2003年12月16日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○フセイン元大統領拘束:大量破壊兵器の存在が証明されるかに注目
長野県による住基ネットへの侵入実験は、システムの問題点への警鐘
イラクの治安状況:今後も楽観できないし、それ以上の判断材料もない
来年の参議院選挙では、女性候補者をもっと積極的に擁立していきたい
マニフェストは、フォローアップ委員会などを中心にさらなる進化を目指す

■フセイン元大統領拘束:大量破壊兵器の存在が証明されるかに注目

【代表】フセイン元大統領が拘束されたということで、イラクにおける状況も一つの大きな節目を迎えたと思っております。注目されるのは、これによって大量破壊兵器の存在が証明されるのかどうか。つまりは、フセイン元大統領の供述によって、大量破壊兵器が見つかるのか、それとも一部報道で伝えられているように、大量破壊兵器などを持っていなかったということを、元大統領が述べたと言われています、フセイン大統領が拘束されてさえ大量破壊兵器は見つからないということになるのか、このことは一つ注目される点だと思っております。

それに加えて言いますと、このフセイン元大統領の拘束を、何とかイラクにおける戦争、あるいはテロやゲリラといった活動を終息につなげていくことができないかという問題であります。これは一つの頭の体操かもしれませんが、アメリカとイラクが戦争をしたということを前提とすれば、その戦争終結という形をとるとすれば、日本の場合でいえば日本がポツダム宣言に受諾して、ミズーリ号上で文書に調印したわけであります。

ある意味ではフセイン元大統領に降伏文書に署名をさせて、そしてイラクの少なくとも国民でありバース党の残党に対して、我々は降伏したんだという声明を出すといったような、そういう形がとることができないんだろうかと、こんなことを考えております。

これは何か行動を起こすというよりも、戦争なのかテロなのかという問題は、実はかなりこういったこれからの対応の仕方に非常に重要な要素があると思います。テロという認識であるなら、それは犯罪行為ですから、本来なら国際的犯罪の犯人を追い詰めていくことになるわけですが、戦争という位置付けをしたものですから、逆に犯罪というものを超えて、まさに戦争行為ということになってしまった。

しかし一方では犯罪人扱いをしているわけですから、降伏という形よりも、とにかくやっつけてしまうという形をとって、やっつけたけれども戦争が終わらないという、最悪の泥沼に入りつつあるわけですので、何らかのここで一つの区切りをつけるある意味ではチャンスなのかなと、そんなことを考えています。ただこれは、私の頭の中で考えているということで、何かをするというところまでのことではありません。

■長野県による住基ネットへの侵入実験は、システムの問題点への警鐘

【代表】長野県の田中康夫知事が、住基ネットのシステムに侵入実験をおこなって、侵入ができたということを発表されたようであります。それは総務省は否定しているようですので、もう少し事実関係がはっきりしてこないと深入りしたことは言えませんけれども、もし長野県の発表が事実だとすれば、住基ネットの持つ問題点に対する一つの警鐘になっているのではないかと感じております。

<質疑応答>

■イラクの治安状況:今後も楽観できないし、それ以上の判断材料もない

【記者】フセイン元大統領の拘束についてですが、一方ではイラクというかアフガンも含めてですが、アルカイーダのビンラディンなどはまだ拘束されていないわけですが、イラクの今後の治安状況について、どうお考えでしょうか。

【代表】これは小泉総理も昨日の質疑の中で、楽観を許さないという趣旨のことを述べられているようですし、現実にフセイン元大統領が捕まった後において、いくつかのテロ事件が起きています。そういった点では私も、フセイン元大統領の拘束によって、急速に治安が良くなるというふうに楽観することはできないと思っております。

より激しくなるのか、一時的に激しくなっても長期的にはいわゆる旧フセイン体制を支えたグループの戦意が喪失し、中長期的にはだんだん収まってくるのか、これは何とも私の情報なり立場では、それ以上確かなことを申し上げる材料を持っておりません。

■来年の参議院選挙では、女性候補者をもっと積極的に擁立していきたい

【記者】参議院選挙の女性候補擁立についておうかがいします。最近、NCに女性を起用するとか、また女性の候補を立てようということで、女性政策とか女性対策などを考えているようですが、逆に言うと、女性に対抗してイケメンの候補者を揃えるとか、あるいは役員会の多数を女性で占めるとか、そういったことも考えられるわけですが、その点についてはどのようにお考えなのでしょうか。

【代表】これは非常に原理的なところに遡って言えば、わが党はできるだけ社会においてもそうですが、先進国の中では比較的というか極めてわが国は、政治の分野における女性の参加が低いわけであります。国によっては40%あるいは30%といったクオータ制を議会で採っているところ、あるいは党の候補者に対して持っているいろいろな国や政党があります。

わが党はまだそこまでいっぺんに物事を進めるわけにはいきませんが、能力の高い女性はたくさんいるわけですから、その中でもできるだけ政治の世界に出てもらいたいと、これまで努力してきたつもりです。

とくに今回の衆議院の選挙では、15人の女性議員がわが党から当選をされ、ある意味ではいい傾向だと思っています。参議院の選挙が来年に控えまして、いろいろなグループが推薦する人を、わが党として公認をして順次準備を進めておりますが、いま推薦候補、あるいはいろいろなブロックから上がってきている候補の中で、女性の候補者の名前が大変少ないということがあります。

今日の常任幹事会でも申し上げて、できれば当選可能な候補者の2割以上は女性にしてもらいたい。少なくとも20数人を立てるとすれば、3人ないし4人は女性候補にしてもらいたいということを、いわば提案という形で申し上げました。とくに反対もありませんでしたし、皆さんそれはそうだという認識だったと思います。そういったことで、これから参議院の候補者について、少なくともいま申し上げたような程度の女性候補者は是非擁立してきたいと考えています。

政策的な面でも、もちろん女性政策を女性の皆さんを中心に考えてもらうということはあり得るわけですが、必ずしもそれは女性だけにお任せするということではなくて、子育てなんていうのは、男も女もある意味での責任がありますし、政策的な面は一緒になって努力しなければいけないと思っております。

役員会などの面でも、女性の議員をもっと登用するという考え方は、私も一般的にはできるだけ努力したいと思っています。その中でもちろん副代表の一人、あるいはNCの中で、あるいは何人かの方にいろいろなところでお願いしていますが、現在のところいわゆる役員会のメンバーには女性が入っていないのは、結果ではあるにしても、私から言うのも変かもしれませんが、将来何とか女性も加わるような形にしていきたいと思っています。

■代表、小沢代表代行、岡田幹事長の間で、意志疎通は十分にはかられている

【記者】小沢一郎さんのことでおうかがいします。会議などにはあまり出られていないようですが、それについてはどうお考えでしょうか。

【代表】代表代行、あるいは次の内閣の副総理をお願いするときにも、役員会も特にというときには、私のほうから要請があればその場合には出ますというか、出る方向で対応するという趣旨は2人の間ではありました。ちょっと私のほうが11日以降、若干体調を壊したりして、もう少しきちんと要請する形をせめて最初の会ぐらいやっておけば良かったなと、いま思っているのですが、ちょっと私のほうの段取りも悪くてそういう形はとれておりません。

週1回ぐらい、私自身、小沢さんとも意見交換などいろいろやっていますし、幹事長のほうもいろいろ話をしておりますので、少なくとも私と小沢代行あるいは岡田幹事長の間での意志疎通は十分にはかられていると思っています。

小沢先生にも、時折はそういう会にも出ていただいて、また私が出られないときには次の内閣でも私の代わりに出ていただいて、その中で活動していただきたいと思っております。

■マニフェストは、フォローアップ委員会などを中心にさらなる進化を目指す

【記者】参議院選に関係する話で、マニフェストをバージョンアップしていきたいということですが、バージョンアップをしていくときにいろいろな経過があると思うのですが、いわゆる公開の形でやっていくのか、政権を担当する見込みのある政党として、公の場でやっていく必要があるのではないかというのが一点。二点目は、最小不幸社会という言葉をキーワードとしているようですが、マニフェスト全体を見る限り、小さな政府を目指すような感じがするのですが、その最小不幸社会という言葉からは漠然として分かりにくいのですが、そのあたりについて教えて下さい。

【代表】まずマニフェストについては、フォローアップのPTをつくるということで、枝野政調会長を座長とした委員会ができたという報告を聞いております。このフォローアップ委員会と、場合によっては私と幹事長の間で、今後のマニフェストのさらなる進化を目指していきたいと考えています。

その過程の中で、いろいろな課題がありますから、各部門会議などで議論をさらに重ねなければいけない問題とか、現実に年金問題とか地方分権問題は、来年度の予算にもかかる問題として各部門会議にも関わっておりますので、そういう議論は大いにしますし、そのプロセスの中で国会の場で何かやるということも十分あり得ると思っていますので、いま具体的にどういう形でやるということを申し上げる用意はありませんが、将来としてはそういうこともあり得ると思っています。

それから最小不幸社会というキーワードについて注目していただいたことは大変ありがたいことですが、これは今後私としては、もう少し肉付けした形で、一つの考え方をもう少し明確にして示していきたいと思っています。

■日本外交の真価が問われている

【記者】閉会中審査でイラク問題が議論されましたが、改めていまの時点で日本政府は何をしていくべきかということが第一点。民主党としてイラク問題についてこれからこういうことをやるんだという、具体的な考え方がありましたら教えて下さい。

【代表】イラク問題で日本政府として何をすべきか、あるいは民主党として何をするかという質問ですが、いろいろな機会に申し上げておりますが、今回のイラクの戦争に対する小泉政権の対応は、何段階かにわたって判断の誤りを重ねていると思います。そういった意味で、順を追ってあまり重ねては申し上げませんが、まずは先制攻撃を支持し、そして治安が良くなるだろうという想定のもとに自衛隊の派遣を大統領と約束した。

私たちがもし政権を担当するとすれば、もともと先制攻撃に反対という立場でありましたし、自衛隊派遣には反対という立場がありましたので、そういう立場でまず小泉総理のやってきたこととは大きく変えなければならない。政権を担当していれば、当然変えたであろうと思っております。

それに加えて言えば、私が最近感じていますのは、この日本の選択というものに対して、アラブ諸国だけではなくてヨーロッパやアジアの国々を含めて、結局、日本というのは物事を自主的に判断して行動できない国なのではないか。今のいわゆるネオコンに引っ張られているブッシュ政権ということそれ自体に、アメリカの中ですら大変な批判が出ているわけです。

それにもかかわらず日本は、それについていくしかできない、そういう判断しかできない国なのだという見方をされていると、強く感じています。そういった意味では、イギリスやフランスと日本は立場が違うということを小泉さんはよく言われますが、イギリスやドイツやフランスを見ても、たとえばドイツなどは、一方ではアメリカとの関係が非常に深いわけですが、同時にヨーロッパの国としての一つの存在をきっちりとつくりつつあるわけですから、わが国もアメリカとの関係が一方でありながら、たとえば北朝鮮の問題などでは、中国などとの連携によって、この問題を平和裏に解決する道筋をもっと積極的につくっていく、そういうことが重要ではないか。そのこともすべてアメリカ頼りというのが、間違った選択になる原因にもなっていると私は見ております。

■イラク行きを希望する議員には現在自重を促し、状況が許せばまた判断

【記者】公明党の神埼代表がクウェートに向かうことになりました。このことについてイラクに入るかどうか分かりませんが、感想と、民主党としてこれらのようなことをお考えになっていることはあるのかどうかということをお聞かせ下さい。

【代表】神崎さんがクウェートに向かわれたということですが、私も報道以上のことは知りません。わが党の中でも実はイラクに行きたいという議員から、党として派遣して欲しいという話が数日前にありました。ただその段階では、私と幹事長とで相談をして、党として派遣ということになりますと、やはり2人の外交官が亡くなられた後でもありまして、なかなか私たちが送り出すという意味での責任を負える状況にはないという判断をしまして、自重を促しているところであります。そういう現地を見たいという方もおられますので、状況が許せば、またその段階で判断したいと思っています。


編集/民主党役員室


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