2004年1月13日(火) | 戻る/ホーム/記者会見目次 |
菅 直人代表/定例記者会見要旨
○この大会は政権担当能力を示す民主党の再スタート ○重要課題を大いに議論しわが党としての方向性を見出していく ○国連待機部隊については本質論を含め議論を展開してほしい ○憲法改正の手続法は冷静な議論が必要 ○参院選までに農業政策の提案をまとめたい ○憲法改正議論は、9条だけにこだわらず幅広い議論を |
■この大会は政権担当能力を示す民主党の再スタート
【代表】大会では、取材陣の皆様にもご協力をいただきありがとうございました。
今日の大会は、民主党の再スタートの大会だったと思っています。昨年、政権交代には至りませんでしたが、177議席を衆議院で頂き、国民の皆様から二大政党の一方の政党であるという認知をいただきました。二大政党、つまり一方の政党に代わって政権の責任をもつ政党として、国民の皆様に対して、今の政権のどこがおかしいかということを言っていく以上に、自分たちが政権を担う場合にどういう形でこれからの日本や世界に対応していこうとしているかを示す意味での再スタートの大会だったと思います。
いろいろな議論が出ましたが、多くは前向きの議論でした。地域の組織をしっかりさせる、マニフェストを進化させる、前回落選した候補者を早く次の選挙の態勢につけ、参院選準備を一層急ぐなど、前向きで有意義な大会だったと思います。私自身、挨拶で、再スタートにあたって民主党として取り組まなくてならない課題、避けることの出来ない課題、党内で議論をしっかりしておかなくてはならない課題を中心に、幾つかの課題を取り上げて、私なりの問題提起を、党内さらには国民の皆様にさせていただいたつもりです。
挨拶の中身は、原稿もお配りし、また聞いていただいたと思うので、重複して申し上げるのは避けたいと思いますが、イラクの問題、北朝鮮の問題を中心に、日本外交がもつ当面の問題については、本質的な原点に戻った問題としても、どういう姿勢で臨むのかが問われています。また憲法に関する議論も「創憲」ということをマニフェストで、昨年の衆院選においては取り上げましたが、「創憲」という考え方をどのような形で推し進めていくのか、この問題にも触れさせていただきました。経済政策についても、先のマニフェストでいろいろな課題を取り上げているのでこの大会では重複を避けました。
ただ、特に農業政策、大会で林業及び水産業にも力を入れるようにというご意見もありましたが、それも含めて、この水の豊かな、農業にも林業にも水産業にも恵まれた日本というものをもう一度しっかりと建て直すこと、将来の日本が単なる加工貿易立国ではなく、貿易もしっかり行うが、少なくとも自分たち日本人が食べるものについてはもっと日本の国内で作られたもので十分に賄えるような、食糧自給率というベースマークもありますが、そのような手法も含めて、もっとしっかりした農業を形作っていくこと、さらにはそのことが自然を守ると同時に、大都市に集中している日本の現状を、農村地域においても、子供たちが豊かな感性で育つような環境を取り戻していきたい。私も、どちらかといえば田舎町で育った一人でありますが、そうした田舎町で育つ人がだんだん減ってしまって、他方、少子化も進んでいるわけです。
もう少し田舎で、子どもがどんどん元気よく生まれ育つような社会、あえて「スローライフ」という言葉を引用しましたが、日本の将来の方向として、近代化と共に、そういうことが両立するような社会を私なりにイメージして、挨拶の中で特に重点をおいて述べました。私なりの感想を申し上げましたが、後はみなさんの質問をいただいて、答えていきたいと思います。
<質疑応答>
■重要課題を大いに議論しわが党としての方向性を見出していく
【記者】代表の挨拶の中で、憲法問題、外交問題、安全保障問題について触れたが、いずれも重いテーマで、党内の意見集約が必ずしも進んでいないテーマだと思うが、どう意見集約を図るのか、決意も含めお伺いしたい。
また、改めて自公連立政権のどこが問題なのか、またそれを追求することで参院選にどう影響すると考えるかを教えてください。
【代表】一点目については、冒頭申し上げたように我が党として避けることのできない大きな課題を特に重点をおいて、私なりの問題提起という形で挨拶に盛り込んだものです。意見集約できるのかという指摘ですが、まず問題提起があって議論をして、その中から意見が一定の方向にまとまっていくものであると思います。昨年の大会でも、当時の有事法制、緊急事態法制について、通常国会の間に民主党として対案を出すとお約束しました。その段階では、本当に集約できるのかという声もマスコミの皆様を含めありましたが、幸いにしてしっかりした議論をする中で、一定の方向が集約され提案することができ、そして与党の提出案を修正する形となったことは、皆様もご承知の通りだと思います。
今回の多くの課題についても、目の前の通常国会だけで終わるような課題ではない、かなり大きな課題がたくさん盛り込まれていますが、私はこの民主党という党は、大いに議論する中で一つの方向性を集約して見出していけるものと信じております。そのようなことも含めて、敢えて重要な課題を年初の挨拶の中で党内外をあわせて提起させていただきました。
自公政権について、政権としての評価の前に、今の自民党と公明党のあり方は国民的立場から見て非常に理解しがたい関係にあると感じています。挨拶にもあるように、政党と政党がそれぞれ自分たちの考え方をもって、場合によっては過半数に足りない中で連立を組むということは当然あることであるし、私もそのような経験も持っています。
しかし一つの政党の公認候補が、具体的に言えば自民党の候補者が、公明党の推薦を取ったわけだが、その中の少数ではなく相当数の方が比例は公明にと公然と言葉でいう、場合によっては文章でいうというのはどういうことなのか。ということは、その候補者は自民党の候補者なのか、公明党の候補者なのか、つまり連立というのは、党と党が自立して組むことであって、選挙協力というのも一概には否定しないが、小選挙区の候補が比例は他党へというのは、自立した政党のあり方を外れています。
読売新聞が具体的な事例を挙げて、特集のようなものも組んでいましたが、一つの例と考えると、小選挙区で立候補した自民党候補者が、比例は公明党へと言って自分の支持者は公明党へ票を入れさせる。当事者は、小選挙区で当選できないで自民党の比例の枠で当選する。現実にこのような人はたくさんいます。とすると、この人は一体どういうことになるのか。比例で通りながら、自分の支持者には比例は他党に入れてくれと活動している。本人は自民党と書いた人の票で当選している。このようなことになっていること自体が、いびつな状況にある。ある矛盾の現れだと思います。
もうひとつ本質的に言えば、党と党ですからいろいろな議論があることは結構です。しかし、自民党の議員が、「批判をすれば唇寒し」というような、自分の足元の選挙が脅かされるから黙っておこうということになれば、それはもう党と党の関係の連立ではありません。人間の体内に他の生物が入り込んでコントロールしてしまうという映画もありましたが、自民党という政党に公明党という政党が入り込み、コントロールしてしまう。そういう状況になりつつある。それが正常な政党のあり方とは思えません。いまや自民党は国民政党と言えない状態になっています。
自民党内にも、中曽根さんのように心配している人はいますが、いまそのことがここまで広がってきている。他党のことというだけでなく、日本の民主主義という立場でしっかり見定めていかなくてはなりません。そうなった自民党がこれ以上支持されるのか。そのような自民党であるならば、従来支持してきた方々も、そのような自民党は支持できないとおっしゃっている声もたくさん知っておりますので、はっきりしたところで言ったほうがいいだろうと思い、今日敢えて挨拶の中で触れさせていただいたということです。
■国連待機部隊については本質論を含め議論を展開してほしい
【記者】国連待機部隊についてお伺いしたい。規模、装備、範囲、武器使用など憲法との関連についてどのようなイメージを持っているか。またなぜ自衛隊ではなく国連待機軍なのでしょうか。
【代表】国連待機部隊については、私も10年以上前からいろいろな機会で議論してきた経緯があります。先日、当時の「シリウス」という雑誌を見ていたら、10年ほど前の議論でありますが、今も仲間である筒井信隆議員たちと議論したものが盛り込まれていました。いまご質問があったすべてを含めて、あるいはもう少し本質的なことを含めた議論をこれからしていこう、というのが今日の私の提起です。あまり細かく今、具体的なことを申し上げるよりも、むしろそのこと自体を議論してもらえばよいのではないかと思っています。
今出ている月刊誌にも、小沢代表代行や横路副代表の議論も出ておりますし、各専門家の議論もあります。私も、カナダ型やスウェーデン型など、あるいは自衛隊との関係、いろいろな議論があることは承知しておりますが、そのようなことを含めて議論をしようという問題提起をさせて頂きました。今日の段階では細かい考えを述べるのは、自由な議論をしてほしいので敢えて避けたいと思います。
【記者】憲法9条とのからみで、大まかな持論というものを教えてください。
【代表】まさにそのこと自体も、すでに申し上げたように、国連憲章に則る国連軍に、例えば日本が何らかの形で参加するときに、日本人だから9条に違反するということにはたぶんならないと思います。国際公務員であれば国権の発動たる戦闘ということにならないからです。しかし純粋な国連軍というものがこれまできちんとした形で生まれていない中で、国連軍に準ずるような多国籍軍の場合にどうなるのか。その場合に、待機部隊であれば国権の発動たる戦争あるいは武力行使というものではないという意味で、現行憲法においても許容されるのではないかという議論もあるわけであり、そういうことも含めて議論しようというのが、今日の私の提案であります。
■憲法改正の手続法は冷静な議論が必要
【記者】憲法改正について、自民党が通常国会に憲法の改正手続について定めた法案を出してきた場合、民主党としてどのように対応されるのかなどお考えをお聞かせください。
【代表】まず、現行憲法でそのような手続法がなければ本当に憲法改正ができないのかどうかです。少なくとも衆議院選挙や参議院選挙と一緒に国民投票をやるということも憲法上規定されているわけです。私はそのような制度がなければできないという事ではないと思います。では衆議院選挙、参議院選挙と一緒でない国民投票ができるような規定をつくるような手続法を決めるということが必要だということであるならば、必要な段階でつくることが絶対にいけないとは思っていません。しかしいま言われているような自民党の対応は、憲法の本質的な議論、内容的な議論ではなくて、国民投票法を出すことによって、場合によっては民主党を揺さぶろうというような姑息な目的を持っているのではないか、などよくわかっていません。
私たちはこの手続法が必要でないと思っていませんが、現時点で出されるとすればどのような緊急性があるのか、それについては冷静に考えていきたい。まだ党内では詰めた議論をしていませんが、何が何でも反対ということではなくて、冷静に受け止めていく問題だと思っています。
■参院選までに農業政策の提案をまとめたい
【記者】農業についてうかがいたい。挨拶文では、FTAを進める前提として農業を強化すると理解したのだが、もう少し具体的なイメージを教えてください。
【代表】今の理解は少し逆だと思います。農林水産業の再生が必要だということを申し上げていく中で、ひいてはFTAの条件整備を進める上でもつながっていくという意味を持っていて、FTAのために農業をというのではなく、重要度でいえばFTAがあってもなくても重要だということです。
昨年代表に就任してから、出来るだけ地方をまわるようにしています。山形でも阿蘇でも酪農や米作り、あるいは神戸コープなどでは生協グループがやっている有機農法など農業も見てきました。また、幾つかの島にも行ってきました。どの時代のことを参考にするかということにもなるが、日本のこの百十数年間は、近代化であり工業化であり、大量生産・大量消費・大量廃棄という中で、農業、林業というものが、相対的にはいわば片隅に追いやられてきました。そして農業政策もせずに、どちらかといえば補助金や農業土木工事、つまりは公共事業という形で、本当の意味の農業、林業を再生させることに力を入れてこなかったと思います。
日本の将来のあり方として、もっと本質的な意味で農業や林業、水産業を含めて、日本の風土の中で生まれてくる農作物を生かしていくことが、日本の国土の自然を守ることにもつながる、場合によっては人間が生きていく、子どもが育つ環境においても大変重要なことだと思います。
昨年、C.W.ニコルさんと一緒にアファンの森を訪れたときにも、いま、この社会で子どもにとっていろいろな影響が出ているが、森に入ると本当に生き生きしてくるという話を聞きました。都会でストレスの多い生活をしていると、時々山に入って野焼きでもしてみたいと思われるかもしれませんが、そのようなことを含めて、もっと本質的に日本の社会のあり方を考えていきたい。そこで「スローライフ」という言葉を敢えて申し上げたところであります。
細かい農業政策は出していませんが、わが党は例えば減反政策を進めるよりも、デカップリングのような形で、農業に携わる人に、ある程度所得保障をしたなかで、いいものを作っていくような農業にしていくことが可能ではないか。あまり細かい政策論ではないかもしれませんが、私自身ある種の実感をもって問題提起をさせていただきました。わが党の中にも農村からもかなりの議員が増え、また農業・林業政策に詳しい議員も相当増えてきたので、今までの自民党的政策とは違う農業政策を責任を持って出せるような力量が備わってきました。参院選までには、一定の提案をぜひまとめてもらいたいと思っています。
■憲法改正議論は、9条だけにこだわらず幅広い議論を
【記者】憲法について、私見と断りつつも具体的論点を出しているが、この意図は。創憲の議論のたたき台とするつもりなのでしょうか。
また、連合の笹森会長が民主党にとっては少し耳の痛い話というか、檄を飛ばしたが、どう思ったか。またそれを踏まえてこれからの選挙をどのように戦うつもりでしょうか。
【代表】まず一点目については、憲法29条所有権の問題や、会計監査院の問題など、幾つかの条項を含めて私の考えを盛り込んだものを提示させていただきました。これまで憲法問題というと9条の論議にいわば終始していました。そのような議論が大変長く続いてきました。私は国民主権という立場で、憲法を自ら創る、この中にいろいろな課題があるとして、幾つか例示をさせていただきました。必ずしも私が提案したものの中の細かい部分にこだわるというわけではないが、少なくとも環境権、景観、あるいは今のいろいろな問題について大いに議論していこうという、憲法9条だけではない幅を広げた議論をしようということで幾つかテーマをあげて、たたき台として提示をさせていただいたということです。
また、笹森会長から多少辛口な叱咤激励の挨拶をいただいたことは、大変ありがたいことだと思っています。まだまだ私たち自身、これまでの自民党のあり方に比べて地域的な活動も弱いし、ある種の執念も足りないといわれればその通りだと思っています。笹森会長の檄を、私たちに対する激励としてしっかり受け止めて、連合本部の取り組んでいる課題にも共に取り組むという姿勢でこれからも努力したいと思っています。
【記者】国連待機部隊の構想と関連し、9条改正をするお考えはあるのか、また創憲の中で憲法を改正する比重はどのくらいあるのか教えてください。
【代表】先ほどの大会の中でも同じような質問が出ましたが、これまでも申し上げたように従来の憲法議論は9条に始まり9条に終わるようなことが多く、それがまさに護憲か創憲か、というすべての議論になってきたと思います。逃げるわけではないが、敢えて私はもっと幅広い議論を、国民主権という立場を最も基礎において、大いに国民的な議論を広げ、深めていきたいと思い、提示をしております。9条についても様々な議論があることは当然であります。国連待機部隊についても、先ほどの質問にもあったように、現行憲法で許容されるかどうかなどの見方もあるわけです。この部分は絶対に変えませんとか、変えますというような形の議論をする必要はない。すべてについて変える可能性も含んだ議論を、自由にしていけばよいと思っています。
編集/民主党役員室
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