2003年12月2日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○亡くなられたおふたりの外交官に、哀悼の意を捧げる
長妻議員の質問主意書への答弁書:非戦闘地域が存在する根拠は希薄
緊急の問題が山積、臨時国会を開いて国民に説明するのが総理の責任
国幹会議のあり方は、会議の中で民主党のメンバーに議論してもらう
自衛隊でなくとも危険な状況が拡大、文民派遣を慎重に考えるのは当然

■亡くなられたおふたりの外交官に、哀悼の意を捧げる

【代表】外務省のイラク駐在の外交官おふたりが亡くなられました。本当に残念なことであり、痛ましいことだと思っております。ご遺族の皆さんに弔意を表したいと思っております。私も今日、外務省にまいりまして、おふたりのご霊前で記帳し、哀悼の意を捧げてまいりました。

■長妻議員の質問主意書への答弁書:非戦闘地域が存在する根拠は希薄

【代表】このイラクの情勢について、わが党の長妻衆議院議員が質問主意書を提出しておりました。それに対する答弁書が来たようでありますが、今日午前の閣議で決まった質問主意書の答弁では、「主要な戦闘は終結したものの、同国内における戦闘が完全に終結したとは認められない状態にあると考えている」という表現になっているようであります。

つまりは戦闘が終結していない、少なくとも完全には終結していないということでありますから、返して言えば、戦闘状態が続いているということが、少なくとも一部であるか全部であるかは別として、認めたということになろうと思っております。

そういう点で、今後の自衛隊派遣について、いわゆるイラク特措法による非戦闘地域というものが存在するのかしないのか、この質問主意書の答弁書からも、ますます根拠が薄くなって、あるいはなくなりつつあると言わなければなりません。

■緊急の問題が山積、臨時国会を開いて国民に説明するのが総理の責任

この問題を含め、あるいは足利銀行の問題を含め、緊急の問題も山積しておりますし、もともと衆議院選挙が終わった後の国会で所信表明もしていない、選挙が終わってから、もし通常国会までといえば2ヶ月以上間があるわけでありますから、私たちとしてはそういった緊急な課題、更には所信表明という基本的なことをやるための臨時国会を求めてきております。

足利銀行に関する閉会中の審査はほぼ日程が決まったという報告を受けておりますが、イラク問題については、まだ日程も定かではありません。またこうした重要問題ですから、閉会中審査という形だけではなくて、正規の臨時国会を開いて国民にしっかりと説明をする。当然の総理大臣としての責任だと思っております。あいも変わらず、「いや、いつかしかるべきときに説明する」と言っているようですから、それでは民主主義国の総理としての、まさに適格性が疑われると言わなければなりません。

それに加えて、この間のぶら下がりなどでも申し上げていますが、テロに屈しないという言葉を総理はよく使います。あるいは官房長官もよく使います。もちろんテロに屈してはならないわけです。しかし屈しないということは、何をすることによって、それがテロに屈しないことになるのか。

もともとの目的は、テロというものをいかに少なくし、いかに抑え込んでいくかということは、9.11以降の目的であったわけです。結果的にはアフガンの戦争、あるいはイラクの戦争の結果、テロは縮小するどころか拡大しているわけで、拡大してきたテロに対して、テロに屈しないと言ってまた新たなことが更なるテロを生み出すということであれば、テロに屈しないと言っても、結果的にはテロをなくすことには失敗してきているわけです。

そういういわば情緒的な言葉で、もともとの目的、テロというものをなくすためにどうするかというその目的に、この間のアメリカのブッシュ政権のやり方が適切だったのか、それとも間違っていたのか。あるいは小泉総理の先制攻撃を支持したことが正しかったのか、間違っていたのか。更にはアメリカ大統領との間で事実上約束をした、つまりは自衛隊派遣を約束したその約束が、判断が間違っていなかったのか。その議論をすることが、まさにテロというものを抑えていく上で最も適切な行動が何であるかということを見出していく、少なくとも前提条件だと考えています。

そういった意味で、テロに屈しないという言葉によって、そうした原点に戻った議論そのものをいわば抑えこもうとするとすれば、そういうあり方に対してはきちっと反論していかなければならないと思っております。

■国幹会議のあり方は、会議の中で民主党のメンバーに議論してもらう

【代表】少し話が変わりますが、国幹会議の議員の任命が順次進んでおります。わが党衆議院からは岩國さんと阿久津さんが委員になりました。国幹会議というのは、ご承知の方はご承知でしょうが、いわゆる高速道路建設について、国会議員を含む審議会でその計画を立てるという審議会であります。

私はもともと国会議員がそういう審議会に入って、そしてその結論が出ると、国会を通らないで施工命令を出すというやり方に疑問を持っております。先日も岩國さんや阿久津さんと話をいたしまして、岩國さんのほうからも、国幹会議のあり方そのものについて国幹会議の中でも議論したいと言われておりましたし、私のほうも是非そうしてもらいたい。

つまりは国幹会議がこう決めたから、そして国幹会議には野党の議員もいるから、だから野党はそこで決まったことにいろいろ反論するのはおかしいんだという、国交省のそういうやり方、つまりはそのやり方そのものが、いまのような野放図な大きな借金を道路公団に生み出すことになっているわけですから、そういう意味では国幹会議そのものが本当に必要なのかどうかということも含めた議論を、少なくとも民主党から出たメンバーにはやってもらいたいし、あと私との話の中では、是非そうしたいというお話をいただいておりますので、そのこともご報告しておきたいと思います。


<質疑応答>

■自衛隊でなくとも危険な状況が拡大、文民派遣を慎重に考えるのは当然

【記者】(毎日)イラク問題について、外交官殺害事件を受けて、政府は文民派遣を見合わせるとの報道がありましたが、民主党はこれまで自衛隊の派遣には反対だけれども、文民派遣には比較的積極的な姿勢を見せていたのではないかと理解しているのですが、その点について現在でも同じかどうか、お考えをお聞かせ下さい。

【代表】文民の派遣と自衛隊の派遣というのは、安全か安全ではないかという議論とは別に、自衛隊というものの持つ、一つの憲法上の位置付け、あるいはある意味での国際的ないわば軍隊と見られるという意味の位置付け、そういうものと差があるわけで、そういう意味では私たちは必ずしも自衛隊派遣に反対するということと、文民の派遣について考えるということは、必ずしもどちらが良くてどちらが悪いという意味で言ってきたつもりはありません。

自衛隊については安全だから行っていい、仮に安全だとして、いまのような状況がもっと治安が解決したとしても、スジが通らないやり方については、私たちは反対をしてきたし、またすると思います。文民の問題は、それとは別に一般的な意味の人道支援については積極的に対応したいけれども、しかし治安が悪い状況の中でまさに文民、とくにNGOの皆さんは自発的な活動でありますから、その自発的な活動に対して当事者が大丈夫、安全だという判断のもとでやることには支援をすべきだと思いますが、危ない状況があれば、それは控えるようにアドバイスするのは当然のことだと思っています。

最近は韓国の技師や、もちろんわが国の大使館員も襲撃されたわけですから、自衛隊でなくても大変危険な状況が拡大しておりますので、そういう意味で文民の派遣を慎重に考えるというのは、ある意味当然のことだと思っております。

それから一点言い忘れましたが、イラクの大使館の警備についていろいろな発言が出ております。これは私もとくにイラクの大使館については大変心配なところがありまして、いまの法律上、とくに日本の警察官を派遣して警備することができないのであろうか、少し検討してみたいと思います。

自衛隊の場合は、先ほどから言っているように、自衛隊という特別な位置付けがありますけれども、警察の場合は、国内であれば少なくともある一定程度の武装をして警備をすることは認められているわけですから、イラクの日本大使館を警備することは、警察ならば私の理解では法律上そう問題はないのではないか。すぐにでもできる警備の強化としては、そういうことも検討したほうがいいのではないか。法律的な裏付けをちょっと調査するように、スタッフに指示をしました。

■比例で他党への投票を呼びかけたとされる問題は、幹事長による注意

【記者】(産経)先の衆議院選で、民主党の方が、比例区では公明党に入れてくれと言っていた問題に対する処分が、今日、常任幹事会で決まったと聞いているのですが、どなたに対してどんな処分だったかというのをお聞かせ下さい。

【代表】とりあえず常幹で報告がありましたので、そこで皆さんにも報告があったと思いますが、措置という、わが党の規約でいうと処分と措置が分かれていまして、措置の中で一番ある意味では軽いというか、幹事長による注意というように聞いております。私が報告を受けているのは3名です。東京10区の鮫島さんと、福岡の楢崎さんと松本さんと聞いています。

■人事:遅くとも来週には全体としての新しい体制をつくっていきたい

【記者】(東京)今日常幹で、代表のほうから、幹事長、政調会長、国対委員長、選対委員長を留任させる方向でいきたいというご発言がありましたが、今後どのような方向で形作っていくつもりでしょうか。また留任の理由についてお聞かせ下さい。

【代表】民主党の人事については、昨年の12月に改めて代表に選任されたときに、幹事長はじめ、それぞれの役職を私の責任で決められるものは決め、また幹事長が決めるべきものは相談して決め、今日に至っております。その中で、一つは自由党との合併という大きな出来事があり、一つは衆議院の選挙という大きな出来事があって、そういう意味では別に任期とかそういうことではありませんが、衆議院の選挙が終わったこの時点で、人事をどうするかということをやるべきだろうと思っておりました。

その中でご承知のように、自由党の前党首である小沢一郎さんについては代表代行、そして次の内閣の副総理ということをお引き受けいただくことが決まりまして、あわせて今日、常任幹事会の席で、その小沢さんのポストに加えて、いまお話がありましたように、岡田幹事長、枝野政調会長、野田国対委員長、赤松選対委員長について留任をいただくと、私の考え方を常幹にご報告をいたしました。

私の専権という形になっておりますので、決定と認識していただいて結構だと思います。更にこれからそういう皆さんとも相談しながら、若干の機構改革も含めて、できれば今週中、遅くとも来週のしかるべきときには、全体としての新しい体制をつくっていきたいと思っております。

留任の理由というような質問ですが、一つは自由党との合併の中で全体をどうするかという位置付けの中で、小沢さんに主要な役割を担っていただくことと同時に、この1年間、衆議院選挙を含めて、私としては幹事長をはじめそれぞれの役職の皆さんに頑張っていただきましたし、いい形の成果を得ていただいた。

半年あまりの間には参議院選挙もあるわけですから、いまここで大きく変えるよりも、骨格は維持しながら更に新たな力を加えて、より強力な体制をつくっていくことが望ましいという判断から、いま申し上げたようなところまで決めたということであります。

■役員会:民主的手続きと迅速な方針を出す、二つの要素を両立できる体制に

【記者】(共同)今日の常幹の中で役員会と常幹のあり方についてのご意見というのがあり、その中で役員会の中に副代表も入れるべきではないかという意見がありましたが、それについての代表のご意見をお聞かせ下さい。

【代表】これはとくに幹事長のほうから、常任幹事会でありましたので、いろいろな役職に就いておられる方、あるいは常任幹事会の幹事という役職そのものになるわけですが、次の新しい体制をつくるにあたって、この1年間で気が付いたこととか、意見があれば聞かせていただきたい、いろいろな意見を出していただきたいということで、その中にいま指摘のあったような意見を出された方もいました。

いろいろな意味で参考意見、検討材料にしたいと思っております。役員会の位置付けについては、一定程度の規約上の根拠もあるのですが、いろいろな時期によって国会についての議論、さらには国会だけではない議論もあり、人数もある程度少人数でやらなければ、常任幹事会と同じような大きな会議体になってしまうということもありましたので、この間は副代表の皆さんはメンバーとしては入っておられません。

単純に副代表の皆さん全部に入っていただくと、かなりの人数になってくるという問題もありまして、いろいろ考えなければいけないものですから、そういう意見があったことはしっかりと受け止めながら、どういう形が一番望ましいか、民主的な手続きと同時に迅速な方針を出していけるという二つの要素を両立できるような体制を考えていきたいと思っております。

■北朝鮮問題:日本独自でやれることはやり、米韓中ロとも協力すべき

【記者】(朝日)先ほどの常任幹事会で朝日新聞のインタビューについてご指摘がありました。確認をさせていただきたいのですが、北朝鮮問題においては過去の日本政府が事勿れ主義なことしかやってこなかった、であるから日本で独自に出来ることもあれば多国間でやることもあるんだ、というような理解でよろしいでしょうか。

【代表】その通りです。日本の拉致事件についても、かなり以前から警察などに対しての通報や、あるいは外務省に対しての指摘などがあったと聞いておりますが、必ずしもその当時警察や外務省が本格的に取り上げてこなかったわけです。また不審船の問題なども、かなり古くから指摘があったわけですが、近年に至るまでは必ずしもそれに対しても対応してきませんでした。

さらに言えば今回H2ロケットが失敗しましたが、私もある時期から情報衛星を持つべきではないかと、数年前でしたか、かなり以前から申し上げてきましたが、ある段階で情報衛星を打ち上げたわけですが、残念ながら今回追加の2基の情報衛星が打ち上げに失敗いたしました。こういう問題も、実は北朝鮮の状況を宇宙から監視するという、ある意味では核開発に対して最も有効な手段であります。

私がいまから10数年前、ある大学関係者から、北朝鮮の衛星写真を見たことがあります。民間でも運用している外国の衛星からでも、そういう写真が手に入る時代に、わが国はほとんどそういうことをやってこなかったという面もあります。言えばたくさんありますが、送金停止の問題もそうです。送金問題は相当以前から言われているにも関わらず、独自の判断では送金停止もできないような法律を放置してきた。

そういう意味で、日本が独自でやるべきこと、あるいはやれることがたくさんありながら、それをおろそかにし、そして一方ではアメリカとの関係は大変重要ですが、アメリカがなければ何もできないかのような対応については、私はまず日本が独自でできることはきちんとやった上で、そしてアメリカ、韓国、場合によっては中国、ロシアといった国々と、協力すべきことはもちろん協力してやらなければならない。そういう意味で申し上げたつもりです。


編集/民主党役員室


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