2004年2月3日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○ 暴力もふるった与党の強行採決、審議打ち切りは与党の審議拒否
議長裁定を拒否したと言う与党幹部は嘘つき
衆参選挙の候補者を公募
ドイツはNATO域外への派兵を憲法裁判所で判断

■イラク自衛隊派遣承認をめぐる与党の強行採決

【代表】
ご承知のように、先週末衆議院でイラク特における強行採決がありました。その時にも問題にしましたが、わが党の理事が委員でもない自民党若手議員から、半ば暴力を振るわれたりした中での強行採決でありました。内容的にもわが党のいくつかの質問に対して、後の理事会等で検討すると約束しながら行われた強行採決であり、そのようなことも重なり、最終的にはああした与党の本会議における強行採決となったわけです。

申し上げてきたように、わが党は時間を引き延ばすために審議を拒否するという意味で出席をしなかったわけではありません。少なくとも衆議院の委員会で、政府側が本来答えるべきこと、伝えるべきことがきちんと伝わってこない、あるいは間違った情報しかこないということを踏まえて、さらなる議論が必要だと主張していた中での強行採決であり、結果として補正予算や財務金融委員会と合わせての問題となりました。このような異常な採決を繰り返すもとでは出席できないということであって、あくまで与党側の審議拒否に対する抵抗であったと思っております。

週が明け、それぞれ衆議院、参議院の国対を中心とした話し合いが行われて、与党からもテロ特の委員長の謝罪といったこともある中で、参議院の質疑がスタートしたと受け止めております。しっかりした議論を参議院でも行っていきたいと思っています。

またこの過程の中で、議長裁定を野党が拒否したとか、受け入れなかったという言葉を、額賀政調会長、あるいは小泉総理自身もテレビかどこかで発言をしていました。国対委員長にも確認しましたが、議長裁定というものは先週において存在しません。議長裁定ではなく与野党で議論してくれと、議長が同席をして見守るという位置づけでの会議であったとのことです。出て行く直前まで一緒におりましたので、その場に出席したのは知っていましたが、議長裁定をわが党が蹴ったとか、無視したとか、受け入れなかったという言い方は明らかに誤りであるし、そのことを知る立場にいる総理や政調会長が嘘の発言をしていることに対して、おかしい発言であるとはっきり申し上げておきます。

つまりは、議長というのはある程度与野党の間をとって、かつて名議長と言われたある議長は、野党7割、与党3割という7対3の構えなどという意見もありましたが、そのような立場からぎりぎりの調整をすることはありますが、あたかも中立的な裁定をわが党が蹴ったかのごとく印象づけようとする発言は、誤魔化しやまやかしの延長で、嘘つきだと申し上げておかなくてはなりません。

■衆参選挙の候補者を公募

もう一点、2月8日から3月1日まで、衆参選挙の候補者の公募を改めて行うこととなりました。お手元に資料があると思いますが、新聞広告、あるいはHPなどで公募をして、応募のあった方に論文などの提出を頂いた中で、決めていきたいと思っております。

■ドイツのNATO域外への派兵における憲法論議について

次に、私自身の若干の訂正をしなくてはなりません。先の本会議でイラクの問題の質問をした時に、ドイツがNATO領域外に軍隊を送るときに基本法、日本でいう憲法を改正した上で行動していたということを踏まえて総理に質問をしました。これに対しては小泉総理は本会議で直接の答弁をしていませんが、後に委員会等で私の発言が間違っているのではないかとの指摘があったようで、改めてドイツのいろいろな経緯を調査してみました。その結果、若干記憶に正確でない部分がありましたので、訂正を申し上げておきたいと思います。

細かいことですが、湾岸戦争の前までは、時のドイツ政府は基本法の解釈上、NATO領域外に出すことはできないという認識で国連等からの要請も、基本法に反するのでできないと言っていたそうです。その後湾岸戦争の頃に、領域外に出すことを目的として、基本法の改正作業に入ったそうでありますが、結果的には改正に至らなかったそうです。その後、政府が湾岸地域ではなくソマリアなどいくつかのところで、いろいろ理屈を立てて軍隊を外に出すことをやりまして、与党の連立を組んでいた自由民主党と野党の社会民主党が、憲法裁判所に憲法違反であると訴えたところ、裁判所は最終的には、基本法はNATO領域外に軍を出すことについて、一定の条件付きであれば可能だという条件付き合憲判決をしたとのことです。

その条件とは、国会でNATO領域外に出すことについての了解があった場合、合憲だという判決を出したとのことです。基本法の解釈が、かつてはNATO領域外に出すことは禁止しているという解釈のもとで運用されていたものが、憲法裁判所の判決で解釈が変わることによって、国会の承認の下での領域外への出動が可能になったと。何もなく解釈を変えたのではなくて、憲法裁判所というきちんとした手続の下で変えた中で、NATO領域外に出すことが可能になったというのが正確なものです。

残念ながらわが国には憲法裁判所がありません。正式なかたちで憲法解釈というものがこれ以上変えられないというところまで来た場合には、憲法そのものを変えるか、派遣を取りやめるかしかないわけであります。現在の特措法のいう、非戦闘地域であるから、戦争に参加しないのだから憲法違反にならないという、この非戦闘地域を根拠としたなかで憲法に違反しないというのは誤っているとの主旨で、私は本会議での質問をしました。ドイツの部分については、理解の不十分な点、間違いがあったので、この場での訂正がどのような意味をもつかわかりませんが、政治的な意味はあると思いますので、訂正を致します。

なお、このことを改めて勉強した中で、憲法改正について、1月13日の党大会で幾つかの具体的な課題を含めて問題提起をいたしましたが、その中では憲法裁判所については触れておりませんが、憲法裁判所を作ることも憲法改正を議論するときの大きな課題として、問題提起をしておきたいと思います。つまりいま憲法の解釈は、事実上政府の内閣法制局が一番、ある種の権威を持っているわけであります。内閣の一機関、一官僚でありまして、行政府の中にあることは言うまでもありません。そういった意味では、憲法解釈を行政を執行する機関が、自分で解釈もする、あるいは変えるというのでなく、これこそ最高裁に与えられているわけですがきちんと機能しておりませんので、憲法裁判所をきちんと設けるべきだということをこの場で提案したいと思っております。以上です。

<質疑応答>

■自衛隊本隊の出発を受けて

【記者】先週末以来、国会が混乱する中で陸上自衛隊の本隊が出発しましたが、どう受け止めますか。

【代表】いろんな段階で様々な部隊が派遣されています。基本的なことについては、従来と変わりません。第一には、命令を受けて派遣される自衛隊隊員の皆様には、無事に帰ってきてほしい。特に今のイラク情勢はますます厳しい情勢になっておりますので、無事な帰国をまず念じたいと思っております。その上で、自衛隊派遣そのものについては、いろいろな理由をあげてこの間党としても反対してきたわけであります。本来は自衛隊派遣をするという決定そのものが、間違った決定だということは今回も同様であり、その間違った決定に基づいて派遣されるということは、当事者で行かれる方たちには責任はありませんが、小泉政権、小泉総理には、重大な責任があると思っております。

■参院選2人区での擁立と全体の状況

【記者】参院選候補者擁立について、党では2人区で2人立てるという方針を明確にしているが、2人区ではいかがでしょうか。2人区でも2人立てるべしというある幹部の発言もあるようですが。また、全体の擁立の進捗状況についてどのように感じていますか。

【代表】まず、2人区については、1人以上立てることは当然のことですし、100パーセント実現したいと思っています。2人区で2人擁立というのは、幾つかのところで議論が出ています。ざっくばらんな言い方をすれば、自民党が一人、民主党が一人、他の野党がもう一人くらい出されるということであれば、必ずしも活発な論戦というよりも、無風的な選挙になることも心配されていまして、簡単に2人独占できるという見通しがあるわけではないですが、場合によっては2人擁立をして、2人独占を目指していくことも、選択肢から完全に消えているわけではありません。

進捗状況については、全体的に言えばわが党では、特に今回、一人区での現職の候補がそうたくさんはいないところに新たな候補者を立てるということで、やや遅れているとは思っています。ただ、今急ピッチでいろいろな作業が進んでおりますので、遅くとも2月中までには、すべての選挙区で、立てるべき候補者を党として決め、立ってもらうべき方には決断していただきたいと思っています。

■特定船舶の入港禁止法案について

【記者】まもなく外為法改正が成立すると思うが、万景峰号などを視野に入れた特定船舶の入港禁止法案などについて、党首としての考えをお聞かせください。

【代表】送金停止については、先の衆院選挙での追加のマニフェストの中で党として正式に提案し、これまで自民党の中では個別にはそのような議論があったわけですが、結果として超党派で進んでいます。「対話と圧力」という言葉で言えば、圧力として一つの大きな意味を持つのだろうと思います。ただ法案ができたからすぐに実行するというわけではなく、あくまでわが党の意向を踏まえて、事後的ではありますが、国会の了解もあった時に発動することになるということは、ご承知の通りだと思います。万景峰号の入港については、わが党の中にもいろいろ議論があります。条約上の問題などで、いろいろ課題も多いと聞いています。ですから、今この段階で結論的なことは言えませんが、それぞれの立場でしっかり検討した中で、必要があれば判断していきたいと思っています。

■六カ国協議への期待

【記者】25日から六カ国協議の開催が決まったことについて、期待などあればコメントをお願いします。

【代表】まだ詳細を聞いていませんが、もちろん第2回目の六カ国協議で、一番大きな課題である核兵器の開発を断念させることと同時に、拉致問題の解決というこの二つの課題について、大きな成果をあげてほしいという期待をもっています。その上で言えば、やはりこの六カ国協議の中で、やや小泉総理の存在、日本の存在が浮き上がっているのではないか。アメリカ、韓国との協議ももちろん重要ですが、同時に中国との協議、あるいは直接北朝鮮との何らかの協議があって、六カ国協議の中でのわが国の主張がより強く、あるメドをもって主張できるわけですが、必ずしも今の小泉政権にはそれができていません。中国の首脳とも腹を割った話し合いができない状況です。六カ国協議そのものには大きな期待をしているが、小泉総理の会談への係わりについては、本当に小泉さんで大丈夫なのかと、率直なところ思っています。

■歯科医師連盟献金について

【記者】歯科医師連盟からの献金を、自民党の前議員が政治資金収支報告書に記載していなかったことで政治資金規正法違反に問われていますが、この問題を代表はどのように見ていますか。また、これを党として調査するお考えは。

【代表】大きなニュースとして報道されていて、私も重大な関心をもって見ております。まだ第一報的な報道しか出ていないので、今のところ記載上の問題やあるいは特定の前代議士の名前だけが出ていますが、地検が動いたということは、それだけを念頭において動いているのか、さらにその背後にある大きな疑惑を念頭においているのか、現時点ではわかりません。そういった意味で、わが党としてしっかり関心をもち、わかる範囲のことはしっかり把握することが必要であると思います。それ以上の材料がこちらにもあるわけではないので、必要になれば、関係資料を集めることなど含めて、取り組みたいと思っています。

■公募広告の感想

【記者】公募に関する広告について、率直な感想を教えてください。

【代表】今回初当選した議員にどのような人がいるのかということを国民の皆様に伝えることで、私もやってみようかという気持ちを沸き起こさせるような広告であると思い、期待しています。

■ 自民党中川氏、安倍氏の疑惑への対応

【記者】本日の役員会で出た、自民党中川氏の内閣官房長官時代の機密費問題と、安倍幹事長の学歴を独自に調査するということについて、詳しく教えてください。

【代表】いま質問された通りであります。報道によりますと中川現国対委員長が森内閣の官房長官時代に、いろいろな疑惑を指摘されている渦中で一部の団体で金を払ったというような疑惑の報道などがあって、それに係わる名誉毀損かなにかの裁判の中で、広島医師会に内閣自身がある時期どのくらいのお金を官房長官に渡したかという報告をしたということが、客観的な事実であると思っています。当時は一般的に見たときに、選挙の直前というわけでもないし、国対費というものは少なくとも民主党は係わりはありませんが、従来、国会がもめたときにお金がかかるなどと言いますが、時期的にあり得ません。そんな時期に何度にも渡ってお金が動いていたのは、どのようなことに使ったのかという関心は当然のこととしてあります。それはメディアの皆さんも同じだと思います。

安倍晋三幹事長については、わが党の古賀君の問題についてもいろいろ発言をされています。お互い同じことになるかもしれませんが、安倍氏が、二つの大学に行っていたと言ってみたり、一つの大学に2年間行っていたと言ってみたりと、取材や自分のホームページで言っていることがくるくる変わっています。事実関係は、いま調べています。与党第一党の幹事長で、しかもわが党の古賀氏のことでかなり厳しい発言をされていた方ですから、ぜひご自身の口から、当然のこと自らがどの時点でどの大学にいて、どういう学科に在籍をして、どういう単位をとられたのか、明らかにされるだろうと確信しています。まさかこれだけ報道されていて、何も釈明されないことはありえないと確信しています。その確信が崩れたときには、その時点で考えたいと思っています。

■国会正常化協議における民主党の考え方

【記者】先週来の国会の混乱の中で、民主党は審議の中身のいい加減さと委員会運営がひど過ぎるという、この二点を指摘していたが、国会を正常化するにあたって与野党で四つの点に合意されたと思うが、これによって二つの懸念が解消されたと評価されているでしょうか。また、参議院の審議に移って、どういった点に焦点を当てて審議をしたいとお考えでしょうか。

【代表】内容的な点は、この時点で解消されたとか解消されていないとは言いようがないわけでして、これまでの衆議院における審議は極めて不十分であり問題でありました。ですから、参議院や衆議院での追加の質疑の中で、明確な事実関係をきちんと伝える、あるいは現地の状況を毎週一回は報告するということもありますので、それがきちんとなされるということをこの段階では信じて一つの判断をしたということです。

委員会運営についても、もちろんテロ特の委員長の裁きなどについて我々は大きな不満をもっています。この段階では委員長の謝罪があり、国対委員長も、与野党の協議の中で遺憾の意の表明があったということで、この段階ではそれを受け入れたということです。

■自民党中川氏、安倍氏の疑惑への対応

【記者】自民党の中川さんと安倍さんの件だが、仮に満足のゆく説明が得られなかった場合、予算委員会など国会で追及されるおつもりはありますか。

【代表】先ほども申し上げたように、安倍さんについては、追及しないと言っているのではないが、当然自分で説明されるものと確信していますので今はそれ以上のことは何も考えていません。

中川さんの問題は、田中真紀子さんが大臣だった当時の外務省機密費の問題など従来からあるものですが、いわゆる機密費という形で使途を公開する必要がないのだという問題になりますので、これはもっと大きな壁が存在することを念頭におきたいと思っています。これに対しても少なくとも中川国対委員長も一部週刊誌などから疑われているように、官邸機密費をもって私的なスキャンダル隠しに使ったなどということが本当だったら、これは大変なことですから、そうでないならばきちんと証明されるべきだと思っています。


編集/民主党役員室


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