「新しい政府」を実現するために/PART I
転換期を担う「新しい政府」を創る
真の国民主権を実現する分権連邦型国家
Point-1 中央集権型の時代はすでに終わった
Point-2 地方に主軸を置くことでさらなる繁栄が約束される
Point-3 「官僚本位」から「国民本位」へ、今こそ着手の時が来た
Point-4 しがらみのない政党の強いリーダーシップが改革を断行できる
Point-5 一人ひとりが自立した納税者となることで主権者意識が向上する
1.「分権連邦型国家」への転換が求められています。
民主党は、当面する「経済の再生」とともに、「社会の再生」を同時に進めていくことが、いま政治に求められていることだと考えています。そのためには、この二つの再生にチャレンジでき得るだけの政治の活性化がなくてはなりません。それには、日本における「本格的な民主主義の実現」と「政治的リーダーシップの確立」が欠かせないのです。
日本における「社会の再生」を進めて、この国をもっと良い国、つまり「最良の国・日本」にするためには、まず、これまでの中央集権型国家を排することが必要です。そして、国民の自己決定や地域の自己責任がより明確となる「分権連邦型国家の実現」をめざすべきです。「政治はリーダーシップの発揮に全力を挙げ、地域では様々な人たちが参画して民主主義が活性化する」、そんな国のかたちをめざしたいと思うのです。
明治維新以降のわが国は、文明開化・軍国主義・戦後復興という三段階のプロセスを通じて、欧米に「追いつき追い越す」という目的の下、中央政府が権力を独占し、地方自治体はその補完的役割を担わされてきました。しかし、権力の集中を必要とするキャッチアップが実現されたことで、中央集権型はその役割も終わりを迎え、今日では官依存の風潮を残す弊害にすらなっています。
いまや、住民の多様なニーズに対応でき、住民による参加と監視がより容易である地方自治体こそが、行政の主役としての地位を占めるべきときです。このためには、行政サービスの提供主体として、“基礎自治体(現在の市区町村)”を基本に据え、どうしても基礎自治体では担うことのできない事務に限って“広域自治体(現在の都道府県)”が担い、国は、広域自治体では担い得ない特定の事務に限って処理するという、「スリムで限定された中央政府」と「効率的で身近な地方政府」が対等に並ぶ新しい仕組みを確立することが必要です。
民主党は、「地域のことは地域で決める」「自分たちのことは自分たちで決める」という国民主権と民主主義の原点に立ち返り、「分権連邦型国家」への転換を大胆に進めていきます。
中央のスリム化と地方の充実化をはかるために
民主党は、基礎自治体・広域自治体・国のそれぞれの役割を明確に規定した法律(「中央政府権限限定法」)を制定し、国の役割と権限を限定しようと考えています。そして基礎自治体にほとんどの事務権限及び財源を委ねることによって、地域の事情に応じた木目の細かい行政サービスの提供や行政に対する住民の参加と監視が可能となると考えます。そして、これによって中央政府のスリム化も進み、国家規制の大幅な縮小を実現することができるはずです。
(a)国の事務を限定する
国が行う事務を明確に限定し、具体的に列挙します。「国の事務」は、外交・防衛・皇室・司法・通貨の外、ルールの設定とそのチェックに特化させ、指導行政にかかわる事務や実施事務は、原則、地方に移管します。社会保障における国の役割も、その財政調整機能と最低基準の設定に限定し、具体的な実施・給付については、地方自治体に委ねます。
公共事業については、大規模災害に対する復旧事業、羽田・成田・関西空港・伊丹・中部・新千歳・福岡の国際空港などや、東京・横浜・名古屋・大阪・神戸の国際港に限定します。このほか、三つを超える広域自治体に関わる公共事業に限って、一定のルールの下に、国が実施・関与できるものとします。
(b)広域自治体の事務を適切なものにする
これまでの広域自治体(都道府県)事務の大部分を基礎自治体(市町村)に移管します。広域自治体の事務は、国の事務を外れるもののうち、高等教育の一部と通商を除く経済政策・幹線道路の整備・河川管理など、基礎自治体では取り扱いが困難な事務に限定して、法律で具体的に列挙します。その結果、現在の公共事業の多くの部分は、広域自治体の事務となりますが、その範囲は、空港及び港を除き、三つを超える基礎自治体に関わるものとし、かつ全域的な視点から必要と思われるものに限定します。
(c)基礎自治体の事務を充実させる
国または広域自治体の事務として限定列挙された事項以外は、すべて基礎自治体の事務とします。特に、教育・福祉・街づくりなど、生活に直接関係する行政サービスの提供は、そのほとんどを基礎自治体の事務とします。国の広域自治体への関与とともに、広域自治体による基礎自治体への関与も、原則として禁止いたします。
(d)「地方自治基本法」を制定する
地方自治体の権限と財源などについて明確にした「地方自治基本法」を制定します。その中で地方自治体が取り扱う事務に関して、自由に条例を制定できる旨を明記します。議会や首長のあり方についても、民主主義と自治の基本に反しない限り、自治体ごとに自由に決定できることとします。
(e)国・地方紛争処理委員会を設置する
自治体間の紛争や、国と自治体、広域自治体と基礎自治体の紛争については、自治体代表を含めた独立行政委員会(「国・地方紛争処理委員会」)を設けて処理します。
地方へ権限や財源を移譲するために
(a)税・財源を地方に移譲する
地方自治体に移譲する財源については、国と地方の税財源の比率を、現在の「二対一」から「一対一」に転換することを目標に、所得税の税率一〇%に相当する部分を地方に委譲します。
また、当面、非裁量的補助金を除き、使途を限定した個別補助金は廃止し、使途を限定しない包括補助金に転換します。
(b)簡素で透明度の高い財政調整制度を確立する
国と地方の財源を一対一に転換した後、残る国の税収のうち二五%を超える部分を、地方自治体の財政調整の資金に充当することを義務づけます。そして、人口・面積・人口密度・一人あたり所得・従属人口比率を要素に、明確な公式に基づいて配分します。
合併手続きを容易にし、自治体の自主的再編を行うために
連邦分権型国家においては、広域自治体を全国一〇前後の州に、基礎自治体を一〇〇〇程度の市に、それぞれ再編することが望ましいと考えます。しかし、その再編プロセスについては、地域住民の自主的判断を尊重することが肝要です。
当面、住民意思の確認手続きを基礎に、合併手続きを容易にするとともに、合併から五年間については、財政調整のための交付金を特別に上乗せするなど、より強いインセンティブを与えます。また広域連合など合併に至らない自治体間の連携を容易にします。
2.官僚システムから脱却して、政治的リーダーシップを確立します。
政治が行政をコントロールし、その政治を国民が選挙を通じてコントロールすることによって、初めて「国民の声に基づいた政府」「国民主権に基礎を置く政府」が実現します。しかし、現状は、政治がリーダーシップを発揮しようと思っても、それをサポートするスタッフ機能が十分でなく、結局は官僚システムに依存せざるを得ません。何よりもこの官僚が情報を独占しているために、政治による行政のコントロールも、また、国民による政治・行政の監視も、困難な現状にあります。これでは政治の現状を変えることはできません。
時代はいま、必要な改革を「思い切って迅速に」実施する強い政治のリーダーシップを求めています。国民はまた、政策決定過程が明らかになり、官僚の抵抗によって改革が骨抜きにされることなく、国民のための政治が展開されることを望んでいます。民主党は、内閣制度をさらに改革し、国会によって選ばれた首相が国内外の問題について、より確かで迅速なリーダーシップが発揮できるよう、政治改革にチャレンジしていきます。
首相の権限を強化・明確にするために
内閣法を改正し、内閣の首長である内閣総理大臣の統括権や指揮監督権、裁定権などを明確にします。また、補佐室、秘書室、政務室、政策室、報道室などからなる強力な「首相府」を設置して、首相の政治的補佐機能を充実します。
「内閣府」の機能を整備し、「人事・公務員制度」「行政評価・行政改革」「政策評価」「予算編成」に関する事務を担当する機関とします。特に予算編成については、予算編成部局を内閣府に置き、内閣総理大臣直轄で総合的な調整を行うようにします。
政治主導の省庁運営にするために
副大臣、政務官の配置など、大臣の機能強化策は前倒しで実施します。事務次官会議は廃止して、副大臣会議で政府部内の調整を行います。次官・局長など指定職以上の幹部職員は特別職とし、民間人登用を含む人材の流動化を容易にします。当面、選考による民間人登用を積極的に活用します。
行政監視能力を強化するために
内部監査の限界を是正するため、国会による行政監視機能を強化します。米国におけるGAO(General
Accounting Office)に準じた「行政監視院」を国会に設置します。「行政監視院」には、立入調査、資料提出請求、参考人招致などの強力な調査権限を与え、行政に対する外部監査機能を持たせます。
内閣府に「行政改革推進室」を設置し、各省庁に対する指揮権を備えた政策評価を恒常的に行います。また、「日本版GPRA法」(政府業績評価法)を制定し、各行政機関に対し業績目標を定めさせ、その達成状況を次年度の予算編成に反映させるシステムを導入します。
さらなる情報公開を推進するために
成立した「情報公開法」をさらに充実させます。知る権利を明記し、「情報公開法」の対象機関を、特殊法人や行政代行業務を行う公益法人・営利企業にまで広げます。非開示情報の範囲をより限定するとともに、不服申し立てができる裁判所を全国すべての地方裁判所に拡充します。また、非公開の正当性を審査するインカメラ制を導入します。行政情報の保存・管理に関する法律を制定するとともに、大臣主導のガイドラインを設けて、インターネット上などに行政情報の開示を義務づけるなど積極的に情報公開を推進します。
3.行政改革を徹底的に推進します。
民主党は、行政改革を単に省庁の再編成にとどめることなく、その質的変革をはかることが重要だと考えています。企業や市民社会の自己責任・自己規律を曖昧にし、かつ行政責任をも不明にしたまま巨額の税が投入される今日の政治・行政システムは転換されなくてはいけません。行政指導や護送船団方式による行政スタイルを改め、公正で透明度の高いルールの下の行政を確立する必要があります。
また、国が多額の借金を抱える財政の現状は、少子高齢社会が進行すれば必然的に破綻へと向かうことは明らかです。行政の無駄を省き、小さくても効率の良い行政を実現しなければなりません。強い権限を持った首相府・内閣府が主体となって、政治主導の大胆な行政改革を断行します。
財政を透明なものに変えるために
単年度主義、単式簿記、現金主義など、弊害の目立つ現在の公会計制度を抜本的に改め、予算・決算に企業会計的視点を導入し、国の財政状況を国民にわかりやすく開示します。国・財政投融資・特殊法人などの各々と、その総体について、毎年、貸借対照表を作成し、公表します。その資産及び負債は時価計上することとし、その計算根拠についても、すべて公開して、国民によるチェックを可能にします。
地方への権限委譲とスリムな中央省庁化のために
看板の掛け替えにとどまった現在の中央省庁再編に代え、地方への権限委譲を踏まえて、スリムな中央省庁に再編します。国の事務を「企画部門」と「実施部門」に整理し、公権的強制力行使を伴わない実施部門は、行政本体から切り離し、原則として民間に委託します。どうしても民間委託が不可能な分野についてのみ、独立行政法人によって実施します。
中央省庁再編後の公正な運営のために
独立行政法人の長は、すべて民間も含めた公募によって決定します。そして、その長に責任と権限を集中させ、弾力的な予算、運営、人事を可能にします。「企画部門」から独立行政法人への出向・天下りを禁止し、なれ合い・癒着を防ぎます。既存の特殊法人は、「廃止」「民営化」または「独立行政法人化」のいずれかに区分し、制度そのものを廃止します。国の事務を民間に委託する際に、天下りを受け入れている企業・公益法人は対象から除外します。このことによって、委託先と官庁・独立行政法人との癒着の危険を排除します。
公共事業のあり方を明確にするために
従来の公共事業関係長期計画と国土総合開発計画及び土地利用基本計画を、内閣総理大臣の統轄下で策定する「社会資本整備総合計画」に一本化し、全体像が明確になるようにします。この計画には、事業費と経済効果の試算や環境への影響評価などの公表を含めることとし、国会承認も義務づけます。
入札制度に関しては、客観性・競争性をさらに高め、談合などの不正に対するチェック機能を強化するとともに、情報公開を通じて透明性を高めます。自己責任を前提とした民間資金による公共事業(PFI=Private
Finance Initiative)を積極的に採用し、国が行う場合とのコスト比較を義務づけます。
地域ニーズに合致した事業を行うため、住民ニーズを熟知した自治体が責任と権限をもって事業を行えるようにします。このため、財源的裏づけのある地方分権を推進します。また、事業の立案・実施・評価の各段階においてNPOやNGOの参画を促進します。
公務員の人事制度をより望ましくするために
天下り規制の対象を、営利企業から、特殊法人・独立行政法人・公益法人にまで拡大します。省庁別縦割りの人事・採用制度を改め、省庁横断的に国として一括採用・一括人事を行います。指定職以上の幹部国家公務員を特別公務員に変更し、民間人の登用を含めて人材の流動化を容易にします。
開かれた「電子政府」を実現するために
IT革命(情報技術革命)の成果を十分に取り入れ、行政情報の一〇〇%電子化、行政手続きの簡素化と一〇〇%ネット処理可能な体制を構築します。そして世界のモデルともなる国民に開かれた「電子政府」の実現をめざします。また、政府調達の電子化・透明化、各省庁などを統合されたネットで結ぶ政府VANの整備をし、高速化・ネット化を進めます。
4.「公平・簡素・中立」の税制を確立します。
税は、政府と国民をつなぐ結節点であり、国のかたちを端的に現すものです。その税のあり方に対する国民の信頼が失われている現状は、まさに政治の貧困そのものです。税に対する不信の最大のものは、クロヨンという言葉に象徴されるような徴税の不公平のほか、無駄な公共投資やバラマキ型歳出が顕著なうえ、その透明度が低く、解りにくい構造となっていることなどにあります。これからの税制は、(1)水平的・垂直的・世代的に公平な税制、(2)例外をできるだけなくし、徴税コスト削減にも資する簡素な税制、(3)資源配分を人為的に歪めることのない中立的な税制――という「公平・簡素・中立」の原則に基づき、透明度の高い税構造の確立につとめなくてはなりません。また、グローバル化した経済に対応し得る国際的整合性をも考え方の基本とします。
この考えに基づき、民主党は、所得や資産の格差に留意しつつ、「最高税率の引き下げを含むよりフラットな直接税の実現」「租税特別措置や軽減税率、特殊法人や公益法人等への優遇税制の見直し」「NPO税制の整備充実」などをはかります。さらに、「将来における消費税の福祉目的税化と直間比率のさらなる改革」「地方税として不安定な法人事業税の外形標準課税方式への改革」「所得税の最低税率の住民税への統合を中心にした地方分権を支える税財源の充実」などの検討に取り組みます。
こうして、「誰もが納税をし、その使途を監視していく社会」「すべての人が自立した納税者として成り立つ社会」の実現をめざし、課税最低限の見直し、徴税側の都合のみを優先させてきた源泉徴収制度・年末調整制度などの各種徴税制度の改革を進めます。
所得、資産、消費課税のバランスをはかるために
(a)所得税の簡素化と総合課税化をはかる
個人所得課税については、総合課税化と課税ベースの拡大を通じた税率の引き下げをめざします。このため、納税者番号制度を導入して所得の把握を公平にします。課税ベースの拡大に当たっては、各種人的控除制度などの総合的見直しを行います。また個人単位の課税をめざし、特に女性の就業意欲をそぐような税制上の措置について改革を進めます。
(b)法人課税を見直す
法人課税については、単に税だけでなく、各種の法人負担のあり方を含めて見直します。その一方で、法人事業税の外形標準課税化などの検討や、法人住民税均等割りの見直しなどによって課税ベースの拡大をはかります。
(c)有効な土地税制の確立をはかる
資産課税のうち、土地・建物に対する保有課税については、地方自治体の自主財源である固定資産税を基本としながらも、土地基本法の精神に立脚した地価税も有効に活用します。その課税対象となる時価の算定のあり方については統一し、自治体はその税率を自由に決定できるものとします。土地譲渡所得課税を除く土地流通税は、手数料的側面の強い登録免許税を実態に即して登録料に変更する以外は、廃止を基本とします。
(d)相続・贈与税は累進課税方式とする
資産の相続・贈与については、個人間の資産格差が拡大しつつある傾向をも考慮しつつ、不労所得に対する一定の累進制を持つ課税方式を維持します。その際、中小零細企業のいわゆる事業継承の取り扱いについては改めて検討します。
(e)消費税を改革し福祉目的税とする
消費税は、基礎年金財源に充てる福祉目的税に改めます。「益税」「損税」を生じる原因である消費税の仕入れ税額控除のあり方について、現行の帳簿方式からEU型付加価値税と同様のインボイス方式に変更します。EU諸国の付加価値税とくらべて高過ぎる免税点(現行三〇〇〇万円)についても、インボイス導入に伴う納税義務者の負担増も勘案しつつ、適切な水準に引き下げます。なお、消費税の逆進性を緩和する措置として、カナダの消費税額控除制度と同様の世帯人員数等に応じた控除方式を検討します。
徴税システムをさらに充実させるために
(a)納税者番号制度を導入する
公平な所得捕捉と課税には、納税者番号制度の導入が不可欠です。ただし、利子・配当・株式譲渡益など、総合課税化を行うのに必要な範囲に限定した番号制度とし、プライバシー保護などに留意しつつ導入します。
(b)源泉徴収制度か年末調整制度かを選択できるようにする
サラリーマンの源泉徴収制度における年末調整制度については、年末調整と確定申告の選択制についてその選択の幅をさらに広げていきます。
(c)分権連邦型を見すえた徴税機関にする
徴税事務の効率化と住民の利便性をはかるため、国税、社会保険料や地方税のうち所得課税など一定の税目については、将来の分権連邦型国家において新たに「歳入庁」を設置し、一元的に代理徴収事務を行うこととします。地方自治体の独自の調査により賦課している税目については、引き続き地方自治体が徴収を行うようにします。
(d)国民の監視・異議申し立てを充実させる
サラリーマン税制改革の一環として、納税者による更正の請求、異議申し立て、納税猶予などの納税者の地位と諸権利の保障を明確にした「納税者権利憲章」を制定します。また、納税者教育を推進するとともに、脱税への制裁・罰則を強化します。
5.信頼される政治に向けた改革を断行します。
政治改革は、選挙制度改革にとどまるものではありません。今日もなお、政治資金の透明化、政・官・業の癒着、国民の政治不信など、政治改革を必要とする状況は変わっていません。政治が真のリーダーシップを発揮するためには、国民から信頼されることが必要です。
政治倫理の確立をはかるために
国会議員等の資産公開制度を強化し、在任中の株取引などを対象に含めるとともに、親族・秘書などの名義による公開逃れに歯止めをかけます。また、虚偽記載に対しては強い罰則を設けます。国会議員等が、特定の者に不当な利益を得させるように、公務員に口利きをして報酬を得ることを罰則つきで禁止します。
より望ましい選挙制度にするために
地方分権の進展に対応して、衆参両議院の議員定数を段階的に削減します。衆議院の選挙制度については、「政権を選択する選挙」という意味合いを持つ小選挙区を基本とした現行制度の骨格を維持します。ただし、繰上当選や比例当選議員の小選挙区補欠選挙への出馬など問題のある部分は補正します。参議院については、二院制のメリットを生かす見地から、衆議院との役割の違いを重視して、選挙制度を見直します。
政治への参加機会を拡大するために
選挙権年齢を十八歳に引き下げるとともに、被選挙権年齢も引き下げます。在外邦人投票制度を拡充し、選挙区選挙についても投票の機会を保障します。インターネットを利用した選挙運動を可能にするとともに、電子投票制度の研究を進めます。定住外国人の地方参政権を認めます。
多選による権力集中を防ぐために
地方自治体の首長の四選を禁止します。
6.開かれた、かつ迅速な司法を実現します。
現在の日本の司法は、「二割司法」と呼ばれるように、本来期待されている機能のごく一部しか果たしていません。紛争の多くの部分が、「泣き寝入り」「政治決着」「暴力」「行政指導」などで解決されており、司法は量においても質においても、本来の働きをしていないというのが実状です。政・官・業の癒着から生じる不正や腐敗を公正な立場からただすため、また、社会の変化によって生じる様々なトラブルや犯罪を裁いていくためにも、司法の機能を高めると同時に、「国民に身近で、国民の権利を守る司法」へと改革していくことが必要です。民主党は、司法を国民の手に取り戻し、新時代のニーズに対応するため、その抜本的な改革を断行します。
現在、わが国は、国際化やそれに伴う規制緩和・自由化の時代を迎え、新たな法的サービスの必要にも迫られています。これからは「長くて費用のかかる」裁判は通用しません。社会のルールを明確にし、そのルールにのっとって、合理的かつ早期にトラブルを解決する良質な法的サービスを提供します。
法曹人口の不足を改善するために
司法試験合格者の数を、少なくとも一五〇〇名程度まで増員します。司法試験合格者の増員に伴い短縮された司法修習期間を補うため、修習終了者は全員弁護士補として一年間のOJT(職場内訓練)を行い、その後に法曹資格を得て、弁護士または検事になる制度とします。
また、迅速な裁判を実現するため、裁判官の数を当面三割程度、検察官の数を当面二割程度増員します。また、裁判所書記官、検察事務官の増員も行います。
なお、現在、検事・判事の資格を有しながら、省務・裁判所事務・出向・研修などによって本来の業務に就かない法曹にあっては、随時その数を公表するとともに、総体における比率を一定にします。
裁判の迅速化をはかるために
現在の民事裁判では、争いのある事件については、長期化することが避けられない構造になっています。当事者による主張・立証活動について、原則として短期集中的に実施することを義務づける集中審理方式を採用し、裁判の迅速化をはかります。
裁判官の登用制度を改善し、より正しい裁判がなされるために
裁判官のキャリアシステム(官僚制)を改め、法曹一元制度を実現します。判事の資格を弁護士・検察官経験十年以上を有する者などとし、裁判所ごとに新たに「裁判官任命諮問委員会」を設置してその推薦に基づき任命します。今後十年間をそのための移行期間とし、基盤整備を進めるとともに、弁護士から裁判官となる者の数を順次増加させます。裁判官と検察官が相互に交流する制度は、裁判の公正さを疑わせるおそれがあるため、直ちに廃止します。裁判所のジェンダーバランスもはかります。
行政に関する裁判をより公正にするために
行政に関わる裁判に、参審制度(職業裁判官と共に一般国民の代表が参加して裁判を行う制度。職業裁判官を排除しない点で陪審制度とは異なる)や陪審制度の導入を検討します。その場合の導入対象は、行政機関や公務員が当事者となる行政訴訟と民事訴訟、公務員犯罪に関わる刑事訴訟とします。
今日司法の分野において、行政訴訟ほど市民にとって不本意なものはありません。行政は社会経済の多様化によって拡大しており、訴訟を伴う紛争も多く発生しています。しかし、訴えの二〇%は不適法として本案審理を受けることなく門前払いにされています。処分性・原告適格性などの要件をはじめ、陪・参審制の導入と併せて、現行の制度を改革し、行政訴訟の実効性を高めていきます。
裁判を受ける権利を平等にするために
「法律扶助法」と「被疑者国選弁護法」を制定し、経済的理由で裁判を起こすことができなかったり、弁護士を依頼できなかったりする状態を解消します。