江田五月のやさしい政治講座 11 1994/07/25 |
アッと驚く村山政権の誕生
6月29日の自社さきがけによる村山政権の誕生にはびっくりしました。開いた口がふさがらない、とはこのことです。55年体制の中で、国対政治などで裏で手を組んできた自民党と社会党が、追いつめられて表で手を組んだわけで、彼らがもたれあって利権分配に走る可能性はかなり高く、自民党とも社会党とも関係ない普通の人たち、つまり市民は政治の外におかれることになるわけです。
この政権の問題は3つある、と私は思います。第一は意見や利害が対立する重要課題をすべて先送りして、結果的に無責任な守旧派政権になってしまうことです。21世紀へ向かう大切な時に政治・行政・経済・社会の構造改革が遅れてはなりません。第二は自社連立では、全国に張りめぐらされた地方の利権構造が温存される恐れが強いことです。細川政権の誕生で中央の族議員政治は壊れ始めましたが(これも復活?)、地方の利権構造は健在です。第三に、「社民リベラル・ハト派政権」は国際社会には、改革の停滞と難問に消極的な一国平和主義に映ることです。
日本の得意の分野で国際社会の難問に積極的に取り組んでいく「責任あるハト派」の日本が求められていると思います。新しい選挙制度のもとで、早急な総選挙が必要だと思います。
「統一新党」ではなく「連立新党」を
6月29日の村山政権の誕生の翌日、午前11時から開かれた日本新党常任幹事会の時に、私は細川さんに提言しました。29日の首班指名選挙で海部さんに投票した議員(1回目221名、2回目214名)を中心に、大統一会派をつくることは必要だか、同時に日本新党と民社党を中心として、自民党や社会党を離脱した改革派の人たちも含めた「新党準備会」をつくることも大切だと。
新しい選挙制度は小選挙区を中心にした制度ですから、当然野党は1本でたたかわなければなりません。しかしそれは一色刷りの「統一新党」ではなく、多色刷りの「連立新党」でなければならないと私は思っています。例えば新生党、公明党、海部グループ、民社・日本新党などの4つくらいのグループがあって、多様性・透明性を確保しながら、次の「連立政権」の基本政策を明らかにして選挙に臨むという考え方です。
いわゆる「一・一ライン」一色に染まった「統一新党」では、有権者のみなさんの多様な期待に応えることはできないし、広範な支持も得られないと思います。特に「連立新党」の中で市民政治の流れを明確に位置づけ、発展させていくことが、日本新党や私の重要な役割ですから、大切なことだと思います。
政治 経済 永田町 の 今
■日本新党と合流、副代表となる
5月22日、私は社民連の全国代表者会議を招集して、日本新党との政党合併と社民連の解散を決定しました。政党助成法には政党の合併・分割についての規定があり、今回はそれを準用しました。
政党合併には言わば吸収合併と対等合併があり、今回は吸収合併方式で、合併にあたって日本新党全国代表者会議で私は、小池百合子さんとともに副代表に就任することになりました。
日本新党と社民連の合併にあたっての共同アピールでは、改革と市民政治の実現、実践的理想主義、平和・軍縮・環境・人権・福祉、女性の政治参加と社会進出の推進、生活者主権の確立などが明記されており、社民連の目標は全て継承できていると思います。
■いわゆる「一・一」ラインについて
今回の村山政権は本来くっつくはずのないものが連立してできた政権ですが、その接着剤は「反小沢」「反一・一ライン」だと言われています。それだけ「一・一ライン」には強烈なイメージがあるわけですが、私もいわゆる「一・一ライン」には問題があると思います。
会派「改新」の大失敗、社会党を追いつめて分裂を強要する覇権主義的手法(私も社会党の分裂は賛成ですが)、余りにも性急で非妥協的やり方などで、無用の混乱をひき起こし、結果的に細川政権、羽田政権を短命に終わらせ、自社野合の村山政権を誕生させたことの責任は重大です。
40年間続いた自社55年体制をこわすためには、強烈なエネルギーは必要ですが、それだけでは新しい時代を創造することはできません。“連立野党”内に「一・一ライン」とは別に、もう一つの「民主派・市民派」の軸を確立しなければならないと思います。
■「責任あるハト派」として行動する
村山政権は「社民リベラル・ハト派」政権ということのようですが、それでは、“連立野党”は「タカ派ファシスト」政権か、というとんでもない話になるわけですが、私は“連立野党”内で「責任あるハト派」「民主派・市民派」の立場を明確にし、“連立野党”全体をその方向にすすめていきたいと思います。
世界の難問に消極的な一国平和主義に陥ることなく、21世紀を先取りした理念をもつ日本国憲法第9条を生かして、日本の得意の分野で積極的に国際貢献をすすめていかなければなりません。この点についてはこの数年間いろいろな場面で発言してきましたが、そのまとめの一つとして「安全保障基本法要綱」を衆議院法制局のみなさんの協力を得て作成しました。近く公表して、21世紀を展望したわが国と世界の安全保障の基本政策として確立していきたいと思います。
■「地球市民の時代」の提唱
私のこれからの政治活動の最大の使命は、日本の中に「市民政治」を根づかせることです。自立した個人としての市民、生活者・コミュニティの構成員としての市民、そして地球市民の時代が21世紀だと思います。冷戦構造を終結させ、資本主義と社会主義のイデオロギーの対立に終止符を打ち、主権国家が覇を競い合う時代を終わらせるのも、世界の「市民化」と「情報化」だと思います。
「普通の国」か「キラリと光る国」かという議論がありますが、私は日本は「グローバル・シビリアンステート」(地球市民の国)であるべきだと思います。数ある政党の中で、合併のパートナーとして日本新党を選んだのも、日本新党が既成の政党や政治家とは異質の存在として、新しい手法の市民政治の担い手として、有権者のみなさんが誕生させた政党だからです。「市民政治」の潮流を21世紀につなげていかなければならないと思います。
「科学技術と政策の会」をつくりました
科学技術庁長官は4月25日に退任しましたが、長官在任中から準備していた、超党派の国会議院と有馬朗人、西澤潤一、石井威望先生をはじめとする有識者のみなさんでつくる「科学技術と政策の会」という政策研究団体を6月2日設立することができました。衆議院議員の中山太郎さん(自民党)、参議院議員の松前達郎さん(社会党)と私の3人が代表発起人で現在147名の国会議員が参加しています。文字通り超党派の会で、政権交代などで動くことのない長期的かつ安定的なわが国の科学技術政策を確立することが目的で、その後の政権交代にも見事に対応できるものとなりました。
従来の族議員型の議員連盟になることのないよう専門家の先生方にも加わっていただいており、私も科学技術庁長官の経験をフルに活用して日本だけでなく国際社会にも政策提言していきたいと思います。
●工イズチャリティコンサートでバイオリンを演奏
7月5日、エイズチャリティのための「第2回ファッション交響楽」に出演しました。作曲家の三枝成彰さんのプロデュースで、他の出演者は政治家では羽田孜さん(昨年は指揮、今年はウェスタンソング)、頼近美津子、コシノジュンコ、西田ひかる、宮崎緑、池田理代子、大前研−、高円宮殿下など、豪華出演者でした。
私はニュースキャスターの久和ひとみさんと、バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」第1楽章を共演しました。4分半くらいの演奏なのですが、出演が決まった4月から少なくとも数十倍の時間は練習したと思います。コンサートが近くなってからは、夜議員宿舎で練習したこともあったので同じ宿舎のみなさんには迷惑をかけたかもしれません(私のいる九段宿舎は村山さんや鳩山さんもいる所で、同じ頃にアッと驚くシナリオがつくられていたのかもしれません。)
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