2003年10月30日(木) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○総選挙:選挙本番ということもあって、大変関心が高まってきている
高速道路無料化論:自民党は言葉の上でなく根拠を示して反論すべき
小選挙区での大きな変動があったときに、政権交代は実現する
マニフェストについて署名ももらっている民主党は、自民党と基本的に違う
投票は議会制民主主義を維持するための義務、全国民に投票に来てもらいたい
社会の安寧を保つためには入国管理をしっかりしたものにする必要がある
政権選択の選挙であり、投票率はかなり上がると予測し、期待している
北朝鮮への送金停止:わが党議員の審議も踏まえ、詰めた形で提起したい

■総選挙:選挙本番ということもあって、大変関心が高まってきている

【代表】選挙が始まりまして、3日目ということになりました。九州から中国、関西、そして今日、東京と入りましたが、選挙に入っていよいよ本番ということもあって、大変関心が高まってきているという感触を得ています。いよいよ良いたたかいになって、最後の10日間を迎えると思っています。

今日この後、本来は二つの番組で六党党首が出る予定になっていたわけですが、どういう理由か一つの番組が与党側の事情でキャンセルになったと聞いております。総理は党首討論でしたか、党首が出るべきときは必ず出ると約束されたわけですが、少なくとも私が断ったことはないわけですから、なぜ小泉党首が断られたのか、党首同士が出るところには出るという約束を、さっそくまた破られたのか、残された10日間でもありますから、出ることが約束だということは明確に申し上げておきたいと思います。

■高速道路無料化論:自民党は言葉の上でなく根拠を示して反論すべき

【代表】また藤井前道路公団総裁の問題で、わが党は参議院での質疑を求めているわけですが、藤井元総裁からいろいろな発言が出ているようです。たとえこれは国会が開かれていない、あるいは選挙がおこなわれているときであっても、まさに選挙の有権者の判断にも必要なわけですから、参議院での参考質疑を更に求めていきたいと思っています。

またこの3日間を通して、高速道路の無料化論に対して、小泉総理あるいは自民党側のきちんとした反論が聞こえなくなって、なにか言葉の上だけの反論になってきているということです。「タダほど高いものはない」とかそういう反論はありますが、あるいは青木さんが「できるはずがない」とか、そういう言葉もありますが、マニフェストというのは提案するほうもきちんと財源を示して期限を示すわけですから、反論するほうも、できないというのであったら、なぜできないのかという理由を挙げなければいけないわけでありまして、そういう点では、理由を挙げないで、できるはずがないとか、タダほど高いものはないとか、竹中大臣までもがそういうことを言っているようですが、根拠を示して反論を示してもらいたい。

また国土交通大臣は、一部料金の値下げを言っておりますが、どういう財源をそれに充てるのか、どういう見通しなのか、それもあわせて提案する必要があるのではないかということも触れておきたいと思います。

<質疑応答>

■小選挙区での大きな変動があったときに、政権交代は実現する

【記者】政権交代について一般的な話をおうかがいしたいのですが、最近菅さんがおっしゃる政権交代ができる国ということで、カナダでは155対2とか、かなり劇的な議席数の増減がありますが、政権交代が起きる条件というのはなんであるかということと、日本にいま何が足りないのかというのを端的にお答えいただきたいのですが。

【代表】それはなかなか難しい質問ですね。もちろん政権交代というのは、いまのルールで言えば、衆議院で過半数をとる勢力が変われば、特別国会の首班指名で、現総理が新しい党からの総理に選ばれるということです。

それが実現するためには、いわゆる小選挙区におけるところで相当程度の変化がなければならないと思っています。いまのカナダの例は、純粋小選挙区制だったことによって、きわめて一つの選挙で議席が劇的に変わったことが10年ほど前にあるわけですが、イギリスの場合は必ず保守党の選挙区と、必ず労働党が勝つ選挙区、その間に状況によって変わる選挙区が1/3ずつあって、140もあるところが2になるなんてことはイギリスではないわけですが、それでも一方が2/3持っていたのが1/3になって他方が1/3だったのが2/3になって、97年の選挙などはそういう劇的な変化でありました。

小選挙区という制度は、あるところを超えていくと、少なくともその程度の変化は起きる。2000年の選挙で民主党、当時の自由そして社民の比例を合わせた数が自公保の合わせた数よりも超えた選挙区が175ありました。

たとえば小選挙区の候補者がそのまま公認、そのまま出れば、野党90から175に変わることも理論的にはあり得るわけですから、逆に言えば与党210が135に変わることもあり得るわけですから、そういう点では質問に答えられているかどうか分かりませんが、小選挙区における大きな変動があったときに政権交代が実現すると思っています。

日本に何が足りないかというと、一つには公明党という政党が、どちらかというと与党に与党にというシフトをすることは、ある意味では政権交代を妨げる要素になっている。つまりは与党が失敗したときには野党に変わるというのが政権交代ですが、与党が失敗しても与党にいたいという人がその党を支持すると、なかなか変わりにくい状況になっています。

そういった意味で、公明党の与党志向というものを超えて、有権者の皆さんが判断してもらう。別の言い方をすれば100%の有権者の皆さんが投票に行っていただければ、間違いなく政権交代が可能であると思っています。

■マニフェストについて署名ももらっている民主党は、自民党と基本的に違う

【記者】マニフェストに関する国会議員のアンケートによると、個人の意見とマニフェストが異なった場合に、個人の意見を優先するという意見がかなりありまして、読売の調査でも、民主党の議員でも半分近くに上っています。それについてのご感想と、多少マニフェストとかけ離れた個人的な公約というものを許容するお考えがあるのかどうか、教えて下さい。

【代表】報道では見ましたけれども、少なくとも民主党のマニフェストについては候補者全員からその実現のために努力をするという署名をもらっています。ですからどういう設問で、どういう答えでいまの半数近くと出るのかわかりませんが、たとえばマニフェストに書かれていないこととか、多少幅があることとかについて、そういう表現が含まれているということはあり得ますが、少なくとも政治家候補者がきちんと自分の責任でサインをしてもらっているわけですから、基本的にはマニフェストの実現のために全候補者が同意したというのは、決して私たちの場合、なにか根拠なく言っていることではありませんので、ちょっとその数字は意味内容がよく私には分かりません。

それからあえて言えば、自由民主党の場合はまさにそういう手続きもとっていないし、しかも有力な人たちが基本的に、自民党のつまり小泉改革宣言をまったく相手にしていないというか、郵政事業について言えば、もっとも小泉さんが頼りにして再選した青木参議院幹事長は通さないと言っているわけですし、あるいは多くの衆議院候補もこの問題ではおそらく半分以上の人が、どちらかといえば積極的に反対ではないでしょうか。

そういう意味では私は、どっちもどっちというような意味での言い方にはならない、民主党はまさに署名を含めて原則的にマニフェスト実現にみんな同意した、自民党は原則的に同意していないと、基本的に違うのではないでしょうか。

■投票は議会制民主主義を維持するための義務、全国民に投票に来てもらいたい

【記者】埼玉補選があり、投票率が低かったそのことが次の選挙でもかなり大きな意味を持つと思うのですが、投票率の選挙に与える影響についてどのように思われているか。また民主党として民主党への投票への呼び掛けのほかに、何か選挙への関心を高めるような運動をするのか。あともう一つ、高速道路無料化について一番反論しているのが猪瀬さんだと思うのですが、猪瀬直樹さんと討論するとかそういうことを考えているのか、お聞かせ下さい。

【代表】投票率100%の場合、1億人の投票ということになります。10%違えば1千万人の投票が増えたり減ったりするわけですから、この影響はきわめて大きいと思っています。ですから私は投票権というのは権利であると同時に、議会制民主主義国としての制度を維持するための義務だと思っていますので、そういう意味からも全国民の皆さんに投票に来てもらいたいと思います。

投票に行ってもらうための手当てというのは、もちろん政党として支持を訴えることが結果的にはそうなるわけですが、たとえば韓国の大統領選挙では、最初の段階で若者たちがインターネットで知り合いに投票を呼び掛けたということも言われております。これは自発的な動きだったと理解していますが、そういう終盤における自発的なインターネットの運動が起きることも、日本では十分あり得るのではないかと期待しております。

猪瀬さんとの討論の件で、猪瀬さんが一番理論的に反論しているという話ですが、私も個人的には、多少というか、かなりの面識がありますし、わが党が参考にした意見をお持ちの山崎さんと猪瀬さんの間では、テレビや新聞を通して議論をされております。

先日私の出たシンポジウムでも猪瀬さんにも声をかけたと聞いておりますが、残念ながらその時は出てきていただいておりません。ですから、そういう機会があれば、どういう顔ぶれかは別として大いにやればいいと思っています。ただあえて言えば、猪瀬さんが言っておられることは、私たちの案に対する反論にはなっておりません。私に対して言われるのも、今ごろになって言うのはちょっと民営化の話がここまで進んできたときに言うのはおかしいんじゃないの、という方もおられますが、つまりは無料化論そのものを理論的に反論はされておりません。

つまりは9兆円の財源のうち、2兆円で償還できるじゃないかということに対して、できないという論点は何も言われておりません。ですから論理的な反論にはなっておりません。自分たちがこれだけ努力して民営化を進めようとしているのに、それが猪瀬さんからすれば、後から無料化論を持ち出してくるのは、自分たちの努力を無にすることになるんじゃないかという、そういう種類の話ですから、理論的ではありません。

それからあえて質問がありましたから言えば、報道によれば、選挙中というか投票日までに総理に対して3兆円ですか、高速道路の建設凍結を約束すべきだということを推進委員会が勧告したそうですが、少なくとも今日の報道によれば総理はそれを無視しております。

細かい中身は私から言う必要はないと思いますが、少なくとも猪瀬さんが当初月刊誌で言われていた趣旨の民営化の目標は、今年1月の予算の中で完全に否定されましたし、また更なる努力も少なくとも功を奏していない。つまり最初の彼の論文は、私もご本人と話をしましたが、第一の原則は国費を投入しない、そしていまの四公団の債務を民営化した中で全部返していくということを前提に、新たな建設については抑制するという構造になっていたわけです。

しかしこの1月にすでに本四架橋に国費が投入されました。それから道路公団だけがつくることになっていた高速道路の一般会計からの直轄事業で1300億の予算がつきました。つまりはもともと道路公団を民営化するということを目的としていたものが、すでに破綻したというのがこの1月の段階で、私は猪瀬さんに「あなたの言っていたことは良かったかもしれないけれど、現実は完全に破綻したのだから」ということを申し上げたこともあります。

■社会の安寧を保つためには入国管理をしっかりしたものにする必要がある

【記者】先ほどの外国記者プレスの質問の中で、日本に入ってこられる外国人の犯罪問題に関係して長期に滞在される方の出入国管理について若干言及されたと思いますが、街頭演説であったということもあり詳しいことはあまり分からないので、いま説明できる部分があればお話いただければと思います。またこの問題は追加のマニフェストに入れる予定があるのかどうか、その追加のマニフェストを出すタイミングがどのへんになるのかどうかもお聞かせ下さい。

【代表】いまもありましたように、在日外国人の問題ではありませんのでそこは気をつけてください。私が今日の街頭で申し上げたのは、まず外国人による、在日ではない、たとえば労働ビザとか就労ビザなどで入国した外国人の滞在者、あるいは不法滞在者も含めて、その犯罪が非常に増えている。福岡の4人の家族が殺されたのも、あれはおそらく就学ビザで来た者がやったということがかなり確実視されているようでありますが、そういう事件も出ております。

こういう問題をどのようにして解決するかというときに、どうしても入管の問題が浮かび上がってきます。今日の新聞でアメリカではテロリストの入国を抑えるために、指紋を使ったいわゆる入国管理の強化というか、そういうものを発表しておりました。ただ街頭でも申し上げましたが、私はあまり管理が強まるということは一般的には自由社会において決して好ましいことだとは思いませんけれども、やはりある程度、社会の安寧というかそういうものを保つためには入国管理をもう少ししっかりしたものにする必要があるのではないかと、そういう趣旨を街頭で申し上げたところです。

具体的にどうするべきかということについては、まだこれからの検討です。アメリカのシステムがどういう効果を持ち、人権に対してどういう弊害があるのかそういったことも、十分検討してみたいと思いますが、少なくとも一つのやり方としてアメリカが採用したということは検討に値するということを含めて街頭で述べさせてもらいました。現時点ではそれ以上でもそれ以下でもありません。

追加のマニフェストに盛り込む、盛りこまないも、まだ決めていません。追加のマニフェスト一般については、近く打合せをおこなうことにしておりまして、選挙が終わってからではマニフェストになりませんので、週明けのどこかの段階で出せるようにしたいと、私の考えではそんな段取りを考えています。

■政策立案能力・人柄・実行力のアンケートで、総理より上だったのは嬉しいこと

【記者】前衆議院議員にアンケートをおこなったところ、政策立案能力と人柄と決断力、実行力の3項目でアンケートをとったところそれを合わせた総合力で菅代表は2位になったのですが、その率直な感想をお聞かせ下さい。

【代表】もし可能なら1位と3位を教えてもらえませんか。

【記者】1位は小沢さん、3位は小泉さんでした。

【代表】小泉さんより一つ上だったのは大変嬉しいことだと思っています。

■政権選択の選挙であり、投票率はかなり上がると予測し、期待している

【記者】投票率の件でおうかがいしたいのですが、現段階での予想投票率がどの程度か、これに関連して政権交代が視界に入ってくる投票率というのはあると思うのですが、どのあたりになるのかということをお聞かせ下さい。

【代表】これは数字を言ってみてもせんないことでして、もっと激しくバトルとかドラマがあったほうが面白いですよね。私が初当選した1980年の選挙は、まさに与党が欠席をする中で不信任案が突然通って、そして選挙が始まってから時の総理の大平さんが亡くなるといういくつかの劇的なことがあって非常に高い投票率になりました。

今回はもともと政権選択という意味では私は投票率がかなり上がるのではないかと、予測というか期待をしているのですが、激しくやりあったほうがより国民の関心が高まるのではないでしょうか。ですから私自身少しおとなし過ぎるかなと思っております。

■北朝鮮への送金停止:わが党議員の審議も踏まえ、詰めた形で提起したい

【記者】追加のマニフェストですが、代表が以前記者会見の中で、北朝鮮問題、とくに拉致事件に関連して送金停止を盛り込みたいというお考えを述べられましたが、改めて具体的に教えていただけますでしょうか。

【代表】いま検討させていますが、私の理解するところでは、外為法と国連決議とがありまして、いわゆるテロ指定という問題がある。その指定をすればテロ団体とか、テロに関わる個人というものを指定すればテロに対する送金は現在の外為法で停止できるという仕組みになっていると理解しております。

わが党の浅尾参議院議員が6月の本会議でも代表質問でしたか質問いたしましたが、小泉総理は受け取りようによっては国は対象にならないというような受け取り方もできるような答弁で、やるとか、やらないとかは言っておりません。

しかし国でなくても個人名で送金の責任者をすれば、事実上同じことであるわけですから、そういった意味でこの問題は浅尾君だけではありませんが、わが党では何人かが従来から指摘をしてきたところであります。そういった意味で何か副作用的なことが起きるのかどうかも含めて検討させていますが、たとえばこれまでだと不法なという言葉を使いましたが、不適切な送金というものがおこなわれないように手続きをとることも必要なのではないか。

とくに拉致はテロであるという言い方を総理みずからしているわけですから、総理みずからしているということはそのテロをおこなった個人ないし団体に対して送金停止をするというのは、理論的にも自然なことで党としてはそういう考え方を大筋持って国会審議に臨んでおりましたので、それを少し詰めた形で提起していきたいというのが現状です。


編集/民主党役員室


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