「新しい政府」を実現するために/PART IV
「安心できる社会」「選択できる社会」を早急に築き上げる
二十一世紀を幸せな時代にする、福祉・医療から育児・治安環境まで
Point-1 政府が本腰を入れれば、高齢化社会の不安は激減する
Point-2 早急に介護基盤の緊急整備に集中投資すべきである
Point-3 すべての子育て不安を解消する
Point-4 障害者・被災者……に、思いやりのある社会を築こう
Point-5 今、「モラルが守られる国」に立て直さなければ明日はない
1.安心できる福祉社会が切望されています。
民主党は、国民生活の安心と安全を何よりも優先して確保します。その基盤がしっかりと確保されてこそ、国民の一人ひとりの自由な選択と自立が可能となると考えるからです。
高齢社会は、長寿長命社会であり、本来、人類の目標でありました。しかし、現在の日本が直面しているのは高齢社会への不安です。年金と医療保険の財政破綻が囁かれ、介護基盤が不十分な中で介護保険が導入される現状は、高齢者のみならず、わが国全体に大きな不安を生み出しています。
民主党は、医療保険制度と年金制度の抜本改革を断行し、将来にわたって、安心のためのセイフティネットを確保します。その将来像を正直に示すことで、部分的には国民の負担増を提起してでも、低所得層の実質的負担増を避けつつ、安心が確保されることを明確にします。
介護保険は、予定通り二〇〇〇年四月から導入し、遅れている基盤整備に集中投資して「保険あって介護なし」という状況を回避して、地域格差の解消を緊急に実現します。その財源は、不要不急な従来型公共事業予算を振り向けることとし、地方における雇用の確保といった経済的効果にも結びつけていきます。
2.満足のいく社会保障制度に改善します。
安定した年金制度を確立するために
年金制度への不信を払拭し、制度の長期的安定をめざして、抜本的な改革に着手します。年金は、高齢者の所得保障の柱であるので、給付水準の確保につとめる一方で、将来世代に過重な負担を押しつけることのないような給付と負担の水準を設定します。また、年金制度の改革とともに、六十五歳現役社会の実現、社会保障体制の総合的整備などに取り組みます。
(a)「国民基本年金」を創設する
現行の基礎年金制度を改革し、全国民に一律定額の年金額を給付する「国民基本年金」制度へと再編し、セイフティネット(最低所得保障)として確立します。
基本年金財源の一部を消費税にすることで、給付水準と消費税率を連動させ、負担と給付の関係を明確にします。低所得者にとって負担の大きい定額制の基礎年金保険料を廃止するとともに、現行の基礎年金部分に相当する約四〇兆円の積立金については、少子高齢社会のピークをにらんで計画的に取り崩し、消費税率の抑制をはかります。
(b)個人の選択を生かす年金システムに変える
定年制と終身雇用制を特色とする日本型雇用慣行の変容や、人々の生活意識の多様化にも対応するために、個人の選択を生かせるような年金システムを構築します。すべての個人が自分自身の年金権を持てるよう、給付と負担の設計を世帯単位から個人単位へ転換します。その結果、就労や結婚など個人の選択に年金制度が左右するような事態を避け得る制度とします。特に、女性の年金権の確立や無年金障害者問題の解決を進めます。パート労働者の適用拡大や総報酬制を導入し、企業年金や私的年金との組み合わせの選択肢を広げます。また六十五〜六十九歳の在職者の厚生年金を調整します。
厚生年金の報酬比例部分については賦課方式とし、当面現行の物価スライド及び賃金を維持します。また、ボーナスを含む総報酬制を導入する一方、パート労働者等についても加入を進めます。育児休業期間中の保険料の事業主負担分は免除します。
(c)年金資産の運用や企業年金のあり方を正す
年金資産の運用においては情報公開の仕組みを導入し、安全で透明度の高い年金資産運用体制のあり方を整備します。
厚生年金基金の代行制度を抜本的に見直し、確定拠出型年金制度の創設や受託者責任の明確化、受給権保護などを目的とする「企業年金基本法」を検討します。
質が高く、かつ効率的な医療制度を確立するために
(a)高齢者を対象にした新しい医療保険制度を創設する
現行の老人保健制度を廃止し、新たに高齢者医療保険制度を創設します。国民健康保険や被用者保険の制度を前提に、年齢階層別に見た一人当たり医療費を基準とした財源調整を取り入れた新しい方式の導入を検討します。保険制度別に比較して、医療費の最も低いほうを基準とすることなどによって、より一層の効率化、医療費の適正化をはかることができるようにつとめます。
(b)包括払方式の導入によって診療報酬・薬価制度を改善する
医療費の合理的支出を確保するため、包括払方式を拡充します。慢性期医療については診断群別包括払方式に切り替え、急性期医療についても同様の包括払方式を基本とします。包括払いとなる慢性期医療については、その最低基準を設定し、医療水準を確保します。薬価は公定価格制を廃し、市場原理に任せます。診療報酬の算定に当たっては、技術評価を取り入れたものとしてこれを行います。
(C)保険制度を抜本的に改革する
現役世代の保険集団を再編成し、保険者機能を抜本的に強化します。政府管掌健康保険は、広域自治体単位に分割し、国民健康保険は、組合国保を除いて広域自治体単位に統合します。零細な組合健康保険については、適正規模への統合を推進します。また、保険者機能として、医療機関に対する評価機能、医療機関の指定・取消権限、独自の診療報酬契約締結権などを検討します。
分立する各医療保険制度の間で年齢等のリスク構造調整を行い、負担と給付の公平化をはかります。
(d)医療の情報公開を進める
患者・国民が自分の健康状態や治療内容を知ることを重視し、カルテやレセプト(診療報酬明細書)の開示とインフォームド・コンセント(十分な説明と理解に基づく同意)を着実に実践します。また、医療サービスがより適切に選択できるように医療機関の評価と情報公開を進めます。医療機関に対する苦情を処理するシステムを新たに地域に設け、患者会活動(セルフ・ヘルプ)を支援します。こうした医療への総合的な国民参加を確実なものとするために、「患者の権利法」の制定を進めます。
(e)病院と診療所の機能分担を行う
日本の医療制度改革の中長期的目標として、病院と診療所の機能を明確に分離し、それぞれにふさわしい診療報酬体系を整備します。
病院については、入院を必要とする医療に限定した病院機能に純化します。また、外来については救急・予約専門以外は取り扱わないこととする。これらの病院に対しては包括診療報酬制とし、DRG−PPS(診断群別包括支払制)方式を基本とします。
一方、診療所は、個人医師の開業制とし、家庭医と専門医に分けます。家庭医は簡易な病気の治療だけでなく、健康管理・健康相談及び専門医や病院への紹介機能を担います。家庭医は登録制で人頭払いとし、専門医は出来高払いを原則とします。
介護基盤を緊急に整備するために
介護保険は、「介護地獄」や「老老介護」といった悲惨な状況の克服のため、また、高齢者の介護を社会全体で支える第一歩として是非とも必要です。二〇〇〇年四月から介護保険制度を予定通り実施し、無責任な実施や負担の先送り論には与しません。一方、政府の怠慢による基盤整備の遅れによって「保険あって介護なし」という深刻な状況も懸念されており、必要量に見合った介護の基盤、さらに「四人部屋・六人部屋」といった劣悪な居住環境の改善を集中的、緊急に行います。
このため、ゴールド・プラン、新ゴールド・プランに続いて、以下のように、五年間の数値目標を明示した「スーパー・ゴールドプラン(介護サービス基盤緊急整備計画)」を策定します。予算の確保などを計画的に行えるよう、この計画を「スーパー・ゴールドプラン法」として制定し、政府の最重点施策の一つとして集中的に取り組みます。
この介護基盤の緊急整備は、未来に真に役立つ公共事業として、また介護サービスの充実は、雇用の拡大はもちろん、景気対策としても有効です。
(a)施設の量的拡大と「個室化」などの質の充実を行う
特別養護老人ホームは、一八万「個室」の新設及び二〇万床(四人部屋)の「個室化」、老人保健施設は、四万「個室」の新設及び一四万床(四人部屋)の「個室化」を行います。また、六〜八人部屋と居住環境が劣悪なうえ、介護と医療の狭間にあり保険料高騰の要因の一つとなっている療養型病床群については、公費補助による「個室化」や特別養護老人ホームなどへの転換を進めます。
(b)在宅サービスを整備する
デイ・サービス八〇〇〇カ所、デイ・ケア二〇〇〇カ所の増設などサービスを大幅に拡充し、施設を利用しなくても済むような在宅サービスを充実します。ホームヘルパーなどマンパワーについても、その育成、待遇の改善を含め大幅な充実をはかります。介護保険導入に伴い、自立が困難であっても家庭で生活することが想定されるので、こうした事態に対応するため、およそ一二万人分の高齢者住宅の確保につとめます。
介護問題の中で最も深刻な痴呆性老人に対しては、その介護の「切り札」としてグループ・ホームを二万カ所(中学校区に二つ)、約一五万人分を設置します。
(c)自立高齢者には支援施策を総合的に推進する
介護保険制度における認定で判定される高齢者及び認定申請をしない虚弱な高齢者等に対しては、介護予防、寝たきり防止、域外活動など、多様なサービスを行う必要があります。このため、これまでの高齢者福祉政策、老人保健事業、健康づくり事業などの縦割りの弊害を取り除き、総合的に実施する仕組みをつくります。
また、この事業には、ボランティア等の住民参加も進めて、共助・自助による地域活動の活性化を図ります。
(d)自治体の負担を軽減させ、支援する
低所得層の保険料の支払区分細分化や高額介護サービス費の上乗せを、自治体が独自に実施できるようにします。これによって、自治体がきめの細かい対策をとれるようにします。
介護保険条例の制定にあわせて、「高齢者総合生活支援条例」を自治体が制定するよう促し、地域における高齢者総合生活支援政策を充実させます。在宅高齢者保健福祉推進支援事業補助を大幅に増額し、国の市町村支援を拡大します。
介護休業制度の拡充整備のために
高齢者など家族の介護のための休業制度を充実させます。介護のための休業時における所得保障を一定の条件の下で休業前賃金の六〇%とするとともに、介護を理由に職業を離れた男女が再び就業しようとするとき、職業能力開発など希望に応じた再就職が可能となるような雇用環境を整備します。
3.保育環境を充実させ、子育ての不安を解消します。
民主党は、子育ては、母親のみの責任で行うものではなく、父親やその他の家族全体の責任で行い、地域と社会が支援すべきものであるという考えに立ちます。子どもたちがどのように育ち、社会の担い手として成長するかは「社会の再生」の最も重要な課題でもあります。この考えのもとに、ゼロ歳児保育・二十四時間保育の実現をはじめ、政府がその社会的・経済的支援を飛躍的に充実していくことが必要です。
「多様なニーズに対応した保育サービスの充実」「子育てに伴う経済負担の軽減」「育児支援制度の拡充」とともに、子育ての孤立化や不安の解消をはかるための相談・支援体制を充実します。
保育サービスを充実させるために
低年齢児保育・延長保育・長時間保育・一時保育・病児保育など、多様なニーズに対応した保育体制を整備するため、施設や保育者のための財源確保などエンゼルプランの充実をはかります。
認可外保育所の施設や人員も充実させ、民間参入を促し、一定の条件を前提に国からの補助を実施します。また自宅で二〜三人の子どもの面倒を見るといった「保育ママ」などの仕組みを発展させ、小規模の子育て支援を奨励します。
保育・幼児教育体制を充実させるために
保育所と幼稚園の連携強化、一元化によって、子どもへの子育て支援量の確保、質の改善をはかります。一元化された施設を地域の子育て支援の拠点とすることで、育児不安の解消、虐待などの予防へとつなげていきます。
人格形成においては社会性を持った人間であることを重視し、就学前教育について国として本格的な支援を実施します。このため、保育と幼児期教育の社会化を加速度的に推進することを一つの目標に、一元化した保育所と幼稚園などの費用に関しては、公費負担を新たに導入し、保護者負担を半減します。
子育てに伴う経済的負担を軽減するために
高額所得者に有利な現行の扶養控除を廃止することを前提に、児童手当を改めて、新たに「子育て支援手当」を創設します。現行の児童手当の金額を倍増(第二子まで一万円、第三子以降二万円)するとともに、年齢を十八歳未満(現行三歳未満)に大幅拡大します。また現行六七〇万円の年収制限を一二〇〇万円とします。
充実した育児休業制度にするために
出産・子育てに携わる男女労働者の育児休業制度を充実させます。所得給付率を六〇%に高めるとともに、事業主に対して、「子どもが病気の時の休暇」や「父親の育児休暇取得」「企業内・事業所内の託児施設の設置」など、育児支援制度の拡充を奨励します。
出産や育児のために職業から離れた男女が再び就業しようとするとき、職業能力再開発など希望に応じた再就職ができるような雇用環境を整備します。
4.障害者が暮らしやすい社会をつくります。
民主党は、障害のあるなしにかかわらず、誰もが地域で安心して暮らせる社会づくりを実現することが、二十一世紀の日本に求められている課題だと考えています。このため、公共施設やバリアフリー住宅などのハード面の整備とともに、障害を持つ人の社会参加や障害者に係わる資格制度の欠格条項の見直しなどソフト面でのバリアフリー化を進めます。また、障害者の権利確立をはかる基盤づくりにも積極的に取り組んでいきます。
重度障害者への支援を一層進めるために、障害保健福祉施設の分権化、サービス提供体制の一元化を推進します。重度・重複の知的障害者のための施設を拡充し、併せて、障害者を介護する家族などの負担減をはかります。精神障害者社会復帰施設の緊急整備や医療と福祉サービスの連携強化につとめます。
これらの具体的事業を強力に推進するため、国連が進めるノーマライゼーションの基本指針「障害者の機会均等化に関する標準規則」の国際条約化を国内外でサポートします。また、できないことに主眼を置くのではなく可能性に着目して福祉政策の根本転換を進めていきます。障害者をチャレンジド(常なる挑戦者)ととらえなおし、障害者自らの自立運動を支援する政策を推進します。
障害者が利用しやすい文明機器とするために
デジタル革命とインターネットの急速な普及は、一方で障害を持つ人たちに新しい可能性を拓くとともに、他方で新たなハンディキャップをも作り出しています。障害者でもアクセスできるインターフェースの開発普及を進めて、障害者にも開かれた高度情報社会の形成をめざします。また、家電製品や自動販売機、ATMの利用などについて障害者や高齢者が利用しやすいユニバーサル・デザインの実現を促進します。このために欠かせない技術標準の整備やルールを明確にする法整備などに着手します。
バリアフリーの街づくりのために
障害を持つ人が自由に移動できる「バリアフリーの街づくり」を計画的に推進します。鉄道の駅舎や公的施設にエレベーターやエスカレーターを設置するとともに、幅の広い歩道の設置や段差の解消、電線類の地中化を進めます。このため、事業者による計画的整備とそれに対する公的補助、利用者を交えた協議会の設置などを骨子とする「交通アクセス法」の実現をめざします。また特に、障害を持つ人や高齢者に配慮したユニバーサル・タクシーやドア・ツー・ドアのスペシャルトランスポートシステムの確保につとめます。
現行の建築基準法を改正して、「安全」「防災」「衛生」の目的に加えて、「バリアフリー」を明記し、ノーマライゼーション時代にふさわい基準に改革します。
バリアフリー住宅を普及促進するために
少子高齢社会に対応する多様な家族形態やコミュニティハウスなど新しい住まいのあり方が、住宅のオプション・システムを求めるようになっています。つまり、障害を持つ人と持たない人が共同で生活する住まいのかたちを、当事者参加の下で自由に設計することが可能となっているのです。住宅の基本構造部分については個人資産としても、バリアフリー化に係る廊下やドアの幅寸法の確保や室内エレベーターの設置、バスユニットの特注などについての支援制度を充実し、バリアフリー住宅及び利用柔軟性の高い住宅の普及につとめます。
政治に対するバリアフリー化のために
バリアフリー社会実現のため、視覚や聴覚、知的障害などを持つ人への選挙情報の提供や投票補助など、選挙参加のための条件整備を進めます。選挙活動や選挙運営の改革など、政治参加に必要なバリアフリー化をめざします。
子どもたちの正しい理解のために
学校教育において障害者と健常者が共に学ぶ機会を拡充し、障害者への偏見をなくすといった「こころのバリアフリー化」を推進します。このため、保育・幼稚園の段階から小中学校教育における統合保育・統合教育を可能な限り実現し、障害を持つ子どもと障害を持たない子どもとの分離を前提とした教育の現状を大幅に見直します。
障害者のライフプラン実現のために
ノーマライゼーション社会の実現のために、福祉・医療・リハビリ・雇用・教育などを横断的に繋ぐ「新・障害者プラン」を策定し、予算を重点配分します。また、資格制度における欠格条項の見直しなどを進めます。障害を持った人たちに、情報技術などを活用して就業創造をし、納税者となる権利を行使できる社会をめざす「日本版ADA法」を制定します。
5.「賢く強い消費者」になるための支援をします。
日本はいま、これまでの消費者保護行政を軸とする政策から自立する消費者の行動を積極的にサポートする政策へと大きく転換することを求められています。国民一人ひとりが消費者としての自由な選択の幅を広げ、そのリスクを自ら管理するという時代に備えた新しい消費者法の整備に取り組むべきときです。民主党は、消費者を悪徳商法や契約トラブルからガードする透明度の高いルールの設定を進めるとともに、消費者自らが必要な情報を入手し、自分で的確な判断を下すことのできる「賢く強い消費者」の育成を支援していきます。
消費者を法律面から守るために
悪徳商法、契約トラブルなどから消費者を守る「消費者契約法」を制定します。現行の業種ごとの法律ではスキマが生じ、内容も不十分であるので、消費者に係る契約全般のルールを定める法律の制定が必要です。
この法律によって、業者の情報提供が不十分な場合など契約締結の過程に問題がある場合に、消費者は契約を取り消すことができることとします。また、契約内容をできるだけわかりやすく明確に表現させるとともに、消費者に一方的に不利な内容については、これを「不当条項」として効力を停止できるようにします。
消費者が裁判を起こしやすくするために
悪質な約款などの差し止めを求める裁判を、個人ではなく消費者団体などが起こせる仕組み(団体訴権)を整備します。「消費者契約法」にこの制度の検討条項を盛り込み、早期の実現をめざします。また、一般消費者が裁判を起こす際の費用負担の軽減をはかります。
消費者金融の高金利を正すために
多重債務の発生など社会問題を引き起こしている消費者金融の高金利を引き下げるため、「出資法」を改正します。この改正によって、刑罰が科される金利の上限を現行の年利四〇・〇〇四%から、「利息制限法」と横並びの「一〇万円未満年二〇%」「一〇万円以上一〇〇万円未満年一八%」「一〇〇万円以上一五%」に改正します。同時に、すでに不要となった「臨時金利調整法」を廃止します。
消費者教育を充実させるために
情報を持ち、自分で的確な判断をくだすことができる「賢く強い消費者」をつくるため、義務教育の段階から消費者教育を強化するなど、消費者教育充実に向けた政策を行います。
食品の成分等を事前に知らせるために
消費者の選択の自由を保障するためにも、遺伝子組み換え食品や使用農薬などの表示を義務づけます。
6.安全確保に力を入れ、正義やモラルが守られる国にします。
民主党は、不正に対しては厳格な姿勢で臨み、不正を放置する社会についても厳しい姿勢でその是正を求めます。現在日本にまかりとおる暴力、汚職・収賄、違法経理、ゴミ不法投棄、脱税、情報操作などの犯罪を抑制し、巨悪と正面から立ち向かう正義の政治を展開します。
世界一といわれた日本の治安に対しても、急速に不安感が高まっています。不正や犯罪が公然と放置されて誰も責任を負わない風潮が広まり、歯止めのないモラル・ハザードを引き起こしています。これでは、社会の倫理的基盤も崩壊して、国民生活の安全が脅かされ、国民の間にある正義感覚が麻痺してしまうことにもなりかねません。社会の基本機能を維持するためにも、社会的ルール違反をなくし、モラルを確立して、安心して暮らせる社会、自由な自己実現が保障される社会をめざします。
警察に対する監視を強化するために
神奈川県警などにおける相次ぐ不祥事、不正、犯罪の発生とその隠蔽体質の発覚は、警察活動に対する国民の強い不信と不安を招いています。この不信・不安を解消するため、またいわゆる盗聴法(通信傍受法)の成立に伴う公正な警察活動の監視のため、ブラックボックスとなっている警察情報の公開を飛躍的に拡大させます。プライバシーなどの関係で、一般公開できない情報についても、公募・抽選により選出された委員を含む「警察監視委員会」を設置し、チェックを可能にします。
犯罪取り締まりを強化するために
世界一とも言われる日本の治安を維持するため、犯罪多発地域の交番を倍増し、刑事犯罪捜査に関与する警察官を三割程度増員します。地道な捜査に携わる警察官や交番勤務の警察官の処遇・待遇を厚くし、公安中心の警察を、粗暴犯罪対策中心の警察に転換します。
警察を麻薬取り締まりなどの縦割り組織運営から改めます。そして、短期集中的に広域暴力団の取り締まりを行い、薬物・銃器犯罪などを一斉に摘発します。主要な広域暴力団には解散を迫っていきます。凶悪犯罪に対処するため、最低十年で仮出獄できる現行の無期刑に加えて、仮出獄を認めない終身刑を創設します。
「犯罪組織の取締りに関する法律」を制定します。オウム真理教などのカルト宗教や暴力団、国際犯罪組織などに対処するため、個人犯罪の責任体系とは別に、組織犯罪に対象を限定した取締法体系を制定することによって、その活動を実質的に封じ込めます。いわゆるストーカー対策のための特別立法も進めます。
また、急速な増加が予想されるハイテク犯罪に対応するため、IT技術によって支えられたサイバーポリスの機能を果たす「ハイテク犯罪ナショナル・センター」の確立を進めます。
犯罪被害者を救済・支援するために
「犯罪被害者等給付金支給法」を抜本的に改め、その救済支援を強化するとともに、被害者に捜査や裁判の状況を通知する制度を設けます。そして、犯罪被害者への精神的被害なども含めた「犯罪被害者基本法」を制定します。また被害者の損害賠償請求権を実効あるものとするため、その財産保全を容易にし、加害者が無資力の場合の給付金を増額します。財産保全処分をかけられた被告人が無罪となった場合には、国の責任で補償することとします。
国会議員や公務員の不正を阻止するために
国会議員などの「資産公開法」と「政治資金規正法」を改正強化し、政治家にまつわる金の流れを透明化します。また、公務員犯罪や経済犯罪に対処する検察庁の機能を強化し、すべての地方検察庁に、特別捜査部を設置します。特に、東京と大阪の特別捜査部については、質量ともに倍増し、経済犯罪特別捜査部と公務員犯罪特別捜査部に改組・強化します。
医療費の不正受給を防止するために
診療報酬請求伝票(レセプト)をすべてコンピュータで処理することで、作業を効率化するとともに、高額レセプトの抽出チェックを容易にします。不正請求については、社会保険診療報酬支払基金に告発義務を課します。また、カルテとレセプトの公開を法制化することによって、患者本人によるチェックを可能にします。
環境犯罪を防止するために
環境基準違反や環境犯罪に対処するため、独立の環境Gメン(仮称・環境査察庁)を設立します。ここでは環境犯罪捜査に限定しますが、警察に準ずる強制権限を付与して、違反行為をしっかりとチェックします。
食品等の安全性確保のために
厚生省や農水省から独立した組織として、「医薬食品安全庁」を設立します。そしてここで、医療・薬品・飲食品の安全性について、徹底的にチェックします。違法行為の疑いがある場合には、警察に準じた強力な捜査権限を行使します。その費用は、メーカーなどからの手数料などをあてます。
子どもポルノをなくすために
子どもを描写した「子どもポルノ」は、子どもたちへの重大な人権侵害であると同時に、それ自体、健全な社会への挑戦でもあります。警察庁、各都道府県警に対策本部を設置し、「児童ポルノ禁止法」に基づく取り締まりを徹底します。また、インターネット上の「子どもサイバーポルノ」など国際的な子どもポルノの流通を取り締まるため、国際的な捜査協力体制を確立します。
7.災害に対して迅速で、かつ手厚い国にします。
わが国は、自然条件、国土の利用の面いずれにおいても、災害に対して脆弱な状態に置かれています。これまでその基盤整備に対して幾多の取組みがあったにもかかわらず、その状況は進んでいるとは言えません。国民の生命・財産を様々な災害から守り、災害発生時の社会的・経済的混乱を最小限に食い止めていくことは、政治に課せられた最重要課題です。この認識のもと、災害時に迅速・機動的に対応できる危機管理体制と実効性のある被災者救済制度を確立します。
危機管理体制を確立するために
(a)内閣機能を強化する
危機管理における内閣機能強化をはかる観点から、アメリカのFEMA(連邦緊急事態管理庁)を参考に、内閣総理大臣の権限を強化し、緊急即応組織としての「情報・危機管理室」を整備します。災害発生時には、予め定められた危機管理マニュアルによって情報・危機管理室長が内閣総理大臣を補佐して、必要な対策の指示を関係省庁等に発することができるものとします。
また、緊急時において、迅速な判断を可能にするため、法制上どうしても総理大臣以下国務大臣全員の合意が必要な場合は、組閣時に予め想定できる事態を列挙し、災害時の判断を所管大臣などに委ねる旨を予め閣議決定しておきます。
(b)円滑な救援システムを確立する
国、地方自治体、警察、消防、自衛隊、ボランティア、NPOなどの役割分担、協力体制、情報伝達システムを確立し、災害発生後の救援活動の円滑化を進めます。自衛隊の災害派遣は、自衛隊法の厳格適用を前提としたうえで、自治体首長と自衛隊との日常的な情報交換や合同訓練を通じた信頼関係を構築していくことで、いち早く災害派遣ができる体制を構築します。
また、海外からの災害支援を受ける場合、検疫処理、出入国管理手続きの迅速化、医師免許等の有効性認定の柔軟な運用など、緊急時における事務処理の円滑化を促進し、国際的な災害救助態勢を整備します。その他、国際的な自然災害防止活動に積極的に参加し、国連、各国政府、NGO等と連携しつつ、緊急援助、災害予防、研究開発の充実をはかります。
災害を未然に防止するために
予想される様々な災害を未然に防止するために、全国各地の特性に配慮した総合的な防災・国土保全を進めます。「防災基本計画」を改定し、災害の発生を未然に防ぐ科学技術の向上、防災施設の拡充、教育・訓練の徹底などを進めます。
被害者救済制度をより充実させるために
国が被災者再建支援基金に対して行う補助交付金の額を増額し、支給対象者の拡大、支給上限額の引き上げなどを行います。被災世帯に対する応急仮設住宅などの収容施設の供与、食品・飲料水・生活必需品の供給などを拡充します。また、警戒区域の設定によって収入が途絶えた世帯に対して、避難手当(生活手当)の支給を整備します。
「激甚災害法」に基づく指定基準の緩和をはかり、その指定及び実施の迅速化を進めます。被災者個人に対しては、災害復興基金の拡充とあわせて、税の減免額の引き上げ、政府系金融機関からの災害融資の充実、災害弔慰金の引き上げや支給対象の拡大を実施します。災害遺児の高校進学などを助成する育英制度の確立もはかります。
被災した住宅や店舗、工場や事業所の再建に対して、政府系金融機関からの災害融資の拡充や税の減免額の引き上げと期間の拡大をはかります。特に、被災者の住宅再建築について確定し、早期に実施するための立法・行政措置を行います。
残されている阪神淡路大震災の被災者の生活再建については、特別措置を延長するとともに、被災地の復興基金に対する国の財政支援によって被災者自立支援事業を拡充し継続します。