2004年1月20日(火) | 戻る/ホーム/記者会見目次 |
菅 直人代表/定例記者会見要旨
○ 憲法違反の自衛隊派遣を命じた小泉総理は辞任すべき ○ 日本の民主主義を守るためにも投票義務化は検討に値する ○ 古賀氏の学歴詐称疑惑への対応は本人の確認作業を待ちたい ○ 自公が連立政権批判に反発できないのは指摘が正しいから ○ 国民主権の憲法はまず国民的議論の中から |
■憲法違反の自衛隊派遣を命じた小泉総理は辞任すべき
【代表】本日未明、イラクに陸上自衛隊の先遣隊が入りました。まず、命令を受けて派遣された自衛隊員の皆さんについて、任務を果たして、十分に注意して被害なく死傷者が出ずに無事に帰ってこられることを、国民の一人として強く望みます。
その上でイラクに対する自衛隊の派遣というのは、戦後事実上の軍隊である自衛隊を戦地である外国の領土に派遣する初めてのことであります。このことはいろいろ理屈がつけられてはいますが、日本国憲法に明らかに反する行為だと思います。総理は、平和のためには行動すべきだという主旨のことを言われていますが、歴史上日本でも、例えばかつて関東軍が政府のコントロールを外れて行動したそのことが、戦争を拡大することになったとかいろいろなことがあります。行動することがどういうことを招くのか、少なくとも憲法に反する行動を総理自らが命ずるということは、民主主義国の総理としてあるまじき行為だと、明日の代表質問で明確にしたいと思います。
憲法違反の行動を命じた総理は責任をとって辞任すべきだと思います。またこのことを積極的に進めた与党・公明党も同じ責任があり、同罪です。少なくとも神崎代表も責任を取って、責任ある立場を辞するべきだと考えます。
細かい議論はこれからいろいろな場面で始まりますが、今お手元にお配りしましたが、派遣された自衛隊員の法的な身分について、CPA長官のブレマー氏から上村大使に宛てた、法的な位置を確認する書簡を外務省から入手しました。これによれば、連合国の要員とか兵員とか、そういう位置づけだと、米軍や英軍などと同じ連合国の要員だということを認めています。認めることによって、例えば何かの事態が起きて自衛隊員がイラク現地の人に何らかの被害を与えた場合について、戦時国際法の適法を受けて裁判籍がイラクに属さないという、そういう扱いを受けるという意味を持っております。送られた自衛隊員の身分というものはアメリカやイギリスの軍隊と国際的に同じ扱いを受けるわけで、また受けなければ逆に、例えば旅行者がアメリカやその他の国で何か事件を起こせば、一時的にはその国の中で法的な捜査を受け、場合によっては裁判を受けるということですから、そういうことの例外扱いを受けるということです。
今申し上げたようなこのブレマー長官の認めた法的位置づけに基づいて派遣するということなので、いくら小泉総理が戦争に行くのではないと言ったとしても、法的位置づけは軍隊として戦争に行っている他国の軍隊と同じだということは、否定できない事実だと考えます。そういうことからも、今回の派遣は少なくとも現行の憲法に照らしてみてとても合憲とは思えません。
かつてドイツは、自国の軍隊をNATOの領域以外には出さないということを基本法で決めていました。ある段階でそれを拡大しようとして、いろいろな国々の理解を得て拡大したわけですが、その時はあらかじめ基本法、日本における憲法の見直しを行って、国民的、国際的な理解を得た上での行動範囲拡大でした。いま小泉総理がやろうとしていることは、総理自らが憲法を破って、憲法を変えるということを提起することもなく自衛隊派遣を命じたということでありますから、その責任は極めて重いとして、辞任を要求していきたいと思っております。
またいろいろな発言が出ていますが、例えば石破防衛庁長官が「テロは戦争ではない」と発言しました。しかし一方であのアメリカに対する連続テロに対して、アメリカに対する攻撃だ、戦争だ、というそういう位置づけのなかで、アメリカは自衛権行使としてテロの首謀者とされたアルカイーダ、それを擁護したタリバン政権を攻撃したと、そのアメリカの自衛権行使に、いわば後方的な支援をするということでテロ対策特措法が作られて、燃料補給などを行ったという経緯があります。一方では、テロはアメリカに対する攻撃だということを認めながら、ある場面ではテロは戦闘行為ですらないというようなそんな都合のよい解釈があるはずはありません。
もちろん、テロでも一人一殺のような個人的なテロもあれば、あるいは飛行機を狙うような大規模なテロもあります。いろいろな形態はありますが、今イラクで頻発しているテロは、米軍に対する攻撃であったり、大規模な国連に対する自爆テロであり、これが戦闘行為でないといえば、ではあのニューヨーク、ワシントンに対するテロも、あれは戦闘行為ではなかったのかということとなり、このような石破防衛庁長官の身勝手な解釈はとても認められません。総理にも言えることですが、そのようなことを理由に憲法に違反していないという詭弁を弄すること自体が、民主主義国家の総理や大臣としてふさわしくない。このように申し上げておかなくてはなりません。
以上、多少イラクの問題に集中しましたが、私からの発言といたします。
<質疑応答>
■日本の民主主義を守るためにも投票義務化は検討に値する
【記者】午前中の役員会で、選挙の義務投票制について党内で検討すべきではないかという提案をされたようだが、その本意を教えてください。
【代表】これは、先日の両院総会などで二回に渡り、松岡参議院議員より参議院の幾つかの改革に加えて、投票の義務化について取り組むべきではないかと提案がありました。その時にも、私は個人的には賛成であるとは申し上げていました。
今日、その松岡氏の提案の中の参議院に関する幾つかの動きに取り組もうという話がでましたので、できれば合わせて同じく松岡氏の提案であったその問題にも取り組んでほしいということで、私のほうから申し上げました。以前から、投票は民主主義国における国民の権利であると同時に、ある意味では義務であると考えておりますので、そういった意味ではどの程度の強さの義務とするかについてはいろいろなレベルがありますが、一つの課題としては民主主義社会をしっかりと守っていく、しっかりとした民主主義社会に日本をしていくために検討に値することだということで、私から申し上げたところであります。
■古賀氏の学歴詐称疑惑への対応は本人の確認作業を待ちたい
【記者】本日、古賀潤一郎議員の学歴詐称疑惑について、ペパーダイン大学側が記者会見を開き、卒業の事実や学位を与えた事実を確認できないとしましたが、それについてどのようにお考えであり、対応を考えていますでしょうか。
【代表】この問題については、私自身まだ直接の話を聞いていないのですが、幾つかの報道や党内の関係者の話を踏まえて考えますと、本人が近くアメリカへ行って事実関係をきちんと確認したいという意向を示しているとのことでもありますので、本人の確認作業を待って、その説明を受けた中でその後のことを判断し、検討したいと考えています。
■自公が連立政権批判に反発できないのは指摘が正しいから
【記者】改めて先日の党大会で代表が自公連立政権を批判したことで、公明党から様々な反発が出ていますが、それについてのご感想と、一部泥仕合という見方もありますがお考えをお聞かせください。
【代表】あまり強い反発は出ていないのではないでしょうか。予想以上に反発は少ないですね。特に、自民党からの反発というのがほとんど聞こえてきません。つまり、私の指摘が正しいので反発のしようがないということではないでしょうか。
唯一見かけた中で言えば、小泉総理の「自民党公認候補が比例について公明党に投票してくれというのは選挙協力だから構わない」といった主旨の談話かなにかが出ていたのが目につきました。これが小泉総理の考えだとすれば、自ら自民党を弱くするようなことを進めているようなことなので、私は本来の国民政党、民主主義政党のあり方としては明らかに国民に対して不誠実で、正しい対応ではないと思います。私たちの立場からすれば、自民党が自らを弱くするような行動を進めている、ましてや総裁自らが進めているということは、何をかいわんやというか、決して良いことだとは思いませんが、せっかくの私たちの忠告を聞かずに、国民から見放されていくだけだと思います。
【記者】古賀潤一郎氏の件だが、自民党から、辞職すべきではないかとの声もあるが、それについていかがお考えでしょうか。また投票義務化については、どのようなメリットがあるとお考えでしょうか。
【代表】古賀潤一郎君の件については、現時点では先ほど述べたことに尽きます。本人がそう時間を置かず、渡米して事実関係を自ら確認したいとしているわけでありますので、その結果を待ちたいというのが現時点での私のスタンスです。
また投票を何らかの形で促進する、義務化するという考え方は、諸外国には幾つかの例があります。軽いペナルティのようなものをかけることで、投票が非常に上がった例も報告されています。選挙を通して民主主義をルールとする国において、投票は国民の権利であると同時に義務であると思いますので、大いに議論すること自体も、特に若い人たちにとってそのような認識を深めることになりますし、場合によっては何らかのルールを導入することによって、より幅広い人たちの意見が政治に反映できるようになると考えますので、前向きに検討すべきだと考えます。
■国民主権の憲法はまず国民的議論の中から
【記者】鳩山さんたちの「政権交代を実現する会」が、29日に中曽根元総理を招いて憲法に関する勉強会を開くことが決まったようです。代表の党大会での発言以来、いわゆる憲法問題がクローズアップされていますが、今後連携のような動きが出た場合の対応と、中曽根さんは9条改正や憲法を軸とした政界再編をずっと訴えていますが、代表はいまどのようにご覧になっていますか。
【代表】先日も鳩山さんと同席したときに、鳩山威一郎さんの十回忌かどこかの会で、中曽根元総理も出席された会があったそうで、中曽根さんから憲法のお話を聞くことになったということは聞いています。
わが党は大変自由な党なので、いろいろなかたちでいろいろな方々の意見を聞くことは、自発的にやることについては大いに結構なことだと思っています。中曽根元総理から、政党は違いますが、意見を聞くことは結構なことなので、その意見を皆さんが聞くという企画は大変結構なものだと思います。また中曽根さんが憲法をもって政界再編などいろいろなことを言っているということについては、それは中曽根氏に限らずいろいろな意見があるところでありますので、私はあまりそういったところは気にしていません。
敢えて言えば、私が先の大会で提起したのは、国民的な議論を大いにする中から、市民革命に変わるようなかたちで国民が自らの憲法を創ると、そのことが国民主権の憲法に繋がってくるのではないかと、このような国民に対する呼びかけですので、いろんな方の話を聞いていくことは良いが、何か小泉総理が自民党と民主党の間で早速にも協議機関をつくろうなどというやり方は決して望ましくないと思っています。もっと幅広い議論をすべきであって、その中からだんだんと話が煮詰まっていくことはあってもよいが、最初から第一党、第二党が政党間で協議をするというやり方は、国民的な憲法を創っていくという方向にとってはマイナスになることはあってもプラスになることはないと思っています。
■自公の関係で反論が出ればしっかり対応する
【記者】自公の関係だが、代表の党大会の時のお話だと、自民党にとってマイナスだということ以上に、国の形として問題があるのではないかという問題提起がされました。今回の通常国会で、そのあたりについて政府与党に対して姿勢を質していくようなことは考えていますでしょうか。
【代表】大会以降、具体的にその問題について特別には何か考えているということはないのですが、ただ大会のときに申し上げたことについては、一部意見表明はありましたが、本質的に否定するようなことは言っていないつもりです。
つまり1998年の、朝日新聞が12回に渡って連載した、20年近く委員長をされた竹入公明党元委員長のインタビュー記事にあったことを指摘しただけであって、何かその指摘が間違っていると言われたことはありません。もしそのような反論があれば、反論に対してはきちっと対応していきたいと考えていますが、単に嫉妬しているからとか、ごく感覚的な批判については気にならないので、事実関係が異なるというなら反論はしたいと考えています。現在のところはそれ以上のことはありません。
編集/民主党役員室
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