参議院本会議 質問 1999年3月5日

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情報公開法案参院本会議質問要旨

  1. 深刻な「行政不信」「官僚不信」は、情報公開法の制定に一貫して消極的で先送りし続けた歴代自民党政府にこそその責任があるのではないか。(総理)
  2. 情報公開制度の確立が民主主義と国の将来にとっていかなる意義を持つと認識しているか。またその実現のためにどのような努力をしたか。(総理)
  3. 地方の情報公開の努力には目を見張るものがあるが、自治体の実績に対しどう評価するか。(総理)
  4. 参議院で再修正すべきだと思うが、参議院の対応が衆議院と異なっても、参議院無用論に与することはないか。(総理)
  5. 再修正を検討すべき点等について。(総務庁長官)
    1. 「知る権利」を明記すること。
    2. 特殊法人を対象機関に含めること。
    3. 法人情報の非公開特例を削除すること。
    4. 手数料を明確にし、軽減すること。
    5. 裁判管轄をすべての地方裁判所に広げること。
    6. 行政文書の管理方法は法律で定めること。さらに施行日までに文書が不当に廃棄されない方策をどう考えるか。
    7. 施行日を一年早めること。

平成十一年三月五日(金曜日)  午前十時一分開議

○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
 日程第一 行政機関の保有する情報の公開に関する法律案及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(趣旨説明) 両案について提出者の趣旨説明を求めます。国務大臣太田総務庁長官。

   〔国務大臣太田誠一君登壇、拍手〕
○国務大臣(太田誠一君) 行政機関の保有する情報の公開に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国においては、情報公開法制を確立することが国政上の重要課題となっていたところであります。
 このため、行政改革委員会において、行政機関の保有する情報を公開するための法律の制定等に関する事項について、二年間にわたり、専門的かつ広範な調査審議を重ねていただき、その結果、平成八年十二月に、内閣総理大臣に対し、情報公開法制の確立に関する意見を提出されたところであります。これを受けて、政府は、同意見に沿って、このたび行政機関の保有する情報の公開に関する法律案を取りまとめ、御提案することとなったものであります。
 次に、法律案の内容についてその概要を御説明いたします。

 この法律案は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求することができる権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判のもとにある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とするものであります。

 この法律案の要点は、第一に、何人も、国の行政機関の長に対し、行政文書の開示を請求することができるものとするとともに、開示請求があったときは、行政機関の長は、不開示情報が記録されている場合を除き、行政文書を開示しなければならないこととするものであります。不開示情報については、個人に関する情報、法人等に関する情報、国の安全等に関する情報、公共の安全と秩序の維持に関する情報、審議、検討等に関する情報、行政機関等の事務または事業に関する情報の六つの類型に分けるとともに、各類型ごとに、その範囲を明確かつ合理的に定めております。

 第二に、行政機関の長が行った開示決定等について不服申し立てがあった場合に、行政機関の長の諮問に応じ不服申し立てについて調査審議する機関として、総理府に情報公開審査会を置くこととするものであります。これは、行政機関が保有する行政文書を開示するかどうかの判断を当事者である行政機関の長の自己評価のみに任せるのではなく、第三者的立場からの評価を踏まえた判断を加味することによって、より客観的で合理的な解決を図ろうとするものであり、このため、情報公開審査会には、行政文書の提示を求める権限等調査審議のために必要な権限を付与することとしております。

 以上が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案の趣旨でございます。
 引き続きまして、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 この法律案は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律が施行されるのに伴いまして、関係法律二十四件について、必要な規定の整備等を行おうとするものであります。
 次に、法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、会計検査院長の諮問に応じ不服申し立てについて調査審議するため、会計検査院に、会計検査院情報公開審査会を置くこととし、その組織、委員等について所要の規定を整備したことであります。

 第二に、情報公開法または情報公開条例の規定により行政機関の長または地方公共団体の機関が著作物等を公衆に提供し、または提示する場合におけるその著作者等の権利の取り扱いについて、所要の規定の整備等をしたことであります。

 第三に、登記簿、特許原簿、訴訟に関する書類等、謄本もしくは抄本の交付または閲覧について独自の手続が定められているものについて、情報公開法の規定の適用を除外することとしたことであります。

 第四に、その他関係規定の所要の整備を行うこととしたことであります。
 以上が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に
関する法律案の趣旨でございます。
 なお、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案及び行政機関の保有する情報の公
開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案は、衆議院において一部修
正されておりますが、その概要は次のとおりであります。

 まず、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案につきましては、第一に、開示請求に係る手数料または開示の実施に係る手数料の額を定めるに当たっては、できる限り利用しやすい額とするよう配慮しなければならないものとすること。第二に、情報公開訴訟の土地管轄について、原告住所地を管轄する高等裁判所の所在地の地方裁判所にも、訴訟を提起することができるものとすること、また、これとあわせて、複数の裁判所に同一または同種もしくは類似の情報公開訴訟が提起された場合には、裁判所の判断で移送することができるようにすること。第三に、政府は、特殊法人の保有する情報の公開に関し、この法律の公布後二年を目途として、法制上の措置を講ずるものとすること。第四に、政府は、この法律の施行後四年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすることであります。

 次に、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきましては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案の修正に伴い必要な規定を整理するものとすることであります。
 以上でございます。(拍手)
    ─────────────
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。江田五月君。

   〔江田五月君登壇、拍手〕
○江田五月君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました二法案、いわゆる情報公開法案につき、質問します。
 国にも法律で情報公開制度をつくろう。これは我が国の長年の課題であり、多くの国民が長い間待ち望んできました。アメリカにおくれること三十年余り、遅きに失したとはいえ、情報公開法がやっと見えてきました。我が国もようやく情報公開の先輩である欧米諸国や韓国の背中が見えるところまで来ました。長くその実現のために心を砕いてきた者の一人として、私も感無量です。

 民主主義の制度のもとでは、行政は国民の信頼に基づかないと成り立ちません。情報公開は、官僚の暴走を抑え、行政への信頼を確保するために必須の制度です。まさにアメリカのラルフ・ネーダー氏が喝破したとおり、情報は民主主義の通貨なのです。

 我が国で最初に情報公開法案が国会に提出されたのは、今から約二十年前、一九八〇年のことです。以来、合計十二本の情報公開法案が議員立法として提出されましたが、いずれもほとんど審議もされず廃案。営々とした立法努力の積み重ねが続いてまいりました。
 しかし、その間、官僚の不祥事は相次ぎ、超エリート官僚まで腐臭を放つようになってきました。もしこれらの議員立法の一つでも成立していたなら、中央省庁の官僚の皆さんといえども、国民の目を無視することはできず、最近の不祥事は起こらなかったのではないでしょうか。
 行政の秘密主義によって、時には国民はその生命や健康までも奪われました。薬害エイズは、もっと早く情報が公開されておればあのような悲劇にならなかったことが、今では明らかではありませんか。

 情報公開法の制定に一貫して消極的な姿勢をとり続け、これを先送りし続けてきたのはだれですか。現在の深刻な行政不信、官僚不信の最大の責任は歴代自民党政府にこそあると断ぜざるを得ません。小渕総理はいかがお考えですか。

 我が国は今、社会のさまざまな分野で深刻な停滞に陥っています。その原因は、成長期に大きな役割を果たした明治以来の中央集権官僚支配システムが、成熟期に入って機能不全に陥ったからです。この状況から抜け出すには、市民や地域がその自主性に基づいてダイナミックに活動できるよう、我が国の構造を根本から変革することが必要です。そのためには、地方分権の推進と情報公開制度の確立が不可欠です。

 また、私たちの国は、国民が主権者です。その主権者が政府の活動を知ろうとしたときに、これを権利として保障しないようでは、我が国は真の民主主義国家とは言えません。

 私たち民主党は、情報公開制度につき、友党の皆さんとともに議員立法で法案を提出したほか、ただいま議題となっている政府案に対しても、各党とともに衆議院で十二項目の修正案を提出し、全党を挙げ最優先でその実現に取り組んでまいりました。そこで小渕総理、情報公開制度の確立が民主主義と国の将来にとっていかなる意義を持つとお考えか、また、あなたはそのためにどのような努力をされたかについてお答えください。

 国の情報公開制度の歩みと比べると、地方の努力には目をみはるものがあります。一九八二年の山形県金山町の文書公開条例を端緒として、今や六百近い自治体において情報公開制度が確立しております。そしてNPOや市民団体がこうした自治体の情報公開制度を活用して、いわゆる官官接待、空出張などの実態を暴き出しています。官官接待がほぼ消滅したとされるのは、これら市民の地方での努力の成果ですね。食糧費や出張旅費も大幅に削減されました。
 これらは、行政の内部監査だけでは決して摘発できません。しかし、行政の怠慢や不正がいかに厚い壁に守られていても、一たび市民が情報公開制度を手にすれば、市民みずからの手でこれを正すことができるわけです。また、市民と行政との間に緊張関係が生まれ、不祥事を未然に防止できます。こうしたことを自治体の情報公開制度は見事に証明しています。こうした自治体の実績に対する小渕総理の評価、これをお聞かせください。

 私たちは、このように大きな意義を有する情報公開法を今国会で必ず早期に成立させなければならないと思います。確かに、政府案は、衆議院での全会派共同修正により幾らか磨きがかかってきました。敬意を表します。しかし、なお不十分な点が幾つか残っております。最近の報道を見ても、国民の利益を第一に考え、党派を超えて、参議院でより一層磨きをかけることが期待されています。今、参議院の独自性を発揮せず、いつ発揮できるでしょうか。小渕総理、まさかあなたまでが、ここで参議院が衆議院のカーボンコピーを脱しても、参議院無用論にくみされることはないでしょうね。お答えください。

 そこで、再修正を検討すべき点について、具体的に質問します。
 第一は、本法案に知る権利が明記されていない点です。
 表現の自由は、情報を正しく知ることなしには正当に行使できません。ですから、知る権利は、表現の自由の不可欠の前提として、当然これに含まれるものです。また、国民主権のもとでは、行政の保有する情報は国民のものです。これは、そう書かれているかいないかにかかわらず、当然のことです。しかし、情報公開制度の実際の運用に当たっては、これが知る権利を具体化したものであることを明記しておかないと、行政情報は原則公開だということが徹底しないおそれがあります。裁判所が知る権利を明言できないなら、国権の最高機関である国会が、特に良識の府と言われる参議院から率先して明言すればいいじゃないですか。そこで、再修正で知る権利を明記することを検討すべきだと思います。総務庁長官のお考えを伺います。

 第二は、本法案が特殊法人を対象機関に含めていない点です。
 特殊法人の多くには、政府の出資、すなわち国民の税金が投入されており、また、その業務は行政が行うものを代行し、その幹部は監督官庁からの天下りで占められています。あの動力炉・核燃料開発事業団の事例を見ても、国民は特殊法人の活動内容に無関心ではいられません。韓国を初め諸外国でも、政府が関係する法人を行政機関と同様に取り扱い、情報公開の道を開いています。なぜ特殊法人を行政機関と区別して情報公開の対象から外すのですか、総務庁長官。

 第三は、企業などの法人情報に非公開の特例を認めている点です。
 政府案では、法人が行政機関に対し非公開を条件として任意に提供した情報は公開しないことができることとなっています。しかし、もともと法人の正当な利益を害する場合は情報を公開しないことにしているのですから、その上さらに非公開条件の有無を考慮する必要はありません。この条項は、官僚と業界の癒着の温床となりかねません。削除すべきだと思いますが、総務庁長官の御見解はいかがですか。

 第四は、手数料の問題です。
 政府案では、公開の請求をした段階で手数料を取った上、公開をする時点でさらに手数料を取るという二重取りの制度となっています。その上コピー代も取るのでしょう。おまけに文書の数え方次第で手数料は膨大な金額に膨れ上がります。市民にこれほど重い負担を強いる例は自治体にはありません。公益目的の場合には大幅な手数料の減免を認めるなど、実質的な負担軽減措置も一考に値します。総務庁長官、まさかあなたは乱用防止の名目で、世界で最も利用しにくい情報公開制度を我が国でスタートされるおつもりはないでしょう。どうかこの点を見直し、負担軽減のために一緒に知恵を絞りましょう。これはぜひ参議院でしなければならないことだと思います。前向きの御答弁をお願いします。

 第五は、非公開の当否を争う裁判に関する問題です。
 政府案では、実質的には東京地方裁判所でしか裁判を起こせませんでした。地方の人は裁判所の判断を得たければ高い交通費を払って東京まで出てこいという傲慢な法律だったのです。そこで、衆議院では、幾ら何でもこれはひどいと、全会派共同修正で全国八カ所の地方裁判所で裁判を起こすことができるよう改められました。しかし、これには高等裁判所本庁所在地という基準はありますが、その基準を採用する理論的根拠はありません。提訴する人の負担軽減のためだというのなら全国すべての地方裁判所に広げるべきです。少なくとも、日本海側やあるいは沖縄県にお住まいの人の負担軽減は考えなければなりません。そのために今必要とされているのはただ一つ、立法府の決断だけです。総務庁長官、あなたは立法府が決断すればそれを支持されますね。お答えください。

 第六は、行政文書の管理の問題です。
 情報の整理、保管が適切になされていないと、情報公開といっても絵にかいたもちになります。私は、文書管理の方法は法律で定めるべきだと思います。政府案のように政令で定めるのでは、例えば防衛調達で問題となったような不法廃棄を厳しく罰することはできないでしょう。なぜ政令ですか。さらに、施行日までに文書が不当に廃棄されることのないよう、どのような方針で臨まれますか。総務庁長官の御答弁をお願いします。

 第七は、本法案の施行日です。公布後二年以内というのですが、法案が提出された昨年の三月から既に一年間が経過しているのですから、その分を差し引きましょうよ。施行期日の一年短縮について総務庁長官に伺います。
 最後に、二十年という長期にわたって情報公開法の成立を待ち望んできた国民の皆さんに心から喜んでいただけるよう、本法案の内容をできる限り練り上げ磨き上げた上、今国会の一日も早い時期に成立させなければならないことを同僚議員の皆さんに再度お訴えして、質問を終わります。(拍手)

   〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
○国務大臣(小渕恵三君) 江田五月議員にお答え申し上げます。 冒頭、江田議員から、これまでの情報公開法案の経緯などに触れられつつ、歴代の政府の取り組みについてお尋ねがございました。
 これまでも、政府は、情報公開法制の調査研究を進めるとともに、運用上の措置として行政情報の提供に努力してきたところであり、これまでのこうした実績を踏まえまして、今般、情報公開法案を提出し、御審議をお願いいたしておるところでございます。

 情報公開制度の意義についてであります。
 この制度は、国民に開かれた政府を実現するために重要な制度であり、情報公開法案が成立することにより、公正で民主的な行政の推進に資するものと考えております。
 私といたしましては、所信表明演説で法案の早期成立をお願いし、また、今国会の施政方針演説でも内閣として法案の早期成立に最大限努力する旨を明らかにし、取り組んでまいったところでございます。

 地方自治体の情報公開の実績に対する評価についてお尋ねがございました。
 私は、地方公共団体における情報公開条例の実績については高い関心を持って注目してまいりました。政府といたしましては、情報公開法案の立案に当たりましても、諸外国の法制や、今申し上げました地方公共団体の条例をも参考にさせていただいたところでございます。

 最後に、参議院における本法案の審議との関連で、参議院の役割についてお尋ねがございました。
 従来から、二院制度において参議院が果たす役割やその重要性については十分認識いたしておるところであります。この法案は、衆議院において各党間の熱心な協議の上、全党共同提案の修正を盛り込み全会一致で可決され、参議院に送付されたものでございます。参議院でも御審議の上、早期に成立をお願い申し上げる次第でございます。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

   〔国務大臣太田誠一君登壇、拍手〕
○国務大臣(太田誠一君) 再修正を検討すべき点について御質問がありましたので、順次お答えいたします。

 第一に、知る権利についてのお尋ねがありました。
 行政情報の開示請求権という意味での知る権利が憲法上保障されているか否か、権利の性格、内容等についてはなおさまざまな見解があるというのが現状であります。本法律案においては、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を求めることができる権利といたしておりまして、その内容におきましてほぼ同様のことを明らかにしておるというふうに考えております。このため、情報公開法案においては、知る権利という文言は用いておりません。
 なお、知る権利の問題につきましては、衆議院内閣委員会の附帯決議において、そのほかの論点とともに、施行に当たって引き続き検討を行うこととされているところであります。

 第二に、特殊法人の情報公開についてのお尋ねがありました。
 これにつきましても、行政機関の情報公開と並んで重要な課題であると認識いたしております。しかしながら、特殊法人は、国とは別の法人格を有し、公団、事業団、JR、NTTなどの特殊会社、NHKなど、その法的性格、業務内容、国との関係がさまざまでございます。行政機関を対象とした情報公開法をそのまま適用することがよいのかどうか、特殊法人の実態を踏まえた制度化をなお考える必要があると考えております。
 特殊法人の情報公開につきましては、衆議院において、情報公開法の公布後二年を目途として法制上の措置を講ずる旨の修正が全会一致でなされたところでありまして、政府といたしましては、国会での御議論を踏まえまして誠実に対処してまいりたいと思います。

 第三に、法人情報の非公開特例についてお尋ねがありました。
 法人等から非公開を前提として行政機関に提供される情報の流通の形態や、提供者の非公開扱いに対する期待と信頼は保護に値するものであります。このような規定は必要と考えます。
 なお、この非公開の約束は、一定の要件のもとで合理的である場合に限るとし、乱用を招かないよう配慮しております。

 第四に、手数料についてのお尋ねでありますが、手数料は、特定の者に対して役務を提供する場合に、その費用を回収するために徴収するものであります。このような経費をすべて租税等の一般財源によって賄うことについて、国民の合意が得られるとは考えられません。
 手数料の具体的な額などについては政令で定めることとなっておりますが、衆議院において、できる限り利用しやすい額とするように配慮しなければならない旨の修正が行われ、附帯決議も付されております。これらを踏まえ、国民の皆様が利用しやすい額となるようにいたしたいと考えております。

 第五に、裁判管轄につきましてお尋ねがございました。
 情報公開訴訟は行政事件訴訟法上の抗告訴訟であり、同法では被告行政庁所在地の地方裁判所が管轄権を有するのが原則とされております。他の行政事件訴訟とは別に、情報公開訴訟についてこの原則に対する例外を認め、管轄裁判所を広げることにはさまざまな議論がありましたが、衆議院では、与野党間での協議の結果、訴訟の当事者の公平、証人等の便宜を考慮し、ぎりぎりの線でまとまり、与野党共同で修正されたのがこの修正案と承知いたしております。
 したがって、政府としては、国会での御論議はこれから参議院の御論議が行われるところでございますけれども、これ以上管轄裁判所を拡大するのは適当ではないと考えております。

 第六に、行政文書の管理方法についてお尋ねがありました。
 情報公開法を適正に運用していくためには、適正な文書管理が前提であります。両者は車の両輪であります。本法案においては、第三十七条において文書管理に関する基本的な骨格を明記しています。すなわち、行政機関の長の行政文書の適正管理の責務を規定するとともに、各行政機関の長に行政文書の管理に関する定めの策定及び公開の義務を課しています。また、その定めに盛り込むべき基本的な事項を政令で定めることいたしております。
 このように、文書管理のルールを整備するとともに、これを国民にも明らかにすることにより、行政文書の適正な管理が確保されることから、別途に文書管理に関する法律を制定する必要はないと考えております。
 また、各行政機関において、情報公開法施行前であっても、業務上必要な文書を恣意的に廃棄できるものではありません。なお、行政文書を不適正に廃棄した行為については、国家公務員法の懲戒処分の対象となるものであります。

 第七に、施行期日についてお尋ねがありました。
 情報公開法が施行されるまでの間に、政府及び各行政機関においては施行準備に係る大量の事務作業が見込まれております。政府としては、施行のための政令、施行通達等の策定・施行、制度の周知・広報、全国に置く総合案内所の整備等を行う必要があります。
 また、各行政機関においては、行政文書の管理に関する定めを制定し、開示請求に適正かつ円滑に対応するため、この定めに従って保有する大量の行政文書の目録の整備などを行うことが必要となるほか、審査基準の策定、窓口の整備等を行う必要があります。
 できるだけ早期に施行したいと考えておりますが、政府及び各行政機関における準備作業を勘案すると、的確かつ円滑に法を執行するためには、おおむね二年程度の期間を要すると考えております。(拍手)

○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。

参議院本会議 質問 1999年3月5日

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