合には事は大ごとになるんです。政治的意図を持ってやったんじゃないかとか、自分の利益を図るためにやったんじゃないかとかいろいろ大ごとになるんです、そういうことがあれば。
そういう大変なことになって、そして検事総長の方だってそういうことがあれば抵抗できると。いや、抵抗できるという規定はありませんよ。ありませんけれども、抵抗すれば世論がそれを支持する。そうすると最終的には次の選挙のときに国民の皆さんがそれを審判をするという、そういう大きな規定なんです、この十四条というのは。
ところが、あなたは、指揮をする相手は検事総長だというのはわかっていらっしゃる。しかし、指揮をする主体の方、これはあなた、自分で出ていかなきゃできないというふうにこの間まで思っていらっしゃったんですよ。ところが、いろいろと刑事局の皆さんとお話をして、いろいろ皆さんからお教えをいただいて、これはやっぱり自分の手足なんだと、法務省の全機構が。だから、うっかり刑事局長にああいうふうにしろとか言って、刑事局長は職務命令ですから、何々の事件についてはこうしろというふうにあなたが刑事局長に言うと、刑事局長はこれは仕方がないから検事総長のところへ行かなきゃしようがない。そこで、大臣、これは指揮権の発動になるけれども、そういう指揮権発動されるんですか、それともそこまではやれという意味じゃないんですかということを尋ねなきゃいけない。そういうことがあったんじゃありませんか、現実に。○国務大臣(中村正三郎君) 委員は専門家でいらっしゃって、私はしがない法律を学んできた者でありますので、釈迦に説法というか余り申しわけないこと言えないわけですが、委員は法律の定めと実態論とを一緒にして御論議になっているような気がいたすんです。
私が指揮する相手は検察庁法十四条で制限が加えられている。個々の事件に関しては検事総長のみしか指揮できないという厳然たる事実があります。ですから、それ以外の者は指揮できないんです。できないんだけれども、それとは別に、実態として私の権限をだれかに委任した場合、だれかに頼んで、事務次官に頼んで、あなた僕のかわりにやってくれ、やってくれと言っていって、その人が検事総長に話すということは論理上可能だということです。そして、今言われてと申しますけれども、私はこういうことを就任以来幹部の方と何度も御議論しておりまして、私の理論と刑事局長の理論は一緒です。○江田五月君 やっとあなたの理論と刑事局長の理論が一緒になった。けさなったんじゃありませんか、それは。今まで全然理論が違っていたんじゃありませんか。
私どもは、だから、いいですか、まだまだ私は質問しているので、手を挙げないでください。
検事総長を最初にお呼びになってああいう訓示をされて、これが布石ですよ。そして、次にいろんなことを、自分の考えはこうだぞ、ああだぞといろんなところで言われる。そういうメッセージは、検事総長としてはこれは大変重圧を受けることになるんですよ。あなた、そこは自分の置かれている立場というものをもうちょっとしっかり認識してもらわないと。
私は、あなたの不適格な問題発言と行動ということでひとつこうやってみたんですが、八つ。(図表掲示)一、新年賀詞交換会のあいさつ。やれアメリカがミサイル撃つとか憲法には自衛ができなくてもがいているとか弁護士。
弁護士というのは本当に国民にとって最後のとりでなんですよ。冤罪のこともあるし、どんなに極悪非道なことをした人でも弁護士によって弁護される。そういうことは民主主義のいわば根幹なんですよ。世間の人がみんなあの事件はけしからぬ、あんな者はもう裁判なんかやめてすぐ死刑にしろと言ったって、そう言ったって、弁護士はその世論を後ろに受けながらでも弁護しなきゃいけない。そのときあなたはどうするんですか。あなたは、弁護士に世間と同じようにそんな者は弁護をやめろと言うんですか。そういう関係の発言があって、これは全部取り消して、陳謝をされた。
二、今の検事総長への発言です、厳密に心に置いてと。当たり前なんです。そんなことをあえて言うから後々問題になる。
三、検事総長に対する指揮権発動についての無知。これは今議論したところです。四、石垣シーサイドホテル近隣の違法開発事件。
四、五、六、七、このあたりのことについて一つだけちょっと前提の質問をしておきましょう。
これはもうおととい確認をされたことですが、石垣島に石垣シーサイドホテルというものがある。これはあなたの会社である。そしてその土地はあなたの御子息が所有をされておる。その御子息に対してあなたは、今十歳程度の御子息ですが、大変恐縮ですけれども、今から何年ですか、私ども登記簿謄本を見ますと平成二年となっていますから、一歳か二歳かのお子さんですね当時、平成二年となっていました、贈与をされたと。いずれにしても、そういうホテルをあなたが経営をされている。ちょっとそれだけ、それは間違いないですね。○国務大臣(中村正三郎君) 私は経営をしておりません。ただ株を所有しているだけです。
○江田五月君 それはそうでしょう。しかし、おとといのお話では、三十年ほど前に私がつくった会社だ、私の会社だと、そういうふうにおっしゃっていた。まあ細かなことはいいです。
それで、その今の石垣シーサイドホテル付近の違法開発事件、これが例の刑事局長に指揮したとかしないとかという話です。
あなたは、新聞に書かれて、そしてこれは大変だというので、大変だかどうか知りませんが、法務大臣の定例の会見でしょうか、いろいろとマスコミの皆さんに、これはこういうことだ、自分は悪くないんだ、悪いのは日本生命なんだ、そういう趣旨で釈明をされた。その同じことをあなたは検察の幹部の皆さんにお話しされましたね。それはどうですか。○国務大臣(中村正三郎君) この開発が始まりましたのはおととしのことでありまして、随分古いことであります。そして、建設省に聞きまして、都市計画法違反であるという事実があって、そして送検されたということも報道で見ました。それで、それまで、去年の正月ごろですか、随分いろんな通信社、テレビにも出ましたけれども、これはどうも違法行為をやったのではないかという報道が随分ありました。それで、私が就任しまして一カ月ちょっとたったころですか、突然、印象からいうと私が何か悪いことをしたようにとれるような記事が出たものですから、それはそうじゃないよということを記者会見で申しました。そしてその後、記者会見の後で、うちの幹部がいるときに、私はそんな悪いことをしたんじゃないということを説明いたしました。これは私の名誉のために弁解したということであります。
○江田五月君 新聞記事をいろいろ見ても、あなたのホテルの方が何か違法な開発をしているとか、そんなことは全然書いてないんです。そうじゃなくて、日本生命のホテル開発の方にこの都市計画法上から何か違法なところがあったんじゃないかと。それは前提になっているんですよ。だから、あなたは別に自分が悪いと書かれていると思う必要はないんですよ。
そうじゃないんです。そうじゃなくて、あなたがそういうことについていろいろと、政治家として、あるいは大蔵政務次官としてもあったかな、あるいは法務大臣としてかかわられているんじゃないかと、ここが問題になっておるということなんですよね。刑事局長も含む幹部の皆さんのところでそういうことをるる説明をされたら、先ほどの検事総長にはもう一般的に言ってある、刑事局長にそういうことを言う、どういうことになるんですか、これは。そういう問題です。いいです。次。五番目というのが中村企業。中村企業というのは先ほどの石垣シーサイドホテルを所有しているあなたの会社です。この中村企業が税金の申告をした。四谷税務署長によってこれが更正された。それはちょっと違うんじゃないかというので、あなたは国税不服審判を申し立てられた。そこまではいいですね。
さて、その審判は結局棄却されて、これを審査請求。その後にあなたは、あなたの会社です、あなたの会社はその事件について取り消し訴訟を起こされた。それはお認めになりますかどうですか。○国務大臣(中村正三郎君) これは私企業のことでありますし、取締役も、代表取締役も違うし、私がここで一々お答えするのはいかがかと思いますが、これは宥恕規定という、前にも御説明しましたけれども、一千万に……
○江田五月君 中身はいいです。
○国務大臣(中村正三郎君) これを言わないと皆さんわかってくれないんですよ。○江田五月君 そんなことないですよ。
○国務大臣(中村正三郎君) 一千万に資本を上げようといったときに税金がかかってしまうと、中小企業で。それは大変だから、資産のある会社は資産を株式に入れて株式配当していいと。その場合は二〇%課税しかその株主の方にはかかりませんということでやっていいと税務署から説明があったんですが、それが宥恕規定というのがあって、そういうようなことが入っておりますということを申告書に書いておかないと課税されてしまうんですね。そこで国税不服審判を出したんだそうです。それで、出して審判で否決されたときは、私は法務大臣でも何でもございません。そして、こういう審判なり訴訟は、国民、憲法で……
○江田五月君 悪いと言ってない。
○国務大臣(中村正三郎君) 保障されたこととして、だれしもができる憲法の規定だと思います。
○江田五月君 わかっているんです。そこまではいいんです。それはあなたの会社、あなたがオーナーとなっている会社が税金についていろいろ主張があって国税不服審判所へ申し立てた。いいです、それは。問題は、その後取り消し訴訟を起こしているんですよ、あなたの会社は。
さて、そうするとどうなるかなんです。いいですか。もちろんそれは代表取締役はあなたじゃないでしょう。だけれども、あなたの会社です。相手は四谷税務署長。国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律というのがあるのは御存じですね。この一条、「国を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が、国を代表する。」、これはいいですね。しかし、この場合は被告は四谷税務署長ですから、あなたは国を代表していません。
しかし、その六条で、行政庁というのは今の四谷税務署長、法務大臣の行政庁に対する指揮という規定があって、そしてこれは、「前条第一項の訴訟については、行政庁は、」四谷税務署長は、「法務大臣の指揮を受けるものとする。」という規定があるんですよ。だから、その訴訟を出すならいいけれども、これはなかなか両立しないんです、その訴訟の立場と法務大臣の立場が。
あなたは、この問題について訟務局長に何か聞かれたんじゃありませんか。○国務大臣(中村正三郎君) これは非常に重要なところでありますけれども、法人格を持った法人が憲法の定めに従って裁判をやる場合に、その株主構成に左右されるということは、僕は憲法上ないと思います。ですから、そういうことはあり得ると思います。
そして、これは裁判ですから、裁決を下すのは法務省じゃありません。裁判所が下すわけです。そういうことを御理解いただきたいと思います。
それから、最後の質問ですが、私は訟務局長にこのことに対して、この事件に関して、どうだこうだといったことは何も言っておりません。(「国がうんと言えば裁判する必要がなくなっちゃうんだよ」と呼ぶ者あり)○江田五月君 そうなんですよ。行政庁は法務大臣の指揮を受けるので、法務大臣の方は訴訟行為について指揮する権限があるんですよ。
あなたは、この訴訟について訟務局長に何も聞いたことはないとおっしゃるけれども、それじゃ、この訴訟じゃなくて宥恕規定のことについて、あなたは訟務局長に聞いたことはないですか。○国務大臣(中村正三郎君) これも私、訟務局長とは実は行政改革を通じて古いつき合いであります。そして私は、この宥恕規定について問題意識を持ったのは今からもう十年以上前でありまして、私が宥恕規定の研究をしていることは大蔵省の主税局もみんな知っております。
私は、こうした中小企業の人というのは非常に能力がない、税理士もなかなか雇えない。そういう人がちょっと忘れただけで、当然得られるべき税務上の利益が得られないということはいかがなものか、この宥恕規定を見直せということをずっとやってきました。その延長線上で私は主税局ともやり合っておりますし、そして衆議院法制局長の坂本さんとも長年やってきましたし、うちの訟務局長ともやってきましたから、何か本はないかといって資料はもらったことがあります。○江田五月君 だから、非常に軽率なんですよ。あなたは行政庁に対して指揮をする立場にいるんですよ。そのときに、さっきと同じように、四谷税務署長に何か言うときにはあなたは自分で四谷税務署長に会いに行って言うんですか。訟務局長を通じてでしょう。そういう訟務局長に自分の事件とちょっとでも関係するようなことで何か物を言うとそれは誤解をされるんです。誤解をされるということは公正らしさが疑われているんですよ、もう既に。公正さじゃないんです、公正らしさが既に疑われているんです、あなたは。
七番目、全日空系列ホテルの航空券優先販売問題。
これはちょっと長い歴史があるんですが、全部すっ飛ばして言いますと、あなたは、要するに航空会社系列のホテルがある。航空券とホテルの宿泊券とセットになっていろいろ売られているというようなことは独禁法上おかしいんじゃないかと、そのこと自体は一つの御見識です。私はその御見識を別に否定しようとも何とも思っていない。しかし、そのことを何とか独禁法上取り締まれないのか、取り締まれないんだったら独禁法を改正すべきじゃないのかなどというようなことでいろんな活動をされた、政治家として。これはありますよね、もちろん。○国務大臣(中村正三郎君) 全日空、全日空と出てくるんですが、何で全日空が出てくるかわかりません。私は全日空と別に悪い関係でもない、いい関係でもない、全日空ということは関係ありません。
そして、政治家ですからいろいろな支持団体があります。自由民主党にも支持団体があります。そういう支持団体からの要請を受けて活動は長年やってまいりました。その中に二つございます。一つは、官営ホテルをつくって中小企業を圧迫しては困るというのが一つ。もう一つは、こうした運輸会社がホテルをつくって系列的にやって中小企業を圧迫するので困るというのが一つ。この二つがありました。
それで、当時話題になったのは、ちょうど長野オリンピックで官営のホテルが長野の駅前にできたらJRのホテルが一つできたと。これが非常に困るというような陳情もあり、広範な陳情があって、自由民主党の観光産業議員連盟がそれを受けて陳情活動を行ったと。その陳情活動に私は参加をしておりませんけれども、観光産業議員連盟の一員であることは確かであり、これはおととしぐらいの話であります。○江田五月君 いや、だから、あなたがホテルのことなどについて関心を持たれていろんなことをやられているのがいけないと言っているんじゃない。ただ、一つ問題は、あなたの石垣シーサイドホテルの、いいですか、さっきの日本生命がリゾート開発をやっているところは二キロ離れているだけ、さらに二十キロ離れているところに全日空系列のホテルがこれは去年の七月に完成しているという、そういう事実はあるんですよ。
それはそれでいいとして、そしてあなたはその問題について、どうも独禁法改正でもなかなかうまくいかないということで、記者会見でお話しになりましたね。今度、司法制度改革審議会というものをつくる、司法制度がなかなかいろいろ問題がある、これについて広範なベースで議論をしてもらう、その中に今の独禁法、この問題についても審議してもらうんだ、こういうことを指示したと。そういうことをおっしゃったんじゃありませんか。○国務大臣(中村正三郎君) きょうはテレビが入っているので正確に言わせていただきますが、全日空……(発言する者あり)じゃ、正確がいけなけりゃ十分言わせていただきたいと思いますが、全日空のホテルもありますけれども、日本航空のホテルもございます。地元の資本のホテルもございます。これらいっぱいのホテルが全部競合関係にあります。
それから、今の独禁法の問題でありますけれども、これは、私どもが司法制度改革をやりますに当たって、与党が一年かけてつくりました提言がございます。その中に、準司法的なものも考えに入れてこの規制緩和の時代に対応しようというようなくだりがございました。そこで、この仕事は内閣の仕事であります。ですから、司法制度改革で何を審議しようかということは、司法制度改革審議会はまだできておりませんが、できたとすればそこで御決定になることでありますから、我々は提案をするだけであります。そこで、こういうことも御審議されたらいかがだろうかということを提案してみたいという趣旨のことを話したわけでございます。○江田五月君 提案をしてみたいじゃなくて、あなたはそういうことを指示したということを言ったんですよ。ところが、現実にはそれが入っているかどうかはよくわかりません。この諮問の事項というのは非常に広範ですからわかりませんけれども、それはやはり、あなた、自分の持っているホテルの関係のことでそういう司法制度審議会とかいうようなものまで利用しようというように、疑われるんです、軽率なんです。いいですか。
総理、よく今までのやりとりをお聞きくださったと思いますが、ここに八つある、八つ。さらにシュワルツェネッガーもあるんです、さらに。シュワルツェネッガーだって問題なんですよ、これ、よくよく見ると。いろんなケースの仮定を置いてですが。中村さん、あなた、調査はもう受けられたんですか。──まあいいや、ちょっと質問時間がないからもういいですが。
総理、最後に、これだけ公正らしさというものが現実に疑われている、善処されませんか。○国務大臣(小渕恵三君) 八つ挙げられましたが、上申書の件につきましては、昨日、官房長官から、この事実関係を含めまして、内閣としても責任を持って調査することを申し上げました。
今の質疑応答をお伺いしておりましたが、それぞれ時系列的にどうなっているかということについては、今のこの段階では、私は法務大臣の答弁を信頼する以外にないと思うんですね。ですから、法務大臣としての行為か、あるいはそれ以前、国会議員としてとりました行為についてなのか、その点について明確なる、今お聞きしている範囲では、衆議院議員中村正三郎として取り組んだこととそうでないと言われる案件と、私は必ずしも全部明確でないような気がいたします。
したがいまして、しかし法務大臣としての責任ある立場としてとりましたことについての御指摘が、どの程度までそれが真実にあるのかどうかということにつきましては、これは法務大臣からも改めてお聞きをいたしてみたいと思います。○江田五月君 改めて聞いてください。
終わります。
参議院予算委員会 集中審議
1999年3月3日 |