2002年5月10日

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民主党は政権獲得へ何をなすべきか
健康な市民の政党に

参議院議員 江田五月

3月19日、参議院予算委員会の公聴会において、正村公宏専修大学教授は公述人として次のような趣旨の意見を述べられました(文責は筆者)。

「今、政治がなすべきことは、将来に対する確信が持てるようなメッセージを国民に送ることです。経済にもこれが決定的な影響を持ちます。経済は成長するという確信は崩れました。それに代わる確信が必要です。その基本は、現状認識の共有です。その上で、指導者にやって貰うという発想でなく、自分自身が一員となった運動を作ることが大切。(小泉の)構造改革でなく、国民の構造改革運動が必要です。資源循環、環境保全、子どもたちの未来を大切にするよう、価値観を転換させることです」。

このご意見の中に、民主党が政権獲得のためになすべき課題のヒントがあると思います。民主党こそが、国民に対し、正村教授が指摘される政治の役割を果たさなければなりません。それを果たせば、国民は民主党に政権を託すと思います。

その役割は、主として政策提言により果たされるものです。しかし、私がここで問題提起を試みるのは、政策のことではありません。政党の体質、作風など、政党自身の姿のことです。

私の持論なのですが、政党は、その政党が将来作ろうとする社会の姿を、あらかじめ自らの中に、その政党の規模に応じて体現するものです。国民は、その政党の姿を見ることにより、将来その政党が作ろうとする社会の姿を具体的にイメージすることができます。その上で、その社会の中での自分の毎日の生活を思い浮かべ、その政党に政権を託すかどうかを決めます。

例えばある政党が、利権構造に由来する資金に依存しているとしましょう。その政党に政権を託していたのでは、将来の社会が利権構造から脱皮できるはずがありません。そこで、利権に群がって甘い汁をむさぼる人々は、この構造の継続によって利益を得るのですから、その政党の政権を選択するでしょう。自民党政権が続く限り、日本社会が利権構造から脱皮できないのは、当然だといわなければなりません。

私は、今の日本社会が良いとは思っていません。気になる点をいくつか上げると、(1)透明度が低く、物事を決定したり紛争を解決する際のルールが明確でなかったり、ルール自体はあっても守られなかったりします。(2)「寄らば大樹の陰」 の風潮は依然として強く、独立自立の気風は歓迎されません。(3)みんなと違うと、学校でも会社でも居心地が悪く、横並びで大過なく過せば波風立ちませんい

私は、このような点を改めたいと思って政治家になりました。25年前、最初に参議院全国区に立候補した時の私のキャッチコピーは、「私は健康な市民のひとりです。」というものでした。日本社会を健康な市民社会に改めることを成し遂げたい、そのために市民政治を前進させたいと、今も強く思っています。今、日本社会の陋習を変えたいと思っている市民は、数限りなくいます。民主党は、このような市民と連携し支持されて、はじめて社会を変革することが出来ます。ですから民主党に大切なことは、市民に対し、将来への確信を与えるようなメッセージを送るため、市民が自分たちの党だと思えるような党風を、民主党の中に実現することです。

党の運営をルール化し、そのルールの過程を透明にすることが、まず大切です。意見の違いは、私は市民にとって違和感のあることではないと思います。議論が、見える形で行われることと、納得できる形で結論に達すること、そして決まったら守ることが大切です。特に、公約は国民との約束ですから、ぶれさせないこと。議論封じはいけませんが。

政党と労働組合との関係が議論になっています。労働者が組織を持たないと、使用者にかないません。また、労組の政治への関与は、市民社会の成熟にとって重要です。

これらは、民主主義の原理論に属することです。問題は、労組と政党との関係です。

お互いに存在の意義も基盤も違うのですから、依存し合っていて良い筈がありません。理解しながら違いを認める関係は、十分に議論しさえすれば、私は困難ではないと思います。価値観の多様化を、政党の中でも実現することが大切です。10年程前、「社会党改革」 の議論に私も外から参戦したことがありました。土井さんは「りんご理論」 で、しっかりした芯があって、周りに美味しい実がつくというイメージでした。私は、「サラダボール理論」で、きゅうりもレタスもセロリもあり、それぞれが共通のドレッシングで美味しくつながっているというイメージでした。今でも私は、ネットワーク政党の夢を持っています。

民主党を、市民と緩やかに大きなネットワークでつながり、労働組合とも事業者団体とも信頼関係を持つ、健康な市民の政党に、育て上げたいものです。

(2002summer●DiscussionJournal「民主」no.1掲載)


2002年5月10日

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