江田五月のやさしい政治講座 10 1994/04/02 |
石川県知事選挙で「連立」勝利
3月27日投票の石川県知事選挙で連立8党派推薦の谷本正憲氏(48)が自民党推薦の石川弘氏(65)を10,659票の小差で破って当選しました。細川内閣発足後初めての連立与党VS自民党の一騎打ちの知事選挙で、新しい選挙制度のもとでの衆議院の小選挙区も同じ形でたたかわれる可能性が高いために全国の注目を集める選挙になりました。
私もこの選挙は細川内閣の命運を左右するきわめて重要な選挙であると考えて、3月19日〜21日の3日間と最終日に石川県に応援に行きました。細川さんも総理大臣就任以来初めての選挙応援で、最終日に金沢に入り、結果は1万票余りの差で連立与党が推薦する谷本さんが当選。
石川県は過去2回の参議院比例代表選挙で自民党の得票率が全国一だった有数の自民党王国で、そこで連立与党が勝利したことの意味は大きいと思います。新しい選挙制度では石川県は3つの小選挙区になりますが、現在の情勢では金沢市が連立与党、能登が自民党、南加賀が接戦、というところですが、これからは能登でもたたかえるようになるかもしれません。県議レベルもまきこんだ政党再編成がはじまるでしょう。
細川内閣にとっても、国会での予算審議がストップしている中で、この勝利は重要だったと思います。
「政策研究会」か「統一会派」か
連立与党内で「政策研究会」の構想が急速に浮上し、新生党・公明党・日本新党などが賛成、社会党・民社党・さきがけなどが反対ということで3月30日に、この構想は先送りとなりました。
用意された趣意書には基本政策や国会改革などの課題設定とともに、国政選挙の「連立与党『統一候補』構想およぴ『新・新党結成』も視野に入れた広範な選挙協力態勢作りに資するものとする」という文章があり、一部にこの研究会入会をもって統一候補の資格とするというような報道も流れて余計に話が混乱したようです。
私は選別や排除の論理をとらないことが前提で、この「政策研究会」には賛成ですが、もう一方でもよいと思います。参議院では「統一会派」結成の方向ですすんでいますが、衆議院でもすすめるべきでしょう。要は自民党が大分裂しない限り、次期総選挙は連立与党VS自民党になるのですから、連立与党は選挙を一本でたたかう必要がある。
連立政権をささえる車の両輪の一つとしてリベラル派が結集することも必要なことですが、この両輪が政策でも政治手法でも選挙でも、大いに議論をたたかわせてダイナミックな連立政権を継続・発展させていくことが今は重要です。
政治 経済 永田町 の 今
■日本新党との合流を検討
政治改革法案成立後の政界再編成をめぐるさまきまな動きの中で、では私たち社民連はどうするのか。新しい選挙制度では衆議院の選挙は政党本意のものとなり、しかもその政党の要件として国会議員5人以上、あるいは直近の国政選挙で2%以上の得票率が定められ、私たち社民連は残念ながらこの要件をみたすことができません(国会議員3名、得票率1.67%)。
従って社民連としては1月31日からの通常国会から、日本新党と新党さきがけと社民連の3党で統一会派「さきがけ日本新党」を構成しさらに広くよぴかけて新・新党をつくる方針をたてたわけです。
しかし2月以降さきがけと日本新党の関係が変化し、一挙に“リベラル新党”をつくることが困難な情勢になりました。そこで私たち社民連は近い将来の“リベラル新党”へ向けて、まず日本新党との合流を検討しているところです。
不況対策の処方箋 その8
「世界同時不況」ということも今回の複合不況のうちの一つです。国際経済の中で日本の内需拡大も当然の責務で最大限の努力をしなければなりませんが、同時に日本のもつ資本・技術・ノウハウなどを活用して潜在的成長力のある発展途上国の経済や停滞する先進国の経済を活性化することも世界経済ひいては日本経済の回復に役立つと思います。
途上国などの累積債務問題、旧ソ連・東欧やモンゴル・中央アジア、ベトナム・ミャンマーなどの市場経済化、中国の発展、先進国の雇用創出(Job Creation)。私は西暦2000年までには日本のODA予算をGNPの1%以上(現在は0.4%弱)、年間500億ドル規模にして、広い意味で世界経済活性化に貢献すべきだと思います。円高や膨大な日本の経常黒字、日本経済発展の経験を生かすことで、世界同時不況を克服することも可能だと思います。
■小沢一郎さんと会いました
3月22日夜、小沢一郎さんと会談しました。実はこの日の夕方5時頃に山口敏夫さんから電話があり、阿部昭吾さんと3人で会うことになりました。山口さんとは新自由クラブと社民連が統一会派をつくったこともあって、長いつきあいです。行ってみるとその会談には2回戦があって、そこに小沢さんがいたというわけです。
小沢さんとは会う機会はめったになく、一昨年の中央公論と昨年の月刊ASAHIで対談して以来ということになると思います。もっとも1月31日からの通常国会で本会議場での座席が変わり、なんと小沢さんと隣の席になりました。小沢さんの後が羽田孜さん、私の後が田中秀征さん、斜め後が細川さんと武村さんというわけで、かなり目立つコーナーになりまんた。小沢さんとは意見が違うこともありますが、連立政権の維持、選挙は1本でたたかうなどは一致です。
科学技術庁情報
対話、オープンが原子力政策の基本
いちばん大きな変化は、あらゆる面でオープンになったということです。たとえば原子力政策を決めるのに、原発反対派の人も含め広くみんなの意見を聞くとか、原子力に関する情報も可能な限りオープンにしていこうということで、準備を進めています。
原子力情報の公開については3つの制約があるのです。ひとつは「核不拡散」ということ。つまり、原子力発電にしてもウラン濃縮にしても、あまり情報をオープンにしてしまったのでは、どこかの国がその技術を悪用して核兵器を開発、ということになりかねない。 もうひとつは「核物質の防護」ということです。事前に核物質の輸送経路を知らせることで、盗まれる危険性が高まる。これは避けなければなりません。
そして「ノウハウの保護」です。原子力技術は、どこの国も自前で開発してきた非常に重要なもので、これを簡単にお教えしますというわけにはいかないのです。ただ、輸送経路なんかは事前は無理にしても、輸送後は公開してもなんら不都合はない。そういう部分をきちんと洗い直していくことで、原子力に対する理解も深まっていくのではないかと思います。
「感動! 科学の心」
4月18日から24日の1週間は、「科学技術週間」です。今年の標語は「感動! 科学の心」。公募した標語の中から幾つかを選び、さらに私が合成したものです。
近年、若者の「科学技術離れ」が問題になっています。原因はいろいろ考えられますが一つには科学技術があまりにも複雑化・高度化し、暮らしの中で科学技術が見えがたくなったことがあげられると思います。いわば科学技術の「ブラックボックス化」です。
教育のありかた、科学技術振興策など、政治が行われなければならない課題はいくつもありますが、たとえばアメリカで、人類が初めて月に降り立った映像に感激した世代から優れた科学者が数多く生まれたように、HIIロケットの打ち上げ成功に胸を踊らせた子供たちの中から、将来の日本の科学技術をしょって立つ人物がたくさん現れてくれたなら、これはまた、すばらしい「HII効果」と言えるかも知れません。
(なお、「若者の科学技術離れ」に関しては平成5年度の科学技術白書の冒頭で詳しく述べています。興味がおありの方は、ぜひこ一読ください)
やさしい政治講座 10 1994/04/02 |