2006年4月7日 戻るホーム民主党文書目次

菅直人候補 代表選投票前の政見表明演説


昨年の衆議院選挙における大敗、そして今回のメール問題によって、多くの国民の皆さんに民主党に対しての失望感を抱かせたことを、私もこの党に所属する一人として、まずお詫びを申し上げたいと思います。

今、言うまでもなく民主党は危機にあります。しかしこの危機は単に民主党の危機と言うよりも、二大政党制の中で政権交代可能な日本を作っていこうという、その制度自体の危機でもあります。そういった意味で、私はここで民主党の再生に失敗すれば、本当に民主党はなくなる、あるいは日本の二大政党は少なくともこれから長期間、そういうかたちで機能しなくなる。こういう極めて強い危機感を持って、この危機を打開して、なんとかもう一度、政権交代可能な民主党を、日本を作りたい。そう思って立候補いたしました。どうぞよろしくお願いします!

今回こういう危機だから、選挙ではなく話し合いでという、そういういろんなご意見もいただきました。確かに色々な道筋があったと思います。しかし、やはり国民の前に開かれた民主党としては、国民の皆さんの見えるところで、そして全国会議員が全員が1票を持って決めることのできる、やはり選挙での決定の方が望ましいのではないか。大変真摯な色々なアドバイスもいただきましたけれども、そういう判断の中で、最終的に立候補を決意し、この場に臨んだことをぜひご理解をいただきたいと思います。

そして、まずやらなければいけない第一は、言うまでもありません。民主党がこの選挙を終えた後、まさに老壮青それぞれの人達が自分の持ち味、自分の能力を生かせる挙党一致の体制を作らなければなりません。

幸いにして、昨日小沢さんと共に4ヵ所のテレビ出演をし、また直接にも羽田最高顧問や鳩山幹事長のお計らいで話をする機会をいただきました。そうした場を通して国民の皆さんに、この選挙が終われば、ノーサイドだ。そこで決まった代表に、小沢さんが代表になられれば、私はどんな役目でも、どんな下支えでもやらせてもらう、そのことを表明し、また、小沢さんもそうした時には、私が代表に選ばれた時には、協力はどんな形でも惜しまない、ということを言っていただきました。

そういった意味で、私は代表に選ばれた時には、代表としての国会での質疑とか全国を回る活動とか色々ありますけれども、そういう活動に加えて、党をまとめ選挙体制を作っていく、そういう大きな役割を、小沢一郎さん、もちろん多くの皆さんにそれぞれ担っていただきたい。そういうかたちで、まさに挙党一致体制を作っていくことを、この場でお約束すると同時に、皆さんにもぜひ自分の心の中で、お互いに約束をしていただきたい。どうかよろしくお願いします!

私はこの民主党は、老壮青それぞれ一人ひとりを見れば、自民党に決して負けない人材が揃っていると、このように確信をいたしております。そういった意味で一人ひとりの能力を、王ジャパンのようにチームとしてフルに発揮できれば、自民党に代わって政権を担いうる政党であることを国民の皆さんに、きちっと知ってもらうことができると思っております。

特にこの間、参議院の皆さんは現在全国会議員の中で42%の81名を占めておられますけれども、どちらかと言えば衆議院に多少偏った運営が行われていたのではないかというご指摘もいただいております。6年間の任期を持って中長期の問題にあたることが衆議院以上にできる参議院の皆さんに、もっと大きな役割を担っていただいて、この党をより強い、より活力あるものにしていくことも、この党再生の避けられない、やらなければいけない課題だと、そのこともお約束をさせていただきます。

少し私自身について語らせてください。私は中学生の時に、父親が「すばらしい新世界」という本の話をしてくれました。すべての人間が幸せな社会、こういうユートピアの物語であります。子供はすべて試験管で産まれます。そして生まれる時からある階層ある階級は、穴掘りが大好きだ、あるいは農業の土をおこすのが大好きだ、あるいは事務作業が大好きだ、条件付けられて生まれてくる。ですから産まれたそれぞれの階層の人は、自分の仕事が大好きだから幸せだ。そして階級の少し上の方の人が少し悩みをもったら、ソープといういわば麻薬のようなものを飲めば、3日間くらいふわふわしていてまた元気になる。そういう社会に、人間の女性の腹から産まれたバーバリアンという青年が紛れ込んでくるという。イギリスのハクスレーという方が書かれた、もう100年以上前の小説ですが、大変興味深い小説の話を聞かせてくれました。

私はみんなが幸せになる、だからまさにユートピアでありますけれども、しかし人工的に人為的に政治権力でもって、みんなが幸せな社会を、もしそれがこのすばらしい新世界だとすれば、これほど非人間的な社会はない、そのことをその小説から学びました。私はそういう意味で、政治の権力というものを何のために使うのか、もちろん一般的には幸福をみんなに実現するためなんですけれども。そういった意味で言えば、強制的な幸福というのはやはりありえない。

一人ひとりが、好きな女性、好きな男性、好きな趣味、時にはバッティングをすることもあります。そういった意味では、幸福を求めることはもちろん自由だけれども、政治の強制権力というのは場合によっては、死刑制度など人を殺す場合だってありうるわけですから、その権力の使い方は、不幸を少なくしていくこと、戦争という不幸、あるいは経済的な貧困とかマイノリティの皆さんのその弱い立場を守るとか、弱い立場の人、不幸な人を少なくしていく、守ることに使うべきだ。これが私が申し上げている「最小不幸社会」というものの考え方の中身であります。決して消極的な意味で最小不幸という言葉を使っているわけではなくて、政治権力の行使のその仕方として、私はそうした方向が正しいと、このように思っているわけであります。

高校の時に父親が転勤で山口県から東京に移りました。建て売りのそう大きくない家でありますが、今母親が住んでますが、それを買うのに大変な借金をしたという話を聞きました。なぜこんなにサラリーマンが都市で住宅を持つのに苦労するのだろう。社会に出た時に始めた市民運動が「よりよい住まいを求める市民の会」という運動で、その中で市川房枝先生にもお会いをいたしました。その後、政治活動に参加をして、厚生大臣になった時に、内閣というものがほとんどすべてが官僚によってコントロールされているということを嫌という程知ることができました。

そういった中で、私は官僚主権の国から本当の国民主権の国に変えていかなければならない、小選挙区制度の導入に伴って、鳩山さんたち多くの皆さんと旧民主党を、そして98年に皆さん方と共に新しい民主党の結成に加えていただきました。

私が代表として国政選挙を携わったのは、98年の参議院選挙と2003年の衆議院選挙の2度であります。幸い98年の参議院選挙では、多くの選挙区で2人の当選者を出すことができ、与野党逆転を実現をいたしました。また2003年の衆議院選挙では、小沢さんたち当時の自由党との合併の大きな効果もあって177名、政権交代には至りませんでしたが大きな前進をすることができました。こういった意味で、この政党をもう一度、次の参議院選挙で与野党逆転に、さらに次の衆議院選挙で政権交代に、必ず皆さんと共にそのことを実現したい、この覚悟で臨ませていただきます。

本当の意味の行政改革、そして弱肉強食に任せない、そうした弱い人達も守っていく。またアメリカとアジアに両軸を置いた外交。そして今「国家の品格」という本が多く読まれておりますが、そういう品格ある国。よく問題になります、拉致犯の日本への引き渡し、当然主権国家として、日本で行われた犯罪の犯人を引き渡す、当然の要求だと、私も全力をあげて協力していきたいと、このように思っております。

また選挙に向けては、農村地域と大都市、一昨日は農業再生プランの提案者の一人として答弁にも立たせていただきました。また大都市の昨年の選挙の大敗の原因は、人間関係の薄くなっている若者層、さらには団塊世代も会社人間を卒業すると地域では大変人間関係が薄い、こういう人達に、社会でもっと人間と人間との繋がりを深めるような、そういう運動と政策。高齢者の労働における年齢差別禁止、さらには同一労働・同一賃金の均等待遇、こういった政策を単に政策として国会に出すだけではなく、すでに民主党は何度も出していますが、運動として展開する中で、都市の巻き返しをはかっていきたいと、このように思っております。

最後に、私は時折何か書いてくれと言われて、あまり字が上手くないものですからなるべく避けるのですけれども、どうしても書かなければならない時には、「草志」という言葉を書くことにいたしております。草という字と志という字であります。それは草の根の志を忘れないようにという思いであります。明治維新は武士が中心とした革命でありました。しかしその中に庶民が参加をした騎兵隊というグループがありました。私はこれから日本で、庶民の力、草の根の力、国民一人ひとりの力で、本当に政権交代ができる、その先頭に立てる民主党を、ぜひ皆さんと共に作り上げていきたい。どうか皆さんのご協力を心からお願いして、私のお訴えとさせていただきます。

どうもご静聴ありがとうございました。


小沢新代表 代表選投票前の政見表明演説
民主党代表選挙 立候補 政見 菅直人小沢一郎


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