2003年7月22日(火) | 戻る/ホーム/記者会見目次 |
菅 直人代表/定例記者会見要旨
■国会最終盤:役員会で、イラク支援法案の廃案を目指すことを確認
【代表】いよいよ国会も最終盤になってまいりました。今朝役員会を開きまして、最終盤に臨む民主党の姿勢を確認いたしました。参議院で審議が続いているイラク支援法案については、自衛隊を戦地に送るということは、もともと認められていない上に、この間のイラク情勢は、まさに組織的なゲリラ戦と司令官が表現しているように、戦地そのものである。いろいろと理屈をつけても、自衛隊を送ることは、米英軍への、いわば多国籍軍への参加ということになりますから、それを認めることはできない。その立場から、イラク支援法については廃案を目指して全力を挙げるということを確認いたしました。
現在参議院の質疑が続いておりますので、その質疑の経緯を見ながら、今後与党がどういう態度をとってくるかによって、それに対する対応も、まずは衆参両国対委員長と幹事長を中心として、対処していくということを決めたところであります。
■民主党は公設秘書の情報を公開:他党も同じ対応をとることを期待したい
【代表】もう一点、辻元清美前議員が逮捕されました。秘書の給与については、わが党もかつて山本譲司議員の問題で、大変厳しい形での、いわば経験をいたしております。こういうことについて、みずからきちっと透明性の高い秘書給与の扱いをする、その第一歩として、わが党所属議員の公設秘書の公開をおこなったところであります。
家族といった続柄についても、併せて公表いたしました。そういった問題は、わが党ばかりではなく、できればすべての政党が同じような対応をとられることによって、こうした辻元前議員をはじめ、先ほど申し上げた山本元議員も含めて、そういうことの、国民の皆さんから見て不透明な秘書給与の扱いがされない、いわば自浄作用を、より図っていくべきだ。そういう意味で、他党にも同じような扱いをされることを期待したい、みずからの秘書の公開をすることを期待したいと思っております。
■9回目の総理との討論:国民の皆さんへ判断材料を提供できたのは一つの成果
【代表】小泉総理がいろいろな発言をされておりますけれども、先週の予算委員会で私は、あわせて9回目の予算委員会ないしは党首討論をおこなったわけであります。率直に申し上げて小泉総理は、総理大臣という立場で答弁をほとんどしない総理であります。典型的なのは、大量破壊兵器があると断定したのはどういう根拠ですか、と何度聞いても、それこそフセイン大統領の話を出してごまかしてしまうとか、そういった点で今回も、ある新聞の表現をいろいろ批判されていますが、とにかく小泉総理というのは、常に抵抗勢力対小泉総理という絵を繰り返し繰り返し訴えて、小泉総理頑張ってるんじゃないのと、抵抗勢力に囲まれて頑張っているという、このこと一つで支持率を維持しているわけです。
しかし言い換えれば、抵抗勢力というのは誰のことかと言えば、みずからの党、自民党の中の議員のことでありまして、つまりみずからの党もまとめきれないことを、本来ならそれは総理としての責任であるはずのことが、逆にそういう抵抗勢力にけなげに戦っている小泉総理という絵にしてしまうところに、私は小泉総理の、ある意味で天才的なずるさがあると思います。
その天才的なずるさも、少しずつ国民の皆さんにも見えてきた結果が、小泉総理への支持率の微妙な低下につながっているのではないか。もともと積極的な支持の小さい総理ですから、そういうずるさが国民の目に見えるようになれば、私はもっと総理大臣として何も出来ていない、ただ言い訳をうまくする総理という形で、支持率が更に低下していくことは十分あるのではないかと見ております。
そういったことで、先週の予算委員会の議論は、私からすれば、そういう問題も含めて国民の皆さんに判断してもらうための、いわば判断材料を提供する。そういう意味では一つの成果があったのかな、とこのように評価をしております。
■九州の水害:土石流による被災者の方々にお見舞いを申し上げたい
【代表】九州の熊本、鹿児島、長崎で、大変な雨で、土石流などで多くの方々が亡くなったり、行方不明になっております。皆さんに対するお見舞いを申し上げたいと思います。この問題も、これから災害特などで、なぜ危険地域というものがある程度分かっていながら対策をとらなかったのか、といった問題も、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。
<質疑応答>
■イラク支援法案の是非を国民の皆さんに問う解散・総選挙は、是非やってもらいたい
【記者】昨日、自民党の中川国対委員長が、野党側が内閣不信任決議案を提出すると言ったことについて、大義がないと批判した上で、イラク支援法案が成立しない事態になれば国民の審判を仰ぐことになることもあり得る、という発言がありましたが、それについてのご所見は。
【代表】イラクについて、本当にこういう、なんと言いましょうか、戦闘地域・非戦闘地域といったフィクション・架空の区分けをして自衛隊を戦地に送るということを、まさに国民の皆さんに問うという意味での解散・総選挙は、是非やってもらいたいと思っております。
つまりはいまの中川国対委員長の発言は、自己矛盾しているわけでありまして、まさにその問題を含めて、この2年間の経済失政とあわせて、小泉総理に対して内閣不信任案を準備していることは事実であります。つまりは経済有事を解決できない小泉総理、そしてイラクの戦地に自衛隊を送りこもうとしている小泉総理、これをそのまま政権の座に置くのか、それともしっかりした本当の意味で強い日本をつくろうとしている民主党に政権を任せるのか、まさにそのはっきりした想定の中で解散・総選挙がおこなわれ、国民の手で政治的・政策的な選択をおこなわれることが望ましいと思っています。
そういった意味では、中川国対委員長には大いにそういった方向でやってもらいたい、敢えて言えばそのように申し上げたいと思います。
■イラク支援法案を廃案に追い込む:手段については幹事長・衆参国対委員長の判断
【記者】民主党としても、徹底的にイラク支援法案を廃案に追い込むというような話が確認されていると思いますが、徹底的にという意味には、内閣不信任だけにでなく、その他閣僚の問責、あらゆる手段を尽くすというようなことを、代表もお考えなのかどうか、その辺りをお聞かせ下さい。
【代表】先ほど申し上げましたように、基本的な方針は今朝の役員会で確認して、具体的な戦略・戦術については、現場の皆さんの判断、それを受けての衆参国対委員長の判断、あるいは幹事長の判断といった皆さんに、基本的にはまずは判断をお預けをしております。
そういった中にいろいろな可能性はあると思います。とくにイラク支援法案については、事実上外務大臣と防衛庁長官という二人の責任者がいるわけでありますから、そういう皆さんが審議の中で十分な答弁もしないのに強行しようとすれば、そういう皆さんの責任という問題も浮上してくるわけで、そういう可能性も含めて、現在のところ幹事長以下の皆さんにそれぞれ検討し、行動していただくようにお願いしているところです。
■高木金融庁長官を告発の方向:やり方がいかにおかしいか、国民に伝えたい
【記者】金融庁の高木長官を告発するという話がありますが、それはいつ頃を予定していますか。また3年前、代表が政調会長のときに、青木元官房長官を告発したと思うのですが、それが問題なかったという結論が出て、今回ももし告訴して、また問題なかったということになったら、その後はどのようにするのでしょうか。
【代表】何年か前のことをよく覚えていらして、私もいま思い出していたのですが、確か五人組が森政権をつくったときに、その時点の総理である小渕総理に会って、こういう話を聞いたという当時の青木官房長官の発言が、状況的な証拠からすれば、小渕さんがそこまで話ができない病状にあったにもかかわらず、うんうんと言ったということで、いわば総理辞任をご本人が認めたという扱いをしたことについて、公文書偽造だったか、私文書偽造だったか忘れましたが、告訴した覚えがあります。
今回の場合は若干性格が違いますが、いわゆる金融庁長官が局長時代、行政手続法違反ということで、国会での議論だけでは不十分ということで、現在告発をする方向で詰めております。近々告発をするというふうに政調会長から報告を受けています。
その告発が取り上げられなかったときにどうするかというところまで、今の段階で決めているわけではありません。まずは告発をすることで、高木現長官のこの間のやり方がいかにおかしいかということを、しっかりと国民の皆さんに伝えたいということも一つの目的であるわけですから、そういう意味では告発した結果も重要ですが、告発するということ自体が一つの重要性をもっていると考えます。
■辻元前議員の逮捕:土井党首を含めて、状況の推移を注意深く見守りたい
【記者】辻元前議員の逮捕に関連してですが、社民党との選挙協力ということに影響もあるのではないかと思いますが、その点は今後どういう形で取り組んでいかれるか、という代表のお考えをお聞かせ下さい。
【代表】これは別の機会にも答えていますが、社民党との選挙協力は、努力はこの間しておりますが、なかなか正規の話し合いの場ができるというところまでは至っておりませんでした。そういう中で今回のような展開になってきまして、ある意味では社民党の皆さんのほうも、しばらくはそういうことに対応できる状況にはないのが現実のようでありますし、私たちのほうもこの段階でいますぐどうする、こうするということを言うべき状況ではないだろう。
そういう点では辻元さんを巡る状況がどういうふうに推移するのか、あるいは土井党首を巡る状況がどのように推移するのか、注意深く見守っていきたいというのが基本的な姿勢です。
■世論調査で与野党拮抗:期待のもてる状況がだんだん生まれてきている
【記者】週末の朝日新聞社の世論調査で、「いま総選挙があったら与党・野党どちらに投票するか」という質問に対して、与党が37%、野党が37%という状況になりました。とくに無党派層に限った場合には、与党19%、野党42%という結果が出ています。今後総選挙に向けて、マニフェストなど戦略を描かれていると思いますが、今回のこの結果をどのようにとらえていますか。
【代表】私は一つには、いまマニフェストという言葉も出ましたが、先ほど申し上げたことと重なりますが、小泉総理対抵抗勢力という構造が、国民の目から見て、かつては拍手をする、抵抗勢力に囲まれた小泉さんが頑張っている、じゃあもっと頑張ってもらいたい、という拍手をする対象であったのが、よく考えてみると、小泉さんは抵抗勢力のおかげで支持率を保っていて何もできないのは、すべて抵抗勢力、あるいは野党のせいにしているというところが、私は国民の皆さんにだんだん見えてきた結果が、一つはこういう数字に表れているのではないか。
もちろんイラクの厳しい状況の中で、そこに自衛隊を派遣するということに対する、心配を含めた批判もそれに合わさっているのではないかと思います。そういう点で私たちとしては、まさに政権政策、マニフェストというのは、抵抗勢力と小泉総理が一致した形で政策を出すのが政権政策ですから、そうすれば小泉マジックの、いわばネタ元がなくなるわけですから、そのことをしっかり政権政策を出すように、先日の予算委員会でも申し上げたら、出すような方向のことを言われていましたので、その方向で小泉総理、そして民主党とが、政権を巡っての選択を国民の皆さんにしてもらう。
37対37というのは私たちにとっては、大変ある意味で心強いというか、期待の持てる状況がだんだん生まれてきていると受け止めています。
■イラク支援法案を通すことは、わが国・国民・自衛隊それぞれに対し責任ある態度ではない
【記者】イラク法案対応で、衆議院段階で修正案の方向で粛々と採決をしたと思うのですが、参議院では、一転廃案に追い込むという強い姿勢で臨むということですが、それはなぜですか。
【代表】修正案というのは、委員会の場合には、修正案の採決もあるわけです。ですから粛々であるかないかは別として、修正案を出した当事者が、修正案の採決をボイコットするなんてことは通常はあり得ません。
そういう意味で、特別委員会での審議がかなり進んだ中で、修正案を出して政府案には反対だということも明確に示した中で、採決に応じたというのが衆議院の経過です。ですから必ずしも衆議院で修正案を出したから反対が弱かったと、私は必ずもそうは思っていません。
参議院における審議は、修正案というのは、今回は衆議院で一つの政治的な形で行動しましたので、改めては出していません。それに加えて衆議院段階から、私たちが問題にしていた、いわゆるイラクの米英の武力攻撃を支持した根拠そのものが、ある意味ではアメリカやイギリスでさえ大変問題視されている。とくにイギリスでは、先日ブレア首相が来日されましたけれども、政府高官が自殺をするということまで含めて、情報をねじ曲げて国民に伝えたのではないか、大変厳しい状況がブレア首相の周辺で、ブレア首相に対してかかっております。
小泉総理も、基本的には共通の矛盾というか問題を抱えている。つまり国民に対する間違った情報を伝達した。大量破壊兵器が存在すると言いながら、いまなお見つかっていないし、存在するという根拠を今なお明らかにすることができない。そういう意味では同じ状況になっています。
それに加えて、これも衆議院の段階から議論してきた、いわゆる戦闘地域と非戦闘地域という区分が、実態的なイラクの情勢の中でも、誰もがそんな区分なんていうのはあり得ない。わが党の視察団が、すでに従来からそのことを指摘してきたわけです。とくにその後の状況の、ある意味の悪化によって、そんなことがあり得る話ではないということが明確になってきた。
そういった意味では衆議院の段階以上に、イラク情勢が我々が心配していることそのものだということがはっきりしてきた。こういったことも含めて、わが党としては従来から反対という姿勢は明確にしていましたが、この法案を通すことは、わが国にとって、あるいは国民にとって、そして自衛隊の皆さんにとっても、責任ある態度ではないことは、改めて強く感じておりますので、そういう意味から廃案ということを確認して行動してきたということです。
編集/民主党役員室
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