2004年3月16日(火) | 戻る/ホーム/記者会見目次 |
菅直人代表/定例記者会見要旨
○ 政府は日本国内でのテロ防止に万全の措置をとれ ○ スペイン総選挙の結果は英米追随型政治への国民からの見直し要求だ ○ 危機管理問題でもある鳥インフルエンザ対策の法整備を推進 ○ 疑問の解決されない外交官殺害事件で徹底的な情報開示を要求 |
■スペインでの列車テロと政権交代について
【代表】代議士会でも少し申し上げましたが、スペインにおいて列車に対するテロで、200人にも上る死亡者が出て、1400人を超えるけが人が出たということは、大変痛ましい事件であり、あらためて心から哀悼の意を表したいと思います。
またその直後に行われたスペインの総選挙で、それまでほぼ政権を維持することは間違いないと言われていたアスナール政権が結果的に倒れて、野党に政権が移ったということであります。このアスナール政権というのは、ある意味では米英に続いて、最も早い段階から米英の方針を支持し、イラクに軍隊を送っていた。まさにアメリカに追随していた政権であったわけでありまして、逆に言えば、今回の事件を含めて、スペイン国民は、そういうアスナール政権のやってきたことに対して、その見直しを求めたと言えると思っております。
小泉総理も、現在参院選は大丈夫だ、という発言を昨日もされたとある報道で読みましたけれども、危なくなったことを感じて、それを打ち消そうという意図だと私は感じております。つまりは、大丈夫とされたスペインの現政権が、ある意味でこのイラク支援の問題をめぐって一挙に国民の意向が変化をするという、そのことの怖さを小泉総理自身が感じた発言だろうと思っております。
わが党としては、まずはこうした事件がわが国で起きないような万全の措置を、政府に対して強く求めていきたいと思っております。もちろんこのことは、決して容易なことではありません。飛行機の場合は手荷物検査などがそれなりに徹底をしていますが、列車ということになりますと、それも大変難しいわけです。そういった点で、基本的には、水際とかあるいはそういうことが起こる前に防ぐことを考えなくてはいけないわけです。このようなことがわが国で起こらないような対応を、政府に対して強く求めていきたいと思っております。
■鳥インフルエンザ対策について
鳥インフルエンザに対して、政府のほうも遅まきながら対策案をまとめたようであります。当初から申し上げていますように、この鳥インフルエンザ問題も、危機管理、あるいは自然災害に匹敵する、場合によっては大規模災害になりうる、との認識の下に対応しなければなりません。このことは、わが党としても早い段階から申し上げてきたところであります。わが党としての申入れも、私が東京にいなかったものですから、ネクスト大臣の鹿野大臣に、昨日、していただきました。
政府も遅まきながら家畜伝染病予防法の強化といったことを言っておりますが、わが党がもともと主張してきたことでありますので、今国会中にそうした必要な法案は、急いで成立させるようにわが党としても推し進めていきたいと思っております。
■イラクでの外交官殺害事件について
また、何度もこの場でも取り上げましたが、いわゆる二人の外交官の殺害事件につきまして、被害車両が日本に返って来ていて、警察関係の施設に置かれているわけですが、いまだに報道関係の皆さんにも公開されていない状況にあります。何度もわが党関係者が質問を繰り返していますが、いまだにどういう状況で殺害をされたのか、あるいは体内に残っていたはずの弾がどういう銃から発射されたと推定されるのか、そういったことについての答弁が今なおありません。徹底的な情報開示を求めていきたいと思いますし、とくにこの被害にあった車両の公開を強く求めていきたいと考えております。
私からは以上です。
<質疑応答>
■読売新聞の実施したアンケートについて
【記者】(読売)読売新聞がすべての衆議院議員を対象としたアンケートを実施し、その中で
「今の憲法を改正するほうがよいと思うか」、「しないほうが良いと思うか」という問いに対して、「改正するほうがよい」が83%ありました。特に9条に関しては、「9条を改正するほうがよい」が70%あったわけですが、これについてどのように評価されますでしょうか。
【代表】回答率はどのくらいですか。
【記者】6割を若干超える程度です。
【代表】この問題はかなり政党間によって意見が明確に分かれている政党もありますから、どの党が答えて、どの党が答えていないのかということにもよって、数字がかなり変化をするかもしれません。ですから、あまりその数字の細かい点まで、あれこれ申し上げることは適切ではないかもしれませんが、一般的に言えば私自身あるいは民主党としても、憲法に対して、論憲から創憲へという方向性を従来から示しているわけで、創憲というのは、新しい憲法を創るということですから、そういう意味で国会議員の相当多数が新たな憲法というものの必要性を認識しておられるというのは、それは十分に理解できるところです。
そして同時に、憲法9条の問題も、タブーにしないで議論をすべきだというのが、私自身の態度でもあるしわが党の態度でもあります。そういう点でも、9条についても表現はいろいろあると思いますが、タブーなく議論をして、必要であれば変えるし場合によれば変えないこともあり得るという、そういう議論は当然のことですので、今言われたような数字については、なるほどな、と一般的な意味で納得できる結果だとこう思っております。
■今後の国会論戦の戦略について
【記者】(NHK)先ほどの代議士会で代表が、スペインの列車のテロを受けて、しっかり国会でもこの問題について取り組んでほしいとおっしゃいましたが、改めてこれからの国会での国会運営の戦略についてお考えをお聞かせください。
【代表】当初イラク支援の問題が大きな課題であり、そして来年度予算が、これは通常国会の常のことでありますが、最大の課題であって、そしてこの予算が成立したのちには、重要な課題が山積しているのがこの国会であります。特に年金制度については、政府が出されている案は、私はマニフェスト違反だと、つまりは抜本改正の名に値しないものだと、また道路公団の民営化も、全く当初の推進委員会の意見書を無視したものであって、それを尊重したものにはまったくなっていないわけであって、その意味でもマニフェスト違反だと考えております。
そういった意味で、まだ予算の中にこういった問題も含まれておりますし、イラクの問題やまた新たな問題もありますので、参議院でまずはしっかりと議論を続けていただく。予算というのは4月1日から動くわけですから、少なくとも4月に入るくらいまではそれによって国民の生活に影響がないわけです。新たな課題も出てきているわけですから、参議院における新たな課題も含めた議論をしっかりしてもらいたいと思っています。その上で重要な政策課題、年金問題などに対しては、わが党の考え方も参議院の予算が上がった後に本格的な論戦を行うと、そういう姿勢で臨んでいきたいと考えています。
■スペイン撤兵と日本の自衛隊派遣について
【記者】(TV朝日)スペインで政権交代があり、6月30日までに現在の状況が変わらなかった場合、スペインの軍隊を引き上げるということも示唆していますが、それについてのご所見をお聞かせください。
【代表】これは新たなスペインの政権の方針にそのままなるのか、少なくとも当時の野党の選挙公約だというふうに説明されていると私は理解しています。ですから、スペインの新たな政権として選挙で公約をし、そして6月30日にきちっとした政権移譲と国連中心の体制ができない場合には撤退すると。それが今回選挙で勝った野党の方針だったと、このように理解しています。
その上で、わが国の場合はこれはわが国として、イラク特措法に基づいての派遣であるわけで、わが党はイラク特措法に基づく派遣そのものが、何度も繰り返しておりますが、非戦闘地域というありもしないフィクションに基づいて組み立てられた論理で、それ自身間違っている、という意味で反対してきたということはご承知の通りであります。そういった意味では、スペインのことはスペインの皆さんが決めればいいし、わが国の事は当然ながらわが国の中の議論で決まっていくことだと、こう思っています。
あえて言えば、代議士会でも申し上げましたように、わが党においても、イラクに対する人道支援、復興支援が必要ないと言っているわけではなくて、それはやるべきことはやるべきだけれども、アメリカやイギリスの、いわゆるイラク戦争を進めたグループに参加するような形での支援ではなくて、イラク人主体の暫定政権なりができた中で、同時にその政権からの要請や、国連の新たな時点における要請などがあった場合に、それにどう対応するかは、検討に値すると考えています。こういった考え方が、今度スペインで勝った政党と、比較的共通性があるかなと思っております。
【記者】(毎日)関連ですが、スペインの新政権が言っているのも、国連による枠組みができない場合、暫定政権に主権が委譲されなかった場合には撤退ということだと思いますが、6月になってそのような事態になったときに、民主党として、日本の自衛隊に撤退を求めていくようなことを海外等で訴えていくお考えはありますか。
【代表】この自衛隊を出す出さないという問題は、わが党は反対しましたけれども、結果において国会で承認をされて出された、少なくともそういう意味では、内容的には私はおかしいと思っていますが、手続き的には国会の了承を得て出されたものです。ですから、そのことが6月30日の時点で、合法的というか、適切な手続きで出されたものに対して、どういう姿勢で臨んでいくのかというのは、いまの段階であらかじめ6月30日になったらどうこうという考え方をするつもりはありません。
逆に言えば、6月30日になったときにどういうイラク人中心の政権が生まれるのか、その政権がどういう姿勢を示すのか、あるいはそれが、どこまでその時点で国連の主体性がこの問題において確保されるのか、そういった状況は、単に6月30日という日程だけでは判断できません。ですから、その6月30日、あるいは7月に入った中で、わが党の原則的な考え方との関係で、どういう状況が生まれているのかということになると思います。
あえて言えばスペインの問題は、もう一つ現実に、200人もの犠牲者を出したテロがスペイン国内であったということですから、この問題がスペイン国民に与えた衝撃は極めて大きいと思います。わが国は幸いにして、まだ日本国内でのテロ事件は報告されていませんから、そういう点ではまずは日本国内におけるテロを防ぎきれるかどうか、これが私は、現小泉政権、つまりはその危険を覚悟の上でイラクに自衛隊を送った、現小泉政権の最大の責任だと思います。イラクにおける自衛隊員の安全はもとよりですが、日本における国民の安全というものを確保できるかどうかが、イラクにおける問題と並んで、最も大きな責任だと、こう思っています。
■秘書制度改革案及び道路公団民営化法案について
【記者】(朝日)今日まとまりました、党としての秘書制度改革案ですが、この案をもって与野党での協議の場にもっていくことになるのでしょうが、もしこれが合意に至らなかった場合、ありうべしの話かもしれませんが、民主党として単独で独自にもおやりになるおつもりでしょうか。
また2点目は、道路公団の民営化の関連で、対案の形で民主党として高速道路の無料化法案の提出を検討しているような話があったかと思いますが、これは引き続き対案として提示されるおつもりでしょうか。
【代表】秘書制度については、皆さんのお手元にも文書が流れているのか、あるいはいないのかわかりませんが、私が理解した中で言えば、そう遠くない時期に、この問題で議運の武部委員長の試案が出ると聞いております。そこでまとまったことについてやりましょうということで、その場に向かう方針としてまとめたことが提案されていくと、こう聞いております。ですからどういうものがまとまるかによって、その後の党としての対応は、独自で何かするのかそれともまとまったものでまずは了解した中で、もう少し中期的な観点から、より本質的な問題に入っていくのか、それはその段階で決められるものだと理解しております。
それから、道路公団の民営化については、先ほども少し申し上げましたが、総理は道路公団が1だったら、郵政事業の民営化は100だと、100点だと言われたようですが、1のほうができなくて、100ができるわけがないわけでありまして、そういう意味では、1ができない小泉政権に、100の改革ができるはずがないということを申し上げておきたいと思います。
その上で、これに対する対案の議論が私もあったというふうに理解しておりますが、どうも、今の政府が出している法案の矛盾点をしっかりと質していくうえでは、法案という形で対案を出すことでは、なにかこの小泉流の逃げ道を逆に与えてしまって、政府案がおかしいということの焦点がぼけるのではないか。つまり、民営化推進委員会というのは、民営化を推進しようとした委員会ですから、その委員会の意見に対してもまったく合っていないのだという議論をするときに、それと根本から違う考え方の無料化案ということは、もちろん我われは来年度の予算案の中でも提起をしておりますし、マニフェストでも提起をしておりますからその考え方は変わっていませんが、しかし議論をする上では、政府が出している民営化案一本に絞って、矛盾点をあらゆる角度から切り刻んでいくことのほうが有効ではないかと、そういう見方がいま出ておりまして、そこはNCを中心とした、あるいは国対との連携の中での、戦略・戦術の問題として判断していけばよいと考えています。
決して、わが党が無料化案を一歩も引き下がるわけではないし、政府の出している民営化案が、まったく矛盾に満ちたものであるということも、そういう考え方を変えるつもりはありませんが、戦略・戦術として、対案を出すか出さないかは、それはNCの考え方に任せたいと思っています。
【記者】(共同)秘書給与の関係ですが、今日代表が常任幹事会で秘書制度の抜本的な改革案を検討するという話をなされたようですが、プール制を巡る議論は、今後党内でどう進めるおつもりなのか、また改革案を具体的にまとめるお考えがあるのかどうかも含めてお聞かせください。
【代表】ちょっと話が違いませんか。私が常任幹事会で申し上げたのは、一つの考え方として、これまでは主に国会議員に、いろいろと自分の公設秘書の名前を全部公表し、続柄を公表し、さらには勤務地も公表するということをやっているわけでありますが、場合によっては公設秘書本人から、例えば国対なりの関係者が一人一人お招きをして、実情を聞くというか、それで適切な形を取られていればそれで結構ですし、不適切な形がもしあるとすれば、改善を本人及び国会議員に望んでいくと、そうしてすべての公設秘書の皆さんに、いわば状況をお聞きすることも一つのけじめのつけ方としてあってもいいのではないか。そうすれば、これまでいろいろな経緯があったとしても、これからはある意味では公設秘書本人も、国会議員も含めて、再スタートを切ることができるのではないか、とそういう主旨のことは申し上げましたが、これは検討を指示してほしいということで申し上げたところです。
■年金制度改革について
【記者】(NHK)秘書制度の話ですが、各党の議会制度協議会でまとまらなかった場合に、民主党独自ではもしかしたらやらないかもしれないという話がありましたが、各党で一斉にやらないとなった場合に、民主党だけが不利になるというお考えでそうおっしゃったのでしょうか。
また年金案ですが、民主党の独自案の提出時期は予算の成立後ということになるのでしょうか。
【代表】何度も申し上げた中に含まれているとは思いますが、秘書制度はやらないといっているのではなくて、まずはいま、この問題の衆議院における検討が、議運で行われているわけですから、それに対してわが党の考え方は言うけれども、そこで決まったことについては、まずは基本的には従おうと。その内容を踏まえた上で、さらにどうすべきかということは、その段階で判断しようと、そういう意味です。
年金については、わが党が対案を用意していることについては、もう昨年の選挙のときからはっきりしていますけれども、年金の本格的な審議がどの段階から始まるかということでいえば、今日の参議院役員会でも、参議院の立場からすればまだ参議院で本格的な予算審議をしているときに、予算とも係わりのある重大な法案が、衆議院で議論が始まるというのは、参議院に対しておかしいのではないかという強い意見が出されました。そのようなことも含めて、どの段階から年金など、必ずしも年金が一番目か、二番目か、十番目かそこまでは知りませんが、重要な課題が議論されるのは、予算の参議院における審議が終結をして、予算審議が終わった後であろうという、あるいはそうあるべきだろうということが参議院から強く言われましたので、そういう認識に立っていると。ですからそういう認識の中で、しかるべきときに案を出せばいいわけであって、先に出す必要は必ずしもないのではないか、という認識であります。
編集/民主党役員室
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