2008年8月15日 |
平成20年8月15日
於 日本武道館天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、ご遺族の皆さまのご参列のもと、全国戦没者追悼式が行われるに当たり、謹んで追悼の言葉を申し述べます。
六十三年前の夏のこの日、多くの悲劇をもたらした戦争が終わりました。わが国はこの日を境に焦土の中から立ち上がり、日本国憲法の掲げる平和、民主主義、基本的人権の理念のもとで、国民こぞっての粘り強い努力によって、目覚しい発展を遂げてまいりました。世界の歴史でも有数の経済成長を果たした今日のわが国では、もはや、戦争の残した深い爪あとは目に映りにくくなっているかもしれません。
しかし、今もなお、戦争の傷の痛みに日々苛まれている人々がいます。私たちは現在、平和と繁栄を享受しているからこそ、戦争で命を落とされた方々の無念、傷を負った方々のご労苦、ご遺族の皆さまの深い悲しみを忘れず、平和の尊さとそのための努力の大切さを、いま一度深く胸に刻み込む必要があるのだと思います。
先の大戦では、国内外で被害を受けた国民はもとより、わが国の侵略行為と植民地支配により、アジア諸国をはじめ広い地域の人々にも、多大な苦しみと悲しみを与えました。その深い反省の上に立ち、悲惨な戦争を二度と繰り返さないという決意を常に新たにし、真に世界から信頼される平和国家を築いていくことが、私たちの責務であります。
残念ながら、世界では今も、地域や民族、宗教の間で、争いが次々に起こっています。だからこそ諦めずに、憲法の前文にあるように、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有する」ことを改めて確認し、その権利の実現に少しでも近づけるよう、積極的に行動していかなければなりません。国内でも、戦後改革は、平和も民主主義も人権も、まだまだ道半ばです。今後とも、最大限の努力を傾けていく決意です。
終わりに、戦没者の方々に改めて哀悼の意を表し、ご遺族の皆さまのご健勝とご多幸を心からお祈りして、追悼の言葉といたします。
平成二十年八月十五日参議院議長 江田 五月
2008年8月15日 |