2003年8月26日(火) | 戻る/ホーム/記者会見目次 |
菅 直人代表/定例記者会見要旨
■わが党の代議士だった上田埼玉県知事候補に対して、精一杯の応援をしていく
【代表】今日は先ほど、埼玉県の知事候補の上田候補に、私と小沢党首と揃って応援に出かけてまいりました。今回の知事選挙は正式な推薦という形はとっておりませんが、直前までわが党の代議士でありました上田清司さんに対して、党として多くの人が友情応援という形をとっております。
私ももちろん一緒の党で苦労を共にした仲でもありますし、かなりそれ以前からも個人的な付き合いのある上田清司さんでありましたので、応援に出かけました。小沢党首と揃って行けたということで、ある意味では、改革を進めようという上田清司候補の考え方と、国政において改革を進めようという小沢党首や私の考え方と、それをダブらせた形で県民の皆さんに訴えることができたと。あと1週間足らずでありますが、私たちも精一杯の応援をしていきたいと思っております。
■政策を実行する権限をもつ総理が、自らの約束を実行していないのは大変なこと
【代表】最近の報道の中で、アメリカのブッシュ大統領に対する再選支持という、国民の支持率が、不支持のほうが上回ったというニュースが届いております。やはりアメリカという国は大統領のやったこと、あるいは言ったことに対して、厳しい目をもってきちっと判断しているんだなと感じたところです。つまりは、イラクを民主化していくんだという、いわば大量破壊兵器が見つかっていない中での大義名分が、実質的には挫折してきているわけでありまして、それに対して大統領が言ったり約束したりすることが、必ずしもうまくいってないということで、アメリカ国民の支持が相当離れているということだと思います。
翻ってわが国を見てみますと、総理が言ったり約束したりしたことは何一つ実現されていないわけですし、多くの国民もそのことは知っているんですけれども、どういうわけか、それと支持率の関係が必ずしも連動していない。政策は実行しない、約束は守らない、しかし小泉さんはいい人だと、そんな感じの支持率の傾向が出ております。
やはりこれはメディアの皆さんにもお願いしたいのですが、政治家、とくに総理といった責任ある立場にいる人は、政策を実行する権限も持っているわけですから、野党とは違うわけですから、その立場にある人が言ったことができていないということに対しては、それこそ大したことはないわけではなくて、大変なことなのですから、そこをしっかりとメディアのほうも国民に伝えていただきたいし、また国民の皆さんも、そういう目で政治家を判断していただきたい。
とくにこのアメリカの、いわば大統領に対する再選の不支持が支持を上回ったというニュースを聞いて、そのことを感じたところであります。
■総理の唐突な憲法発言:総裁再選のため見え透いた形で話題が出されている
【代表】また、やや唐突に総理が、憲法についての発言をしております。2年前も靖国問題で、8月15日に参拝すると言って、自民党の中のいわばそういう考え方を持っている人たちにアピールしようとしたわけですけれども、結果的には自らの約束を破ったわけです。
今回の発言はどうもはっきりしませんけれども、山崎さんが提起したとも言われておりますが、いずれにしても、なにか総裁再選のためにはなんだって使うんだという、あまりにも見え透いた形で話題が出されているのではないか。本当にこういう問題に取り組むのであれば、当然ながらそれなりにしっかりした一つの議論の土台が必要なわけでありますけれども、そういうものがきわめてこう軽い形で出てくるところに、小泉総理のいわばまやかしというものが、率直に言って透けて見えるような感じがしております。
■六ヶ国協議:核開発・拉致問題について、しっかりした協議をやってもらいたい
【代表】最後に、六ヶ国協議がいよいよ始まります。私は当初から、とくに日本とアメリカと韓国は、一つの包括的なワンパッケージの提案をしたらどうかということを、ノ・ムヒョン大統領や或いは中国の首脳と会ったときにも申し上げてきました。
今回必ずしも、日本、アメリカ、韓国が、きちっと揃った形の提案という形に十分にはならなかったと言いますか、とくに拉致問題を含めた共通提案という形に、果たしてなっているのかなっていないのか。つまりは、日本として主張するのは当然でありますが、三国としての共通提案ということに必ずしもなっていないところがありまして、やはりある意味で、それを仲介する立場にある中国などとの、しっかりした連携というか、話し合いというものが、どこまでできていたのかなと、若干の危惧の念をもっております。
いずれにいたしましてもこの六ヶ国会議で、わが国としては、核兵器の開発を永久的に断念させる。同時に、拉致問題に対しての徹底的な究明、というこの二つを、ある意味では、北朝鮮に対しての、他の五ヶ国の主張として、きちっと提起をできるのかどうか。五ヶ国と申し上げましたが、少なくとも日本、アメリカ、韓国の三ヶ国の共通の、いわばその二つのことがなされたときにはこうしましょうという包括的な提案にきちっとすることができたのかどうか、あるいはできているのかどうか。
今申し上げたように、若干の危惧の念を持っておりますけれども、しかし協議はこれから始まるわけですから、そういう私たちの考え方をも含めて、しっかりした協議をやってもらいたい、このことを申し上げておきたいと思います。
<質疑応答>
■民主党は憲法を不磨の大典とは見ず、大いに議論をする「論憲」の立場をとる
【記者】首相の憲法改正発言についてお伺いします。小泉首相が憲法改正案をまとめるということについて、その真偽は定かではありませんが、改めて代表はこの言葉をどういうふうに受け止められたのか。また民主党としての今後の取組みについてですが、党内には改憲・論憲・創憲という言葉が憲法調査会を中心に出てきておりますが、今後マニフェストの絡みも含めて、その点はどのようにお考えでしょうか。
【代表】今申し上げたように、総理がどういう場面でどういう表現をしたのか、必ずしも私には報道しか知りませんので、明確ではありません。いずれにしても、小泉総理がもしこういう問題をきちっと取り上げるのであれば、もう少しきちっとした形での取り上げ方が必要なのではないでしょうか。
ややその場で思いついたような話で、何かこう無責任な形の、ある種のアピールをしようということだとすれば、総理としてあまりにも軽い行動・発言ではないかと、はっきりしないこと自体が、そういう意味では非常に軽い発言ではないかと思っております。
民主党としては、憲法というのは不磨の大典というふうには見ておりません。大いに議論していこうと。私の言い方をすれば、明治憲法も、敗戦まで一度も改正がおこなわれませんでした。戦後の憲法も、できてから一度も改正をおこなっておりません。
やはり憲法改正ができるということは、ある意味での民主主義の強さだと思っています。そういう意味では、しっかりとした議論をした上で、時代に合わなくなった問題や新たな問題、そういった問題で取り組むべきものがあれば、それは民主的な手続きの中で取り組めばいいと、基本的にはそう思っていますが、現時点では大いに議論をする、「論憲」という立場をわが党としてはとっております。
党内にも憲法調査会を持っておりますし、もちろん国会でもあるわけでありまして、そういったところには積極的に参加をして議論をしていくというのが、現在のわが党の立場であります。
■道路公団問題は、民営化か廃止か、この二つを比較して大いに議論して欲しい
【記者】代表は雑誌論文、HP、演説等で高速道路の無料化ということを繰り返し検討課題としておっしゃっていますが、その財源について、道路財源について、そのうちのおそらくガソリン税等の道路特定財源を、一般財源化するかどうかは別として、無料化のための財源に充てていくというスキームのように理解しているのですが、その場合、道路をどんどんつくり続けるという現状に比べての一つの選択肢にはなり得るとは思うのですが、仮におよそ2兆円とも推定されるそういう財源を、高速道路の無料化のために使うという選択肢が、他と比較考量の上で検討されておられるのかどうか。具体的にはその2兆円を、高速道路無料化のためではなくて、社会保障、或いは菅代表ご自身が「改革政権準備完了」という著書の中で書いておられるような、循環型の社会をつくっていくための政策に充てていくという、他の選択肢もあるのではないかと思うのですが、その中でわりと高速道路無料化というのが突出して語られている、その背後にある比較考量というのはどのように考えておられるのか。
それと付随して、道路特定財源を一般財源化するか、しないかという議論も関わってくるのですが、そこはやや捨象して、高速道路を無料化するという議論、それ自体が含んでいる大きな転換の要素と言いますか、税金で全て高速道路をつくるという前提であればできなかったような高速道路もできているわけで、それも含めて無料化するということになれば、それは税金でつくるべきでなかった道路も、税金でつくったものと同じように扱う、つまり税で債務を返済していくということになってしまって、これが民主党が自民党の公共事業政策を批判している視点からすると、何か逆のベクトルのように思ってならないのですが。あるいは道路特定財源を道路の建設のためではないとしても、道路の無料化のために未来永劫とは言えませんが、中長期的にそこに張りつけていくということは、他の財源への一般財源化という流れとは逆ではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
【代表】大変、私がしゃべりたいことをたくさん聞いていただいたので、どこまでたくさんしゃべっていいのか分かりませんが、まず原則的なことを確認しておきますと、道路はほとんどの場合、もともとは税金でつくっていたわけです。高速道路をつくる時点では、道路財源が必ずしも十分にない、あるいは道路特定財源にあたるものも、まだ車がそんなに走っていませんでしたから、まだそうたくさんない時期に、ある意味では本来の道路のつくり方とは例外的な形で、いわゆる高速道路公団をつくって料金を取ったわけです。
その上で、もうご存知だと思いますが、今の法律でも、受益者負担という言葉を言っている方もありますが、まさにその道路を使う人の費用でつくって、それで償還が終わったら無料にするというのが、いまでも法の原則になっているわけです。
ですから、いまの質問の中で、やや私の言っているほうが原則に反しているのではなくて、いまの実態のほうが原則に反しているのであって、もともとは例えば東名とか名神が、とっくに償還が終わっているわけですから、それは無料にすべきだったわけです。それをいわゆるプール方式という形で延々と新たな高速道路をつくる建設費に充てる。これは二重の意味で大問題なのです。
ご承知のように、この充て方は、税金でないために国会を通りません。事実上、審議会はありますけれども、行政の決定で、この膨大なお金が自由に高速道路建設に充てられるという意味からも大問題、つまり民主主義の手続きからしても大問題であります。それに加えて、まさにその結果、膨大な借金を公団が持ちながら、実はそれがある意味では、本来の償還、受益者負担を超えて、東京・大阪で走っている人が、九州・北海道の費用を出すということになっていないはずなのに、そこにいわばそこに法律を捻じ曲げた形で、どんどん拡大したことによって、ある意味で膨大な借金が発生をしているにも関わらず、それに国民・国会が発言すらできない。
重なりますけれども、そういう状況になっているのはご存知のとおりです。そういった意味で私は、道路公団を見直しするという考え方は賛成でありまして、ある時期にそれを民営化するという議論も含めて、大いに議論すべきだと思っております。
その上で言えば、私もこの間、いろいろな皆さんの意見を聞く中で、或いは自分なりに勉強する中で、やはり原則に戻すべきではないか。高速道路というのは自動車専用道という意味ですから、別に特別な、普通の道路と違うことはないわけですから、逆に言えば、一般の自動車専用の国道に戻すことは、何も問題はないと考えます。
それに加えて言えば、その費用の2兆円を、他のものとの勘案でという話がありましたが、実は何が現実に起きているか、私も全国を歩いていますからよく分かります。たとえば岡山あたりでは、2号線がものすごい混んでいるわけですね。高速道路のほうは出入り口も少ないし料金も高いから、わりとガラガラなんです。そこで何が起きているかというと、山陽道に沿って並行しているにも関わらず、バイパスをつくってくれという要求が出ています。これは東北のほうでも同じような要求が出ています。
つまりは高速道路を使わないで、そして一般道がある中で、更にバイパスをつくってくれと。つまり道路そのものが、ある意味ではせっかくつくった道路を使わないでおいて、新たにつくる、そこに財源をもっと使っていく。そう考えますと、道路という範疇の中だけでも、高速道路を、いわば料金という形で無料化することが、どのようなプラスになるか、そこが一番、私のこの問題を提起しているポイントです。
つまりは、自動車専用道路に料金徴収を止めれば、アメリカなどでは3キロ平均で出入り口がありますが、日本は13キロから14キロです。もっと出入り口をたくさんつくって、そして県の計画と、或いは地域の計画と連動すれば、そんなバイパスは必要ないじゃないか。では高速道路と一般道と、それにどういうふうなリンクをさせればいいか、地域の活用がもっともっとできるようになります。
そういう意味で本四架橋も、或いはアクアラインも含めて、膨大な金を使ってそういう橋をつくったこと、トンネルをつくったことが、良かった悪かったは、これはありますが、つくってしまったものを使わないでタンスに入れてしまっておく、箱に入れてしまっておくというのは、国民経済的に言えば最も政策的に見ればまずい政策だ。活用する中で、活かしていったほうがいい。これは言うまでもありませんが、高速道路の料金というのは、受益者負担といっても、その受益というのは、そこで走っているトラックのいわば運送料、それはそのトラックで例えば食べ物が運ばれるとすれば、その消費者にも負担はかかっているわけですから、決して狭い意味の負担ということではありません。
国民全体がある意味では負担をしているとも言えるわけでありますから、そういうことを考えたときに、同じ道路という範疇の中で、現在の道路特定財源の一部をそれに充てて、残ったものを、一つの考え方ですが、場合によったら将来は地方の補助金という形をとらないで、ある種の道路に優先した自主財源という形で提供して、もし使って余ったら、他の問題にも使ってもらってけっこうですよと。そうすればいまの道路特定財源といわれるものの中で、いまの高速道路が無料になるだけでなくて、もっと効率のよい道路ネットワークがつくられる。今メチャクチャに道路の建設費は高いわけですから、談合や天下り先の保護のために高いわけですから、私は2兆円をそれから別の償還に充てたとしても、残ったお金でも十分に量的には、建設費に回すことが可能だと思っています。
言えばもっともっとありますが、大いにどちらがより好ましい制度か、比較考量していただきたい。あえて言えば、民営化というのは、道路の有料化の永久化です。今までは少なくとも30年後か50年後かは別として、一応償還が終わったら無料化ということが建前になっておりましたが、民営化ということは永久化です。
今日のある新聞の欄を見ておりましたら、田中昭一さんは私も知らない人ではありませんけれども、無料化という言い方はやめないんだ、無料化ということを言わなくなったら固定資産税をとられるから、無料化という言い方はやめないけれども、実際には無料化なんてことはできっこない、なんてことを民営化推進論者が言っているのも、本質的矛盾があります。ですから私は小泉総理と、最終的にマニフェストに盛りこむつもりですが、公団民営化と公団廃止、公団民営化イコール料金有料永久化と、料金無料化、つまりこれはワン・パッケージですから、民営化イコール永久有料化か、公団廃止イコール料金無料化か、この二つを大いに比較して議論していただきたい。
それは国民経済的に、地域の活性化のために、どちらか役立つか、大いに議論していただきたいと思っております。
■自民党総裁選:党内が政策的にも一致しておらず、政権政党の体をなしていない
【記者】自民党総裁選の件で、堀内さんは出馬しないということになりましたが、総裁選について感想があればお願いします。
【代表】あまり野党の党首の立場で自民党の総裁選のコメンテーターをするのは控えたほうがいいと、何人かの人から言われているので、あまり深入りした話はしたくないのですけれども、自民党がいかにバラバラかということがよく分かってきているのではないでしょうか。大いに皆さん方も政策的にどういうことなのか、人柄がどうとかいう話を超えて、先日もちょっと見ておりましたら、高村さんが30兆円の国債の枠をやったらどうだこうだと、いろいろ言われておりました。
自民党の中では、政策的にはほとんど一致しておりません。一致しない上に、小泉さんが言っていることも実行されていない。そういう意味では、今や、政権政党としての体をなしていないということが、この総裁選を通して、私などには非常によく見えてきているのですけれども、それが敢えて言えば私の感想です。
■社民党とは、今の政権を倒すということで協力するという基本原則は変わっていない
【記者】社民党との関係についてお伺いします。社民党と民主党との選挙協力が進んでいますが、社民党のほうからは、どんどん民主党の公認候補にぶつけているような感もします。こういうものがどんどん進めば、信義に基づいた選挙協力というのがご破算になりかねないという懸念もあると思うのですが、その点について代表はどのように受け止めていらっしゃいますか。また連立協議についてですが、選挙協力の前提ということでは、連立協議というのがあるかとは思うのですが、社民党との一致点というのはどこの部分だとお考えでしょうか。
【代表】選挙協力の話し合いは、選対委員長を中心にいろいろ努力していただいておりまして、ある程度県単位で進んだところ、あるいは県単位で対象にならない県について、新たに立候補を決められてバッティングが増えているところなど、いろいろあります。
原則的なことを申し上げますと、いろいろな機会に、直接或いはいろいろな大会などの挨拶で同席することも土井党首と多いのですけれども、いまの自民党政権、あるいは自公政権を倒したいんだと、そういう意味では野党が協力すべきだと、こういう姿勢を基本的にはとっておられるということを前提として、それならいろいろ与党に対して、場合によっては私たちが候補者を出すよりも、社民党の候補者のほうが小選挙区で勝てる可能性が高いという地域もありますから、そういうところについては協力しましょう、こういうことを申し上げているわけです。
ですから基本原則、つまりはいまの政権を倒すというところで協力しようという、基本的なところの姿勢があることが前提での協力であります。もしこれが、その基本のところがないということになりますと、議論のベースがなくなってしまいます。ですからそこは今、個々の問題でまだその基本のところは変わっていないというふうに、少なくとも思っておりますけれども、そこをしっかりと基本のところで共通するところがあるのかどうか、そこはしっかりと見定めていかなければならないと思っております。
連立協議の問題も、ある意味では共通でありますけれども、本当にいまの政権を倒して、連立政権をつくろうということがあることを前提にすれば、場合によっては議論をしなければいけませんが、選挙が終わってみたときに判断したいということであるならば、そういうことにならないわけで、選挙の前にそういう議論をするということは、協力して政権を倒そうということですから、その協力して政権を倒そうという姿勢がきちっとあることが前提にならなければならないわけです。そこだけはしっかりと見定めていかなければいけない。
今週末には中間的な形のとりまとめもおこなう予定になっておりますけれども、少しそのあたりを私からも確かめてみたいと思っております。
編集/民主党役員室
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