2003年5月27日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○二つの課題をクリアし、政権獲得への行動に移っていきたい
日本外交:説明責任の放棄どころか、国民に対して理解を妨げる形で対応している
ブッシュ大統領にYESとしか言えない日本の総理になってしまったのではないか
りそな問題:自ら諮問をした総理が、どこの段階で破綻ではないと認定できたのか
小選挙区という仏に政権交代という魂を入れる国民運動を、行動に移していきたい

二つの課題をクリアし、政権獲得への行動に移っていきたい

【代表】昨年の12月に改めて代表に就任して、新体制がスタートして5ヶ月あまりが経過しました。この新しい体制の中で、二つの大きな課題が、まずクリアしなければならない形としてあるというふうに認識をしてまいりました。

一つは、国会全体を反転攻勢にして自民党に対決していくこと、もう一つは鳩山前代表が12月に問題提起をされた自由党との問題を、何らかの形で一つの流れとして形づくっていくこと、この二つのことがあると思って、まずそのことを念頭においてやってまいりました。

そういった意味では最初の一つ目は、とくに有事法制の問題で、ああいう形で一つの統一した行動ができた。しかもきちんと対案を出して、修正案を大半我々の要求を飲ませて対応できたこと、そして昨日、内容的にはご存知のような結果になりましたけれども、いわばこの執行部ができる前の段階で提起された問題の、いわば宿題。その宿題の結果はともかくとして、一つ形が決着したということは、ある意味ではこの間の二つの課題をクリアできたという意味で、大変良かったと思います。

これからいよいよそういう懸案事項から、政権獲得へ向かっての、時間的にも早ければ半年以内にはある衆議院選挙に向けての、まさに政権獲得を目的とした行動に全面的に移っていきたい。

いま申し上げたように、いままでの半年はどちらかと言えば、やや押されぎみだった国会から、反転攻勢をかけ、自由党との課題についても何らかの一つの決着をつけるということになりましたので、その二つの課題が一応峠を越しましたので、いよいよ政権獲得ということに向けて、全面的な行動に移っていきたいと考えているところであります。

日本外交:説明責任の放棄どころか、国民に対して理解を妨げる形で対応している

【代表】この1週間の中で起きた問題について触れさせていただきますと、一つは小泉総理が地球を一周して帰ってきました。一般的に言って日本の総理大臣とアメリカの総理大臣が親しくなるということは、私は好ましいことだと思っております。

しかし同時に日米首脳が話された、あるいは会見された中身の中で、従来総理が国会などで私などの質問に対して答えていたことと、ブッシュ大統領との話で言われていることが、どういう関係にあるのか、矛盾しているのかしていないのか、いくつかの点でよく分からないところがあります。とくに重要な問題で言えば、日本にとっても直接的ないわば脅威となっている北朝鮮の問題について、私も何度か議論をいたしましたが、総理はその都度、例えば韓国の金大中前大統領あるいは現大統領ノ・ムヒョン大統領の太陽政策を支持するということを自ら言われました。

そういう太陽政策を支持すると一方で言いながら、日米首脳会談では「圧力と対話」
という言葉が生まれて、一般的には太陽政策ではなくて、もうちょっとハードな政策が固まりつつあるとみるのが自然だと思います。

しかしこの関係について、総理は一言も語ろうとしない。川口大臣は、変わったわけではないというようなことを記者会見で述べておられるようですが、こういうやり方が、一番国民的にある意味で日本外交のよくないところ、つまり実際に変わったのなら変わったで、こういう理由で変わったんだと言うべきなのに、変わったにもかかわらず、変わってない変わってないと言って、実際は変わっている。こういうやり方が、最も国民に対する説明責任を、単に放棄したというよりも、逆に誤解をわざと生むような形で、理解を妨げるような形で対応しているのではないか。

明日予算委員会なので、そういったことも含めてきちんと対応したいと思っておりますけれども、いま明らかになった問題だけでも、その点については指摘をしておきたいと思っております。

ブッシュ大統領にYESとしか言えない日本の総理になってしまったのではないか

【代表】またイラクの復興支援についても、いくつかの発言があります。これは何と言うのですか、ブーツ・オンザ・グラウンドって言うのでしょうか、いろいろな言葉が出ておりますが、それについても小泉総理は、C-130という言葉を挙げて、いくつかの人道的な物資の輸送といったようなことを取り上げられているようであります。

これも外交での発言でありますから、内容がアバウトであるのは仕方ないとしても、一体どういうことをイメージしているのか、非常にわかりにくいことがあります。とくにいまイラクの情勢というのは、米英の占領下にある中で、イラク政府というものは存在しておりません。そうすると、日本がかかわる前には米英の占領軍に対して自分たちも何らかの役割を分担するという形で参加をするということになるのか、全然別の枠組みで国連の指揮の下で何かをするという枠組みになるのか、自衛隊派遣ということがしきりに言われておりますけれども、まったくどういう位置付けで物事が考えられているのか分からないまま、小泉総理の発言だけがトントンと動いているということであります。

その質問の準備のために、私もアフガニスタンの状況について改めて外務省に聞いておりますけれども、アフガニスタンの状況は、カブールだけは国際的な軍隊が入って治安が一定程度守られているけれども、カブールの外はそれぞれの軍閥が割拠している。つまりは統一的な安定した国とは程遠い状況になっております。

つまり9・11という問題からスタートしたある意味でのアメリカの軍事行動が、安定した社会・国をつくることによってテロの発生を防いでいくということが一つの方向性、大義名分であったとすれば、いまのアフガンの状態もタリバンはいなくなったといいましょうか、軍事的に倒されたわけでありますが、しかし一般的な意味でテロ組織ゲリラ組織が立場を変えて、あるいはそういうところに存在することをきちんと規制できるようなしっかりとした中央政府が出来ていない状況にあります。

ある意味でアフガニスタンとイラクはいろいろな条件は違いますが、しかし日本がもし自衛隊を派遣するということになれば、このアフガニスタンにおける情勢、さらにはイラクにおける情勢をしっかりと、民主党自身もですが、認識した中でどういう行動をとるべきかをやっていかなくてはならない。

ブッシュ大統領にいわばおだてられて、歓待してもらったから単にそれだけで物事を判断するということでは、まさにYESとしか言えない外交。誰かが、NOと言う日本、という本を書かれた方がいましたが、YESとしか言えない日本の総理になってしまうのではないか。

そういった意味で、明日の予算委員会では、そういった総理の発言が国民に対してきちっとした説明が必要だということを一つの軸にして議論してみたいと思っております。

りそな問題:自ら諮問をした総理が、どこの段階で破綻ではないと認定できたのか

【代表】りそなの問題についても、総理はいち早く破綻ではないんだ、金融危機ではないんだ、ということを言われました。しかし総理が金融危機対応会議に諮問をした中で、102条1項という項目を挙げて諮問をした。

最初から破綻ではないということを前提とした諮問を自らして、自らが議長の会議でそれを前提にスキームをつくり上げているわけです。一体どこの段階で、破綻ではないんだということを認定できたのか、いま債務超過であったのではないかという指摘がかなり強くされていますし、少なくとも直前まで監査をしていたあさひ監査法人の関係者は、明らかに債務超過であったということを明言いたしております。

こういう問題も、先ほどの外交とはまた別の意味で、自分の都合のいいところだけを取り上げて、諮問をし、やっていくという形では、私は日本の金融を根本的に改革することとは程遠いやり方だということも申し上げておきたいと思います。

<質疑応答>

小選挙区という仏に政権交代という魂を入れる国民運動を、行動に移していきたい

【記者】先ほどの代議士会でも言っていましたが、国民運動についてもう少し具体的なスケジュールなり、イメージがあれば教えていただきたい。また社民党との関係、選挙協力について今後どのように進めていくのか教えて下さい。

【代表】すべて表に出しておりませんが、この約半年間、1月の党大会で申し上げたあの時の表現で言えば、小泉デフレ阻止国民会議という表現をしましたが、幅広い国民会議というものを念頭に置いて、いろいろな方とお会いをしてまいりました。

たとえばこれは統一地方選挙がありましたが、その前後に田中康夫知事とか、あるいは浅野知事とか、あるいは橋本大二郎知事とか、あるいは前知事なども含めて、改革派とされる知事関係者あるいはその関係者ともお会いをして、意見交換をしてまいりました。

また経済界の皆さんとも、かなりいろいろな方と議論を重ね、場合によっては勉強会などの立ち上げもいま、準備をしております。また学者といった方についても、個別に何人かの方と意見交換をいたしております。

またちょっと分野は違いますが、先だってディーラーの仕事をしている比較的若い皆さんとの懇談もいたしましたが、あるいはベンチャーの皆さんとの懇談もいたしましたが、そういう若い世代で、しかし非常にマーケットや、そういういまの時代の変化に最も対応していう人たちとの連携と言いましょうか、意見交換もしてまいりました。

まだ具体的な形を申し上げる段階までは出来ておりませんが、私がイメージしている言い方で言えばですね、1993年のときに、一つは民間政治臨調といったものの中で、学者や経済界の皆さんが、日本の政治を変えるためにはやはり政権交代可能なシステム、小選挙区制の導入が必要だということが背景にあって、ああいう大きな変化、細川政権の誕生ということがあったわけでありますが、ある意味では小選挙区制を導入したけれども、この10年間、それによる政権交代がまだ出来ていない。仏をつくったけれども、政権交代という魂が入っていないという状況でありますから、そういう位置付けの中で、小選挙区という仏をつくったけれどもいよいよ魂を入れようじゃないか、いわば小選挙区に魂を入れる国民運動、こういう位置付けを一つ念頭に置いております。

これであれば改革派の知事の皆さんも、やはり分権を進めるには、いまの自民党と霞ヶ関の癒着の政権では、100年待ったって改革が進まないことは皆さんご承知でありますから、やはりその分権を一つの旗印にして、共同のマニフェストとして連携することも十分可能だと思っております。

また学者の中でも、まさに小選挙区導入に積極的だった人たちを中心に、それを生かした政権交代を実現すべきだという潜在的な意見が大変あちこちで強いですから、そういう皆さんも、幅広い位置付けの中であれば賛同いただける。経済界も同様であります。もちろん、労働界あるいは先ほど申し上げた若い世代のいろいろな活動をしている人たちも、いまの行き詰まりを打開するためには、私の言葉で言えば二つの政権交代、一つは自民党から民主党、一つは霞ヶ関から、ある意味で国民の本当の意味の代表が政権を握るということでありますので、先ほど申し上げたように、小選挙区という仏に政権交代という魂を入れる国民運動、あえてちょっと長い名前ですがそういう国民運動を念頭に置いて、いよいよある意味では表に出る形も含めて、行動に移していきたいと考えています。

それから社民党との話がありましたが、これもあまり前面に出る形では活動していませんが、水面下では若干の話をしておりまして、率直に申し上げて有事法制という問題では、わが党と社民党の意見はかなり違いますので、この問題が一定の、参議院における一定の議論が一つの結論が出た後に、もう少し本格的な形でのご相談をしていきたい。

その前の段階でも直接間接、あるいは地域ごといろいろな形で出来るところはすでに始めておりますが、進めていきたいと思っております。

また敢えて言えば、無所属の人というとあまり数がいないので、誰か誰かということになるので、これは言いにくいのですが、必ずしも自由党、社民党、民主党という党籍を持たない人の中でも、若干の連携を模索しようとしています。そのことも申し上げておきたいと思います。

結集軸になりうる政策づくりなど、作業を進める中で更に考えていきたい

【記者】いまの話に関連するのですが、政権交代する党として、野党結集を呼びかけるというか、政権の基軸となる政策づくりというのは、どういう場所というか、そういったところを想定されているのか、新たにそういう組織をつくるのか、それとも政党間で集まってやっていこうとお考えなのか、その点お聞かせ下さい。

【代表】率直に申し上げて、昨日自由党との話し合いの中で、これまでの話し合いに一つの区切りをつけて、これからの話し合いについては協力し合うということは確認しましたが、どういう場で、どういう形で、というところまでは、具体的なことはこれからということになっております。

そういうこともありますので、いますぐどういう場で何をするということを、必ずしも自由党以外の皆さんを含めて、いますぐここで申し上げる段階にはありません。しかし私のイメージで言えば、両面からだと思います。両面というのはどういうことかというと、民主党自身が、一つのそういう幅広い皆さんに対して結集軸になり得る政策を用意する。先ほど申し上げましたように、国の権限を限定するという考え方を、私、あるいは民主党は元々持っておりますから、こういう考え方をもうちょっと具体的な法案にでもすれば、あるいは改革派の知事の皆さんは、こういう法案で本当に分権化を進めるのであれば、自分たちもその法案については賛成だということを言っていただけるかもしれません。

たとえばそうなれば、政策といってもかなり大きな政策でありますが、その面での共闘ということがそこで形になってくる。ですから必ずしも集まって政策をつくるという形もありますけれども、場合によってはわが党、あるいは私自身が一つの考え方を打ち出す中で、それに連携していただけるのではないか。そこから話し合いを始めて、いやもうちょっとこうして欲しい、これがいいんじゃないか、という話にもっていく。いわゆる一つ一つの課題ごとにそういうことを積み上げながら、結果的にネットワークをつくっていくというやり方も十分にあり得る。ただやり方については、これから実際に話し合いを進める中、作業を進める中で更に考えながら進めていきたいと思っております。

鳩山前代表の常任幹事辞任の意向については、何も聞いていないし真意は分からない

【記者】自由党の合流問題に関連して、鳩山前代表が常任幹事の任を退きたいと意向を表明されましたが、それについて代表のお考えをお聞かせ下さい。

【代表】まだまったく聞いておりません。先ほどまで本会議場では隣に座っておりましたし、もちろん常任幹事会でも一緒に出席されておりましたし、終わった後も、いろいろお世話になりましたということを申し上げました。ただその席では何もおっしゃっておりませんでしたし、報道はそういうことを流しているということは聞いておりますが、直接的には私自身、ご本人からもあるいは誰かを通しても、報道以外では何も聞いていません。ですから真意は分かりません。

【記者】真意を含めて代表自身がお考えをただすということは?

【代表】そんなことはありません。政治家というのは自分の進退は自分の方から言うものであって、こちらから何かもしそういうことが、もし本当にあるのであれば何かおっしゃるでしょうし。先ほど最初に申し上げたように、一つの懸案事項が一つひとつクリアして、いよいよ前向きに進めていこうという段階ですから、そこは理解をしていただいていると私は思っております。

イラク新法:後方支援にしても本当に必要なのか、きちんと把握して判断していきたい

【記者】先ほどのイラク新法について代表から若干の発言があったのですが、小泉総理などからは、イラク新法は必要だという声が出ているわけですが、代表ご自身は必要かどうかどのようにお考えでしょうか。

【代表】イラク新法という表現は、あるいは総理がされているか、山崎さんがされているのかは、皆さんだけが知っているのでよく分かりませんが、少なくとも小泉総理のこの間からの発言からすると、治安維持をしている部隊の後方支援といったような感じで受け止められます。

つまり治安維持そのものは、まだ戦争状態にある、つまりイラクの中での占領軍への直接参加ということになりかねません。つまりはまだ小規模であっても、いろいろなフセイン政権下での部隊が残っているものに対しての治安維持の部分もありますから、単に泥棒だけじゃありませんので、そうするとそこはなかなかいろいろな法律の位置付けが難しいんだろうと思います。

そういうことを考えますと、小泉総理の発言を聞いておりますと、人道的物資輸送とかあるいは後方支援、後方支援というとそういう現在は大規模な戦争はないわけですから、そういう治安維持などにあたっている部隊の後方支援ということになるわけです。

そういうものがどういう形で本当に必要なのか、本当に望まれているのか、そういった問題をきちんと把握したなかで判断をしていきたい。ですからあまり最初から、イラク新法はいいとか悪いとか、最初から言うつもりはありません。何が本当にイラクにとって、あるいは国際社会にとって求められていて、その上で何がわが国がそれに対応できるのか、あるいはふさわしいのか、ということをきちんと見極めた中で、判断をしていきたい。

場合によってはわが党からもイラクに人を送ることも含めて、しっかりと見極めながら物事を進めていきたい。総理がブッシュさんの家で発言したことだけで、あまり振りまわされる必要はないと思っております。

会期延長問題:会期の間で国会を終えるのが原則だという考えで現在対応している

【記者】いまのイラク新法に関して会期延長を語られ始めていますが、この件に関して代表はどのようにお考えでしょうか。

【代表】わが党は基本的に会期が切れる、あるいは会期の中で、通常国会で議論すべきことは議論して会期を閉じるべき、というのが基本的な姿勢で、この国会に臨んでまいりました。そういった意味では、新たな課題がどうしても、という問題が提起された場合にどうするかというのは、その時点でまた判断をすることになるかと思いますが、少なくとも現時点では、この会期の問題は会期の間で終えるというのが原則だと、それを原則として現在対応しているという状況です。

編集/民主党役員室


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