2003年3月25日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○アカデミー賞でのブッシュ批判は、アメリカの健全性が保たれている現れだ
○与党・日銀間の経済失政の責任なすり付け合いの状況は変わっていない
○東京・北海道知事選は、幅広い中から推すにふさわしい候補者が現れた
○統一地方選挙においてイラク・北朝鮮問題への姿勢が問われる場面も当然ある
○有事法制等の問題を表に出して、小泉総理は経済失政隠しに入っている

アカデミー賞でのブッシュ批判は、アメリカの健全性が保たれている現れだ

【代表】今日は定例の会見ですが、すべてがイラクの戦争一色ですので、あまり私のほうから新たに言う言葉が見つかりません。あえて言えば、アカデミー賞が発表されましたが、その中でマイケル・ムーア監督が受賞の挨拶の中で、ある意味ではブッシュ・アメリカ大統領を名指しで、戦争に向かった責任を厳しく非難していたのが特徴的でした。

わが国でももちろん賛成、反対の議論はありますが、たとえば日本のそういうお祝いをもらった場面で、総理を名指しで批判をするといった形というのは、なかなかそうは言ってもとりにくい、あるいはとれないわけですが、アメリカ社会というのは、きちんと自分の意見をそういう場であっても明確にする。そのことがあるから、ある意味でアメリカの一つの健全性が保たれているのであろうと改めて感じています。

与党・日銀間の経済失政の責任なすり付け合いの状況は変わっていない

日銀に関していろいろな動きが報道されていますが、率直に申し上げて新たな福井体制になった後の日銀がどのような動きをするのか、注目をしております。ただ今日までの動きで言えば、一部銀行保有株の買い上げの上限を引き上げる、といったようなことを言っているようですが、必ずしも新たな枠組みを打ち出されているわけではありません。

そういった意味では、なにか政府与党、とくに与党と日銀の間で相変わらず、そっちがやらないからうまくいかないんだというような、経済の失政に対して、責任をお互いがなすり付け合っているような状況が本質的には変わっていないのかなと、そんなふうに見ております。

<質疑応答>

補選で候補者を立てられなかったのは残念だが、それぞれの事情でやむを得なかった

【記者】衆参統一補選の対応ですが、民主党は衆院山梨と参院茨城で候補者擁立を見送る方向のようですが、国民に選択肢を与えられないことになりますが、それについてはどのようにお考えか?

【代表】まず一般論で言えば、国政選挙でありますから、基本的には野党第一党としてまさに選択肢を提示して、ある意味では国政全般に対する判断を含めて、それぞれの選挙区の皆さんに判断してもらう、という姿勢をとることが原則です。

10月の選挙のときには、そういう形で全選挙区に他の野党と協力して、候補者を立てたわけであります。今回は4選挙区について、結果的に2選挙区しかわが党の公認・推薦候補が立てられなかった。このことはそういう意味では残念に思っております。

ただ質問にもありましたように、それぞれ若干の事情がありまして、参議院は来年の改選の選挙でありますが、2人区で現議席を1人持っているということで、今回頑張って当選した場合に、来年の選挙でどうするかという問題が起きるということもあって、結果的になかなか戦える候補者の手が上がらなかったということで、残念でありますが見送ったということであります。

山梨3区についても、いろいろな経緯はありますが、現職の後藤さんが県知事選のいろいろな余波が残っている中で、最終的にはそう遠くない時期にある衆議院の解散総選挙で、それに絞って戦いたいという希望がありまして、ここもなかなかおいそれとそれに代わる候補者を出せる地域事情ではないものですから、最終的には幹事長のところでとりまとめていただきましたが、本人の希望なり幹事長・選対委員長や県レベルの判断などを含めて、今日の役員会で基本的にそういう方向で了承し、両院懇談会でそれを重ねて理解を求めたという経緯であります。

原則としては残念でありますが、それぞれの事情の中でやむを得なかったというのが実態であります。

東京・北海道知事選は、幅広い中から推すにふさわしい候補者が現れた

【記者】いまのお話にも関連しますが、都知事選には石原さんの対抗軸として樋口さんが出ることになりましたが、政党選挙としてはさきほどありましたように、不戦敗という形で見られると思いますが、それについてはどのようにお考えか?

【代表】衆議院・参議院と、首長選・知事選とは考え方がかなり根本のところで違っていると思います。いま申し上げたように、衆議院・参議院は、補選を含めて、やはり国政の判断する選挙として基本的に候補者を出していく、選択肢を有権者に提示していくのが責任だと思っております。それが十分に果たせなかったことについては、さきほど申し上げたように、今回は残念でありますが、そういう責任を強く感じているところです。

知事選については、北海道は、最終的に必ずしも党内からの候補者ということで最初から走ったわけではありませんが、党外などの候補者などいろいろな選択肢の中から、最終的に鉢呂さんという現職衆議院議員を擁立することになったというのは、ご存知のとおりであります。

そういう意味では東京についても、もともと党内で候補者を見つけるという発想でやっていたわけではありませんし、適任者であれば党の外の人であっても、もちろんいいという考え方でやってきましたから、結果として樋口さんという方の手が上がったということは、私は民主党の考えてきたやり方も含めて、現時点ではそれが一つの形に具体化したと思っておりますので、別に党の中の候補者でないから、あるいは党の中に近い候補者ではないから間違ったとか、そういったことはまったくありません。

逆に言えば、幅広い範囲からの候補者が現れて、私たちが推すにふさわしい候補者が現れたということは、ある意味ではこれまでのところ、いい形で進行していると考えております。

統一地方選挙においてイラク・北朝鮮問題への姿勢が問われる場面も当然ある

【記者】改めて、統一地方選の今回の民主党としての位置付けというのと、イラク戦争が始まったということでそれが中心になるのかどうか、あるいは医療費3割負担の問題や経済問題などそういう点について、どのようにお考えかお聞かせください。

【代表】まず一般的な意味で、統一地方選挙、とくに首長選挙に関して言えば、政策的な意味での共通性というものを、判断の基準にすべきだと思っておりました。平成15年度予算にも盛り込みましたように、個別補助金のようなやり方を止めて、包括補助金で、将来は包括交付金、将来は財源・権限を地方に移していくという地方分権・地域主権の実現というものを、もっとも大きな自治体政策の柱に従来から据えてきましたし、今回の民主党もそういう姿勢で臨んでおります。

そういう点で、それぞれの候補者、いろいろな重点の置き方はありますけれども、わが党から見てそういう一つの基本的な方向に一致した人について、応援をするという姿勢で来ているところです。

それ以外に、もちろん当面の問題として、医療費の3割自己負担については2割のままに凍結すべきだ。4月1日からいよいよ実施をされるという中で、医療制度の根本改革につながらない単なる費用負担のつけまわしのやり方に反対というのは、国政レベル・地方レベルを超えて、国民全体の課題として取り上げていく。そういう意味で地方選の一つの争点になることは事実だと思っています。

また、イラクの戦争あるいは北朝鮮の状況というものは、直接その自治体の政策そのものと関わるかどうかは別にして、選挙によってはそれを推す政党なり、あるいは立候補している候補者の、こういった問題に対する政治姿勢が問われる場面も、当然あるだろうと思っております。

たとえば東京では、樋口さんが石原現知事のことを「軍国おじさん」と言い、自らのことを「平和ボケおばさん」と、多少ユーモラスに表現をして、その争いだということをご本人が言われているようですけれども、それをどう受け止めるかは、それぞれ有権者の皆さんの一つの受け止め方でありますが、どちらかといえば石原さんが、いまのイラクの戦争に対する政府の姿勢に賛同的であるのに対して、樋口さんが否定的である批判的であるということも、当然知事も一つの重要な政治家の大きな立場でありますから、そういう政治姿勢が問われることも、どちらが適任であるかと考えるか、有権者の選択・判断の材料となることも当然あり得ると考えています。

民主党は、東京都知事選で樋口さんを全力を挙げて応援していく

【記者】樋口さんの支援体制について、さきほどの両院懇談会では、全力で応援するということが了承されましたけれども、党としてどういう形で支援体制を組むのか、あるいは支援の中身についてどう想定されているのか、お聞かせください。

【代表】昨日、東京都連で支持を決めて、今日の両院懇談会で、幹事長からそういう東京都連の決定を受けて、党全体としても応援していこう、という方針が了承されました。今日この後、東京選出の国会議員や都連関係者が集まりますが、具体的にどういう形で協力していくのかということにもつながってくると思っております。

これからと言うか既にと言うか、全力を挙げて応援するという両院懇談会の了承事項でありますから、ある意味では推薦であるとか支持であるとか、そういう表現はいろいろな表現の仕方がありますが、まさに全力を挙げて応援するという言葉どおりの形で努力していきたいと考えております。

有事法制等の問題を表に出して、小泉総理は経済失政隠しに入っている

【記者】有事法制についてお尋ねします。与党の考え方として、有事法制についての審議を急ぎたいという考えが出ているようですが、これについての民主党の対応をお聞かせください。

【代表】予算案が今月末に参議院で通過する方向になっております。通常予算が終わった後、関連法案に移るわけですが、4年に1度の統一地方選挙、27日に知事選の幕が切って落とされるわけでありまして、そういう点ではいま、どういう形でこれからの国会運営がおこなわれるのか、あるいはおこなうべきなのかということで、与野党の間でいろいろな課題の段取りが議論されているというふうに承知をしております。

一つには統一自治体選挙というような、政治的な全国的な活動に半ば責任をもつ各党が、その間の国会審議についてどこまで並行してできるのか、あるいはある意味での一時休戦をとるのか、例年の例もありますのでそれも含めて、国対での議論を待ちたいと思っています。

一般的に言いますと、イラクの戦争あるいは北朝鮮の問題が表面化してから、なにか小泉総理あるいは政府側は、経済失政を隠すために軍事問題、あるいはそういった問題を積極的に表に出していこうという、経済失政隠しに入っているという感じがいたしております。

本来なら、与党の中でも予算が上がった後には補正予算の議論が今にも必要だと言っていたわけでありますが、そういった点で与党が補正予算に対してどういう姿勢を持つのか、まずそのあたりもきちんと問い質していかなければならないと思っております。

有事法制については、いずれにしても昨年の暮れに、新しい執行部が出来た段階でわが党として担当の次の大臣を中心に検討をお願いしておりますので、しかるべき段階がくれば党の考え方をまとめて、何らかの形で提案していくという段取りにしておりますが、果たしてそれがこの時点なのか。当初言われていた流れで言えば、統一地方選が終わって、GWが明けたあたりからではないかという見通しもあったわけでありますので、その時点からになるのかその辺りになるのか、そのあたりは先ほど申し上げたことも含めて、どういう課題を統一地方選とも含めて優先し、あるいは少し後に回してもいいのか、それらのことを与野党間でしっかりと国会を中心に段取りを確かめながら進めていきたいと思っています。

自衛隊を治安部隊として派遣する発想は、言及するには性急すぎる

【記者】イラク戦争について、一つは戦後復興をにらんで国連で決議をするという話があります。それによって、国連安保理の機能というのも回復できるのではないか、というのがまず一点、それから山崎幹事長が、戦後復興にからんで治安部隊として自衛隊を派遣したらいいのではないかという発言をされているのですが、それについてどのようにお考えか?

【代表】まず現在のイラクの状況の中で、どこまで戦争後のことを考えることが適当なのか、率直なところまだ非常に流動的だと思います。つまりは当初言われたように、最短2週間程度でどんどん降伏していって軍事行動は終わるのではないかという、きわめて楽観的な見方から、最近の見方はかなりそうではないのではないか。そうでもないというのも1週間が10日に延びるという意味なのか、さらに長期化するという意味なのか、そういう時期の問題、あるいは終わり方の問題によってもどういう事態がその時点で生まれているか、なかなか見通しがつきにくい部分です。

それに加えて、いまのご質問の終わったあとに、国連決議があったらそれですっきりと国連の機能が回復するのかと言われても、たとえば私が知る限りでも、アメリカは太平洋戦争が終わったときの日本と同じように、当時はマッカーサー司令官が日本を事実上統治するという形でGHQをつくったわけですが、そういうアメリカ軍中心の統治というものをアメリカが主張するとすれば、果たしてそれに他の国連の常任理事国に限らず、安保理がかむ余地があるのかどうか、わが国が考えるというよりもアメリカと他の武力行使に事実上反対した国々との間で、一つの合意点が得られるのかどうか、それも現時点でちょっと言うには早すぎるのではないかと思います。

山崎さんがどういう発言をされたか私は定かに知りませんが、治安部隊を派遣するという発想が果たしてどういう形で法律的に可能なのか、あるいは現実的にも可能なのか。私も多少カンボジアのPKOとかモザンビークのPKOとか、日本は出ておりませんでしたが、マケドニアのPKOなど現地を見たことがありますけれど、都市の中の治安を守るという機能は相当大変なことです。

言葉の問題もありますし、いろいろな問題があります。ですから山崎さんの話はちょっと前のめりすぎるのではないでしょうか。先ほど申し上げたように、自由民主党は経済の失政を覆い隠すために軍事などこういった問題に前のめりで物事をどんどん議論をかきたてて、そちらに目をやりながら政権の求心力を確保していこうという傾向が私には見てとれるわけですが、ちょっと山崎さんがそこまで発言したとすれば、現時点で言及するにはまだあまりにも性急すぎるのではないかという感じをもちました。

編集/民主党役員室


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