2001/11 

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コミックわが1冊 「火の鳥・未来編」 手塚治虫


漫画は中学生の頃、定期考査が終わるたびに、貸本屋に飛び込んで山のように借り出し、貪るように読みました。最終戦争が勃発し、人類が消えていくという、手塚治虫作品の一場面を鮮明に覚えています。

当時は、米ソの核対立で、そういうことは充分にありえたのです。「火の鳥」は、その完成作。一つの哲学的、思想的なものを表現しながら、同時に地球物理学の最先端の知識も登場します。現在ではちょっと古いのですが…。

この作品では、今の生命が絶滅しても、何万年かしたらまた次の生命が生まれてくるんです。今では、地球環境の微妙なバランスは、一度崩れたらおしまい。何十万年待とうが生物は出てきません。

手塚さんの時代の危機は核戦争ですが、今の環境の危機は、はるかに深刻です。とはいえ、壮大な発想から生まれた、人にものを考えさせる作品です。今はこういうものは少ないですよね(談)。

月刊 本の窓(小学館) 2001年11月号掲載


2001/11

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